説明

通信システム、ゲートウェイ装置、通信端末および情報処理方法

【課題】移動体交換局に障害が発生したときに、通信端末およびネットワークノードの通信処理負荷を低減可能にした通信システムを提供する。
【解決手段】移動体交換局に対して一定の周期でヘルスチェックを行い、移動体交換局における障害または移動体交換局と自装置を接続する伝送路における障害の発生を検出すると、移動体交換局のドメインへのアクセスを規制する旨のメッセージであるドメイン規制メッセージをフェムトセル基地局に送信するゲートウェイ装置と、ゲートウェイ装置からドメイン規制メッセージを受信すると、通信圏内の通信端末に対して、移動体交換局への信号送信を規制する旨の情報を含む報知情報を無線通信で送信するフェムトセル基地局と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システム、ゲートウェイ装置、通信端末および情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通信の標準化に関する3GPPに準拠した通信システムの一例を説明する。図12は関連する通信システムの一構成例を示すブロック図である。
【0003】
図12に示すように、通信システムは、Home Node B(以下では、HNBと表記する)110と、Home Node B Gateway(以下では、HNBGWと表記する)120とを有する。HNB110とHNBGW120はIuhインタフェースで接続される。HNBGW120はIuインタフェースを介して移動体交換局100と接続される。移動体交換局100は、図に示さないネットワークに接続されている。
【0004】
User Equipment(以下では、UEと表記する)130は、HNB110と無線通信で接続する移動体通信端末である。
【0005】
HNB110は半径数十メートル以内を通信圏(以下では、セルと称する)とするフェムトセルを構築する基地局装置である。HNBGW120は、多数のHNB110を集束および制御する装置である。移動体交換局100は、回線交換機能(Circuit Switched(以下では、CSと表記する))を有する基地局、および、パケット交換機能(Packet Switched(以下、PSと表記する))を有する交換局を含む装置である。
【0006】
移動体交換局100は、例えば、回線交換(CS)サービスをユーザに提供するMobile Service Switching Center(以下では、MSCと表記する)と、パケット交換(PS)サービスをユーザに提供するServing General Packet Radio Service Support Node(以下では、SGSNと表記する)とを含む装置である。
【0007】
UE130は、HNB110のセルに入ることで、HNB110と無線通信が可能になると、自分の位置しているセルを移動体交換局100に登録するための位置登録信号を無線通信でHNB110に一定周期で送信する。位置登録対象となるセルを、以下では、位置登録エリアと称する。HNB110は、UE130から位置登録信号を受信すると、位置登録信号をHNBGW120に転送する。HNBGW120は、HNB110から受信する位置登録信号を移動体交換局100に送信する。
【0008】
上述のようにしてUE130の位置登録の処理が移動体交換局100で行われると、UE130のユーザはUE130を操作してCSサービスおよびPSサービスを利用することが可能となる。CSドメインおよびPSドメインを含むCNドメインについての輻輳に対するアクセス規制の方法の一例が、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】再公表WO2007/111009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
現状のIuhインタフェースにおいて、移動体交換局のMSCおよびSGSNのうち、いずれか一方、または両方のドメインに動作障害が発生した際、障害発生の通知方法が確立していないため、移動体交換局に動作障害が発生したことをHNBGWからHNBに通知することができない。そのため、移動体交換局の動作障害を知らないUEは、HNBおよびHNBGWに何度も同じ信号を送信することになり、UEや、HNBおよびHNBGWを含むネットワークノードに負荷がかかるという問題があった。以下に、位置登録信号の場合についての問題を説明する。
