説明

通信システム、クライアント装置、サーバ装置及び通信設定方法

【課題】本願発明の課題は、セキュリティの観点から見て望ましい管理設定ができる技術を提供することにある。
【解決手段】本願発明は、Ether OAM(Operations,Administration,Maintenance)を設定するキャリアのMaintenance Domain Levelと自装置のMACアドレスとを記した設定要求を送信し、前記設定要求に応答して送信される設定情報に基づいて自装置のEther OAMを設定するクライアント装置と、各キャリアのMaintenance Domain毎に設けられ、前記送信された設定要求のMaintenance Domain Levelが自装置のMaintenance Domain Levelと同じである場合に、前記送信された設定要求のMACアドレスに基づいて該装置に対応した設定情報を前記MACアドレス宛に送信するサーバ装置とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、通信システム、クライアント装置、サーバ装置及び通信設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、複数種類のネットワーク機器を管理設定する場合、ネットワークの構成や状態を表示させてユーザに設定操作を行わせている(例えば、特許文献1又は特許文献2)。Ether OAM対応機器を設定する場合、多岐にわたるEther OAMの設定を行う必要があるため、保守者が設置場所に赴いて設定している。しかしながら、保守者への負担が増大するため、Ether OAMの設定を容易化する技術として、ネットワーク機器(クライアント)からの要求を受けて、サーバがクライアントに設定情報を送信し、その設定情報に基づいてクライアントが設定する技術が挙げられる。
【0003】
図1を用いて、サーバがクライアントに設定情報を送信する技術について説明する。
【0004】
図1に示す通信システムは、Ethernet(登録商標)によって構築されており、ユーザのネットワーク機器11及び15、クライアントとして動作するキャリア2のブリッジ12及び13、クライアントとして動作するキャリア1のブリッジ14、キャリア1ネットワークに設置された管理サーバ16によって構築される。
【0005】
キャリア2ブリッジ12がキャリア1及びキャリア2のMaintenance Domainの設定を行う場合、キャリア1及びキャリア2の2つのキャリアのMaintenance Domain設定情報を保持した管理サーバ16に対してEthernetフレームによって設定要求を送信する。この設定要求に対する応答のEthernetフレームにより2つのキャリアのMaintenance DomainのEther OAMの設定を実行する。また、キャリア2ブリッジ12が送信したEthernetフレームを管理サーバ16に到達させるため、フレームの宛先アドレスをブロードキャストに設定して送信する。送信されたEthernetフレームは、キャリア2ブリッジ13、キャリア1ブリッジ14を通過して管理サーバ16及びユーザネットワーク機器15に到達する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−102558号公報
【特許文献2】特表2007−525105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記技術ではEther OAMの設定を行うには十分ではなかった。これは、Ether OAMでは1つのポートに対して複数のキャリアの情報を設定するケースがあり、それぞれの情報は1つの管理サーバにより管理されるものではなく、それぞれのキャリアにより管理されるべきものだからである。1つの管理サーバで管理しようとすると、管理サーバは複数のキャリアや複数のユーザの情報も保持しなければならず、自キャリアのネットワーク情報を他のキャリアに渡す必要がある。そのためセキュリティの観点から望ましくないという問題があった。
【0008】
そこで、本願発明が解決しようとする課題は、セキュリティの観点から見て望ましい管理設定ができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための第1の発明は、通信システムであって、Ether OAM(Operations,Administration,Maintenance)を設定するキャリアのMaintenance Domain Levelと自装置のMACアドレスとを記した設定要求を送信し、前記設定要求に応答して送信される設定情報に基づいて自装置のEther OAMを設定するクライアント装置と、各キャリアのMaintenance Domain毎に設けられ、前記送信された設定要求のMaintenance Domain Levelが自装置のMaintenance Domain Levelと同じである場合に、前記送信された設定要求のMACアドレスに基づいて該装置に対応した設定情報を前記MACアドレス宛に送信するサーバ装置と
