説明

透過音制御装置

【課題】機械的な構成により、室外から室内に伝搬される音を室内の居住者が望む周波数特性の音として聴かせる。
【手段】居室内と居室外とを隔てる壁1の開口2を膜3によって塞ぐ。そして、音響反射板21と吸音材22とを積層した音響遮蔽板20を、この開口2に対向し、かつ開口2との間に間隔dを空けるようにして支持する。居室外から膜3を透過した透過音は音響遮蔽板20の音響反射板21で反射し、その反射音は音響反射板21と壁1の間隔dの側方から音響反射板21の後方へ回折し、受聴者まで伝搬する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室外から室内に聴こえる音の音質を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、防音室を遮音状態にした場合にその室内の者が感じるであろう閉塞感を軽減するための技術の開示がある。この特許文献1に開示された技術では、室内に防音室が設けられる。そして、屋外に設けられた屋外用マイクロホンと屋内における防音室の外に設けられた屋内用マイクロホンの一方または双方を操作部の操作によって選択し、この選択されたマイクロホンの収音信号を防音室内のスピーカから放音するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2755094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、室内の居住者にとっては、室外からの音が壁などによって完全に遮られると閉塞感を感じる一方で、室外からの音がそのままの音質の音として聞こえると騒々しいと感じる場合もある。マイクロホンとスピーカとを含む音信号処理系によれば、室外の音を室内の居住者の好みに合った音質の音として聞かせることができるものの、この場合、電力供給源が必要となり、その装置構成も大きくなってしまうという問題がある。
本発明は、このような背景の下に案出されたものであり、機械的な構成により、室外から室内に伝搬される音を室内の居住者が望む周波数特性の音として聴かせるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、空間を区切り且つ開口を有する境界面と間隔を空けて、前記開口と対向して支持された音響遮蔽板を有する透過音制御装置を提供する。
本発明では、境界面の外で発生した音は境界面の開口を透過して境界面の内側に伝搬する。そして、この透過音は音響遮蔽板で反射し、その反射音が境界面と音響遮蔽板の間隔の側方から後方(反射方向を前方としたときの後方)へ回折し、境界面の内側の受聴者まで伝搬する。本発明では、境界面の開口を透過してその内側に伝搬する透過音の各帯域の成分を、音響遮蔽板で反射したときと音響遮蔽板の後方へ回折したときの各々において変化させ、受聴者が望む周波数特性の音として聴かせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】この発明の第1実施形態である透過音制御装置の構成を示す図である。
【図2】同透過音制御装置を備え付けた居室内における音圧レベル上昇量の周波数特性を示すグラフである。
【図3】同透過音制御装置を備え付けた居室内における音圧レベル上昇量の周波数特性を示すグラフである。
【図4】同透過音制御装置を備え付けた居室内における音圧レベル上昇量の周波数特性を示すグラフである。
【図5】同実施形態の応用例である透過音制御装置の構成を示す図である。
【図6】同実施形態の応用例である透過音制御装置におけるA−A’断面を示す図である。
【図7】同実施形態の応用例である透過音制御装置におけるA−A’断面を示す図である。
【図8】この発明の第2実施形態である透過音制御装置の構成を示す図である。
【図9】この発明の第3実施形態である透過音制御装置と透過音制御装置が備え付けられた自動車の構成を示す図である。
【図10】図9における透過音制御装置の拡大図である。
【図11】この発明の第4実施形態である透過音制御装置と透過音制御装置が備え付けられた自動車の構成を示す図である。
【図12】図11における透過音制御装置の拡大図である。
【図13】この発明の第5実施形態である透過音制御装置と透過音制御装置が備え付けられた自動車の構成を示す図である。
【図14】図13における透過音制御装置の拡大図である。
【図15】この発明の第6実施形態である透過音制御装置と透過音制御装置が備え付けられた自動車の構成を示す図である。
【図16】図14における透過音制御装置の拡大図である。
【図17】本発明の他の実施形態である透過音制御装置における張力付与機構の構成を示す図である。
【図18】本発明の他の実施形態である透過音制御装置を示す図である。
【図19】本発明の他の実施形態である透過音制御装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態を説明する。
(第1実施形態)
以下、図面を参照し、この発明の第1実施形態を説明する。図1は、この発明の第1実施形態である透過音制御装置10の構成を示す図である。この透過音制御装置10は、居室外と居室内とを隔てる境界面である壁1に開口2を設け、この開口2を介して居室外から居室内に伝搬される音を周波数特性の調整された音として受聴者に聴かせるものである。
【0008】
図1に示すように、透過音制御装置10は、膜3と、音響遮蔽板20と、適当な本数の棒状の支持部材30とを有する。