【0011】
上述したように、UEは一定周期で位置登録信号を移動体交換局宛に送信する。また、UEの位置が複数の位置登録エリアにまたがっている場合も、UEは頻繁に位置登録信号を移動体交換局宛に送信する。移動体交換局が位置登録信号を処理できない場合、UEは位置登録が無事に処理された旨の通知を移動体交換局から受け取ることができず、UEは、位置登録信号をHNBおよびHNBGWを介して移動体交換局に、決められた周期よりも短い周期で繰り返し送信することになる。その結果、UE側への処理負荷と、HNBおよびHNBGWを含むネットワーク側への処理負荷が増加する。
【0012】
特許文献1に開示された方法では、CNドメインへの輻輳に対して、CSドメイン規制の対象となる通信端末を選別するものであり、障害が発生した移動体交換局についての対策としては不十分である。
【0013】
本発明は上述したような技術が有する問題点を解決するためになされたものであり、移動体交換局に障害が発生したときに、通信端末およびネットワークノードの通信処理負荷を低減可能にした、通信システム、ゲートウェイ装置、通信端末および情報処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するための本発明の通信システムは、
移動体交換局に対して一定の周期でヘルスチェックを行い、該移動体交換局における障害または該移動体交換局と自装置を接続する伝送路における障害の発生を検出すると、該移動体交換局のドメインへのアクセスを規制する旨のメッセージであるドメイン規制メッセージをフェムトセル基地局に送信するゲートウェイ装置と、
前記ゲートウェイ装置から前記ドメイン規制メッセージを受信すると、通信圏内の通信端末に対して、前記移動体交換局への信号送信を規制する旨の情報を含む報知情報を無線通信で送信する前記フェムトセル基地局と、
を有する構成である。
【0015】
また、本発明のゲートウェイ装置は、移動体交換局とフェムトセル基地局との通信を中継するゲートウェイ装置であって、
前記移動体交換局に対して一定の周期でヘルスチェックを行い、該移動体交換局における障害または該移動体交換局と自装置を接続する伝送路における障害の発生を検出すると、該移動体交換局のドメインへのアクセスを規制する旨のメッセージであるドメイン規制メッセージを前記フェムトセル基地局に送信する制御部を有する構成である。
【0016】
また、本発明の通信端末は、
フェムトセル基地局と信号を送受信するための無線通信部と、
前記フェムトセル基地局に接続された移動体交換局に対して信号送信を規制する旨の情報を含む報知情報を前記フェムトセル基地局から受信すると、前記移動体交換局への位置登録信号を含む信号の送信を停止する端末制御部と、
を有する構成である。
【0017】
また、本発明の情報処理方法は、ゲートウェイ装置およびフェムトセル基地局を有する通信システムによる情報処理方法であって、
前記ゲートウェイ装置が、移動体交換局に対して一定の周期でヘルスチェックを行い、
前記ゲートウェイ装置が、前記移動体交換局における障害または該移動体交換局と自装置を接続する伝送路における障害の発生を検出すると、該移動体交換局のドメインへのアクセスを規制する旨のメッセージであるドメイン規制メッセージを前記フェムトセル基地局に送信し、
前記フェムトセル基地局が、前記ゲートウェイ装置から前記ドメイン規制メッセージを受信すると、通信圏内の通信端末に対して、前記移動体交換局への信号送信を規制する旨の情報を含む報知情報を無線通信で送信するものである。
【0018】
さらに、本発明の情報処理方法は、移動体交換局とフェムトセル基地局との通信を中継するゲートウェイ装置による情報処理方法であって、
前記移動体交換局に対して一定の周期でヘルスチェックを行い、
前記移動体交換局における障害または該移動体交換局と自装置を接続する伝送路における障害の発生を検出すると、該移動体交換局のドメインへのアクセスを規制する旨のメッセージであるドメイン規制メッセージを前記フェムトセル基地局に送信するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、移動体交換局に障害が発生したときに、通信端末やネットワークノードに生じる通信処理の負荷を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態の通信システムの一構成例を示すブロック図である。
