説明

逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルム、その製造方法、及び多層フィルム

【課題】ガスバリア性、機械的特性、透明性、耐熱収縮性に優れた逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムを安定して連続的に製造する。
【解決手段】
非晶性ポリグリコール酸シートを、40〜70℃の延伸温度で、一次延伸倍率2.5〜7.0倍で一方向に延伸して一軸延伸フィルムを成形する工程1;一軸延伸フィルムを、5〜40℃の範囲内であって、工程1の延伸温度より5℃以上低い温度環境内を通過させる工程2;一軸延伸フィルムを、35〜60℃の範囲内であって、工程2での温度より3℃以上高い延伸温度で、工程1での延伸方向とは横断方向に延伸し、面積倍率11〜30倍の二軸延伸フィルムを成形する工程3;及び二軸延伸フィルムを70〜200℃で熱処理する工程4;を含む製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性、機械的強度、透明性、耐熱収縮性などに優れた逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムとその製造方法に関する。本発明の逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムは、酸素透過係数が小さく、落球衝撃強度と突刺強度が高く、ヘイズ値が小さく透明性に優れ、かつ、熱固定により耐熱収縮性に優れているため、単層または多層フィルムとして、例えば、食品、医薬品、電子材料などの包装材料;培養シート、人工皮膚、スキャホールドなどの医療用材料;などの広範な技術分野において好適に利用することができる。
【背景技術】
【0002】
ポリグリコール酸は、分子鎖中に脂肪族エステル結合を含む脂肪族ポリエステルの一種であるため、土壌や海中などの自然界に存在する微生物または酵素により分解されることが知られている。近年、プラスチック製品の増大に伴い、プラスチック廃棄物の処理が大きな課題となっているが、ポリグリコール酸は、環境に対する負荷が小さい生分解性高分子材料として注目されている。ポリグリコール酸は、生体内分解吸収性を有しており、手術用縫合糸、人工皮膚、スキャホールドなどの医療用高分子材料としても利用されている。
【0003】
ポリグリコール酸は、グリコール酸の脱水重縮合、グリコール酸アルキルエステルの脱アルコール重縮合、グリコール酸塩の脱塩重縮合、グリコリドの開環重合などの方法により製造することができる。これらの製造法の中でも、グリコリドの開環重合法によれば、高分子量のポリグリコール酸(「ポリグリコリド」ともいう)を効率よく製造することができる。
【0004】
ポリグリコール酸は、他の脂肪族ポリエステルなどの生分解性高分子材料に比べて、耐熱性、ガスバリア性、機械的物性などに優れているため、シート、フィルム、容器、射出成形品などとして、新たな用途展開が図られている。しかし、ポリグリコール酸の熱的特性は、必ずしも溶融加工や延伸加工に適していないという問題があった。
【0005】
一般に、ポリグリコール酸は、溶融加工時にガスを発生する傾向があるなど、溶融安定性が不十分である。ポリグリコール酸の単独重合体やグリコール酸の繰り返し単位の含有割合が高い共重合体は、結晶性の重合体であるが、成形加工時に迅速に結晶化する傾向が強いため、延伸加工が極めて困難である。
【0006】
結晶性のポリグリコール酸は、例えば、シートの形状に溶融加工し、急冷することによって、非晶性のポリグリコール酸シートを得ることができる。このような非晶物を試料とし、示差走査熱量計(DSC)を用いて、ポリグリコール酸の熱的特性を分析することができる。
【0007】
DSCを用いてポリグリコール酸の非晶物を一定の昇温速度で昇温すると、その熱量曲線に最初に現れる吸熱ピークとしてガラス転移温度Tgが検出され、次いで、発熱ピークとして結晶化温度Tcが検出される。さらに昇温すると、ポリグリコール酸の結晶化が進むが、一定温度以上の高温になると溶融を開始し、吸熱ピーク温度として融点Tmが検出される。溶融状態にあるポリグリコール酸は、非晶性である。溶融状態にあるポリグリコール酸の試料を一定の降温速度で降温すると、ポリグリコール酸の結晶化が始まり、最初の発熱ピークとして、結晶化温度Tcが検出される。
【0008】
一般に、結晶性の熱可塑性樹脂の延伸加工は、ガラス転移温度Tgと結晶化温度Tcとの間の温度条件下で行われている。熱可塑性樹脂をシートや繊維の形状に溶融成形し、次いで、延伸加工を行う場合、その延伸温度がガラス転移温度Tgより低いと、シートや繊維が硬いため、延伸を行うことができないか、延伸加工中に破断し易い。延伸温度が結晶化温度Tcより高いと、結晶化が進行するため、延伸することができないか、延伸加工中に破断が生じ易い。
【0009】
ところが、ポリグリコール酸は、DSC測定における昇温過程で検出されるガラス転移温度Tgと結晶化温度Tcとの間の温度差Tc−Tgが比較的小さいため、延伸加工が困難である。一般に、該温度差Tc−Tgが小さい熱可塑性樹脂は、シートや繊維などを延伸加工したり、延伸ブロー成形したりする場合、延伸可能な温度領域が狭いという問題がある。他方、ポリグリコール酸は、溶融状態から降温する過程で検出される結晶化温度Tcが高く、融点Tmと結晶化温度Tcとの間の温度差Tm−Tcが比較的小さい。該温度差Tm−Tcが小さい熱可塑性樹脂は、押出加工したシートや繊維などが溶融状態から冷却する際に結晶化し易く、透明な成形品を得ることが困難である。そのため、ポリグリコール酸の成形加工は、成形温度や延伸温度などの成形条件が極めて狭い範囲に限定されるという問題があった。
【0010】
ポリグリコール酸の二軸延伸フィルムは、延伸加工によって、ガスバリア性や機械的特性がさらに向上することが期待されている。そのため、ポリグリコール酸の二軸延伸フィルムを製造するための様々な方法が提案されている。
【0011】
例えば、特開平10−60136号公報(特許文献1)には、ポリグリコール酸を含有する熱可塑性樹脂材料からなる配向フィルムとその製造方法が開示されている。特許文献1には、ポリグリコール酸を含有する熱可塑性樹脂材料を、Tダイからシート状に溶融押出し、急冷した後、Tg〜Tcの温度で延伸ロールを通して縦方向に延伸し、次いで、Tg〜Tcの温度で横方向に延伸する二軸配向フィルムの製造方法が開示されている。
【0012】
特開2006−130848号公報(特許文献2)には、二軸延伸ポリグリコール酸フィルムと二軸延伸スルホネート基含有芳香族ポリエステルフィルムとの積層フィルムが提案されている。特許文献2には、延伸方法の一例として、ポリグリコール酸とスルホネート基含有芳香族ポリエステルとを共押出し、得られた積層シートを延伸ロールにより、55〜70℃の延伸温度で縦方向に延伸し、次いで、一軸延伸フィルムをテンターにより、60〜90℃の延伸温度で横方向に延伸する方法が開示されている。
【0013】
特開2006−182017号公報(特許文献3)には、ポリグリコール酸を主体とする樹脂からなる二軸延伸フィルムの製造方法が提案されている。特許文献3には、ポリグリコール酸を主体とする樹脂を未延伸シートに製膜した後、延伸時におけるフィルム温度を(Tg+2)〜(Tg+20)℃の範囲内に調整して、縦方向と横方向に逐次二軸延伸する方法が開示されている。
【0014】
このように、ポリグリコール酸を逐次二軸延伸して二軸延伸ポリグリコール酸フィルムを製造する様々な方法が提案されているが、その殆どは、延伸温度の制御に主たる特徴点を有するものである。しかし、単に延伸温度を制御する従来法では、工業的規模で、満足できる諸特性を備えた逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムを製造することは、困難であった。
【0015】
より具体的に、延伸温度を制御する方法では、延伸加工時にフィルムの波うち現象や白化現象が生じ易い。延伸ロールとテンター延伸機とを組み合わせたロール・テンター式による逐次二軸延伸法では、ロール延伸により成形した一軸延伸フィルムが収縮し易いため、その両端部をテンター延伸機のチャックによって確実に把持させて二軸延伸することが困難である。そのため、従来法では、ガスバリア性、機械的特性、透明性、耐熱収縮性などに優れた逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムを安定して連続的に製造することが極めて困難であった。
【0016】
【特許文献1】特開平10−60136号公報
【特許文献2】特開2006−130848号公報
【特許文献3】特開2006−182017号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の課題は、ガスバリア性、機械的特性、透明性、耐熱収縮性などに優れた逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムを安定して連続的に製造する方法を提供することにある。
【0018】
本発明の他の課題は、ガスバリア性、機械的強度、透明性、耐熱収縮性などに優れた逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムを提供することにある。
【0019】
本発明の更なる課題は、前記の如き諸特性に優れた逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムと基材とを積層してなる層構造を有する多層フィルムを提供することにある。
【0020】
逐次二軸延伸方式により、ポリグリコール酸の二軸延伸フィルムを成形することができるならば、通常のロール・テンター併用方式によって、フラットな逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムを得ることができる。しかし、前記の通り、逐次二軸延伸法を適用したのでは、実際には、満足できる特性を有する逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムを安定して連続的に製造することが困難である。
