通信システム
【課題】 2つの通信端末間の通信距離を正確に測定可能な通信システムを提供する。
【解決手段】 通信システムは、送信機と、受信機とを備える。送信機及び受信機は、無線通信空間に配置される。送信機は、タイミングt1に同期してデータDATTの受信機への送信を完了する。受信機は、送信機からのデータDARRの受信が完了すると、一定時間SIFS経過後(タイミングt3)にデータDARTの送信機への送信を開始する。そして、送信機は、タイミングt1と、受信機からのデータDATRを安定して受信し始めるタイミングt6との間のトータル時間を計測し、その計測したトータル時間に基づいて受信機との間の通信距離を決定する。
【解決手段】 通信システムは、送信機と、受信機とを備える。送信機及び受信機は、無線通信空間に配置される。送信機は、タイミングt1に同期してデータDATTの受信機への送信を完了する。受信機は、送信機からのデータDARRの受信が完了すると、一定時間SIFS経過後(タイミングt3)にデータDARTの送信機への送信を開始する。そして、送信機は、タイミングt1と、受信機からのデータDATRを安定して受信し始めるタイミングt6との間のトータル時間を計測し、その計測したトータル時間に基づいて受信機との間の通信距離を決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、通信システムに関し、特に、2つの通信端末間の通信距離を測定可能な通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の無線LAN(Local Area Network)システムにおいては、物理層のプロトコルとしてCDMA(Code Division Multiple Access:符号分割多重接続)方式が用いられ、データリンク層における媒体アクセス制御方式としてCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)方式が用いられている。
【0003】
このCSMA/CA方式は、他の端末がパケットを送信中であるか否か、自分宛てのパケットが送信されているか否かを常に監視することにより通信の衝突を回避する方式である(非特許文献1)。即ち、各端末は、ネットワークが一定時間以上継続して空いていることを確認した後、データを送信する。
【0004】
このように、従来の無線LANシステムにおいては、CSMA/CA方式を用いてデータの通信が行なわれている。
【非特許文献1】小泉著,「図解でわかるデータ通信のすべて」,株式会社日本実業出版社,1999年11月20日,p.272.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の無線LANシステムにおいては、2つの端末間の通信距離を測定することができないという問題があった。また、通信距離の測定の対象となる端末が通信距離を測定する端末から遠く離れた場合、通信距離を正確に測定することが困難であるという問題もあった。
【0006】
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、2つの通信端末間の通信距離を正確に測定可能な通信システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明によれば、通信システムは、無線通信空間に配置される2つの通信端末間の通信距離を測定可能な通信システムであって、送信機と受信機とを備える。送信機は、無線通信空間を介したデータの送信を完了する。受信機は、送信機からのデータを無線通信空間を介して受信し、その受信したデータに対する応答のためのデータを無線通信空間を介して送信機へ送信する。そして、送信機及び受信機は、基準クロックに同期してデータを送受信する。また、送信機は、受信機へのデータの送信を完了する第1のタイミングと受信機からのデータを安定して受信し始める第2のタイミングとの間のトータル時間を計測し、その計測したトータル時間に基づいて受信機までの通信距離を決定する。
【0008】
好ましくは、第2のタイミングは、フレームの開始を示す信号の受信終了タイミングである。
【0009】
好ましくは、フレームの開始を示す信号は、スタートフレームデリミタである。
【0010】
好ましくは、受信機は、送信機からの前記データの受信完了後、応答時間経過後にデータを送信機へ送信する。そして、送信機は、応答時間を含む一定時間をトータル時間から減算してデータが受信機との間で往復する往復時間を演算し、その演算した往復時間に基づいて受信機までの通信距離を決定する。
【0011】
好ましくは、データは、先頭から同期信号部、フレーム開始部およびフレーム部を順次含む。そして、一定時間は、応答時間と、同期信号部の検出時間と、フレーム開始部の検出時間との和である。
【0012】
好ましくは、受信機は、送信機から受信したデータに基づいて、送信機において生成された基準クロック信号を推定し、その推定した基準クロック信号に基づいて応答時間を決定してデータを送信機へ送信する。
【0013】
好ましくは、送信機は、受信機との通信において、受信機から受信したデータに基づいて受信機において生成された第1の基準クロック信号を推定し、自己が生成した第2の基準クロック信号の位相を推定した第1の基準クロック信号の位相と比較し、第2の基準クロック信号の位相が第1の基準クロック信号の位相とずれているとき、受信機との通信距離の変化を測定する。
【0014】
好ましくは、受信機は、送信機から受信したデータの位相と自己が生成した第1の基準クロック信号の位相との位相差を検出し、その検出した位相差に基づいて第1の基準クロック信号の位相を送信機において生成された第2の基準クロック信号の位相に一致させて応答時間を計測し、応答時間の計測後、データを送信機へ送信する。送信機は、応答時間を含む一定時間をトータル時間から減算してデータが受信機との間で往復する往復時間を演算し、その演算した往復時間に基づいて受信機までの通信距離を決定する。
【0015】
好ましくは、受信機は、送信機から受信したデータの位相と自己が生成した第1の基準クロック信号の位相との位相差を検出し、その検出した位相差を時間長に変換するとともに、第1の基準クロック信号に同期して第1の応答時間を計測し、第1の応答時間の計測後、データおよび時間長を送信機へ送信する。送信機は、自己が生成した第2の基準クロック信号の位相に第1の基準クロック信号の位相が一致しているときの受信機における第2の応答時間に第1の応答時間が一致するように時間長に基づいて第1の応答時間を含む一定時間を調整し、その調整後の一定時間をトータル時間から減算してデータが受信機との間で往復する往復時間を演算し、その演算した往復時間に基づいて受信機までの通信距離を決定する。
【0016】
好ましくは、送信機は、受信機から受信したデータの位相と自己が生成した第1の基準クロック信号の位相との位相差を検出し、その検出した位相差を時間長に変換するとともに、受信機において生成された第2の基準クロック信号の位相が第1の基準クロック信号の位相に一致しているときの受信機における第1の応答時間に第2の基準クロックに同期して計測された受信機の第2の応答時間が一致するように第2の応答時間を含む一定時間を調整し、その調整後の一定時間をトータル時間から減算してデータが受信機との間で往復する往復時間を演算し、その演算した往復時間に基づいて受信機までの通信距離を決定する。
【発明の効果】
【0017】
この発明による通信システムにおいては、データが送信機と受信機との間で往復する往復時間だけ長くなる送信機と受信機間での通信の空き期間を計測して送信機と受信機との間の通信距離が決定される。そして、往復時間の計測は、送信機が受信機へデータを送信し終わる第1のタイミングと、送信機が受信機からのデータを安定して受信し始める第2のタイミングとの間で行なわれる。
【0018】
従って、この発明によれば、送信機と受信機間での通信の空き期間を利用して送信機と受信機との間の通信距離を正確に決定できる。また、受信機が送信機から遠く離れても送信機と受信機との間の通信距離を正確に決定できる。
【0019】
また、この発明による通信システムにおいては、送信機における基準クロック信号の位相が受信機における基準クロック信号の位相とずれた場合、送信機および受信機のいずれかが位相ずれを調整してデータが送信機と受信機との間で往復する往復時間が算出される。
【0020】
従って、この発明によれば、送信機における基準クロック信号の位相が受信機における基準クロック信号の位相とずれても、送信機と受信機との距離を正確に決定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0022】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1による通信システムの概略ブロック図である。通信システム100は、送信機10と、受信機30とを備える。送信機10及び受信機30は、無線通信空間20に配置される。そして、送信機10及び受信機30は、無線通信空間20を介してCSMA/CA方式により相互にデータ通信を行なう。
【0023】
以下においては、送信機10は、受信機30との通信距離を測定する測定機であり、受信機30は、被測定機であるとして説明する。
【0024】
送信機10は、無線通信空間20における通信していない期間であるIFS(Interframe Space)を利用して、例えば、2.4GHzのキャリア周波数でデータを無線通信空間20を介して受信機30へ送信する。そして、送信機10は、受信機30へのデータの送信が完了したタイミングと、受信機30からのデータを安定して受信し始めるタイミングとの間の時間を計測し、その計測した時間に基づいて、後述する方法によって受信機30までの通信距離を決定する。なお、送信機10が受信機30からのデー
タを安定して受信し始めるタイミングについては、後に詳細に説明する。
【0025】
受信機30は、送信機10からのデータを無線通信空間20を介して受信し、データの受信完了後、一定時間が経過するとデータを無線通信空間20を介して送信機10へ送信する。
【0026】
図2は、図1に示す送信機10の構成を示す概略ブロック図である。送信機10は、アンテナ110と、選択器120,240と、増幅器130,290と、ミキサー140,280と、ローパスフィルタ150,270と、復調器160と、クロック調整器170と、キャリア検出器180と、A/D変換器190と、カウンタ200と、コントローラ210と、水晶発振器220と、クロック発生器230と、1/N分周器250と、変調器260とを含む。
【0027】
アンテナ110は、無線通信空間20を介して電波を受信し、その受信した電波を選択器120へ送信する。また、アンテナ110は、選択器120からの電波を無線通信空間20へ送信する。
【0028】
選択器120は、端子121,122とスイッチ123とを含む。端子121は、増幅器130の入力に接続され、端子122は、増幅器290の出力に接続される。スイッチ123は、アンテナ110に接続される。選択器120は、コントローラ210からの信号SLT1に基づいてスイッチ123を端子121と端子122との間で切換えることによりアンテナ110を増幅器130の入力または増幅器290の出力と接続する。より具体的には、選択器120は、コントローラ210からのH(論理ハイ)レベルの信号SLT1に応じてスイッチ123を端子121に接続し、コントローラ210からのL(論理ロー)レベルの信号SLT1に応じてスイッチ123を端子122に接続する。
【0029】
増幅器130は、アンテナ110が受信した受信電波を選択器120を介して入力し、その入力した受信電波を増幅してミキサー140へ出力する。ミキサー140は、増幅器130からの受信電波と、クロック調整器170からのクロック信号CLK_PATとを混合してローパスフィルタ150へ出力する。
【0030】
ローパスフィルタ150は、ミキサー140からの電波の高周波ノイズを除去してベースバンド信号を復調器160及びキャリア検出器180へ出力する。復調器160は、ベースバンド信号の周波数ずれ信号を検出し、その検出した周波数ずれ信号をクロック調整器170及びA/D変換器190へ出力する。また、復調器160は、ベースバンド信号を復調し、その復調したデータDATAをコントローラ210へ出力する。
【0031】
クロック調整器170は、復調器160からの周波数ずれ信号に応じて通信の相手側のキャリア周波数を推定し、その推定したキャリア周波数を有するクロック信号CLK_PATを生成してミキサー140及び選択器240へ出力する。キャリア検出器180は、ローパスフィルタ150からのベースバンド信号に基づいて、データの受信を終了したことを検出し、データの受信を終了したことを示す信号DETFを生成してコントローラ210へ出力する。
【0032】
A/D変換器190は、復調器160からの周波数ずれ信号をアナログ信号からデジタル信号に変換してデータFSHTをコントローラ210へ出力する。カウンタ200は、コントローラ210から信号DETS及び信号DTFをそれぞれ端子GTE1,GTE2に受け、クロック発生器230からクロック信号CLK_SEFを端子CLKINに受ける。カウンタ200は、端子GTE2に信号DTFを受けると、端子CLKINに受けたクロック信号CLK_SEFの成分個数のカウントを開始し、端子GTE1に信号DETSを受けると、カウントを終了する。そして、カウンタ200は、カウント値CNTを端子Qからコントローラ210へ出力する。
【0033】
コントローラ210は、送信機10がデータを受信するとき、Hレベルの信号SLT1を生成して端子SEL1から選択器120へ出力し、送信機10がデータを送信するときLレベルの信号SLT1を生成して端子SEL1から選択器120へ出力する。
【0034】
また、コントローラ210は、送信機10がデータを受信するとき、Hレベルの信号SLT2を生成して端子SEL2から選択器240へ出力し、送信機10がデータを送信するとき、Lレベルの信号SLT2を生成して端子SEL2から選択器240へ出力する。
【0035】
更に、コントローラ210は、キャリア検出器180から信号DETFを端子CDETに受けると、1/N分周器250からの分周クロック信号CLK_Bの成分個数をカウントすることにより一定時間を計測する。そして、コントローラ210は、一定時間が経過するとデータを端子TDAから変調器260へ出力する。
【0036】
更に、コントローラ210は、データの送信が終了すると、データの送信が終了したことを示す信号DTFを生成して端子TFHからカウンタ200へ出力する。
【0037】
更に、コントローラ210は、復調器160からのデータDATAを端子RDAに受け、その受けたデータDATAに基づいて、後述する方法によってデータDATAを安定して受信し始めるタイミングを検出し、データDATAを安定して受信し始めたことを示す信号DETSを生成して端子RDSからカウンタ200へ出力する。
【0038】
更に、コントローラ210は、IFS終了後のデータ通信においてA/D変換器190からデータFSHTを端子RDIFに受けると、通信の相手が移動していることを検知し、IFSにおける通信の相手との通信距離の変化を後述する方法によって測定する。
【0039】
更に、コントローラ210は、端子RDAから受けたデータDATAを端子HOSTIFを介してパーソナルコンピュータ(図示せず)へ送信する。
【0040】
水晶発振器220は、所定の周期信号を発生してクロック発生器230へ出力する。クロック発生器230は、水晶発振器220からの周期信号に基づいてクロック信号CLK_SEFを発生し、その発生したクロック信号CLK_SEFをカウンタ200及び選択器240へ出力する。
【0041】
選択器240は、端子241,242とスイッチ243とを含む。端子241は、クロック調整器170に接続される。端子242は、クロック発生器230に接続される。スイッチ243は、1/N分周器250及びミキサー280に接続される。そして、選択器240は、コントローラ210からHレベルの信号SLT2を受けるとスイッチ243を端子241に接続し、クロック調整器170からのクロック信号CLK_PATを1/N分周器250及びミキサー280へ出力する。また、選択器240は、コントローラ210からLレベルの信号SLT2を受けるとスイッチ243を端子242に接続し、クロック発生器230からのクロック信号CLK_SEFを1/N分周器250及びミキサー280へ出力する。
【0042】
1/N分周器250は、選択器240からのクロック信号CLK_PATまたはCLK_SEFをN分の1に分周し、その分周した分周クロック信号CLK_Bをコントローラ210へ出力する。
【0043】
変調器260は、コントローラ210からのデータを所定の変調周波数によって変調し、その変調したデータをローパスフィルタ270へ出力する。ローパスフィルタ270は、変調器260からの変調データをベースバンド信号に変換してミキサー280へ出力する。
【0044】
ミキサー280は、ローパスフィルタ270からのベースバンド信号と選択器240からのクロック信号CLK_PATまたはCLK_SEFとを混合して増幅器290へ出力する。増幅器290は、ミキサー280の出力を増幅して選択器120へ出力する。
【0045】
なお、図1に示す受信機30も、図2に示す送信機10と同じ構成からなる。
【0046】
図3は、送信データ及び受信データのタイミングチャートである。以下、送信機10が受信機30との間の通信距離を決定する方法について説明する。図3においては、データDATTは、送信機10が無線通信空間20を介して受信機30へ送信するデータを表わし、データDARRは、受信機30が無線通信空間20を介して送信機10から受信するデータを表わし、データDARTは、受信機30が無線通信空間20を介して送信機10へ送信するデータを表わし、データDATRは、送信機10が無線通信空間20を介して受信機30から受信するデータを表わす。
【0047】
CSMA/CA方式においては、送信機10は、1つのパケットPKT_n−1(nは自然数)を送信すると、SIFS(Short Interframe Spacing)を含む待ち時間τ1+SIFS+τ2の後、肯定応答を受信する。そして、送信機10は、肯定応答を受信した後、DIFS(Distributed Interframe Spacing)という待ち時間と、BACK_OFFという待ち時間とが経過した後に、次のパケットPKT_nを送信する。