【図2】図1に示したHNBGWの一構成例を示すブロック図である。
【図3】本実施形態で導入されたドメイン規制メッセージの一例を示す表である。
【図4】図1に示したHNBの一構成例を示すブロック図である。
【図5】図1に示したUEの一構成例を示すブロック図である。
【図6】本実施形態の通信システムの動作を説明するためのシーケンス図である。
【図7】CSドメイン規制後のUEによる動作手順を示すフロー図である。
【図8】本実施形態の通信システムの動作を説明するためのシーケンス図である。
【図9】PSドメイン規制後のUEによる動作手順を示すフロー図である。
【図10】UEがセルのサーチまたは再選択を行う場合の一例を説明するための図である。
【図11】UEがセルのサーチまたは再選択を行う場合の別の例を説明するための図である。
【図12】関連する通信システムの一構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本実施形態の通信システムの構成を説明する。図1は本実施形態の通信システムの一構成例を示すブロック図である。
【0022】
図12に示した構成と同様な構成には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、以下では、本発明の情報処理に関連する部分について、その構成と動作を詳細に説明するものとし、UE、HNB、HNBGWおよび移動体交換局のそれぞれについて、一般的な構成および動作の詳細な説明を省略する。
【0023】
図1に示すように、本実施形態の通信システムは、HNB10と、HNBGW20とを有する。HNB10とHNBGW20はIuhインタフェースで接続される。HNB10はUE30と無線通信で接続される。HNBGW20はIuインタフェースを介して移動体交換局100と接続される。移動体交換局100は、図に示さないネットワークに接続されている。移動体交換局100におけるドメインとは、MSCまたはSGSNを示す。
【0024】
図2は図1に示したHNBGWの一構成例を示すブロック図である。
【0025】
図2に示すように、HNBGW20は、制御部21を有する構成である。制御部21は、プログラムにしたがって処理を実行するCPU(Central Processing Unit)22と、プログラムを格納するためのメモリ23とを含む。メモリ23には、Iuhインタフェースを介して伝送されるドメイン規制メッセージが登録されている。
【0026】
図3は本実施形態で導入されたドメイン規制メッセージの一例を示す表である。図3に示すメッセージを、HNBAP(3GPP TS25.469)、RUA(3GPP TS25.468)プロトコル、またはRANAP(3GPP TS25.413)に定義してもよく、他のプロトコルに定義してもよい。
【0027】
本実施形態のドメイン規制メッセージでは、移動体交換局100のドメイン(例えば、MSCまたはSGSN)に障害が発生したことを通知することを特徴としている。図3に示すように、”CN Domain Indicator”および“CN Domain Status”のパラメータを導入している。CN Domain Indicatorは、3GPP TS25.468に示されるように、CSドメインまたはPSドメインを示す。また、CN Domain Statusには、CNドメインの状態として、正常(Normal)か、障害中(Failure)かが設定される。CSドメインの障害はMSCの障害を意味する。PSドメインの障害はSGSNの障害を意味する。障害の発生したドメインを障害中ドメインと称し、障害の発生していないドメインを正常ドメインと称する。
【0028】
3GPP REL4では、回線交換サービスを提供するMSCが、MSCサーバとメディアゲートウェイ(以下では、MGWと表記する)とを含む構成の場合がある。この場合、回線交換サービスの障害とは、MSCサーバもしくはMGWの障害、または、これら両方の障害のいずれかを示す。また、障害とは、ノード(装置)自体の障害の場合もあるが、移動体交換局100およびHNBGW120間のIuインタフェースにおける伝送路障害の場合も含む。
【0029】