を有することを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決するための第2の発明は、クライアント装置であって、Ether OAM(Operations,Administration,Maintenance)を設定するキャリアのMaintenance Domain Levelと自装置のMACアドレスとを記した設定要求を送信し、前記設定要求に応答して送信される設定情報に基づいて自装置のEther OAMを設定することを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決するための第3の発明は、サーバ装置であって、各キャリアのMaintenance Domain毎に設けられ、クライアント装置から送信された、Ether OAM(Operations,Administration,Maintenance)を設定するキャリアのMaintenance Domain Levelとクライアント装置のMACアドレスとを記した設定要求のMaintenance Domain Levelが自装置のMaintenance Domain Levelと同じである場合に、前記送信された設定要求のMACアドレスに基づいて該装置に対応した設定情報を前記MACアドレス宛に送信することを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するための第4の発明は、通信設定方法であって、Ether OAM(Operations,Administration,Maintenance)を設定するキャリアのMaintenance Domain Levelと自装置のMACアドレスとを記した設定要求をクライアント装置が送信する設定要求送信ステップと、各キャリアのMaintenance Domain毎に設けられたサーバ装置が、前記送信された設定要求のMaintenance Domain Levelが自装置のMaintenance Domain Levelと同じである場合に、前記送信された設定要求のMACアドレスに基づいて該装置に対応した設定情報を前記MACアドレス宛に送信する設定情報送信ステップと前記送信された設定情報に基づいてクライアント装置のEther OAMを設定する設定ステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、他のキャリアにネットワーク情報を渡す必要がなくなり、セキュリティの面から見て望ましくなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本願に関係する技術を説明するための図である。
【図2】図2は、第1の実施の形態の通信システムの概要図である。
【図3】図3は、クライアント装置のブロック図である。
【図4】図4は、サーバ装置のブロック図である。
【図5】図5は、動作を説明するためのフローである。
【図6】図6は、設定要求Ether OAMフレームフォーマット例である。
【図7】図7は、応答Ether OAMフレームフォーマット例である。
【図8】図8は、管理テーブルの一例である。
【図9】図9は、第2の実施の形態の通信システムの概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、クライアント装置及びサーバ装置がネットワークを介して対向するように構成させる。これにより、クライアント装置のEther OAM設定を容易に実行することを可能とする。保守者はクライアント装置に対してEther OAMを設定したいキャリアの全MD Levelをディップスイッチにて設定する。
【0016】
ディップスイッチは、MD Levelの0から7の8レベルのオン・オフを設定可能である。そして設定開始の契機を与えるプッシュボタンを設定する。クライアント装置は、プッシュボタンのオンを契機としてディップスイッチの設定を読み出し、ディップスイッチがオンになっているMD Levelの設定要求Ether OAMフレームを生成してサーバに順次送信する。
【0017】
一方でサーバ装置4は、自装置のMD Levelの設定要求Ether OAMフレームを受信すると、要求のあったクライアントの設定情報を自装置で保持しているクライアント設定情報格納部から読み出す。そして、読み出したクライアントのEther OAMの設定情報を応答Ether OAMフレームに記してクライアント装置に送信する。
【0018】
ここでクライアント装置は、サーバ装置からの応答Ether OAMフレームを自装置の設定情報として保持する。
【0019】
応答Ether OAMフレームは、送信された設定要求Ether OAM毎に全てのサーバから返信される。クライアント装置は、保持したEther OAM設定情報に基づき、IEEE Std 802.1ag−2007またはITU‐TY.1731に従い動作させる。
【0020】
本発明の特徴を具体的に説明するために、以下において、図面を参照して述べる。
【0021】
本発明を実施するための第1の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
図2に本発明の通信システムの構成例を示す。本発明の通信システムは、キャリア2ブリッジ(クライアント装置)22、キャリア2ブリッジ(サーバ装置)23及びキャリア1ブリッジ(サーバ)24を有し、Maintenance association End Point(以下、MEP)として動作する例を示す。尚、本発明は、IEEE Std 802.1ag及びITU‐T Y.1731に適用可能である。
【0023】
