説明

通信システムおよび重畳モジュール

【課題】重畳信号を用いた通信の通信速度を向上させることができる通信システムおよび重畳モジュールを提供する。
【解決手段】伝送ユニット1および設定装置4の各々には、伝送信号に重畳される重畳信号を用いて互いに通信を行う重畳モジュール8が設けられている。重畳モジュール8は、グループ制御やパターン制御用の設定情報を、重畳信号によって設定装置4から伝送ユニット1に転送する。重畳モジュール8は、伝送信号のうち、予備割込帯と予備帯と休止帯との3つの帯域に加えて、返信帯についても条件付で重畳可能帯として重畳信号の重畳に利用する。すなわち、重畳モジュール8は、伝送信号のフレームごとに返信帯の開始時点から所定の検出期間における返信信号の有無を判断部85にて判断し、返信信号がないと判断された返信帯については重畳可能帯として用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送ユニットから通信線に繰り返し送出される伝送信号を用いて通信する端末装置と、伝送信号に重畳される重畳信号を用いて通信する重畳モジュールとが通信線に接続されて構成される通信システムおよび重畳モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、伝送路に対して伝送ユニット(親機)および複数台の端末装置(子機)が接続され、各端末装置と伝送ユニットとの間で通信を行う通信システムが広く普及している。この種の通信システムの一例として、伝送ユニットが定期的に端末装置の状態を監視し、端末装置の状態に変化があった場合、その状態変化に対応する処理を行うように伝送ユニットから他の端末装置に信号を送るシステムがある(たとえば特許文献1〜3参照)。
【0003】
ただし、上記構成の通信システムは、端末装置同士が常に伝送ユニットを経由して通信を行い、伝送ユニットが端末装置に対してポーリングを行うため通信速度が遅く、たとえばアナログ量のように比較的データ量の多い情報の伝送には不向きである。さらに、上記通信システムは、伝送ユニットの故障時などにシステム全体が停止してしまうため、システムとしての信頼性が低いという問題もある。
【0004】
そこで、伝送ユニットを介して端末装置同士が通信を行う既設の通信システムと、端末装置同士がピア・ツー・ピア(P2P)で直接通信を行う通信システムとを混在させた通信システムが提案されている(たとえば特許文献4参照)。この通信システムにおいては、伝送ユニット(親機)を介して通信する端末装置(第1通信端末)と、互いに直接通信する重畳モジュール(第2通信端末)とが伝送路を共用するので、既設の通信システムに重畳モジュールを容易に増設することができる。端末装置は伝送ユニットから伝送路に繰り返し送出される伝送信号(第1プロトコルの信号)を用いて通信を行い、重畳モジュールは伝送信号に重畳される重畳信号(第2プロトコルの信号)を用いて通信を行う。
【0005】
ここで、伝送信号は、1フレームごとに時間軸方向において複数の期間に分割され、一部の期間が重畳信号を重畳可能な重畳可能期間として割り当てられる時分割方式の信号である。すなわち、重畳モジュールは、伝送信号の一部に割り当てられた重畳可能期間に、伝送信号と共通の伝送路を伝送される重畳信号を用いて通信する。
【0006】
この構成においては、重畳モジュールは、伝送データのデータ量が多く1回の重畳可能期間内で送信しきれない場合には、伝送データを複数のデータに分割して重畳可能期間ごとに順次送信する。つまり、伝送データが複数の重畳可能期間に跨って伝送されることになるため、重畳モジュールは、伝送データのデータ量が多くなれば伝送信号の1フレームでは伝送データを伝送することができず、複数フレームの伝送信号に亘って伝送データを伝送することもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第1180690号公報
【特許文献2】特許第1195362号公報
【特許文献3】特許第1144477号公報
【特許文献4】特開2009−225328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、重畳モジュールが重畳信号を送信できる期間は伝送信号の一部の期間に制限されているので、伝送信号の1フレームの間に伝送できるデータ量は限られており、したがって、重畳モジュール間の通信速度を向上させることは困難である。
【0009】
本発明は上記事由に鑑みて為されており、重畳信号を用いた通信の通信速度を向上させることができる通信システムおよび重畳モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の通信システムは、通信線に伝送信号を繰り返し送出する伝送ユニットと、前記伝送信号を用いて通信する端末装置と、前記伝送信号に重畳される重畳信号を用いて通信する重畳モジュールとが前記通信線に接続された通信システムであって、前記伝送信号は、1フレームごとに時間軸方向において、前記端末装置にデータを伝送するための送信帯と、前記端末装置からの返送信号を受信するタイムスロットである返信帯とを含む複数の帯域に分割された時分割方式の信号であって、前記重畳モジュールは、前記伝送信号のフレームごとに前記返信帯の開始時点から所定の検出期間における前記返信信号の有無を判断する判断部を有しており、当該判断部にて前記返信信号があると判断された前記返信帯については前記重畳信号の重畳に使用されない重畳不可帯として用い、前記判断部にて前記返信信号がないと判断された前記返信帯については前記重畳信号を重畳可能な重畳可能帯として用いることを特徴とする。
【0011】
この通信システムにおいて、前記伝送信号は、前記端末装置からの割込信号を受信するための割込帯を含み、前記伝送ユニットは、前記割込帯に前記割込信号を受信した場合には、当該割込信号を発生した前記端末装置に対して次回の前記返信帯を割り当てており、前記重畳モジュールは、前記割込帯に前記割込信号を発生する割込発生部を有しており、当該割込発生部が前記割込信号を発生した場合、次回の前記返信帯において前記判断部にて前記返信信号の有無を判断することなく当該返信帯の全域を前記重畳可能帯として用いることが望ましい。
【0012】