制御部21は、移動体交換局100のMSCおよびSGSNのそれぞれとの間に、SSCOP(Service Specific Connection Oriented Protocol)またはSCTP(Stream Control Transmission Protocol)によってシグナリングリンクが設定されており、一定の周期でMSCおよびSGSNのヘルスチェックを行っている。MSCまたはSGSNに障害が発生すると、SSCOPまたはSCTPでのヘルスチェックでNGとなり、制御部21は、上位のSCCP(Skinny Client Control Protocol)レイヤにて対向ノードの障害を検出する。
【0030】
また、制御部21は、移動体交換局100またはIuインタフェースの障害を検出すると、移動体交換局100のドメインへのアクセスを規制する旨のメッセージであるドメイン規制メッセージをHNB10に送信する。
【0031】
図4は図1に示したHNBの一構成例を示すブロック図である。
【0032】
図4に示すように、HNB10は、UE30と信号を送受信するための無線通信部15と、制御部12とを有する。制御部12は、HNBGW20からドメイン規制メッセージを受信すると、自分のセル内にあるUE30に対して、移動体交換局100への信号送信を規制する旨の情報を含む報知情報を送信する。なお、制御部12は、ゲートアレイのような専用回路であってもよく、CPUがプログラムを実行することで仮想的に構成されてもよい。
【0033】
図5は図1に示したUEの一構成例を示すブロック図である。
【0034】
図5に示すように、UE30は、HNB10と信号を送受信するための無線通信部35と、端末制御部32とを有する。端末制御部32は、HNB10から報知情報を受信すると、移動体交換局100に対して信号を送信することを停止する。また、端末制御部32は、HNB10から報知情報を受信した後、他のHNBを探索する。端末制御部32は、ゲートアレイのような専用回路であってもよく、CPUがプログラムを実行することで仮想的に構成されてもよい。
【0035】
次に、本実施形態の通信システムの動作を説明する。図6は本実施形態の通信システムの動作を示すシーケンス図である。ここでは、移動体交換局100のMSCに障害が発生した場合とする。図7は、図6に示したシーケンスにおいて、ドメイン規制後のUEによる動作手順を示すフロー図である。
【0036】
移動体交換局100、または移動体交換局100との伝送路に障害が発生すると、HNBGW20は、SCCPレイヤで“user-out-of-service information”または“signaling -point -inaccessible information”(3GPP TS25.410参照)を受け取り、移動体交換局100のMSCに動作障害が発生したことを検出する(ステップS101)。
【0037】
HNBGW20は、HNBAPプロトコルのドメイン規制メッセージをHNB10に送信する(ステップ102)。ただし、ドメイン規制メッセージには、HNBAPに限らず、RANAP、RUAなどの他のプロトコルを使用してもよい。ここで、HNBGW20の制御部21は、ドメイン規制について2種類のメッセージをHNB10に送信することが可能である。1つ目はCSドメインおよびPSドメインの両方についてアクセスを規制するメッセージであり、2つ目はCSドメインへのアクセスを規制するメッセージである。以下では、1つ目のメッセージをCSPSドメイン規制メッセージと称し、2つ目のメッセージをCSドメイン規制メッセージと称する。
【0038】
ステップS102において、HNBGW20がCSPSドメイン規制メッセージをHNB10に送信した場合、HNB10は、HNBGW20からCSPSドメイン規制メッセージを受信する。この場合、HNB10は、CSドメインおよびPSドメインへのアクセスができないことを示すcell barredを含む報知情報を自分のセル内のUE30に送信する(ステップS103)。
【0039】
UE30は、cell barredを含む報知情報をHNB10から受信すると、HNB10に対して、アクセスを要求するための信号であるアクセス要求信号および移動体交換局宛の位置登録信号などの信号の送信を停止する(ステップS104)。その後、UE30は、CSドメインおよびPSドメインの両サービスを利用可能な別のHNBに接続する、セルの再選択を行う。
【0040】
