説明

透過可視光制御方法

【課題】遮光材料のコストを低減することができるとともに、遮光状態と非遮光状態との切換動作を迅速かつ適正に行うことができる調光サッシュ10を提供する。
【解決手段】枠体11に装着された外側ガラス16及び内側ガラス17の間の貯水層形成室18に水を貯留する。マイクロバブル発生装置によって生成されたマイクロバブルを含む水Wを下部横枠15の内部空間15a内に供給し、連通孔15bから前記貯水層形成室18内にマイクロバブルkを供給し、貯水層形成室18内のダブルを白濁状態にする。白濁状態の水によって室内側から調光サッシュ10を透過して室内側へ進入しようとする可視光が遮蔽され、室内側の空調装置の冷房効率を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ビルや家屋などの建築物の窓ガラスを透過する可視光を制御することにより空調設備の冷房効率を向上することができる透過可視光制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日射を遮る日射調整体として、特許文献1に開示されたものが提案されている。この日射調整体は、室外側に位置する第1の透明板部材と、室内側に位置する第2の透明板部材との間に、中間に位置する第3の透明板部材が配設され、第1の透明板部材と第3の透明板部材との間に液晶材料(日射吸収率調整層)が介在されている。そして、前記日射吸収率調整層に印加する電圧を変化させることにより光透過率を変化させて日射からの熱の吸収量を調整するようになっている。又、第2の透明板部材と第3の透明板部材との間には、温度に応じて光の透過率が変化する素材(白濁/透明変化素材)により形成された遮光拡散層が介在されている。そして、前記日射吸収率調整層により吸収された熱を利用することにより透明状態の前記遮光拡散層を加熱して白濁状態に変化させ、室外側から各透明板部材を透過して室内側に進入する日射量を低減し、空調装置の冷房効率を向上できるようになっている。
【特許文献1】特開2006−11167号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、従来の日射調整体は、コストの高い特殊な液晶材料(日射吸収率調整層)及び遮光拡散層を用いる必要があるので、遮光材料のコストを低減することができないという問題があった。又、日射吸収率調整層の光透過率調整に伴う温度変化によって遮光拡散層が透明状態から白濁状態に、その逆の状態に変化することを待つ必要があるため、透明・白濁状態に要する切換時間を短縮することができないという問題があった。さらに、遮光拡散層の温度変化を待たなければならないので、肌理細やかな調整が困難である。加えて、例えば、天候が曇りで日射を遮る必要がない場合において、例えば、気温が高い場合には、遮光拡散層が加熱されて白濁してしまう虞があり、透明・白濁の切り換え動作を適正に行うことができないという問題もあった。
【0004】
本発明の目的は、上記従来の技術に存する問題点を解消して、遮光材料のコストを低減することができるとともに、遮光状態と非遮光状態との切換動作を迅速かつ適正に行うことができる透過可視光制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、透光性のパネルの表面を水で被覆して水層を形成し、この水層にバブルを混入し、該バブルを前記パネルの表面に沿って移動させることを要旨とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記水層は所定の間隔をおいて対向された二枚のパネルの隙間に貯留された水によって形成された貯水層であって、該貯水層内にバブルが供給されることを要旨とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1において、前記水層は、前記パネルの表面に沿ってバブルが混入された水を流動させることにより形成される流水層であることを要旨とする。
【0008】
(作用)
この発明は、透明又は半透明のパネルの表面を水で被覆して水層を形成し、この水層にバブルを混入し、該バブルが前記パネルの表面に沿って移動されるので、バブルによって水層が白濁状態となる。このため、パネルを透過する可視光が低減される。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、可視光を遮蔽する遮光材料として水と空気のバブルを用いるため、遮光に要するコストを低減することができるなどの効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(第1の実施形態)
