説明

透過光量測定装置及び相対吸光度測定装置、並びにこれらの測定方法

【課題】少ない被測定試料であっても感度が良く測定を行なうことができる小型な透過量測定装置及び相対吸光度測定装置、並びにこれらの測定方法を提供することである。
【解決手段】発色処理された被測定試料を収容するとともに、透光性素材で構成された測定用セル10と、該測定用セル10に収容された被測定試料に単色光を照射させる発光部12と、該発光部12から前記被測定試料に照射された単色光のうち、前記測定用セル10に収容された被測定試料を透過した透過光を受光し、受光した透過光の光量を測定する受光部14と、前記受講部14によって測定された被測定試料の光量と基準試料の光量から相対吸光度を計算する相対吸光度計算部18と、を備えたことを特徴とする相対吸光度測定装置において、前記測定用セル10には、前記発光部12から照射された単色光を乱反射させる乱反射媒体26が収容されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微量な化学物質の透過光量を測定する透過光量測定装置、及びその相対吸光度を測定する相対吸光度測定装置、並びにこれらの測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化学物質による環境汚染問題の深刻化に伴い、大気中、水中あるいは土壌中の微量な化学物質を定性又は定量することが必要とされる機会が多くなっている。このような微量な化学物質の定性や定量は、発色処理された被測定試料について基準色に対する相対吸光度を測定することによって行なうことができる。
【0003】
化学物質の相対吸光度を測定する方法として、反射法と透過法があり、反射性の高い試料の場合、反射法が用いられ、透過性の高い試料の場合、透過法が用いられる(特許文献1)。透過法は、一般に透明な測定用セルに収容された被測定試料に単色光を照射し、照射された単色光のうち、測定用セルに収容された被測定試料を透過した透過光を受光し、受光した透過光の光量を測定し、測定した被測定試料と基準試料の透過光の光量から相対吸光度を計算することによって行なわれている。そして、この透過法は、測定用セルの透過方向の長さを長くすることによって、その感度を向上させている。
【0004】
【特許文献1】特開平6−160280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、測定用セルの透過方向の長さを長くすると、測定装置が大型化するだけでなく、それに必要な被測定試料の量が増加し、このため微量な化学物質の定性又は定量を行なうのが困難であるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、少ない被測定試料であっても感度が良く測定を行なうことができる小型な透過量測定装置及び相対吸光度測定装置、並びにこれらの測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の目的を達成するため、本発明は、被測定試料を収容する透光性素材で構成された測定用セルと、該測定用セルに収容された被測定試料に単色光を照射させる発光部と、該発光部から前記被測定試料に照射された単色光のうち、前記測定用セルに収容された被測定試料を透過する透過光を受光し、受光した透過光の光量を測定する受光部と、を備えた透過光量測定装置において、前記測定用セルには、前記発光部から照射された単色光を乱反射させる乱反射媒体が収容されていることを特徴とするものである。
【0008】
以上のように、本発明に係る透過光量測定装置によれば、照射された単色光を乱反射させる乱反射媒体が収容されているので、照射された単色光は、乱反射しながら透過する。このため、測定用セルの透過方向の長さを長くしなくても、照射光の透過距離を十分に保つことができ、その感度を向上させることができる。
【0009】