【0021】
本発明者らは、ポリグリコール酸の逐次二軸延伸フィルムの製造が困難な原因について詳細な検討を行ったところ、次のような問題点のあることが判明した。延伸加工に供するポリグリコール酸の非晶性シート自体は、ポリグリコール酸の溶融成形温度や急冷温度などの条件を精密に制御することにより、比較的容易に製造することができる。
【0022】
逐次二軸延伸法では、通常、非晶性シートの温度を延伸に適した温度に制御して、延伸ロールを用いて、縦方向〔長手方向(機械方向;MD)〕に一次延伸する。延伸ロールによる延伸は、ロール群間の回転数の差を利用して行う。結晶性の熱可塑性樹脂を用いる場合、一次延伸工程での延伸温度は、前述のTg〜Tcの範囲内の温度とする。逐次二軸延伸では、通常、上記の一次延伸工程により成形した一軸延伸フィルムを、テンター延伸機を用いて、横方向(機械方向に対して横断方向;TD;「幅方向」ともいう)に二次延伸する。
【0023】
しかし、ポリグリコール酸の一軸延伸フィルムは、一次延伸工程において比較的高い延伸温度に保持されている一方、ポリグリコール酸の結晶化温度Tcが低く結晶化が起こり易いため、一次延伸後であってテンター延伸機での二次延伸加工前に、部分的な結晶化が進行し易いことが判明した。
【0024】
二次延伸加工前に一軸延伸フィルムの結晶化が進行しすぎると、二次延伸加工自体が困難か不可能になる。一軸延伸フィルムの部分的な結晶化が生じると、二次延伸加工をすることができても、得られた逐次二軸延伸フィルムの機械的特性や透明性が低下したり、主としてフィルム中央部に白化したスジ状の痕跡が現れたりする。
【0025】
ポリグリコール酸の一軸延伸フィルムは、ポリグリコール酸に特有の性質により、長手方向及び幅方向に収縮し易いことが判明した。一軸延伸フィルムに収縮や白化が生じると、最終的に得られる二軸延伸フィルムの外観が損なわれる。それに加えて、一次延伸フィルムが長手方向及び幅方向に収縮すると、ロール・テンター併用方式の逐次二軸延伸方式では、一軸延伸フィルムの両端部をテンター延伸機のチャックによって確実に把持することが困難となる。その結果、安定した延伸加工が困難となり、延伸加工中にフィルムが波打ったり、得られた逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムに厚み斑が生じたりする。
【0026】
一軸延伸フィルムが幅方向に収縮すると、その中央部の厚みが相対的に厚くなることに加えて、中央部の予熱時間過多により、その部分での白化現象がさらに進行し易くなる。一軸延伸フィルムは、分子鎖が配向しているため、結晶化し易く、特に、テンター延伸時に最も延伸開始の遅い中央部が延伸前に結晶化する傾向が強い。その結果、得られた逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムにおいて、テンター未延伸部や延伸不足部が白いスジ状の痕跡となり、外観の著しい悪化を招く。
【0027】
そこで、本発明者は、これらの諸問題を解決し、前記課題を達成するために鋭意研究を行った結果、一次延伸工程と二次延伸工程における延伸温度と延伸倍率を特定の範囲内に制御するとともに、一次延伸工程後に、一次延伸工程で形成された一軸延伸フィルムの温度を特定の範囲内に冷却させてから、二次延伸工程に供給する方法に想到した。
【0028】
具体的に、結晶性ポリグリコール酸を含有する熱可塑性樹脂材料を用いて非晶性のシートを作製し、該シートを逐次二軸延伸するに際し、先ず、一次延伸工程において、40〜70℃の温度条件下に比較的高い延伸倍率で一軸延伸を行う。次いで、該一軸延伸フィルムを、一次延伸工程におけるよりも低い温度環境内を通過させて冷却させる。この冷却工程によって、一軸延伸フィルムの結晶化の進行を抑制するとともに、長手方向及び幅方向への収縮も抑制することができる。
【0029】
冷却工程を配置して、一軸延伸フィルムの長手方向及び幅方向の収縮を抑制しているため、二次延伸工程では、テンター延伸機を用いた場合であっても、一軸延伸フィルムの両端部を、テンター押出機のチャックにより確実に把持することができる。二次延伸工程では、一軸延伸フィルムの結晶化の進行が抑制されているため、Tgを少し下回る比較的低い温度から60℃までの範囲内の温度で延伸することができる。
【0030】
一次延伸工程での一次延伸倍率と二次延伸工程での二次延伸倍率とを調整し、これらの積で表わされる面積倍率が11〜30倍の範囲内となるように二軸延伸倍率を制御する。逐次二軸延伸フィルムの面積倍率を高くすることによって、透明性に優れ、機械的物性に優れた逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムを製造することができる。最後の工程では、二軸延伸フィルムを緊張下に熱処理することによって、分子配向状態を固定し、耐熱収縮性を付与することができる。
【0031】
本発明の製造方法によれば、ガスバリア性に優れ、落球衝撃強度や突刺強度などの機械的物性に優れ、ヘイズ値が小さく、白いスジ状の痕跡の発生や厚み斑がなく、耐熱収縮性を備えた逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムを、安定して連続的に製造することができる。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0032】
かくして、本発明によれば、逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムの製造方法において、下記工程1乃至4
(1)下記式1
【0033】
【化3】

【0034】
で表わされる繰り返し単位を60質量%以上の割合で含む結晶性ポリグリコール酸を含有する樹脂材料から形成された非晶性のポリグリコール酸シートを、40〜70℃の範囲内の延伸温度で、一次延伸倍率が2.5〜7.0倍の範囲内となるように一方向に延伸して、一軸延伸フィルムを成形する工程1;
(2)該一軸延伸フィルムを、5〜40℃の範囲内であって、かつ、該工程1での延伸温度より5℃以上低い温度に調整した温度環境内を通過させる工程2;
(3)該工程2を経た一軸延伸フィルムを、35〜60℃の範囲内であって、かつ、該工程2での温度より3℃以上高い延伸温度で、二次延伸倍率が2.5〜6.0倍の範囲内となるように、該工程1での延伸方向とは横断方向に延伸し、一次延伸倍率と二次延伸倍率との積で表わされる面積倍率が11〜30倍の範囲内の二軸延伸フィルムを成形する工程3;及び
(4)該二軸延伸フィルムを、70〜200℃の範囲内の温度で熱処理する工程4;
を含む逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムの製造方法が提供される。
【0035】
また、本発明によれば、下記式1
【0036】
【化4】

【0037】
で表わされる繰り返し単位を60質量%以上の割合で含む結晶性ポリグリコール酸を含有する樹脂材料の逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムであって、
(a)温度23℃及び相対湿度80%の条件下で測定した酸素透過係数が、1.0×10−14〜1.0×10−12cm・cm/cm・s・cmHgの範囲内であり、
(b)温度23℃及び相対湿度50%の条件下で測定した落球衝撃強度が、50〜300J/mの範囲内であり、
(c)温度23℃及び相対湿度50%の条件下で測定した突刺強度が、6〜30J/mの範囲内であり、並びに
(d)日本工業規格JIS K7361に従って、フィルム幅方向の中央部を5cm×5cm角にカットした試料を用いて測定したヘイズ値が、0.01〜10%の範囲内である
ことを特徴とする逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムが提供される。
【0038】
さらに、本発明によれば、前記の逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムと基材とを積層してなる層構造を有する多層フィルムが提供される。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、ガスバリア性、機械的強度、透明性、耐熱収縮性などに優れた逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムを、安定して連続的に製造することができる。本発明によれば、酸素透過係数が小さくガスバリア性に優れ、落球衝撃強度や突刺強度などの機械的物性に優れ、ヘイズ値が小さく透明性に優れ、しかも耐熱収縮性に優れる逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムを提供することができる。
【0040】
さらに、本発明によれば、これらの優れた諸特性を有する逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムと基材とを積層してなる層構造を有する多層フィルムを提供することができる。本発明の逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムは、単層または多層フィルムとして、例えば、食品、医薬品、電子材料などの包装材料;培養シート、人工皮膚、スキャホールドなどの医療用材料;などの広範な技術分野において好適に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
1.ポリグリコール酸
本発明のポリグリコール酸は、式1
【0042】
【化5】

【0043】
で表される繰り返し単位を有する単独重合体または共重合体である。
【0044】
ポリグリコール酸の式1で表される繰り返し単位の含有割合は、60質量%以上であり、好ましくは65質量%以上、より好ましくは70質量%以上、特に好ましくは75質量%または80質量%以上である。式1で表わされる繰り返し単位の上限値は、100質量%である(単独重合体)。ポリグリコール酸中の式1で表される繰り返し単位の含有割合が低すぎると、結晶性が低下して、ガスバリア性、機械的物性、耐熱性などの諸特性が損なわれる。