ただし、セル再選択(cell reselection)の対象となるセルは、現在、接続しているセルと同じ周波数のセル(intra frequency cell)、異なる周波数のセル(inter frequency cell)、異なるシステムのセル(inter RAT cell)のいずれであってもよい。
【0041】
一方、ステップS102において、HNBGW20がCSドメイン規制メッセージをHNB10に送信した場合、HNB10は、HNBGW20からCSドメイン規制メッセージを受信する。この場合、HNB10は、CSドメインを用いた通信を規制する旨のメッセージであるCS Domain Specific Access Restriction(以下では、CS DSARと表記する)を含む報知情報を自分のセル内のUE30に送信する(ステップS103)。
【0042】
UE30は、CS DSARを含む報知情報をHNB10から受信すると、MSCに障害が発生したことを認識し、HNB10に対して、アクセス要求信号および移動体交換局宛の位置登録信号などの信号の送信を停止する(ステップS104)。UE30は、現在、接続しているHNB10を介してCSサービスを利用することができないので、CSサービスを利用するために、CSサービスが利用可能な別のセルをサーチする。
【0043】
図7はCSドメイン規制後のUEの動作手順を示すフロー図である。UE30は、CSドメインへの通信が規制されていることを認識した後(ステップS301)、ユーザの操作により、CS発呼を要求する旨の指示が入力されるか否かを判定する(ステップS302)。CS発呼を要求する旨の指示が入力されると、UE30は、現在、接続していたHNBとは異なり、通信可能な他のHNBをサーチし、他のHNBと通信可能であると、そのHNBと接続する。
【0044】
UE30は、新たに接続したHNBからCS DSARを含む報知情報を受信すると、さらに別のHNBをサーチし、CSドメイン規制されていないHNBと接続するまで、サーチを繰り返す(ステップS303)。なお、ステップS302で、CS発呼を要求する旨の指示が入力されない場合、UE30は、接続可能な他のHNBをサーチする必要はない。
【0045】
この場合、UE30のユーザはCSサービスを利用できなくても、PSサービスを利用することは可能である。そのため、UE30は、現在、在圏しているセルでSGSNと通信可能である。PSサービスを利用する際、通信圏の面積がフェムトセルよりも大きいマクロセルを使用した場合に比べて、フェムトセルを使用することで、フェムトセルからのデータオフロードにより課金面での優遇をユーザは得ることができる。
【0046】
移動体交換局100のMSCに障害が発生した場合、CS通信を抑制したことにより、UEがMSC向けの位置登録信号の送信を停止するため、ネットワークに接続されたノードに対して、余分な信号に対処するための負荷を低減させることが可能となる。
【0047】
次に、本実施形態の通信システムにおいて、移動体交換局100のSGSNに障害が発生した場合の動作を説明する。図8は本実施形態の通信システムの動作を示すシーケンス図である。図9は、図8に示したシーケンスにおいて、ドメイン規制後のUEによる動作手順を示すフロー図である。なお、図6および図7を参照して説明した動作と重複する内容の説明を省略する。
【0048】
移動体交換局100、または移動体交換局100との伝送路に障害が発生すると、HNBGW20は、SCCPレイヤで“user-out-of-service information”または“signaling -point -inaccessible information”(3GPP TS25.410参照)を受け取り、移動体交換局100のSGSNに動作障害が発生したことを検出する(ステップS201)。
【0049】
HNBGW20は、HNBAPプロトコルのドメイン規制メッセージをHNB10に送信する(ステップ202)。ここで、HNBGW20の制御部21は、ドメイン規制のためのメッセージとして、CSPSドメイン規制メッセージと、PSドメインへのアクセスを規制するメッセージのうち、いずれかを使用することが可能である。以下では、PSドメインへのアクセスを規制するメッセージをPSドメイン規制メッセージと称する。
【0050】
なお、ステップS202において、HNBGW20がHNB10にCSPSドメイン規制メッセージを送信した場合の動作は、図6を参照して説明した内容と同様になるため、詳細な説明を省略する。