膜3は、ポリエステル製の膜である。この膜3は、壁1の開口2を塞ぐようにして壁1に貼付される。
音響遮蔽板20は、樹脂製の音響反射板21と吸音材22とを積層した部材である。音響反射板21は、壁1と同等かそれ以下の遮音性能(面密度)をもった素材(たとえば、アクリル樹脂)を板状に成形したものである。吸音材22は、グラスウールなどの多孔質な素材からなる吸音材である。
【0009】
支持部材30は、図1に示すように、音響遮蔽板20における吸音材22のある側の面を開口2と対向させ、音響遮蔽板20と壁1の間に間隔dを空けるようにして支持する役割を果たす部材である。音響遮蔽板20が矩形をなす場合、音響遮蔽板20の4頂点付近に4本の支持部材30の各一端を貫通させることにより音響遮蔽板20を4本の支持部材30に固定し、4本の支持部材30の各他端を壁1に貫通させるか埋め込むかして固定すればよい。この場合において、4本の支持部材30として4本のボルトを使用し、各ボルトに螺合された2個のナットに挟んで音響遮蔽板20を固定してもよい。この構成では、ナットの操作により音響遮蔽板20と壁1との間隔dの調整が可能である。
【0010】
以上が、本実施形態における透過音制御装置10の構成である。居室外で発生した音は開口2を塞いでいる膜3を透過して室内に伝搬する。そして、膜3を透過した透過音は音響遮蔽板20の音響反射板21で反射し、その反射音は音響反射板21と壁1の間隔dの側方から音響反射板21の後方へ回折し、受聴者まで伝搬する。本実施形態では、室外で発生した音の各帯域の成分を、膜3を透過したとき、音響反射板21で反射したとき、および音響反射板21の後方へ回折したときの各々において変化させ、所望の周波数特性をもった音として受聴者に聴かせることができる。本願発明者は、本実施形態の効果を確認するため、以下のような検証を行った。
【0011】
まず、壁1の開口2の有無、膜3による開口2の閉塞の有無、音響遮蔽板20の有無、膜3の膜厚、開口2と音響遮蔽板20の距離、音響遮蔽板20の寸法を以下の表1に示す条件1〜13のようにし、壁1の外側でピンクノイズ音信号を音として発生させ、居室内において、壁1から50cm離れた位置にマイクロホンをおいて収音し、条件1〜13におけるマイクロホンの収音信号の各々の1/3オクターブ帯域毎の音圧レベルを求めた。なお、壁1に設ける開口2は、直径40mmの3つの孔で構成され、これら3つの孔を1列に60mmピッチで配置した。さらに、条件1における収音信号、つまり、壁1に孔を設けない条件下で得られた収音信号の各帯域の音圧レベルを基準音圧レベルとし、条件2〜13における収音信号の各帯域の音圧レベルの差異(「音圧レベル上昇量(dB)」という)の周波数特性を図2、図3、図4に示すグラフとした。
【表1】

【0012】
これらのグラフによると、壁1の開口2を塞ぐ膜3、音響遮蔽板20の寸法、および開口2と音響遮蔽板20の距離と各帯域の音圧レベル上昇量との間には以下の関係がある。
(1)図2のグラフa0は、開口2を膜3で塞がない場合における音圧レベル上昇量の周波数特性であり、グラフa1,a2,a3,a4,a5,a6は、開口2を異なる膜厚の膜3で塞いた場合における音圧レベル上昇量の周波数特性である。この図2のグラフa0,a1,a2,a3,a4,a5,a6によると、開口2を膜3で塞いだ場合は、そうでない場合と比べて概ね315Hz以上の帯域における音圧レベルの減衰量が大きいことが分かる。また、開口2を膜3で塞いだ場合はその膜3の膜厚が大きいほど315Hz以上の帯域の音圧レベル上昇量が小さい、すなわち、音圧レベルの減衰量が大きいことが分かる。従って、開口2を塞ぐ膜3の膜厚を変えることで、所定の帯域(本実施形態では315Hz)以上の周波数帯域の音圧レベル上昇量を制御することができる。
【0013】
(2)図3のグラフb0は、壁1の開口2を膜3で塞がない場合における音圧レベル上昇量の周波数特性である。また、グラフb1,b2は、壁1の開口2を塞ぐ膜3の厚さを同じとし、開口2に対向させる音響遮蔽板20の寸法を変えた場合における音圧レベル上昇量の周波数特性である。この図3では、グラフb1の1000Hz以上の帯域の音圧レベル上昇量がグラフb0の1000Hz以上の帯域の音圧レベル上昇量に比べて大きく低下している。また、グラフb2の1600Hz以上の帯域の音圧レベル上昇量がグラフb0の1600Hz以上の帯域の音圧レベル上昇量に比べて大きく低下している。よって、この図3のグラフb1,b2からは、音圧レベル上昇量が大きく低下し始める帯域は音響遮蔽板20の寸法を小さく(大きく)すると高域側(低域側)にシフトすることが分かる。従って、音響遮蔽板20の寸法を変えることで、音圧レベル上昇量が大きく低下し始める周波数を制御することができる。
【0014】
(3)図4のグラフc1,c2,c3,c4は、壁1の開口2を塞ぐ膜3の厚さを同じとし、壁1と音響遮蔽板20との間の距離を0mmから45mmまで15mm刻みで変えた場合における音圧レベル上昇量の周波数特性である。この図4において250Hz以上1000Hz以下の帯域に着目すると、グラフc2,c3,c4の音圧レベル上昇量(壁1と音響遮蔽板20との間の距離は15mm〜45mm)間には殆ど差はないが、グラフc1の音圧レベル上昇量(壁1と音響遮蔽板20との間の距離は0mm)はグラフc2,c3,c4の音圧レベル上昇量に比べて顕著に低い。よって、壁1と音響遮蔽板20との間の距離dを0mm以上の所定値(本実施形態では15mm〜45mm)から0mmへと縮めることにより、250Hz以上1000Hz以下の所定の帯域の音圧レベル上昇量を減衰させることができる。また、壁1と音響遮蔽板20との間の距離dを0mmから任意の値(本実施形態では15mm)へと拡げることにより、250Hz以上1000Hz以下の所定の帯域の音圧レベル上昇量を増加させることができる。
