説明

透視可能な透過型スクリーン及びその製造方法

【課題】高い透視性とプロジェクター投影時の映像の視認性の双方を満足する透視可能な透過型スクリーン及びその製造方法を提供する。
【解決手段】光透過性支持体の少なくとも一方の面に、光拡散微粒子が2次元配置された透視可能な透過型スクリーン。かかる透過型スクリーンは平均二次粒子径が500nm以下の無機微粒子と樹脂バインダーを含有する多孔質層塗布液を塗布し、乾燥過程中の減率乾燥領域以後、もしくは乾燥終了後に、光拡散微粒子を含有する塗布液を、多孔質層の空隙容量以下で前計量タイプの塗布方式にて塗布し、乾燥することで得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクターから投影された映像を、スクリーンを挟んでプロジェクターの反対側から視認することができる、背面投射型の透過型スクリーンに関し、ヘイズが少なく透視性に優れ、プロジェクターから投影された映像の視認性に優れる透視可能な透過型スクリーン及びその製版方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、プロジェクターより投影された映像を、スクリーンを挟んでプロジェクターの反対側から視認する、いわゆる背面投射型の透過型スクリーンは、これまでのポスター、サイン、看板等の広告媒体に代わって普及しつつあり、貼り替えが不要で、即座に内容を変更でき、静的だけではなく動的な広告も可能なデジタルコンテンツを、大画面でそのまま投影できるデジタルサイネージとして非常に注目を浴びている。
【0003】
この背面投射型の透過型スクリーンは、偏光フィルム、フレネルレンズシート、レンチキュラーレンズシート等を使用したもの(例えば特許文献1)が一般的であり、高輝度で高コントラストを有し視認性が非常に高いものの、非常に高価であるとともに、スクリーンの向こう側を透視することはほとんど不可能であった。また高輝度で高コントラストを有する光透過性ビーズを使用したスクリーン(例えば特許文献2)も提案されているが、これもスクリーン自体が不透明であるため、同様にスクリーンの向こう側を透視することは不可能であった。
【0004】
一方、店舗のショーウインドウ等は、その多くが顧客の通る道路に面しており、ウインドウ越しに店内の商品を視認できるだけではなく、必要に応じてそのウインドウをデジタルサイネージに代えることができれば、広告媒体として非常に有用であることより、ショーウインドウ貼付型の透視可能な透過型スクリーンのニーズが高まっている。
【0005】
このような透視可能な透過型スクリーンとして、透明性バインダーと平均粒径が1.0〜10μmで透明性バインダーの屈折率に対する相対屈折率nが0.91<n<1.09(但し、n≠1)である球状微粒子を含有する光散乱層を設けることが提案されている(例えば特許文献3、4)。
【0006】
しかしながら、透視性とプロジェクター投影時の映像の視認性の双方を十分に満足することは困難であり、更なる改善が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−165095号公報
【特許文献2】国際公開第99/050710号パンフレット
【特許文献3】特許第3993980号公報
【特許文献4】特許第4129275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、透視性とプロジェクター投影時の映像の視認性に優れた透視可能な透過型スクリーン、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は以下の発明により達成される。
(1)光透過性支持体の少なくとも一方の面に、光拡散微粒子が2次元配置された透視可能な透過型スクリーン。
(2)該光透過性支持体が、光透過性基材の少なくとも一方の面に、平均二次粒子径が500nm以下の無機微粒子と樹脂バインダーを含有する多孔質層を有する支持体である上記(1)に記載の透視可能な透過型スクリーン。
(3)該光拡散微粒子の平均粒子径が0.15〜2.75μmであることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の透視可能な透過型スクリーン。
(4)該光拡散微粒子の平均粒子径が0.35〜0.80μmであることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の透視可能な透過型スクリーン。
(5)光透過性基材の少なくとも一方の面に、平均二次粒子径が500nm以下の無機微粒子と樹脂バインダーを含有する多孔質層塗布液を塗布し、乾燥過程中の減率乾燥領域以後、もしくは乾燥終了後に、光拡散微粒子を含有する塗布液を、多孔質層の空隙容量以下で前計量タイプの塗布方式にて塗布し、乾燥することを特徴とする透視可能な透過型スクリーンの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、透視性とプロジェクター投影時の映像の視認性に優れた透視可能な透過型スクリーン、及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の透視可能な透過型スクリーンの一実施例を示す概略断面図
【図2】本発明の透視可能な透過型スクリーンの他の実施例を示す概略断面図
【図3】本発明の透視可能な透過型スクリーンの他の実施例を示す概略断面図
【図4】本発明の透視可能な透過型スクリーンの他の実施例を示す概略断面図
【図5】透視可能な透過型スクリーンの従来例を示す概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明の透視可能な透過型スクリーンは、光透過性支持体の少なくとも一方の面に、光拡散微粒子が2次元配置することが特長である。なお、本発明における「透視可能」とは、スクリーン全体のヘーズが60%以下であることをいう。
【0014】
ヘーズとは、JIS−K7105において以下で定義されている値であり、値が低い方が透視性に優れる。
H=(Td/Tt)×100(%)
H:ヘーズ
Td:拡散光線透過率
Tt:平行光線透過率
【0015】
図1〜4には本発明の透視可能な透過型スクリーンの一実施例あるいは他の実施例を示す概略断面図を、及び図5には透視可能な透過型スクリーンの従来例の概略断面図を示す。本発明における2次元配置とは、図5のように光拡散微粒子2がZ軸方向(深さ方向)に複数個重なりバインダー等で連結された従来の拡散層構造(以降、3次元配置層という)ではなく、例えば図1に示すように光拡散微粒子2がZ軸方向へは重ならず2次元平面に個々で配置され、樹脂バインダー等で光拡散微粒子2が連結された層構造をなさないことをいう。
【0016】
通常、光拡散微粒子をフィルム等の光透過性支持体に塗布する場合、光拡散微粒子を結着させるバインダーが必要となる。また光拡散微粒子及びバインダーを含有する塗布液は、塗布性確保のための粘度調整等を目的に有機溶剤もしくは水等で希釈され、光透過性支持体に塗布・乾燥することが一般に行われる。しかしながら、均一な塗布面を得るためには、光拡散微粒子の直径以上の湿潤塗布厚みで塗布する必要があるため、結果的には光拡散微粒子は2次元配置ではなく3次元配置層として構成される。これに対し本発明の透視可能な透過型スクリーンは、このような光拡散微粒子を2次元配置することによって、高い透視性とプロジェクター投影時の映像の視認性の双方を高次元で両立することが可能となる。