この通信システムにおいて、前記端末装置は制御命令に従って制御される被制御機器を有し、前記制御命令は制御対象となる前記被制御機器に固有の識別子と共に前記伝送信号を用いて前記伝送ユニットから送信され、前記伝送ユニットは、複数の前記被制御機器を一括制御する際に用いられる情報であって、少なくとも一括制御の対象となる前記識別子の組み合わせを含む設定情報を記憶する設定記憶部を有し、前記通信線には、前記設定情報を設定する設定装置が接続されており、前記設定装置は、前記設定情報が設定されると、前記伝送ユニットに対して前記設定情報を送信することによって、前記伝送ユニットに前記設定情報の前記設定記憶部への書き込みを実行させ、前記重畳モジュールは、前記伝送ユニットおよび前記設定装置に設けられており、前記設定情報を前記重畳信号によって前記設定装置から前記伝送ユニットに伝送することがより望ましい。
【0013】
この通信システムにおいて、前記伝送ユニットは、前記被制御機器の制御要求と前記設定情報とを同時に受信した場合、前記制御要求をバッファメモリに一時的に記憶し、前記設定情報の前記設定記憶部への書き込みが完了してから、前記バッファメモリ内の前記制御要求に基づいて前記制御命令を送信することがより望ましい。
【0014】
この通信システムにおいて、前記伝送信号は、前記重畳可能帯となる帯域を前記返信帯以外に含んでおり、前記重畳可能帯となる一部の帯域は、複数の前記重畳モジュール間での前記設定情報の同期のみに用いられる同期専用帯域であることがより望ましい。
【0015】
この通信システムにおいて、前記設定装置は、前記伝送信号を用いた通信が可能であって、2台の前記設定装置が同時に前記設定情報を設定する場合には、一方の前記設定装置は前記伝送信号を用いて前記設定情報を送信し、他方の前記設定装置は前記重畳信号を用いて前記設定情報を送信することがより望ましい。
【0016】
この通信システムにおいて、複数台の前記設定装置が前記重畳信号を用いて同時に前記設定情報を設定する場合、当該複数台の前記設定装置の各々には、異なる前記重畳可能帯が順次割り当てられることがより望ましい。
【0017】
本発明の重畳モジュールは、通信線に伝送信号を繰り返し送出する伝送ユニットと、前記伝送信号を用いて通信する端末装置と、前記伝送信号に重畳される重畳信号を用いて通信する重畳モジュールとが前記通信線に接続された通信システムに用いられ、前記伝送信号は、1フレームごとに時間軸方向において、前記端末装置にデータを伝送するための送信帯と、前記端末装置からの返送信号を受信するタイムスロットである返信帯とを含む複数の帯域に分割された時分割方式の信号であって、前記伝送信号のフレームごとに前記返信帯の開始時点から所定の検出期間における前記返信信号の有無を判断する判断部を備え、当該判断部にて前記返信信号があると判断された前記返信帯については前記重畳信号の重畳に使用されない重畳不可帯として用い、前記判断部にて前記返信信号がないと判断された前記返信帯については前記重畳信号を重畳可能な重畳可能帯として用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、重畳モジュールが伝送信号のうち返信帯についても条件付で重畳可能帯として重畳信号の重畳に利用するので、重畳信号を用いた通信の通信速度を向上させることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態1に係る通信システムを示し、(a)は全体のシステム構成図、(b)は伝送ユニットのブロック図である。
【図2】実施形態1に係る通信システムで用いる伝送信号を示す波形図である。
【図3】実施形態1に係る通信システムの設定装置を示すブロック図である。
【図4】実施形態1に係る通信システムのサーバユニットを示すブロック図である。
【図5】実施形態1に係る通信システムで用いる伝送信号の返信帯を示す波形図である。
【図6】実施形態1に係る通信システムで用いる設定情報のデータ構成の説明図である。
【図7】実施形態1に係る通信システムの伝送ユニットを示すブロック図である。
【図8】実施形態2に係る通信システムの動作を示す説明図である。
【図9】実施形態2に係る通信システムの伝送ユニットの動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施形態1)
本実施形態の通信システムは、図1(a)に示すように、2線式の通信線2に接続される親機としての伝送ユニット1と、複数台(ここでは2台)の端末装置3と、複数台(ここでは2台)の設定装置4と、サーバユニット5とを備えている。
【0021】
この通信システムでは、通信線2を伝送される伝送信号(第1プロトコルの信号)と、伝送信号に重畳される重畳信号(第2プロトコルの信号)とからなるプロトコルの異なる2種類の信号を用いて通信が行われる。重畳信号は、伝送信号より周波数が高い。
【0022】
複数台の端末装置3は、伝送ユニット1に対して通信線2を介して並列接続されている。伝送ユニット1および端末装置3は、伝送ユニット1から端末装置3へのデータ伝送と端末装置3から伝送ユニット1へのデータ伝送とが時分割で行われる時分割多重伝送システム(以下、「基本システム」という)を構築する。
【0023】
基本システムにおいて、端末装置3は、壁スイッチ等のスイッチ31を有する監視端末器と、リレー等の被制御機器32を有する制御端末器との2種類に分類される。これにより、スイッチ31からの監視入力に応じて、被制御機器32に接続された負荷(図示せず)を制御することが可能となる。ここで、端末装置3は予め割り当てられた自己のアドレスをそれぞれ記憶部(図示せず)に記憶している。なお、監視端末器には、スイッチ31に限らずセンサなどが付設されていてもよい。
【0024】
監視端末器は、監視入力を受けると伝送ユニット1に対して監視入力に対応した制御要求を伝送する。伝送ユニット1は、制御要求を受け取るとアドレスによって上記監視端末器と対応付けられている制御端末器に向けて制御命令を伝送する。制御端末器は、制御命令を受け取ると上記制御命令に従って被制御機器32を制御する。被制御機器32は、たとえば、被制御機器32としてのリレーをオンオフさせることによって、接続された負荷(電気機器)を制御する。制御命令はスイッチ31の監視入力を反映しているから、結局、スイッチ31に対する操作が被制御機器32の制御に反映されることになる。
【0025】
伝送ユニット1は、スイッチ31と被制御機器32とをアドレスによって対応付けた制御テーブルを記憶部12(図1(b)参照)に記憶している。ここで、たとえば端末装置3が複数回路のスイッチ31を有する場合、端末装置3に固有の端末アドレスだけでは、この端末装置3のスイッチ31が全て該当することになり、実際に操作された唯一のスイッチ31を特定することはできない。そこで、操作端末器においては、実際に操作された唯一のスイッチ31を特定できるように、スイッチ31の回路ごとに負荷番号が割り振られ、端末装置3の端末アドレスの後に負荷番号が付加されたアドレスをスイッチ31固有のアドレス(識別子)として用いる。同様に、制御端末器においては被制御機器32のリレー回路ごとに負荷番号が割り振られ、端末装置3の端末アドレスの後に負荷番号が付加されたアドレスを被制御機器32固有のアドレス(識別子)とする。