【0048】
この発明においては、送信機10は、SIFSという無線通信空間20において通信していない期間を利用してデータ(1つのパケット)が受信機30との間で往復する時間を計測し、その計測した往復時間に基づいて受信機30との間の通信距離を決定する。
【0049】
送信機10は、データDATTを無線通信空間20を介して受信機30へ送信し始め、タイミングt1でデータDATTの送信を終了する。そして、受信機30は、無線通信空間20を介して送信機10からのデータDARRを受信し始め、送信機10におけるデータDATTの送信終了がタイミングt2で受信機30へ伝搬される。即ち、データが無線通信空間20を介して送信機10から受信機30へ伝搬される時間は、τ1である。
【0050】
受信機30は、送信機10からのデータDARRの受信を終了した後、一定時間SIFSが経過するまで待機し、一定時間SIFSが経過するタイミングt3で無線通信空間20を介してデータDARTの送信機10への送信を開始する。そして、送信機10は、無線通信空間20を介して受信機30からのデータDATRを受信し始め、受信機30におけるデータDARTの送信開始がタイミングt4で送信機10へ伝搬される。その後、送信機10は、後述する方法によってデータDATRを安定して受信し始めるタイミングt6、即ち、フレーム開始部の終了位置を検出する。
【0051】
受信機30におけるデータDARTの送信開始が送信機10へ伝搬されるタイミングは、タイミングt4であるので、データが受信機30から送信機10へ伝搬される時間は、タイミングt3からタイミングt4までの時間τ3であるが、この発明においては、タイミングt3からタイミングt4までの時間τ3をデータが受信機30から送信機10へ伝搬される時間とするのではなく、タイミングt5と送信機10がデータDATRを安定して受信し始めるタイミングt6との間の時間τ2をデータが受信機30から送信機10へ伝搬される時間とする。即ち、データのフレーム開始部SFDの終了位置が無線通信空間20を介して受信機30から送信機10へ伝搬される時間が、データが受信機30から送信機10へ伝搬される時間τ2となる。
【0052】
なお、タイミングt5からタイミングt6までの時間τ2をデータが受信機30から送信機10へ伝搬される時間とする理由については後述する。
【0053】
送信機10のカウンタ200は、上述したように、端子GTE2に信号DTFを受けるとクロック信号CLK_SEFの成分個数をカウントし始め、端子GTE1に信号DETSを受けるとクロック信号CLK_SEFの成分個数のカウントを停止する。つまり、カウンタ200は、タイミングt1からタイミングt6までの間におけるクロック信号CLK_SEFの成分個数をカウントする。
【0054】
そして、カウント値CNTにクロック信号CLK_SEFの周期長を乗算すれば、タイミングt1からタイミングt6までのトータル時間Ttotalが得られる。その結果、次式が成立する。
【0055】
Ttotal=τ1+Tfix+τ2・・・(1)
一定時間Tfixは、上述したようにコントローラ210によって計測されるので、トータル時間Ttotalから一定時間Tfixを減算すると、τ1+τ2が得られる。このτ1+τ2は、データが送信機10と受信機30との間を往復する往復時間である。
【0056】
なお、受信機30において計測される一定時間Tfixは、予め送信機10と受信機30との間で次式によって決定されており、送信機10のコントローラ210は、決定された一定時間Tfixを保持している。従って、送信機10は、式(1)に基づいて往復時間τ1+τ2を容易に演算できる。
【0057】
なお、一定時間Tfixは、次式により決定される。
【0058】
Tfix=SIFS+SYNC+SFD・・・(2)
式(2)より、一定時間Tfixは、SIFS(受信機30の応答時間)と、同期信号部SYNCの検出時間と、フレーム開始部SFDの検出時間との和として決定される。
【0059】
受信機30が移動を停止しているとき、送信機10におけるデータの送信終了が受信機30へ伝搬される伝搬時間τ1は、受信機30におけるデータの送信開始が送信機10へ伝搬される伝搬時間τ2と等しいので、往復時間τ1+τ2の半分(τ1+τ2)/2が送信機10と受信機30との間のデータの伝搬時間になる。
【0060】
従って、送信機10のコントローラ210は、時間(τ1+τ2)/2に光速cを乗算することにより送信機10と受信機30との間の通信距離を決定する。
【0061】
図3から明らかなように、一定時間Tfixは、固定値であるので、トータル時間Ttotalは、データの伝搬時間τ1+τ2だけ長くなる。
【0062】
従って、この発明は、トータル時間Ttotalが送信機10と受信機30との間のデータの伝搬時間τ1+τ2だけ長くなることを利用して送信機10と受信機30との間の通信距離を決定することを特徴とする。
【0063】
図4は、送信機10が受信機30からのデータDATAを安定して受信し始めるタイミングt6を検出する方法を説明するための図である。送信機10と受信機30との間で送受信されるデータDATAであるパケットPKTは、同期信号部SYNCと、フレーム開始部SFDと、フレーム部FRMとからなる。同期信号部SYNCは、パケットPKTの先頭に設けられる。フレーム開始部SFDは、同期信号部SYNCに続いて設けられる。フレーム部FRMは、フレーム開始部SFDに続いて設けられる。
【0064】
同期信号部SYNCは、送信機10と受信機30との間でデータDATAを送受信するときの同期を取るためのデータを配置するフィールドである。フレーム開始部SFDは、スタートフレームデリミタ(Start Frame Delimiter)と呼ばれ、フレーム部FRMの開始を示すフィールドである。そして、フレーム開始部SFDは、例えば、[10101011]の8ビットパターンからなる。フレーム部FRMは、送受信の対象となるデータを配置するフィールドである。
【0065】
送信機10は、上述した構成からなるパケットPKTをタイミングt1で受信機30へ送信し終わる。そして、送信機10は、タイミングt4で受信機30からパケットPKTを受信し始める。
【0066】
その結果、送信機10は、タイミングt4からタイミングt6までの期間、パケットPKTの同期信号部SYNCおよびフレーム開始部SFDを受信する。同期信号部SYNCを受信している期間、送信機10が受信したデータは不連続であり、送信機10の受信回路(増幅器130、ミキサー140、復調器160、キャリア検出器180およびコントローラ210)は同調が取れておらず、利得が不安定であり、更に、同期データも復調不可能である。
【0067】
しかし、同期信号部SYNCの受信を継続するに従って、即ち、タイミングt6に近づくに従って徐々にデータが連続し、利得も安定し始め、同期データも復調可能になる。そして、フレーム開始部SFDの受信を終了するタイミングt6では、送信機10の受信回路(増幅器130、ミキサー140、復調器160、キャリア検出器180およびコントローラ210)は同調がとれている。
【0068】
従って、この発明においては、フレーム開始部SFDの受信を終了するタイミングt6を送信機10が受信機30からのデータを安定して受信し始めるタイミングとする。
【0069】
そして、送信機10のコントローラ210は、復調器160からデータDATAを受け、その受けたデータDATAに基づいてフレーム開始部SFDの終了位置を検出する。より具体的には、フレーム開始部SFDは、上述したように[10101011]の8ビットパターンからなるので、コントローラ210は、この8ビットパターンの最後の2ビットである[11]をデータDATAから検出することにより、フレーム開始部SFDの終了位置を検出する。
【0070】
コントローラ210は、フレーム開始部SFDの終了位置を検出すると、信号DETSを生成して端子RDSからカウンタ200へ出力する。
【0071】
このように、パケットPKTの同期信号部SYNCを受信している期間、送信機10の受信回路(増幅器130、ミキサー140、復調器160、キャリア検出器180およびコントローラ210)は同調が取れず、利得が不安定であり、更に、同期データも復調不可能である。そして、受信機30が送信機10から遠く離れている場合、受信機30からのデータの受信は、同期信号部SYNCを受信する期間、一層、不安定になる。
【0072】
しかし、受信機30が送信機10から遠く離れていても、送信機10がフレーム開始部SFDの終了位置を検出するタイミングt6では、送信機10の受信回路(増幅器130、ミキサー140、復調器160、キャリア検出器180およびコントローラ210)は同調が取れているので、送信機10は受信機30からのデータを安定して受信できる。
【0073】
従って、この発明においては、タイミングt5からタイミングt6までの時間τ2をデータが受信機30から送信機10へ伝搬する時間とすることにしたものである。
【0074】
図5は、送信機10と受信機30との間の通信距離を決定する動作を説明するためのフローチャートである。一連の動作が開始されると、送信機10のコントローラ210は、Lレベルの信号SLT1を生成して選択器120へ出力し、Lレベルの信号SLT2を生成して選択器240へ出力する。そして、選択器120は、Lレベルの信号SLT1に応じてスイッチ123を端子122に接続する。また、選択器240は、Lレベルの信号SLT2に応じてスイッチ243を端子242に接続する。
【0075】
一方、受信機30のコントローラ210は、Hレベルの信号SLT1を生成して選択器120へ出力し、Hレベルの信号SLT2を生成して選択器240へ出力する。そして、選択器120は、Hレベルの信号SLT1に応じてスイッチ123を端子121に接続する。また、選択器240は、Hレベルの信号SLT2に応じてスイッチ243を端子241に接続する。
【0076】
送信機10のコントローラ210は、データを端子TDAから変調器260へ出力する。変調器260は、コントローラ210からのデータを所定の変調周波数によって変調してローパスフィルタ270へ出力する。ローパスフィルタ270は、変調データの高周波ノイズを除去してベースバンド信号をミキサー280へ出力する。
【0077】
また、送信機10の水晶発振器220は、所定の周期信号を発生してクロック発生器230へ出力する。クロック発生器230は、周期信号に基づいてクロック信号CLK_SEFを発生してカウンタ200及び選択器240へ出力する。そして、選択器240は、クロック信号CLK_SEFを1/N分周器250及びミキサー280へ出力する。ミキサー280は、ローパスフィルタ270からのベースバンド信号と選択器240からのクロック信号CLK_SEFとを混合して増幅器290へ出力する。つまり、ミキサー280は、ベースバンド信号をクロック信号CLK_SEFに同期させて増幅器290へ出力する。増幅器290は、ミキサー280の出力を増幅して選択器120へ出力する。選択器120は、増幅器290の出力をアンテナ110を介して送信する。これにより、データの受信機30への送信が開始される(ステップS1)。
【0078】
その後、データが無線通信空間20を介して受信機30へ送信され、送信機10におけるデータの送信が終了すると(ステップS2)、送信機10のコントローラ210は、信号DTFを生成してカウンタ200へ出力する。そして、カウンタ200は、端子GTE2に信号DTFを受けると、クロック信号CLK_SEFの成分個数のカウントを開始する(ステップS3)。
【0079】
送信機10から送信されたデータは、無線通信空間20を介して受信機30へ送信される。受信機30のアンテナ110は、無線通信空間20を介して受信したデータを選択器120を介して増幅器130に供給する。増幅器130は、選択器120から供給されたデータを増幅してミキサー140へ出力する。ミキサー140は、増幅器130の出力とクロック調整器170からのクロック信号CLK_PATとを混合してローパスフィルタ150へ出力する。つまり、ミキサー140は、ベースバンド信号をクロック信号CLK_PATに同期させてローパスフィルタ150へ出力する。ローパスフィルタ150は、ミキサー140の出力から高周波ノイズを除去してベースバンド信号を復調器160及びキャリア検出器180へ出力する。
【0080】
復調器160は、ベースバンド信号の周波数ずれ信号を検出し、その検出した周波数ずれ信号をクロック調整器170及びA/D変換器190へ出力する。また、復調器160は、ベースバンド信号を復調し、その復調したデータDATAをコントローラ210へ出力する。クロック調整器170は、復調器160からの周波数ずれ信号に応じて送信機10のキャリア周波数を推定し、その推定したキャリア周波数を有するクロック信号CLK_PATを生成してミキサー140及び選択器240へ出力する。これにより、受信機30は、通信の相手である送信機10において生成されたクロック信号CLK_SEFに同期してデータDATAを受信する(ステップS4)。
【0081】
受信機30のキャリア検出器180は、ローパスフィルタ150からのベースバンド信号に基づいて、データの受信を終了したことを検出し(ステップS5)、データの受信を終了したことを示す信号DETFを生成してコントローラ210へ出力する。
【0082】
一方、受信機30のコントローラ210は、Lレベルの信号SLT1を生成して選択器120へ出力する。選択器120は、Lレベルの信号SLT1に応じてスイッチ123を端子122に接続する。また、選択器240は、クロック調整器170からのクロック信号CLK_PATを1/N分周器250及びミキサー280へ出力する。1/N分周器250は、クロック信号CLK_PATをN分の1に分周し、分周クロック信号CLK_Bをコントローラ210へ出力する。
【0083】
そして、コントローラ210は、キャリア検出器180からの信号DETFを端子CDETに受けると、端子MCLKに受けた分周クロック信号CLK_Bの成分個数をカウントして一定時間SIFSを計測する。つまり、受信機30は、データの送信を一定時間SIFSだけ待機する(ステップS6)。
【0084】
このように、受信機30は、クロック調整器170によって推定された送信機10のキャリア周波数を有するクロック信号CLK_PATに基づいて一定時間SIFSを計測する。
【0085】
一定時間SIFSが経過すると、受信機30のコントローラ210は、データを端子TDAから変調器260へ出力する。そして、変調器260は、データを所定の変調周波数によって変調する。ローパスフィルタ270は、変調データの高周波ノイズを除去してベースバンド信号をミキサー280へ出力する。ミキサー280は、ローパスフィルタ270からのベースバンド信号と選択器240からのクロック信号CLK_PATとを混合して増幅器290へ出力する。つまり、ミキサー280は、ベースバンド信号をクロック信号CLK_PATに同期させて増幅器290へ出力する。増幅器290は、ミキサー280の出力を増幅して選択器120へ出力する。選択器120は、増幅器290の出力をアンテナ110を介して送信する。これにより、受信機30から送信機10へのデータの送信が開始される(ステップS7)。
【0086】
このように、受信機30は、送信機10からのデータを送信機10におけるキャリア周波数と同じキャリア周波数を有するクロック信号CLK_PATに同期して送受信する。
【0087】
その後、送信機10のコントローラ210は、Hレベルの信号SLT1を生成して選択器120へ出力する。選択器120は、Hレベルの信号SLT1に応じてスイッチ123を端子121に接続する。
【0088】
そして、送信機10のアンテナ110は、無線通信空間20を介して受信したデータを選択器120を介して増幅器130に供給する。増幅器130は、選択器120から供給されたデータを増幅してミキサー140へ出力する。ミキサー140は、増幅器130の出力とクロック調整器170からのクロック信号CLK_PATとを混合してローパスフィルタ150へ出力する。ローパスフィルタ150は、ミキサー140の出力から高周波ノイズを除去してベースバンド信号を復調器160へ出力する。
【0089】
復調器160は、ベースバンド信号を復調し、その復調したデータDATAをコントローラ210へ出力する。そして、コントローラ210は、復調器160から受けたデータDATAに基づいて、上述した方法によってフレーム開始部SFDの終了位置を検出する。これにより、送信機10は、受信機30からのデータDATAの受信を開始する(ステップS8)。
【0090】
そして、コントローラ210は、フレーム開始部SFDの終了位置を検出すると、データの受信を開始したことを示す信号DETSを生成してカウンタ200へ出力する。
【0091】
カウンタ200は、コントローラ210から端子GTE1に信号DETSを受けると、クロック信号CLK_SEFの成分個数のカウントを終了し、カウント値CNTを端子Qからコントローラ210へ出力する。コントローラ210は、端子TAVにカウント値CNTを受けると、分周クロック信号CLK_Bに基づいてクロック信号CLK_SEFの周期長を演算し(送信機10においては、分周クロック信号CLK_Bは、クロック信号CLK_SEFを分周して生成される)、その演算した周期長をカウント値CNTに乗算してトータル時間Ttotalを演算する(ステップS9)。
【0092】
コントローラ210は、トータル時間Ttotalを演算すると、トータル時間Ttotalから一定時間Tfixを減算して往復時間τ1+τ2を演算する。そして、コントローラ210は、往復時間τ1+τ2の半分(τ1+τ2)/2に光速cを乗算して送信機10と受信機30との間の通信距離を決定する(ステップS10)。
【0093】
これにより、一連の動作が終了する。
【0094】
上述したように、受信機30は、通信の相手である送信機10のキャリア周波数を有するクロック信号CLK_PATに基づいて一定時間SIFSを計測する(ステップS6参照)。また、受信機30は、送信機10からのデータを送信機10におけるキャリア周波数と同じキャリア周波数を有するクロック信号CLK_PATに同期して送受信する(ステップS4,S7参照)。
【0095】
従って、受信機30におけるデータの受信終了タイミング、一定時間SIFSの長さ及びデータの送信開始タイミングを送信機10において生成されたクロック信号CLK_SEFに同期して決定することができ、送信機10は、トータル時間Ttotal=τ1+Tfix+τ2を正確に計測できる。その結果、送信機10と受信機30との間の通信距離を正確に決定できる。