【0017】
本発明の光拡散微粒子の2次元配置を得る方法としては、例えば光透過性基材5上に粘着層6を塗布・乾燥した後、もしくは両面粘着テープを貼り付け、セパレート紙を剥離して粘着層6を露出した後、光拡散微粒子2をスプレー噴霧して粘着層6へ接着配置する方法が挙げられるが、生産性と光拡散微粒子の均一配置性の観点より、光透過性基材の少なくとも一方の面に、平均二次粒子径が500nm以下の無機微粒子と樹脂バインダーを含有する多孔質層塗布液を塗布し、乾燥過程中の減率乾燥領域以後、もしくは乾燥終了後に光拡散微粒子を含有する塗布液(以下、光拡散微粒子塗布液という)を、前記多孔質層の空隙容量以下で前計量タイプの塗布方式にて塗布し、乾燥する方法が特に好ましい。なお、前者によって得られる透過型スクリーンの構造が図3の概略断面図に相当し、後者によって得られる透過型スクリーンの構造が図2の概略断面図に相当する。
【0018】
このような製造方法により、光拡散微粒子塗布液が瞬時に多孔質層に吸収され、その時の塗布液の流速及び吸引圧により、塗布時には重なりあっていた光拡散微粒子も重なり合うことなく多孔質層上に強固に押しつけられ2次元配置され結着する。また塗液中に光拡散微粒子の結着のために樹脂バインダーが含有されている場合は、多孔質層上の光拡散微粒子との接触面付近では有効に樹脂バインダーが働くが、光拡散微粒子のない多孔質層部分では完全に多孔質層中に吸収されてしまい、結果的に前述した樹脂バインダー等で光拡散微粒子が連結された層構造をなさず2次元配置される。また、このような多孔質層により透過型スクリーンの透視性が良好となる。
【0019】
多孔質層塗布液を塗布した後、十分に空隙が形成されない状態、例えば恒率乾燥領域で光拡散微粒子塗布液を塗布する、あるいは多孔質層塗布液と光拡散微粒子塗布液の同時重層塗布は、光拡散微粒子が3次元配置層を形成するため十分な透視性が得られない場合がある。また多孔質層の空隙容量を超えた量の塗布を行うと、多孔質層中に吸収されなかった塗布液が表面に残留し、同時重層塗布と同じ状況になり光拡散微粒子が3次元配置層を形成するため十分な透視性が得られない場合がある。更に、多孔質層中の気泡が残留した光拡散性微粒子塗布液の湿潤膜上に発生し、面質を著しく悪化させるため好ましくない。
【0020】
光拡散微粒子塗布液の塗布は、減率乾燥領域以降であればよいが、減率乾燥領域においても、乾燥過程の進行により、多孔質層がその乾燥過程時点で持つ空隙容量は増大する。光拡散微粒子塗布液を塗布する時点での多孔質層の空隙容量が大きければ大きいほど、前述した吸引圧による光拡散微粒子の2次元配列が良好になるため、光拡散微粒子塗布液の塗布は、減率乾燥領域でも後半に塗布することが好ましく、乾燥終了後に光拡散微粒子塗布液の塗布を行うことがより好ましい。また、多孔質層を塗布した後に一旦巻き取り、その後、光拡散微粒子塗布液を塗布してもよいし、巻き取り後に加温、調湿等のアニール処理を行った後、塗布してもよい。
【0021】
乾燥工程は、恒率乾燥領域、減率乾燥領域、乾燥終了点に大別される。乾燥の初期段階である恒率乾燥領域においては、塗層中の水や溶剤が蒸発潜熱を奪いながら単純に蒸発していくため、塗層の表面温度は湿球温度(湿り空気の平衡状態での水滴の温度であり、空気の湿度が小さいほど低い。)とほぼ等しくなる。減率乾燥領域においては、塗層に含まれる物質と水とのインターラクションを乖離させるためのエネルギーが必要となったり、形成されはじめる空隙により水分移動が阻害されるため、塗層中における水や溶媒の移動速度が塗層表面からの水や溶媒の蒸発速度より低下し、蒸発潜熱が次第に奪われにくくなるため、塗層の表面温度は湿球温度と比較し、次第に高くなる。乾燥終了点においては、蒸発潜熱が奪われなくなるため、塗層の表面温度は乾燥空気の温度と等しくなる。従って、本発明における減率乾燥領域以降とは、乾燥工程中に表面温度計を用いて塗層の表面温度と同条件における湿球温度を比較し、表面温度が湿球温度より高くなる領域以降のことである。
【0022】
本発明でいう多孔質層の空隙容量とは、水銀ポロシメーター(測定器名称 Autopore II 9220 製造者 micromeritics instrument corporation)を用い測定・処理された、多孔質層部分における細孔半径3nmから400nmまでの累積細孔容積(ml/g)に、多孔質層の乾燥固形分量(g/平方メートル)を乗ずることで、単位面積(平方メートル)当たりの数値として求めることができる。
【0023】
光拡散微粒子塗布液の湿潤塗布量は、多孔質層の空隙容量以下とすることが好ましいが、孔質層内の空隙容量に対して90質量%以下がより好ましく、85質量%以下が特に好ましい。
【0024】
本発明における前計量タイプの塗布装置について説明する。各種塗布方式は、前計量タイプと後計量タイプに大別できる。前計量タイプは、予め所定の塗布量になるように計量しておいた塗布液を塗布する方式である。後計量タイプは、所定の塗布量より過剰に塗布しておいてから、後で所定の塗布量になるように掻き取る塗布方式である。前計量タイプの塗布方式としては、スライドビード方式、カーテン方式、エクストルージョン方式、スロットダイ方式、グラビアロール方式、スプレー方式等があり、後計量タイプの塗布方式としては、エアーナイフ方式、ブレードコーティング方式、ロッドバー(ワイヤーバー)コーティング方式等がある。グラビアロール方式は、グラビアロール上に過剰に塗布液を供給し、ブレードにより掻き落とした後、基材に転写して塗布を行う。塗布後に掻き取る工程を持たないため、前計量方式といえる。
【0025】
本発明において光拡散微粒子塗布液は、正確な塗布量を与え、多孔質層への光拡散微粒子の2次元配置を阻害させないために、前計量タイプの塗布装置を使用することが好ましく、スライドビード、スロットダイのような塗布液を塗布巾方向に均一に流出するためのスリットを持つ塗布装置、あるいはグラビアロールを使用する塗布装置を用いることが好ましい。このような前計量タイプの塗布装置を用いない場合、光拡散微粒子が3次元配置層を形成するため十分な透視性が得られない場合がある。
【0026】
本発明の光拡散微粒子としては、光を拡散する性能を有するものであれば有機微粒子及び無機微粒子を問わず使用することができるが、透視性の観点より二次の凝集粒子径を持たない、所謂、単分散性の有機微粒子を用いることが好ましく、更に形状は真球状であることが好ましい。また、光拡散微粒子の屈折率は1.50以上であることが好ましく、更に1.60以上であることが好ましい。
【0027】
