透過型光電陰極およびそれを備える計測装置
【課題】単純な製造プロセスで実現でき、強度の異なる2種類の波長の光が入射されても広い波長領域に感度を有する光電陰極を提供すること。
【解決手段】この光電陰極1は、第1の波長の光と、第1の波長より長い第2の波長の光であって、第1の波長の光の強度より低い強度を有する光とを検出する透過型光電陰極であって、第1及び第2の波長の光が、光入射側の面10aに入射するP型の半導体基板10と、第1及び第2の波長の光を吸収して光電子を生成するP型の光吸収層12と、光電子を加速するP型の電子放出層13と、電子放出層13上に積層されたN型のコンタクト層14と、半導体基板10の光入射側の面10a上及びコンタクト層14上のそれぞれに形成された裏面電極16及び表面電極15とを備え、半導体基板10上には光入射側の面10aに光吸収層12に向けて伸びる凹部18が形成されている。
【解決手段】この光電陰極1は、第1の波長の光と、第1の波長より長い第2の波長の光であって、第1の波長の光の強度より低い強度を有する光とを検出する透過型光電陰極であって、第1及び第2の波長の光が、光入射側の面10aに入射するP型の半導体基板10と、第1及び第2の波長の光を吸収して光電子を生成するP型の光吸収層12と、光電子を加速するP型の電子放出層13と、電子放出層13上に積層されたN型のコンタクト層14と、半導体基板10の光入射側の面10a上及びコンタクト層14上のそれぞれに形成された裏面電極16及び表面電極15とを備え、半導体基板10上には光入射側の面10aに光吸収層12に向けて伸びる凹部18が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光を光電子に変換する光電陰極に関するものであり、特に入射光が電子放出面の反対側から入射する透過型光電陰極に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、入射光を検出するための電子管等に内蔵される光電陰極として、反射型光電陰極と透過型光電陰極が知られている。反射型光電陰極は入射光が電子放出面側から入射するタイプであり、透過型光電陰極は入射光が電子放出面の反対側、すなわち、光電陰極の基板側から入射するタイプである。このうち透過型光電陰極は、光電子増倍管やイメージインテンシファイヤ等に用いられてそれらの小型化に有利なばかりでなく、マイクロチャンネルプレート光電子増倍管(MCPPMT)などの時間応答性に優れた電子管にも採用されており有用である。
【0003】
この透過型光電陰極の構造の一例としては、例えば、下記特許文献1に開示されている。また、透過型光電陰極の他の構造として、広い波長帯域の光に対して感度を有するようにするために、光電陰極を例えばガラス等の透明基板上に形成するものが知られている(下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−255580号公報
【特許文献2】特開2007−123176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の透過型光電陰極では、入射光が支持基板である半導体基板側から入射されるので、950nm以下等の短波長の入射光が半導体基板により吸収されることによりこの波長領域における感度が著しく低い傾向にあった。
【0006】
これに対して、上記特許文献2に記載の光電陰極によれば、広い波長領域にわたった感度を実現することはできるが、複雑な製造プロセスが要求される。すなわち、光電陰極を作成する際に、光電陰極となるエピタキシャル半導体層を透明基板に熱圧着により接着し、半導体基板をエッチングにより選択的に除去するプロセスが必要となる。
【0007】
また、強度の異なる2種類の波長の光を光電陰極に入射させて検出する際には、出力が飽和しないようにフィルターを挿入する必要があるが、その場合には微弱光の検出感度が低下してしまい支障が生じる場合があった。
【0008】
そこで、本発明は、かかる課題に鑑みて為されたものであり、単純な製造プロセスで実現でき、強度の異なる2種類の波長の光が入射されても広い波長領域に感度を有する透過型光電陰極およびそれを備える計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の透過型光電陰極は、第1の波長の光と、第1の波長より長い第2の波長の光であって、第1の波長の光の強度より低い強度を有する光とを検出する透過型光電陰極であって、第1及び第2の波長の光が、光入射側の面に入射する第1導電型の半導体基板と、半導体基板上に積層され、第1及び第2の波長の光を吸収して光電子を生成する第1導電型の光吸収層と、光吸収層上に積層され、光電子を加速する第1導電型の電子放出層と、電子放出層上に積層された第2導電型のコンタクト層と、半導体基板の光入射側の面上及びコンタクト層上のそれぞれに形成された第1及び第2の電極とを備え、半導体基板上には光入射側の面に光吸収層に向けて伸びる凹部が形成されている。
【0010】
このような透過型光電陰極によれば、長波長で強度の低い第2の波長の光が半導体基板に入射した場合は、その光が半導体基板に吸収されることなく光吸収層に到達することにより、光吸収層で光電子が励起される。このようにして励起された光電子は、第1及び第2の電極間に印加された逆バイアス電圧により形成された内部電界によって加速されて電子放出層の表面に到達し、その表面に到達した光電子が外部に放出される。一方、短波長で強度の高い第1の波長の光が入射した場合は、その光は半導体基板で吸収されやすいが、半導体基板の凹部に入射した一部の第1の波長の光のみが半導体基板を通過して光吸収層に到達することで、光吸収層で光電子が励起され、その光電子が電子放出層の表面から外部に放出される。これにより、広い波長領域にわたって入射光を光電子に変換することができるとともに、比較的強度の高い短波長の光を減光することで短波長光の検出時の出力の飽和を防止することができる。また、凹部の大きさを調整することで分光感度特性を任意に設計することもできる。その結果、複雑な製造プロセスを必要とせずに広い波長感度を有する透過型光電陰極を実現することができる。
【0011】
凹部の底部と光吸収層との距離は、第1の波長の10倍以下である、ことが好適である。この場合、短波長の光に対する感度を効果的に向上させることができる。
【0012】
また、凹部の底部と光吸収層との距離は、第1の波長以下である、ことも好適である。この場合、短波長の光に対する感度をより一層向上させることができる。
【0013】
或いは、本発明の計測装置は、上述した透過型光電陰極を含み、第1の波長の光、及び第1の波長より長い第2の波長の光であって、第1の波長の光の強度より低い強度を有する光が入射され、第1及び第2の波長の光を電気信号に変換して出力する検出器と、検出器から出力された電気信号を基に、第1の波長の光と第2の波長の光との間の強度の時間変化の関係を測定する計測器と、を備える。
【0014】
このような計測装置によれば、本発明の透過型光電陰極を含む検出器から短波長の第1の波長の光、及び長波長の第2の波長の光のそれぞれの検出信号が出力され、計測器によってそれらの検出信号を基に第1の波長の光と第2の波長の光との間の強度変化の関係が測定される。これにより、小規模な測定系によって、強度の異なる2波長の光の間の強度変化の関係を高精度に測定することができる。
【0015】