【0026】
伝送ユニット1は、図1(b)に示すように、伝送処理部11と、記憶部12と、伝送信号を用いた通信を行うための通信モジュール9と、後述する重畳モジュール8および設定記憶部13とを備えている。通信モジュール9は、伝送送受信部92と、伝送送受信部92に接続された伝送データ解析部93および伝送データ生成部94とからなる。
【0027】
伝送送受信部92は、伝送信号の波形を生成して通信線2上に送出したり、通信線2上の伝送信号から返信信号を受信したりする。伝送データ解析部93は、伝送送受信部92が受信した返信信号の内容を解析し、伝送データ生成部94は、伝送信号で送るデータを生成し伝送送受信部92経由で端末装置3に送信する。伝送処理部11は、記憶部12内の制御テーブルを参照し、伝送信号を用いてスイッチ31の監視および被制御機器32の制御を行う。なお、伝送ユニット1は、端末装置3の動作状態を定期的に監視し、記憶部12に保持する機能も有している。
【0028】
続いて、基本システムの動作について説明する。
【0029】
親機としての伝送ユニット1は、通信線2に対して図2に示すように時間軸方向において複数の帯域に分割された形式の電圧波形からなる時分割方式の伝送信号を送信する。すなわち、伝送信号は、予備割込帯21と、予備帯22と、送信帯23と、返信帯24と、割込帯25と、短絡検出帯26と、休止帯27との7つの帯域からなる複極(±24V)の時分割多重信号である。予備割込帯21は2次割込を検出するための期間、予備帯22は割込帯25および短絡検出帯26に合わせて設定された期間であり、送信帯23は端末装置3にデータを伝送するための期間である。返信帯24は端末装置3からの返送信号を受信するタイムスロットであり、割込帯25は後述の割込信号を検出するための期間であり、短絡検出帯26は短絡を検出するための期間である。休止帯27は処理が間に合わないときのための期間である。
【0030】
各端末装置3では、通信線2を介して受信した伝送信号の送信帯23に含まれるアドレスデータが各々のメモリ(図示せず)に記憶されているアドレスに一致すると、伝送信号から被制御機器32を制御するための制御命令を取り込む。さらに、端末装置3は、伝送信号の返信帯24に同期して制御結果を電流モードの信号(適当な低インピーダンスを介して通信線2を短絡することにより送出される信号)として返送する。なお、端末装置3の内部回路の電源は、通信線2を介して伝送される伝送信号を整流し安定化することによって供給される。
【0031】
伝送ユニット1は、常時は伝送信号に含まれるアドレスデータをサイクリックに変化させて端末装置3に順次アクセスする常時ポーリングを行う。常時ポーリングの際には、伝送信号に含まれるアドレスデータが自己のアドレスに一致した端末装置3は、伝送信号に制御命令が含まれていれば制御命令を取り込んで動作し、自己の動作状態を制御結果として伝送ユニット1に返送する。
【0032】
また、伝送ユニット1は、いずれかの監視端末器(端末装置3)においてスイッチ31の監視入力に対応して発生する割込信号が受信すると、割込信号を発生した端末装置3を検索し、その端末装置3にアクセスして割込ポーリングも行う。
【0033】
すなわち、伝送ユニット1は、常時はモードデータを通常モードとした伝送信号を送出し、監視端末器(端末装置3)で発生した割込信号を伝送信号の割込帯25に同期して検出すると、モードデータを割込ポーリングモードとした伝送信号を送出する。
【0034】
割込信号を発生した端末装置3は、割込ポーリングモードの伝送信号のアドレスデータの上位ビットが自己のアドレスの上位ビットに一致していれば、その伝送信号の返信帯24に同期して自己のアドレスの下位ビットを返送データとして返送する。これにより伝送ユニット1では割込信号を発生した端末装置3のアドレスを取得できる。
【0035】
割込信号を発生した端末装置3のアドレスが伝送ユニット1で取得されると、伝送ユニット1はその端末装置3に対して制御要求の返送を要求する伝送信号を送出し、端末装置3はスイッチ31の監視入力に対応した制御要求を伝送ユニット1に返送する。伝送ユニット1は制御要求を受け取ると、該当する端末装置3の監視入力をクリアするように指示を与え、この端末装置3では監視入力のクリアを返送する。
【0036】
制御要求を受け取った伝送ユニット1は、制御要求の発信元の端末装置(監視端末器)3とアドレスの対応関係によって対応付けられている端末装置(制御端末器)3へ送信する制御命令を生成する。伝送ユニット1は、この制御命令を含む伝送信号を通信線2に送出して、端末装置(制御端末器)3に付設した被制御機器32を制御する。
【0037】
上述したように、基本システムでは、ポーリング・セレクティング方式のプロトコル(第1プロトコル)に従い、伝送ユニット1を介して端末装置(監視端末器、制御端末器)3同士が通信を行うこととなる。
【0038】
また、伝送ユニット1の制御テーブルでは、スイッチ31と被制御機器32とを一対一に結びつけるほか、一対多に結びつけることも可能である。たとえば、被制御機器32を用いて負荷としての照明器具への電源を入切する場合、伝送ユニット1では、1回路のスイッチ31で1回路の照明器具を制御する個別制御と、1回路のスイッチ31で複数回路の照明器具を一括して制御する一括制御とが可能である。一括制御としては、グループ制御とパターン制御とがある。グループ制御は、制御対象となる複数のリレーを1回路のスイッチ31に対応付けておき、このスイッチ31の操作によってこれら複数のリレーを一括してオンまたはオフにする制御である。パターン制御は、制御対象となる複数のリレーおよび各リレーに対応する制御状態(オンまたはオフ)を1回路のスイッチ31に対応付けておき、このスイッチ31の操作によってこれら複数のリレーをオンまたはオフにする制御である。
【0039】
これらのグループ制御やパターン制御を可能とするため、伝送ユニット1は、複数の被制御機器32を一括制御する際に用いられる設定情報を記憶する設定記憶部13を有している。設定情報は、少なくとも一括制御の対象となる被制御機器32に固有のアドレス(以下、「個別アドレス」という)の組み合わせを含む情報であって、本実施形態では個別アドレスの組み合わせをグループアドレスあるいはパターンアドレスに対応付けた情報からなる。グループアドレスは、グループ制御時に操作されるスイッチ31のアドレスと制御テーブルにおいて対応付けられ、パターンアドレスは、パターン制御時に操作されるスイッチ31のアドレスと制御テーブルにおいて対応付けられている。