本発明に用いる有機微粒子としては、例えば、アクリル重合体、スチレン−アクリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル共重合体、酢酸ビニル重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリオレフィン重合体、エチレン−酢酸ビニル−アクリル等の多元共重合体、SBR、NBR、MBR、カルボキシル化SBR、カルボキシル化NBR、カルボキシル化MBR、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール系樹脂、ロジンエステル系樹脂、エピスルフィド系樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アクリル樹脂、メラミン樹脂等、従来公知のものから広く選ぶことができる。また、メラミン樹脂やアクリル系樹脂等の微粒子表面をシリカ等の無機微粒子で被覆されたものも使用できる。また、このような有機微粒子と少量の無機微粒子(無機微粒子の割合が50質量%を下回るもの)による複合粒子を用いた場合等でも、実質的には有機微粒子と見なし使用できる。これらのポリマーのモノマー中に屈折率を高める目的で硫黄原子を導入したものや、耐候性を向上させる、あるいは屈折率を下げるためにフッ素置換基を導入したものも用いることができる。
【0028】
本発明に用いる無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、ルチル型二酸化チタン、アナターゼ型二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、酸化アンチモン類、アンチモン酸亜鉛、チタン酸鉛、チタン酸カリウム、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ハフニウム、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化イットリウム、酸化クロム、酸化スズ、酸化モリブデン、ATO、ITOや、ケイ酸塩ガラス、リン酸塩ガラス、ホウ酸塩ガラス等の酸化ガラス等があり、これらの複合酸化物あるいは複合硫化物等についても広く用いることができる。また、酸化チタン、酸化亜鉛等光触媒活性を持つ無機微粒子の場合には、無機微粒子表面に極めて薄く、シリカ、アルミナ、ホウ素等による被覆が行われているものも使用できる。また、無機微粒子と少量の有機高分子(有機微粒子の割合が50質量%を下回るもの)による複合粒子を用いた場合等でも、実質的には無機微粒子と見なし使用できる。
【0029】
これら有機微粒子及び無機微粒子は、それぞれを単独もしくは複数種類を混合して使用することもでき、有機微粒子及び無機微粒子の双方を混合して使用することも可能である。
【0030】
本発明においては、平均粒子径が0.15〜2.75μmの光拡散微粒子を使用する場合、とりわけ優れた視認性を得ることができる。より好ましくは0.35〜0.80μmである。なお平均粒子径は、レーザー散乱式の粒度分布計(例えば、堀場製作所製LA910)を用いて、個数メジアン径として測定することができる。
【0031】
本発明の光拡散微粒子を配置するための塗布量の上限は、光拡散微粒子の投影面積として77%以下となる量であり、より好ましくは60%以下となる量である。また下限は光拡散微粒子の投影面積として5%以上となる量であり、より好ましくは10%以上となる量である。なお、光拡散微粒子の投影面積とは、光拡散微粒子側よりスクリーンの電子顕微鏡撮影を行い、撮影視野内の光拡散微粒子の個数と大きさを測定して、撮影視野に対する光拡散微粒子の全投影面積から算出することができる。
【0032】
本発明における光拡散微粒子塗布液には、光拡散微粒子以外に樹脂バインダーとして高分子樹脂が好適に用いられ、このような高分子樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えばポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、アセタール系樹脂、ビニル系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等の光透過性を有する熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等を用いることができる。
【0033】
これら樹脂バインダーの含有量は、特に制限はないが、光拡散微粒子に対して50〜1500質量%の範囲が好ましい。より好ましくは50〜1000質量%であり、更に好ましくは100〜700質量%である。
【0034】
本発明における光拡散微粒子塗布液には更に、カチオン性ポリマー、防腐剤、界面活性剤、着色染料、着色顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料の分散剤、消泡剤、レベリング剤、蛍光増白剤、粘度安定剤、pH調節剤等を添加することもできる。
【0035】
本発明の多孔質層に用いられる平均二次粒子径が500nm以下の無機微粒子としては、非晶質合成シリカ、アルミナ、アルミナ水和物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二酸化チタン等公知の各種微粒子が挙げられるが、高い吸引圧により光拡散微粒子を2次元配置し易い非晶質合成シリカ、アルミナまたはアルミナ水和物が好ましい。好ましい平均二次粒子径は10〜300nmであり、より好ましくは20〜200nmである。平均二次粒子径が500nmを超えると、十分な透視性が得られないため好ましくない。
【0036】
非晶質合成シリカは、製造法によって湿式法シリカ、気相法シリカ、及びその他に大別することができる。湿式法シリカは、更に製造方法によって沈降法シリカ、ゲル法シリカ、ゾル法シリカに分類される。沈降法シリカは珪酸ソーダと硫酸をアルカリ条件で反応させて製造され、粒子成長したシリカ粒子が凝集・沈降し、その後濾過、水洗、乾燥、粉砕・分級の行程を経て製品化される。沈降法シリカとしては、例えば東ソーシリカ(株)からニップシールとして、(株)トクヤマからトクシールとして市販されている。ゲル法シリカは珪酸ソーダと硫酸を酸性条件下で反応させて製造する。熟成中に微小粒子は溶解し、他の一次粒子どうしを結合するように再析出するため、明確な一次粒子は消失し、内部空隙構造を有する比較的硬い凝集粒子を形成する。例えば、東ソーシリカ(株)からニップゲルとして、グレースジャパン(株)からサイロイド、サイロジェットとして市販されている。ゾル法シリカは、コロイダルシリカとも呼ばれ、ケイ酸ソーダの酸等による複分解やイオン交換樹脂層を通して得られるシリカゾルを加熱熟成して得られ、例えば日産化学工業(株)からスノーテックスとして市販されている。
【0037】
気相法シリカは、湿式法に対して乾式法とも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって作られる。具体的には四塩化ケイ素を水素及び酸素とともに燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化ケイ素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシラン等のシラン類も、単独または四塩化ケイ素と混合した状態で使用することができる。気相法シリカは日本アエロジル(株)からアエロジル、(株)トクヤマからQSタイプとして市販されている。