以下、本発明の透過可視光制御方法及び透過可視光制御装置を、調光サッシュに具体化した第1の実施形態を図1〜図4にしたがって説明する。
【0011】
図1に示す調光サッシュ10は、例えばビルや家屋などの建築物の窓部に装着される。この調光サッシュ10は、縦長四角枠状の枠体11を備えている。この枠体11は例えばアルミニウム製の左右一対の角パイプよりなる縦枠12,13と、両縦枠12,13の上端部間及び下端部間にそれぞれ架橋連結されたアルミニウム製の角パイプよりなる上部横枠14及び下部横枠15とによって構成されている。図2に示すように、前記枠体11の内周には室外側に位置する外側ガラス16と、室内側に位置する内側ガラス17とが図示しないシール部材をもって水密状態で嵌装されている。この外側及び内側ガラス16,17は、透明又は半透明などの光透過性を有したパネルを構成する。両ガラス16,17の間には所定の間隔(例えば3mm〜8mm)が設けられ、前記枠体11と両ガラス16,17とによって形成された空間に水Wを貯留することができる貯水層形成室18が形成されている。この貯水層形成室18によって貯水層Wsが形成されている。
【0012】
図2に示すように、前記上部横枠14の内部空間14aと、前記貯水層形成室18は上部横枠14の底板に形成された長孔状の連通孔14bによって連通されている。前記上部横枠14の室外側の側板には前記内部空間14aと室外(大気)を連通する長孔状の連通孔14cが形成されている。図1及び図2に示すように、前記下部横枠15の内部に形成された水の通路15aと、前記貯水層形成室18は下部横枠15の上板に形成された複数の連通孔15bによって連通されている。前記下部横枠15の両端開口部には蓋板20,20が図示しないシール部材をもって水密状態で取り付けられている。一方の前記蓋板20には、配管を接続するための管継手20aが設けられている。
【0013】
次に、マイクロバブルを貯水層形成室18内に供給するためのマイクロバブル供給装置について説明する。
図1に示すように、一方の前記縦枠12の上端部には、前記貯水層形成室18内の水を外部に送出する送出管19が貫通支持されている。
【0014】
建築物内の所定位置に配設された貯水槽21の内部には、マイクロバブル発生ノズル22が収容されている。前記送出管19と前記貯水槽21とは、配管23によって接続されている。該配管23には水を浄化するフィルタ(図示略)を備えた浄化装置24が接続されている。前記マイクロバブル発生ノズル22には、配管23Aが接続され、該配管23Aには、流量可変タイプのポンプ25が接続されている。
【0015】
前記マイクロバブル発生ノズル22は、図3に示すように構成されている。ノズル本体26には、継手27を介して前記配管23Aが接続され、ノズル本体26の中心部には水の噴射孔26aが設けられている。前記ノズル本体26には、前記噴射孔26aを囲繞するように環状の噴射孔30aを有する空気通路30が形成されている。そして、前記貯水槽21内において、前記ノズル本体26の噴射孔26aから水が矢印方向に噴射されると、空気通路30の噴射孔30aから空気がエゼクタ効果により貯水槽21内に吸引され、この空気が微細(直径が500μm以下)な気泡、つまりマイクロバブルとなって貯水槽21内の水に混入される。
【0016】
図1に示すように、前記貯水槽21と前記蓋板20の管継手20aは、配管31によって接続されている。該配管31には容量可変タイプのポンプ32が接続されるとともに、電磁開閉弁33が接続されている。この電磁開閉弁33のソレノイド33aは制御装置34のタイマー35によって設定された所定時間だけ動作されて前記電磁開閉弁33が開放されるようになっている。なお、前記電磁開閉弁33は前記タイマー35の計時動作に応じて開閉されるだけではなく、前記制御装置34の設定モードを切り換えることにより、例えば、以下の条件によって切り換えられる。すなわち、前記制御装置34は外部環境対応モードを設定できるようになっており、この外部環境対応モードの設定状態においては、日射量、外気温度、室内温度等の環境センサー(図示せず)からの検出信号によって前記電磁開閉弁33を任意に開閉制御することができる。例えば、日射量が一定量以上になった場合、外気温度が所定値を越えた場合、あるいは室内温度が所定値を越えた場合に電磁開閉弁33が開放動作される。さらに、前記制御装置34は、例えば、季節や月毎に予め設定された制御プログラムに基づいて、前記電磁開閉弁33の動作を長期に制御する機能を備えている。例えば、厳冬期には、タイマー35の計時や日射量に関わらず、電磁開閉弁33が開放動作されないようにしたり、酷暑期には日の出前から電磁開閉弁33が開放動作されるようにしたり、各種の設定が可能である。
【0017】