【0040】
これにより、グループアドレスやパターンアドレスに対応するスイッチ31が操作されると、伝送ユニット1は、設定情報と照合することにより制御対象となる被制御機器32のアドレスを展開し、これらの被制御機器32に対して制御命令を出す。
【0041】
すなわち、グループ制御やパターン制御を行うには、どのグループ(あるいはパターン)にどの被制御機器32が属するのかを表す設定情報が、予め設定されている必要がある。設定装置4は、このような設定情報を設定する装置であって、設定情報の転送処理が為されると、伝送ユニット1に対して設定情報を送信(転送)することによって、伝送ユニット1に設定情報の設定記憶部13への書き込みを実行させる。
【0042】
設定装置4は、図3に示すように、伝送ユニット1と同様に、通信モジュール9を備えている。さらに、設定装置4は、設定情報の設定を行う設定処理部41と、入力部42と、表示部43と、記憶部44を備えている。これにより、ユーザは、表示部43にて設定内容を確認しながら入力部42から設定情報を入力することができ、入力された設定情報は設定処理部41にて記憶部44に一旦格納される。設定装置4は、記憶部44内の設定情報を伝送ユニット1に転送することによって、設定情報の登録(設定記憶部13への書き込み)を行う。
【0043】
また、サーバユニット5は、端末装置3の情報(スイッチ31や被制御機器32の動作状態など)を、ネットワーク6経由でクライアント端末7のWebブラウザ機能にて監視制御可能とする。クライアント端末7は、Webブラウザ機能と、表示部、操作部等のユーザインタフェースを有する装置であればよく、ここではパーソナルコンピュータが用いられる。
【0044】
サーバユニット5は、図4に示すように、伝送ユニット1と同様に、通信モジュール9を備えている。さらに、サーバユニット5は、設定情報を記憶する記憶部51と、設定処理部41に接続されクライアント端末7にWebコンテンツを提供するWeb画面構成部52とを備え、設定装置としても機能する。これにより、ユーザは、遠隔地からであってもクライアント端末7を用いて設定情報の設定が可能になり、入力された設定情報はサーバユニット5の記憶部52に格納される。なお、サーバユニット5の記憶部52には、端末装置3をスケジュールに従ってスケジュール制御するためのスケジュールデータも格納されている。
【0045】
ところで、従来の通信システムにおいては、上述したような設定情報は、伝送信号を用いて設定装置4あるいはサーバユニット5から伝送ユニット1に転送されることが一般的である。具体的な方法としては、スイッチ31の監視および被制御機器32の制御を全て中断して設定情報を転送する第1の方法と、スイッチ31の監視および被制御機器32の制御を継続しつつ設定情報を転送する第2の方法とがある。
【0046】
第1の方法では、設定装置4やサーバユニット5は、スイッチ31の監視および被制御機器32の制御が中断されている間に、伝送信号を専有して設定情報を転送する。第2の方法では、設定装置4やサーバユニット5が割込信号を発生し、伝送ユニット1から割込ポーリングを受けて設定情報を転送する。
【0047】
しかし、第1の方法においては、設定情報の転送中には、伝送ユニット1はスイッチ31の監視および被制御機器32の制御のいずれも行うことができず、実質的に、基本システムの動作は停止することになるという問題がある。特に、グループアドレスやパターンアドレスの設定数が多い場合(たとえば、パターンアドレスが72通り、グループアドレスが128通り)、設定情報の転送に比較的長い時間(たとえば30分程度)を要するため、基本システムの動作停止時間が長くなる。
【0048】
また、第2の方法においては、設定装置4やサーバユニット5は、割り込みをかけて設定情報を転送するので、伝送ユニット1によるスイッチ31の監視および被制御機器32の制御に遅延が生じ、基本システムの動作に遅延が生じる。しかも、設定情報の転送に第1の方法以上に長い時間を要するため、設定情報の登録にかかる時間が長くなる。
【0049】
そこで、本実施形態に係る通信システムにおいては、上述したようなグループ制御やパターン制御用の設定情報の登録や同期などのための転送時に、伝送信号ではなく重畳信号が用いられる。
【0050】
具体的には、本実施形態の通信システムにおいては、設定情報を登録する伝送ユニット1、さらに設定情報を設定する機能を持つ設定装置4およびサーバユニット5の各々に、重畳モジュール8(図1(b)、図3,4参照)が設けられている。重畳モジュール8は、基本システムと通信線2を共用しつつ伝送信号に重畳される重畳信号を用いて互いに通信を行う通信インタフェースであって、設定情報を重畳信号によって設定装置4やサーバユニット5から伝送ユニット1に転送する。以下、重畳信号を用いた通信について詳しく説明する。
【0051】
重畳モジュール8は、上述した第1プロトコルとは異なるプロトコル(第2プロトコル)に従って、伝送ユニット1を経由することなくピア・ツー・ピア(P2P)で伝送データ(設定情報)を他の重畳モジュール8に直接転送する。
【0052】
重畳モジュール8は、図1(b)に示すように、通信線2に接続される重畳部81と、重畳部81に接続された重畳送受信部82と、重畳送受信部82に接続された重畳データ解析部83および重畳データ生成部84とを備えている。
【0053】
重畳部81は、伝送信号に重畳信号を重畳させて通信線2上に送出したり、通信線2上の信号から伝送信号と重畳信号とを分離したりする。重畳送受信部82は、重畳部81を経由して他の重畳モジュール8との間で重畳信号の送受信を行う。重畳データ解析部83は、重畳送受信部82が受信した重畳信号の内容を解析し、重畳データ生成部84は、重畳送受信部82にて送信させる重畳信号を生成する。
【0054】
この構成により、重畳モジュール8は、他の重畳モジュール8に伝送すべきデータを含んだパケットを第2プロトコルに従って伝送信号に重畳させて通信線2に送出し、且つ他の重畳モジュール8が送信した第2プロトコルのパケットを受信する。つまり、第1プロトコルによる端末装置3同士の通信は上述したように伝送ユニット1を介して行われるのに対し、第2プロトコルによる重畳モジュール8同士の通信は重畳モジュール8間で直接行われ、伝送ユニット1には依存しない。そのため、第2プロトコルによる通信は、第1プロトコルによる通信に比べて通信速度を高速化でき、グループ制御やパターン制御用の設定情報のように、制御要求や制御命令に比べてデータ量の多い情報の伝送に用いられる。