【0015】
以上の検討結果から、本願発明者は、図1に示した透過音制御装置10の応用例として、音響遮蔽板20の開口2に対する相対的な位置関係を変化させ得るように音響遮蔽板20を支持する支持手段を備えた透過音制御装置を考案した。
図5は、本実施形態の応用例である透過音制御装置10Aの構成を示す図であり、図6は、図5のA−A’断面を居室内側から壁1に向かって見た図である。図6に示すように、この応用例では、壁1に3つの開口2L、2C、2Rを左右一列に並べて穿設し、透過音制御装置10Aの3つの膜3L、3C、3Rをそれらの開口2L、2C、2Rを塞ぐようにして壁1に貼付する。
【0016】
透過音制御装置10Aの支持機構35において、アクチュエータ41は、壁1と直交する軸に沿って箱状の筐体31を平行移動させるアクチュエータである。筐体31内には、アクチュエータ40が固定されている。このアクチュエータ40は、筐体31から壁1に向かって垂直に突出した回転軸23を有しており、この回転軸23を回転駆動するアクチュエータである。アクチュエータ40の回転軸23の先端には、壁1に対して平行な状態で音響遮蔽板20が固定されている。ここで、音響遮蔽板20は、図6に示すように、楕円形をなし、回転軸23から音響遮蔽板20の周辺までの長さは不均一になっている。なお、回転軸23から音響遮蔽板20の周辺までの長さが不均一になるのであれば、音響遮蔽板20の形状は楕円でなくてもよい。例えば円状の音響遮蔽板20における中心から外れた位置を回転軸23に固定してもよい。
【0017】
図6に示すように、図5のA−A’断面を居室内側から壁1に向かって見た場合において、壁1の開口2L、2C、2Rのうち真中の開口2Cと回転軸23は重なっている。そして、図6に示すように、音響遮蔽板20の長軸と膜3L、3C、3Rの中心を結ぶ線とがなす角度θ(0≦θ≦90)が0度であるとき、音響遮蔽板20における開口2L、2C、2Rに対向する面の面積が最大となる。また、図7に示すように、この角度θが90度であるとき、音響遮蔽板20における開口2L、2C、2Rに対向する面の面積は最小となる。
【0018】
アクチュエータ41は、音響遮蔽板20を壁1に近づく方向または遠ざかる方向に移動させ、音響遮蔽板20と壁1との間隔dを小さくし、または音響遮蔽板20と壁1との間隔dを大きくする。
【0019】
この応用例では、アクチュエータ40,41が音響遮蔽板20における開口2L、2C、2Rに対向する面の面積や壁1との間隔dを制御する。よって、居室外から開口2L、2C、2Rの膜3L、3C、3Rを透過する透過音の周波数特性の制御の態様を、居室内の受聴者の都合に合わせて変えることができる。
【0020】
(第2実施形態)
図8は、この発明の第2実施形態である透過音制御装置10Bの構成を示す図である。図8において、図1に示すものと同じ要素には同じ符号を付してある。この透過音制御装置10Bは、居室外と居室内とを隔てる壁1における居室外側に設けられている。すなわち、第1実施形態では、壁1と受聴者(受音点)との間に透過音制御装置10及び10Aが位置する関係であったが、本実施形態では、透過音制御装置10Bと受聴者(受音点)との間に壁1が位置する関係となる。より具体的に説明すると、この透過音制御装置10Bにおける膜3は、壁1の開口2における居室外側を塞ぐようにして開口2に貼付されている。また、音響遮蔽板20は、当該音響遮蔽板20における吸音材22の側の面を開口2の側(居室内側)に向けるとともに板20と壁1の間に間隔dを空けるようにして、支持部材30に支持されている。
【0021】
本実施形態では、居室外で発生した音は、音響遮蔽板20にまず到達し、音響反射板21で一部が反射する。そして、この反射音と、居室外において発生して音響反射板21の側方を伝搬した音は、音響反射板21の後方の吸音材22のある側へ回折し、音響反射板21と壁1と間隔dの側方の空間から膜3へ伝搬し、膜3を透過した音が居室内の受聴者まで伝搬する。
【0022】
第1実施形態では、居室外の音源→膜3→音響反射板21→居室内の受聴者、という伝搬経路(以下、伝搬経路PATH1)を経由して音が伝搬されるのに対し、本実施形態では、居室外の音源→音響反射板21→膜3→居室内の受聴者、という伝搬経路(以下、伝搬経路PATH2)を経由して音が伝搬される。ここで、伝搬経路PATH1を、音源及び膜3間、膜3及び音響反射板21間、音響遮蔽板21及び受聴者間の3つの区間に分けた場合、3つの区間の各々の伝達関数はいずれも線形であるから、伝搬経路PATH1は線形システムと考えることができる。よって、伝搬経路PATH1の伝達関数とこの経路PATH1の膜3及び音響反射板21の経由順を入れ替えた伝搬経路PATH2の伝達関数は同じになる。従って、本実施形態によると、居室外において発生した音を、第1実施形態における透過音制御装置10を備え付けた場合と同じ伝達特性(周波数特性)をもった音として受聴者に聴かせることができる。
【0023】
(第3実施形態)