【0096】
また、送信機10は、受信機30からのデータDATAに含まれるフレーム開始部SFDの終了位置を検出すると、トータル時間Ttotalの計測を終了するので(ステップS9参照)、トータル時間Ttotalを正確に決定できる。即ち、受信機30が送信機10から遠く離れていても、送信機10は受信機30からのデータの受信を開始するタイミングを正確に決定でき、データが受信機30から送信機10へ伝搬する伝搬時間τ2を正確に決定できる。そして、トータル時間Ttotalを正確に決定できる。
【0097】
その結果、送信機10と受信機30との間の通信距離を正確に決定できる。
【0098】
なお、一定時間TfixをCSMA_CA方式を用いた無線LANシステムにおけるSIFSよりも長いPIFSに設定してもよい。
【0099】
SIFS及びPIFSは、無線LANシステムに接続された各端末にとって固定された一定時間であるので、SIFSまたはPIFSを一定時間Tfixとして用いることにより、送信機10と受信機30との通信距離を正確に決定できる。
【0100】
送信機10は、無線通信空間20において通信していない期間(IFS)を利用して上述した方法によって受信機30との間の通信距離を決定した後、即ち、空き期間の終了後、受信機30との間でデータ通信を行ない、受信機30へ送信したデータの位相が受信機30から受信するデータの位相とずれているか否かを判定する。そして、送信機10は、受信機30へ送信したデータの位相が受信機30から受信するデータの位相とずれているとき、受信機30が移動していると判定し、空き期間における受信機30との通信距離の変化を測定する。
【0101】
より具体的には、送信機10は、上述した方法によってデータを自己が生成したクロック信号CLK_SEFに同期して受信機30へ送信する。そして、受信機30は、送信機10から受信したデータを、自己が生成したクロック信号CLK_SEFに同期して送信機10へ送信する。通常のデータ通信時においては、受信機30は、通信の相手である送信機10において生成されたクロック信号CLK_SEF(=CLK_PAT)ではなく、自己が生成したクロック信号CLK_SEFに同期してデータを送信する。
【0102】
送信機10において生成されたクロック信号CLK_SEFをクロック信号CLK_SEF_Tとし、受信機30において生成されたクロック信号CLK_SEFをクロック信号CLK_SEF_Rとする。また、送信機10がクロック信号CLK_SEF_Tに同期して受信機30へ送信したデータをDATA_Tとし、受信機30がクロック信号CLK_SEF_Rに同期して送信機10へ送信したデータをDATA_Rとする。
【0103】
その結果、送信機10は、データDATA_Tを受信機30へ送信し、データDATA_Rを受信機30から受信する。そして、送信機10は、データDATA_Tの位相がデータDATA_Rの位相とずれているか否かを判定する。
【0104】
即ち、送信機10の復調器160は、受信機30から受信したデータDATA_Rの周波数ずれ信号、つまり、データDATA_Rの位相ずれを検出してA/D変換器190へ出力する。A/D変換器190は、復調器160からの位相ずれをアナログ信号からデジタル信号に変換してデータFSHTをコントローラ210へ出力する。従って、A/D変換器190は、位相ずれのデータFSHTを生成してコントローラ210へ出力する。
【0105】
コントローラ210は、データFSHTを端子RDIFに受けることによりデータDATA_Rに位相ずれが生じていることを検知する。そして、コントローラ210は、データDATA_Rに位相ずれが生じているとき、次の方法により空き期間における受信機30との通信距離の変化を測定する。
【0106】
受信機30が移動を停止しているとき、伝搬時間τ1は伝搬時間τ2と等しいので、トータル時間をTtotal1とすると、データが送信機10と受信機30との間を往復する往復時間は、2τ1=a(=Ttotal1−Tfix)によって表わすことができる。また、受信機30が移動しているとき、トータル時間をTtotal2とすると、データが送信機10と受信機30との間を往復する往復時間は、τ1+τ2=b(=Ttotal2−Tfix)と表わすことができる。
【0107】
従って、この2つの式から|τ1−τ2|=|a−b|となり、空き期間における送信機10と受信機30との間の通信距離の変化は、|a−b|×cとなる。
【0108】
コントローラ210は、受信機30が停止しているときの往復時間aを記憶しており、受信機30が移動していると判定したとき、計測した往復時間bを用いて上記のように通信距離の変化|a−b|×cを演算する。
【0109】
なお、受信機30から受信したデータDATA_Rの位相が受信機30へ送信したデータDATA_Tの位相とずれていると判定することは、受信機30において生成されたクロック信号CLK_SEF_Rの位相が送信機10において生成されたクロック信号CLK_SEF_Tの位相とずれていると判定することに相当する。データDATA_Rは、クロック信号CLK_SEF_Rに同期し、データDATA_Tは、クロック信号CLK_SEF_Tに同期しているからである。
【0110】
なお、一般的には、データを変調する変調周波数は、クロック信号CLK_SEF,CLK_PATのキャリア周波数(搬送周波数)と等しいが、変調周波数がキャリア周波数と異なる場合もあるので、この発明においては、クロック信号CLK_SEF,CLK_PATは、変調周波数及びキャリア周波数のいずれかに基づいて生成されていればよい。
【0111】
図6は、通信の空き時間と通信距離との関係を示す図である。図6において、縦軸は、実測された通信の空き時間を表し、横軸は、実測された通信距離を表す。そして、通信距離は、上述した方法によって測定された送信機10と受信機30との間の通信距離である。
【0112】
図6に示すように、通信の空き時間は、送信機10と受信機30との間の通信距離に応じて長くなる。より具体的には、通信の空き時間は、送信機10と受信機30との間の通信距離が350mまでの範囲において、通信距離に比例して長くなる。
【0113】
上述したように、通信の空き時間Ttotalは、τ1+Tfix+τ2によって表され、送信機10と受信機30との間のデータの伝搬時間τ1+τ2に応じて変化する。そして、伝搬時間τ1+τ2は、送信機10と受信機30との間の通信距離に比例して変化する。その結果、通信の空き時間Ttotalは、送信機10と受信機30との間の通信距離に比例して変化する。
【0114】
従って、実測された通信の空き時間は、データの伝搬時間τ1+τ2が通信距離に応じて長くなったことを反映したものになっている。
【0115】
また、受信機30が送信機10から約350mと遠く離れた場合でも、通信の空き時間は、通信距離に応じて長くなっており、送信機10が受信機30からのデータを受信し始めるタイミングをフレーム開始部SFDの終了位置を検出するタイミングt6とすることによって通信の空き時間を正確に実測できることが解る。
【0116】
なお、この発明においては、送信機10から受信機30へのデータの送信を終了するタイミングt1からフレーム開始部SFDの終了位置を検出するタイミングt6までの時間を計測することは、送信機10から受信機30へのデータの送信を完了する第1のタイミングと、送信機10が受信機30からのデータを安定して受信し始める第2のタイミングとの間のトータル時間を計測することに相当する。
【0117】
また、タイミングt6は、フレーム(フレーム部FRM)の開始を示す信号であるフレーム開始部SFD(=フレームスタートデリミタ)の受信終了タイミングに相当する。
【0118】
[実施の形態2]
実施の形態1においては、送信機10が生成したクロック信号の位相と受信機30が生成したクロック信号の位相とが等しいことを前提として送信機10と受信機30との間の距離を計測する方法について説明した。
【0119】
しかし、実際には、送信機10が生成したクロック信号の位相と受信機30が生成したクロック信号の位相とがずれることもある。このような場合、SIFSが一定にならず、送信機10と受信機30との間の距離を正確に計測できない。
【0120】
図7は、送信機10が生成したクロック信号の位相に対して受信機30が生成したクロック信号の位相がずれている場合の受信信号のサンプリングタイミングの変化を示す図である。
【0121】
受信機30は、受信信号RDを受信し、SIFS経過後、送信信号TDを送信機10へ送信する。この場合、受信機30において生成されたクロック信号の位相が送信機10において生成されたクロック信号の位相に対してずれている場合、SIFSは一定にならない。
【0122】
SIFSは、受信信号RDを受信し終わるタイミングtfと送信信号TDを送信し始めるタイミングtiとの間の時間長に相当する。受信信号RD_Fは、受信信号RDの終わりの部分を示す信号である。
【0123】
クロック信号CLK1〜CLKN(Nは正の整数)の各々は、受信機30において生成されるクロック信号であり、その位相は、送信機10において生成されたクロック信号の位相に対して示されている。従って、図7においては、受信機30において生成されたクロック信号CLK1〜CLKNは、その位相が送信機10において生成されたクロック信号の位相に対して種々変化していることを示している。
【0124】
受信信号RD_Fをクロック信号CLK1に同期してサンプリングしたとき、受信信号RD_Fの終了タイミングtfは、サンプリングタイミングST1によって検出される。また、受信信号RD_Fをクロック信号CLK2に同期してサンプリングしたとき、受信信号RD_Fの終了タイミングtfは、サンプリングタイミングST2によって検出される。更に、受信信号RD_Fをクロック信号CLKNに同期してサンプリングしたとき、受信信号RD_Fの終了タイミングtfは、サンプリングタイミングSTNによって検出される。
【0125】
従って、受信機30において生成されたクロック信号CLK1〜CLKNの位相が送信機10において生成されたクロック信号の位相に対して種々変化すると、受信信号RD_Fの終了タイミングtfの検出タイミングが種々変化し、SIFSは、一定にならない。その結果、送信機10と受信機30との間の距離を正確に測定できない。
【0126】
そこで、この実施の形態2においては、受信機30において生成されたクロック信号の位相が送信機10において生成されたクロック信号の位相に対してずれた場合にも、送信機10と受信機30との間の距離を正確に測定する方法について説明する。
【0127】
図8は、実施の形態2による受信機30Aの構成を示す概略ブロック図である。実施の形態2による受信機30Aは、実施の形態1による受信機30の構成(図2参照)において、キャリア検出器180および1/N分周器250をそれぞれキャリア検出器180Aおよび1/N分周器250Aに代えたものであり、その他は、図2に示す構成と同じである。
【0128】
キャリア検出器180Aは、ローパスフィルタ150から受けたベースバンド信号に基づいて、後述する方法によって、送信機10において生成されたクロック信号CLK_SEF_Tの位相に対する受信機30Aにおいて生成されたクロック信号CLK_SEF_Rの位相差θdを検出するとともに、データの受信を終了したことを検出する。
【0129】
そして、キャリア検出器180Aは、検出した位相差θdを1/N分周器250Aへ出力し、データの受信を終了したことを示す信号DETFを生成してコントローラ210へ出力する。
【0130】
1/N分周器250Aは、選択器240からのクロック信号CLK_PATまたはCLK_SEFをN分の1に分周し、その分周した分周クロック信号CLK_Bの位相をキャリア検出器180Aから受けた位相差θdだけ進めて分周クロック信号CLK_Bの位相を送信機10において生成されたクロック信号CLK_SEF_Tの位相に一致させる。そして、1/N分周器250Aは、その位相を一致させた分周クロック信号CLK_BTをコントローラ210へ出力する。
【0131】
図9は、送信機10において生成されたクロック信号CLK_SEF_Tの位相に対する受信機30Aにおいて生成されたクロック信号CLK_SEF_Rの位相差θdを検出する方法を説明するための図である。
【0132】
受信機30Aは、送信機10から受信データDARRを受信する。そして、受信機30Aのキャリア検出器180Aは、ローパスフィルタ150からの受信データDARRをクロック信号CLK_SEF_R1に同期してサンプリングし、受信データDARRの受信終了をサンプリングタイミングST1において検出する。
【0133】
受信データDARRは、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)によって変調されたデータである。従って、受信機30Aにおいて生成されたクロック信号CLK_SEF_R1の位相が送信機10において生成されたクロック信号CLK_SEF_Tの位相に一致している場合、受信データDARRの受信終了を検出するサンプリングタイミングは、受信データDARRの終了タイミングt_dfに一致する。
【0134】
しかし、実際には、クロック信号CLK_SEF_R1の位相は、クロック信号CLK_SEF_Tの位相とずれているので、受信データDARRの終了を検出するサンプリングタイミングST1は、受信データDARRの終了タイミングt_dfに一致しない。
【0135】
そこで、キャリア検出器180Aは、受信データDARRをsin(ωt+θd)によって表し、sin(ωt+θd)が実際に受信した受信データDARRに一致するように位相差θdを決定する。これにより、キャリア検出器180Aは、位相差θdを検出する。図9においては、位相差θdは、θd1である。
【0136】
キャリア検出器180Aは、位相差θdを検出すると、その検出した位相差θdを1/N分周器250Aへ出力する。1/N分周器250Aは、選択器240からのクロック信号CLK_SEF_R1をN分の1に分周して分周クロック信号CLK_Bを生成し、その生成した分周クロック信号CLK_Bの位相をキャリア検出器180Aから受けた位相差θd1だけ進めて分周クロック信号CLK_BTを生成する。これにより、送信機10において生成されたクロック信号CLK_SEF_Tの位相に一致した分周クロック信号CLK_BTが生成される。
【0137】
受信機30Aにおいて生成されたクロック信号がクロック信号CLK_SEF_R2である場合、キャリア検出器180Aは、上述した方法によって位相差θd2を検出する。そして、1/N分周器250Aは、分周ブロック信号CLK_Bの位相を位相差θd2だけ進めて分周クロック信号CLK_BTを生成する。
【0138】
図10は、QPSKによって変調されたデータの信号空間図である。図10において、横軸は、位相の同相成分Iを表し、縦軸は、位相の直交成分Qを表す。受信機30Aにおいて生成されたクロック信号CLK_SEF_Rの位相が送信機10において生成されたクロック信号CLK_SEF_Tの位相に対してずれていない場合、受信データDARRは、正方形1の4個の頂点に存在する成分SS1〜SS4からなる。
【0139】
しかし、クロック信号CLK_SEF_Rの位相がクロック信号CLK_SEF_Tの位相に対してずれている場合、受信データDARRは、正方形2の4個の頂点に存在する成分SS’1〜SS’4からなる。正方形2の対角線4は、正方形1の対角線3に対してずれている。従って、横軸に対する対角線3の角度と横軸に対する対角線4の角度との差が位相差θdになる。
【0140】
そこで、キャリア検出器180Aは、図10に示す信号空間図を保持しており、送信機10から受信した受信データDARRの成分を信号空間図にプロットして対角線3の角度と対角線4の角度との差を位相差θdとして検出するようにしてもよい。
【0141】
このように、キャリア検出器180Aは、上述した2つの方法のいずれか一方の方法により、送信機10において生成されたクロック信号CLK_SEF_Tの位相に対する受信機30Aにおいて生成されたクロック信号CLK_SEF_Rの位相差θdを検出する。
【0142】
図11は、送信データ及び受信データの他のタイミングチャートである。クロック信号CLK_SEF_Rの位相がクロック信号CLK_SEF_Tの位相に一致している場合、SIFSは、タイミングt2とタイミングt3との間の時間長に等しい。
【0143】
しかし、クロック信号CLK_SEF_Tの位相に対してクロック信号CLK_SEF_Rの位相がずれている場合、SIFSは、タイミングt2とタイミングt7との間の時間長SIFS_diffまで延長される。
【0144】
そうすると、受信機30Aが送信機10へ送信する送信データDARTに含まれるフレーム開始部SFDの終了タイミングであるスタートフレームデリミタのタイミングは、タイミングt5からタイミングt9へずれる。その結果、送信機10が受信機30Aからの受信データDATRを安定して受信し始めるタイミングは、タイミングt6からタイミングt10までずれ、送信機10は、送信データDATTの送信を完了してから受信データDATRを安定して受信し始めるまでの時間τ1+Tfix_diff+τ2を計測する。
【0145】
この場合、タイミングt5からタイミングt9までの時間長は、タイミングt6からタイミングt10までの時間長に等しく、上述した位相差θdに相当する時間長td(=θd/ω)である。また、タイミングt3からタイミングt7までの時間長も、時間長tdに等しい。
【0146】
送信機10は、受信機30Aにおける応答時間を含む一定時間をTfixと把握しているので、時間τ1+Tfix_diff+τ2から一定時間Tfixを減算しても送信機10と受信機30Aとの間の往復時間τ1+τ2を求めることができない。図11から明らかなように、Tfix_diff=Tfix+tdであり、一定時間Tfix_diffは、クロック信号CLK_SEF_Tの位相とクロック信号CLK_SEF_Rの位相との位相差θd(=ωtd)に応じて変化するからである。
【0147】
そこで、上述したように、受信機30Aにおいて、1/N分周器250Aは、キャリア検出器180Aが検出した位相差θd(時間軸においては時間tdに相当)だけ位相を進めて分周クロック信号CLK_BT(送信機10において生成されたクロック信号CLK_SEF_Tの位相に一致するクロック信号)を生成し、コントローラ210は、キャリア検出器180Aから信号DETFを受けると、分周クロック信号CLK_BTの成分個数をカウントして一定時間を計測する。