【0055】
また、重畳モジュール8は、基本システムの伝送ユニット1と端末装置3との間で伝送される伝送信号を監視する判断部85を備え、判断部85では伝送信号からデータ伝送状況(以下、「ステート」という)を解析する。重畳モジュール8は、判断部85にて解析したステートが重畳信号の重畳に適した状況にあるか否かを判断し、伝送に適していると判断されたタイミングで、重畳部81によって伝送信号に重畳信号を重畳する。
【0056】
ここで、伝送信号は図2に示すような信号フォーマットを採用している。予備割込帯21や予備帯22や休止帯27は、重畳信号が重畳されても第1プロトコルの通信に影響がなく、重畳信号も伝送信号の影響を受けにくいので、重畳信号を重畳可能な帯域(以下、「重畳可能帯」という)となる。さらに、詳しくは後述するが、本実施形態では、重畳モジュール8はこれら3つの帯域に加えて、返信帯24についても条件付で重畳可能帯として利用する。
【0057】
その他の帯域(送信帯23と割込帯25と短絡検出帯26)は、伝送信号がハイレベルあるいはローレベルに安定している時間が相対的に短く、重畳信号が重畳されると第1プロトコルの通信に影響を与えやすい。また上記他の帯域に重畳信号が重畳されると、重畳信号も伝送ユニット1と端末装置3との間で授受される信号(割込信号や送信データ)の影響を受けやすい。そのため、上記他の帯域は、重畳信号の重畳には使用されない帯域(以下、「重畳不可帯」という)となる。
【0058】
また、伝送信号の立ち上がりおよび立ち下がりの期間も、高調波ノイズの影響や信号の電圧反転に伴う過渡応答の影響などにより、重畳信号を重畳するのに適していない。したがって、伝送信号は、予備割込帯21と予備帯22と休止帯27の中でも、帯域の切り替わり(立ち上がりまたは立ち下がり)後の所定時間(たとえば300μs)については、重畳不可帯となる。
【0059】
そこで、判断部85は、伝送信号のステートの解析結果に基づいて重畳可能帯か重畳不可帯かの判断を行い、重畳部81は、重畳可能帯と判断されたときに限って重畳信号を送出するように構成されている。重畳モジュール8は、このように伝送信号に同期させるように伝送信号の重畳可能帯にのみ重畳信号を重畳させることにより、共通の通信線2を使用する第1プロトコルの通信と第2プロトコルの通信との干渉を回避する。
【0060】
ここで、重畳モジュール8は、送信データのデータ量が多く一度の重畳可能帯内で送信しきれなかった場合には、当該重畳可能帯の終了に合わせて通信を中断し、次回の重畳可能帯に残りのデータを送信する。つまり、重畳送受信部82は、受信した重畳信号が分割送信されていた場合には結合して1つのデータにし、重畳信号の送信時には重畳可能帯に重畳できる長さにデータを分割する。
【0061】
なお、重畳モジュール8の各部への電源供給は、端末装置3と同様に伝送ユニット1から通信線2を介して伝送される伝送信号を整流し安定化することによって供給される方式(集中給電方式)によって為される。ただし、この構成に限らず、重畳モジュール8の各部への電源供給は、商用電源を整流し安定化することによって供給される方式(ローカル給電方式)で為されてもよい。
【0062】
ところで、一般的には、伝送信号は、予備割込帯21と予備帯22と休止帯27とのみが、重畳可能帯として重畳信号の重畳に利用される。これに対して、本実施形態における重畳モジュール8は、予備割込帯21と予備帯22と休止帯27との3つの帯域に加えて、返信帯24についても条件付で重畳可能帯として重畳信号の重畳に利用する。
【0063】
すなわち、重畳モジュール8は、伝送信号のフレームごとに返信帯24の開始時点から所定の検出期間における返信信号の有無を判断部85にて判断し、返信信号がないと判断された返信帯24については、重畳信号を重畳可能な重畳可能帯として用いている。一方、重畳モジュール8は、判断部85にて返信信号があると判断された返信帯24については重畳不可帯として用いる。
【0064】
さらに詳しく説明すると、返信帯24は、図5に示すように「B1」〜「B5」の5つのブロックから成り、端末装置3で返信信号が発生したときには、返信帯24の開始時点から所定時間(たとえば900μs)の間に、最初のブロックB1にパルスが生じる。そこで、判断部85は、返信帯24の開始時点から所定時間を検出期間T1とし、この検出期間T1内にパルスが生じない場合には、この返信帯24のうち2番目のブロックB2以降の期間T2については、返信信号がないと判断し重畳可能帯として利用する。図5の例では、長さ6400μsの返信帯24のうち、開始時点から1900μsが検出期間T1を構成しており、この検出期間T1内にパルスが生じない場合には、残り4500μsの期間T2が重畳可能帯として利用されることになる。一方、検出期間T1内にパルスが生じた場合には、判断部85は、この返信帯24について返信信号があると判断し重畳不可帯として用いる。
【0065】
返信帯24のうち検出期間を除いた部分だけでも重畳可能帯として利用することができれば、返信帯24の全域を重畳不可帯とする場合に比べると、伝送信号の1フレーム当たりの重畳可能帯は、表1に例示するように大幅に増加することになる。表1は、返信帯24が重畳信号の重畳に利用されない場合と、返信帯24の一部(検出期間を除いた部分)が重畳信号の重畳に利用される場合との各々について、各帯域で伝送可能なデータ量、その合計、通信速度を表している。なお、ここでは、1msで40bitのデータが伝送可能として計算している。
【0066】
【表1】

【0067】
このように、返信帯24が一部でも重畳信号の重畳に利用されることにより、伝送信号の1フレーム当たりに重畳可能な重畳信号のデータ量が大幅に増え、通信速度が向上することになる。表1の例では、返信帯24が重畳信号の重畳に利用されない場合の通信速度は6.3kbpsであるのに対し、返信帯24が重畳信号の重畳に利用される場合の通信速度は15.7kbpsに向上している。
【0068】
ここにおいて、重畳信号を用いて転送される設定情報は、一例として図6に示すような信号構成をとる。すなわち、パターン制御に関する設定情報は、たとえば図6(a)に示すように、種別61、アドレス62、フェード63、構成要素情報64、チェックサム65、終端66にて構成される。図6(a)の例では、種別61=16bit、アドレス62=12bit、フェード63=4bit、構成要素情報64=4288bit、チェックサム65=8bit、終端66=8bitで、設定情報は1パターン当たり4336bitのデータとなる。
【0069】