第1の波長の光は計測対象の試料に照射する励起光であり、第2の波長の光は試料から励起光に応じて発せられた蛍光であり、計測器は、強度の時間変化の関係を計算することにより試料に関する蛍光寿命を測定する、ことも好適である。かかる構成を採れば、同じ検出器によって試料励起用の励起光と蛍光とを検出することにより、蛍光寿命を簡易かつ高精度に測定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、単純な製造プロセスで実現でき、強度の異なる2種類の波長の光が入射されても広い波長領域に感度を有する透過型光電陰極を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に透過型光電陰極の概略構成を示す断面図である。
【図2】図1の透過型光電陰極の製造過程を示す断面図である。
【図3】図1の透過型光電陰極の分光感度特性を示すグラフである。
【図4】図1の透過型光電陰極を備える光電子増倍管の構成を示す断面図である。
【図5】図1の透過型光電陰極を備える画像増強管の構成を示す断面図である。
【図6】図1の透過型光電陰極が内蔵された光電子増倍管を光検出器として用いた蛍光寿命測定装置の構成を示すブロック図である。
【図7】図6の演算装置によって集計された光電子パルスの頻度の時間変化を示すグラフである。
【図8】本発明の第2実施形態の透過型光電陰極の概略構成を示す断面図である。
【図9】図8の透過型光電陰極の製造過程を示す断面図である。
【図10】本発明の変形例である透過型光電陰極の概略構成を示す断面図である。
【図11】本発明の変形例である透過型光電陰極の概略構成を示す断面図である。
【図12】本発明の変形例である透過型光電陰極の概略構成を示す断面図である。
【図13】本発明の変形例である透過型光電陰極の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る透過型光電陰極およびそれを用いた計測装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、各図面は説明用のために作成されたものであり、説明の対象部位を特に強調するように描かれている。そのため、図面における各部材の寸法比率は、必ずしも実際のものとは一致しない。
【0019】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る光電陰極の概略構成を示す断面図である。同図に示すように、光電陰極1は、半導体基板10の上に、バッファ層11、光吸収層12、電子放出層13、及びコンタクト層14がこの順に積層されて成る。さらに、このコンタクト層14の電子放出層13とは反対側の面上には表面電極15が形成され、半導体基板10のバッファ層11とは反対側の面10a上の一部には裏面電極16が形成されている。
【0020】
半導体基板10は、P型の導電型の半導体材料からなり、主として光電陰極1の機械的強度を維持する役割を有する。また、半導体基板10の表面10aには、検出対象の2つの波長領域の入射光が入射される。例えば、半導体基板10の構成材料としては、厚さが350μm、キャリア濃度又は原子濃度が1〜10×1016/cm3のZnドープP型InPが挙げられる。このような半導体基板10は、約950nm以上の長波長の光は透過させるが、約950nm以下の短波長の光は吸収しやすいという性質を有する。
【0021】
半導体基板10上に積層されるバッファ層11は、半導体基板10と格子整合するP型の半導体材料、例えば、厚さが0.02〜0.5μm、キャリア濃度又は原子濃度が1〜10×1018/cm3のZnドープP型InPから成る。
【0022】
光吸収層12は、入射光を吸収して光電子を励起して生成する層であり、バッファ層11と格子整合するP型の半導体材料から成る。例えば、光吸収層12の構成材料としては、厚さが2μm、キャリア濃度又は原子濃度が1〜10×1016/cm3のZnドープP型InGaAsP又はZnドープP型InGaAsが挙げられる。また、光吸収層12は、そのエネルギーバンドギャップが半導体基板10より小さくされており、光吸収層12で発生した光電子が基板10側に拡散することが防止されている。
【0023】
電子放出層13は、エネルギーバンドギャップが光吸収層12よりも大きく、光吸収層12で励起された光電子を加速して光吸収層12とは反対側の表面から外部に放出する層である。この電子放出層13は、光吸収層12と格子整合するP型の半導体材料、例えば、厚さが0.5μm、キャリア濃度又は原子濃度が1〜10×1016/cm3のZnドープP型InPから成る。
【0024】
コンタクト層14は、電子放出層13と表面電極15との間に介在し電子放出層13と表面電極15との間の接触抵抗を低下させてバイアス電圧を効果的に印加するための層であり、電子放出層13と格子整合するN型の半導体材料から成る。このコンタクト層14は、例えば、厚さが0.2μm、キャリア濃度又は原子濃度が1〜5×1018/cm3のSiドープN型InPまたはSドープN型InPから構成されている。なお、コンタクト層14のエネルギーバンドギャップは電子放出層13とほぼ同じに設定されている。このような組成のコンタクト層14は、電子放出層13上の一部の表面を覆うようにメッシュ状に形成されている。
【0025】
表面電極15は、コンタクト層14上に形成されて電子放出層13の表面をメッシュ状に覆う金属電極であり、コンタクト層14とオーミック接触がなされている。また、裏面電極16は、半導体基板10のバッファ層11とは反対側の面10a、すなわち光入射側の面10a上の一部に形成された金属電極である。これらの電極15,16は、例えばTi、Al、Ag、Au、Cr及びこれらの合金から成り、表面電極15と裏面電極16との間に逆バイアス電圧を印加して光電陰極1の内部に電界を形成するために設けられる。
【0026】
また、電子放出層13の面上のコンタクト層14が形成されていない領域には、活性層17が設けられている。この活性層17は、放出される光電子に関する仕事関数を低下させるための層であり、例えば、Csなどのアルカリ金属、その酸化物、またはフッ化物を薄く塗布されることにより形成される。
【0027】
さらに、半導体基板10の光入射側の面10aの一部には、面10aからバッファ層11に向けて直線状に伸びる1以上の凹部18が形成されている。この凹部18の数、開口面積、及び深さは、設計する分光感度特性に応じて適宜設定されるが、凹部18の底部18aから光吸収層12までの距離は、2つの入射光のうちの短波長側の入射光の波長をλとした場合、10×λ以下であることが好適であり、λ以下であることがさらに好適である。これは、凹部18から光吸収層12までの距離が小さければ小さいほど光吸収層12に到達する入射光が指数関数的に増加する一方、波長λ程度の距離で有れば十分な割合の入射光が光吸収層12に到達できるからである。例えば、短波長側の入射光の波長λが600nmであって、凹部18から光吸収層12までの距離が、波長λの約0.83倍の0.5μmの場合、凹部18に入射する光の約0.7%が光吸収層12に到達することができ、波長λと同程度の距離で有れば十分に感度を持たせることができる。
【0028】
次に、上述した光電陰極1の製造方法について説明する。図2は、光電陰極1の製造過程を示す断面図である。
【0029】
まず、半導体基板10を用意し、半導体基板10上に有機金属気相成長法或いは分子線エピタキシー法によって所定の半導体ヘテロ構造がエピタキシャル成長により形成される。その結果、半導体基板10上にバッファ層11、光吸収層12、電子放出層13、及びコンタクト層14が形成される(図2(a))。なお、各層を構成する半導体としては、InP、InGaAsP、又はInGaAsを用いた例を示したが、これらの半導体に限定されるものではなく、膜厚も特定値に限定されるものではない。
【0030】