【0045】
本発明のポリグリコール酸は、融点を有する結晶性ポリマーである。このようなポリグリコール酸は、グリコール酸、グリコール酸アルキルエステル、またはグリコール酸塩を重縮合する方法により製造することができる。また、ポリグリコール酸は、グリコリドの開環重合によって合成することができる。
【0046】
重縮合や開環重合は、通常、触媒の存在下に実施する。触媒の種類は、特に限定されないが、例えば、ハロゲン化スズ(例えば、二塩化スズ、四塩化スズ)、有機カルボン酸スズ(例えば、オクタン酸スズ、オクチル酸スズ)などのスズ系化合物;アルコキシチタネートなどのチタン系化合物;アルコキシアルミニウムなどのアルミニウム系化合物;ジルコニウムアセチルアセトンなどのジルコニウム系化合物;ハロゲン化アンチモン、酸化アンチモンなどのアンチモン系化合物;などを挙げることができる。
【0047】
ポリグリコール酸としてグリコール酸の共重合体を製造するには、グリコリドやグリコール酸などのモノマーと各種コモノマーとを共重合させる。コモノマーとしては、例えば、シュウ酸エチレン(即ち、1,4−ジオキサン−2,3−ジオン)、ラクチド、ラクトン類(例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、ピバロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン)、トリメチレンカーボネート、1,3−ジオキサンなどの環状モノマー;乳酸、3−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシブタン酸、4−ヒドロキシブタン酸、6−ヒドロキシカプロン酸などのヒドロキシカルボン酸またはそのアルキルエステル;エチレングリコール、1,4−ブタンジオール等の脂肪族ジオールと、こはく酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸またはそのアルキルエステルとの実質的に等モルの混合物;またはこれらの2種以上を挙げることができる。グリコリドとグリコール酸を併用してもよい。
【0048】
これらのコモノマーの中でも、共重合させ易く、物性に優れた共重合体が得られ易い点で、ラクチド、カプロラクトン、トリメチレンカーボネートなどの環状モノマー;乳酸などのヒドロキシカルボン酸などが好ましい。ポリグリコール酸の原料としてグリコリドを用いる場合には、コモノマーとして、ラクチド、カプロラクトン、トリメチレンカーボネートなどの環状モノマーを使用することが好ましい。グリコリドと環状モノマーとは、開環共重合させることが容易である。ポリグリコール酸の共重合体の好ましい例としては、グリコリドとラクチドとの共重合体、グリコリドとカプロラクトンとの共重合体などが挙げられる。ラクチドとしては、入手の容易性の観点から、L−ラクチドが好ましい。カプロラクトンとしては、ε−カプロラクトンが好ましい。
【0049】
コモノマーは、全仕込みモノマーの通常40質量%以下、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、特に好ましくは25質量%または20質量%以下の割合で使用する。コモノマーの共重合割合が大きくなると、生成重合体の結晶性が損なわれ易くなる。ポリグリコール酸の結晶性が失われると、逐次二軸延伸フィルムのガスバリア性、機械的物性、耐熱性などが低下する。
【0050】
ポリグリコール酸の重合装置としては、押出機型装置、パドル翼を持った縦型装置、ヘリカルリボン翼を持った縦型装置、ニーダー型の横型装置、アンプル型装置、環状型装置などの様々な装置の中から、適宜選択することができる。
【0051】
重合温度は、実質的な重合開始温度である120℃から300℃までの範囲内の温度で、目的に応じて設定することができる。重合温度は、好ましくは130〜250℃、より好ましくは140〜220℃、特に好ましくは150〜200℃である。重合温度が高くなりすぎると、生成重合体が熱分解を受け易くなる。重合時間は、3分間〜20時間、好ましくは5分間〜18時間の範囲内である。重合時間が短すぎると、重合が十分に進行し難く、長すぎると、生成重合体が着色し易くなる。ポリグリコール酸は、重合後、固体を粒度の揃ったペレットの形状に賦形することが好ましい。
【0052】
本発明で使用するポリグリコール酸は、ヘキサフルオロイソプロパノール溶媒を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定におけるポリメチルメタクリレート換算の重量平均分子量(Mw)が、通常30,000〜800,000、好ましくは50,000〜500,000の範囲内にあることが好ましい。本発明のポリグリコール酸は、融点Tmより20℃高い温度(Tm+20℃)及び剪断速度122sec−1で測定した溶融粘度が、通常100〜10,000Pa・s、好ましくは200〜8,000Pa・s、より好ましくは300〜4,000Pa・sである。ポリグリコール酸の重量平均分子量または溶融粘度が低すぎると、逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムの機械的物性や耐熱性が低下傾向を示し、高すぎると、溶融押出加工や延伸加工が困難となることがある。
【0053】
ポリグリコール酸は、合成時に、その末端が水酸基及び/またはカルボキシル基となる。本発明で使用するポリグリコール酸は、非酸形成性のOH基封止剤、及び/またはカルボキシル基封止剤によって変性することができる。ポリグリコール酸は、加水分解性を示し、かつ、溶融加工中に着色し易い。ポリグリコール酸に非酸形成性のOH基封止剤、及び/またはカルボキシル基封止剤を配合することにより、耐水性や加水分解性を改善し、着色を抑制することができる。
【0054】
非酸形成性のOH基封止剤における「非酸形成性」とは、ポリグリコール酸中に残存するOH基と結合してこれを封止した際にカルボキシル基を生成しないことを意味している。非酸形成性のOH基封止剤としては、ジケテン化合物、イソシアネート類などが用いられる。これらのOH基封止剤の中でも、反応性の観点から、ジケテン化合物が好ましい。OH基末端封止剤は、ポリグリコール酸100質量部に対して、通常0.01〜20質量部、好ましくは0.1〜10質量部の割合で用いられる。
【0055】
カルボキシル基封止剤としては、カルボキシル基末端封止作用を有し、脂肪族ポリエステルの耐水性向上剤として知られている化合物を用いることができる。カルボキシル基封止剤の具体例としては、例えば、N,N−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドなどのカルボジイミド化合物;2,2′−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2−フェニル−2−オキサゾリン、スチレン・イソプロペニル−2−オキサゾリンなどのオキサゾリン化合物;2−メトキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジンなどのオキサジン化合物;N−グリシジルフタルイミド、シクロへキセンオキシド、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレートなどのエポキシ化合物;などが挙げられる。
【0056】
これらのカルボキシル基封止剤の中でも、カルボジイミド化合物が好ましく、芳香族、脂環族、及び脂肪族のいずれのカルボジイミド化合物も用いられるが、とりわけ芳香族カルボジイミド化合物が好ましく、特に純度の高いものが耐水安定化効果を与える。カルボキシル基封止剤は、ポリグリコール酸100質量部に対して、通常0.01〜10質量部、好ましくは0.05〜2.5質量部の割合で用いられる。
【0057】
本発明では、ポリグリコール酸の単独重合体または共重合体を、単独で樹脂材料として使用することができる。本発明では、ポリグリコール酸に、その他の熱可塑性樹脂をブレンドした樹脂組成物を樹脂材料として使用することもできる。
【0058】
ポリグリコール酸にブレンドする他の熱可塑性樹脂としては、ポリグリコール酸のガスバリア性や機械的物性、透明性などの諸特性を阻害しないものが好ましい。他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体などのポリオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの熱可塑性ポリエステル樹脂;ポリスチレン、ポリα−メチルスチレンなどのポリ芳香族ビニル樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの塩素含有樹脂;ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリウレタン樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)、他の脂肪族ポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0059】
その他の熱可塑性樹脂の中でも、生分解性を有し、コンポスト化が容易であるという点からは、ポリ乳酸などの他の脂肪族ポリエステル樹脂が好ましく、耐水性、延伸加工性、ヒートシール性などの観点からは、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂が好ましい。
【0060】
ポリグリコール酸とその他の熱可塑性樹脂とのブレンドにおけるポリグリコール酸の混合割合は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。その他の熱可塑性樹脂の含有量が多すぎると、逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムのガスバリア性、機械的物性、透明性などが低下する傾向を示す。