【0148】
そして、受信機30Aのコントローラ210は、一定時間の計測後、データを送信機10へ送信するので、送信機10は、タイミングt6において受信データDATRを安定して受信し始める。その結果、送信機10が計測する送信データDATTの送信完了から受信データDATRの受信開始までの時間は、τ1+Tfix+τ2となり、送信機10において時間τ1+Tfix+τ2から一定時間Tfixを減算することによって、データが送信機10と受信機30Aとの間を往復する往復時間は、τ1+τ2となる。そうすると、実施の形態1において説明した方法によって送信機10と受信機30Aとの間の距離を正確に計測できる。
【0149】
図12は、実施の形態2における送信機10と受信機30Aとの間の通信距離を決定する動作を説明するためのフローチャートである。図12に示すフローチャートは、図5に示すフリーチャートのステップS6をステップS6A,S6B,S6Cに代えたものであり、その他は、図5に示すフローチャートと同じである。
【0150】
受信機30Aのキャリア検出器180Aは、データの受信を終了したことを検出すると(ステップS5)、上述した方法によって、送信機10におけるクロック信号CLK_SEF_Tの位相と受信機30Aにおけるクロック信号CLK_SEF_Rの位相との位相差θdを検出し(ステップS6A)、その検出した位相差θdを1/N分周器250Aへ出力する。また、キャリア検出器180Aは、データの受信を終了したことを示す信号DETFを生成してコントローラ210へ出力する。
【0151】
1/N分周器250Aは、選択器240からのクロック信号CLK_SEFをN分の1に分周して分周クロック信号CLK_Bを生成し、その生成した分周クロック信号CLK_Bの位相を位相差θdだけ進めて分周クロック信号CLK_BTを生成する(ステップS6B)。そして、1/N分周器250Aは、分周クロック信号CLK_BTをコントローラ210の端子MCLKへ出力する。
【0152】
コントローラ210は、キャリア検出器180Aからの信号DETFを端子CDETに受けると、端子MCLKに受けた分周クロック信号CLK_BTの成分個数をカウントして応答時間SIFSを計測する。つまり、受信機30Aは、分周クロック信号CLK_BTに基づいて、応答時間SIFSだけ待機する(ステップS6C)。
【0153】
その後、実施の形態1において説明したステップS7〜ステップS10が実行され、送信機10と受信機30Aとの間の距離が決定される。
【0154】
[送受信機間の距離を正確に計測する他の方法1]
上記においては、受信機30Aにおいて生成されたクロック信号CLK_SEF_Rの位相と送信機10において生成されたクロック信号CLK_SEF_Tの位相との位相差を受信機30Aにおいて調整することによって送信機10と受信機30Aとの間の距離を正確に計測する方法について説明した。
【0155】
この実施の形態2においては、受信機30Aが検出した位相差θdに相当する時間長tdを送信機10へ送信し、送信機10が時間長tdに基づいて往復時間τ1+τ2を正確に求めるようにしてもよい。
【0156】
この場合、受信機は、図13に示す受信機30Bからなる。図13は、実施の形態2による受信機の構成を示す他の概略ブロック図である。実施の形態2による受信機30Bは、実施の形態1による受信機30の構成(図2参照)において、キャリア検出器180およびコントローラ210をそれぞれキャリア検出器180Bおよびコントローラ210Aに代えたものであり、その他は、図2に示す構成と同じである。
【0157】
キャリア検出器180Bは、ローパスフィルタ150からの受信データに基づいて、キャリア検出器180Aと同じ方法によって位相差θdを検出し、その検出した位相差θdをコントローラ210Aへ出力するとともに、受信データの受信を終了したことを示す信号DETFを生成してコントローラ210Aへ出力する。
【0158】
コントローラ210Aは、キャリア検出器180Bから信号DETFおよび位相差θdを端子CDETに受ける。そして、コントローラ210Aは、位相差θdを時間長td=θd/ωに変換する。また、コントローラ210Aは、端子CDETに信号DETFを受けると、図2に示すコントローラ210と同じ方法によって応答時間SIFS_diffを計測し、応答時間SIFS_diffを計測した後、データDARTおよび時間長tdを変調器260、ローパスフィルタ270、ミキサー280、増幅器290、選択器120およびアンテナ110を介して送信機10へ送信する。
【0159】
この場合、データDARTおよび時間長tdは、受信機30Bにおいて生成されたクロック信号CLK_SEF_Rに同期して送信機10へ送信される。
【0160】
送信機10は、受信機30BからデータDATRおよび時間長tdを受信するとともに、データDATTの送信を終了してからデータDATRを安定して受信し始めるまでの時間τ1+Tfix_diff+τ2(図11参照)を計測する。そして、送信機10は、自己が把握している受信機30Bにおける応答時間を含む一定時間Tfixに受信した時間長tdを加算し、その加算結果Tfix+tdを時間τ1+Tfix_diff+τ2から減算する。
【0161】
この場合、図11から明らかなように、Tfix_diff=Tfix+tdであるので、時間τ1+Tfix_diff+τ2から加算結果Tfix+tdを減算すると、往復時間τ1+τ2が得られる。
【0162】
従って、送信機10は、時間τ1+Tfix_diff+τ2から加算結果Tfix+tdを減算することによって、送信機10と受信機30Bとの間の往復時間τ1+τ2を演算する。
【0163】
その後、送信機10は、実施の形態1において説明した方法により、送信機10と受信機30Bとの間の距離を演算する。
【0164】
なお、送信機10が受信機30Bから受信した時間長tdを一定時間Tfixに加算し、その加算結果を時間τ1+Tfix_diff+τ2から減算することは、クロック信号CLK_SEF_Rの位相がクロック信号CLK_SEF_Tの位相に一致してときの受信機30Bにおける応答時間(SIFS)に受信機30Bにおいて計測された応答時間(SIFS_diff)が一致するように、時間長tdに基づいて、受信機30Bにおいて計測された応答時間SIFS_diffを含む一定時間Tfix_diffを調整し、その調整後の一定時間を時間τ1+Tfix+τ2(=トータル時間)から減算して往復時間τ1+τ2を演算することに相当する。
【0165】
送信機10がクロック信号CLK_SEF_Tに同期して計測した時間τ1+Tfix_diff+τ2から往復時間τ1+τ2を求める場合、送信機10のコントローラ210は、受信機30Bにおけるクロック信号CLK_SEF_Rの位相ずれに相当する時間長tdを時間τ1+Tfix_diff+τ2から減算し、その減算結果τ1+Tfix_diff+τ2−tdから更に一定時間Tfixを減算する。
【0166】
この場合、減算結果τ1+Tfix_diff+τ2−tdは、次式のように変形できる。
【0167】
τ1+Tfix_diff+τ2−td
=τ1+τ2+(Tfix_diff−td)
=τ1+τ2+Tfix・・・・・・・・・・・・(3)
式(3)において、受信機30Bにおいてクロック信号CLK_SEF_Rに同期して測定された応答時間(SIFS_diff)を含む一定時間Tfix_diffから時間長tdを減算することは、クロック信号CLK_SEF_Rの位相がクロック信号CLK_SEF_Tの位相に一致しているときの受信機30Bにおける応答時間(SIFS)を含む一定時間Tfixを求めることに相当するので、一定時間Tfix_diffから時間長tdを減算することは、「クロック信号CLK_SEF_Rの位相がクロック信号CLK_SEF_Tの位相に一致してときの受信機30Bにおける応答時間(SIFS)に受信機30Bにおいて計測された応答時間(SIFS_diff)が一致するように、時間長tdに基づいて、受信機30Bにおいて計測された応答時間SIFS_diffを含む一定時間Tfix_diffを調整する」ことに相当する。
【0168】
そして、調整後の一定時間Tfix=Tfix_diff−tdをトータル時間τ1+τ2+Tfixから減算すると、往復時間τ1+τ2が得られる。
【0169】
従って、送信機10が受信機30Bから受信した時間長tdを一定時間Tfixに加算し、その加算結果を時間τ1+Tfix_diff+τ2から減算することは、クロック信号CLK_SEF_Rの位相がクロック信号CLK_SEF_Tの位相に一致してときの受信機30Bにおける応答時間(SIFS)に受信機30Bにおいて計測された応答時間(SIFS_diff)が一致するように、時間長tdに基づいて、受信機30Bにおいて計測された応答時間SIFS_diffを含む一定時間Tfix_diffを調整し、その調整後の一定時間を時間τ1+Tfix+τ2(=トータル時間)から減算して往復時間τ1+τ2を演算することに相当する。
【0170】
図14は、実施の形態2における送信機と受信機との間の通信距離を決定する動作を説明するための他のフローチャートである。図14に示すフローチャートは、図5に示すフローチャートのステップS5とステップS6との間にステップS5Aを挿入し、ステップS7,S8,S10をそれぞれステップS7A,S8A,S10Aに代えたものであり、その他は、図5に示すフローチャートと同じである。
【0171】
受信機30Bのキャリア検出器180Bは、データの受信を終了したことを検出すると(ステップS5)、上述した方法によって、送信機10におけるクロック信号CLK_SEF_Tの位相と受信機30Bにおけるクロック信号CLK_SEF_Rの位相との位相差θdを検出し、その検出した位相差θdをコントローラ210Aへ出力するとともに、データの受信を終了したことを示す信号DETFを生成してコントローラ210Aへ出力する。
【0172】
コントローラ210Aは、キャリア検出器180Bから信号DETFおよび位相差θdを受信する。そして、コントローラ210Aは、位相差θdを時間長td(=θd/ω)に変換するとともに、信号DETFの受信に応じて1/N分周器250からの分周クロック信号CLK_Bの成分個数を計測して応答時間SIFS_diff(図11参照)を計測する。つまり、受信機30Bは、分周クロック信号CLK_Bに基づいて一定時間SIFS_diffだけ待機する(ステップS6)。
【0173】
一定時間SIFS_diffが経過すると、受信機30Bのコントローラ210Aは、データおよび時間長tdを端子TDAから変調器260へ出力する。そして、変調器260は、データおよび時間長tdを所定の変調周波数によって変調する。ローパスフィルタ270は、変調データの高周波ノイズを除去してベースバンド信号をミキサー280へ出力する。ミキサー280は、ローパスフィルタ270からのベースバンド信号と選択器240からのクロック信号CLK_PATとを混合して増幅器290へ出力する。つまり、ミキサー280は、ベースバンド信号をクロック信号CLK_PATに同期させて増幅器290へ出力する。増幅器290は、ミキサー280の出力を増幅して選択器120へ出力する。選択器120は、増幅器290の出力をアンテナ110を介して送信する。これにより、受信機30Bから送信機10へのデータおよび時間長tdの送信が開始される(ステップS7A)。
【0174】
その後、送信機10のコントローラ210は、Hレベルの信号SLT1を生成して選択器120へ出力する。選択器120は、Hレベルの信号SLT1に応じてスイッチ123を端子121に接続する。
【0175】
そして、送信機10のアンテナ110は、無線通信空間20を介して受信したデータおよび時間長tdを選択器120を介して増幅器130に供給する。増幅器130は、選択器120から供給されたデータおよび時間長tdを増幅してミキサー140へ出力する。ミキサー140は、増幅器130の出力とクロック調整器170からのクロック信号CLK_PATとを混合してローパスフィルタ150へ出力する。ローパスフィルタ150は、ミキサー140の出力から高周波ノイズを除去してベースバンド信号を復調器160へ出力する。
【0176】
復調器160は、ベースバンド信号を復調し、その復調したデータDATAおよび時間長tdをコントローラ210へ出力する。そして、コントローラ210は、復調器160から受けたデータDATAに基づいて、上述した方法によってフレーム開始部SFDの終了位置を検出する。これにより、送信機10は、受信機30からのデータDATAおよび時間長tdを安定して受信し始める(ステップS8A)。
【0177】
そして、送信機10のコントローラ210は、実施の形態1において説明したステップS9を実行し、トータル時間Ttotal_diff=τ1+Tfix_diff+τ2を演算する。
【0178】
送信機10のコントローラ210は、トータル時間Ttotal_diff=τ1+Tfix_diff+τ2を演算すると、一定時間Tfixに時間長tdを加算し、その加算結果Tfix+td(=Tfix_diff)をトータル時間Ttotal_diff=τ1+Tfix_diff+τ2から減算して往復時間τ1+τ2を演算する。そして、コントローラ210は、往復時間τ1+τ2の半分(τ1+τ2)/2に光速cを乗算して送信機10と受信機30Bとの間の通信距離を決定する(ステップS10A)。
【0179】
これにより、一連の動作は終了する。
【0180】
[送受信機間の距離を正確に計測する他の方法2]
この実施の形態2においては、送信機は、データを受信機へ送信し、受信機から受信したデータの位相と送信機において生成されたクロック信号の位相との位相差を検出し、その検出した位相差に基づいて、データが受信機との間で往復する往復時間を正確に計測するようにしてもよい。
【0181】
図15は、実施の形態2による送信機の構成を示す概略ブロック図である。実施の形態2による送信機10Aは、図2に示す送信機10のキャリア検出器180およびコントローラ210をそれぞれキャリア検出器180Cおよびコントローラ210Bに代えたものであり、その他は、送信機10と同じである。
【0182】
キャリア検出器180Cは、ローパスフィルタ150からの受信データに基づいて、後述する方法によって送信機10Aにおいて生成されたクロック信号CLK_SEF_Tの位相と受信機30から受信した受信データの位相との位相差θdを検出し、その検出した位相差θdをコントローラ210Bへ出力する。キャリア検出器180Cは、その他は、キャリア検出器180と同じ機能を果たす。
【0183】
コントローラ210Bは、データDATTの送信を終了したタイミングt1からデータDATRを安定して受信し始めるタイミングt10までのトータル時間Ttotal_diff=τ1+Tfix_diff+τ2(図11参照)を計測するとともに、キャリア検出器180Cから受けた位相差θdを時間長td(=θd/ω)に変換する。
【0184】
そして、コントローラ210Bは、クロック信号CLK_SEF_Rの位相がクロック信号CLK_SEF_Tの位相に一致しているときの一定時間Tfixに時間長tdを加算し、その加算結果Tfix+td(=Tfix_diff)をトータル時間Ttotal_diff=τ1+Tfix_diff+τ2から減算して受信機30との間でデータが往復する往復時間τ1+τ2を演算する。その後、コントローラ210Bは、往復時間τ1+τ2に基づいて、コントローラ210と同じ方法によって受信機30までの距離を演算する。
【0185】
なお、送信機10Aのコントローラ210Bが受信機30から受信した時間長tdを一定時間Tfixに加算し、その加算結果をトータル時間Ttotal_diff=τ1+Tfix_diff+τ2から減算することは、クロック信号CLK_SEF_Rの位相がクロック信号CLK_SEF_Tの位相に一致してときの受信機30における応答時間(SIFS)に受信機30において計測された応答時間(SIFS_diff)が一致するように、時間長tdに基づいて、受信機30において計測された応答時間SIFS_diffを含む一定時間Tfix_diffを調整し、その調整後の一定時間を時間τ1+Tfix+τ2(=トータル時間)から減算して往復時間τ1+τ2を演算することに相当する。その理由は、[送受信機間のの距離を正確に計測する他の方法1]において説明したとおりである。
【0186】
図16は、図15に示すキャリア検出器180Cにおける位相差θdを検出する方法を説明するための図である。受信機30において生成されたクロック信号CLK_SEF_Rの位相が送信機10Aにおいて生成されたクロック信号CLK_SEF_Tの位相とずれているために、受信機30が受信した受信データDARRの位相がクロック信号CLK_SEF_Rの位相とずれた場合(図16の(a)参照)、送信機10Aにおいて受信データDATRを安定して受信し始めるタイミング(SFDの終了位置)t_SFDは、送信機10Aにおいて生成されたクロック信号CLK_SEF_Tに同期したサンプリングタイミングとずれる。
【0187】
受信機30における位相差θd1が反映された応答時間SIFS_diffが受信機30において計測され、クロック信号CLK_SEF_Tに対して位相がずれたクロック信号CLK_SEF_Rに同期してデータが受信機30から送信機10Aへ送信されるからである。
【0188】
その結果、タイミングt_SFDは、サンプリングタイミングST2で検出され、クロック信号CLK_SEF_Rの位相がクロック信号CLK_SEF_Tの位相に対してずれていない場合に比べ、位相差θd1に相当する時間td(=θd/ω)だけ遅れる。
【0189】
そこで、送信機10Aのキャリア検出器180Cは、位相差θd1をキャリア検出器180Aと同じ方法によって検出する。そして、キャリア検出器180Cは、その検出した位相差θdをコントローラ210Bへ出力する。
【0190】
これによって、受信機30側で位相ずれを調整しなくても、送信機10Aにおいて受信機30におけるクロック信号CLK_SEF_Rの位相ずれを調整して受信機30との距離を正確に計測できる。
【0191】
図17は、実施の形態2における送信機と受信機との間の通信距離を決定する動作を説明するための更に他のフローチャートである。図17に示すフローチャートは、図5に示すフローチャートのステップS10をステップS9A,S10Aに代えたものであり、その他は、図5に示すフローチャートと同じである。