図9は、この発明の第3実施形態である透過音制御装置10Cと透過音制御装置10Cが備え付けられた自動車150の構成を示す図である。図10(A)は、図9における透過音制御装置10Cの拡大図である。また、図10(B)は、図10(A)を矢印A方向から見た図である。本実施形態では、自動車150のエンジンルーム151と車室内空間152とを隔てる境界面であるダッシュボード153に、車幅方向に並ぶ3つの開口154L,154C,及び154Rが設けられている。3つの開口154L,154C,及び154Rは同じ直径を持った真円状をなしている。また、エンジンルーム151内におけるエンジン155と開口154L,154C,及び154Rとの間には、エンジン155から放出される吸気音を開口154L,154C,及び154Rに導くダクト157が設けられている。
【0024】
透過音制御装置10Cは、エンジン155からダクト157及び開口154L,154C,154Rを介して車室内空間152に伝搬される吸気音を、周波数特性の調整された音として車室内空間152の受聴者に聴かせるものである。
【0025】
図9に示すように、透過音制御装置10Cは、膜119と、左右2枚の音響遮蔽板120L及び120Rと、上下2つの支持部材130U及び130Dと、制御部149とを有する。膜119は、ポリエステル製の膜である。膜119は、ダッシュボード153の開口154L,154C,及び154Rにおける車室内空間152側を塞ぐようにして開口154L,154C,及び154Rに貼付されている。
【0026】
音響遮蔽板120Lは、音響反射板121Lと吸音材122Lとを積層した部材である。音響反射板121Rは、音響反射板121Rと吸音材122Rとを積層した部材である。音響反射板121Lは、ダッシュボード153と同等かそれ以下の遮音性能(面密度)をもった素材(たとえば、アクリル樹脂)を、開口154L,154C,及び154Rの直径よりも大きな長さと幅を持った板状に成形したものである。音響反射板121Rは、音響反射板121Lと同じ素材を音響反射板121Lと同じ寸法の板状に成形したものである。吸音材122L及び122Rは、グラスウールなどの多孔質な素材からなる吸音材である。
【0027】
支持部材130U及び130Dは、音響遮蔽板120L及び120Rを、これら2枚の板120L及び120Rにおける吸音材122L及び122Rのある側の面を開口154L,154C,及び154Rと対向させ且つ両板120L及び120Rとダッシュボード153の間に間隔dを空けて支持する第1の役割と、2枚の板120L及び120Rを開口154L,154C,及び154Rと平行な面に沿って接離する方向に移動させる第2の役割とを果たす部材である。
【0028】
より具体的に説明すると、支持部材130Uは、ダッシュボード153における開口154L,154C,及び154Rよりも僅かに上の位置から車室内空間152に向かって起立している。支持部材130Dは、ダッシュボード153における開口154L,154C,及び154Rよりも僅かに下の位置から車室内空間152に向かって起立している。支持部材130Uにおける支持部材130Dと対向する面には車幅方向(開口154L,154C,及び154Rと平行な方向)に延在するレール131Uが設けられている。支持部材130Dにおける支持部材130Uと対向する面には車幅方向に延在するレール131Dが設けられている。
【0029】
音響遮蔽板120L及び120Rにおける上下の端面は、支持部材130Uのレール131U及び支持部材130Dのレール131Dに各々嵌め込まれている。支持部材130Uのレール131U内における中心からみて車幅方向の両側には、駆動部132UL及び132URが設けられている。また、支持部材130Dのレール131D内における中心からみて車幅方向の両側には、駆動部132DL及び132DRが設けられている。駆動部132UL,132UR,132DL,及び132DRは、制御部149による制御の下、音響遮蔽板120L及び120Rをレール131U及び131Dに沿って車幅方向に移動させる。
【0030】
制御部149は、エンジン155内における回転数センサ(クランク角センサ)からエンジン155の回転数を示す検知信号の供給を受ける。そして、制御部149は、エンジン155の回転数が高くなると、音響遮蔽板120L及び120Rを互いに外側(音響遮蔽板120L及び120Rが離れる側)に向かって移動させる制御信号を駆動部132UL,132UR,132DL,及び132DRに供給する。また、制御部149は、エンジン155の回転数が低くなると、音響遮蔽板120L及び120Rを互いに内側(音響遮蔽板120L及び120Rが近づく側)に向かって移動させる制御信号を駆動部132UL,132UR,132DL,及び132DRに供給する。駆動部132UL,132UR,132DL,及び132DRは、この制御信号に従い、音響遮蔽板120L及び120Rを外側または内側に移動させる。
【0031】
ここで、制御部149が、音響遮蔽板120L及び120Rを両板120L及び120Rが接している状態から互いに離れるように外側に移動させると、両板120L及び120R間に矩形状の隙間ができ、これら2枚の板120L及び120Rにおける開口154L,154C,及び154Rに対向する面の面積が狭くなる。反対に、音響遮蔽板120L及び120Rを両板120L及び120R間に隙間ができている状態から内側に移動させると、2枚の板120L及び120Rにおける開口154L,154C,及び154Rに対向する面の面積が広くなる。