【0051】
ステップS202において、HNBGW20がPSドメイン規制メッセージをHNB10に送信した場合、HNB10は、HNBGW20からPSドメイン規制メッセージを受信する。この場合、HNB10は、PSドメインを用いた通信を規制する旨のメッセージであるPS Domain Specific Access Restriction(以下では、PS DSARと表記する)を含む報知情報を自分のセル内のUE30に送信する(ステップS203)。
【0052】
UE30は、PS DSARを含む報知情報をHNB10から受信すると、SGSNに障害が発生したことを認識し、HNB10に対して、アクセス要求信号および移動体交換局宛の位置登録信号などの信号の送信を停止する(ステップS204)。UE30は、現在、接続しているHNB10を介してPSサービスを利用することができないので、PSサービスを利用するために、PSサービスが利用可能な別のセルをサーチする。
【0053】
図9はPSドメイン規制後のUEの動作手順を示すフロー図である。UE30は、PSドメインへの通信が規制されていることを認識した後(ステップS401)、ユーザの操作により、PS発呼を要求する旨の指示が入力されるか否かを判定する(ステップS402)。PS発呼を要求する旨の指示が入力されると、UE30は、現在、接続していたHNBとは異なり、通信可能な他のHNBをサーチし、他のHNBと通信可能であると、そのHNBと接続する。
【0054】
UE30は、新たに接続したHNBからPS DSARを含む報知情報を受信すると、さらに別のHNBをサーチし、PSドメイン規制されていないHNBと接続するまで、サーチを繰り返す(ステップS403)。なお、ステップS402で、PS発呼を要求する旨の指示が入力されない場合、UE30は、接続可能な他のHNBをサーチする必要はない。
【0055】
この場合、UE30のユーザはPSサービスを利用できなくても、CSサービスを利用することは可能である。そのため、UE30は、現在、在圏しているセルでMSCと通信可能である。CSサービスの利用にフェムトセルを使用することで、マクロセルを使用した場合に比べて、フェムトセルからのデータオフロードにより課金面での優遇をユーザは得ることができる。
【0056】
移動体交換局100のSGSNに障害が発生した場合、PS通信を抑制したことにより、UEがSGSN向けの位置登録信号の送信を停止するため、ネットワークに接続されたノードに対して、余分な信号に対処するための負荷を低減させることが可能となる。
【0057】
次に、CSまたはPSドメインの規制後に、UE30が他の移動体交換局のセルのサーチまたは再選択する場合を、図10を参照して説明する。
【0058】
移動体交換局100a、100cはネットワーク300に接続されている。移動体交換局100aに障害が発生し、移動体交換局100cには障害が発生していないものとする。図10は、UE30がHNB10aのセル内にあり、UE30が移動体交換局100a宛に位置登録信号を送信しようとしている状態を示す。HNBGW20aは、移動体交換局100aの障害を検出すると、ドメイン規制メッセージをHNB10a、10bに送信する。HNB10aはHNBGW20aからドメイン規制メッセージを受信すると、報知情報をUE30に送信する。
【0059】
UE30は、HNB10aから報知情報を受信すると、接続可能な他のHNBを探す。UE30がHNB10bのセル内に入り、UE30がHNB10bと通信可能になると、HNB10bは報知情報をUE30に送信する。UE30は、HNB10bから報知情報を受信すると、接続可能な他のHNBを探す。UE30がHNB10cのセル内に入り、UE30がHNB10cと通信可能になると、UE30は、移動体交換局100c宛に位置登録信号をHNB10cを介して送信する。このようにして、図7および図9で説明した動作手順を、図10に示す構成のシステムにおいて、UE30に実行させることが可能である。
【0060】
次に、UE30がセルの再選択を行う際、異なるシステムのセルも再選択の対象になる場合の一例を説明する。図11はUEがセルのサーチまたは再選択を行う場合の別の例を説明するための図である。
【0061】
図11に示すNode40は、通信圏を半径数キロメートルとしたセルを構築し、UE30と無線通信を行うマクロセルの基地局装置である。RNC(Radio Network Controller)は、Node40を集束および制御する無線制御装置である。