【0192】
送信機10Aのコントローラ210Bは、データDATTの送信を終了したタイミングt1からデータDATRを安定して受信し始めたタイミングt10までのトータル時間Ttotal_diff=τ1+Tfix_diff+τ2(図11参照)を計測する(ステップS9)。そして、キャリア検出器180Cは、上述した方法によって、送信機10Aにおいて生成されたクロック信号CLK_SEF_Tの位相と受信機30からの受信データを安定して受信し始めるタイミングとの位相差θdを検出し、その検出した位相差θdをコントローラ210Bへ出力する。
【0193】
コントローラ210Bは、位相差θdを時間長td(=θd/ω)に変換する(ステップS9A)。そして、コントローラ210Bは、一定時間Tfixに時間長tdを加算し、その加算結果Tfix+td(=Tfix_diff)をトータル時間Ttotal_diff=τ1+Tfix_diff+τ2から減算して往復時間τ1+τ2を演算する。その後、コントローラ210Bは、往復時間τ1+τ2の半分(τ1+τ2)/2に光速cを乗算して送信機10Aと受信機30との間の通信距離を決定する(ステップS10A)。
【0194】
これにより、一連の動作は終了する。
【0195】
なお、実施の形態2におけるデータの変調方式は、QPSKに限らず、CCK(Complementary Code Keying)およびOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)等であってもよい。
【0196】
上述したように、実施の形態2においては、受信機において生成されたクロック信号の位相が送信機において生成されたクロック信号の位相に対してずれたことに起因して発生するデータの位相とサンプリングタイミングとの位相差を検出し、その検出した位相差に基づいて、受信機におけるクロック信号の位相を調整し、またはデータが受信機へ送信されてから送信機によって受信されるまでのトータル時間を調整してデータが送信機と受信機との間で往復する往復時間を正確に計測することを特徴とする。
【0197】
この特徴により、送信機において生成されたクロック信号の位相に対して受信機において生成されたクロック信号の位相がずれても、送信機と受信機との間の距離を正確に計測できる。
【0198】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0199】
この発明は、2つの通信端末間の通信距離を正確に測定可能な通信システムに適用される。
【図面の簡単な説明】
【0200】
【図1】この発明の実施の形態1による通信システムの概略ブロック図である。
【図2】図1に示す送信機の構成を示す概略ブロック図である。
【図3】送信データ及び受信データのタイミングチャートである。
【図4】送信機が受信機からのデータを安定して受信し始めるタイミングを検出する方法を説明するための図である。
【図5】送信機と受信機との間の通信距離を決定する動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】通信の空き時間と通信距離との関係を示す図である。
【図7】送信機が生成したクロック信号の位相に対して受信機が生成したクロック信号の位相がずれている場合の受信信号のサンプリングタイミングの変化を示す図である。
【図8】実施の形態2による受信機の構成を示す概略ブロック図である。
【図9】送信機において生成されたクロック信号の位相に対する受信機において生成されたクロック信号の位相差を検出する方法を説明するための図である。
【図10】QPSKによって変調されたデータの信号空間図である。
【図11】送信データ及び受信データの他のタイミングチャートである。
【図12】実施の形態2における送信機と受信機との間の通信距離を決定する動作を説明するためのフローチャートである。
【図13】実施の形態2による受信機の構成を示す他の概略ブロック図である。
【図14】実施の形態2における送信機と受信機との間の通信距離を決定する動作を説明するための他のフローチャートである。
【図15】実施の形態2による送信機の構成を示す概略ブロック図である。
【図16】図15に示すキャリア検出器における位相差を検出する方法を説明するための図である。
【図17】実施の形態2における送信機と受信機との間の通信距離を決定する動作を説明するための更に他のフローチャートである。
【符号の説明】
【0201】
10,10A 送信機、20 無線通信空間、30,30A,30B 受信機、100 通信システム、110 アンテナ、120,240 選択器、121,122,241,242 端子、123,243 スイッチ、130,290 増幅器、140,280 ミキサー、150,270 ローパスフィルタ、160 復調器、170 クロック調整器、180,180A,180B,180C キャリア検出器、190 A/D変換器、200 カウンタ、210,210A,210B コントローラ、220 水晶発振器、230 クロック発生器、250,250A 1/N分周器、260 変調器。
【技術分野】
【0001】
この発明は、通信システムに関し、特に、2つの通信端末間の通信距離を測定可能な通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の無線LAN(Local Area Network)システムにおいては、物理層のプロトコルとしてCDMA(Code Division Multiple Access:符号分割多重接続)方式が用いられ、データリンク層における媒体アクセス制御方式としてCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)方式が用いられている。
【0003】
このCSMA/CA方式は、他の端末がパケットを送信中であるか否か、自分宛てのパケットが送信されているか否かを常に監視することにより通信の衝突を回避する方式である(非特許文献1)。即ち、各端末は、ネットワークが一定時間以上継続して空いていることを確認した後、データを送信する。
【0004】
このように、従来の無線LANシステムにおいては、CSMA/CA方式を用いてデータの通信が行なわれている。
【非特許文献1】小泉著,「図解でわかるデータ通信のすべて」,株式会社日本実業出版社,1999年11月20日,p.272.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の無線LANシステムにおいては、2つの端末間の通信距離を測定することができないという問題があった。また、通信距離の測定の対象となる端末が通信距離を測定する端末から遠く離れた場合、通信距離を正確に測定することが困難であるという問題もあった。
【0006】
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、2つの通信端末間の通信距離を正確に測定可能な通信システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明によれば、通信システムは、無線通信空間に配置される2つの通信端末間の通信距離を測定可能な通信システムであって、送信機と受信機とを備える。送信機は、無線通信空間を介したデータの送信を完了する。受信機は、送信機からのデータを無線通信空間を介して受信し、その受信したデータに対する応答のためのデータを無線通信空間を介して送信機へ送信する。そして、送信機及び受信機は、基準クロックに同期してデータを送受信する。また、送信機は、受信機へのデータの送信を完了する第1のタイミングと受信機からのデータを安定して受信し始める第2のタイミングとの間のトータル時間を計測し、その計測したトータル時間に基づいて受信機までの通信距離を決定する。
【0008】
好ましくは、第2のタイミングは、フレームの開始を示す信号の受信終了タイミングである。
【0009】
好ましくは、フレームの開始を示す信号は、スタートフレームデリミタである。
【0010】
好ましくは、受信機は、送信機からの前記データの受信完了後、応答時間経過後にデータを送信機へ送信する。そして、送信機は、応答時間を含む一定時間をトータル時間から減算してデータが受信機との間で往復する往復時間を演算し、その演算した往復時間に基づいて受信機までの通信距離を決定する。
【0011】
好ましくは、データは、先頭から同期信号部、フレーム開始部およびフレーム部を順次含む。そして、一定時間は、応答時間と、同期信号部の検出時間と、フレーム開始部の検出時間との和である。
【0012】
好ましくは、受信機は、送信機から受信したデータに基づいて、送信機において生成された基準クロック信号を推定し、その推定した基準クロック信号に基づいて応答時間を決定してデータを送信機へ送信する。
【0013】
好ましくは、送信機は、受信機との通信において、受信機から受信したデータに基づいて受信機において生成された第1の基準クロック信号を推定し、自己が生成した第2の基準クロック信号の位相を推定した第1の基準クロック信号の位相と比較し、第2の基準クロック信号の位相が第1の基準クロック信号の位相とずれているとき、受信機との通信距離の変化を測定する。
【0014】
好ましくは、受信機は、送信機から受信したデータの位相と自己が生成した第1の基準クロック信号の位相との位相差を検出し、その検出した位相差に基づいて第1の基準クロック信号の位相を送信機において生成された第2の基準クロック信号の位相に一致させて応答時間を計測し、応答時間の計測後、データを送信機へ送信する。送信機は、応答時間を含む一定時間をトータル時間から減算してデータが受信機との間で往復する往復時間を演算し、その演算した往復時間に基づいて受信機までの通信距離を決定する。
【0015】
好ましくは、受信機は、送信機から受信したデータの位相と自己が生成した第1の基準クロック信号の位相との位相差を検出し、その検出した位相差を時間長に変換するとともに、第1の基準クロック信号に同期して第1の応答時間を計測し、第1の応答時間の計測後、データおよび時間長を送信機へ送信する。送信機は、自己が生成した第2の基準クロック信号の位相に第1の基準クロック信号の位相が一致しているときの受信機における第2の応答時間に第1の応答時間が一致するように時間長に基づいて第1の応答時間を含む一定時間を調整し、その調整後の一定時間をトータル時間から減算してデータが受信機との間で往復する往復時間を演算し、その演算した往復時間に基づいて受信機までの通信距離を決定する。
【0016】
好ましくは、送信機は、受信機から受信したデータの位相と自己が生成した第1の基準クロック信号の位相との位相差を検出し、その検出した位相差を時間長に変換するとともに、受信機において生成された第2の基準クロック信号の位相が第1の基準クロック信号の位相に一致しているときの受信機における第1の応答時間に第2の基準クロックに同期して計測された受信機の第2の応答時間が一致するように第2の応答時間を含む一定時間を調整し、その調整後の一定時間をトータル時間から減算してデータが受信機との間で往復する往復時間を演算し、その演算した往復時間に基づいて受信機までの通信距離を決定する。
【発明の効果】
【0017】
この発明による通信システムにおいては、データが送信機と受信機との間で往復する往復時間だけ長くなる送信機と受信機間での通信の空き期間を計測して送信機と受信機との間の通信距離が決定される。そして、往復時間の計測は、送信機が受信機へデータを送信し終わる第1のタイミングと、送信機が受信機からのデータを安定して受信し始める第2のタイミングとの間で行なわれる。
【0018】
従って、この発明によれば、送信機と受信機間での通信の空き期間を利用して送信機と受信機との間の通信距離を正確に決定できる。また、受信機が送信機から遠く離れても送信機と受信機との間の通信距離を正確に決定できる。
【0019】
また、この発明による通信システムにおいては、送信機における基準クロック信号の位相が受信機における基準クロック信号の位相とずれた場合、送信機および受信機のいずれかが位相ずれを調整してデータが送信機と受信機との間で往復する往復時間が算出される。
【0020】
従って、この発明によれば、送信機における基準クロック信号の位相が受信機における基準クロック信号の位相とずれても、送信機と受信機との距離を正確に決定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0022】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1による通信システムの概略ブロック図である。通信システム100は、送信機10と、受信機30とを備える。送信機10及び受信機30は、無線通信空間20に配置される。そして、送信機10及び受信機30は、無線通信空間20を介してCSMA/CA方式により相互にデータ通信を行なう。
【0023】
以下においては、送信機10は、受信機30との通信距離を測定する測定機であり、受信機30は、被測定機であるとして説明する。
【0024】
送信機10は、無線通信空間20における通信していない期間であるIFS(Interframe Space)を利用して、例えば、2.4GHzのキャリア周波数でデータを無線通信空間20を介して受信機30へ送信する。そして、送信機10は、受信機30へのデータの送信が完了したタイミングと、受信機30からのデータを安定して受信し始めるタイミングとの間の時間を計測し、その計測した時間に基づいて、後述する方法によって受信機30までの通信距離を決定する。なお、送信機10が受信機30からのデー
タを安定して受信し始めるタイミングについては、後に詳細に説明する。
【0025】
受信機30は、送信機10からのデータを無線通信空間20を介して受信し、データの受信完了後、一定時間が経過するとデータを無線通信空間20を介して送信機10へ送信する。
【0026】
図2は、図1に示す送信機10の構成を示す概略ブロック図である。送信機10は、アンテナ110と、選択器120,240と、増幅器130,290と、ミキサー140,280と、ローパスフィルタ150,270と、復調器160と、クロック調整器170と、キャリア検出器180と、A/D変換器190と、カウンタ200と、コントローラ210と、水晶発振器220と、クロック発生器230と、1/N分周器250と、変調器260とを含む。
【0027】
アンテナ110は、無線通信空間20を介して電波を受信し、その受信した電波を選択器120へ送信する。また、アンテナ110は、選択器120からの電波を無線通信空間20へ送信する。
【0028】
選択器120は、端子121,122とスイッチ123とを含む。端子121は、増幅器130の入力に接続され、端子122は、増幅器290の出力に接続される。スイッチ123は、アンテナ110に接続される。選択器120は、コントローラ210からの信号SLT1に基づいてスイッチ123を端子121と端子122との間で切換えることによりアンテナ110を増幅器130の入力または増幅器290の出力と接続する。より具体的には、選択器120は、コントローラ210からのH(論理ハイ)レベルの信号SLT1に応じてスイッチ123を端子121に接続し、コントローラ210からのL(論理ロー)レベルの信号SLT1に応じてスイッチ123を端子122に接続する。
【0029】
増幅器130は、アンテナ110が受信した受信電波を選択器120を介して入力し、その入力した受信電波を増幅してミキサー140へ出力する。ミキサー140は、増幅器130からの受信電波と、クロック調整器170からのクロック信号CLK_PATとを混合してローパスフィルタ150へ出力する。
【0030】
ローパスフィルタ150は、ミキサー140からの電波の高周波ノイズを除去してベースバンド信号を復調器160及びキャリア検出器180へ出力する。復調器160は、ベースバンド信号の周波数ずれ信号を検出し、その検出した周波数ずれ信号をクロック調整器170及びA/D変換器190へ出力する。また、復調器160は、ベースバンド信号を復調し、その復調したデータDATAをコントローラ210へ出力する。
【0031】
クロック調整器170は、復調器160からの周波数ずれ信号に応じて通信の相手側のキャリア周波数を推定し、その推定したキャリア周波数を有するクロック信号CLK_PATを生成してミキサー140及び選択器240へ出力する。キャリア検出器180は、ローパスフィルタ150からのベースバンド信号に基づいて、データの受信を終了したことを検出し、データの受信を終了したことを示す信号DETFを生成してコントローラ210へ出力する。
【0032】
A/D変換器190は、復調器160からの周波数ずれ信号をアナログ信号からデジタル信号に変換してデータFSHTをコントローラ210へ出力する。カウンタ200は、コントローラ210から信号DETS及び信号DTFをそれぞれ端子GTE1,GTE2に受け、クロック発生器230からクロック信号CLK_SEFを端子CLKINに受ける。カウンタ200は、端子GTE2に信号DTFを受けると、端子CLKINに受けたクロック信号CLK_SEFの成分個数のカウントを開始し、端子GTE1に信号DETSを受けると、カウントを終了する。そして、カウンタ200は、カウント値CNTを端子Qからコントローラ210へ出力する。
【0033】
コントローラ210は、送信機10がデータを受信するとき、Hレベルの信号SLT1を生成して端子SEL1から選択器120へ出力し、送信機10がデータを送信するときLレベルの信号SLT1を生成して端子SEL1から選択器120へ出力する。
【0034】
また、コントローラ210は、送信機10がデータを受信するとき、Hレベルの信号SLT2を生成して端子SEL2から選択器240へ出力し、送信機10がデータを送信するとき、Lレベルの信号SLT2を生成して端子SEL2から選択器240へ出力する。
【0035】
更に、コントローラ210は、キャリア検出器180から信号DETFを端子CDETに受けると、1/N分周器250からの分周クロック信号CLK_Bの成分個数をカウントすることにより一定時間を計測する。そして、コントローラ210は、一定時間が経過するとデータを端子TDAから変調器260へ出力する。
【0036】
更に、コントローラ210は、データの送信が終了すると、データの送信が終了したことを示す信号DTFを生成して端子TFHからカウンタ200へ出力する。
【0037】