【0061】
本発明で使用するポリグリコール酸には、溶融安定性を高めるために、熱安定剤をブレンドすることができる。熱安定剤としては、重金属不活性化剤、ペンタエリスリトール骨格構造を有するリン酸エステル、少なくとも1つの水酸基と少なくとも1つの長鎖アルキルエステル基とを持つリン化合物、炭酸金属塩などが好ましい。これらの化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0062】
ホスファイト系酸化防止剤などのリン系化合物の多くは、むしろポリグリコール酸の溶融安定性を阻害する作用を示すため、熱安定剤として使用することは好ましくない。これに対して、ペンタエリスリトール骨格構造を有するリン酸エステルは、特異的にポリグリコール酸の溶融安定性を向上させる作用を示す。ペンタエリスリトール骨格構造を有するリン酸エステルの具体例としては、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(モノノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(4−オクタデシルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
【0063】
リン系化合物の中では、少なくとも1つの水酸基と少なくとも1つの長鎖アルキルエステル基とを持つリン化合物が好ましい。長鎖アルキルの炭素原子数は、8〜24個の範囲が好ましい。このようなリン化合物の具体例としては、モノまたはジ−ステアリルアシッドホスフェートが挙げられる。
【0064】
重金属不活性剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−N−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル−ベンズアミド、ビス〔2−(2−ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジン〕ドデカン二酸ばどが挙げられる。炭酸金属塩としては、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウムなどが挙げられる。
【0065】
熱安定剤の配合割合は、ポリグリコール酸100質量部に対して、通常0.001〜5質量部、好ましくは0.003〜3質量部、より好ましくは0.005〜1質量部である。
【0066】
ポリグリコール酸には、所望により、可塑剤、無機フィラー、触媒失活剤、熱線吸収剤、紫外線吸収剤、光安定剤、防湿剤、防水剤、撥水剤、滑剤、離型剤、カップリング剤、顔料、染料などの各種添加剤をブレンドすることができる。これらの各種添加剤は、逐次二軸延伸ポリグリコール酸の延伸加工性、ガスバリア性、透明性、機械的物性などを損なわない範囲内で、極少量の割合でブレンドすることが好ましい。これらの添加剤の多くは、それぞれの機能や用途に応じて、ポリグリコール酸100質量部に対して、通常10質量部以下、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下の割合でブレンドされる。
【0067】
2.非晶性のポリグリコール酸シート
本発明では、前記式1で表わされる繰り返し単位を60質量%以上の割合で含む結晶性ポリグリコール酸を含有する樹脂材料を用いて、非晶性のポリグリコール酸シートを作製する。非晶性のポリグリコール酸シートの製造方法は、特に限定されないが、好ましくは押出機を用いてポリグリコール酸または該ポリグリコール酸とその他の成分を溶融混練し、該押出機の先端に設けたTダイからシートの形状に溶融押出し、溶融シートを結晶化温度Tcより低い温度に急冷する方法を採用することができる。急冷に際し、5〜70℃、多くの場合10〜50℃の範囲内の表面温度に保持した金属ドラム上にキャストして急冷する方法を採用することが好ましい。
【0068】
溶融混練は、ポリグリコール酸の融点Tm以上300℃以下の範囲内の温度で行うことが好ましい。Tダイから押出された溶融状態のポリグリコール酸シートを急冷することにより、結晶化を抑制して、実質的に非晶性のポリグリコール酸シートを得ることができる。このような非晶性シートの製造方法自体は、この技術分野においてよく知られた技術である。
【0069】
非晶性のポリグリコール酸シートは、ロールに巻回したものを使用することができるが、連続的なラインで逐次二軸延伸フィルムを製造する場合、該ラインの最初の工程として、前記の製造工程を配置することが好ましい。
【0070】
非晶性のポリグリコール酸シートの厚みは、通常70〜1,000μm、好ましくは100〜800μm、より好ましくは150〜600μmである。したがって、該シートは、フィルムとしての厚み(250μm未満)を有する場合を含んでいる。そのため、該シートを未延伸フィルムと呼ぶことがある。
【0071】
非晶性のポリグリコール酸シートの結晶化度は、延伸加工を妨げない範囲内に設定する必要があり、通常20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下である。結晶化度は、密度勾配管を用いてサンプルの密度を求め、サンプル密度ρ、結晶密度ρ、及び非晶密度ρから、下記式
結晶化度=〔ρ(ρ−ρ)/ρ(ρ−ρ)〕×100
に基づいて算出することができる。
【0072】
3.一次延伸工程1
本発明では、非晶性のポリグリコール酸シートを、40〜70℃の範囲内の延伸温度で、一次延伸倍率が2.5〜7.0倍の範囲内となるように一方向に延伸して、一軸延伸フィルムを成形する。この工程を一次延伸工程と呼ぶ。
【0073】
逐次二軸延伸フィルムを製造するには、一般に、延伸ロールとテンター延伸機とを組み合わせた方式が採用されている。ロール延伸とテンター延伸の組み合わせの順序は、任意である。延伸の順序も、縦方向(シートが送り出される機械方向;MD)及び横方向(機械方向とは横断する方向;TD)のいずれが先でもよい。一次延伸工程と二次延伸工程を連続的に行ってもよいが、所望により、オフラインで行ってもよい。
【0074】
本発明では、一次延伸工程を、延伸ロールを用いたロール延伸により行い、次の二次延伸工程を、テンター延伸機を用いたテンター延伸により行い、かつ、これらの工程を連続的に行う方法を採用することが、生産性を高め、しかも各工程での延伸条件を精密に制御する上で好ましい。したがって、一次延伸工程において、非晶性のポリグリコール酸シートを、延伸ロールを用いて縦方向(MD)に一軸延伸することが好ましい。
【0075】
一次延伸工程において、ポリグリコール酸シートを40〜70℃の範囲内の延伸温度に加熱する方法としては、該シートを加熱ロールに通す方法、該シートを加熱した乾熱雰囲気中を通す方法などが挙げられる。
【0076】
一次延伸工程における延伸温度は、好ましくは43〜68℃、より好ましくは45〜65℃である。ポリグリコール酸単独重合体のガラス転移温度Tgは、約39℃である。ポリグリコール酸単独重合体の結晶化温度Tcは、該単独重合体の熱履歴によって変動する場合があるが、約90℃である。したがって、一次延伸工程は、ポリグリコール酸のTg以上Tc以下の温度範囲内で実施されることになる。ポリグリコール酸のTg及びTcは、コモノマーとの共重合によって変化するが、共重合体を用いる場合においても、同様に、40〜70℃の範囲内であって、かつ、それらのTg以上Tc以下の温度範囲内で一次延伸を実施することが好ましい。一次延伸工程での延伸温度が高すぎると、一軸延伸フィルムの結晶化が進行して、フィルムの破断が生じたり、次の二次延伸加工を行うことが困難か不可能となったりする。
【0077】
一次延伸工程での延伸倍率は、2.5〜7.0倍、好ましくは3.0〜6.5倍、より好ましくは3.0〜6.0倍の範囲内である。一次延伸工程での延伸倍率を上記範囲内に設定することによって、フィルムの破断などによる生産性の低下を防ぎ、かつ、逐次二軸延伸フィルムに十分なガスバリア性や機械的強度を付与することができる。
【0078】
一次延伸工程での延伸速度は、好ましくは0.2〜50m/分、より好ましくは0.5〜30m/分である。延伸速度とは、延伸ロールを用いた場合、該延伸ロールを出る速度を意味する。この延伸速度が低すぎると、生産性が低下し、高すぎると、シートの延伸温度への加熱時間が不足して、延伸が困難か不可能となることがある。
【0079】
4.冷却工程2
一次延伸工程で得られた一軸延伸フィルムは、5〜40℃の範囲内であって、かつ、該工程1での延伸温度より5℃以上低い温度に調整した温度環境内を通過させる。この工程2によって、一軸延伸フィルムを程度の温度に冷却する。そのため、この工程2を冷却工程と呼ぶ。
【0080】
一軸延伸フィルムは、一次延伸工程で40〜70℃の範囲内にまで加熱されているが、ポリグリコール酸の結晶化温度Tcが低く、かつ、ポリグリコール酸の結晶化速度が速いため、次の二次延伸加工を行う前に部分的に結晶化する傾向にある。一軸延伸フィルムが部分的に結晶化すると、二次延伸加工が困難か不可能となる。
【0081】
ポリグリコール酸の一軸延伸フィルムは、長手方向及び幅方向に収縮する傾向を示し、次のテンター延伸機において二次延伸するに際し、テンター押出機のチャックによって一軸延伸フィルムの両端部を把持するのが困難となる。その結果、安定した連続的な延伸加工を行うことが困難となる。オフライン生産方式により、一軸延伸フィルムをロールに巻き取って、この巻き取った一軸延伸フィルムをテンター延伸機に供給して二軸延伸する場合も、一次延伸工程後に冷却工程によって一軸延伸フィルムの結晶化や収縮を防止してから巻き取っておくことが、二軸延伸フィルムの円滑な製造を行う上で重要となる。
【0082】
一軸延伸フィルムが長手方向及び幅方向に収縮すると、厚み斑が生じたり、延伸加工時に波打ったりする。一軸延伸フィルムが長手方向及び幅方向に収縮すると、特に中央部の厚みが増し、蓄熱によって、その部分の結晶化がさらに進行するため、白化したスジ状の痕跡が現れ易くなると推定される。
【0083】