【0062】
移動体交換局100a、50はネットワーク300に接続されている。移動体交換局100aに障害が発生し、移動体交換局50には障害が発生していないものとする。図11は、UE30がHNB10aのセル内にあり、UE30が移動体交換局100a宛に位置登録信号を送信しようとしている状態を示す。HNBGW20aは、移動体交換局100aの障害を検出すると、ドメイン規制メッセージをHNB10aに送信する。HNB10aはHNBGW20aからドメイン規制メッセージを受信すると、報知情報をUE30に送信する。
【0063】
UE30は、HNB10aから報知情報を受信すると、接続可能な他の無線基地局を探す。UE30がNode40のセル内に入り、UE30がNode40と通信可能になると、UE30は、移動体交換局50宛に位置登録信号をNode40を介して送信する。このようにして、図11に示す構成のシステムにおいても、図7および図9で説明した動作手順を、UE30に実行させることが可能である。
【0064】
本実施形態によれば、移動体交換局またはIuインタフェースに障害が発生すると、移動体交換局のドメインへのアクセスが規制中であることがHNBGWからHNBに通知され、さらに、移動体交換局のドメインへの信号送信を規制する旨の情報がHNBからUEに通知される。そのため、その通知を受けたUEは移動体交換局へのアクセス要求信号や位置登録信号などの信号を送信することを停止する。その結果、UEが移動体交換局に何度も信号を送ることが抑制され、UEの処理負荷が低減し、UEから送信される信号を受信するHNBおよびHNBGWの処理負荷も低減する。
【0065】
また、本実施形態では、HNBGWからHNBに送信するメッセージまたはパラメータに、移動体交換局のMSCまたはSGSNのうち、いずれに障害が発生したかの情報を通知するための手段を定義している。移動体交換局のMSCおよびSGSNのうち、MSC障害中において、MNBGWからHNBに送信されるドメイン規制メッセージに、規制対象となるドメインの情報を含むようにすることで、完全にセル自体を規制(Cell barred)することなく、障害の発生したドメインへのアクセス規制を実現できる。そのため、CSサービス規制が行われている状態でも、UEのユーザは、PSサービスを継続して受けることが可能である。これと同様に、SGSN障害中にPSサービス規制が行われている状態でも、ユーザは、CSサービスを継続して受けることが可能である。
【0066】
通信規制を受けたUEは、通常であれば、現在のセルにとどまり、ドメインからのサービスを受けることはできない。これは、現状の3G仕様では、セル自体は正常であるとUEに認識されているため、UEは別のセルへ再選択ができないためである。本実施形態では、ユーザが使用したいサービスのドメインへのアクセスが規制されている場合、UEを別のセルに再選択させることを可能としている。そのため、UEは、接続先を別のセルに変更することで、変更後のセルを介して、そのドメインのサービスを享受することが可能となる。
【0067】
なお、本実施形態では、HNBGW20の制御部21を、CPU22がプログラムを実行することで構成される場合で説明したが、制御部21による動作を実行可能にした、ゲートアレイのような専用回路で構成してもよい。
【0068】
また、本実施形態の通信システムでは、図1に示した構成のうち、UE30および移動体交換局100は、HNB10およびHNBGW20の動作を説明するために図に示されたものであり、本実施形態の通信システムの構成に必ずしも含まれていなくてよい。
【符号の説明】
【0069】
10 HNB(Home Node B)
12 制御部
15 無線通信部
20 HNBGW(Home Node B Gateway)
21 制御部
30 UE(User Equipment)
32 端末制御部
35 無線通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体交換局に対して一定の周期でヘルスチェックを行い、該移動体交換局における障害または該移動体交換局と自装置を接続する伝送路における障害の発生を検出すると、該移動体交換局のドメインへのアクセスを規制する旨のメッセージであるドメイン規制メッセージをフェムトセル基地局に送信するゲートウェイ装置と、