前記貯水槽21には例えば水道などの水源36から配管37を介して水が補給されるようになっている。前記配管37には電磁開閉弁38が接続され、該電磁開閉弁38のソレノイド38aは、前記制御装置34からの制御信号によって制御されるようになっている。
【0018】
次に、前記のように構成された調光サッシュ10及びマイクロバブル発生装置の動作について説明する。
図1及び図2においては、前記貯水層形成室18内に水Wが貯留されて、該貯水層形成室18内に貯水層Wsが形成されるとともに、マイクロバブル発生装置が停止されていて、前記貯水層Wsが透明状態にある。この状態において、前記制御装置34からの制御信号によって前記ポンプ25及びポンプ32が駆動されるとともに、電磁開閉弁33のソレノイド33aが励磁されて、電磁開閉弁33が開放される。すると、貯水槽21の水Wがポンプ25によって前記マイクロバブル発生ノズル22に供給され、該ノズル22によって貯水槽21内に貯留された水Wにマイクロバブルkが生成される。このマイクロバブルkが混入された水Wは貯水槽21内からポンプ32によって汲み上げられ、配管31を通して下部横枠15の通路15a内に供給される。通路15a内に供給された水Wはマイクロバブルkとともに各連通孔15bから貯水層形成室18内に進入される。このため、図4に示すように、貯水層形成室18の内部の水にマイクロバブルkがほぼ全域にわたって供給され、外側ガラス16のほぼ全域がマイクロバブルkによって白濁状態となる。従って、この白濁状態の水Wによって可視光が適切に遮蔽され、両ガラス16,17及び貯水層形成室18内に貯留された貯水層Wsを透過して室内側に進入する可視光の量が低減され、例えば夏季における室内側の空調装置による冷房効率が向上する。
【0019】
調光のために白濁量、即ち、水Wに混入されるマイクロバブルkの密度を任意に調整する場合には、前記制御装置34からの制御信号によりポンプ25の回転数を変更して、前記マイクロバブル発生ノズル22に供給される水Wの流量を調整すればよい。
【0020】
前記貯水層形成室18の内部に供給されたマイクロバブルkは貯水層形成室18に貯留された貯水層Wsの中を上方向に移動し、上部横枠14の連通孔14bから内部空間14aに入り、連通孔14cから大気中に放出される。又、貯水層形成室18内の水Wは配管23を通して浄化装置24に供給され、浄化装置24のフィルタによって浄化され、貯水槽21に供給される。
【0021】
以上のように、この実施形態においては、白濁・透明の切り換えを適正に行うことができるため、この実施形態の調光サッシュ10の可視光制御装置によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0022】
(1)上記実施形態では、マイクロバブル発生ノズル22によって貯水槽21内の水Wにマイクロバブルkを発生させ、このマイクロバブルkが混入された水Wを配管31を通して下部横枠15の通路15a内に供給する。そして、通路15aから連通孔15bを通して調光サッシュ10の貯水層形成室18の貯水層Wsにマイクロバブルkを供給するようにした。このため、貯水層形成室18内の貯水層Wsがマイクロバブルkによって白濁状態となり、室外側から室内側に入射しようとする太陽の可視光が反射されて、室内に入射するエネルギーが抑制され、室内側の空調装置による冷房効率を向上することができる。
【0023】
(2)上記実施形態では、貯水層形成室18内の貯水層Wsがマイクロバブルkによって白濁状態となるので、室内外を遮蔽するためのカーテンやブラインドを省略することができる。従って、室内空間を広く使用することができる。
【0024】
(3)上記実施形態では、貯水層形成室18内の貯水層Wsにマイクロバブルkを供給する構成を採用しているので、可視光を遮蔽する遮蔽媒体として、安価な水Wと空気のみを用いればよく、従って、前記遮蔽媒体のコストを低減することができる。又、背景の技術で述べたような化学物質(液晶材料)がないので、調光サッシュ10の解体処理が容易となる。
【0025】
(4)上記実施形態では、容量可変タイプのポンプ32の流量を調整すれば、それに応じて直ちに貯水層形成室18内のマイクロバブルkの密度を調整することができる。従って、透過光の光量調節を肌理細かく、かつ素早く行うことができる。
【0026】
(5)上記実施形態では、貯水層形成室18内に水Wがあるので、建築物の耐火性を向上することができる。
(6)上記実施形態では、マイクロバブルkの水Wへの混入率を制御することにより、夜間に建築物の窓から漏れる光の量を調節でき、建築物の意匠性とプライバシー保護を向上することができる。当然、昼間もマイクロバブルkの水Wへの混入率を制御することにより、建築物の意匠性を向上することができる。