種別61は、設定情報の種別(グループ制御、パターン制御の別)を表し、アドレス62は、パターンアドレス(ここでは、「01」〜「72」の72通りとする)もしくはグループアドレス(ここでは、「001」〜「128」の128通りとする)を表している。フェード63は、パターン制御を行ってから設定された制御状態に徐々に遷移させる場合に、制御状態が完全に遷移するまでの時間であって、瞬時、3秒、6秒、1分から選択される。構成要素情報64は、一括制御の対象となる個別アドレス(ここでは、「00−1」〜「63−4」の256通りとする)の組を示す。チェックサム65はデータの誤り検出符号、終端66は設定情報の終わりを示す符号である。
【0070】
なお、構成要素情報64においては、各戸別アドレスに対して、制御内容や、タイマーや調光レベル(負荷が照明器具の場合)などが設定される。制御内容は、オン、オフ、対象外の中から択一的に選択される。タイマーは、負荷が照明器具の場合、なし、一時点灯30秒、一時点灯1分、一時点灯5分、一時点灯60分、一時点灯120分、遅れ消灯30秒、遅れ消灯1分、遅れ消灯5分の中から択一的に選択される。調光レベルは、消灯から全点灯までの明るさを段階的に表す0〜128の中から択一的に選択される。
【0071】
また、グループ制御に関する設定情報は、たとえば図6(b)に示すように、種別61、アドレス62、構成要素情報64、チェックサム65、終端66にて構成される。図6(b)の例では、種別61=16bit、アドレス62=12bit、構成要素情報64=2048bit、チェックサム65=8bit、終端66=8bitで、設定情報は1グループ当たり2284bitのデータとなる。
【0072】
これらの上述した1パターンあるいは1グループ当たりの設定情報のデータ量と、上記表1に示した通信速度とから、設定情報の転送に要する時間は表2のように求められる。表2は、返信帯24が重畳信号の重畳に利用されない場合と、返信帯24の一部が重畳信号の重畳に利用される場合との各々について、1パターン分、72パターン分、1グループ分、128グループ分の各設定情報の転送に要する時間を表している。
【0073】
【表2】

【0074】
以上説明した本実施形態の通信システムによれば、設定情報の転送に重畳信号が用いられているので、スイッチ31の監視および被制御機器32の制御を継続しつつ設定情報を転送しながらも、基本ステムの動作に遅延が生じることもない。しかも、本実施形態の通信システムは、伝送信号のうち返信帯24についても条件付で重畳信号の重畳に利用するので、返信帯24を利用しない場合に比べて、伝送信号の1フレーム当たりに重畳可能な重畳信号のデータ量が大幅に増加する。したがって、設定装置4やサーバユニット5から伝送ユニット1への設定情報の転送に要する時間を短縮することができ、設定情報の登録にかかる時間を短くできるという利点もある。特に、グループアドレスやパターンアドレスの設定数が多い場合(たとえば、パターンアドレスが72通り、グループアドレスが128通り)には、設定情報の転送に要する時間は大幅に短縮されることになる。
【0075】
なお、本実施形態では、設定装置4とサーバユニット5との各々は、重畳モジュール8だけでなく、通信モジュール9をも有しているので、伝送信号を用いて設定情報を伝送ユニット1に転送することも可能である。設定情報の転送に伝送信号を用いるか重畳信号を用いるかは、たとえば設定装置4、サーバユニット5の操作によって任意に切替可能とする。
【0076】
ところで、本実施形態では、重畳モジュール8は、返信帯24の開始時点から所定時間を、判断部85で返信信号の有無を判断するための検出期間として利用しているが、この期間も含めて返信帯24の全域を重畳可能帯として用いることも可能である。
【0077】
すなわち、重畳モジュール8は、割込帯25(図2参照)に能動的に割込信号を発生する割込発生部(図示せず)を有し、割込発生部が割り込みをかけることによって、次回の返信帯24の全域を重畳可能帯として用いることが可能になる。重畳モジュール8は、割込発生部にて割込信号を発生した場合には、次回の返信帯24においては判断部85にて返信信号の有無を判断することなく、その返信帯24の全域において重畳信号を重畳することが可能になる。
【0078】
返信帯24の全域を重畳可能帯として利用する場合、図5の例では、返信帯24の開始時点から1900μsの検出期間T1が重畳可能帯に加わることになり、重畳モジュール8は、合計6400μsの返信帯24全てで重畳信号の重畳が可能になる。表1と同じ条件下では、返信帯24の全域を重畳可能帯として利用することにより、重畳モジュール8は、返信帯24において76bitも多くのデータを伝送可能となり、結果的に、1秒当たり4kbit分も多くのデータを重畳信号により伝送可能になる。つまり、通信速度が4kbps向上する。
【0079】
また、伝送ユニット1は、図7に示すように、バッファメモリ14および競合検知部15を有し、被制御機器32の制御要求と設定情報とを同時に受信した場合、制御要求をバッファメモリ14に一時的に記憶するように構成されていてもよい。競合検知部15は、端末装置3から伝送信号を用いて伝送される制御要求と、設定装置4またはサーバユニット5から重畳信号を用いて転送される設定情報との競合を検知する。つまり、競合検知部15は、通信モジュール9が制御要求を受けたタイミングと、重畳モジュール8が設定情報を受けたタイミングとが重複したときに、制御要求と設定情報とが競合したと判断する。
【0080】
この構成では、伝送ユニット1は、競合検知部15にて競合が検知されると、そのときに受信した制御要求をバッファメモリ14に一時的に記憶する。この場合、伝送処理部11は、設定情報の設定記憶部13への書き込みが完了次第、バッファメモリ14内の制御要求を読み出し、この制御要求に基づいて制御命令を端末装置3に送信する。
【0081】
このように、バッファメモリ14および競合検知部15を設けた構成では、伝送ユニット1に対する制御要求と設定情報とが競合した場合、伝送ユニット1にて制御要求が一旦バッファメモリ14に格納され、設定記憶部13への設定情報の登録が優先的に行われる。したがって、設定装置4やサーバユニット5による設定情報の登録処理を早期に完了させることができる。また、設定情報の変更と同時に、一括制御用のスイッチ31が操作された場合でも、伝送ユニット1は、変更後の新たな設定情報を用いて一括制御を行うことができる。
【0082】