【0038】
本発明には、気相法シリカが好ましく使用できる。本発明に用いられる気相法シリカの平均一次粒子径は30nm以下が好ましく、より高い透視性を得るためには、15nm以下が好ましい。更に好ましくは平均一次粒子径が3〜15nm(特に3〜10nm)でかつBET法による比表面積が200m/g以上(好ましくは250〜500m/g)のものを用いることである。なお、本発明でいう平均一次粒子径とは、微粒子の電子顕微鏡観察により一定面積内に存在する100個の一次粒子各々の投影面積に等しい円の直径を粒子径として平均粒子径を求めたものであり、本発明でいうBET法とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、即ち比表面積を求める方法である。通常吸着気体としては、窒素ガスが多く用いられ吸着量を被吸着気体の圧、または容積の変化から測定する方法が最も多く用いられている。多分子吸着の等温線を表すのに最も著名なものは、Brunauer、Emmett、Tellerの式であってBET式と呼ばれ表面積決定に広く用いられている。BET式に基づいて吸着量を求め、吸着分子1個が表面で占める面積を掛けて表面積が得られる。
【0039】
気相法シリカは、カチオン性化合物の存在下で分散するのが好ましい。分散された気相法シリカの平均二次粒子径は500nm以下、好ましくは10〜300nm、更に好ましくは20〜200nmである。分散方法としては、通常のプロペラ撹拌、タービン型撹拌、ホモミキサー型撹拌等で気相法シリカと分散媒を予備混合し、次にボールミル、ビーズミル、サンドグラインダー等のメディアミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式分散機、超音波分散機、及び薄膜旋回型分散機等を使用して分散を行うことが好ましい。なお、本発明でいう平均二次粒子径とは、透過型電子顕微鏡による写真撮影で求めることができるが、簡易的にはレーザー散乱式の粒度分布計(例えば、堀場製作所製LA910)を用いて、個数メジアン径として測定することができる。
【0040】
本発明では、平均二次粒子径500nm以下に粉砕した湿式法シリカも好ましく使用できる。ここで用いられる湿式法シリカとしては沈降法シリカあるいはゲル法シリカが好ましく、特に沈降法シリカが好ましい。本発明に用いられる湿式法シリカ粒子としては、平均一次粒子径50nm以下、好ましくは3〜40nmであり、かつ平均凝集粒子径が5〜50μmである湿式法シリカ粒子が好ましく、これをカチオン性化合物の存在下で平均二次粒子径500nm以下、好ましくは10〜300nm程度まで、更に好ましくは20〜200nm程度まで微粉砕した湿式法シリカ微粒子を使用することが好ましい。
【0041】
本発明における平均二次粒子径が500nm以下の湿式法シリカ微粒子を得る具体的な方法について説明する。まず、水を主体とする分散媒中にシリカ粒子とカチオン性化合物を混合し、のこぎり歯状ブレード型分散機、プロペラ羽根型分散機、またはローターステーター型分散機等の分散装置の少なくとも1つを用いて予備分散液を得る。必要であれば水分散媒中に適度の低沸点溶剤等を添加してもよい。シリカ予備分散液の固形分濃度は高い方が好ましいが、あまり高濃度になると分散不可能となるため、好ましい範囲としては15〜40質量%、より好ましくは20〜35質量%である。次に、シリカ予備分散液をより強い剪断力を持つ機械的手段にかけてシリカ粒子を粉砕し、平均二次粒子径が500nm以下の湿式法シリカ微粒子分散液が得られる。機械的手段としては公知の方法が採用でき、例えば、ボールミル、ビーズミル、サンドグラインダー等のメディアミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式分散機、超音波分散機及び薄膜旋回型分散機等を使用することができる。
【0042】
上記気相法シリカ及び湿式法シリカの分散あるいは粉砕に使用するカチオン性化合物としては、カチオン性ポリマーを好ましく使用できる。カチオン性ポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン、ポリアリルアミン、アルキルアミン重合物、特開昭59−20696号、同昭59−33176号、同昭59−33177号、同昭59−155088号、同昭60−11389号、同昭60−49990号、同昭60−83882号、同昭60−109894号、同昭62−198493号、同昭63−49478号、同昭63−115780号、同昭63−280681号、同平1−40371号、同平6−234268号、同平7−125411号、同平10−193776号公報等に記載された1〜3級アミノ基、4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましく用いられる。特に、カチオン性ポリマーとしてジアリルアミン誘導体が好ましく用いられる。分散性及び分散液粘度の面で、これらのカチオン性ポリマーの質量平均分子量は2,000〜10万程度が好ましく、特に2,000〜3万程度が好ましい。
【0043】
本発明に使用するアルミナとしては、酸化アルミニウムのγ型結晶であるγ−アルミナが好ましく、中でもδグループ結晶が好ましい。γ−アルミナは一次粒子を10nm程度まで小さくすることが可能であるが、通常は数千から数万nmの二次粒子結晶を超音波や高圧ホモジナイザー、対向衝突型ジェット粉砕機等で平均二次粒子径を500nm以下、好ましくは20〜300nm程度まで粉砕したものが使用できる。
【0044】
本発明のアルミナ水和物はAl・nHO(n=1〜3)の構成式で表される。アルミナ水和物はアルミニウムイソプロポキシド等のアルミニウムアルコキシドの加水分解、アルミニウム塩のアルカリによる中和、アルミン酸塩の加水分解等の公知の製造方法により得られる。本発明に使用されるアルミナ水和物の平均二次粒子径は500nm以下、好ましくは20〜300nmである。
【0045】
発明に用いられる上記のアルミナ、及びアルミナ水和物は、酢酸、乳酸、ぎ酸、硝酸等の公知の分散剤によって分散された分散液の形態から使用される。
【0046】
上記した無機微粒子の中から2種以上の無機微粒子を併用することもできる。例えば、粉砕した湿式法シリカと気相法シリカとの併用、微粉砕した湿式法シリカとアルミナあるいはアルミナ水和物との併用、気相法シリカとアルミナあるいはアルミナ水和物との併用が挙げられる。この併用の場合の比率は、いずれの様態も、7:3〜3:7の範囲が好ましい。なお、本発明における多孔質層とは、上述した無機微粒子を全固形分が50質量%以上、より好ましくは70質量%以上含有する塗布液を塗布することで形成された層であることを意味する。
【0047】