次に、半導体基板10の光入射側の面10aにマスク21が所定の膜厚で堆積され、そのマスク21の一部がフォトリソグラフィー等により所定の開口を有するように加工される(図2(b))。マスク21の材料としては、SiN、SiO2、フォトレジスト、或いは金属等を用いることができる。
【0031】
その後、半導体基板10の面10aに、誘導結合プラズマ(ICP)エッチング装置を用いて凹部18を加工する(図2(c))。この加工による凹部18の深さ、すなわち、凹部18の底部18aと光吸収層12との距離は、エッチング時間によって制御することができる。
【0032】
そして、コンタクト層14の全面に表面電極15を蒸着し、その表面電極15上にフォトレジスト22を塗布し、フォトリソグラフィーによりフォトレジスト22をメッシュ状パターンに形成する(図2(d))。
【0033】
次に、ドライエッチングにより、表面電極15及びコンタクト層14をエッチング加工し、メッシュ状の表面電極15及びコンタクト層14を形成する(図2(e))。
【0034】
最後に、フォトレジスト22を除去し、半導体基板10の光入射側の面10aの一部に裏面電極16を蒸着する(図2(f))。この際、半導体基板10の面10aには、反射防止膜を形成しても良い。
【0035】
なお、上記の製造過程は、その順序が入れ替わっていても良い。例えば、全ての膜構造を形成後に最後に凹部18を加工することもできる。
【0036】
以上説明した光電陰極1の動作について説明する。光電陰極1の光入射側の面10aには、可視光領域の第1波長の入射光と、可視光領域より長波長(例えば、赤外光領域)であって、第1波長の入射光の強度よりも低い強度の第2波長の入射光とが、別々に入射される。
【0037】
第1波長の入射光のうち凹部18の形成領域以外の面10aに入射した入射光は、半導体基板10によって吸収されて光吸収層12には到達しない。その一方で、第1波長の入射光のうち凹部18の開口に入射した入射光は、凹部18を通過して光吸収層12に到達し、その結果、光吸収層12で光電子を励起させることができる。このように、第1の入射光はその一部が光吸収層12に到達することになるので、凹部18が形成された半導体基板10は、第1波長の入射光に対するフィルタリングの役割を果たす。
【0038】
これに対して、第2波長の入射光は、半導体基板10を透過しやすいので、面10aに入射した光の大部分が光吸収層12に到達して光電子を励起させることになる。
【0039】
ここで、表面電極15及び裏面電極16との間にはバイアス電圧源19が接続されることによって逆バイアス電圧が印加され、電子放出層13と光吸収層12の内部に光電子を加速する電界が形成されている。これにより、光吸収層12で励起された光電子は、電子放出層13の表面に加速されて到達する。そして、電子放出層13の表面に活性層17が設けられて仕事関数が小さくされることにより、光電子が電子放出層13の表面から外部の真空中に放出される。つまり、光電陰極1は、光入射側の面10aに対して反対側の電子放出層13の表面から光電子を放出する、いわゆる透過型の光電陰極である。
【0040】
このように本実施形態の光電陰極1では、広い波長領域にわたって入射光を光電子に変換することができる。さらに、比較的強度の高い第1波長の光をフィルタリングして減光する一方で、比較的強度の低い第2波長の光を効率よく光電子に変換することで、短波長光検出時の出力の飽和を防止しつつ長波長光を感度良く検出することができる。特に、同一の光電陰極で2波長の光を検出することで、2波長の光の間の時間応答の関係を測定する場合に有利となる。また、光電陰極1では、凹部18を加工するだけでその他の複雑な製造プロセスを必要としない。
【0041】
図3には、光電陰極1の分光感度特性を示している。同図に示すように、半導体基板10の面10aにおける凹部18の存在しない領域の分光感度特性S1は、940nmから1650nmの範囲の長波長側のみ感度を有することを示している。これに対して、面10aにおける凹部18の存在する領域の分光感度特性S2は、短波長から長波長までの広い波長領域に感度を有することを示している。従って、光電陰極1の全体の感度特性は、感度特性S1と感度特性S2とを足し合わせた特性となるので、広い波長範囲での感度を有する。
【0042】
また、凹部18の数や開口面積を調整することで分光感度特性を任意に設計することもできる。すなわち、分光感度特性S1と分光感度特性S2の面積比を調整することで分光感度特性を任意に設計することができる。
【0043】
以下、本実施形態の光電陰極1の応用例について説明する。
【0044】
図4は、光電陰極1を備える光電子増倍管31の構成を示す断面図である。光電子増倍管31は、真空容器32内に光電陰極1、集束電極33、ダイノード34、及び陽極35を備えて構成されている。光電陰極1から放出された光電子は、集束電極33によって収束され、所定の電圧が印加された第1段目のダイノード34aに入射する。入射した光電子は2次電子増倍により2次電子を生成し、その2次電子は第1段目のダイノード34aから所定の電圧が印加された第2段目のダイノード34bに向けて放出される。それに伴い、第2段目のダイノード34bにおいて再び2次電子が放出される。このような2次電子放出を繰り返すことで、最終的には100万倍程度に増倍された2次電子が陽極35に集められて電流(電気信号)として陽極35から取り出される。2次電子増倍は電子のみを増倍するので高速かつ雑音の非常に少ない増倍が実現され、光電子増倍管31は高速かつ非常に高感度な光検出器として実現される。
【0045】
また、図5は、光電陰極1を備える画像増強管41の構成を示す断面図である。画像増強管41は、光入射窓42aと出力窓42bを有する真空容器42内に光電陰極1及びマイクロチャンネルプレート(MCP)43を備えて構成されている。光入射窓42aから入射した光に応じて光電陰極1から光電子が放出され、その光電子は所定の電圧が印加されたMCP43の入射面43aに入射する。入射した光電子はMCP43のチャンネル内で2次電子増倍により2次電子を生成し、MCP43の出射面43bからその2次電子が放出される。MCP43の入射面43aと出射面43bの間には所定の電圧が印加されており、100万倍程度に増倍された2次電子が出射面43bから放出される。出射面43bから放出された光電子は、出力窓42bの内側に形成され、所定の電圧を印加された蛍光面44に入射する。その結果、蛍光面44が外部に向けて発光する。このとき、MCP43は多数の小孔を有しているので、2次電子が2次元位置を保ったまま増倍される。これにより、入射光が光電陰極1に入射した際の位置情報を保ったままMCP43でその検出結果を増倍して蛍光面44を発光させるので、光電陰極1に入射した画像を100万倍程度に増倍して外部に出力させることが可能な検出器が実現される。
【0046】
また、光電陰極1は、その他の検出器にも適用可能であり、ダイノードや陽極の代わりに半導体のフォトダイオード等を用いて増倍を行う電子打ち込み型の電子管などへの適用も可能である。
【0047】