また、本発明は、被測定試料を収容する透光性素材で構成された測定用セルと、該測定用セルに収容された被測定試料に向けて複色光を発光させる発光部と、該発光部から発光された複色光のうち、一の単色光のみを選択して前記測定用セルに照射するとともに、その選択する単色光を変更することが可能な単色光選択部と、該単色光選択部によって選択された単色光のうち、前記測定用セルに収容された被測定試料を透過する透過光を受光し、受光した透過光の光量を測定する受光部と、を備えた透過光量測定装置であって、前記測定用セルには、前記発光部から照射された単色光を乱反射させる乱反射媒体が収容されていることを特徴とし、さらに、本発明は、被測定試料を収容する透光性素材で構成された測定用セルと、該測定用セルに収容された被測定試料に複色光を照射させる発光部と、該発光部から前記被測定試料に照射され透過される複色の透過光のうち、一の単色光のみを選択するとともに、その選択される単色の透過光を変更することが可能な単色光選択部と、該単色光選択部によって選択され透過された単色の透過光を受光し、受光した透過光の光量を測定する受光部と、を備えた透過光量測定装置であって、前記測定用セルには、前記発光部から照射された単色光を乱反射させる乱反射媒体が収容されていることを特徴とし、またさらに、本発明は、被測定試料を収容する透光性素材で構成された測定用セルと、互いに異なる単色光を発光させる二以上の発光部と、該二以上の発光部から発光された二以上の単色光のうち、一の単色光のみを選択して前記測定用セルに照射するとともに、その選択する単色光を変更することが可能な単色光選択部と、該単色光選択部によって選択された単色光のうち、前記測定用セルに収容された被測定試料を透過する透過光を受光し、受光した透過光の光量を測定する受光部と、を備えた透過光量測定装置であって、前記測定用セルには、前記発光部から照射された単色光を乱反射させる乱反射媒体が収容されていることを特徴とする。
【0010】
以上のように、本発明に係る透過光量測定装置によれば、複色光のうち、一の単色光のみを被測定試料に照射させるとともに、その単色光を変更することができるので、被測定試料中に混在する少なくとも二以上の発色物質の透過光量を測定することができる。
【0011】
さらに、上記目的を達成するため、本発明は、上記いずれかの透過光量測定装置と、前記透過光量測定装置によって測定された被測定試料の光量と基準試料の光量から相対吸光度を計算する相対吸光度計算部と、を備え、前記測定用セルには、発色処理された被測定試料が収容されていることを特徴とする相対吸光度測定装置である。
【0012】
本発明に係る相対吸光度測定装置において、前記複色光又は二以上の単色光を発光する透過光量測定装置を備えた場合、被測定試料中に混在する少なくとも二以上の発色物質の透過光量を測定することができるので、被測定試料の吸収色以外の単色光を基準光とすることにより、基準光と測定光の測定を連続して行なうことができる。
【0013】
さらに、本発明は、透光性素材で構成された測定用セルに収容された被測定試料に単色光を照射し、照射された単色光のうち、前記測定用セルに収容された被測定試料を透過した透過光を受光し、受光した透過光の光量を測定する透過光量測定方法において、前記測定用セルに前記発光部から照射された単色光を乱反射させる乱反射媒体を収容した状態で、前記単色光を前記被測定試料に照射することを特徴とするものであり、この場合、前記被測定試料に照射される単色光は、発光される複色光から選択された単色光であっても良い。また、本発明は、透光性素材で構成された測定用セルに収容された被測定試料に複色光を照射し、前記測定用セルに収容された被測定試料を透過した複色の透過光のうち一の単色光を選択して受光し、受光した単色の透過光の光量を測定する透過光量測定方法において、前記測定用セルに前記発光部から照射された複色光を乱反射させる乱反射媒体を収容した状態で、前記複色光を前記被測定試料に照射することを特徴とする。これら複色光から単色光を選択する場合、前記複色光から選択される単色光は、変更可能であることが好ましい。
【0014】
またさらに、本発明は、発色処理され、透光性素材で構成された測定用セルに収容された被測定試料に単色光を照射し、照射された単色光のうち、前記測定用セルに収容された被測定試料を透過した透過光を受光し、受光した透過光の光量を測定し、測定した被測定試料と基準試料の透過光の光量から相対吸光度を計算する相対吸光度測定方法において、前記測定用セルに前記発光部から照射された単色光を乱反射させる乱反射媒体を収容した状態で、前記単色光を前記被測定試料に照射することを特徴とし、この場合、前記被測定試料に照射される単色光は、発光される複色光から選択された単色光であっても良い。また、本発明は、発色処理され、透光性素材で構成された測定用セルに収容された被測定試料に複色光を照射し、前記測定用セルに収容された被測定試料を透過した複色の透過光のうち一の単色光を選択して受光し、受光した透過光の光量を測定し、測定した被測定試料と基準試料の透過光の光量から相対吸光度を計算する相対吸光度測定方法において、前記測定用セルに前記発光部から照射された複色光を乱反射させる乱反射媒体を収容した状態で、前記複色光を前記被測定試料に照射することを特徴とする。これら複色光から単色光を選択する場合、前記複色光から選択される単色光は、変更可能であることが好ましく、この場合、前記被測定試料の透過光の光量の測定において選択される単色光と異なる単色光を用いて測定される前記被測定試料の透過光の光量を前記基準試料の透過光の光量として用いることが好ましい。