本発明において、多孔質層を構成する無機微粒子とともに用いられる樹脂バインダーとしては、前述した光拡散微粒子を有する塗布液の樹脂バインダーと同様のものを使用することができるが、透明性が高い親水性バインダーが好ましく用いられる。例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、デキストラン、デキストリン、カラギーナン(κ、ι、λ等)、寒天、プルラン、水溶性ポリビニルブチラール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース等が挙げられる。これら親水性バインダーは2種類以上併用することも可能である。親水性バインダーの使用に当たっては、親水性バインダーがインクの初期の浸透時に膨潤して空隙を塞いでしまわないことが重要であり、この観点から比較的室温付近で膨潤性の低い親水性バインダーが好ましく用いられる。好ましい親水性バインダーは完全または部分ケン化のポリビニルアルコールや、カチオン変性ポリビニルアルコールである。
【0048】
多孔質層における樹脂バインダーの含有量は、前述した平均二次粒子径が500nm以下の無機微粒子に対して5〜40質量%の範囲が好ましく、特に10〜30質量%が微細な空隙を形成し多孔質な層を形成するために好ましい。
【0049】
多孔質層の乾燥塗布量は、平均二次粒子径が500nm以下の無機微粒子に換算して10〜50g/mの範囲が好ましく、12〜40g/mの範囲がより好ましく、特に15〜35g/mの範囲が好ましい。多孔質層には更に、カチオン性ポリマー、防腐剤、界面活性剤、着色染料、着色顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料の分散剤、消泡剤、レベリング剤、蛍光増白剤、粘度安定剤、pH調節剤等を添加することもできる。
【0050】
多孔質層は、2層以上から構成されていてもよく、この場合、それらの多孔質層の構成はお互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0051】
本発明において、多孔質層の塗布に用いられる塗布方式としては、公知の各種塗布方式を用いることができる。例えば、スライドビード方式、スライドカーテン方式、エクストルージョン方式、スロットダイ方式、グラビアロール方式、エアーナイフ方式、ブレードコーティング方式、ロッドバーコーティング方式等がある。
【0052】
本発明の光透過性支持体としては、後述する光透過性基材をそのまま使用してもよいし、あるいは光透過性基材上に粘着層、多孔質等を設けたものを光透過性支持体として使用してもよい。なお、このような粘着層は、一般に使用されるアクリル系、シリコーン系、ウレタン系、ゴム系等の合成樹脂系接着剤を用いることができる。なお、光透過性支持体のヘーズは30%以下であることが好ましい。
【0053】
本発明の光透過性基材としては、光透過性を有するものであれば特に限定されず、ガラスやプラスチックからなる板状のもの、フィルム状のもの等や、これらに前述した多孔質層等の光透過性を有する層を設けたものを使用することができる。ガラスの種類としては、特に限定されるものではないが、一般にはケイ酸塩ガラス、リン酸塩ガラス、ホウ酸塩ガラス等の酸化ガラスが実用的であり、特にケイ酸ガラス、ケイ酸アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、カリ石灰ガラス、鉛ガラス、バリウムガラス、ホウケイ酸ガラス等のケイ酸塩ガラスが好ましい。プラスチックとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアリレート、アクリル、アセチルセルロース、ポリ塩化ビニル等が使用でき、延伸加工、特に二軸延伸加工されたものは、機械的強度が向上されるので好ましい。なお、光透過性基材のヘーズは30%以下であることが好ましい。
【0054】
本発明の光透過性基材の厚みは、適用される材料に対して適宜選択することができるが、一般には、10μm〜30mm、好ましくは20μm〜20mm程度である。
【0055】
また、光透過性基材の光拡散微粒子を配置した面や反対の面、及び両面に粘着層等を設け、他の光透過性を有する基材に貼着して使用する場合、光透過性基材の厚みは、10〜200μmが好ましく、20〜130μmが更に好ましい。光透過型支持体をこのような厚みとすることにより、貼付し易く薄くて軽い携帯に便利な透過型スクリーンとすることができる。
【0056】
また、光透過性支持体が有する光透過性基材の表面には、光拡散微粒子と光透過性支持体との接着性を向上させる目的で易接着処理を施してもよく、また別途易接着層を設けてもよい。
【0057】
本発明の透視可能な透過型スクリーンは、少なくとも一方の面に、層界面による光の干渉作用を利用して反射光を打ち消しあう性能を有する公知の反射防止層を有してもよい。これによりプロジェクターから投射された映像を鮮明に視認させることができる。反射防止層としては、例えば、酸化ケイ素やフッ化リチウム等の透明性の高い低屈折率層を主波長の1/4となる光学薄膜となるように設けた単層のものや、このような低屈折率層に酸化チタンや酸化亜鉛等の高屈折率層を適宜積層したもの等を用いることができる。
【0058】
更に、本発明の透視可能な透過型スクリーンは、光拡散微粒子配置面と反対の最表面に、スクリーンの強度を上げるための公知のハードコート層、拡散防止層や帯電防止層を設けることも可能である。
【0059】
本発明の透視可能な透過型スクリーンは、プロジェクターの映像を光拡散微粒子配置側もしくはその反対側の双方どちらから投影して使用することも可能である。また一般的に透過型スクリーンの場合、スクリーンの垂線平行に光を照射した場合、ホットスポットという、所謂プロジェクターレンズからの直接光が視認者に見えてしまう現象が避けられないため、スクリーンの垂線に対してある程度の角度を持たせて使用することが好ましい。
【0060】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。なお、部とは固形分あるいは実質成分の質量部を表す。
【実施例】
【0061】
(実施例1)
厚さ100μmの透明ポリエチレンテレフタレートフィルム(ヘーズ値4%)の片面に、下記組成の多孔質層塗布液1を、スライドビード塗布装置を用いて塗布し、35℃及び50℃の熱風を順次吹き付けて乾燥し、多孔質層を有する光透過性支持体を得た。なお、作製した光透過性支持体のヘーズは10%であった。多孔質層塗布液1の塗布量は、シリカ固形分換算で21g/mであった。乾燥終了後、水銀ポロシメーター(測定器名称 Autopore II 9220 製造者 micromeritics instrument corporation)を用いて空隙容量を測定したところ、25ml/mであった。更に下記組成の光拡散微粒子塗布液1を、斜線グラビアロールを用いた前計量タイプ塗布方式にて塗布を行い、50℃の熱風を吹き付けて乾燥した。ここで用いた斜線グラビアロールは、直径60mm、斜線角度45度、線数90線/インチ、溝深さ110μmのグラビアロールであり、リバース回転で用いた。光拡散微粒子塗布液1の湿分塗布量は、斜線グラビアロールの回転数を調整し20ml/mに設定した。湿分塗布量は塗布中における単位時間当たりの塗布液減少量から求めた。光拡散微粒子塗布液1を多孔質層の上に塗布したところ多孔質層の空隙に塗布液中の溶媒である水が瞬時に吸収され、均一な塗布面が得られた。その後、もう一方の面に下記粘着層塗布液を固形分塗布量が10g/mになるよう塗布・乾燥して粘着層を設け、この粘着層を厚み5mmのフロートガラスと貼り合わせて、実施例1の透過型スクリーンを作製した。なお、本透過型スクリーンの光拡散微粒子の投影面積は27%であった。