通信システムは、ユーザMaintenance Domain、キャリア1Maintenance Domain、及びキャリア2 Maintenance Domainの保守ドメインを有する。ユーザMaintenance Domainは、ユーザネットワーク機器21及び25の間の保守ドメインである。キャリア1Maintenance Domainは、キャリア2ブリッジ(クライアント)22及びキャリア1ブリッジ(サーバ)24の間の保守ドメインである。キャリア2 Maintenance Domainは、キャリア2ブリッジ(サーバ)23及びキャリア1ブリッジ(サーバ)24の間の保守ドメインである。MD Levelは、ユーザMaintenance Domain(MD Level=7)、キャリア1 Maintenance Domain(MD Level=4)、キャリア2 Maintenance Domain(MD Level=2)の順に低くなる。
【0024】
図3はクライアントのブロック図の一例であり、図4はサーバのブロック図の一例である。
【0025】
まず、クライアント装置3について説明する。
【0026】
クライアント装置3は、Passive SAP部301と、Ether OAM多重部302と、Active SAP303と、プロビジョニング制御部304と、Ether OAM設定格納部305と、Ether OAM制御部306と、Ether OAM分離多重部307と、ディップスイッチ308と、プッシュボタン309とを有する。
【0027】
Passive SAP部301は、データフレームと、自装置の管理対象外であるEther OAMフレーム(処理されないEther OAMフレーム)とを受信する。また、Ether OAM分離多重部307から送出される、EtherタイプがEther OAMではないフレームを送信する。
【0028】
Ether OAM多重部302は、Passive SAP301が受信したフレームに自装置で生成されたEther OAMフレームを多重する。
【0029】
Active SAP303は、データフレームと、自装置の管理対象及び管理対象外のEther OAMフレームとを受信する。また、Ether OAM多重部302で多重されたEther OAMフレームを送信する。
【0030】
プロビジョニング制御部304は、ディップスイッチ308により設定されるMD Levelに基づき、プッシュボタン309の押下を契機として設定要求Ether OAMフレームをEther OAM多重部302に送出する。また、プロビジョニング制御部304は、Ether OAM制御部306からの、設定情報が入った応答Ether OAMフレームに基づきEther OAM設定をEther OAM設定格納部305に格納する。
【0031】
ここで、プロビジョニング制御部304にて生成されるEther OAMフレームについて説明する。図6は、設定要求Ether OAMフレームのフォーマットの一例である。ここではITU‐T Y.1731で定義されるVSM PDUを使用した例を示す。尚、下記に示した以外の要素においてはITU‐T Y.1731に従うものとする。
【0032】
VSM PDUは、Destination address601と、Source address602と、Ether type603と、MD Level604と、Version605と、OpCode606と、Flag607と、TLV Offset608と、OUI609と、SubOpCode610と、PDU611と、End TLV612と、FCS613から成る。
【0033】
Destination address601には、Multicast DA Class1が設定される。Multicast DA Class1の01−C2−00−00−3xの‘x’に、ディップスイッチ308の設定を読み込んでMD Levelの値が設定される。
【0034】
Source address602には、クライアント装置3のMAC addressが設定される。
【0035】
MD Level604は、ディップスイッチ308の設定に基づいてMD Levelの値が設定される。
【0036】
OpCode606はVSMを特定する‘51’を設定する。
【0037】
Version605は、本発明では使用しない。また、Flag607、OUI609、SubOpCode610は、本発明では使用しないので‘0’が設定される。PDU611は、本発明では使用しないが、複数ポートを具備するような装置において、ポートごとに異なるEther OAMを設定する場合は識別子として使用可能である。
【0038】
Ether OAM設定格納部305には、プロビジョニング制御部304によりEther OAM設定が格納される。
【0039】
Ether OAM制御部306は、Ether OAM設定格納部305から設定情報(動作パラメータ)を読み出して、Ether OAM分離多重部307からのEther OAMフレームに対してIEEE Std 802.1ag-2007又はITU-T Y.1731に基づいた処理を実行する。Ether OAM制御部306はEther OAMフレームを生成し、Ether OAM多重部302へ送出する。また、受信した応答Ether OAMフレームをプロビジョニング制御部304へ送出する。
【0040】
Ether OAM分離多重部307は、Active SAP303からのEthernet フレームのEtherタイプを確認し、EtherタイプがEther OAMのフレームをEther OAM制御部306へ送出し、その他のフレームをPassive SAP301へ送出する。