【0032】
以上が、本実施形態における透過音制御装置10Cの構成である。この透過音制御装置10Cによると、自動車150の走行中にエンジン155から放出される吸気音の各帯域の成分を、当該吸気音が膜119を透過したとき、音響反射板121L及び121Rで反射したとき、音響反射板121L及び121Rとダッシュボード153の間隔dの側方の空間から後方へ回折したときの各々において変化させ、周波数成分の調整された音として車室内空間152の受聴者に聴かせることができる。
【0033】
また、透過音制御装置10Cは、エンジン155の回転数が上がり吸気音に含まれる倍音成分の周波数(基音の周波数及び2次、3次…の倍音の周波数)が高くなると、音響遮蔽板120L及び120Rにおける開口154L,154C,及び154Rに対向する面の面積を狭め、エンジン155の回転数が下がり吸気音に含まれる倍音成分の周波数が低くなると、音響遮蔽板120L及び120Rにおける開口154L,154C,及び154Rに対向する面の面積を拡げる。
【0034】
図3の検討結果から分かるように、音圧レベル上昇量が大きく低下し始める帯域は、音響遮蔽板120L及び120Rにおける開口154L,154C,及び154Rに対向する面の面積が小さくなると高域側にシフトし、この面積が大きくなると低域側にシフトする。よって、この透過音制御装置10Cによると、エンジン155の回転数が上がり吸気音の倍音成分の周波数が高くなった場合、その倍音成分の変化に連動して、透過音制御装置10Cを透過する音の周波数帯域も高域側に変化する。従って、エンジン155の回転数に応じて変化する吸気音の倍音成分を積極的に選択して受聴者に聴かせることができる。
【0035】
(第4実施形態)
図11は、この発明の第4実施形態である透過音制御装置10Dと透過音制御装置10Dが備え付けられた自動車150の構成を示す図である。図12(A)は、図11における透過音制御装置10Dの拡大図である。また、図12(B)は、図12(A)を矢印B方向から見た図である。本実施形態は、第3実施形態における透過音制御装置10Cを透過音制御装置10Dにより置き換えたものである。
【0036】
図11に示すように、透過音制御装置10Dでは、ダッシュボード153における開口154L,154C,及び154Rに膜219が貼付されている。また、ダッシュボード153における開口154L,154C,及び154Rよりも僅かに下の位置からは居室内空間152に向かって円柱状の支持部材230が起立している。支持部材230は、音響遮蔽板220L及び220Rを、これら2枚の板220L及び220Rにおける吸音材222L及び222Rのある側の面を開口154L,154C,及び154Rと対向させ且つ両板220L及び220Rと開口154L,154C,及び154Rとの間に間隔dを空けて支持する第1の役割と、2枚の板220L及び220Rを開口154L,154C,及び154Rと平行な面に沿って相反する方向に回転させる第2の役割とを果たす部材である。
【0037】
より具体的に説明すると、支持部材230の先端には、音響遮蔽板220Lの右下隅と音響遮蔽220Rの左下隅が連結されている。支持部材230の先端における音響遮蔽板220L及び220Rが連結された部分には駆動部232がある。駆動部232は、制御部249による制御の下、音響遮蔽板220L及び220Rを両板220L及び220Rと当該駆動部232との連結部分を回転軸として回転させる。
【0038】
制御部249は、エンジン155の回転数が高くなると、音響遮蔽板220Lを反時計回り、音響遮蔽板220Rを時計回りに回転させる制御信号を駆動部232に供給する。また、制御部249は、エンジン155の回転数が低くなると、音響遮蔽板220Lを時計回り、音響遮蔽板220Rを反時計回りに回転させる制御信号を駆動部232に供給する。そして、駆動部232は、この制御信号に従って、音響遮蔽板220L及び220Rを回転させる。本実施形態の透過音制御装置10Dによると、エンジン155の回転数が上がり吸気音の倍音成分の周波数が高くなった場合、その倍音成分の周波数の変化に連動して、透過音制御装置10Dを透過する音の周波数帯域も高域側に変化する。従って、エンジン155の回転数に応じて変化する吸気音の倍音成分を積極的に選択して受聴者に聴かせることができる。
【0039】
(第5実施形態)
図13は、この発明の第5実施形態である透過音制御装置10Eと透過音制御装置10Eが備え付けられた自動車350の構成を示す図である。図14は、図13における透過音制御装置10Eの拡大図である。本実施形態では、自動車350のボディ351の底板352における排気管354の真上の位置に、開口353が設けられている。透過音制御装置10Eは、自動車350の走行中に排気管354から放出され、開口353から車室内空間358に伝わる排気音を、周波数特性の調整された音として車室内空間358の受聴者に聴かせるものである。
【0040】
図13に示すように、透過音制御装置10Eは、膜319と音響遮蔽板320とを有している。膜319は、ポリエステル製の膜である。膜319は、ボディ351の底板352の開口353における車室内空間358側を塞ぐようにして開口353に貼付され、車室外の水や砂等の異物および外気(熱気,冷気)の侵入を防いでいる。音響遮蔽板320は、音響反射板321と吸音材322とを積層した部材である。この音響遮蔽板320は、当該音響遮蔽板320における吸音材322のある側の面を開口353と対向させ、音響遮蔽板320とボディ351の底板352との間に間隔dを空けるようにして支持されている。音響遮蔽板320の支持は、種々の手段によって実現できる。例えば、ボディ351の底板352上に固定されている座席(図示略)における開口353の真上の部分に音響遮蔽板320を貼付するとよい。