図6は、光電陰極1が内蔵された光電子増倍管を光検出器として用いた蛍光寿命測定装置51の構成を示すブロック図である。この蛍光寿命測定装置51は、計測対象の試料Aから発せられる長波長の蛍光と、試料Aに照射する短波長の励起光との両方を測定対象としている。蛍光寿命測定装置51では、励起光源52から発せられた励起光パルスがビームスプリッタ53及びレンズ54を通って試料Aに入射され、試料Aにおいて蛍光が発光される。この場合の励起光パルスとしては、蛍光よりも短波長のレーザ光等が用いられる。発生した蛍光は、レンズ55により集光されてから分光器56に入射され、分光器56で分光された蛍光が光電陰極1を含む光電子増倍管31によって検出される。蛍光を検出する際には、このレンズ55と分光器56との間に励起光をカットするフィルター57が挿入される。そして、光電子増倍管31の出力である光電子パルス(電流パルス)は、ストップパルスとして時間波高値コンバータ(TAC:Time-to-Amplitude Converter)58に入力される。それと並行して、ビームスプリッタ53及びPINフォトダイオード59によって分光検出された励起光パルスの検出信号が、スタートパルスとしてTAC58に入力される。このようにしてTAC58により励起光パルスと光電子パルスの時間間隔が測定される。
【0048】
さらに、蛍光寿命測定装置51では、励起光自体の時間的広がりや光検出器である光電子増倍管31の時間応答を評価するために、試料Aを反射率の弱いミラーや拡散板に置き換えた状態で励起光パルス自体が測定される。具体的には、励起光の一部を分光器56を通して光電子増倍管31に入射させて、励起光パルスと光電子パルスの時間間隔が測定される。このときは、フィルター57は取り除かれる。そして、試料Aを置いた場合と試料Aをミラー等に置き換えた場合のそれぞれに関して、TAC58に接続された演算装置60を用いて光電子パルスの頻度の時間変化を集計することにより、光電子増倍管31への入射光の強度変化を計測する。図7には、演算装置60によって集計された光電子パルスの頻度の時間変化を示しており、特性F2が試料Aを置き換えて励起光を測定した場合、特性F1が試料Aを置いて蛍光を測定した場合を示している。そこで、演算装置60において、特性F1の傾きより寿命τ1が、特性F2の傾きより寿命τ2が、それぞれ計算され、それらの関係から下記式;
τ2=τ12−τ22
により、試料Aから発せられる蛍光に関する蛍光寿命τが算出される。
【0049】
このような蛍光寿命測定装置51によれば、励起光と蛍光とを同じ光検出器で検出することにより、正確な装置の応答関数を求めることが可能である。従って、光検出器の応答速度の違いによる補正の必要がないため、正確に励起光パルスと蛍光パルスの時間間隔を測定することができる。その結果、蛍光寿命を簡易かつ高精度に測定することができる。
【0050】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図8は、本発明の第2実施形態に係る光電陰極101の概略構成を示す断面図である。同図に示す光電陰極101と第1実施形態にかかる光電陰極1との相違点は、半導体基板10とバッファ層11との間にエッチングストップ層102が形成されている点である。このエッチングストップ層102は、半導体基板10と格子整合するP型の半導体材料、例えば、厚さが2μm、キャリア濃度又は原子濃度が1〜10×1016/cm3のZnドープP型InGaAsP又ZnドープP型InGaAsから成る。このようなエッチングストップ層102は、凹部18の加工時にその深さを制御するために設けられている。
【0051】
図9には、光電陰極101の製造過程を示している。光電陰極101の製造方法は、凹部18の形成方法を除いた工程(図9(a)〜(b)、(d)〜(f))は、光電陰極1の工程(図2(a)〜(b)、(d)〜(f))と同様である。凹部18の加工時には、ある程度の深さまでICPエッチングを行い、その後にウェット処理を含む選択エッチング技術を用いることにより正確な深さの凹部18を実現する。例えば、半導体基板10をある程度の深さまでICPエッチングにより凹部18を加工し、その後、例えばHClにより、残った半導体基板10の部分をウェットエッチングによりエッチングする。このとき、エッチングはエッチングストップ層102との界面で自動的に停止される。さらに、H2SO4系のウェットエッチングを施すことにより、エッチングはバッファ層11とエッチングストップ層102との界面まで進んで自動的に停止する。このような加工方法により、半導体基板10によって吸収される波長の入射光の一部が光吸収層12に到達することが可能な凹部18を正確に加工することができる。
【0052】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。例えば、光電陰極1の構成としては様々な変形例を採用することが可能である。
【0053】
例えば、図10に示す本発明の変形例である光電陰極201のように、電子放出層13の表面の一部に、電子放出層13とショットキー接触された表面電極215が直接形成されていてもよい。
【0054】
また、図11に示す本発明の変形例である光電陰極301のように、電子放出層13の表面の一部に50〜150Å(オングストローム)程度の膜厚の薄膜状の表面電極315が形成されていてもよい。この表面電極315は、電子放出層13の表面の一部を覆う島状の形状を成しており、電子放出層13の露出面には光電陰極1と同様に活性層17が形成されている。また、表面電極315は、電子放出層13とショットキー接触がなされている。
【0055】
また、図12に示す本発明の変形例である光電陰極401のように、凹部18がバッファ層11と光吸収層12との界面付近まで達する深さで加工されていてもよい。また、図13に示す本発明の変形例である光電陰極501のように、バッファ層11に相当する部分が半導体基板10と同一の半導体材料によって構成されていてもよい。
【0056】
さらに、表面電極315は、電子放出層13上にメッシュ状に形成されているが、ストライプ形状、スパイラル形状等の電子放出層13に均一に分布する他の形状で形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1,101,201,301,401,501…透過型光電陰極、10…半導体基板、10a…光入射側面、11…バッファ層、12…光吸収層、13…電子放出層、14…コンタクト層、15,215,315…表面電極、16…裏面電極、17…活性層、18…凹部、18a…底部、31…光電子増倍管、41…画像増強管、51…蛍光寿命測定装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光を光電子に変換する光電陰極に関するものであり、特に入射光が電子放出面の反対側から入射する透過型光電陰極に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、入射光を検出するための電子管等に内蔵される光電陰極として、反射型光電陰極と透過型光電陰極が知られている。反射型光電陰極は入射光が電子放出面側から入射するタイプであり、透過型光電陰極は入射光が電子放出面の反対側、すなわち、光電陰極の基板側から入射するタイプである。このうち透過型光電陰極は、光電子増倍管やイメージインテンシファイヤ等に用いられてそれらの小型化に有利なばかりでなく、マイクロチャンネルプレート光電子増倍管(MCPPMT)などの時間応答性に優れた電子管にも採用されており有用である。
【0003】
この透過型光電陰極の構造の一例としては、例えば、下記特許文献1に開示されている。また、透過型光電陰極の他の構造として、広い波長帯域の光に対して感度を有するようにするために、光電陰極を例えばガラス等の透明基板上に形成するものが知られている(下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−255580号公報
【特許文献2】特開2007−123176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の透過型光電陰極では、入射光が支持基板である半導体基板側から入射されるので、950nm以下等の短波長の入射光が半導体基板により吸収されることによりこの波長領域における感度が著しく低い傾向にあった。