【0015】
本発明に係る透過光量測定装置及び相対吸光度測定装置、並びにこれらの測定方法において、前記乱反射媒体は、微小粒子又は繊維状物質であることが好ましく、測定用セルに収容されて固定されていることが好ましい。微小粒子としては、例えばポリメチルメタクリル酸、ガラス、アクリル等からなる固定化用ビーズ、アルギン酸カルシウム粒子等の微細粒子などを用いることができるが、特にこれらに限定されるものではなく、種々の形状、材質のものを使用することができる。繊維状物質としては、例えば微細な網目構造を有するものがあり、その材質としては、例えば綿、絹、麻等の天然素材、ポリエステル、芳香族ポリアミド、ナイロン、ポリオレフィンなどの合成ないし半合成素材、あるいはこれらの混合体、例えばポリエステルおよびポリオレフィンの混合体などが挙げられるが、特にこれらに限定されものではない。繊維状物質としては、織物、編物、不織布等の布が測定用セルへの収容操作が容易なため好ましいが、ファイバないしフィラメントを一定容積内に収容したものないし単に絡合させたものであっても良い。
【0016】
また、本発明に係る透過光量測定装置及び相対吸光度測定装置において、前記発光部と受光部の間に設けられ、照射光の照射方向に貫通するとともに、内面が乱反射媒体によって反射された光を反射するように構成されている反射筒をさらに備えていることが好ましい。このように反射筒を備えることにより、乱反射媒体によって反射された光を収束させることができ、感度をより向上させることができる。
【0017】
さらに、本発明に係る透過光量測定装置及び相対吸光度測定装置、並びにこれらの測定方法において、発色処理は、被測定試料を測定用セルに収容する前に行なっても良く、乱反射媒体に影響を与えないのであれば、収容された後に行なっても良い。発色処理は、例えばメチルレッド、DPD、ナフチルエチレンジアミン、ジチゾンなどを被測定試料に滴下することによって行なうことができる。また、抗原抗体反応において未反応の抗体を擬似抗原の固定処理が施された乱反射媒体に吸着させることによって発色処理を行なっても良い。
【発明の効果】
【0018】
以上のように本発明によれば、少ない被測定試料であっても感度が良く測定を行なうことができる小型な透過量測定装置及び相対吸光度測定装置、並びにこれらの測定方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明に係る透過光量測定装置が含まれた相対吸光度測定装置の第1実施例について、図面に基づいて説明する。図1は、第1実施例に係る相対吸光度測定装置の概念図である。第1実施例に係る相対吸光度測定装置は、被測定試料を収容する測定用セル10と、測定用セル10に収容された被測定試料に単色光を照射させる発光部12と、発光部12から被測定試料に照射された単色光のうち、測定用セル10に収容された被測定試料を透過した透過光を受光し、受光した透過光の光量を測定する受光部14と、受光部14によって測定された透過光の光量から相対吸光度を計算する相対吸光度計算部18と、測定用セル10を発光部12と受光部14の間に固定するセルホルダ20と、発光部12、受光部14及びセルホルダ20を遮光状態で収容するハウジング22と、を備えている。
【0020】
測定用セル10は、上方が開口され、透明な素材で構成されている。本実施例においては、測定用セル10として容積10μlのポリスチレン製の円筒状の容器を用いる。測定用セル10の開口には、蓋部材24が着脱可能に装着されている。また、測定用セル10には、発光部12から照射させる照射光を乱反射させる乱反射媒体26が収容されて固定されている。本実施例においては、乱反射媒体26として綿状のポリプロピレン(通気性92cc/cm・sec)1mgを用いる。
【0021】
発光部12は、中心波長530nmの緑色LED28と、緑色LED28から発された光を並行光として、セルホルダ20に固定された測定用セル10内の被測定試料に照射させる光学レンズ30と、を備えている。また、発光部12は、緑色LED28を制御する制御部32に接続され、この制御部32は、ハウジング22の外に設けられている。