【0062】
<シリカ分散液1の作製>
水にジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー(分子量9,000)4部と気相法シリカ(平均一次粒子径7nm、比表面積300m/g)100部を添加し予備分散液を作製した後、高圧ホモジナイザーで処理して、固形分濃度20%のシリカ分散液を製造した。平均二次粒子径は、堀場製作所製LA910を用いて測定すると130nmであった。
【0063】
<多孔質層塗布液1>
シリカ分散液1 (シリカ固形分として)100部
ポリビニルアルコール 23部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
ホウ酸 4部
ノニオン性界面活性剤 0.3部
(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)
全体の固形分濃度が12.85%になるように水で調整した。
【0064】
<光拡散微粒子層塗布液1>
ゼラチン 200部
光拡散微粒子 100部
(SSX−101:積水化成品工業(株)製、架橋ポリメタクリル酸メチル、平均粒子径1.6μm、屈折率1.49)
ノニオン性界面活性剤 0.6部
(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)
ゼラチンの固形分濃度が5.0%になるように水で調整した。
【0065】
<粘着層塗布液>
アクリル系接着剤 100部
イソシアネート硬化剤 2.5部
全体の固形分濃度が50%になるように酢酸エチルで調整した。
【0066】
(実施例2)
実施例1の光拡散微粒子の添加量を80部にした以外は実施例1と同様にして実施例2の透過型スクリーンを作製した。なお、本透過型スクリーンの光拡散微粒子の投影面積は22%であった。
【0067】
(実施例3)
実施例1の光拡散微粒子の添加量を60部にした以外は実施例1と同様にして実施例3の透過型スクリーンを作製した。なお、本透過型スクリーンの光拡散微粒子の投影面積は17%であった。
【0068】
(実施例4)
実施例1の光拡散微粒子の添加量を40部にした以外は実施例1と同様にして実施例4の透過型スクリーンを作製した。なお、本透過型スクリーンの光拡散微粒子の投影面積は10%であった。
【0069】
(実施例5)
実施例1で用いた透明ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、下記組成の多孔質層塗布液2を、スライドビード塗布装置を用いて塗布し、35℃及び50℃の熱風を順次吹き付けて乾燥し、多孔質層を有する光透過性支持体を得た。なお、作製した光透過性支持体のヘーズは18%であった。多孔質層塗布液2の塗布量は、シリカ固形分換算で20g/mであった。乾燥終了後、水銀ポロシメーター(測定器名称 Autopore II 9220 製造者 micromeritics instrument corporation)を用いて空隙容量を測定したところ、25ml/mであった。その後の工程は実施例4と同様にして、実施例5の透過型スクリーンを作製した。なお、本透過型スクリーンの光拡散微粒子の投影面積は10%であった。
【0070】
<シリカ分散液2の作製>
水にジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー(分子量9,000)4部と気相法シリカ(平均一次粒子径7nm、比表面積300m/g)100部を添加し予備分散液を作製した後、シリカ分散液1の作製時の条件を変更して高圧ホモジナイザーで処理し、固形分濃度20%のシリカ分散液を製造した。平均二次粒子径は、堀場製作所製LA910を用いて測定すると250nmであった。
【0071】
<多孔質層塗布液2>
シリカ分散液2 (シリカ固形分として)100部
ポリビニルアルコール 23部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
ホウ酸 4部
ノニオン性界面活性剤 0.3部
(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)
全体の固形分濃度が12.85%になるように水で調整した。
【0072】
(実施例6)
実施例1で用いた透明ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、多孔質層塗布液1を、スライドビード塗布装置を用いて塗布し、35℃及び50℃の熱風を順次吹き付けて乾燥し、多孔質層を有する光透過性支持体を得た。なお、作製した光透過性支持体のヘーズは6%であった。多孔質層塗布液1の塗布量は、シリカ固形分換算で6g/mであった。乾燥終了後、水銀ポロシメーター(測定器名称 Autopore II 9220 製造者 micromeritics instrument corporation)を用いて空隙容量を測定したところ、8ml/mであった。更に実施例1と同様の光拡散微粒子塗布液を、湿分塗布量が7ml/mになるよう斜線グラビアロールを用いた前計量タイプ塗布方式にて塗布を行い、50℃の熱風を吹き付けて乾燥した。光拡散微粒子塗布液を多孔質層の上に塗布したところ多孔質層の空隙に塗布液中の溶媒である水が瞬時に吸収され、均一な塗布面が得られた。その後の工程は実施例1と同様にして、実施例6の透過型スクリーンを作製した。なお、本透過型スクリーンの光拡散微粒子の投影面積は9%であった。
【0073】
(実施例7)
実施例1の光拡散微粒子塗布液1を、下記の光拡散微粒子塗布液2に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例7の透過型スクリーンを作製した。なお、本透過型スクリーンの光拡散微粒子の投影面積は10%であった。
【0074】
<光拡散微粒子層塗布液2>
ゼラチン 200部
光拡散微粒子 200部
(SSX−104:積水化成品工業(株)製、架橋ポリメタクリル酸メチル、平均粒子径4.0μm、屈折率1.49)
ノニオン性界面活性剤 0.6部
(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)
ゼラチンの固形分濃度が5.0%になるように水で調整した。
【0075】
(実施例8)
実施例1の光拡散微粒子塗布液1を、下記の光拡散微粒子塗布液3に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例8の透過型スクリーンを作製した。なお、本透過型スクリーンの光拡散微粒子の投影面積は77%であった。
【0076】
<光拡散微粒子層塗布液3>
ゼラチン 200部
光拡散微粒子 500部