【0027】
(第2の実施形態)
次に、本発明を調光サッシュ10に具体化した第2の実施形態を図5及び図6にしたがって説明する。なお、第2の実施形態は、第1の実施形態の調光サッシュ10のマイクロバブル発生装置に代えて、マイクロバブルの微小な気泡の直径(500μm)よりも大きいバブルk' (気泡)を発生させるためのバブル発生装置を用いている。この第2の実施形態及びその他の各実施形態においては、第1の実施形態と異なる構成について説明し、同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0028】
この第2の実施形態においては、図5に示すように、前記下部横枠15の右側に位置する蓋板20にはバブル発生ノズル39が取り付けられている。前記バブル発生ノズル39の入口には前記ポンプ25の下流側の配管23が電磁開閉弁33を介して接続されている。前記バブル発生ノズル39は、図6に示すように、テーパ状のノズル孔40aを形成したノズル本体40と、吐出孔41aが形成された蓋体41とを備えている。ノズル本体40と蓋体41との間にはバブル発生室42が形成され、空気導入孔40bから前記バブル発生室42に空気が導入されるようになっている。前記空気導入孔40bには、逆止弁43が接続され、バブル発生室42から水が外部に流出しないようにしている。そして、前記配管23からノズル本体40のノズル孔40aに水が所定の圧力で供給されると、エゼクタ効果により空気導入孔40bからバブル発生室42に空気が導入されて、空気が水に混合され、バブルk' が生成される。このバブルk' が混入された水Wは、蓋体41の吐出孔41a及び蓋板20に形成された通路20bから下部横枠15の通路15aに供給される。
【0029】
図5に示すように、前記上部横枠14の端部には、貯水層形成室18内の水が減少した場合に、水を補給するために、第1の実施形態で述べた水の補給装置の配管37が接続されている。
【0030】
この第2の実施形態においては、比較的大きな粒径のバブルk' が貯水層形成室18の内部に供給される。従って、図5に示すように、貯水層形成室18内の貯水層Wsが多数のバブルk' によって白濁状態となり、室外側から調光サッシュ10を透過して室内側に進入しようとする可視光が遮蔽される。このため、前記第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0031】
(第3の実施形態)
次に、図7〜図11に基づいて、この発明を調光サッシュ10に具体化した第3の実施形態について説明する。
【0032】
図7及び図8に示すように、この第3の実施形態においては、前記内側ガラス17又は外側ガラス16のうち一方を省略(この実施形態では内側ガラス17を省略)するとともに、上部横枠14の室外側の表面に左右一対のブラケット45を介して、マイクロバブルが混入された水の通路46a及び外側ガラス16に向かって開口する噴射孔46bを有する円筒状のパイプ46を水平に装着している。前記噴射孔46bは図9に示すように、水平方向に所定のピッチで複数箇所に形成されている。図7に示すように、前記パイプ46の一端には前記配管31が接続されている。パイプ46の他端は密封されている。
【0033】
一方、前記下部横枠15の室外側の表面には回収溝47aを有する回収樋47が水平に装着されている。該回収樋47の一端部には前記配管23が接続されている。
前記ガラス16の表面には例えば酸化チタンなどの光触媒層48が所定の層厚(例えば200〜500nm)で形成されている。この光触媒層48によって、ガラス16の表面が親水化されて、光触媒層48の表面に供給された水Wが薄い流水層Wr(図11参照)となって拡散されて流下されるようにしている。
【0034】
次に、上記のように構成された第3の実施形態の調光サッシュ10の動作について説明する。
図7において、ポンプ25,32が起動されて、マイクロバブル発生ノズル22から貯水槽21内の水Wにマイクロバブルkが生成され、水Wにマイクロバブルkが混入される。このマイクロバブルkが混入された水Wはポンプ32によって配管31を通して前記パイプ46の通路46aに供給される。そして、通路46aから複数の噴射孔46bを通して外側ガラス16に向かって噴出される。この水Wは図10に示すようにガラス16の表面の親水化された光触媒層48に供給され、光触媒層48の表面に沿って水Wの層厚がほぼ均一に薄くなるように拡散されて薄い流水層Wrとなって下方に流下される。この流水層Wrによってガラス16の上面が冷却される。外側ガラス16の下端に流下された流水層Wrの水は回収樋47の回収溝47a に回収され、再び前記パイプ46の通路46aに供給されて、ガラス16の表面の冷却に用いられる。