【0022】
受光部14は、ハウジング22の外に設けられた相対吸光度計算部18に接続されている。
【0023】
第1実施例に係る相対吸光度測定装置は、以下のような手順により相対吸光度を測定することができる。先ず、被測定試料にメチルレッドなどの試薬を添加することによって発色させ、発色させた被測定試料を測定用セル10に注入する。なお、被測定試料の発色反応は、乱反射媒体26に影響を与えない場合は、測定用セル10内で行なっても良い。次に、測定用セル10をセルホルダ20に固定し、受光部12から測定用セル10内の被測定用セルに光を照射して、受光部14は、透過光を受光して、その透過光の光量を測定する。受光部14によって測定された光量は、相対吸光度計算部18に記憶される。次に、測定用セル10をセルホルダ20から取り外して、被測定試料を捨てて、セル内を洗浄した後、基準液を注入する。その後、同様に透過光の光量を測定して、相対吸光度計算部18に基準液の光量を記憶させる。次いで、相対吸光度計算部18は、記憶された被測定試料と基準液の光量の比から被測定試料の相対吸光度を計算する。なお、相対吸光度計算部18には、予め基準液の光量を記憶させておいても良く、このように予め記憶されている基準液の光量を利用することによって、測定光の光量を測定するだけで相対吸光度を計算することができる。
【0024】
次に、本発明に係る相対吸光度測定装置の第2実施例について図2に基づいて説明する。第2実施例に係る相対吸光度測定装置は、第1実施例と異なり、発光部12と受光部14の間に反射筒34を備えている。反射筒34は、発光部12から受光部14の光路を包むように筒状に構成されており、測定用セル10の蓋部材24が反射筒34の一部を形成している。また、反射筒34は、乱反射媒体26によって反射された光を反射するように内面が鏡面状に構成されている。したがって、乱反射媒体26によって反射された光を収束させることができ、感度をより向上させることができる。
【0025】
次に、本発明に係る相対吸光度測定装置の第3実施例について図3に基づいて説明する。第3実施例に係る相対吸光度測定装置は、第1実施例と異なり、発光部12から単色光でなく、複色光を発光するように構成されており、この発色光12とセルホルダ20の間には、異なる種類の複数の光学フィルタ36A、36B・・・を保持する光学フィルタホルダ37が設けられている。この光学フィルタホルダ37は、円盤状に形成されており、光学フィルタ制御部(図示省略)によってその中心部を中心に回転可能に構成されている。複数の光学フィルタ36A、36B・・・は、光学フィルタホルダ37の周方向に等間隔を置いて配置されている。これら光学フィルタ36は、それぞれ発光部12から発光される複色光のうち、いずれか一つの単色光のみを透過させるよう構成されており、透過させる単色光は、それぞれ波長が異なるように選択されている。
【0026】
第3実施例に係る相対吸光度測定装置は、光学フィルタホルダ37を回転させて、発光部12と測定用セル10の間にいずれかの光学フィルタ36A、36B・・・を位置させると、これら光学フィルタ36A、36B・・・を透過する単色光のみを測定用セル10に照射することができる。これにより、例えば一の光学フィルタ36Aを透過した単色光による光量を基準光とし、他の光学フィルタ36Bを透過させた単色光による光量を測定光とすることによって、基準液などを用いなくても、被測定用試料の吸光度を測定することができる。なお、第3実施例においては、光学フィルタホルダ37を発光部12と測定用セル10間に設けたが、測定用セル10と受光部14の間に設けても良い。
【0027】
次に、本発明に係る相対吸光度測定装置の第4実施例について図4に基づいて説明する。第4実施例に係る相対吸光度測定装置は、第1実施例と異なり、発光部及び発光制御部を一組でなく二組、すなわち第1及び第2発光部12A、12B及びそれぞれの発光を制御する第1及び第2発光制御部32A、32Bを備えている。第1及び第2発光部12A、12Bは、それぞれ異なる波長の単色光を発光するよう構成されている。これら第1及び第2発光部12A、12Bは、互いに照射方向を対向させ、それら照射方向と垂直方向に測定用セル10が位置するように配置されている。また、これら第1及び第2発光部12A、12Bの間には、両面に単色光を反射させることが可能な鏡面を有する反射鏡38が設けられている。この反射鏡38は、反射鏡制御部(図示省略)によってその向きを変更することができ、反射鏡38の向きを変更することによって、第1発光部12Aから発光された単色光を測定用セル10に照射させたり、また第2発光部12Bから発光された単色光を測定用セル10に照射させることができる。第4実施例に係る相対吸光度測定装置は、このように二種類の単色光を測定用セル10に照射させることができるので、第3実施例と同様に一の光学フィルタ36Aを透過した単色光による光量を基準光とし、他の光学フィルタ36Bを透過した単色光による光量を測定光とすることによって、基準液などを用いなくても、被測定用試料の吸光度を測定することができる。