また、伝送信号のうち重畳可能帯となる一部の帯域は、複数の重畳モジュール8間での設定情報の同期にのみ用いられる同期専用帯域であってもよい。すなわち、本実施形態の通信システムにおいて、グループ制御やパターン制御用の設定情報は、伝送ユニット1内にマスタとして保存されているが、設定装置4やサーバユニット5の設定記憶部13にも保存されている。したがって、通信システムの稼働中に、設定装置4やサーバユニット5が交換あるいは追加された場合に、伝送ユニット1と設定装置4とサーバユニット5との間で、設定情報の不一致(不整合)を生じることがある。このような場合、通信システム全体での設定情報の整合をとるために、伝送ユニット1内に保存されているマスタとしての設定情報を、設定装置4およびサーバユニット5内の設定情報に同期させる必要がある。
【0083】
そこで、伝送ユニット1は、伝送信号の一部の帯域を固定的に同期専用帯域に設定し、この同期専用帯域を利用して重畳信号によりマスタとしての設定情報を設定装置4およびサーバユニット5に送信して、設定情報の同期をとる。伝送ユニット1からの設定情報を受信した設定装置4およびサーバユニット5は、受信した設定情報を自身の設定記憶部13内の設定情報と比較し、不一致であれば受信した設定情報を設定記憶部13に書き込む。これにより、伝送信号の1フレームごとに設定情報の同期をとることができ、常に通信システム全体での設定情報の整合をとることが可能になる。
【0084】
なお、本実施形態においては、重畳モジュール8は、伝送ユニット1、設定装置4、サーバユニット5に内蔵されている構成を例示したが、この構成に限らない。たとえば、重畳モジュール8は、伝送ユニット1、設定装置4、サーバユニット5と別体に構成され、伝送ユニット1、設定装置4、サーバユニット5と直接接続されていてもよい。
【0085】
(実施形態2)
本実施形態の通信システムは、複数台の設定装置4またはサーバユニット5が同時に設定情報を設定する場合にも対応できるように構成されている点が実施形態1の通信システムと相違する。なお、以下では、設定装置4とサーバユニット5とを特に区別しない場合、これらをまとめて「設定装置4等」という。本実施形態では、設定装置4等が通信モジュール9を有し、伝送信号を用いて通信可能であることは前提である。
【0086】
たとえば、ある設定装置4等が設定情報を転送中に、ユーザが別の設定装置4等を用いて設定情報の設定を行う場合、重畳信号は既に設定装置4等からの設定情報の転送に専有されているため、ユーザが設定した設定情報を重畳信号にて転送することはできない。そこで、本実施形態では、2台の設定装置4等が同時に設定情報を設定する場合、一方の設定装置4等は伝送信号を用いて設定情報を転送し、他方の設定装置4等は重畳信号を用いて設定情報を転送する。具体的には、設定装置4等は、他の設定装置4等と通信することによって、設定情報の転送方法が他の設定装置4等と重複しないように伝送信号と重畳信号とを割り当てる調停機能を有している。
【0087】
また、伝送ユニット1は、2台の設定装置4等から、上述のように伝送信号および重畳信号を用いて別々の設定情報を受信した場合、これらの設定情報を同時に設定記憶部13に書き込むことがないように、以下の構成を採用する。すなわち、伝送ユニット1は、伝送信号を用いて受信した設定情報と、重畳信号を用いて受信した設定情報とを設定記憶部13に交互に書き込むように、設定情報の読込先を通信モジュール9と重畳モジュール8とで交互に切り替える。具体的には、伝送ユニット1は、1パターンあるいは1グループ(1グループアドレスあるいは1パターンアドレス)当たりの設定情報登録ごとに、セマフォ(semaphore)にて排他制御をかけ、通信モジュール9と重畳モジュール8とを交互に切り替える。
【0088】
以上説明した構成によれば、2台の設定装置4等が同時に設定情報を設定する場合、一方の設定装置4等は、他方の設定装置4等の動向に応じて設定情報の転送方法を切り替えることで、設定情報を効率的に伝送ユニット1に転送することができる。
【0089】
また、3台以上の設定装置4等が同時に設定情報を設定する場合には、1台の設定装置4等は伝送信号を用いて設定情報を転送し、残りの設定装置4等は重畳信号を用いて設定情報を転送する。この場合、複数台の設定装置4等が重畳信号を用いて設定情報を設定することになるので、これら複数台の設定装置4等の各々には、異なる重畳可能帯が順次割り当てられることが望ましい。
【0090】
たとえば、3台の設定装置4等が同時に設定情報を設定する場合、1台の設定装置4等は伝送信号を用いて設定情報を転送し、他の2台の設定装置4等はいずれも重畳信号を用いて設定情報を転送することになる。ここで、重畳信号を用いる2台の設定装置4等には、各々に異なる重畳可能帯が割り当てられ、各設定装置4等は、割り当てられた重畳可能帯を利用して設定情報を伝送ユニット1に転送する。このとき、重畳信号を用いて設定情報を転送する2台の設定装置4等は、設定情報のデータ量によって、重畳信号を重畳する帯域を定期的に切り替えて設定情報を伝送ユニット1に転送する。
【0091】
具体的には、図8に示すように、重畳信号を用いて設定情報を転送する2台の設定装置4等は、伝送ユニット1に対し、まず設定するアドレス(グループアドレスまたはパターンアドレス)を通知する。伝送ユニット1は、受信したアドレスに基づいて設定情報のデータ量(通信データ量)を算出し、設定情報の転送に利用する重畳可能帯を各設定装置4等に割り当てて通知する。ここで、返信帯24が重畳可能帯として利用できない場合、伝送ユニット1は、予備割込帯21および予備帯22と、休止帯27との2組に分け、設定情報のデータ量が多い方には予備割込帯21および予備帯22を、少ない方には休止帯27を割り当てる。一方、返信帯24が重畳可能帯として利用できる場合、伝送ユニット1は、重畳信号を用いて設定情報を転送する2台の設定装置4等について定期的に設定情報の残データ量の確認を行い、図9のフローチャートに従って重畳可能帯の割り当てを行う。
【0092】
つまり、伝送ユニット1は、図9に示すように、残データ量の定期チェックを行い(S0)、両設定装置4等の間で残データ量の差異(差分)を求める。残データ量の差異が40bit未満であれば(S1:No)、伝送ユニット1は、残量データ量の多い方に返信帯24を割り当て、少ない方に予備割込帯21および予備帯22、もしくは休止帯27を割り当てる(S2)。残データ量の差異が40bit以上(S1:Yes)、140bit未満であれば(S3:No)、伝送ユニット1は、残量データ量の多い方に休止帯27もしくは返信帯24を割り当て、少ない方に予備割込帯21および予備帯22を割り当てる(S4)。残データ量の差異が140bit以上(S3:Yes)、220bit未満であれば(S5:No)、伝送ユニット1は、残量データ量の多い方に予備割込帯21および予備帯22、もしくは返信帯24を割り当て、少ない方に休止帯27を割り当てる(S6)。残データ量の差異が220bit以上であれば(S5:Yes)、伝送ユニット1は、残量データ量の多い方に予備割込帯21および予備帯22、返信帯24、休止帯27を割り当て、少ない方へは重畳可能帯を割り当てない(S7)。