【0035】
前記流水層Wrにはマイクロバブルkが混入されているので、ガラス16の表面は図10に示すようにマイクロバブルkによって白濁状態となり、室外側からガラス16を透過して室内側に進入する可視光の量が低減され、空調装置による冷房効率を向上することができるとともに、専用のカーテンやブラインドを不要にすることができる。
【0036】
一方、図11に示すように、ガラス16の表面にマイクロバブルkが混入されていない流水層Wrを形成したい場合には、前記ポンプ25を停止した状態で、前記ポンプ32を駆動して、配管31からパイプ46に水Wを直接供給する。この動作により、図11に示すように、水Wのみがガラス16の表面の光触媒層48の表面に供給されて、ほぼ均一の厚さの流水層Wrとなって流下される。流水層Wrの水Wは、回収樋47の回収溝47aに回収され、再び前記パイプ46の通路46aに供給されて、ガラス16の表面の冷却に用いられる。
【0037】
従って、この第3の実施形態は、前記第1の実施形態と同様な効果があることに加えて、以下の効果がある。
(1)上記実施形態では、外側ガラス16の表面を流れる流水層Wrの水Wが蒸発する際の気化熱により外側ガラス16を冷却することができる。
【0038】
(2)上記実施形態では、流される水Wと光触媒層48とにより外側ガラス16を清浄な状態に維持することができる。
(3)上記実施形態では、外側ガラス16の表面が親水化処理されているため、薄く均一で隙間のない流水層Wrを形成することができる。親水化処理がされていない場合には、流水層Wrが筋状に流れる虞があり、これを回避しようとすると、多量の水Wが必要となる。
(変更例)
なお、前記各実施形態は以下のように変更してもよい。
【0039】
・図12に示すように、第1の実施形態の調光サッシュ10において、前記下部横枠15の底板を省略するとともに、下部横枠15の上板に複数箇所に前記マイクロバブル発生ノズル22と同様のマイクロバブル発生ノズル22を装着するようにしてもよい。
【0040】
この変更例では、前記貯水槽21及びポンプ32を省略することができるので、マイクロバブル発生装置全体の構造を簡素化して、設備コストを低減することができる。
・図13に示すように、下部横枠15の底板にマイクロバブル発生ノズル22を装着してもよい。この変更例ではマイクロバブル発生ノズル22が一つとなるため、さらに設備コストを低減することができる。
【0041】
・図14に示すように、第3の実施形態の調光サッシュ10において、前記パイプ46の端部にマイクロバブル発生ノズル22を連結し、該ノズル22に前記配管23を接続するようにしてもよい。この場合にも、前記貯水槽21及びポンプ32を省略することができるので、マイクロバブル発生装置全体の構造を簡素化して、設備コストを低減することができる。
【0042】
・図15に示すように、パネル51として、上部がほぼ水平で、下部がほぼ直立する形状のものを用い、そのパネル51の上部の縁部に第3の実施形態の装置を用いてマイクロバブルが混入された水を前記パネル51に供給するようにしてもよい。このようにすれば、パネル51の上部では水の流下速度が遅く、下部では速くなる。このため、パネル51の上部においてマイクロバブルの密度が高く、有効に遮光できるとともに、下部において密度が低くなり、水平方向の視界を得ることができる。
【0043】
・前記各実施形態では扁平状の調光サッシュ10を垂直方向に配設するようにしたが、調光サッシュ10を斜め上下方向に配設したり、調光サッシュ10を円弧状に湾曲する形状にしたりしてもよい。
【0044】
・図1及び図2に示す前記調光サッシュ10を水平に配設して例えば屋根のトップライトとし、貯水層形成室18内のバブルが混入された貯水層Wsの水を水循環手段により循環させるようにしてもよい。又、トップライトの流水層形成室の端部又は中間部にマイクロバブルが混入された水を供給するためのマイクロバブル供給ノズルを挿入して、流水層形成室中をマイクロバブルが混入された水が例えば放射状又は二方向に流水層となって移動するように構成してもよい。この場合には、バブルの流れに変化を与えることができ、意匠性を向上することができる。
【0045】
・図7及び図8に示すガラス16を水平に配設して、天井ガラス(水盤)とし、この天井ガラスの上面の端部又は中間部にマイクロバブル発生ノズルを配設し、該ノズルから前記ガラスの上面にマイクロバブルが混入された水を供給して、バブルが混入された流水層を形成し、回収された水を水循環手段により天井ガラスの上面に循環するようにしてもよい。
【0046】
・外側及び内側ガラス16,17に代えて、透明又は半透明の合成樹脂板を使用してもよい。