【0006】
これに対して、上記特許文献2に記載の光電陰極によれば、広い波長領域にわたった感度を実現することはできるが、複雑な製造プロセスが要求される。すなわち、光電陰極を作成する際に、光電陰極となるエピタキシャル半導体層を透明基板に熱圧着により接着し、半導体基板をエッチングにより選択的に除去するプロセスが必要となる。
【0007】
また、強度の異なる2種類の波長の光を光電陰極に入射させて検出する際には、出力が飽和しないようにフィルターを挿入する必要があるが、その場合には微弱光の検出感度が低下してしまい支障が生じる場合があった。
【0008】
そこで、本発明は、かかる課題に鑑みて為されたものであり、単純な製造プロセスで実現でき、強度の異なる2種類の波長の光が入射されても広い波長領域に感度を有する透過型光電陰極およびそれを備える計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の透過型光電陰極は、第1の波長の光と、第1の波長より長い第2の波長の光であって、第1の波長の光の強度より低い強度を有する光とを検出する透過型光電陰極であって、第1及び第2の波長の光が、光入射側の面に入射する第1導電型の半導体基板と、半導体基板上に積層され、第1及び第2の波長の光を吸収して光電子を生成する第1導電型の光吸収層と、光吸収層上に積層され、光電子を加速する第1導電型の電子放出層と、電子放出層上に積層された第2導電型のコンタクト層と、半導体基板の光入射側の面上及びコンタクト層上のそれぞれに形成された第1及び第2の電極とを備え、半導体基板上には光入射側の面に光吸収層に向けて伸びる凹部が形成されている。
【0010】
このような透過型光電陰極によれば、長波長で強度の低い第2の波長の光が半導体基板に入射した場合は、その光が半導体基板に吸収されることなく光吸収層に到達することにより、光吸収層で光電子が励起される。このようにして励起された光電子は、第1及び第2の電極間に印加された逆バイアス電圧により形成された内部電界によって加速されて電子放出層の表面に到達し、その表面に到達した光電子が外部に放出される。一方、短波長で強度の高い第1の波長の光が入射した場合は、その光は半導体基板で吸収されやすいが、半導体基板の凹部に入射した一部の第1の波長の光のみが半導体基板を通過して光吸収層に到達することで、光吸収層で光電子が励起され、その光電子が電子放出層の表面から外部に放出される。これにより、広い波長領域にわたって入射光を光電子に変換することができるとともに、比較的強度の高い短波長の光を減光することで短波長光の検出時の出力の飽和を防止することができる。また、凹部の大きさを調整することで分光感度特性を任意に設計することもできる。その結果、複雑な製造プロセスを必要とせずに広い波長感度を有する透過型光電陰極を実現することができる。
【0011】
凹部の底部と光吸収層との距離は、第1の波長の10倍以下である、ことが好適である。この場合、短波長の光に対する感度を効果的に向上させることができる。
【0012】
また、凹部の底部と光吸収層との距離は、第1の波長以下である、ことも好適である。この場合、短波長の光に対する感度をより一層向上させることができる。
【0013】
或いは、本発明の計測装置は、上述した透過型光電陰極を含み、第1の波長の光、及び第1の波長より長い第2の波長の光であって、第1の波長の光の強度より低い強度を有する光が入射され、第1及び第2の波長の光を電気信号に変換して出力する検出器と、検出器から出力された電気信号を基に、第1の波長の光と第2の波長の光との間の強度の時間変化の関係を測定する計測器と、を備える。
【0014】
このような計測装置によれば、本発明の透過型光電陰極を含む検出器から短波長の第1の波長の光、及び長波長の第2の波長の光のそれぞれの検出信号が出力され、計測器によってそれらの検出信号を基に第1の波長の光と第2の波長の光との間の強度変化の関係が測定される。これにより、小規模な測定系によって、強度の異なる2波長の光の間の強度変化の関係を高精度に測定することができる。
【0015】
第1の波長の光は計測対象の試料に照射する励起光であり、第2の波長の光は試料から励起光に応じて発せられた蛍光であり、計測器は、強度の時間変化の関係を計算することにより試料に関する蛍光寿命を測定する、ことも好適である。かかる構成を採れば、同じ検出器によって試料励起用の励起光と蛍光とを検出することにより、蛍光寿命を簡易かつ高精度に測定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、単純な製造プロセスで実現でき、強度の異なる2種類の波長の光が入射されても広い波長領域に感度を有する透過型光電陰極を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に透過型光電陰極の概略構成を示す断面図である。
【図2】図1の透過型光電陰極の製造過程を示す断面図である。
【図3】図1の透過型光電陰極の分光感度特性を示すグラフである。
【図4】図1の透過型光電陰極を備える光電子増倍管の構成を示す断面図である。
【図5】図1の透過型光電陰極を備える画像増強管の構成を示す断面図である。
【図6】図1の透過型光電陰極が内蔵された光電子増倍管を光検出器として用いた蛍光寿命測定装置の構成を示すブロック図である。
【図7】図6の演算装置によって集計された光電子パルスの頻度の時間変化を示すグラフである。
【図8】本発明の第2実施形態の透過型光電陰極の概略構成を示す断面図である。
【図9】図8の透過型光電陰極の製造過程を示す断面図である。
【図10】本発明の変形例である透過型光電陰極の概略構成を示す断面図である。
【図11】本発明の変形例である透過型光電陰極の概略構成を示す断面図である。
【図12】本発明の変形例である透過型光電陰極の概略構成を示す断面図である。
【図13】本発明の変形例である透過型光電陰極の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る透過型光電陰極およびそれを用いた計測装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、各図面は説明用のために作成されたものであり、説明の対象部位を特に強調するように描かれている。そのため、図面における各部材の寸法比率は、必ずしも実際のものとは一致しない。
【0019】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る光電陰極の概略構成を示す断面図である。同図に示すように、光電陰極1は、半導体基板10の上に、バッファ層11、光吸収層12、電子放出層13、及びコンタクト層14がこの順に積層されて成る。さらに、このコンタクト層14の電子放出層13とは反対側の面上には表面電極15が形成され、半導体基板10のバッファ層11とは反対側の面10a上の一部には裏面電極16が形成されている。
【0020】
半導体基板10は、P型の導電型の半導体材料からなり、主として光電陰極1の機械的強度を維持する役割を有する。また、半導体基板10の表面10aには、検出対象の2つの波長領域の入射光が入射される。例えば、半導体基板10の構成材料としては、厚さが350μm、キャリア濃度又は原子濃度が1〜10×1016/cm3のZnドープP型InPが挙げられる。このような半導体基板10は、約950nm以上の長波長の光は透過させるが、約950nm以下の短波長の光は吸収しやすいという性質を有する。
【0021】