【0093】
以上説明した構成によれば、3台以上の設定装置4等が同時に設定情報を設定する場合でも、各設定装置4等は並行して設定情報を伝送ユニット1に転送することができる。したがって、複数台の設定装置4等から同時に設定情報が設定されたとしても、伝送ユニット1においては、設定情報の登録が同一時期に終了するため、通信システム全体で設定情報が整合しない期間を短くすることができる。
【0094】
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【符号の説明】
【0095】
1 伝送ユニット
2 通信線
3 端末装置
4 設定装置
5 サーバユニット(設定装置)
8 重畳モジュール
14 バッファメモリ
23 送信帯
24 返信帯
25 割込帯
85 判断部
T1 検出期間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信線に伝送信号を繰り返し送出する伝送ユニットと、前記伝送信号を用いて通信する端末装置と、前記伝送信号に重畳される重畳信号を用いて通信する重畳モジュールとが前記通信線に接続された通信システムであって、
前記伝送信号は、1フレームごとに時間軸方向において、前記端末装置にデータを伝送するための送信帯と、前記端末装置からの返送信号を受信するタイムスロットである返信帯とを含む複数の帯域に分割された時分割方式の信号であって、
前記重畳モジュールは、前記伝送信号のフレームごとに前記返信帯の開始時点から所定の検出期間における前記返信信号の有無を判断する判断部を有しており、当該判断部にて前記返信信号があると判断された前記返信帯については前記重畳信号の重畳に使用されない重畳不可帯として用い、前記判断部にて前記返信信号がないと判断された前記返信帯については前記重畳信号を重畳可能な重畳可能帯として用いることを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記伝送信号は、前記端末装置からの割込信号を受信するための割込帯を含み、前記伝送ユニットは、前記割込帯に前記割込信号を受信した場合には、当該割込信号を発生した前記端末装置に対して次回の前記返信帯を割り当てており、
前記重畳モジュールは、前記割込帯に前記割込信号を発生する割込発生部を有しており、当該割込発生部が前記割込信号を発生した場合、次回の前記返信帯において前記判断部にて前記返信信号の有無を判断することなく当該返信帯の全域を前記重畳可能帯として用いることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記端末装置は制御命令に従って制御される被制御機器を有し、前記制御命令は制御対象となる前記被制御機器に固有の識別子と共に前記伝送信号を用いて前記伝送ユニットから送信され、
前記伝送ユニットは、複数の前記被制御機器を一括制御する際に用いられる情報であって、少なくとも一括制御の対象となる前記識別子の組み合わせを含む設定情報を記憶する設定記憶部を有し、
前記通信線には、前記設定情報を設定する設定装置が接続されており、
前記設定装置は、前記設定情報が設定されると、前記伝送ユニットに対して前記設定情報を送信することによって、前記伝送ユニットに前記設定情報の前記設定記憶部への書き込みを実行させ、
前記重畳モジュールは、前記伝送ユニットおよび前記設定装置に設けられており、前記設定情報を前記重畳信号によって前記設定装置から前記伝送ユニットに伝送することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記伝送ユニットは、前記被制御機器の制御要求と前記設定情報とを同時に受信した場合、前記制御要求をバッファメモリに一時的に記憶し、前記設定情報の前記設定記憶部への書き込みが完了してから、前記バッファメモリ内の前記制御要求に基づいて前記制御命令を送信することを特徴とする請求項3に記載の通信システム。
【請求項5】
前記伝送信号は、前記重畳可能帯となる帯域を前記返信帯以外に含んでおり、前記重畳可能帯となる一部の帯域は、複数の前記重畳モジュール間での前記設定情報の同期のみに用いられる同期専用帯域であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の通信システム。
【請求項6】
前記設定装置は、前記伝送信号を用いた通信が可能であって、
2台の前記設定装置が同時に前記設定情報を設定する場合には、一方の前記設定装置は前記伝送信号を用いて前記設定情報を送信し、他方の前記設定装置は前記重畳信号を用いて前記設定情報を送信することを特徴とする請求項3ないし請求項5のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項7】
複数台の前記設定装置が前記重畳信号を用いて同時に前記設定情報を設定する場合、当該複数台の前記設定装置の各々には、異なる前記重畳可能帯が順次割り当てられることを特徴とする請求項6に記載の通信システム。
【請求項8】
通信線に伝送信号を繰り返し送出する伝送ユニットと、前記伝送信号を用いて通信する端末装置と、前記伝送信号に重畳される重畳信号を用いて通信する重畳モジュールとが前記通信線に接続された通信システムに用いられ、
前記伝送信号は、1フレームごとに時間軸方向において、前記端末装置にデータを伝送するための送信帯と、前記端末装置からの返送信号を受信するタイムスロットである返信帯とを含む複数の帯域に分割された時分割方式の信号であって、
前記伝送信号のフレームごとに前記返信帯の開始時点から所定の検出期間における前記返信信号の有無を判断する判断部を備え、当該判断部にて前記返信信号があると判断された前記返信帯については前記重畳信号の重畳に使用されない重畳不可帯として用い、前記判断部にて前記返信信号がないと判断された前記返信帯については前記重畳信号を重畳可能な重畳可能帯として用いることを特徴とする重畳モジュール。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−244469(P2012−244469A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113509(P2011−113509)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】