【0041】
以上が、本実施形態における透過音制御装置10Eの構成である。この透過音制御装置10Eは、自動車350の走行中に排気管354から放出される排気音の各帯域の成分を、当該排気音が膜319を透過したとき、音響反射板321で反射したとき、音響反射板321と底板352の間隔dの側方から後方へ回折したときの各々において変化させる。この透過音制御装置10Eによると、エンジン155の回転数が上がり排気音の倍音成分の周波数が高くなった場合、その変化に連動して、透過音制御装置10Eを透過する音の周波数帯域も高域側に変化する。従って、エンジン155の回転数に応じて変化する排気音の倍音成分を積極的に選択して受聴者に聴かせることができる。
【0042】
(第6実施形態)
図15は、この発明の第6実施形態である透過音制御装置10Fと透過音制御装置10Fが備え付けられた自動車450の構成を示す図である。図16は、図15における透過音制御装置10Fの拡大図である。本実施形態では、自動車450のボディ451におけるマフラー455の真上の部分に、開口453が設けられている。
【0043】
透過音制御装置10Fは、自動車450の走行中にマフラー455から放出され、開口453から車室内空間458に伝わる消音処理済みの排気音を、周波数特性の調整された音として車室内空間458の受聴者に聴かせるものである。この透過音制御装置10Fにおける膜419は、ボディ451の開口453における車室内空間458側を塞ぐようにして開口453に貼付されている。音響遮蔽板420は、当該音響遮蔽板420における吸音材422のある側の面を開口453と対向させ、音響遮蔽板420とボディ451との間に間隔dを空けるようにして支持されている。音響遮蔽板420の支持は、種々の手段によって実現できる。例えば、ボディ451における開口453の周囲から複数本の支柱を起立させ、これら複数本の支柱の先端に音響遮蔽板420を固定するとよい。
【0044】
以上が、本実施形態における透過音制御装置10Fの構成である。この透過音制御装置10Fは、自動車350の走行中にマフラー455から放出される消音処理済みの排気音の各帯域の成分を、当該排気音が膜419を透過したとき、音響反射板421で反射したとき、音響反射板421とボディ451の間隔dの側方から後方へ回折したときの各々において変化させる。この透過音制御装置10Fによると、エンジン155の回転数が上がり排気音の倍音成分の周波数が高くなった場合、その変化に連動して、透過音制御装置10Fを透過する音の周波数帯域も高域側に変化する。従って、エンジン155の回転数に応じて変化する排気音の倍音成分を積極的に選択して受聴者に聴かせることができる。
【0045】
以上、この発明の第1〜第6実施形態について説明したが、この発明には他にも実施形態があり得る。例えば、以下の通りである。
(1)上記第1実施形態の透過音制御装置10,10Aにおいて、開口2を塞ぐ膜3に、図17に示すような構成の張力付与機構60を設けてもよい。この実施形態にかかる透過音制御装置では、壁1の開口2の内周が居室内側に切り立って中空円筒部62を形成しており、中空円筒部62の開口端が膜3によって塞がれている。さらに詳述すると、この膜3は、リング状の枠63に張られており、この枠63は、中空円筒部62を内側に収容した状態で、張力付与機構60に支持されている。この張力付与機構60は、枠63を居室外側に向かって移動させる機構を含んでいる。そして、張力付与機構60が枠63を居室外側に向かって移動させると、膜3の周辺部を枠63が引っ張り、中空円筒部62の開口端により支持された膜3に与えられる張力が増加する。この透過音制御装置10Eにおいて、張力付与機構60によって膜3に張力を与えると、居室外からこの中空円筒部62を介して居室内に伝搬する音の低域の成分を大きく減衰させることができる。
【0046】
(2)上記第1〜第6実施形態の透過音制御装置10,10A,10B,10C,10D,10E,及び10Fにおいて、膜厚を異にする複数の種類の膜を用意し、開口を塞ぐ膜を交換できるようにしてもよい。また、音響遮蔽板として、特性の異なったものを複数種類用意し、開口に向けて支持する音響遮蔽板を交換できるようにしてもよい。
【0047】
(3)上記第1〜第6実施形態の透過音制御装置10,10A,10B,10C,10D,10E,及び10Fにおいて、開口は丸形状である必要はなく、四角やその他の形状であってもよい。また、開口の個数を2個や4個以上にしてもよい。この場合において、それらの複数個の開口の形状や寸法を異ならせてもよい。また、複数個の開口を設ける場合において、それらを左右1列以外の配置にしてもよい。また、複数個の開口を、それらの開口により模様が表わされるようなレイアウトを持って配置してもよい。
【0048】
(4)上記第1実施形態における透過音制御装置10Aでは、音響遮蔽板20を支持する手段が壁1に対して垂直な回転軸を有し、この回転軸廻りに音響遮蔽板20を回転させ、壁1の開口2L、2C、2Rに対する音響遮蔽板20の姿勢を変化させた。しかし、壁1の開口2L、2C、2Rに対する音響遮蔽板20の姿勢を変化させる手段はこれに限らない。たとえば、音響遮蔽板20を支持する手段に上下方向や左右方向に延伸する壁1に平行な回転軸を設け、この回転軸廻りに音響遮蔽板20を回転させることにより、音響遮蔽板20の開口2L、2C、2Rに対する姿勢を変化させてもよい。