更に、コントローラ210は、復調器160からのデータDATAを端子RDAに受け、その受けたデータDATAに基づいて、後述する方法によってデータDATAを安定して受信し始めるタイミングを検出し、データDATAを安定して受信し始めたことを示す信号DETSを生成して端子RDSからカウンタ200へ出力する。
【0038】
更に、コントローラ210は、IFS終了後のデータ通信においてA/D変換器190からデータFSHTを端子RDIFに受けると、通信の相手が移動していることを検知し、IFSにおける通信の相手との通信距離の変化を後述する方法によって測定する。
【0039】
更に、コントローラ210は、端子RDAから受けたデータDATAを端子HOSTIFを介してパーソナルコンピュータ(図示せず)へ送信する。
【0040】
水晶発振器220は、所定の周期信号を発生してクロック発生器230へ出力する。クロック発生器230は、水晶発振器220からの周期信号に基づいてクロック信号CLK_SEFを発生し、その発生したクロック信号CLK_SEFをカウンタ200及び選択器240へ出力する。
【0041】
選択器240は、端子241,242とスイッチ243とを含む。端子241は、クロック調整器170に接続される。端子242は、クロック発生器230に接続される。スイッチ243は、1/N分周器250及びミキサー280に接続される。そして、選択器240は、コントローラ210からHレベルの信号SLT2を受けるとスイッチ243を端子241に接続し、クロック調整器170からのクロック信号CLK_PATを1/N分周器250及びミキサー280へ出力する。また、選択器240は、コントローラ210からLレベルの信号SLT2を受けるとスイッチ243を端子242に接続し、クロック発生器230からのクロック信号CLK_SEFを1/N分周器250及びミキサー280へ出力する。
【0042】
1/N分周器250は、選択器240からのクロック信号CLK_PATまたはCLK_SEFをN分の1に分周し、その分周した分周クロック信号CLK_Bをコントローラ210へ出力する。
【0043】
変調器260は、コントローラ210からのデータを所定の変調周波数によって変調し、その変調したデータをローパスフィルタ270へ出力する。ローパスフィルタ270は、変調器260からの変調データをベースバンド信号に変換してミキサー280へ出力する。
【0044】
ミキサー280は、ローパスフィルタ270からのベースバンド信号と選択器240からのクロック信号CLK_PATまたはCLK_SEFとを混合して増幅器290へ出力する。増幅器290は、ミキサー280の出力を増幅して選択器120へ出力する。
【0045】
なお、図1に示す受信機30も、図2に示す送信機10と同じ構成からなる。
【0046】
図3は、送信データ及び受信データのタイミングチャートである。以下、送信機10が受信機30との間の通信距離を決定する方法について説明する。図3においては、データDATTは、送信機10が無線通信空間20を介して受信機30へ送信するデータを表わし、データDARRは、受信機30が無線通信空間20を介して送信機10から受信するデータを表わし、データDARTは、受信機30が無線通信空間20を介して送信機10へ送信するデータを表わし、データDATRは、送信機10が無線通信空間20を介して受信機30から受信するデータを表わす。
【0047】
CSMA/CA方式においては、送信機10は、1つのパケットPKT_n−1(nは自然数)を送信すると、SIFS(Short Interframe Spacing)を含む待ち時間τ1+SIFS+τ2の後、肯定応答を受信する。そして、送信機10は、肯定応答を受信した後、DIFS(Distributed Interframe Spacing)という待ち時間と、BACK_OFFという待ち時間とが経過した後に、次のパケットPKT_nを送信する。
【0048】
この発明においては、送信機10は、SIFSという無線通信空間20において通信していない期間を利用してデータ(1つのパケット)が受信機30との間で往復する時間を計測し、その計測した往復時間に基づいて受信機30との間の通信距離を決定する。
【0049】
送信機10は、データDATTを無線通信空間20を介して受信機30へ送信し始め、タイミングt1でデータDATTの送信を終了する。そして、受信機30は、無線通信空間20を介して送信機10からのデータDARRを受信し始め、送信機10におけるデータDATTの送信終了がタイミングt2で受信機30へ伝搬される。即ち、データが無線通信空間20を介して送信機10から受信機30へ伝搬される時間は、τ1である。
【0050】
受信機30は、送信機10からのデータDARRの受信を終了した後、一定時間SIFSが経過するまで待機し、一定時間SIFSが経過するタイミングt3で無線通信空間20を介してデータDARTの送信機10への送信を開始する。そして、送信機10は、無線通信空間20を介して受信機30からのデータDATRを受信し始め、受信機30におけるデータDARTの送信開始がタイミングt4で送信機10へ伝搬される。その後、送信機10は、後述する方法によってデータDATRを安定して受信し始めるタイミングt6、即ち、フレーム開始部の終了位置を検出する。
【0051】
受信機30におけるデータDARTの送信開始が送信機10へ伝搬されるタイミングは、タイミングt4であるので、データが受信機30から送信機10へ伝搬される時間は、タイミングt3からタイミングt4までの時間τ3であるが、この発明においては、タイミングt3からタイミングt4までの時間τ3をデータが受信機30から送信機10へ伝搬される時間とするのではなく、タイミングt5と送信機10がデータDATRを安定して受信し始めるタイミングt6との間の時間τ2をデータが受信機30から送信機10へ伝搬される時間とする。即ち、データのフレーム開始部SFDの終了位置が無線通信空間20を介して受信機30から送信機10へ伝搬される時間が、データが受信機30から送信機10へ伝搬される時間τ2となる。
【0052】
なお、タイミングt5からタイミングt6までの時間τ2をデータが受信機30から送信機10へ伝搬される時間とする理由については後述する。
【0053】
送信機10のカウンタ200は、上述したように、端子GTE2に信号DTFを受けるとクロック信号CLK_SEFの成分個数をカウントし始め、端子GTE1に信号DETSを受けるとクロック信号CLK_SEFの成分個数のカウントを停止する。つまり、カウンタ200は、タイミングt1からタイミングt6までの間におけるクロック信号CLK_SEFの成分個数をカウントする。
【0054】
そして、カウント値CNTにクロック信号CLK_SEFの周期長を乗算すれば、タイミングt1からタイミングt6までのトータル時間Ttotalが得られる。その結果、次式が成立する。
【0055】
Ttotal=τ1+Tfix+τ2・・・(1)
一定時間Tfixは、上述したようにコントローラ210によって計測されるので、トータル時間Ttotalから一定時間Tfixを減算すると、τ1+τ2が得られる。このτ1+τ2は、データが送信機10と受信機30との間を往復する往復時間である。
【0056】
なお、受信機30において計測される一定時間Tfixは、予め送信機10と受信機30との間で次式によって決定されており、送信機10のコントローラ210は、決定された一定時間Tfixを保持している。従って、送信機10は、式(1)に基づいて往復時間τ1+τ2を容易に演算できる。
【0057】
なお、一定時間Tfixは、次式により決定される。
【0058】
Tfix=SIFS+SYNC+SFD・・・(2)
式(2)より、一定時間Tfixは、SIFS(受信機30の応答時間)と、同期信号部SYNCの検出時間と、フレーム開始部SFDの検出時間との和として決定される。
【0059】
受信機30が移動を停止しているとき、送信機10におけるデータの送信終了が受信機30へ伝搬される伝搬時間τ1は、受信機30におけるデータの送信開始が送信機10へ伝搬される伝搬時間τ2と等しいので、往復時間τ1+τ2の半分(τ1+τ2)/2が送信機10と受信機30との間のデータの伝搬時間になる。
【0060】
従って、送信機10のコントローラ210は、時間(τ1+τ2)/2に光速cを乗算することにより送信機10と受信機30との間の通信距離を決定する。
【0061】
図3から明らかなように、一定時間Tfixは、固定値であるので、トータル時間Ttotalは、データの伝搬時間τ1+τ2だけ長くなる。
【0062】
従って、この発明は、トータル時間Ttotalが送信機10と受信機30との間のデータの伝搬時間τ1+τ2だけ長くなることを利用して送信機10と受信機30との間の通信距離を決定することを特徴とする。
【0063】
図4は、送信機10が受信機30からのデータDATAを安定して受信し始めるタイミングt6を検出する方法を説明するための図である。送信機10と受信機30との間で送受信されるデータDATAであるパケットPKTは、同期信号部SYNCと、フレーム開始部SFDと、フレーム部FRMとからなる。同期信号部SYNCは、パケットPKTの先頭に設けられる。フレーム開始部SFDは、同期信号部SYNCに続いて設けられる。フレーム部FRMは、フレーム開始部SFDに続いて設けられる。
【0064】
同期信号部SYNCは、送信機10と受信機30との間でデータDATAを送受信するときの同期を取るためのデータを配置するフィールドである。フレーム開始部SFDは、スタートフレームデリミタ(Start Frame Delimiter)と呼ばれ、フレーム部FRMの開始を示すフィールドである。そして、フレーム開始部SFDは、例えば、[10101011]の8ビットパターンからなる。フレーム部FRMは、送受信の対象となるデータを配置するフィールドである。
【0065】
送信機10は、上述した構成からなるパケットPKTをタイミングt1で受信機30へ送信し終わる。そして、送信機10は、タイミングt4で受信機30からパケットPKTを受信し始める。
【0066】
その結果、送信機10は、タイミングt4からタイミングt6までの期間、パケットPKTの同期信号部SYNCおよびフレーム開始部SFDを受信する。同期信号部SYNCを受信している期間、送信機10が受信したデータは不連続であり、送信機10の受信回路(増幅器130、ミキサー140、復調器160、キャリア検出器180およびコントローラ210)は同調が取れておらず、利得が不安定であり、更に、同期データも復調不可能である。
【0067】
しかし、同期信号部SYNCの受信を継続するに従って、即ち、タイミングt6に近づくに従って徐々にデータが連続し、利得も安定し始め、同期データも復調可能になる。そして、フレーム開始部SFDの受信を終了するタイミングt6では、送信機10の受信回路(増幅器130、ミキサー140、復調器160、キャリア検出器180およびコントローラ210)は同調がとれている。
【0068】
従って、この発明においては、フレーム開始部SFDの受信を終了するタイミングt6を送信機10が受信機30からのデータを安定して受信し始めるタイミングとする。
【0069】
そして、送信機10のコントローラ210は、復調器160からデータDATAを受け、その受けたデータDATAに基づいてフレーム開始部SFDの終了位置を検出する。より具体的には、フレーム開始部SFDは、上述したように[10101011]の8ビットパターンからなるので、コントローラ210は、この8ビットパターンの最後の2ビットである[11]をデータDATAから検出することにより、フレーム開始部SFDの終了位置を検出する。
【0070】
コントローラ210は、フレーム開始部SFDの終了位置を検出すると、信号DETSを生成して端子RDSからカウンタ200へ出力する。
【0071】
このように、パケットPKTの同期信号部SYNCを受信している期間、送信機10の受信回路(増幅器130、ミキサー140、復調器160、キャリア検出器180およびコントローラ210)は同調が取れず、利得が不安定であり、更に、同期データも復調不可能である。そして、受信機30が送信機10から遠く離れている場合、受信機30からのデータの受信は、同期信号部SYNCを受信する期間、一層、不安定になる。
【0072】
しかし、受信機30が送信機10から遠く離れていても、送信機10がフレーム開始部SFDの終了位置を検出するタイミングt6では、送信機10の受信回路(増幅器130、ミキサー140、復調器160、キャリア検出器180およびコントローラ210)は同調が取れているので、送信機10は受信機30からのデータを安定して受信できる。
【0073】
従って、この発明においては、タイミングt5からタイミングt6までの時間τ2をデータが受信機30から送信機10へ伝搬する時間とすることにしたものである。
【0074】
図5は、送信機10と受信機30との間の通信距離を決定する動作を説明するためのフローチャートである。一連の動作が開始されると、送信機10のコントローラ210は、Lレベルの信号SLT1を生成して選択器120へ出力し、Lレベルの信号SLT2を生成して選択器240へ出力する。そして、選択器120は、Lレベルの信号SLT1に応じてスイッチ123を端子122に接続する。また、選択器240は、Lレベルの信号SLT2に応じてスイッチ243を端子242に接続する。
【0075】
一方、受信機30のコントローラ210は、Hレベルの信号SLT1を生成して選択器120へ出力し、Hレベルの信号SLT2を生成して選択器240へ出力する。そして、選択器120は、Hレベルの信号SLT1に応じてスイッチ123を端子121に接続する。また、選択器240は、Hレベルの信号SLT2に応じてスイッチ243を端子241に接続する。
【0076】
送信機10のコントローラ210は、データを端子TDAから変調器260へ出力する。変調器260は、コントローラ210からのデータを所定の変調周波数によって変調してローパスフィルタ270へ出力する。ローパスフィルタ270は、変調データの高周波ノイズを除去してベースバンド信号をミキサー280へ出力する。
【0077】
また、送信機10の水晶発振器220は、所定の周期信号を発生してクロック発生器230へ出力する。クロック発生器230は、周期信号に基づいてクロック信号CLK_SEFを発生してカウンタ200及び選択器240へ出力する。そして、選択器240は、クロック信号CLK_SEFを1/N分周器250及びミキサー280へ出力する。ミキサー280は、ローパスフィルタ270からのベースバンド信号と選択器240からのクロック信号CLK_SEFとを混合して増幅器290へ出力する。つまり、ミキサー280は、ベースバンド信号をクロック信号CLK_SEFに同期させて増幅器290へ出力する。増幅器290は、ミキサー280の出力を増幅して選択器120へ出力する。選択器120は、増幅器290の出力をアンテナ110を介して送信する。これにより、データの受信機30への送信が開始される(ステップS1)。
【0078】
その後、データが無線通信空間20を介して受信機30へ送信され、送信機10におけるデータの送信が終了すると(ステップS2)、送信機10のコントローラ210は、信号DTFを生成してカウンタ200へ出力する。そして、カウンタ200は、端子GTE2に信号DTFを受けると、クロック信号CLK_SEFの成分個数のカウントを開始する(ステップS3)。
【0079】
送信機10から送信されたデータは、無線通信空間20を介して受信機30へ送信される。受信機30のアンテナ110は、無線通信空間20を介して受信したデータを選択器120を介して増幅器130に供給する。増幅器130は、選択器120から供給されたデータを増幅してミキサー140へ出力する。ミキサー140は、増幅器130の出力とクロック調整器170からのクロック信号CLK_PATとを混合してローパスフィルタ150へ出力する。つまり、ミキサー140は、ベースバンド信号をクロック信号CLK_PATに同期させてローパスフィルタ150へ出力する。ローパスフィルタ150は、ミキサー140の出力から高周波ノイズを除去してベースバンド信号を復調器160及びキャリア検出器180へ出力する。
【0080】
復調器160は、ベースバンド信号の周波数ずれ信号を検出し、その検出した周波数ずれ信号をクロック調整器170及びA/D変換器190へ出力する。また、復調器160は、ベースバンド信号を復調し、その復調したデータDATAをコントローラ210へ出力する。クロック調整器170は、復調器160からの周波数ずれ信号に応じて送信機10のキャリア周波数を推定し、その推定したキャリア周波数を有するクロック信号CLK_PATを生成してミキサー140及び選択器240へ出力する。これにより、受信機30は、通信の相手である送信機10において生成されたクロック信号CLK_SEFに同期してデータDATAを受信する(ステップS4)。
【0081】
受信機30のキャリア検出器180は、ローパスフィルタ150からのベースバンド信号に基づいて、データの受信を終了したことを検出し(ステップS5)、データの受信を終了したことを示す信号DETFを生成してコントローラ210へ出力する。
【0082】
一方、受信機30のコントローラ210は、Lレベルの信号SLT1を生成して選択器120へ出力する。選択器120は、Lレベルの信号SLT1に応じてスイッチ123を端子122に接続する。また、選択器240は、クロック調整器170からのクロック信号CLK_PATを1/N分周器250及びミキサー280へ出力する。1/N分周器250は、クロック信号CLK_PATをN分の1に分周し、分周クロック信号CLK_Bをコントローラ210へ出力する。
【0083】
そして、コントローラ210は、キャリア検出器180からの信号DETFを端子CDETに受けると、端子MCLKに受けた分周クロック信号CLK_Bの成分個数をカウントして一定時間SIFSを計測する。つまり、受信機30は、データの送信を一定時間SIFSだけ待機する(ステップS6)。
【0084】
このように、受信機30は、クロック調整器170によって推定された送信機10のキャリア周波数を有するクロック信号CLK_PATに基づいて一定時間SIFSを計測する。
【0085】