半導体基板10上に積層されるバッファ層11は、半導体基板10と格子整合するP型の半導体材料、例えば、厚さが0.02〜0.5μm、キャリア濃度又は原子濃度が1〜10×1018/cm3のZnドープP型InPから成る。
【0022】
光吸収層12は、入射光を吸収して光電子を励起して生成する層であり、バッファ層11と格子整合するP型の半導体材料から成る。例えば、光吸収層12の構成材料としては、厚さが2μm、キャリア濃度又は原子濃度が1〜10×1016/cm3のZnドープP型InGaAsP又はZnドープP型InGaAsが挙げられる。また、光吸収層12は、そのエネルギーバンドギャップが半導体基板10より小さくされており、光吸収層12で発生した光電子が基板10側に拡散することが防止されている。
【0023】
電子放出層13は、エネルギーバンドギャップが光吸収層12よりも大きく、光吸収層12で励起された光電子を加速して光吸収層12とは反対側の表面から外部に放出する層である。この電子放出層13は、光吸収層12と格子整合するP型の半導体材料、例えば、厚さが0.5μm、キャリア濃度又は原子濃度が1〜10×1016/cm3のZnドープP型InPから成る。
【0024】
コンタクト層14は、電子放出層13と表面電極15との間に介在し電子放出層13と表面電極15との間の接触抵抗を低下させてバイアス電圧を効果的に印加するための層であり、電子放出層13と格子整合するN型の半導体材料から成る。このコンタクト層14は、例えば、厚さが0.2μm、キャリア濃度又は原子濃度が1〜5×1018/cm3のSiドープN型InPまたはSドープN型InPから構成されている。なお、コンタクト層14のエネルギーバンドギャップは電子放出層13とほぼ同じに設定されている。このような組成のコンタクト層14は、電子放出層13上の一部の表面を覆うようにメッシュ状に形成されている。
【0025】
表面電極15は、コンタクト層14上に形成されて電子放出層13の表面をメッシュ状に覆う金属電極であり、コンタクト層14とオーミック接触がなされている。また、裏面電極16は、半導体基板10のバッファ層11とは反対側の面10a、すなわち光入射側の面10a上の一部に形成された金属電極である。これらの電極15,16は、例えばTi、Al、Ag、Au、Cr及びこれらの合金から成り、表面電極15と裏面電極16との間に逆バイアス電圧を印加して光電陰極1の内部に電界を形成するために設けられる。
【0026】
また、電子放出層13の面上のコンタクト層14が形成されていない領域には、活性層17が設けられている。この活性層17は、放出される光電子に関する仕事関数を低下させるための層であり、例えば、Csなどのアルカリ金属、その酸化物、またはフッ化物を薄く塗布されることにより形成される。
【0027】
さらに、半導体基板10の光入射側の面10aの一部には、面10aからバッファ層11に向けて直線状に伸びる1以上の凹部18が形成されている。この凹部18の数、開口面積、及び深さは、設計する分光感度特性に応じて適宜設定されるが、凹部18の底部18aから光吸収層12までの距離は、2つの入射光のうちの短波長側の入射光の波長をλとした場合、10×λ以下であることが好適であり、λ以下であることがさらに好適である。これは、凹部18から光吸収層12までの距離が小さければ小さいほど光吸収層12に到達する入射光が指数関数的に増加する一方、波長λ程度の距離で有れば十分な割合の入射光が光吸収層12に到達できるからである。例えば、短波長側の入射光の波長λが600nmであって、凹部18から光吸収層12までの距離が、波長λの約0.83倍の0.5μmの場合、凹部18に入射する光の約0.7%が光吸収層12に到達することができ、波長λと同程度の距離で有れば十分に感度を持たせることができる。
【0028】
次に、上述した光電陰極1の製造方法について説明する。図2は、光電陰極1の製造過程を示す断面図である。
【0029】
まず、半導体基板10を用意し、半導体基板10上に有機金属気相成長法或いは分子線エピタキシー法によって所定の半導体ヘテロ構造がエピタキシャル成長により形成される。その結果、半導体基板10上にバッファ層11、光吸収層12、電子放出層13、及びコンタクト層14が形成される(図2(a))。なお、各層を構成する半導体としては、InP、InGaAsP、又はInGaAsを用いた例を示したが、これらの半導体に限定されるものではなく、膜厚も特定値に限定されるものではない。
【0030】
次に、半導体基板10の光入射側の面10aにマスク21が所定の膜厚で堆積され、そのマスク21の一部がフォトリソグラフィー等により所定の開口を有するように加工される(図2(b))。マスク21の材料としては、SiN、SiO2、フォトレジスト、或いは金属等を用いることができる。
【0031】
その後、半導体基板10の面10aに、誘導結合プラズマ(ICP)エッチング装置を用いて凹部18を加工する(図2(c))。この加工による凹部18の深さ、すなわち、凹部18の底部18aと光吸収層12との距離は、エッチング時間によって制御することができる。
【0032】
そして、コンタクト層14の全面に表面電極15を蒸着し、その表面電極15上にフォトレジスト22を塗布し、フォトリソグラフィーによりフォトレジスト22をメッシュ状パターンに形成する(図2(d))。
【0033】
次に、ドライエッチングにより、表面電極15及びコンタクト層14をエッチング加工し、メッシュ状の表面電極15及びコンタクト層14を形成する(図2(e))。
【0034】
最後に、フォトレジスト22を除去し、半導体基板10の光入射側の面10aの一部に裏面電極16を蒸着する(図2(f))。この際、半導体基板10の面10aには、反射防止膜を形成しても良い。
【0035】
なお、上記の製造過程は、その順序が入れ替わっていても良い。例えば、全ての膜構造を形成後に最後に凹部18を加工することもできる。
【0036】
以上説明した光電陰極1の動作について説明する。光電陰極1の光入射側の面10aには、可視光領域の第1波長の入射光と、可視光領域より長波長(例えば、赤外光領域)であって、第1波長の入射光の強度よりも低い強度の第2波長の入射光とが、別々に入射される。
【0037】
第1波長の入射光のうち凹部18の形成領域以外の面10aに入射した入射光は、半導体基板10によって吸収されて光吸収層12には到達しない。その一方で、第1波長の入射光のうち凹部18の開口に入射した入射光は、凹部18を通過して光吸収層12に到達し、その結果、光吸収層12で光電子を励起させることができる。このように、第1の入射光はその一部が光吸収層12に到達することになるので、凹部18が形成された半導体基板10は、第1波長の入射光に対するフィルタリングの役割を果たす。
【0038】
これに対して、第2波長の入射光は、半導体基板10を透過しやすいので、面10aに入射した光の大部分が光吸収層12に到達して光電子を励起させることになる。
【0039】
ここで、表面電極15及び裏面電極16との間にはバイアス電圧源19が接続されることによって逆バイアス電圧が印加され、電子放出層13と光吸収層12の内部に光電子を加速する電界が形成されている。これにより、光吸収層12で励起された光電子は、電子放出層13の表面に加速されて到達する。そして、電子放出層13の表面に活性層17が設けられて仕事関数が小さくされることにより、光電子が電子放出層13の表面から外部の真空中に放出される。つまり、光電陰極1は、光入射側の面10aに対して反対側の電子放出層13の表面から光電子を放出する、いわゆる透過型の光電陰極である。
【0040】