【0041】
ディップスイッチ308は、自装置が設置されるMD Levelを設定する際に用いられる。
【0042】
プッシュボタン309は、設定要求Ether OAMフレームの送信契機を与える。
【0043】
続いて、サーバ装置4について説明する。
【0044】
サーバ装置4は、Passive SAP部401と、Ether OAM多重部402と、Active SAP403と、プロビジョニング制御部404と、クライアント設定格納部405と、Ether OAM制御部406と、EtherOAM分離多重部407と、管理者インタフェース408と、Ether OAM設定格納部409とを有する。
【0045】
Passive SAP部401は、データフレームと、自装置の管理対象外、すなわち、自装置で処理されないEther OAMフレームを受信する。
【0046】
Ether OAM多重部402は、Passive SAP401から送出されるフレームに自装置で生成されたEther OAMフレームを多重する。
【0047】
Active SAP403は、データフレームと、自装置において管理対象及び管理対象外のEther OAMフレームを受信する。
【0048】
プロビジョニング制御部404は、Ether OAM制御部406からの設定要求Ether OAMフレームのMAC Address情報に基づきクライアント設定格納部405から設定情報読み出す。そして設定情報入れた応答Ether OAMフレームをEther OAM多重部402に送出する。
【0049】
図7に応答Ether OAMフレームフォーマット例示す。ここではITU‐TY.1731で定義されるVSR PDUを使用した例を示す。下記以外の要素においてはITU‐T Y.1731に従うものとする。
【0050】
VSR PDUはDestination address701と、Source address702と、Ether type703と、MD Level704と、Version705と、OpCode706と、Flag707と、TLV Offset708と、OUI709と、SubOpCode710と、PDU711と、End TLV712と、FCS713から成る。
【0051】
Destination address701には、設定要求Ether OAMのSource addressが設定される。
【0052】
Source address702には、サーバ装置4のMAC addressが設定される。
【0053】
MD Level704には、Ether OAM設定格納部409から読み込んだ設定に基づいて、MD Levelの値が設定される。
【0054】
OpCode706には、VSRを特定する‘50’が設定される。
【0055】
FLAG707、OUI709、SubOpCode710は、本発明では使用されないので‘0’が設定される。また、TLV Offset708とEnd TLV712とFCS713とは、本発明では用いないため、説明を省略する。
【0056】
PDU711は、クライアント設定格納部405から読み出された設定情報が設定される。クライアント装置3は、この情報を用いて自装置のEther OAMを設定する。
【0057】
クライアント設定格納部405は、管理者インタフェース部408を介してクライアントに設定するEther OAMの情報を格納する。
【0058】
図8に、クライアント設定格納部405の管理テーブルフォーマット例を示す。本管理テーブルは、管理者インタフェース408を介して管理者によって設定される。管理テーブルは、クライアント装置のMAC addressとEther OAM設定を関連付けて管理する。Ether OAM設定項目は、Maintenance Domain name、CCM IntervalなどIEEE Std 802.1ag−2007やITU‐T Y.1731で設定可能な項目を管理する。
【0059】
Ether OAM制御部406は、自装置が動作すべきパラメータをEther OAM設定格納部409から読みだす。そしてIEEE Std 802.1ag-2007に基づいて、Ether OAM分離多重部407から受信したEther OAMフレームを処理する。Ether OAM制御部406は、Ether OAMフレームを生成しEther OAM多重部402へ送信し、また設定要求Ether OAMフレームをプロビジョニング制御部404へ送信する機能も具備する。
【0060】
Ether OAM分離多重部407は、Active SAP403から受信したEthernet フレームのEtherタイプを確認してEtherタイプがEther OAMのフレームをEther OAM制御部406へ送信し、その他のフレームをPassive SAP401へ送信する。
【0061】
Ether OAM設定格納部409には、自装置のEther OAM設定が格納される。
【0062】
管理者インタフェース408は、クライアント設定格納部405とEtherOAM設定格納部409とへ、設定の書き込みを行う。
【0063】
次に、図2を用いて、フレームのフローを説明する。以下の説明では、保守者によってディップスイッチ308が既に設定されているものとする。
【0064】