【0049】
(5)上記第1実施形態における透過音制御装置10Aでは、音響遮蔽板20を支持する手段が壁1に対して垂直な平行移動軸を有し、この平行移動軸に沿って音響遮蔽板20を壁1に近づく方向または遠ざかる方向に移動させることにより、音響遮蔽板20の開口2L、2C、2Rとの間隔dを変化させた。しかし、このようにする代わりに、たとえば、音響遮蔽板20を支持する手段に壁1と平行な面に沿って上下または左右に延びた平行移動軸を設け、この平行移動軸に沿って音響遮蔽板20を平行移動させることにより、音響遮蔽板20における開口2L、2C、2Rとの対向面の面積を変化させてもよい。要するに、音響遮蔽板20自体を平行に移動させる手段により当該音響遮蔽板20が支持されていればよい。また、図18に示すように、壁1における開口2L、2C、2Rから上下に僅かずつ離れた各位置と音響遮蔽板20における吸音材22のある側の面との間に、パンタグラフ機構により伸縮するリンク部材530U及び530Dを設け、このリンク部材530U及び530Dの伸縮より音響遮蔽板20と開口2L、2C、2Rとの距離を変化させてもよい。この場合において、音響遮蔽板20における吸音材22のある側の面の周縁に沿ってパッキン531を設けるとともに、壁1側にパッキン531と対向するパッキン532を設けるとよい。この実施形態によると、リンク部材530U及び530Dを完全に折り畳んだ状態において音響遮蔽板20及び壁1間にできる僅かな隙間が、パッキン531及び532により塞がれ、居室外から居室内への音の伝搬が完全に遮断される。
【0050】
(6)上記第1実施形態の透過音制御装置10において、形状記憶合金等の支持部材により音響遮蔽板20を支持し、開口2L、2C、2Rに対する音響遮蔽板20の位置や姿勢を受聴者の手指の力によって変えられるようにしてもよい。
【0051】
(7)上記第1〜第6実施形態の透過音制御装置10,10A,10B,10C,10D,10E,及び10Fにおいて、音響遮蔽板を吸音材を用いずに音響反射板のみにより構成し、膜に吸音材を貼付してもよい。要するに、開口と音響反射板の間に吸音材が介挿されていればよい。
【0052】
(8)上記第1〜第6実施形態の透過音制御装置10,10A,10B,10C,10D,10E,及び10Fにおいて、開口に膜を貼付することなく、開口を通過した音が音響遮蔽板まで直接伝搬されるような構成としてもよい。
【0053】
(9)上記第3及び第4実施形態の透過音制御装置10C及び10Dでは、音響遮蔽板における開口2L、2C、2Rに対向する面の面積をエンジン155の回転数に応じて制御した。しかし、この面積を自動車150の走行状態を示す他の検知情報(例えば、車速、アクセルの踏み込み量、助手席や後部座席への乗車人数、単位時間当たりの燃料消費量、単位時間当たりの排気ガスの排出量、単位時間当たりの二酸化炭素の排出量など)に応じて制御してもよい。
【0054】
(10)上記第3〜第6実施形態において、エンジン、排気管、マフラー以外から発せられる音を車室内空間に取り込み、周波数成分の調整された音として受聴者に聴かせてもよい。例えば、自動車のボディにおける後輪の真上の部分に開口を設けてその開口に膜を貼付し、膜を透過して車室内空間に伝わるタイヤ音を、周波数成分の調整された音として受聴者に聴かせてもよい。また、自動車のボディにおける天井の部分に開口を設けてその開口に膜を貼付し、膜を透過して車室内空間に伝わる風切り音を、周波数成分の調整された音として受聴者に聴かせてもよい。周波数成分の調整の対象となる音は、受聴者がいる居室や車室内空間の外の音であればいずれでもよく、上記第1〜第6実施形態に限定されるものではない。
【0055】
(11)上記第3及び第4実施形態では、制御部149及び249が、音響遮蔽板を移動させたり回転させることによって、音響遮蔽板における開口と対向する面の面積を変化させた。しかし、開口自体の形状を変化させることにより、音響遮蔽板における開口と対向する面の面積を変化させてもよい。
【0056】
(12)上記第1〜第6実施形態では、音響遮蔽板は平らな音響反射板に吸音材を積層したものであった。しかし、図19(A)に示すように、音響遮蔽板20を、開口2の側に凸んだ湾曲状の音響遮蔽板20’により置き換えてもよい。また、図19(B)に示すように、音響遮蔽板20を、開口2の側の反対側に凸んだ湾曲状の音響遮蔽板20”により置き換えてもよい。
【0057】
(13)上記第1〜第6実施形態は、本発明を、居室外から居室内に伝わる音や車室内空間の外からその中に伝わる音の周波数成分を変える用途に適用したものであった。しかし、本発明をこれら以外の用途に適用してもよい。例えば、防音壁により外部から遮音区画された楽器練習室における防音壁に開口を設け、この開口に膜を貼付し、開口の内側(室内側)に音響遮蔽板を備え付けてもよい。この実施形態によると、楽器練習室の室外において発生する騒音の周波数成分を膜及び音響遮蔽板により調整し、楽器の練習の妨げにならないような音質の音として室内の者(演奏者)に聴かせることができる。また、ボイラなどの雑音や騒音の発生源を内部に収容して外部から遮音区画する筐体の壁に開口を設け、この開口に膜を貼付し、開口の外側に音響遮蔽板を備え付けてもよい。この実施形態によると、ボイラの稼働により発生する騒音の周波数成分を膜及び音響遮蔽板により調整し、耳障りな感じを和らげた音として筐体外の者(歩行者)に聴かせることができる。