【0028】
次に、本発明に係る相対吸光度測定装置の第5実施例について図5に基づいて説明する。第5実施例に係る相対吸光度測定装置は、第1実施例と異なり、発光部、発光制御部、及び受光部を一組でなく二組、すなわち第1及び第2発光部12A、12B、それぞれの発光を制御する第1及び第2発光制御部32A、32B、及びそれぞれから発光する光を受光する第1及び第2受光部14A、14Bを備えている。第1及び第2発光部12A、12Bは、それぞれ異なる波長の単色光を発光するよう構成されている。これら第1及び第2発光部12A、12Bは、それぞれが測定用セル10に向かって照射するように配置されており、それらの測定用セル10に対する反対側に第1及び第2受光部14A、14Bが配置されている。第5実施例においては、照射方向が垂直に交わるように配置されている。第1及び第2発光制御部32A、32Bは、いずれか一つの発光部のみから単色光を照射させるように第1及び第2発光部12A、12Bを制御する。第1及び第2受光部14A、14Bは、いずれも相対吸光度計算部18に接続されている。第5実施例に係る相対吸光度測定装置は、このように二種類の単色光を測定用セル10に照射させることができるので、第3実施例と同様に一の光学フィルタ36Aを透過した単色光による光量を基準光とし、他の光学フィルタ36Bを透過した単色光による光量を測定光とすることによって、基準液などを用いなくても、被測定用試料の吸光度を測定することができる。
【実施例】
【0029】
実験例1
次に、上記第1実施例に係る相対吸光度測定器を用いて、相対吸光度の測定を行なった。先ず、pH1.3のメチルレッド溶液5μlを注入した測定用セル10をセルホルダ20に固定し、発光部12から光を照射して透過光の光量L1´を測定した。次に、測定用セル10からメチルレッド溶液を捨て、KaOH溶液により洗浄し、純水5μlを注入し、同様に透過光の光量L2´を測定した。L1´を測定光とし、L2´を基準光とし、これらを数1に当てはめることにより、相対吸光度A´を計算した。その結果を図6に示す。
【0030】
【数1】

【0031】
次に、比較例として、測定用セル10に乱反射媒体を収容せず、注入するメチルレッド溶液及び純水の量を10μlとして、同様に測定光L1及び基準光L2を測定し、これらを数2に当てはめることにより、相対吸光度Aを計算した。その結果を図6に示す。
【0032】
【数2】

【0033】
図6から明らかなように、第1実施例係る相対吸光度測定装置は、被測定試料の量が半分であるにも拘らず、比較例に比べて、1.5倍以上の相対吸光度を確認することができた。したがって、Bouguer−Beerの法則から、被測定試料の量を同一にすれば、比較例に比べて3倍以上の相対吸光度を示すことが予想できる。
【0034】
実験例2
次に、上記第1実施例に係る相対吸光度測定器による吸光度測定を用いて、抗原抗体反応によるPCB(ポリ塩化ビフェニル)の濃度測定を行なった。なお、実験例2においては、測定用セル10として図7に示すものを用いた。この測定用セル10は、ポリスチレン素材で構成されており、測定用セル本体10Aは、筒状に形成されている。この筒状の測定用セル本体10Aの上面及び底面のそれぞれ開口は、蓋部材10B及び底部材10Cによって塞がれており、これら蓋部材10B及び底部材10Cは、通液性のあるフィルタ(綿状ポリプロピレン)によって構成されている。この通液性のある蓋部材10B及び10Cは、常圧の状態では測定用セル10内に被測定試料溶液を保持することができるが、加圧又は減圧により、測定用セル10内に被測定試料溶液を注入することができ、また測定用セル10内から被測定試料溶液を排出することができる。
【0035】