プッシュボタン309の押下を契機に、キャリア2ブリッジ(クライアント)22は、設定要求Ether OAM(MD Leve=14)を送信する。このEther OAMフレームのMD Levelは‘4’であり、キャリア2Maintenance DomainはMD Level2であるため、キャリア2ブリッジ(サーバ)23はIEEE Std 802.1ag−2007またはITU‐T Y.1731の動作に従い、本Ether OAMフレームを自身で終端せずに転送して透過させる。
【0065】
設定要求Ether OAM(MD Level=4)を受信したキャリア1ブリッジ(サーバ)24は、本フレームが自身のMD Levelと同じであるためユーザネットワーク機器25へ透過させずに自装置において終端させる。そしてクライアント設定格納部405を参照して、キャリア2ブリッジ(クライアント)22の設定を入れた応答Ether OAM(MD Level=4)をキャリア2ブリッジ(クライアント)22へ送信する。
【0066】
キャリア2ブリッジ(クライアント)22は、設定要求Ether OAM(MD Level=4)の送信に引き続き、設定要求Ether OAM(MD Level=2)を送信する。
【0067】
設定要求Ether OAM(MD Level=2)を受信したキャリア2ブリッジ(サーバ)23は、本フレームが自身のMD Levelと同じであるため、キャリア1ブリッジ(サーバ)24に透過させずに自装置において終端させる。そして、クライアント設定格納部405を参照して、キャリア2ブリッジ(クライアント)22の設定情報を入れた応答Ether OAM(MD Level=2)をキャリア2ブリッジ(クライアント)22に送信する。
【0068】
応答Ether OAM(MD Level=4)及び応答Ether OAM(MD Level=2)を受信したキャリア2ブリッジクライアント22は、受信したフレームの設定内容に基づきIEEE Std 802.1ag−2007またはITU‐T Y.1731に従って設定を行い動作する。
【0069】
続いて、本発明の動作について説明する。以下では、クライアント装置3及びサーバ装置4を図2に示すようなネットワーク構成に設置した場合の動作例について説明する。図5は、クライアント装置3からの要求によりサーバ装置4が応答してクライアント装置3がEther OAM設定を実行する動作を表すフローチャートである。図5に示すキャリア2ブリッジ(クライアント)22は図3で示したクライアント装置3を示し、キャリア2ブリッジ(サーバ)23及びキャリア1ブリッジ(サーバ)24は図4で示したサーバ装置4を示す。以下の説明では、保守者によってディップスイッチ308が、MD Level=4、2と、既に設定されているものとする。
【0070】
まず、キャリア2ブリッジ(クライアント)22が保守者によるプッシュボタン309の押下を確認する(ステップ501)。
【0071】
プッシュボタン309が押下されると、ディップスイッチ308の設定を確認する。いずれのディップスイッチも設定されていなければ開始の状態に遷移する。ディップスイッチ308が設定されている場合(ステップ502)、設定要求Ether OAMを生成する。ここではディップスイッチ308の設定がMD Level=4、2であるため、まずMD Level=4の設定要求Ether OAMを送信する(ステップ503)。続いて、MD Level=2の設定要求Ether OAMを送信する(ステップ504)。設定要求Ether OAMを送信後、応答Ether OAM待ちタイマを起動する(ステップ505)。
【0072】
キャリア2ブリッジ(サーバ)23及びキャリア1ブリッジ(サーバ)24は、設定要求Ether OAMのMD Levelと自装置のMD Levelとを確認し、自装置のMD Levelと同じMD Levelの設定要求Ether OAMを受信する。ここでは、キャリア2ブリッジ(サーバ)23は、MD Level=2の設定要求Ether OAMを受信する(ステップ510)。一方、キャリア1ブリッジ(サーバ)24は、MD Level=4の設定要求Ether OAMを受信する(ステップ514)。

【0073】
受信した設定要求Ether OAMフレームのSource MACアドレスに記されているMACアドレスを用いて、クライアント設定格納部405からそのMACアドレスを検索する(ステップ511、515)。そのMACアドレスが検索できない場合は開始に遷移する。
【0074】
一方、そのMACアドレスが検索できた場合は、そのMACアドレスに対応付けられているEther OAMの設定情報を読み出し、読み出した設定情報を記した応答フレームを生成する(ステップ512、516)。
【0075】
生成された応答フレームの宛先を設定要求Ether OAMフレームのSource MACアドレスに記されているMACアドレスにして、設定要求Ether OAMの送信元であるキャリア2ブリッジ(クライアント)22に対して送信する(ステップ513、517)。
【0076】
キャリア2ブリッジ(サーバ23)からの応答Ether OAMを受信したキャリア2ブリッジ(クライアント)22は、受信したフレームに記されている設定情報をEther OAM設定格納部305に格納する(ステップ506)。同様に、キャリア1ブリッジ(サーバ)24からの応答Ether OAMを受信したキャリア2ブリッジ(クライアント)22は、受信したフレームに記されている設定情報をEther OAM設定格納部305に格納する(ステップ506)。
【0077】