本発明では、一次延伸工程と二次延伸工程との間に冷却工程を配置することにより、一軸延伸フィルムの結晶化を抑制するとともに、長手方向及び幅方向の収縮を抑制することができる。冷却工程によって、安定した連続的な延伸加工を行うことができる上、テンター延伸機内での未延伸部または延伸不足部での結晶化に伴う白いスジ状の痕跡の発生を抑制し、諸特性に優れた逐次二軸延伸フィルムを製造することができる。
【0084】
冷却工程において、一軸延伸フィルムを、例えば、水冷、冷却ロール、スポットクーラー、空調機、外気温度の調節などの冷却手段によって、前記範囲内の温度に調整した温度環境内を通過させる。冷却手段としては、スポットクーラー、冷却ロール、空調機またはこれらの組み合わせが好ましい。この冷却工程によって、一軸延伸フィルムの少なくとも表面温度を冷却温度と同程度の温度にまで冷却する。該温度環境内の通過時間は、一次延伸工程での延伸温度や冷却温度などによって変動するが、連続運転の場合、生産性の観点から、好ましくは2〜60秒間、より好ましくは5〜50秒間である。オフラインでの運転の場合、冷却時間に上限はなく、一次延伸工程の直後から二次延伸工程の直前まで冷却しておくことが望ましい。
【0085】
冷却温度は、5〜40℃、好ましくは6〜38℃、さらに好ましくは8〜35℃である。冷却温度が低すぎると、一軸延伸フィルムが過度に冷却され、次の二次延伸加工に必要とされる延伸温度にまで昇温させることが困難となる。冷却温度が高すぎると、一軸延伸フィルムの結晶化が促進され、フィルムの破断が生じ易くなる。
【0086】
冷却温度(T)は、5〜40℃の範囲内であって、かつ、一次延伸工程での延伸温度(T)より5℃以上低い温度に設定するが、この温度差(T−T)は、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上である。この温度差を大きくすることによって、一軸延伸フィルムの結晶化の進行と収縮を迅速かつ効率的に抑制することができることに加えて、冷却工程での通過時間を短縮することができる。
【0087】
5.二次延伸工程3
前記冷却工程2を経た一軸延伸フィルムを、35〜60℃の範囲内であって、かつ、該冷却工程2での冷却温度より3℃以上高い延伸温度で、二次延伸倍率が2.5〜6.0倍の範囲内となるように、一次延伸工程1での延伸方向とは横断方向に延伸し、一次延伸倍率(t)と二次延伸倍率(m)との積(t×m)で表わされる面積倍率が11〜30倍の範囲内の二軸延伸フィルムを成形する。この工程を二次延伸工程3と呼ぶ。二次延伸工程では、テンター延伸機を用い、MDに延伸した一軸延伸フィルムを横方向(TD)に延伸することが好ましい。
【0088】
二次延伸工程における延伸温度は、35〜60℃、好ましくは37〜60℃、多くの場合38〜55℃である。二次延伸工程での延伸温度が高すぎると、延伸中にフィルムの結晶化による破断が生じ、連続的な操業を行うことが困難か不可能となる。一次延伸工程1及び冷却工程2を経た一軸延伸フィルムは、適度の熱履歴を受けているため、比較的低い延伸温度であっても、二次延伸加工を円滑に行うことができる。
【0089】
二次延伸工程において、一軸延伸フィルムを35〜60℃の範囲内の延伸温度に加熱する方法としては、該一軸延伸フィルムを加熱ロールに通す方法、該一軸延伸フィルムを加熱した乾熱雰囲気中を通す方法などが挙げられる。
【0090】
二次延伸工程では、冷却工程を経た一軸延伸フィルムを、35〜60℃の範囲内であって、かつ、該冷却工程での冷却温度(T)より3℃以上高い延伸温度(T)で延伸するが、この温度差(T−T)は、好ましくは5℃以上、より好ましくは5〜50℃である。この温度差が小さすぎると、冷却した一軸延伸フィルムを延伸可能な温度にまで昇温するのに時間がかかり過ぎて、生産性が低下したり、二次延伸加工が困難となったりする。
【0091】
二次延伸工程では、二次延伸倍率が2.5〜6.0倍の範囲内となるように、一次延伸工程での延伸方向とは横断方向に延伸を行う。前記一次延伸工程で縦方向(MD)に延伸した場合には、二次延伸工程では、横方向(TD)に延伸を行う。二次延伸工程における延伸倍率は、好ましくは3.0〜5.5倍、より好ましくは3.5〜5.0倍である。
【0092】
本発明では、二次延伸工程において、一次延伸倍率(t)と二次延伸倍率(m)との積(t×m)で表わされる面積倍率が11〜30倍の範囲内の二軸延伸フィルムが得られるように、各延伸工程での延伸倍率を制御する。この面積倍率は、好ましくは11〜28倍、より好ましくは12〜26倍、さらに好ましくは13〜25倍である。この面積倍率が小さすぎると、フィルムの白化現象が生じ易くなる。そのため、面積倍率が小さな逐次二軸延伸フィルムは、ヘイズ値が大きくなり、透明性が低下する傾向にある。
【0093】
ポリグリコール酸シートを二軸延伸することによって、厚みが薄くても、高い機械的物性と優れた酸素ガスバリア性を示し、機械的物性に異方性がない逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムを得ることができる。面積倍率を大きくすることによって、未延伸部や延伸不足の部分が生じて白化するのを防ぐことができる。面積倍率を大きくすることによって、ガスバリア性や機械的物性を向上させることもできる。
【0094】
ガスバリア性は、二軸延伸フィルムの酸素透過係数を測定することによって定量的に評価することができる。機械的物性は、例えば、二軸延伸フィルムの落球衝撃強度や突刺強度を測定することによって定量的に評価することができる。
【0095】
二次延伸工程での延伸速度は、好ましくは0.2〜50m/分、より好ましくは0.5〜30m/分である。この延伸速度が低すぎると、生産性が低下し、高すぎると、一軸延伸フィルムの延伸温度への加熱時間が不足して、二次延伸加工が困難か不可能となることがある。
【0096】
6.熱処理工程4
二次延伸工程3の後、得られた二軸延伸フィルムを、70〜200℃の範囲内の温度で熱処理を行う。この工程を熱処理工程4と呼ぶ。この熱処理工程では、二軸延伸フィルムを、緊張させた状態で、70〜200℃の範囲内の温度に調整した乾熱雰囲気下を通過させて熱処理することが好ましい。
【0097】
二軸延伸フィルムを緊張下に熱処理するには、例えば、テンター押出機内で、二軸延伸フィルムの横方向及び縦方向が収縮しないように緊張させた状態で、熱処理する方法を採用することが好ましい。テンター押出機の内側と外側の両方で熱処理を行ってもよい。
【0098】
熱処理温度は、熱処理効率の観点から、好ましくは80〜130℃、より好ましくは100〜160℃である。熱処理時間は、好ましくは30秒間から5分間、より好ましくは1〜3分間程度である。この熱処理工程によって、二軸延伸フィルム中の分子配向が固定され、それによって、熱収縮が抑制される。熱処理温度が低すぎると、十分な熱固定を行うことが困難となり、二軸延伸フィルムの耐熱収縮性が低下する。
【0099】
熱処理によって逐次二軸延伸フィルムの熱固定を行わないと、フィルムの収縮が生じるほか、収縮部分が白化したり、収縮部分が未延伸シートと変わらなくなりガスバリア性が低下したりする。
【0100】
7.逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルム
本発明の逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムは、前記式1で表わされる繰り返し単位を60質量%以上の割合で含む結晶性ポリグリコール酸を含有する樹脂材料の逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムであって、
(a)温度23℃及び相対湿度80%の条件下で測定した酸素透過係数が、1.0×10−14〜1.0×10−12cm・cm/cm・s・cmHgの範囲内であり、
(b)温度23℃及び相対湿度50%の条件下で測定した落球衝撃強度が、50〜300J/mの範囲内であり、
(c)温度23℃及び相対湿度50%の条件下で測定した突刺強度が、6〜30J/mの範囲内であり、並びに
(d)日本工業規格JIS K7361に従って、フィルム幅方向の中央部を5cm×5cm角にカットした試料を用いて測定したヘイズ値が、0.01〜10%の範囲内である
との諸特性を有している。
【0101】
本発明の逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムは、均一に二軸延伸かつ熱固定されているため、最終的には均一に結晶化しており、白化や厚み斑がなく、ガスバリア性や機械的物性、透明性に優れている。
【0102】
本発明の逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムの酸素透過係数は、好ましくは1.0×10−14〜8.0×10−13cm・cm/cm・s・cmHg、より好ましくは1.3×10−14〜7.0×10−13cm・cm/cm・s・cmHgの範囲内である。酸素透過係数が小さいことは、本発明の逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムがガスバリア性、特に酸素ガスバリア性に優れていることを示している。そのため、本発明の逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムは、食品包装材料などの酸素ガスバリア性が要求される用途に好適である。
【0103】
本発明の逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムの落球衝撃強度は、好ましくは、60〜300J/m、より好ましくは70〜280J/mである。本発明の逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムは、落球衝撃強度に優れているため、包装材料として用いた場合に、様々な衝撃を受けても、破れ難いという特徴を示すことができる。
【0104】