また、実験例2においては、乱反射媒体26として、ポリメチルメタクリル酸製の微小粒子(平均粒径100μm)を用いた。この微小粒子26は、未反応の抗体を捕まえるために表面に擬似抗原を固定した。擬似抗原の固定処理は、以下のように行なわれた。すなわち、化1に示すジクロロベンゼン誘導体0.1gを1mlのジメチルスルホキシドに溶解し、その溶液をメタノールにより100倍に希釈した(溶液A)。一方、BSA(牛血清アルブミン)0.1gを10mlの蒸留水に溶解して10%のBSA蒸留水溶液とした(溶液B)。そして、溶液A1.6ml、溶液B1.0ml及び蒸留水7.4mlを混合して、この10ml混合液Cを一晩(4時間以上)撹拌した。次に、0.4mlの微小粒子26を0.1mlの混合液Cと0.9mlのPBS(リン酸緩衝生理食塩水)に加えて2時間撹拌し、さらに溶液Bを0.1ml加えて2時間撹拌した。これにより、擬似抗原の固定処理を行なうことができた。
【0036】
【化1】

【0037】
先ず、PBS−BSA(PBS溶液に1g/lの割合でBSAを溶解し、0.1g/lの割合でアジ化ナトリウムを溶解した溶液)1mlを流し込んだ測定用セル10を第1実施例に係る相対給光度測定器のセルホルダ20に固定し、発光部12から光を照射して、透過光の光量L2を測定した。
【0038】
次に、試験管に被測定試料であるPCB(KC600)、pH7.5のPBS−BSA、1次抗体(マウス抗PCB抗体)と2次抗体(金コロイド標識ヤギ抗マウス抗体)を順次混ぜ合わせ、それぞれ免疫反応させた。1次抗体濃度は、500pMとし、2次抗体濃度は、6nMとし、PCBの濃度は、0.5、2、5及び10ppbとなるように4種類調整した。
【0039】
これら4種類の混合液それぞれを測定用セル10に0.2ml/minの割合で2ml流し、未反応の抗体を乱反射媒体26である微小粒子の表面に付着させ、着色させた。その後、1mlのPBS−BSAを流しこみ、微小粒子の隙間に残った混合液を洗い流した。
【0040】
次に、これら測定用セル10それぞれを第1実施例に係る相対給光度測定器のセルホルダ20に固定し、発光部12から光を照射して、透過光の光量L1を測定した。光量L1を測定光として、光量L2を基準光とし、これらを数2に当てはめることによって、相対吸光度Aを算出した。これらの結果を図8に示す。このように第1実施例に係る相対吸光度測定器は、抗原抗体反応を用いたPCB濃度測定に用いることができる。
【0041】
実験例3
次に、上記第1実施例に係る相対吸光度測定器による吸光度測定を用いて、抗原抗体反応によるカドミウムの濃度測定を行なった。なお、実験例3においては、実験例2と同様の測定用セル10及び乱反射媒体26を用いた。実験例3において、乱反射媒体26である微小粒子26に対する擬似抗原の固定処理は、以下のように行なった。すなわち、先ずOVA(オバルブミン)10mgをIsothiocyanobenzly-EDTA1mlを11mlの100mMホウ酸(pH9.5)に溶解し、これを37℃で4時間放置して溶液Xを用意した。次に、0.4mlの微小粒子26を溶液X0.1mlとPBS(リン酸緩衝生理食塩水)0.9mlに加えて2時間撹拌した。さらに、この溶液に10%BSA(牛血清アルブミン)蒸留水溶液0.1ml加えて2時間撹拌し、その後、25mMのHEPES(2-[4-(2-Hydroxyethyl)-1-piperazinyl]ethanesulfonic acid)(pH7.0)1mlで5回洗浄した。洗浄後、20mMのCdCl蒸留水溶液0.1mlとHEPES0.9mlを加えて1時間撹拌し、さらにHEPES1mlで5回、PBS1mlで5回洗浄した。これにより、擬似抗原の固定処理を行なうことができた。
【0042】
先ず、PBS−BSA1mlを入れた測定用セル10を第1実施例に係る相対給光度測定器のセルホルダ20に固定し、発光部12から光を照射して、透過光の光量L2を測定した。
【0043】
次に、試験管に被測定試料である塩化カドミウム溶液、蒸留水、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)を注入し、塩化カドミウム−EDTA錯体を調整した。EDTA濃度は、10μMとし、塩化カドミウム濃度が、0.05、0.5、5、50ppbとなるように蒸留水で調整して4種類の溶液を用意した。
【0044】
次に、これら4種類の溶液にPBS−BSA、1次抗体(マウス抗塩化カドミウムEDTA抗体)、及び1次抗体を着色させるための2次抗体(金コロイド標識ヤギ抗マウス抗体)を順次混ぜ合わせ、それぞれ免疫反応させた。1次抗体濃度は、500pMとし、2次抗体濃度は、6nMとなるように4種類を同様に調整した。
【0045】