設定要求Ether OAMに対する応答Ether OAMを全て受信できたかを確認する(ステップ508)。設定要求Ether OAMに対する応答Ether OAMを受信できない場合、すなわちステップ505で設定されたタイマが満了した場合は、開始に遷移する。
【0078】
一方、設定要求Ether OAMに対する応答Ether OAMを全て受信できた場合は、Ether OAM設定格納部305に格納された値にてEther OAMの動作を開始する(ステップ509)。
【0079】
本発明によると、キャリアごとに管理サーバが構成されているため、他のキャリアにネットワーク情報を渡す必要がなくなり、セキュリティの面から見て望ましい構成となっている。
【0080】
また、保守者が、現地での設置作業において、コマンドインタフェースやグラフィックインタフェース等を操作して1つ1つ設定を入力することなく、ディップスイッチやプッシュボタン等を操作する方法で容易に設定できる。また、これにより保守者による設定誤りを減少させることができるため、設定誤りにおけるネットワーク障害の発生を削減できる。
【0081】
また、クライアント機器より管理サーバに向けて送信された設定要求フレームをブロードキャストフレームにする必要が無いため、そのブロードキャストフレームを必要としないユーザネットワークに設置された機器にまで到達することがなくなる。
【0082】
〈第2の実施の形態〉
本発明の第2の実施の形態の構成を図9に示す。尚、上記実施の形態と同様の構成については同一の番号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0083】
本実施の形態の構成は、ユーザネットワーク機器21及び25と、キャリア2ブリッジ(クライアント)22及び93と、キャリア2ブリッジ(サーバ)23と、キャリア1ブリッジ(サーバ)24とから成る。本実施の形態は、キャリア2ブリッジ(クライアント)93がMaintenance domain Intermediate Point(以下MIPと呼ぶ)として動作する実施の形態である。従って、キャリア2ブリッジ(クライアント)93がEther OAM設定を行う実施の形態である。また、本実施の形態では、クライアント装置3は、設定要求Ether OAMフレームをActive SAP側に出力するか、Passive SAP側に出力するかの選択を行う必要がある。これはサーバ装置4がどちらのインタフェース側に接続されているかを決定するためで、ディップスイッチ308等により保守者によって設定する。
【0084】
図9を用いて本実施の形態のフレームのフローを説明する。以下の説明では、保守者によってディップスイッチが既に設定されているものとする。
【0085】
プッシュボタンの押下により、キャリア2ブリッジ(クライアント)93は設定要求Ether OAM(MD Level=4)を送信する。本Ether OAMフレームはMD Level4であり、キャリア2Maintenance DomainはMD Level2であるため、キャリア2ブリッジ(サーバ)23は本Ether OAMフレームを自身で終端せずに透過する。
【0086】
設定要求Ether OAM(MD Level4)を受信したキャリア1ブリッジ(サーバ)24は、本フレームが自身のMD Levelと同じであるためユーザネットワーク機器25へ透過せずに自身で終端する。そしてクライアント設定格納部405を参照して、キャリア2ブリッジ(クライアント)93の設定を入れた応答Ether OAM(MD Level=4)をキャリア2ブリッジ(クライアント)93へ送信する。
【0087】
キャリア2ブリッジ(クライアント)93は設定要求Ether OAM(MD Level=4)の送信に引き続き、設定要求Ether OAM(MD Level=2)を送信する。
【0088】
設定要求Ether OAM(MD Level=2)を受信したキャリア2ブリッジ(サーバ)23は本フレームが自身のMD Levelと同じであるため、キャリア1ブリッジ(サーバ)24へ透過せずに自身で終端する。そしてクライアント設定格納部405を参照して、キャリア2ブリッジ(クライアント)93の設定を入れた応答Ether OAM(MD Level=2)をキャリア2ブリッジ(クライアント)93に送信する。
【0089】
応答Ether OAM(MD Level=4)及び応答Ether OAM(MD Level=2)を受信したキャリア2ブリッジクライアント93は、受信したフレームの設定内容に基づきIEEE Std 802.1ag−2007またはITU‐T Y.1731に従い動作する。
【0090】
本実施の形態のクライアント装置3及びサーバ装置4の各構成部の動作は、第1の実施の形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0091】
尚、上述した本発明の装置は、上記説明からも明らかなように、ハードウェアで構成することも可能であるが、コンピュータプログラムにより実現することも可能である。この場合、プログラムメモリに格納されているプログラムで動作するプロセッサによって、上述した実施の形態と同様の機能、動作を実現させる。尚、上述した実施の形態の一部の機能のみをコンピュータプログラムにより実現することも可能である。
【0092】
以上、実施の形態及び実施例をあげて本発明を説明したが、本発明は必ずしも上記実施の形態及び実施例に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内において様々に変形し実施することが出来る。