・本発明の可視光制御装置を建物の窓枠以外の用途、例えば、屋根、門の庇、公園などに設けれた東屋の屋根、屋外の日除けガード、衝立、モニユメントなどに適用してもよい。
【0047】
・前記実施形態では、マイクロバブルを発生させるためにエゼクタ方式のマイクロバブル発生ノズルを用いたが、キャビテーション方式、或いは加圧溶解方式などの他の方式のマイクロバブル発生器を用いてもよい。
【0048】
以下、前記各実施形態及び変更例から把握される請求項以外の技術的思想について、以下に列記する。
(1) 請求項1〜3のいずれか一項において、前記バブルはマイクロバブルであることを特徴とする可視光制御方法。
【0049】
(2) 透光性のパネルの表面を水で被覆して水層を形成する水層形成手段と、前記水層にバブルを混入するバブル混入手段とを備えたことを特徴とする可視光制御装置。
(3) 上記技術的思想(2)項において、所定の間隔をおいて対向された二枚のパネルの隙間に水を貯留して貯水層を形成するための貯水層形成室を設け、該貯水層形成室に前記貯水層にバブルを混入させるバブル混入手段を設けたことを特徴とする可視光制御装置。
【0050】
(4) 透光性のパネルに対し、該パネルの表面に水を供給して流水層を形成する流水層形成手段を設け、該流水層形成手段には、流水層にバブルを混入するバブル混入手段を設けたことを特徴とする可視光制御装置。
【0051】
(5) 上記技術的思想(2)〜(4)項のいずれか一項において、前記バブル混入手段は、マイクロバブル発生装置であることを特徴とする可視光制御装置。
(6) 上記技術的思想(4)において、前記パネルの表面には、親水層が形成されていることを特徴とする可視光制御装置。
【0052】
(7) 上記技術的思想(6)において、前記親水層は、光触媒層であることを特徴とする可視光制御装置。
(8) 上記技術的思想(4)又は(5)において、前記バブル混入手段は、パネルの表面にバブルが混入されていない透明な流水層を形成する機能と、バブルが混入された白濁の流水層を形成する機能とを交互に切り換え可能に構成されていることを特徴とする可視光制御装置。
【0053】
(9) 上記技術的思想(2)〜(8)のいずれか一項において、前記バブル混入手段は、バブルの密度を調整する密度調整手段を備えていることを特徴とする可視光制御装置。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】この発明を調光サッシュに具体化した第1の実施形態を示す正断面図。
【図2】図1の1−1線断面図。
【図3】マイクロバブル発生ノズルの断面図。
【図4】調光サッシュの貯水層形成室の内部にマイクロバブルを供給した状態を示す正面図。
【図5】この発明の第2の実施形態を示す調光サッシュの正断面図。
【図6】バブル発生ノズルの縦断面図。
【図7】この発明の第3の実施形態を示す調光サッシュの正面図。
【図8】図7の調光サッシュの縦断面図。
【図9】パイプの斜視図。
【図10】調光サッシュのガラスの表面に沿ってマイクロバブルが混入された水を流下した状態を示す正面図。
【図11】ガラスの表面に沿って水のみを流下した状態を示す正面図。
【図12】この発明の変更例を示す調光サッシュの部分正断面図。
【図13】この発明の変更例を示す調光サッシュの部分正断面図。
【図14】この発明の変更例を示す調光サッシュの正面図。
【図15】この発明の変更例を示すパネルの一部省略断面図。
【符号の説明】
【0055】
k…マイクロバブル、W…水、Wr…流水層、Ws…貯水層、18…貯水層形成室、48…光触媒層、51…パネル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性のパネルの表面を水で被覆して水層を形成し、この水層にバブルを混入し、該バブルを前記パネルの表面に沿って移動させることを特徴とする透過可視光制御方法。
【請求項2】
請求項1において、前記水層は所定の間隔をおいて対向された二枚のパネルの隙間に貯留された水によって形成された貯水層であって、該貯水層内にバブルが供給されることを特徴とする透過可視光制御方法。
【請求項3】
請求項1において、前記水層は、前記パネルの表面に沿ってバブルが混入された水を流動させることにより形成される流水層であることを特徴とする透過可視光制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−72486(P2010−72486A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−241649(P2008−241649)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】