このように本実施形態の光電陰極1では、広い波長領域にわたって入射光を光電子に変換することができる。さらに、比較的強度の高い第1波長の光をフィルタリングして減光する一方で、比較的強度の低い第2波長の光を効率よく光電子に変換することで、短波長光検出時の出力の飽和を防止しつつ長波長光を感度良く検出することができる。特に、同一の光電陰極で2波長の光を検出することで、2波長の光の間の時間応答の関係を測定する場合に有利となる。また、光電陰極1では、凹部18を加工するだけでその他の複雑な製造プロセスを必要としない。
【0041】
図3には、光電陰極1の分光感度特性を示している。同図に示すように、半導体基板10の面10aにおける凹部18の存在しない領域の分光感度特性S1は、940nmから1650nmの範囲の長波長側のみ感度を有することを示している。これに対して、面10aにおける凹部18の存在する領域の分光感度特性S2は、短波長から長波長までの広い波長領域に感度を有することを示している。従って、光電陰極1の全体の感度特性は、感度特性S1と感度特性S2とを足し合わせた特性となるので、広い波長範囲での感度を有する。
【0042】
また、凹部18の数や開口面積を調整することで分光感度特性を任意に設計することもできる。すなわち、分光感度特性S1と分光感度特性S2の面積比を調整することで分光感度特性を任意に設計することができる。
【0043】
以下、本実施形態の光電陰極1の応用例について説明する。
【0044】
図4は、光電陰極1を備える光電子増倍管31の構成を示す断面図である。光電子増倍管31は、真空容器32内に光電陰極1、集束電極33、ダイノード34、及び陽極35を備えて構成されている。光電陰極1から放出された光電子は、集束電極33によって収束され、所定の電圧が印加された第1段目のダイノード34aに入射する。入射した光電子は2次電子増倍により2次電子を生成し、その2次電子は第1段目のダイノード34aから所定の電圧が印加された第2段目のダイノード34bに向けて放出される。それに伴い、第2段目のダイノード34bにおいて再び2次電子が放出される。このような2次電子放出を繰り返すことで、最終的には100万倍程度に増倍された2次電子が陽極35に集められて電流(電気信号)として陽極35から取り出される。2次電子増倍は電子のみを増倍するので高速かつ雑音の非常に少ない増倍が実現され、光電子増倍管31は高速かつ非常に高感度な光検出器として実現される。
【0045】
また、図5は、光電陰極1を備える画像増強管41の構成を示す断面図である。画像増強管41は、光入射窓42aと出力窓42bを有する真空容器42内に光電陰極1及びマイクロチャンネルプレート(MCP)43を備えて構成されている。光入射窓42aから入射した光に応じて光電陰極1から光電子が放出され、その光電子は所定の電圧が印加されたMCP43の入射面43aに入射する。入射した光電子はMCP43のチャンネル内で2次電子増倍により2次電子を生成し、MCP43の出射面43bからその2次電子が放出される。MCP43の入射面43aと出射面43bの間には所定の電圧が印加されており、100万倍程度に増倍された2次電子が出射面43bから放出される。出射面43bから放出された光電子は、出力窓42bの内側に形成され、所定の電圧を印加された蛍光面44に入射する。その結果、蛍光面44が外部に向けて発光する。このとき、MCP43は多数の小孔を有しているので、2次電子が2次元位置を保ったまま増倍される。これにより、入射光が光電陰極1に入射した際の位置情報を保ったままMCP43でその検出結果を増倍して蛍光面44を発光させるので、光電陰極1に入射した画像を100万倍程度に増倍して外部に出力させることが可能な検出器が実現される。
【0046】
また、光電陰極1は、その他の検出器にも適用可能であり、ダイノードや陽極の代わりに半導体のフォトダイオード等を用いて増倍を行う電子打ち込み型の電子管などへの適用も可能である。
【0047】
図6は、光電陰極1が内蔵された光電子増倍管を光検出器として用いた蛍光寿命測定装置51の構成を示すブロック図である。この蛍光寿命測定装置51は、計測対象の試料Aから発せられる長波長の蛍光と、試料Aに照射する短波長の励起光との両方を測定対象としている。蛍光寿命測定装置51では、励起光源52から発せられた励起光パルスがビームスプリッタ53及びレンズ54を通って試料Aに入射され、試料Aにおいて蛍光が発光される。この場合の励起光パルスとしては、蛍光よりも短波長のレーザ光等が用いられる。発生した蛍光は、レンズ55により集光されてから分光器56に入射され、分光器56で分光された蛍光が光電陰極1を含む光電子増倍管31によって検出される。蛍光を検出する際には、このレンズ55と分光器56との間に励起光をカットするフィルター57が挿入される。そして、光電子増倍管31の出力である光電子パルス(電流パルス)は、ストップパルスとして時間波高値コンバータ(TAC:Time-to-Amplitude Converter)58に入力される。それと並行して、ビームスプリッタ53及びPINフォトダイオード59によって分光検出された励起光パルスの検出信号が、スタートパルスとしてTAC58に入力される。このようにしてTAC58により励起光パルスと光電子パルスの時間間隔が測定される。
【0048】
さらに、蛍光寿命測定装置51では、励起光自体の時間的広がりや光検出器である光電子増倍管31の時間応答を評価するために、試料Aを反射率の弱いミラーや拡散板に置き換えた状態で励起光パルス自体が測定される。具体的には、励起光の一部を分光器56を通して光電子増倍管31に入射させて、励起光パルスと光電子パルスの時間間隔が測定される。このときは、フィルター57は取り除かれる。そして、試料Aを置いた場合と試料Aをミラー等に置き換えた場合のそれぞれに関して、TAC58に接続された演算装置60を用いて光電子パルスの頻度の時間変化を集計することにより、光電子増倍管31への入射光の強度変化を計測する。図7には、演算装置60によって集計された光電子パルスの頻度の時間変化を示しており、特性F2が試料Aを置き換えて励起光を測定した場合、特性F1が試料Aを置いて蛍光を測定した場合を示している。そこで、演算装置60において、特性F1の傾きより寿命τ1が、特性F2の傾きより寿命τ2が、それぞれ計算され、それらの関係から下記式;
τ2=τ12−τ22
により、試料Aから発せられる蛍光に関する蛍光寿命τが算出される。
【0049】
このような蛍光寿命測定装置51によれば、励起光と蛍光とを同じ光検出器で検出することにより、正確な装置の応答関数を求めることが可能である。従って、光検出器の応答速度の違いによる補正の必要がないため、正確に励起光パルスと蛍光パルスの時間間隔を測定することができる。その結果、蛍光寿命を簡易かつ高精度に測定することができる。
【0050】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図8は、本発明の第2実施形態に係る光電陰極101の概略構成を示す断面図である。同図に示す光電陰極101と第1実施形態にかかる光電陰極1との相違点は、半導体基板10とバッファ層11との間にエッチングストップ層102が形成されている点である。このエッチングストップ層102は、半導体基板10と格子整合するP型の半導体材料、例えば、厚さが2μm、キャリア濃度又は原子濃度が1〜10×1016/cm3のZnドープP型InGaAsP又ZnドープP型InGaAsから成る。このようなエッチングストップ層102は、凹部18の加工時にその深さを制御するために設けられている。
【0051】