本発明の逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムの突刺強度は、好ましくは7〜30J/m、より好ましくは8〜25J/mである。本発明の逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムは、突刺強度に優れているため、包装材料として用いた場合に、突起物などとの接触によっても孔が開いたり、破れたりし難い。
【0105】
本発明の逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムは、逐次二軸延伸工程で特に問題となるフィルム幅中央部での結晶化の進行による白化やスジ状の痕跡の発生が抑制されている。そのため、本発明の逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムは、フィルム幅方向の中央部を5cm×5cm角にカットした試料を用いて測定したヘイズ値が、0.01〜10%、好ましくは0.01〜9.0%、より好ましくは0.01〜8.0%という低い値を示し、透明性に優れている。もちろん、本発明の逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムは、幅方向の中央部だけではなく、フィルム全体にわたって同様の小さなヘイズ値を示すものである。本発明の製造方法によれば、樹脂材料の組成を選択することによって、0.05〜1.0%という極めて低いヘイズ値を示す逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムを得ることもできる。
【0106】
8.多層フィルム
本発明の逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムは、単層で用いることができるが、強度の向上、各種機能の付与、該逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムの保護などを目的として、各種基材と多層化することができる。
【0107】
基材としては、紙、樹脂フィルム、金属箔などが挙げられる。樹脂フィルムを形成する熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの熱可塑性ポリエステル樹脂;ポリスチレンなどのポリビニル芳香族樹脂;ポリ塩化ビニルなどの塩素含有樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリ乳酸、ポリこはく酸エステル、ポリカプロラクトンなどの脂肪族ポリエステル樹脂;ポリアミド;EVOHなどが挙げられる。
【0108】
これらの樹脂フィルムは、未延伸シートまたはフィルムであってもよく、あるいは一軸若しくは二軸延伸フィルムであってもよい。逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムに熱可塑性ポリエステル樹脂フィルムやポリアミドフィルムを積層することにより、機械的強度、耐熱性、耐加水分解性、耐摩耗性、耐アビューズ性などの機能を付与することができる。逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムにポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂フィルムを積層することによって、ヒートシール性、耐吸湿性などの機能を付与することができる。樹脂フィルムは、その表面に金属箔や金属酸化物の蒸着膜などが設けられたものであってもよい。
【0109】
逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムに紙を積層することにより、外観の向上や印刷適性の付与などを行うことができる。逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムに金属箔を積層することにより、遮光性の付与や外観の向上を図ることができる。
【0110】
多層フィルムの製造方法としては、融着法、ラミネーション法(例えば、ドライラミネーション、ホットメルトラミネーション、ウエットラミネーション、ノンソルベントラミネーション)、押出コーティング法などがあるが、これらの中でも、接着剤を用いて積層するドライラミネーション法が、逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムの諸特性を阻害しないため特に好ましい。
【0111】
ドライラミネーション法では、樹脂フィルム表面または逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルム表面に、溶液タイプ、ラテックスタイプ若しくはディスパージョンタイプの接着剤を塗布し、溶媒を揮発除去して乾燥させた後、相手フィルムを合わせて、ホットロール、ホットプレス等により加熱しながら圧着することにより多層フィルムを作製する。
【0112】
ホットメルトラミネーション法では、ホットメルトタイプ接着剤(例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体系接着剤)を樹脂フィルムまたは逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムの表面に塗布し、相手フィルム面と合わせて加熱圧着して貼り合わせる。ホットメルトタイプ接着剤を加熱溶融させて一方のフィルム表面に塗布してから相手フィルムと合わせて、圧着して貼り合わせる方法、あるいは樹脂フィルムと逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムとの間に接着剤のドライフィルムを挿入して、加熱・圧着して貼り合わせる方法などによって、多層フィルムを作製することもできる。
【0113】
押出コーティング法では、樹脂フィルムを構成する樹脂材料を、Tダイを装着した押出機に供給し、Tダイから溶融押出して、逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルム表面に、溶融フィルム状態で均一塗布することによって、多層フィルムを製造する。
【0114】
多層フィルムにおいては、通常、層間剥離強度を高める目的で、各層間に接着剤層を介在させることができる。接着剤としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレン若しくはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂またはその共重合体若しくは変性樹脂、セルロース系樹脂等を媒体の主成分とする樹脂組成物を使用することができる。
【0115】
多層フィルムの層構造としては、逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムを「PGA」と表記したとき、例えば、
PGA/樹脂フィルム、
樹脂フィルム/PGA/樹脂フィルム、
PGA/樹脂フィルム/PGA/樹脂フィルム、
樹脂フィルム/PGA/樹脂フィルム/PGA/樹脂フィルム、
PGA/紙、
紙/PGA/紙、
紙/PGA/金属箔、
樹脂フィルム/PGA/紙、
PGA/金属箔、
樹脂フィルム/PGA/金属箔、
PGA/樹脂フィルム/金属箔、
PGA/金属箔/樹脂フィルム
などを挙げることができる。
【実施例】
【0116】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。本発明における物性及び特性の測定法若しくは評価法は、以下のとおりである。
【0117】
(1)製膜性:
二軸延伸フィルムの作製時におけるフィルムの製膜性を、以下の3段階で評価した。
【0118】
A:製膜性に優れている。
延伸工程でのフィルムの破断や波うち、収縮部の発生がなく、一軸延伸フィルムのテンター延伸機への導入が円滑であり、逐次二軸延伸を連続的かつ安定的に実施することができる。
【0119】
B:製膜が可能である。
逐次二軸延伸が可能であるが、一軸延伸フィルムの結晶化が生じて、二軸延伸工程中に破断しやすい。
【0120】
C:製膜が困難である。
一軸延伸工程中にフィルムの破断が生じたり、一軸延伸フィルムに収縮部が発生して、一軸延伸フィルムのテンター延伸機への導入が困難になったり、あるいは、二軸延伸工程中にフィルムの破断が生じたりする。
【0121】
(2)酸素透過係数:
モダンコントロール(MODERN CONTROL)社製の酸素透過量測定装置「MOCON OX−TRAN2/20型」を使用し、温度23℃及び相対湿度80%の測定条件下に、日本工業規格JIS K7126(等圧法)に規定されている方法に従ってフィルムの酸素透過度を測定し、その測定値とフィルムの厚みに基づいて、酸素透過係数(cm・cm/cm・sec・cmHg)を算出した。
【0122】
(3)落球衝撃強度:
レオメトリクス社製のドロップウェイトテスターを用いて、温度23℃と相対湿度50%の環境下、プローブの荷重100ポンド、直径1.27cm、及び落球速度333.3cm/secの条件で、直径3.8cmの円にカットしたフィルム試料の落球衝撃強度(J/m)を測定した。
【0123】
(4)突刺強度:
オリエンテック(ORlENTEC)社製のテンシロンRC−121OAを使用し、温度23℃と相対湿度50%の環境下、直径45mmの円にカットしたフィルム試料に、速度50mm/minで、ポンチ先端角0.5mmRかつ先端径1mmの半円形の針を突刺し、貫通した時の最大荷重(J/m)を測定した。
【0124】
(5)へイズ:
へイズメーター(日本電色工業社製「Haze Meter NDH2000」)を用い、日本工業規格JIS K7361に従って、フィルム幅方向の中央部を5cm×5cm角にカットしたフィルム試料のへイズ値を測定した。
【0125】
(6)外観:
逐次二軸延伸フィルムの外観を、以下の基準で評価した。
A:厚み斑や白化がなく、外観が良好である。
B:スジ状の白化が僅かに認められる。
C:フィルムに明らかな白化が認められる。
【0126】
<樹脂の種類>
実施例及び比較例において、以下の樹脂を用いた。
【0127】
(1)PGA−1:
PGA−1は、ポリグリコール酸ホモポリマーである。PGA−1は、融点Tmより20℃高い温度(Tm+20℃)及び剪断速度122sec−1で測定した溶融粘度が1,600Pa・sであり、熱安定剤として、旭電化(株)製アデカスタブAX−71(リン酸モノステアリル50モル%とリン酸ジステアリル50モル%)を300ppmの割合で含有している。
【0128】
(2)PGA−2:
PGA−2は、ポリグリコール酸ホモポリマーである。PGA−2は、合成時に、ポリグリコール酸100質量部に対し、N,N−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド0.5質量部を反応させて、ポリグリコール酸のカルボキシル基末端を封止したものである。PGA−2は、温度(Tm+20℃)及び剪断速度122sec−1で測定した溶融粘度が1,200Pa・sであり、旭電化(株)製アデカスタブAX−71を300ppmの割合で含有している。
【0129】
(3)GA/LA(90/10):
GA/LA(90/10)は、グリコリドとL−ラクチドの質量比90:10の共重合体である。GA/LA(90/10)は、温度(Tm+20℃)及び剪断速度122sec−1で測定した溶融粘度が1,100Pa・sであり、旭電化(株)製アデカスタブAX−71を300ppmの割合で含有している。
【0130】
(4)PGA+PLA(95:5):
PGA+PLA(95:5)は、ポリグリコール酸(PGA−1)とポリ乳酸(PLA)との質量比95:5のブレンドである。PLAは、三井化学社製ポリ乳酸「LACEA H−400」〔融点が166℃で、190℃でのメルトフローレイト(MFR)が3.0g/10分〕である。
【0131】
(5)PGA+PP(90:10):
PGA+PP(90:10)は、ポリグリコール酸(PGA−2)とポリプロピレン(PP)との質量比90:10のブレンドである。PPは、日本ポリプロ社製「ノバテックPP F203T」〔融点が165℃で、MFRが2.5g/10分〕である。
【0132】
(6)GA/CL(84/16):
GA/CL(84/16)は、グリコリドとε−カプロラクトンとの質量比84:16の共重合体である。GA/LC(84/16)は、温度(Tm+20℃)及び剪断速度122sec−1で測定した溶融粘度が980Pa・sであり、旭電化(株)製アデカスタブAX−71を300ppmの割合で含有している。
【0133】
(7)GA/LA(40/60):
GA/LA(40/60)は、グリコリドとL−ラクチドの質量比40:60の共重合体である。GA/LA(40/60)は、温度(Tm+20℃)及び剪断速度122sec−1で測定した溶融粘度が950Pa・sであり、旭電化(株)製アデカスタブAX−71を300ppmの割合で含有している。
【0134】
[実施例1]
PGA−1の原料ぺレツトを、スクリュー径35mmの単軸押出機を用いて、樹脂温度が260〜270℃となるように加熱して溶融した。溶融物を、目開き100μmのフィルターを通して、長さ270mmで間隙0.75mmの直線状リップを有するTダイから押出し、表面を40℃に保った金属ドラム上にキャストすることにより冷却し、厚み200μmの未延伸シートを作製した。
【0135】
60℃のシート温度に調整した未延伸シートを、延伸ロールを用いて、延伸速度2m/分で、縦方向(MD)に、延伸倍率が6.0倍となるように一軸延伸した(工程1)。次いで、一軸延伸フィルムの表面温度が33℃となるように、スポットクーラー及び冷却ロールを用いて、約15秒間冷却した(工程2)。引き続き、一軸延伸フィルムをテンター延伸機に導入し、フィルム温度38℃で、延伸倍率が3.7倍となるように横方向(TD)に延伸して、面積倍率が22倍の二軸延伸フィルムを作製した(工程3)。
【0136】
延伸後、直ちにテンター押出機内で該二軸延伸フィルムを、乾熱雰囲気下に温度145℃で熱処理を施し、逐次二軸延伸フィルムを作製した(工程4)。各工程での稼動条件と製膜性の評価結果を表1に示し、逐次二軸延伸フィルムの酸素透過係数、落球衝撃強度、突刺強度、及びヘイズ値の測定結果と外観の評価結果を表2に示す。
【0137】
[実施例2]
工程1乃至4での稼動条件を表1に示す条件に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、逐次二軸延伸フィルムを作製した。稼動条件と結果を表1及び2に示す。
【0138】
[実施例3]
工程1乃至4での稼動条件を表1に示す条件に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、逐次二軸延伸フィルムを作製した。稼動条件と結果を表1及び2に示す。
【0139】
[実施例4]
PGA−1に代えてPGA−2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、厚み200μmの未延伸シートを作製した。この未延伸シートを用いて、工程1乃至4での稼動条件を表1に示す条件に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、逐次二軸延伸フィルムを作製した。稼動条件と結果を表1及び2に示す。
【0140】
[実施例5]
PGA−1に代えてPGA−2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、厚み200μmの未延伸シートを作製した。この未延伸シートを用いて、工程1乃至4での稼動条件を表1に示す条件に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、逐次二軸延伸フィルムを作製した。稼動条件と結果を表1及び2に示す。
【0141】
[実施例6]
PGA−1に代えてGA/LA(90/10)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、厚み200μmの未延伸シートを作製した。この未延伸シートを用いて、工程1乃至4での稼動条件を表1に示す条件に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、逐次二軸延伸フィルムを作製した。稼動条件と結果を表1及び2に示す。
【0142】
[実施例7]
ポリグリコール酸(PGA−1)と三井化学社製ポリ乳酸「LACEA H−400」の各ぺレットを、質量比が95対5となるようにハンドブレンドした。混合物を、東洋精機社製二軸押出機(LT−30)を用いて、240℃で溶融混練し、ぺレット〔PGA+PLA(95:5)〕を作製した。得られたぺレットを、スクリュー径35mmの単軸押出機を用いて、樹脂温度が260〜270℃となるように加熱して溶融した。溶融物を、目開き100μmのフィルターを通して、長さ270mmで間隙0.75mmの直線状リップを有するTダイスから押出し、表面を40℃に保った金属ドラム上にキャストすることにより冷却し、厚み200μmの未延伸シートを作製した。
【0143】
この未延伸シートを用いて、工程1乃至4での稼動条件を表1に示す条件に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、逐次二軸延伸フィルムを作製した。稼動条件と結果を表1及び2に示す。
【0144】
[実施例8]
ポリグリコール酸(PGA−2)と日本ポリプロ社製ポリプロピレン「ノバテックPP F203T」の各ぺレットを質量比が90対10となるようにハンドブレンドした後、実施例7と同様にして未延伸シートを作製した。
【0145】
この未延伸シートを用いて、工程1乃至4での稼動条件を表1に示す条件に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、逐次二軸延伸フィルムを作製した。稼動条件と結果を表1及び2に示す。
【0146】
[実施例9]
PGA−1に代えてGA/CL(84/16)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、厚み200μmの未延伸シートを作製した。この未延伸シートを用いて、工程1乃至4での稼動条件を表1に示す条件に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、逐次二軸延伸フィルムを作製した。稼動条件と結果を表1及び2に示す。
【0147】
[比較例1]
PGA−1を用いて、実施例1と同様にして、厚み200μmの未延伸シートを作製した。この未延伸シートを用いて、稼動条件を表1に示す条件に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、逐次二軸延伸フィルムの作製を試みた。
【0148】
具体的に、工程1において、80℃のシート温度に調整した未延伸シートを、延伸ロールを用いて、延伸速度2m/分で、縦方向(MD)に、延伸倍率が4.0倍となるように一軸延伸を行った。この一軸延伸に際し、フィルムの結晶化に伴って、断続的なフィルムの破断が生じた。そのため、工程2乃至4を実施することができなかった。稼動条件と結果を表1及び2に示す。
【0149】
[比較例2]
PGA−1を用いて、実施例1と同様にして、厚み200μmの未延伸シートを作製した。この未延伸シートを用いて、稼動条件を表1に示す条件に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、逐次二軸延伸フィルムの作製を試みた。
【0150】
具体的に、工程1において、50℃のシート温度に調整した未延伸シートを、延伸ロールを用いて、延伸速度2m/分で、縦方向(MD)に、延伸倍率が8.0倍となるように一軸延伸を行った。この一軸延伸に際し、過延伸によるフィルムの破断が生じた。そのため、工程2乃至4を実施することができなかった。稼動条件と結果を表1及び2に示す。
【0151】
[比較例3]
PGA−1を用いて、実施例1と同様にして、厚み200μmの未延伸シートを作製した。この未延伸シートを用いて、稼動条件を表1に示す条件に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、逐次二軸延伸フィルムの作製を試みた。