前記ゲートウェイ装置から前記ドメイン規制メッセージを受信すると、通信圏内の通信端末に対して、前記移動体交換局への信号送信を規制する旨の情報を含む報知情報を無線通信で送信する前記フェムトセル基地局と、
を有する通信システム。
【請求項2】
移動体交換局とフェムトセル基地局との通信を中継するゲートウェイ装置であって、
前記移動体交換局に対して一定の周期でヘルスチェックを行い、該移動体交換局における障害または該移動体交換局と自装置を接続する伝送路における障害の発生を検出すると、該移動体交換局のドメインへのアクセスを規制する旨のメッセージであるドメイン規制メッセージを前記フェムトセル基地局に送信する制御部を有するゲートウェイ装置。
【請求項3】
請求項2記載のゲートウェイ装置において、
前記移動体交換局が複数のドメインを有し、
前記制御部は、
前記複数のドメインのうち、いずれかのドメインの障害を検出すると、障害の発生したドメインを示す情報を含む前記ドメイン規制メッセージを前記フェムトセル基地局に送信する、ゲートウェイ装置。
【請求項4】
フェムトセル基地局と信号を送受信するための無線通信部と、
前記フェムトセル基地局に接続された移動体交換局に対して信号送信を規制する旨の情報を含む報知情報を前記フェムトセル基地局から受信すると、前記移動体交換局への位置登録信号を含む信号の送信を停止する端末制御部と、
を有する通信端末。
【請求項5】
請求項4記載の通信端末において、
前記端末制御部は、
前記フェムトセル基地局から前記報知情報を受信すると、該フェムトセル基地局とは異なる他のフェムトセル基地局を探索する、通信端末。
【請求項6】
請求項4記載の通信端末において、
前記移動体交換局が複数のドメインを有し、
前記端末制御部は、
前記フェムトセル基地局から受信する前記報知情報に、障害が発生したドメインである障害中ドメインを示す情報が含まれていると、該障害中ドメインを使用する旨の指示が入力されるか否かを判定し、該障害中ドメインを使用する旨の指示が入力される場合、該フェムトセル基地局とは異なる他のフェムトセル基地局を探索し、前記複数のドメインのうち、該障害中ドメイン以外のドメインである正常ドメインを使用する旨の指示が入力されると、前記フェムトセル基地局を介して位置登録信号を前記移動体交換局の該正常ドメインに送信する、通信端末。
【請求項7】
請求項4から6のいずれか1項記載の通信端末において、
前記端末制御部は、
前記フェムトセル基地局から前記報知情報を受信すると、該フェムトセル基地局よりも通信圏の面積が大きい基地局であるマクロセル基地局を探索する、通信端末。
【請求項8】
ゲートウェイ装置およびフェムトセル基地局を有する通信システムによる情報処理方法であって、
前記ゲートウェイ装置が、移動体交換局に対して一定の周期でヘルスチェックを行い、
前記ゲートウェイ装置が、前記移動体交換局における障害または該移動体交換局と自装置を接続する伝送路における障害の発生を検出すると、該移動体交換局のドメインへのアクセスを規制する旨のメッセージであるドメイン規制メッセージを前記フェムトセル基地局に送信し、
前記フェムトセル基地局が、前記ゲートウェイ装置から前記ドメイン規制メッセージを受信すると、通信圏内の通信端末に対して、前記移動体交換局への信号送信を規制する旨の情報を含む報知情報を無線通信で送信する、情報処理方法。
【請求項9】
移動体交換局とフェムトセル基地局との通信を中継するゲートウェイ装置による情報処理方法であって、
前記移動体交換局に対して一定の周期でヘルスチェックを行い、
前記移動体交換局における障害または該移動体交換局と自装置を接続する伝送路における障害の発生を検出すると、該移動体交換局のドメインへのアクセスを規制する旨のメッセージであるドメイン規制メッセージを前記フェムトセル基地局に送信する、情報処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−39366(P2012−39366A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177486(P2010−177486)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(000232254)日本電気通信システム株式会社 (586)
【Fターム(参考)】