図9には、光電陰極101の製造過程を示している。光電陰極101の製造方法は、凹部18の形成方法を除いた工程(図9(a)〜(b)、(d)〜(f))は、光電陰極1の工程(図2(a)〜(b)、(d)〜(f))と同様である。凹部18の加工時には、ある程度の深さまでICPエッチングを行い、その後にウェット処理を含む選択エッチング技術を用いることにより正確な深さの凹部18を実現する。例えば、半導体基板10をある程度の深さまでICPエッチングにより凹部18を加工し、その後、例えばHClにより、残った半導体基板10の部分をウェットエッチングによりエッチングする。このとき、エッチングはエッチングストップ層102との界面で自動的に停止される。さらに、H2SO4系のウェットエッチングを施すことにより、エッチングはバッファ層11とエッチングストップ層102との界面まで進んで自動的に停止する。このような加工方法により、半導体基板10によって吸収される波長の入射光の一部が光吸収層12に到達することが可能な凹部18を正確に加工することができる。
【0052】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。例えば、光電陰極1の構成としては様々な変形例を採用することが可能である。
【0053】
例えば、図10に示す本発明の変形例である光電陰極201のように、電子放出層13の表面の一部に、電子放出層13とショットキー接触された表面電極215が直接形成されていてもよい。
【0054】
また、図11に示す本発明の変形例である光電陰極301のように、電子放出層13の表面の一部に50〜150Å(オングストローム)程度の膜厚の薄膜状の表面電極315が形成されていてもよい。この表面電極315は、電子放出層13の表面の一部を覆う島状の形状を成しており、電子放出層13の露出面には光電陰極1と同様に活性層17が形成されている。また、表面電極315は、電子放出層13とショットキー接触がなされている。
【0055】
また、図12に示す本発明の変形例である光電陰極401のように、凹部18がバッファ層11と光吸収層12との界面付近まで達する深さで加工されていてもよい。また、図13に示す本発明の変形例である光電陰極501のように、バッファ層11に相当する部分が半導体基板10と同一の半導体材料によって構成されていてもよい。
【0056】
さらに、表面電極315は、電子放出層13上にメッシュ状に形成されているが、ストライプ形状、スパイラル形状等の電子放出層13に均一に分布する他の形状で形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1,101,201,301,401,501…透過型光電陰極、10…半導体基板、10a…光入射側面、11…バッファ層、12…光吸収層、13…電子放出層、14…コンタクト層、15,215,315…表面電極、16…裏面電極、17…活性層、18…凹部、18a…底部、31…光電子増倍管、41…画像増強管、51…蛍光寿命測定装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の波長の光と、前記第1の波長より長い第2の波長の光であって、前記第1の波長の光の強度より低い強度を有する光とを検出する透過型光電陰極であって、
前記第1及び第2の波長の光が、光入射側の面に入射する第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板上に積層され、前記第1及び第2の波長の光を吸収して光電子を生成する第1導電型の光吸収層と、
前記光吸収層上に積層され、前記光電子を加速する第1導電型の電子放出層と、
前記電子放出層上に積層された第2導電型のコンタクト層と、
前記半導体基板の前記光入射側の面上及び前記コンタクト層上のそれぞれに形成された第1及び第2の電極とを備え、
前記半導体基板上には前記光入射側の面に前記光吸収層に向けて伸びる凹部が形成されている、
ことを特徴とする透過型光電陰極。
【請求項2】
前記凹部の底部と前記光吸収層との距離は、前記第1の波長の10倍以下である、
ことを特徴とする請求項1記載の透過型光電陰極。
【請求項3】
前記凹部の底部と前記光吸収層との距離は、前記第1の波長以下である、
ことを特徴とする請求項2記載の透過型光電陰極。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の透過型光電陰極を含み、第1の波長の光、及び前記第1の波長より長い第2の波長の光であって、前記第1の波長の光の強度より低い強度を有する光が入射され、前記第1及び第2の波長の光を電気信号に変換して出力する検出器と、
前記検出器から出力された電気信号を基に、前記第1の波長の光と第2の波長の光との間の強度の時間変化の関係を測定する計測器と、
を備えることを特徴とする計測装置。
【請求項5】
前記第1の波長の光は計測対象の試料に照射する励起光であり、
前記第2の波長の光は前記試料から前記励起光に応じて発せられた蛍光であり、
前記計測器は、前記強度の時間変化の関係を計算することにより前記試料に関する蛍光寿命を測定する、
ことを特徴とする請求項4記載の計測装置。
【請求項1】
第1の波長の光と、前記第1の波長より長い第2の波長の光であって、前記第1の波長の光の強度より低い強度を有する光とを検出する透過型光電陰極であって、
前記第1及び第2の波長の光が、光入射側の面に入射する第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板上に積層され、前記第1及び第2の波長の光を吸収して光電子を生成する第1導電型の光吸収層と、
前記光吸収層上に積層され、前記光電子を加速する第1導電型の電子放出層と、
前記電子放出層上に積層された第2導電型のコンタクト層と、
前記半導体基板の前記光入射側の面上及び前記コンタクト層上のそれぞれに形成された第1及び第2の電極とを備え、
前記半導体基板上には前記光入射側の面に前記光吸収層に向けて伸びる凹部が形成されている、
ことを特徴とする透過型光電陰極。
【請求項2】
前記凹部の底部と前記光吸収層との距離は、前記第1の波長の10倍以下である、
ことを特徴とする請求項1記載の透過型光電陰極。
【請求項3】
前記凹部の底部と前記光吸収層との距離は、前記第1の波長以下である、
ことを特徴とする請求項2記載の透過型光電陰極。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の透過型光電陰極を含み、第1の波長の光、及び前記第1の波長より長い第2の波長の光であって、前記第1の波長の光の強度より低い強度を有する光が入射され、前記第1及び第2の波長の光を電気信号に変換して出力する検出器と、
前記検出器から出力された電気信号を基に、前記第1の波長の光と第2の波長の光との間の強度の時間変化の関係を測定する計測器と、
を備えることを特徴とする計測装置。
【請求項5】
前記第1の波長の光は計測対象の試料に照射する励起光であり、
前記第2の波長の光は前記試料から前記励起光に応じて発せられた蛍光であり、
前記計測器は、前記強度の時間変化の関係を計算することにより前記試料に関する蛍光寿命を測定する、
ことを特徴とする請求項4記載の計測装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−138684(P2011−138684A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297780(P2009−297780)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
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