【0152】
具体的に、工程1において、55℃のシート温度に調整した未延伸シートを、延伸ロールを用いて、延伸速度2m/分で、縦方向(MD)に、延伸倍率が5.0倍となるように一軸延伸を行った。次の工程2では、一軸延伸フィルムの表面温度が70℃となるように、30秒間エージングした。その結果、一軸延伸フィルムの収縮及び結晶化が生じて、該一軸延伸フィルムのテンター延伸機への導入が困難となり、テンター延伸機により二軸延伸ができなかった。稼動条件と結果を表1及び2に示す。
【0153】
[比較例4]
PGA−1を用いて、実施例1と同様にして、厚み200μmの未延伸シートを作製した。この未延伸シートを用いて、稼動条件を表1に示す条件に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、逐次二軸延伸フィルムの作製を試みた。
【0154】
具体的に、工程1において、45℃のシート温度に調整した未延伸シートを、延伸ロールを用いて、延伸速度2m/分で、縦方向(MD)に、延伸倍率が4.5倍となるように一軸延伸を行った。次の工程2では、一軸延伸フィルムの表面温度が20℃となるように、スポットクーラー及び冷却ロールを用いて、約15秒間冷却した。
【0155】
引き続き、一軸延伸フィルムをテンター延伸機に導入し、フィルム温度65℃で、延伸倍率が4.5倍となるように幅方向(TD)に延伸して、面積倍率が20倍の二軸延伸フィルムの作製を試みた(工程3)。しかし、工程3での延伸中に、フィルムの結晶化による破断が生じ、連続的な操業を行うことが困難であった。そのため、二軸延伸フィルムの物性の測定と特性の評価を実施しなかった。
【0156】
[比較例5]
PGA−1を用いて、実施例1と同様にして、厚み200μmの未延伸シートを作製した。この未延伸シートを用いて、稼動条件を表1に示す条件に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、逐次二軸延伸フィルムを作製した。得られた逐次二軸延伸フィルムは、面積倍率が9倍と小さかったことから、フィルムの白化が観察された。その白化現象は、フィルム幅方向の中央部に明らかな縦スジとして観察された。そのため、該逐次二軸延伸フィルムは、ヘイズ値が89.0%と大きく、透明性に劣るものであった。
【0157】
[比較例6]
PGA−1に代えてGA/LA(40/60)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、厚み200μmの未延伸シートを作製した。この未延伸シートを用いて、工程1乃至4での稼動条件を表1に示す条件に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、逐次二軸延伸フィルムを作製した。稼動条件と結果を表1及び2に示す。原料のグリコール酸/乳酸共重合体中の乳酸の共重合割合が高いため、得られた逐次二軸延伸フィルムは、酸素透過係数が大きく、ガスバリア性に劣るものであった。また、該逐次二軸延伸フィルムは、落球衝撃強度及び突刺強度が比較的低い値を示した。
【0158】
【表1】

【0159】
(脚注)
(1)表中の「−」は、その工程が実施できなかったことを示す。
【0160】
【表2】

【0161】
(脚注)
(1)酸素透過係数の測定値の1.7E−14は、1.7×10−14を示す。他の測定値も同様である。
(2)表中の「−」による表記は、測定できなかったことを示す。
【0162】
[実施例10]
実施例4で得られた逐次二軸延伸フィルムの片面に、2液硬化型のポリウレタン系ラミネート用接着剤(主剤がポリエステルポリオールで、硬化剤が脂肪族イソシアネートである)をグラビアロールコート法を用いてコーティングし、乾燥後の塗布量が3.0g/mのラミネート用接着層を形成した。この接着剤層の面で、アート紙(王子製紙株式会社製「OK金藤片面」;厚み120μm、片面コロナ処理品)を積層し、ギアオーブン中で、温度40℃で48時間乾燥処理して、多層フィルムを作製した。得られた多層フィルムの温度23℃と相対湿度80%での酸素透過係数を測定した。結果を表3に示す。
【0163】
[実施例11]
アート紙に代えて二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製「ルミラーP60」;厚み12μm、片面コロナ処理品)を用いたこと以外は、実施例10と同様にして多層フィルムを作製した。結果を表3に示す。
【0164】
[実施例12]
アート紙に代えて未延伸ポリエチレン(LLDPE)フィルム(東セロ株式会社製「T.U.X−HC」;厚み30μm、片面コロナ処理品)を用いたこと以外は、実施例10と同様にして多層フィルムを作製した。結果を表3に示す。
【0165】
[実施例13]
アート紙に代えて二軸延伸ナイロン6フィルム(ユニチカ株式会社製「エムブレムONBC」;厚み15μm、片面コロナ処理品)を用いたこと以外は、実施例10と同様にして多層フィルムを作製した。結果を表3に示す。
【0166】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0167】
本発明のポリグリコール酸逐次二軸延伸フィルムは、例えば、食品、医薬品、電子材料などの包装材料;培養シート、人工皮膚、スキャホールドなどの医療用材料;などの広範な技術分野において利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムの製造方法において、下記工程1乃至4
(1)下記式1
【化1】

で表わされる繰り返し単位を60質量%以上の割合で含む結晶性ポリグリコール酸を含有する樹脂材料から形成された非晶性のポリグリコール酸シートを、40〜70℃の範囲内の延伸温度で、一次延伸倍率が2.5〜7.0倍の範囲内となるように一方向に延伸して、一軸延伸フィルムを成形する工程1;
(2)該一軸延伸フィルムを、5〜40℃の範囲内であって、かつ、該工程1での延伸温度より5℃以上低い温度に調整した温度環境内を通過させる工程2;
(3)該工程2を経た一軸延伸フィルムを、35〜60℃の範囲内であって、かつ、該工程2での温度より3℃以上高い延伸温度で、二次延伸倍率が2.5〜6.0倍の範囲内となるように、該工程1での延伸方向とは横断方向に延伸し、一次延伸倍率と二次延伸倍率との積で表わされる面積倍率が11〜30倍の範囲内の二軸延伸フィルムを成形する工程3;及び
(4)該二軸延伸フィルムを、70〜200℃の範囲内の温度で熱処理する工程4;
を含む逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムの製造方法。
【請求項2】
該ポリグリコール酸シートが、該結晶性ポリグリコール酸を含有する樹脂材料を押出機内で溶融混練し、該押出機の先端に設けたTダイからシートの形状に溶融押出し、溶融シートを5〜70℃の範囲内の表面温度に保持した金属ドラム上にキャストして急冷する方法により成形された非晶性のポリグリコール酸シートである請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
該工程1において、該非晶性のポリグリコール酸シートを、延伸ロールを用いて縦方向(MD)に一軸延伸する請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
該工程2において、該一軸延伸フィルムを、スポットクーラー、冷却ロール、空調機またはこれらの組み合わせからなる冷却手段により前記範囲内の温度に調整した温度環境内を、2〜60秒間の通過時間で通過させる請求項1乃至3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
該工程3において、テンター延伸機を用いて、該一軸延伸フィルムを横方向(TD)に延伸する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
該工程4において、該二軸延伸フィルムを、緊張させた状態で、70〜200℃の範囲内の温度に調整した乾熱雰囲気下を通過させて熱処理する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
下記式1
【化2】

で表わされる繰り返し単位を60質量%以上の割合で含む結晶性ポリグリコール酸を含有する樹脂材料の逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムであって、
(a)温度23℃及び相対湿度80%の条件下で測定した酸素透過係数が、1.0×10−14〜1.0×10−12cm・cm/cm・s・cmHgの範囲内であり、
(b)温度23℃及び相対湿度50%の条件下で測定した落球衝撃強度が、50〜300J/mの範囲内であり、
(c)温度23℃及び相対湿度50%の条件下で測定した突刺強度が、6〜30J/mの範囲内であり、並びに
(d)日本工業規格JIS K7361に従って、フィルム幅方向の中央部を5cm×5cm角にカットした試料を用いて測定したヘイズ値が、0.01〜10%の範囲内である
ことを特徴とする逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルム。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の製造方法により得られたものである請求項7記載の逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルム。
【請求項9】
請求項7または8記載の逐次二軸延伸ポリグリコール酸フィルムと基材とを積層してなる層構造を有する多層フィルム。

【公開番号】特開2009−202465(P2009−202465A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−47985(P2008−47985)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】