これら4種類の混合液それぞれを測定用セル10に0.2ml/minの割合で2ml流し、未反応の抗体を乱反射媒体26である微小粒子の表面に付着させ、着色させた。その後、1mlのPBS−BSAを流しこみ、微小粒子の隙間に残った混合液を洗い流した。
【0046】
次に、これら測定用セル10それぞれを第1実施例に係る相対給光度測定器のセルホルダ20に固定し、発光部12から光を照射して、透過光の光量L1を測定した。光量L1を測定光として、光量L2を基準光とし、これらを数2に当てはめることによって、相対吸光度Aを算出した。これらの結果を図9に示す。このように第1実施例に係る相対吸光度測定器は、抗原抗体反応を用いた塩化カドミウム濃度測定に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る透過光量測定装置を含んだ相対吸光度測定装置の第1実施例の概念図である。
【図2】本発明に係る透過光量測定装置を含んだ相対吸光度測定装置の第2実施例の概念図である。
【図3】本発明に係る透過光量測定装置を含んだ相対吸光度測定装置の第3実施例の概念図である。
【図4】本発明に係る透過光量測定装置を含んだ相対吸光度測定装置の第4実施例の概念図である。
【図5】本発明に係る透過光量測定装置を含んだ相対吸光度測定装置の第5実施例の概念図である。
【図6】第1実施例及び比較例に係る相対吸光度測定装置によって測定された相対吸光度のグラフである。
【図7】実験例2及び3において用いた測定用セルの正面断面図である。
【図8】第1実施例に係る相対吸光度測定装置による抗原抗体反応によるポリ塩化ビフェニルの濃度と相対吸光度の関係を示すグラフである。
【図9】第1実施例に係る相対吸光度測定装置による抗原抗体反応によるカドミウムの濃度と相対吸光度の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0048】
10 測定用セル
12 発光部
14 受光部
18 相対吸光度計算部
26 乱反射媒体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定試料を収容する透光性素材で構成された測定用セルと、
該測定用セルに収容された被測定試料に単色光を照射させる発光部と、
該発光部から前記被測定試料に照射された単色光のうち、前記測定用セルに収容された被測定試料を透過する透過光を受光し、受光した透過光の光量を測定する受光部と、
を備えた透過光量測定装置であって、
前記測定用セルには、前記発光部から照射された単色光を乱反射させる乱反射媒体が収容されていることを特徴とする透過光量測定装置。
【請求項2】
被測定試料を収容する透光性素材で構成された測定用セルと、
該測定用セルに収容された被測定試料に向けて複色光を発光させる発光部と、
該発光部から発光された複色光のうち、一の単色光のみを選択して前記測定用セルに照射するとともに、その選択する単色光を変更することが可能な単色光選択部と、
該単色光選択部によって選択された単色光のうち、前記測定用セルに収容された被測定試料を透過する透過光を受光し、受光した透過光の光量を測定する受光部と、
を備えた透過光量測定装置であって、
前記測定用セルには、前記発光部から照射された単色光を乱反射させる乱反射媒体が収容されていることを特徴とする透過光量測定装置。
【請求項3】
被測定試料を収容する透光性素材で構成された測定用セルと、
該測定用セルに収容された被測定試料に複色光を照射させる発光部と、
該発光部から前記被測定試料に照射され透過される複色の透過光のうち、一の単色光のみを選択するとともに、その選択される単色の透過光を変更することが可能な単色光選択部と、
該単色光選択部によって選択され透過された単色の透過光を受光し、受光した透過光の光量を測定する受光部と、
を備えた透過光量測定装置であって、
前記測定用セルには、前記発光部から照射された単色光を乱反射させる乱反射媒体が収容されていることを特徴とする透過光量測定装置。
【請求項4】
被測定試料を収容する透光性素材で構成された測定用セルと、
互いに異なる単色光を発光させる二以上の発光部と、
該二以上の発光部から発光された二以上の単色光のうち、一の単色光のみを選択して前記測定用セルに照射するとともに、その選択する単色光を変更することが可能な単色光選択部と、
該単色光選択部によって選択された単色光のうち、前記測定用セルに収容された被測定試料を透過する透過光を受光し、受光した透過光の光量を測定する受光部と、
を備えた透過光量測定装置であって、
前記測定用セルには、前記発光部から照射された単色光を乱反射させる乱反射媒体が収容されていることを特徴とする透過光量測定装置。