一定時間SIFSが経過すると、受信機30のコントローラ210は、データを端子TDAから変調器260へ出力する。そして、変調器260は、データを所定の変調周波数によって変調する。ローパスフィルタ270は、変調データの高周波ノイズを除去してベースバンド信号をミキサー280へ出力する。ミキサー280は、ローパスフィルタ270からのベースバンド信号と選択器240からのクロック信号CLK_PATとを混合して増幅器290へ出力する。つまり、ミキサー280は、ベースバンド信号をクロック信号CLK_PATに同期させて増幅器290へ出力する。増幅器290は、ミキサー280の出力を増幅して選択器120へ出力する。選択器120は、増幅器290の出力をアンテナ110を介して送信する。これにより、受信機30から送信機10へのデータの送信が開始される(ステップS7)。
【0086】
このように、受信機30は、送信機10からのデータを送信機10におけるキャリア周波数と同じキャリア周波数を有するクロック信号CLK_PATに同期して送受信する。
【0087】
その後、送信機10のコントローラ210は、Hレベルの信号SLT1を生成して選択器120へ出力する。選択器120は、Hレベルの信号SLT1に応じてスイッチ123を端子121に接続する。
【0088】
そして、送信機10のアンテナ110は、無線通信空間20を介して受信したデータを選択器120を介して増幅器130に供給する。増幅器130は、選択器120から供給されたデータを増幅してミキサー140へ出力する。ミキサー140は、増幅器130の出力とクロック調整器170からのクロック信号CLK_PATとを混合してローパスフィルタ150へ出力する。ローパスフィルタ150は、ミキサー140の出力から高周波ノイズを除去してベースバンド信号を復調器160へ出力する。
【0089】
復調器160は、ベースバンド信号を復調し、その復調したデータDATAをコントローラ210へ出力する。そして、コントローラ210は、復調器160から受けたデータDATAに基づいて、上述した方法によってフレーム開始部SFDの終了位置を検出する。これにより、送信機10は、受信機30からのデータDATAの受信を開始する(ステップS8)。
【0090】
そして、コントローラ210は、フレーム開始部SFDの終了位置を検出すると、データの受信を開始したことを示す信号DETSを生成してカウンタ200へ出力する。
【0091】
カウンタ200は、コントローラ210から端子GTE1に信号DETSを受けると、クロック信号CLK_SEFの成分個数のカウントを終了し、カウント値CNTを端子Qからコントローラ210へ出力する。コントローラ210は、端子TAVにカウント値CNTを受けると、分周クロック信号CLK_Bに基づいてクロック信号CLK_SEFの周期長を演算し(送信機10においては、分周クロック信号CLK_Bは、クロック信号CLK_SEFを分周して生成される)、その演算した周期長をカウント値CNTに乗算してトータル時間Ttotalを演算する(ステップS9)。
【0092】
コントローラ210は、トータル時間Ttotalを演算すると、トータル時間Ttotalから一定時間Tfixを減算して往復時間τ1+τ2を演算する。そして、コントローラ210は、往復時間τ1+τ2の半分(τ1+τ2)/2に光速cを乗算して送信機10と受信機30との間の通信距離を決定する(ステップS10)。
【0093】
これにより、一連の動作が終了する。
【0094】
上述したように、受信機30は、通信の相手である送信機10のキャリア周波数を有するクロック信号CLK_PATに基づいて一定時間SIFSを計測する(ステップS6参照)。また、受信機30は、送信機10からのデータを送信機10におけるキャリア周波数と同じキャリア周波数を有するクロック信号CLK_PATに同期して送受信する(ステップS4,S7参照)。
【0095】
従って、受信機30におけるデータの受信終了タイミング、一定時間SIFSの長さ及びデータの送信開始タイミングを送信機10において生成されたクロック信号CLK_SEFに同期して決定することができ、送信機10は、トータル時間Ttotal=τ1+Tfix+τ2を正確に計測できる。その結果、送信機10と受信機30との間の通信距離を正確に決定できる。
【0096】
また、送信機10は、受信機30からのデータDATAに含まれるフレーム開始部SFDの終了位置を検出すると、トータル時間Ttotalの計測を終了するので(ステップS9参照)、トータル時間Ttotalを正確に決定できる。即ち、受信機30が送信機10から遠く離れていても、送信機10は受信機30からのデータの受信を開始するタイミングを正確に決定でき、データが受信機30から送信機10へ伝搬する伝搬時間τ2を正確に決定できる。そして、トータル時間Ttotalを正確に決定できる。
【0097】
その結果、送信機10と受信機30との間の通信距離を正確に決定できる。
【0098】
なお、一定時間TfixをCSMA_CA方式を用いた無線LANシステムにおけるSIFSよりも長いPIFSに設定してもよい。
【0099】
SIFS及びPIFSは、無線LANシステムに接続された各端末にとって固定された一定時間であるので、SIFSまたはPIFSを一定時間Tfixとして用いることにより、送信機10と受信機30との通信距離を正確に決定できる。
【0100】
送信機10は、無線通信空間20において通信していない期間(IFS)を利用して上述した方法によって受信機30との間の通信距離を決定した後、即ち、空き期間の終了後、受信機30との間でデータ通信を行ない、受信機30へ送信したデータの位相が受信機30から受信するデータの位相とずれているか否かを判定する。そして、送信機10は、受信機30へ送信したデータの位相が受信機30から受信するデータの位相とずれているとき、受信機30が移動していると判定し、空き期間における受信機30との通信距離の変化を測定する。
【0101】
より具体的には、送信機10は、上述した方法によってデータを自己が生成したクロック信号CLK_SEFに同期して受信機30へ送信する。そして、受信機30は、送信機10から受信したデータを、自己が生成したクロック信号CLK_SEFに同期して送信機10へ送信する。通常のデータ通信時においては、受信機30は、通信の相手である送信機10において生成されたクロック信号CLK_SEF(=CLK_PAT)ではなく、自己が生成したクロック信号CLK_SEFに同期してデータを送信する。
【0102】
送信機10において生成されたクロック信号CLK_SEFをクロック信号CLK_SEF_Tとし、受信機30において生成されたクロック信号CLK_SEFをクロック信号CLK_SEF_Rとする。また、送信機10がクロック信号CLK_SEF_Tに同期して受信機30へ送信したデータをDATA_Tとし、受信機30がクロック信号CLK_SEF_Rに同期して送信機10へ送信したデータをDATA_Rとする。
【0103】
その結果、送信機10は、データDATA_Tを受信機30へ送信し、データDATA_Rを受信機30から受信する。そして、送信機10は、データDATA_Tの位相がデータDATA_Rの位相とずれているか否かを判定する。
【0104】
即ち、送信機10の復調器160は、受信機30から受信したデータDATA_Rの周波数ずれ信号、つまり、データDATA_Rの位相ずれを検出してA/D変換器190へ出力する。A/D変換器190は、復調器160からの位相ずれをアナログ信号からデジタル信号に変換してデータFSHTをコントローラ210へ出力する。従って、A/D変換器190は、位相ずれのデータFSHTを生成してコントローラ210へ出力する。
【0105】
コントローラ210は、データFSHTを端子RDIFに受けることによりデータDATA_Rに位相ずれが生じていることを検知する。そして、コントローラ210は、データDATA_Rに位相ずれが生じているとき、次の方法により空き期間における受信機30との通信距離の変化を測定する。
【0106】
受信機30が移動を停止しているとき、伝搬時間τ1は伝搬時間τ2と等しいので、トータル時間をTtotal1とすると、データが送信機10と受信機30との間を往復する往復時間は、2τ1=a(=Ttotal1−Tfix)によって表わすことができる。また、受信機30が移動しているとき、トータル時間をTtotal2とすると、データが送信機10と受信機30との間を往復する往復時間は、τ1+τ2=b(=Ttotal2−Tfix)と表わすことができる。
【0107】
従って、この2つの式から|τ1−τ2|=|a−b|となり、空き期間における送信機10と受信機30との間の通信距離の変化は、|a−b|×cとなる。
【0108】
コントローラ210は、受信機30が停止しているときの往復時間aを記憶しており、受信機30が移動していると判定したとき、計測した往復時間bを用いて上記のように通信距離の変化|a−b|×cを演算する。
【0109】
なお、受信機30から受信したデータDATA_Rの位相が受信機30へ送信したデータDATA_Tの位相とずれていると判定することは、受信機30において生成されたクロック信号CLK_SEF_Rの位相が送信機10において生成されたクロック信号CLK_SEF_Tの位相とずれていると判定することに相当する。データDATA_Rは、クロック信号CLK_SEF_Rに同期し、データDATA_Tは、クロック信号CLK_SEF_Tに同期しているからである。
【0110】
なお、一般的には、データを変調する変調周波数は、クロック信号CLK_SEF,CLK_PATのキャリア周波数(搬送周波数)と等しいが、変調周波数がキャリア周波数と異なる場合もあるので、この発明においては、クロック信号CLK_SEF,CLK_PATは、変調周波数及びキャリア周波数のいずれかに基づいて生成されていればよい。
【0111】
図6は、通信の空き時間と通信距離との関係を示す図である。図6において、縦軸は、実測された通信の空き時間を表し、横軸は、実測された通信距離を表す。そして、通信距離は、上述した方法によって測定された送信機10と受信機30との間の通信距離である。
【0112】
図6に示すように、通信の空き時間は、送信機10と受信機30との間の通信距離に応じて長くなる。より具体的には、通信の空き時間は、送信機10と受信機30との間の通信距離が350mまでの範囲において、通信距離に比例して長くなる。
【0113】
上述したように、通信の空き時間Ttotalは、τ1+Tfix+τ2によって表され、送信機10と受信機30との間のデータの伝搬時間τ1+τ2に応じて変化する。そして、伝搬時間τ1+τ2は、送信機10と受信機30との間の通信距離に比例して変化する。その結果、通信の空き時間Ttotalは、送信機10と受信機30との間の通信距離に比例して変化する。
【0114】
従って、実測された通信の空き時間は、データの伝搬時間τ1+τ2が通信距離に応じて長くなったことを反映したものになっている。
【0115】
また、受信機30が送信機10から約350mと遠く離れた場合でも、通信の空き時間は、通信距離に応じて長くなっており、送信機10が受信機30からのデータを受信し始めるタイミングをフレーム開始部SFDの終了位置を検出するタイミングt6とすることによって通信の空き時間を正確に実測できることが解る。
【0116】
なお、この発明においては、送信機10から受信機30へのデータの送信を終了するタイミングt1からフレーム開始部SFDの終了位置を検出するタイミングt6までの時間を計測することは、送信機10から受信機30へのデータの送信を完了する第1のタイミングと、送信機10が受信機30からのデータを安定して受信し始める第2のタイミングとの間のトータル時間を計測することに相当する。
【0117】
また、タイミングt6は、フレーム(フレーム部FRM)の開始を示す信号であるフレーム開始部SFD(=フレームスタートデリミタ)の受信終了タイミングに相当する。
【0118】
[実施の形態2]
実施の形態1においては、送信機10が生成したクロック信号の位相と受信機30が生成したクロック信号の位相とが等しいことを前提として送信機10と受信機30との間の距離を計測する方法について説明した。
【0119】
しかし、実際には、送信機10が生成したクロック信号の位相と受信機30が生成したクロック信号の位相とがずれることもある。このような場合、SIFSが一定にならず、送信機10と受信機30との間の距離を正確に計測できない。
【0120】
図7は、送信機10が生成したクロック信号の位相に対して受信機30が生成したクロック信号の位相がずれている場合の受信信号のサンプリングタイミングの変化を示す図である。
【0121】
受信機30は、受信信号RDを受信し、SIFS経過後、送信信号TDを送信機10へ送信する。この場合、受信機30において生成されたクロック信号の位相が送信機10において生成されたクロック信号の位相に対してずれている場合、SIFSは一定にならない。
【0122】
SIFSは、受信信号RDを受信し終わるタイミングtfと送信信号TDを送信し始めるタイミングtiとの間の時間長に相当する。受信信号RD_Fは、受信信号RDの終わりの部分を示す信号である。
【0123】
クロック信号CLK1〜CLKN(Nは正の整数)の各々は、受信機30において生成されるクロック信号であり、その位相は、送信機10において生成されたクロック信号の位相に対して示されている。従って、図7においては、受信機30において生成されたクロック信号CLK1〜CLKNは、その位相が送信機10において生成されたクロック信号の位相に対して種々変化していることを示している。
【0124】
受信信号RD_Fをクロック信号CLK1に同期してサンプリングしたとき、受信信号RD_Fの終了タイミングtfは、サンプリングタイミングST1によって検出される。また、受信信号RD_Fをクロック信号CLK2に同期してサンプリングしたとき、受信信号RD_Fの終了タイミングtfは、サンプリングタイミングST2によって検出される。更に、受信信号RD_Fをクロック信号CLKNに同期してサンプリングしたとき、受信信号RD_Fの終了タイミングtfは、サンプリングタイミングSTNによって検出される。
【0125】
従って、受信機30において生成されたクロック信号CLK1〜CLKNの位相が送信機10において生成されたクロック信号の位相に対して種々変化すると、受信信号RD_Fの終了タイミングtfの検出タイミングが種々変化し、SIFSは、一定にならない。その結果、送信機10と受信機30との間の距離を正確に測定できない。
【0126】
そこで、この実施の形態2においては、受信機30において生成されたクロック信号の位相が送信機10において生成されたクロック信号の位相に対してずれた場合にも、送信機10と受信機30との間の距離を正確に測定する方法について説明する。
【0127】
図8は、実施の形態2による受信機30Aの構成を示す概略ブロック図である。実施の形態2による受信機30Aは、実施の形態1による受信機30の構成(図2参照)において、キャリア検出器180および1/N分周器250をそれぞれキャリア検出器180Aおよび1/N分周器250Aに代えたものであり、その他は、図2に示す構成と同じである。
【0128】
キャリア検出器180Aは、ローパスフィルタ150から受けたベースバンド信号に基づいて、後述する方法によって、送信機10において生成されたクロック信号CLK_SEF_Tの位相に対する受信機30Aにおいて生成されたクロック信号CLK_SEF_Rの位相差θdを検出するとともに、データの受信を終了したことを検出する。
【0129】
そして、キャリア検出器180Aは、検出した位相差θdを1/N分周器250Aへ出力し、データの受信を終了したことを示す信号DETFを生成してコントローラ210へ出力する。
【0130】
1/N分周器250Aは、選択器240からのクロック信号CLK_PATまたはCLK_SEFをN分の1に分周し、その分周した分周クロック信号CLK_Bの位相をキャリア検出器180Aから受けた位相差θdだけ進めて分周クロック信号CLK_Bの位相を送信機10において生成されたクロック信号CLK_SEF_Tの位相に一致させる。そして、1/N分周器250Aは、その位相を一致させた分周クロック信号CLK_BTをコントローラ210へ出力する。
【0131】
図9は、送信機10において生成されたクロック信号CLK_SEF_Tの位相に対する受信機30Aにおいて生成されたクロック信号CLK_SEF_Rの位相差θdを検出する方法を説明するための図である。
【0132】
受信機30Aは、送信機10から受信データDARRを受信する。そして、受信機30Aのキャリア検出器180Aは、ローパスフィルタ150からの受信データDARRをクロック信号CLK_SEF_R1に同期してサンプリングし、受信データDARRの受信終了をサンプリングタイミングST1において検出する。
【0133】
受信データDARRは、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)によって変調されたデータである。従って、受信機30Aにおいて生成されたクロック信号CLK_SEF_R1の位相が送信機10において生成されたクロック信号CLK_SEF_Tの位相に一致している場合、受信データDARRの受信終了を検出するサンプリングタイミングは、受信データDARRの終了タイミングt_dfに一致する。
【0134】
しかし、実際には、クロック信号CLK_SEF_R1の位相は、クロック信号CLK_SEF_Tの位相とずれているので、受信データDARRの終了を検出するサンプリングタイミングST1は、受信データDARRの終了タイミングt_dfに一致しない。
【0135】
そこで、キャリア検出器180Aは、受信データDARRをsin(ωt+θd)によって表し、sin(ωt+θd)が実際に受信した受信データDARRに一致するように位相差θdを決定する。これにより、キャリア検出器180Aは、位相差θdを検出する。図9においては、位相差θdは、θd1である。
【0136】
キャリア検出器180Aは、位相差θdを検出すると、その検出した位相差θdを1/N分周器250Aへ出力する。1/N分周器250Aは、選択器240からのクロック信号CLK_SEF_R1をN分の1に分周して分周クロック信号CLK_Bを生成し、その生成した分周クロック信号CLK_Bの位相をキャリア検出器180Aから受けた位相差θd1だけ進めて分周クロック信号CLK_BTを生成する。これにより、送信機10において生成されたクロック信号CLK_SEF_Tの位相に一致した分周クロック信号CLK_BTが生成される。
【0137】
受信機30Aにおいて生成されたクロック信号がクロック信号CLK_SEF_R2である場合、キャリア検出器180Aは、上述した方法によって位相差θd2を検出する。そして、1/N分周器250Aは、分周ブロック信号CLK_Bの位相を位相差θd2だけ進めて分周クロック信号CLK_BTを生成する。