【符号の説明】
【0093】
301 Passive SAP部
302 Ether OAM多重部
303 Active SAP
304 プロビジョニング制御部
305 Ether OAM設定格納部
306 Ether OAM制御部
307 Ether OAM分離多重部
308 ディップスイッチ
309 プッシュボタン
401 Passive SAP
402 Ether OAM多重部
403 Active SAP
404 プロビジョニング制御部
405 クライアント設定格納部
406 Ether OAM制御部
407 Ether OAM分離多重部
408 管理者インタフェース
409 Ether OAM設定格納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信システムであって、
Ether OAM(Operations,Administration,Maintenance)を設定するキャリアのMaintenance Domain Levelと自装置のMACアドレスとを記した設定要求を送信し、前記設定要求に応答して送信される設定情報に基づいて自装置のEther OAMを設定するクライアント装置と、
各キャリアのMaintenance Domain毎に設けられ、前記送信された設定要求のMaintenance Domain Levelが自装置のMaintenance Domain Levelと同じである場合に、前記送信された設定要求のMACアドレスに基づいて該装置に対応した設定情報を前記MACアドレス宛に送信するサーバ装置と
を有することを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記サーバ装置は、前記送信された設定要求のMaintenance Domain Levelが自装置のMaintenance Domain Levelと同じで無い場合に、受信した設定要求を転送することを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
クライアント装置であって、
Ether OAM(Operations,Administration,Maintenance)を設定するキャリアのMaintenance Domain Levelと自装置のMACアドレスとを記した設定要求を送信し、前記設定要求に応答して送信される設定情報に基づいて自装置のEther OAMを設定することを特徴とするクライアント装置。
【請求項4】
サーバ装置であって、
各キャリアのMaintenance Domain毎に設けられ、クライアント装置から送信された、Ether OAM(Operations,Administration,Maintenance)を設定するキャリアのMaintenance Domain Levelとクライアント装置のMACアドレスとを記した設定要求のMaintenance Domain Levelが自装置のMaintenance Domain Levelと同じである場合に、前記送信された設定要求のMACアドレスに基づいて該装置に対応した設定情報を前記MACアドレス宛に送信することを特徴とするサーバ装置。
【請求項5】
前記送信された設定要求のMaintenance Domain Levelが自装置のMaintenance Domain Levelと同じで無い場合に、受信した設定要求を転送することを特徴とする請求項4に記載のサーバ装置。
【請求項6】
通信設定方法であって、
Ether OAM(Operations,Administration,Maintenance)を設定するキャリアのMaintenance Domain Levelと自装置のMACアドレスとを記した設定要求をクライアント装置が送信する設定要求送信ステップと、
各キャリアのMaintenance Domain毎に設けられたサーバ装置が、前記送信された設定要求のMaintenance Domain Levelが自装置のMaintenance Domain Levelと同じである場合に、前記送信された設定要求のMACアドレスに基づいて該装置に対応した設定情報を前記MACアドレス宛に送信する設定情報送信ステップと
前記送信された設定情報に基づいてクライアント装置のEther OAMを設定する設定ステップと、
を有することを特徴とする通信設定方法。
【請求項7】
前記送信された設定要求のMaintenance Domain Levelが、前記設定要求を受信したサーバ装置のMaintenance Domain Levelと同じで無い場合に、受信した設定要求を転送することを特徴とする請求項6に記載の通信設定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−124743(P2012−124743A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274438(P2010−274438)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000197366)NECアクセステクニカ株式会社 (1,236)
【出願人】(390010386)NECマグナスコミュニケーションズ株式会社 (22)
【Fターム(参考)】