【0058】
(14)上記第3及び第4実施形態において、自動車150におけるダッシュボード153の内側(車室内空間152側)または外側(エンジンルーム151側)に実装済みの構造体によって音響遮蔽板を代用してもよい。例えば、ダッシュボード153の内側ほぼ中央に固定されているエアコンユニットにおける空気吹出口の反対側の面とダッシュボード153との間に間隔dを確保し、エンジンルーム151内に連通する開口154’をダッシュボード153におけるエアコンユニットと向かい合う位置に設け、この開口154’に膜119’を貼付するとよい。この実施形態によると、自動車150の走行中にエンジン155から放出される吸気音の各帯域の成分を、当該吸気音が膜119’を透過したとき、エアコンユニットにおける空気噴出口と反対側の面で反射したとき、その面とダッシュボード153の間隔dの側方の空間から車室内空間152側へ回折したときの各々において変化させることができる。よって、音響遮蔽板を使わずに上記第3及び第4実施形態と同じ効果を得ることができる。
【0059】
(16)上記第3実施形態では、支持部材130U及び130Dのレール131U及び131Dは車幅方向(開口154L,154C,及び154Rと平行な方向)に延在しており、音響遮蔽板120L及び120Rはレール131U及び131Dに沿って車幅方向に移動した。しかし、音響遮蔽板120L及び120Rを開口と平行な方向よりも僅かに傾いた方向に移動させてもよい。この実施形態によると、音響遮蔽板120L及び120Rにおける開口に対向する面の面積と響遮蔽板120L及び120Rと開口との間の間隔dの両方を音響遮蔽板120L及び120Rの移動により変化させることができる。
【0060】
(17)上記第4実施形態では、2枚の音響遮蔽板220L及び220Rが1つの支持部材230に支持されていた。しかし、音響遮蔽板220L及び220Rが個別の支持部材230’及び230”により各々支持されてもよい。
(18)上記第2実施形態において、音響遮蔽板120の枚数を3枚以上としてもよい。また、第3実施形態において、音響遮蔽板220の枚数を3枚以上としてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…壁、2…開口、3,119,219,319,419…膜、10,10A,10B,10C,10D,10E,10F…透過音制御装置、20,120,220,320,420…音響遮蔽板、21,121,221,321,421…音響反射板,122,222,322,422…吸音材、35…支持機構、31…筐体、40,41…アクチュエータ、130,230…支持部材、149,249…制御部、150,350,450…自動車、151…エンジンルーム、152…車室内空間、153…ダッシュボード、155…エンジン、157…ダクト、530…リンク部材、531,532…パッキン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間を区切り且つ開口を有する境界面と間隔を空けて、前記開口と対向して支持された音響遮蔽板を有することを特徴とする透過音制御装置。
【請求項2】
前記開口には膜が貼付されていることを特徴とする請求項1に記載の透過音制御装置。
【請求項3】
前記音響遮蔽板の前記開口に対する相対的な位置関係を変化させ得るように前記音響遮蔽板を支持する支持手段を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の透過音制御装置。
【請求項4】
前記支持手段は、前記音響遮蔽板を平行移動させる平行移動軸を有することを特徴とする請求項3に記載の透過音制御装置。
【請求項5】
前記支持手段は、前記音響遮蔽板を回転させる回転軸を有することを特徴とする請求項3または4に記載の透過音制御装置。
【請求項6】
前記音響遮蔽板は、前記回転軸から周辺までの長さが不均一であることを特徴とする請求項5に記載の透過音制御装置。
【請求項7】
前記音響遮蔽板における前記開口と対向する面または前記境界面における前記音響遮蔽板と対向する面に吸音材を貼付したことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1の請求項に記載の透過音制御装置。
【請求項8】
前記音響遮蔽板は、複数枚の板からなり、
前記支持手段は、前記複数枚の板を、互いが接離する方向に移動させる
ことを特徴とする請求項3〜7のいずれか1の請求項に記載の透過音制御装置。
【請求項9】
前記音響遮蔽板は、複数枚の板からなり、
前記支持手段は、前記複数枚の板を、当該複数枚の板を支持する部分を回転軸として相反する方向に回転させる
ことを特徴とする請求項3〜7のいずれか1の請求項に記載の透過音制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−271700(P2010−271700A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80917(P2010−80917)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】