【請求項5】
前記乱反射媒体は、微小粒子又は繊維状物質であることを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載の透過光量測定装置。
【請求項6】
前記発光部と受光部の間に設けられ、照射光の照射方向に貫通するとともに、内面が乱反射媒体によって反射された光を反射するように構成されている反射筒をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至5いずれか記載の透過光量測定装置。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれか記載の透過光量測定装置と、
前記透過光量測定装置によって測定された被測定試料の光量と基準試料の光量から相対吸光度を計算する相対吸光度計算部と、
を備え、前記測定用セルには、発色処理された被測定試料が収容されていることを特徴とする相対吸光度測定装置。
【請求項8】
透光性素材で構成された測定用セルに収容された被測定試料に単色光を照射し、照射された単色光のうち、前記測定用セルに収容された被測定試料を透過した透過光を受光し、受光した透過光の光量を測定する透過光量測定方法において、
前記測定用セルに前記発光部から照射された単色光を乱反射させる乱反射媒体を収容した状態で、前記単色光を前記被測定試料に照射することを特徴とする透過光量測定方法。
【請求項9】
前記被測定試料に照射される単色光は、発光される複色光から選択された単色光であることを特徴とする請求項8記載の透過光量測定方法。
【請求項10】
透光性素材で構成された測定用セルに収容された被測定試料に複色光を照射し、前記測定用セルに収容された被測定試料を透過した複色の透過光のうち一の単色光を選択して受光し、受光した単色の透過光の光量を測定する透過光量測定方法において、
前記測定用セルに前記発光部から照射された複色光を乱反射させる乱反射媒体を収容した状態で、前記複色光を前記被測定試料に照射することを特徴とする透過光量測定方法。
【請求項11】
前記複色光から選択される単色光は、変更可能であることを特徴とする請求項9又は10記載の透過光量測定方法。
【請求項12】
発色処理され、透光性素材で構成された測定用セルに収容された被測定試料に単色光を照射し、照射された単色光のうち、前記測定用セルに収容された被測定試料を透過した透過光を受光し、受光した透過光の光量を測定し、測定した被測定試料と基準試料の透過光の光量から相対吸光度を計算する相対吸光度測定方法において、
前記測定用セルに前記発光部から照射された単色光を乱反射させる乱反射媒体を収容した状態で、前記単色光を前記被測定試料に照射することを特徴とする相対吸光度測定方法。
【請求項13】
前記被測定試料に照射される単色光は、発光される複色光から選択された単色光であることを特徴とする請求項12記載の相対吸光度測定方法。
【請求項14】
発色処理され、透光性素材で構成された測定用セルに収容された被測定試料に複色光を照射し、前記測定用セルに収容された被測定試料を透過した複色の透過光のうち一の単色光を選択して受光し、受光した透過光の光量を測定し、測定した被測定試料と基準試料の透過光の光量から相対吸光度を計算する相対吸光度測定方法において、
前記測定用セルに前記発光部から照射された複色光を乱反射させる乱反射媒体を収容した状態で、前記複色光を前記被測定試料に照射することを特徴とする相対吸光度測定方法。
【請求項15】
前記複色光から選択される単色光は、変更可能であることを特徴とする請求項13又は14記載の相対吸光度測定方法。
【請求項16】
前記被測定試料の透過光の光量の測定において選択される単色光と異なる単色光を用いて測定される前記被測定試料の透過光の光量を前記基準試料の透過光の光量として用いることを特徴とする請求項15記載の相対吸光度測定方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−215013(P2006−215013A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−172145(P2005−172145)
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【出願人】(000181767)柴田科学株式会社 (32)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】