(アクリル樹脂微粒子、平均粒子径0.1μm、屈折率1.49)
ノニオン性界面活性剤 0.6部
(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)
ゼラチンの固形分濃度が5.0%になるように水で調整した。
【0077】
(実施例9)
実施例1の光拡散微粒子塗布液1を、下記の光拡散微粒子塗布液4に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例9の透過型スクリーンを作製した。なお、本透過型スクリーンの光拡散微粒子の投影面積は60%であった。
【0078】
<光拡散微粒子層塗布液4>
ゼラチン 200部
光拡散微粒子 300部
(グロスデール204S:三井化学(株)製、アクリル樹脂微粒子、平均粒子径0.2μm、屈折率1.49)
ノニオン性界面活性剤 0.6部
(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)
ゼラチンの固形分濃度が5.0%になるように水で調整した。
【0079】
(実施例10)
実施例1の光拡散微粒子塗布液1を、下記の光拡散微粒子塗布液5に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例10の透過型スクリーンを作製した。なお、本透過型スクリーンの光拡散微粒子の投影面積は15%であった。
【0080】
<光拡散微粒子層塗布液5>
ゼラチン 200部
光拡散微粒子 40部
(グロスデール207S:三井化学(株)製、アクリル樹脂微粒子、平均粒子径0.6μm、屈折率1.49)
ノニオン性界面活性剤 0.6部
(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)
ゼラチンの固形分濃度が5.0%になるように水で調整した。
【0081】
(実施例11)
実施例1の光拡散微粒子塗布液1を、下記の光拡散微粒子塗布液6に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例11の透過型スクリーンを作製した。なお、本透過型スクリーンの光拡散微粒子の投影面積は6%であった。
【0082】
<光拡散微粒子層塗布液6>
ゼラチン 200部
光拡散微粒子 30部
(グロスデール110M:三井化学(株)製、アクリル樹脂微粒子、平均粒子径1.0μm、屈折率1.49)
ノニオン性界面活性剤 0.6部
(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)
ゼラチンの固形分濃度が5.0%になるように水で調整した。
【0083】
(実施例12)
実施例1の光拡散微粒子塗布液1を、下記の光拡散微粒子塗布液7に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例12の透過型スクリーンを作製した。なお、本透過型スクリーンの光拡散微粒子の投影面積は12%であった。
【0084】
<光拡散微粒子層塗布液7>
ゼラチン 200部
光拡散微粒子 35部
(オプトビーズ500S:日産化学工業(株)製、シリカ、メラミン樹脂複合微粒子(メラミン樹脂主体)、平均粒子径0.5μm、屈折率1.65)
ノニオン性界面活性剤 0.6部
(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)
ゼラチンの固形分濃度が5.0%になるように水で調整した。
【0085】
(実施例13)
実施例1の光拡散微粒子塗布液1を、下記の光拡散微粒子塗布液8に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例13の透過型スクリーンを作製した。なお、本透過型スクリーンの光拡散微粒子の投影面積は9%であった。
【0086】
<光拡散微粒子層塗布液8>
ゼラチン 200部
光拡散微粒子 45部
(オプトビーズ2000M:日産化学工業(株)製、シリカ、メラミン樹脂複合微粒子(メラミン樹脂主体)、平均粒子径2.0μm、屈折率1.65)
ノニオン性界面活性剤 0.6部
(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)
ゼラチンの固形分濃度が5.0%になるように水で調整した。
【0087】
(実施例14)
実施例1の光拡散微粒子塗布液1を、下記の光拡散微粒子塗布液9に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例14の透過型スクリーンを作製した。なお、本透過型スクリーンの光拡散微粒子の投影面積は7%であった。
【0088】
<光拡散微粒子層塗布液9>
ゼラチン 200部
光拡散微粒子 200部
(オプトビーズ3500M:日産化学工業(株)製、シリカ、メラミン樹脂複合微粒子(メラミン樹脂主体)、平均粒子径3.5μm、屈折率1.65)
ノニオン性界面活性剤 0.6部
(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)
ゼラチンの固形分濃度が5.0%になるように水で調整した。
【0089】
(比較例1)
実施例1で用いた透明ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、多孔質層は塗設せず、直接、実施例1で用いた光拡散微粒子塗布液を、湿分塗布量が20g/mになるようバーコーター塗布装置を用いて塗布し、50℃の熱風を吹き付けて乾燥した以外は、実施例1と同様にして比較例1の透過型スクリーンを作製した。
【0090】
(比較例2)
実施例1で用いた透明ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、多孔質層は塗設せず、直接、実施例2で用いた光拡散微粒子塗布液を、湿分塗布量が20g/mになるようバーコーター塗布装置を用いて塗布し、50℃の熱風を吹き付けて乾燥した以外は、実施例2と同様にして比較例2の透過型スクリーンを作製した。
【0091】
(比較例3)
実施例1で用いた透明ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、多孔質層は塗設せず、直接、実施例3で用いた光拡散微粒子塗布液を、湿分塗布量が20g/mになるようバーコーター塗布装置を用いて塗布し、50℃の熱風を吹き付けて乾燥した以外は、実施例3と同様にして比較例3の透過型スクリーンを作製した。
【0092】
(比較例4)
実施例1で用いた透明ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、多孔質層は塗設せず、直接、実施例4で用いた光拡散微粒子塗布液を、湿分塗布量が20g/mになるようバーコーター塗布装置を用いて塗布し、50℃の熱風を吹き付けて乾燥した以外は、実施例4と同様にして比較例4の透過型スクリーンを作製した。
【0093】
(比較例5)
実施例1で用いた透明ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、実施例4の多孔質層塗布液1と光拡散微粒子塗布液を、それぞれ実施例1と同様の湿分塗布量になるよう、スライドビード塗布装置を用いて同時重層塗布し、35℃及び50℃の熱風を順次吹き付けて乾燥した以外は、実施例4と同様にして比較例5の透過型スクリーンを作製した。
【0094】
(比較例6)
実施例1で用いた透明ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、下記組成の多孔質層塗布液3を、スライドビード塗布装置を用いて単層塗布し、35℃及び50℃の熱風を順次吹き付けて乾燥し、多孔質層を有する光透過性支持体を得た。なお、作製した支持体のヘーズは52%であった。多孔質層塗布液3の塗布量は、シリカ固形分換算で20g/mであった。乾燥終了後、水銀ポロシメーター(測定器名称 Autopore II 9220 製造者 micromeritics instrument corporation)を用いて空隙容量を測定したところ、25ml/mであった。その後の工程は実施例4と同様にして、比較例6の透過型スクリーンを作製した。なお、本透過型スクリーンの光拡散微粒子の投影面積は10%であった。
【0095】
<シリカ分散液3の作製>
水にジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー(分子量9,000)4部と気相法シリカ(平均一次粒子径7nm、比表面積300m/g)100部を添加し予備分散液を作製した後、シリカ分散液1の作製時の条件を変更して高圧ホモジナイザーで処理し、固形分濃度20%のシリカ分散液を製造した。平均二次粒子径は、堀場製作所製LA910を用いて測定すると750nmであった。
【0096】
<多孔質層塗布液3>
シリカ分散液3 (シリカ固形分として)100部
ポリビニルアルコール 23部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
ホウ酸 4部
ノニオン性界面活性剤 0.3部
(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)
全体の固形分濃度が12.85%になるように水で調整した。
【0097】
(比較例7)
実施例6で用いた光透過性支持体の多孔質層上に、実施例1と同様の光拡散微粒子塗布液を、湿分塗布量が20ml/mになるよう斜線グラビアロールを用いた前計量タイプ塗布方式にて塗布を行い、50℃の熱風を吹き付けて乾燥した。この際、多孔質層上で光拡散微粒子塗布液中の溶媒はあふれた状態になり、更に多孔質層より発生した気泡により以後の評価に使用できる良好な面が得られなかった。
【0098】
(比較例8)
実施例1の多孔質層のみ塗設し、光拡散微粒子塗布液を塗設しなかった以外は実施例1と同様にして、比較例8の透過型スクリーンを作製した。
【0099】
(比較例9)
実施例1の光拡散微粒子塗布液の塗布方式を、前計量タイプ塗布方式ではないファウンテン−エアーナイフ方式で塗布した。実施例1と同様の湿分塗布量20g/mを目指して条件を調整したが、多孔質層に瞬時に溶媒が吸収され目標の塗布量が得られず、更に多孔質層より発生した気泡により以後の評価に使用できる良好な面が得られなかった。
【0100】
(比較例10)
実施例6で用いた光透過性支持体の多孔質層上に、実施例1と同様の光拡散微粒子塗布液を、湿分塗布量が10ml/mになるよう斜線グラビアロールを用いた前計量タイプ塗布方式にて塗布を行い、50℃の熱風を吹き付けて乾燥した。この際、多孔質層上で光拡散微粒子塗布液中の溶媒はあふれた状態になり、更に多孔質層より発生した気泡により以後の評価に使用できる良好な面が得られなかった。
【0101】
得られた実施例1〜14、比較例1〜6及び8の透過型スクリーンに関し、透視性とプロジェクター投影時の映像の視認性を以下の基準で評価した。これらの結果を表1に示す。
【0102】
<透視性>
透視性に関してはスガ試験機製のHazeComputerHZ−2を用いてヘーズを測定して評価した。
【0103】
<プロジェクター投影時の映像の視認性>
プロジェクター投影時の映像の視認性は、デジタルプロジェクター(MP515ST、BenQ製)で実際に映像を透過型スクリーンに投影し、プロジェクターとは反対面よりスクリーンに投影された映像の視認性を以下の評価基準により目視評価した。なお、プロジェクターはスクリーンの垂線に対して約30度の角度を持たせて照射し、評価者はスクリーンと平行位置で映像を目視評価した。
◎◎:映像の輝度が下記◎レベルより明らかに高く視認性が非常に良好
◎:映像の輝度が著しく高く視認性が非常に良好
○:映像の輝度が高く視認性が良好
×:映像の輝度が低く視認性が悪い
【0104】
【表1】

【0105】
得られた実施例1〜14及び比較例1〜6の透過型スクリーンに関し、光拡散微粒子の電子顕微鏡観察を行ったところ、実施例1〜14及び比較例6は光拡散微粒子が2次元配置されていたが、比較例1〜5は光拡散微粒子の一部が重なり3次元配置層であった。
【0106】
表1の結果から、本発明の透視可能な透過型スクリーン及びその製造方法により、高い透視性とプロジェクター投影時の映像の視認性の双方を満足する透視可能な透過型スクリーンの得られることが判る。
【符号の説明】
【0107】
1 透視可能な透過型スクリーン
2 光拡散微粒子
3 多孔質層
4 光透過性支持体
5 光透過性基材
6 粘着層
7 従来の光拡散層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性支持体の少なくとも一方の面に、光拡散微粒子が2次元配置された透視可能な透過型スクリーン。
【請求項2】
該光透過性支持体が、光透過性基材の少なくとも一方の面に、平均二次粒子径が500nm以下の無機微粒子と樹脂バインダーを含有する多孔質層を有する支持体である請求項1に記載の透視可能な透過型スクリーン。
【請求項3】
該光拡散微粒子の平均粒子径が0.15〜2.75μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の透視可能な透過型スクリーン。
【請求項4】
該光拡散微粒子の平均粒子径が0.35〜0.80μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透視可能な透過型スクリーン。
【請求項5】
光透過性基材の少なくとも一方の面に、平均二次粒子径が500nm以下の無機微粒子と樹脂バインダーを含有する多孔質層塗布液を塗布し、乾燥過程中の減率乾燥領域以後、もしくは乾燥終了後に、光拡散微粒子を含有する塗布液を、多孔質層の空隙容量以下で前計量タイプの塗布方式にて塗布し、乾燥することを特徴とする透視可能な透過型スクリーンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−212092(P2012−212092A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159647(P2011−159647)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】