【0138】
図10は、QPSKによって変調されたデータの信号空間図である。図10において、横軸は、位相の同相成分Iを表し、縦軸は、位相の直交成分Qを表す。受信機30Aにおいて生成されたクロック信号CLK_SEF_Rの位相が送信機10において生成されたクロック信号CLK_SEF_Tの位相に対してずれていない場合、受信データDARRは、正方形1の4個の頂点に存在する成分SS1〜SS4からなる。
【0139】
しかし、クロック信号CLK_SEF_Rの位相がクロック信号CLK_SEF_Tの位相に対してずれている場合、受信データDARRは、正方形2の4個の頂点に存在する成分SS’1〜SS’4からなる。正方形2の対角線4は、正方形1の対角線3に対してずれている。従って、横軸に対する対角線3の角度と横軸に対する対角線4の角度との差が位相差θdになる。
【0140】
そこで、キャリア検出器180Aは、図10に示す信号空間図を保持しており、送信機10から受信した受信データDARRの成分を信号空間図にプロットして対角線3の角度と対角線4の角度との差を位相差θdとして検出するようにしてもよい。
【0141】
このように、キャリア検出器180Aは、上述した2つの方法のいずれか一方の方法により、送信機10において生成されたクロック信号CLK_SEF_Tの位相に対する受信機30Aにおいて生成されたクロック信号CLK_SEF_Rの位相差θdを検出する。
【0142】
図11は、送信データ及び受信データの他のタイミングチャートである。クロック信号CLK_SEF_Rの位相がクロック信号CLK_SEF_Tの位相に一致している場合、SIFSは、タイミングt2とタイミングt3との間の時間長に等しい。
【0143】
しかし、クロック信号CLK_SEF_Tの位相に対してクロック信号CLK_SEF_Rの位相がずれている場合、SIFSは、タイミングt2とタイミングt7との間の時間長SIFS_diffまで延長される。
【0144】
そうすると、受信機30Aが送信機10へ送信する送信データDARTに含まれるフレーム開始部SFDの終了タイミングであるスタートフレームデリミタのタイミングは、タイミングt5からタイミングt9へずれる。その結果、送信機10が受信機30Aからの受信データDATRを安定して受信し始めるタイミングは、タイミングt6からタイミングt10までずれ、送信機10は、送信データDATTの送信を完了してから受信データDATRを安定して受信し始めるまでの時間τ1+Tfix_diff+τ2を計測する。
【0145】
この場合、タイミングt5からタイミングt9までの時間長は、タイミングt6からタイミングt10までの時間長に等しく、上述した位相差θdに相当する時間長td(=θd/ω)である。また、タイミングt3からタイミングt7までの時間長も、時間長tdに等しい。
【0146】
送信機10は、受信機30Aにおける応答時間を含む一定時間をTfixと把握しているので、時間τ1+Tfix_diff+τ2から一定時間Tfixを減算しても送信機10と受信機30Aとの間の往復時間τ1+τ2を求めることができない。図11から明らかなように、Tfix_diff=Tfix+tdであり、一定時間Tfix_diffは、クロック信号CLK_SEF_Tの位相とクロック信号CLK_SEF_Rの位相との位相差θd(=ωtd)に応じて変化するからである。
【0147】
そこで、上述したように、受信機30Aにおいて、1/N分周器250Aは、キャリア検出器180Aが検出した位相差θd(時間軸においては時間tdに相当)だけ位相を進めて分周クロック信号CLK_BT(送信機10において生成されたクロック信号CLK_SEF_Tの位相に一致するクロック信号)を生成し、コントローラ210は、キャリア検出器180Aから信号DETFを受けると、分周クロック信号CLK_BTの成分個数をカウントして一定時間を計測する。
【0148】
そして、受信機30Aのコントローラ210は、一定時間の計測後、データを送信機10へ送信するので、送信機10は、タイミングt6において受信データDATRを安定して受信し始める。その結果、送信機10が計測する送信データDATTの送信完了から受信データDATRの受信開始までの時間は、τ1+Tfix+τ2となり、送信機10において時間τ1+Tfix+τ2から一定時間Tfixを減算することによって、データが送信機10と受信機30Aとの間を往復する往復時間は、τ1+τ2となる。そうすると、実施の形態1において説明した方法によって送信機10と受信機30Aとの間の距離を正確に計測できる。
【0149】
図12は、実施の形態2における送信機10と受信機30Aとの間の通信距離を決定する動作を説明するためのフローチャートである。図12に示すフローチャートは、図5に示すフリーチャートのステップS6をステップS6A,S6B,S6Cに代えたものであり、その他は、図5に示すフローチャートと同じである。
【0150】
受信機30Aのキャリア検出器180Aは、データの受信を終了したことを検出すると(ステップS5)、上述した方法によって、送信機10におけるクロック信号CLK_SEF_Tの位相と受信機30Aにおけるクロック信号CLK_SEF_Rの位相との位相差θdを検出し(ステップS6A)、その検出した位相差θdを1/N分周器250Aへ出力する。また、キャリア検出器180Aは、データの受信を終了したことを示す信号DETFを生成してコントローラ210へ出力する。
【0151】
1/N分周器250Aは、選択器240からのクロック信号CLK_SEFをN分の1に分周して分周クロック信号CLK_Bを生成し、その生成した分周クロック信号CLK_Bの位相を位相差θdだけ進めて分周クロック信号CLK_BTを生成する(ステップS6B)。そして、1/N分周器250Aは、分周クロック信号CLK_BTをコントローラ210の端子MCLKへ出力する。
【0152】
コントローラ210は、キャリア検出器180Aからの信号DETFを端子CDETに受けると、端子MCLKに受けた分周クロック信号CLK_BTの成分個数をカウントして応答時間SIFSを計測する。つまり、受信機30Aは、分周クロック信号CLK_BTに基づいて、応答時間SIFSだけ待機する(ステップS6C)。
【0153】
その後、実施の形態1において説明したステップS7〜ステップS10が実行され、送信機10と受信機30Aとの間の距離が決定される。
【0154】
[送受信機間の距離を正確に計測する他の方法1]
上記においては、受信機30Aにおいて生成されたクロック信号CLK_SEF_Rの位相と送信機10において生成されたクロック信号CLK_SEF_Tの位相との位相差を受信機30Aにおいて調整することによって送信機10と受信機30Aとの間の距離を正確に計測する方法について説明した。
【0155】
この実施の形態2においては、受信機30Aが検出した位相差θdに相当する時間長tdを送信機10へ送信し、送信機10が時間長tdに基づいて往復時間τ1+τ2を正確に求めるようにしてもよい。
【0156】
この場合、受信機は、図13に示す受信機30Bからなる。図13は、実施の形態2による受信機の構成を示す他の概略ブロック図である。実施の形態2による受信機30Bは、実施の形態1による受信機30の構成(図2参照)において、キャリア検出器180およびコントローラ210をそれぞれキャリア検出器180Bおよびコントローラ210Aに代えたものであり、その他は、図2に示す構成と同じである。
【0157】
キャリア検出器180Bは、ローパスフィルタ150からの受信データに基づいて、キャリア検出器180Aと同じ方法によって位相差θdを検出し、その検出した位相差θdをコントローラ210Aへ出力するとともに、受信データの受信を終了したことを示す信号DETFを生成してコントローラ210Aへ出力する。
【0158】
コントローラ210Aは、キャリア検出器180Bから信号DETFおよび位相差θdを端子CDETに受ける。そして、コントローラ210Aは、位相差θdを時間長td=θd/ωに変換する。また、コントローラ210Aは、端子CDETに信号DETFを受けると、図2に示すコントローラ210と同じ方法によって応答時間SIFS_diffを計測し、応答時間SIFS_diffを計測した後、データDARTおよび時間長tdを変調器260、ローパスフィルタ270、ミキサー280、増幅器290、選択器120およびアンテナ110を介して送信機10へ送信する。
【0159】
この場合、データDARTおよび時間長tdは、受信機30Bにおいて生成されたクロック信号CLK_SEF_Rに同期して送信機10へ送信される。
【0160】
送信機10は、受信機30BからデータDATRおよび時間長tdを受信するとともに、データDATTの送信を終了してからデータDATRを安定して受信し始めるまでの時間τ1+Tfix_diff+τ2(図11参照)を計測する。そして、送信機10は、自己が把握している受信機30Bにおける応答時間を含む一定時間Tfixに受信した時間長tdを加算し、その加算結果Tfix+tdを時間τ1+Tfix_diff+τ2から減算する。
【0161】
この場合、図11から明らかなように、Tfix_diff=Tfix+tdであるので、時間τ1+Tfix_diff+τ2から加算結果Tfix+tdを減算すると、往復時間τ1+τ2が得られる。
【0162】
従って、送信機10は、時間τ1+Tfix_diff+τ2から加算結果Tfix+tdを減算することによって、送信機10と受信機30Bとの間の往復時間τ1+τ2を演算する。
【0163】
その後、送信機10は、実施の形態1において説明した方法により、送信機10と受信機30Bとの間の距離を演算する。
【0164】
なお、送信機10が受信機30Bから受信した時間長tdを一定時間Tfixに加算し、その加算結果を時間τ1+Tfix_diff+τ2から減算することは、クロック信号CLK_SEF_Rの位相がクロック信号CLK_SEF_Tの位相に一致してときの受信機30Bにおける応答時間(SIFS)に受信機30Bにおいて計測された応答時間(SIFS_diff)が一致するように、時間長tdに基づいて、受信機30Bにおいて計測された応答時間SIFS_diffを含む一定時間Tfix_diffを調整し、その調整後の一定時間を時間τ1+Tfix+τ2(=トータル時間)から減算して往復時間τ1+τ2を演算することに相当する。
【0165】
送信機10がクロック信号CLK_SEF_Tに同期して計測した時間τ1+Tfix_diff+τ2から往復時間τ1+τ2を求める場合、送信機10のコントローラ210は、受信機30Bにおけるクロック信号CLK_SEF_Rの位相ずれに相当する時間長tdを時間τ1+Tfix_diff+τ2から減算し、その減算結果τ1+Tfix_diff+τ2−tdから更に一定時間Tfixを減算する。
【0166】
この場合、減算結果τ1+Tfix_diff+τ2−tdは、次式のように変形できる。
【0167】
τ1+Tfix_diff+τ2−td
=τ1+τ2+(Tfix_diff−td)
=τ1+τ2+Tfix・・・・・・・・・・・・(3)
式(3)において、受信機30Bにおいてクロック信号CLK_SEF_Rに同期して測定された応答時間(SIFS_diff)を含む一定時間Tfix_diffから時間長tdを減算することは、クロック信号CLK_SEF_Rの位相がクロック信号CLK_SEF_Tの位相に一致しているときの受信機30Bにおける応答時間(SIFS)を含む一定時間Tfixを求めることに相当するので、一定時間Tfix_diffから時間長tdを減算することは、「クロック信号CLK_SEF_Rの位相がクロック信号CLK_SEF_Tの位相に一致してときの受信機30Bにおける応答時間(SIFS)に受信機30Bにおいて計測された応答時間(SIFS_diff)が一致するように、時間長tdに基づいて、受信機30Bにおいて計測された応答時間SIFS_diffを含む一定時間Tfix_diffを調整する」ことに相当する。
【0168】
そして、調整後の一定時間Tfix=Tfix_diff−tdをトータル時間τ1+τ2+Tfixから減算すると、往復時間τ1+τ2が得られる。
【0169】
従って、送信機10が受信機30Bから受信した時間長tdを一定時間Tfixに加算し、その加算結果を時間τ1+Tfix_diff+τ2から減算することは、クロック信号CLK_SEF_Rの位相がクロック信号CLK_SEF_Tの位相に一致してときの受信機30Bにおける応答時間(SIFS)に受信機30Bにおいて計測された応答時間(SIFS_diff)が一致するように、時間長tdに基づいて、受信機30Bにおいて計測された応答時間SIFS_diffを含む一定時間Tfix_diffを調整し、その調整後の一定時間を時間τ1+Tfix+τ2(=トータル時間)から減算して往復時間τ1+τ2を演算することに相当する。
【0170】
図14は、実施の形態2における送信機と受信機との間の通信距離を決定する動作を説明するための他のフローチャートである。図14に示すフローチャートは、図5に示すフローチャートのステップS5とステップS6との間にステップS5Aを挿入し、ステップS7,S8,S10をそれぞれステップS7A,S8A,S10Aに代えたものであり、その他は、図5に示すフローチャートと同じである。
【0171】
受信機30Bのキャリア検出器180Bは、データの受信を終了したことを検出すると(ステップS5)、上述した方法によって、送信機10におけるクロック信号CLK_SEF_Tの位相と受信機30Bにおけるクロック信号CLK_SEF_Rの位相との位相差θdを検出し、その検出した位相差θdをコントローラ210Aへ出力するとともに、データの受信を終了したことを示す信号DETFを生成してコントローラ210Aへ出力する。
【0172】
コントローラ210Aは、キャリア検出器180Bから信号DETFおよび位相差θdを受信する。そして、コントローラ210Aは、位相差θdを時間長td(=θd/ω)に変換するとともに、信号DETFの受信に応じて1/N分周器250からの分周クロック信号CLK_Bの成分個数を計測して応答時間SIFS_diff(図11参照)を計測する。つまり、受信機30Bは、分周クロック信号CLK_Bに基づいて一定時間SIFS_diffだけ待機する(ステップS6)。
【0173】
一定時間SIFS_diffが経過すると、受信機30Bのコントローラ210Aは、データおよび時間長tdを端子TDAから変調器260へ出力する。そして、変調器260は、データおよび時間長tdを所定の変調周波数によって変調する。ローパスフィルタ270は、変調データの高周波ノイズを除去してベースバンド信号をミキサー280へ出力する。ミキサー280は、ローパスフィルタ270からのベースバンド信号と選択器240からのクロック信号CLK_PATとを混合して増幅器290へ出力する。つまり、ミキサー280は、ベースバンド信号をクロック信号CLK_PATに同期させて増幅器290へ出力する。増幅器290は、ミキサー280の出力を増幅して選択器120へ出力する。選択器120は、増幅器290の出力をアンテナ110を介して送信する。これにより、受信機30Bから送信機10へのデータおよび時間長tdの送信が開始される(ステップS7A)。
【0174】
その後、送信機10のコントローラ210は、Hレベルの信号SLT1を生成して選択器120へ出力する。選択器120は、Hレベルの信号SLT1に応じてスイッチ123を端子121に接続する。
【0175】
そして、送信機10のアンテナ110は、無線通信空間20を介して受信したデータおよび時間長tdを選択器120を介して増幅器130に供給する。増幅器130は、選択器120から供給されたデータおよび時間長tdを増幅してミキサー140へ出力する。ミキサー140は、増幅器130の出力とクロック調整器170からのクロック信号CLK_PATとを混合してローパスフィルタ150へ出力する。ローパスフィルタ150は、ミキサー140の出力から高周波ノイズを除去してベースバンド信号を復調器160へ出力する。
【0176】
復調器160は、ベースバンド信号を復調し、その復調したデータDATAおよび時間長tdをコントローラ210へ出力する。そして、コントローラ210は、復調器160から受けたデータDATAに基づいて、上述した方法によってフレーム開始部SFDの終了位置を検出する。これにより、送信機10は、受信機30からのデータDATAおよび時間長tdを安定して受信し始める(ステップS8A)。
【0177】
そして、送信機10のコントローラ210は、実施の形態1において説明したステップS9を実行し、トータル時間Ttotal_diff=τ1+Tfix_diff+τ2を演算する。
【0178】
送信機10のコントローラ210は、トータル時間Ttotal_diff=τ1+Tfix_diff+τ2を演算すると、一定時間Tfixに時間長tdを加算し、その加算結果Tfix+td(=Tfix_diff)をトータル時間Ttotal_diff=τ1+Tfix_diff+τ2から減算して往復時間τ1+τ2を演算する。そして、コントローラ210は、往復時間τ1+τ2の半分(τ1+τ2)/2に光速cを乗算して送信機10と受信機30Bとの間の通信距離を決定する(ステップS10A)。
【0179】
これにより、一連の動作は終了する。
【0180】
[送受信機間の距離を正確に計測する他の方法2]
この実施の形態2においては、送信機は、データを受信機へ送信し、受信機から受信したデータの位相と送信機において生成されたクロック信号の位相との位相差を検出し、その検出した位相差に基づいて、データが受信機との間で往復する往復時間を正確に計測するようにしてもよい。
【0181】
図15は、実施の形態2による送信機の構成を示す概略ブロック図である。実施の形態2による送信機10Aは、図2に示す送信機10のキャリア検出器180およびコントローラ210をそれぞれキャリア検出器180Cおよびコントローラ210Bに代えたものであり、その他は、送信機10と同じである。
【0182】
キャリア検出器180Cは、ローパスフィルタ150からの受信データに基づいて、後述する方法によって送信機10Aにおいて生成されたクロック信号CLK_SEF_Tの位相と受信機30から受信した受信データの位相との位相差θdを検出し、その検出した位相差θdをコントローラ210Bへ出力する。キャリア検出器180Cは、その他は、キャリア検出器180と同じ機能を果たす。
【0183】
コントローラ210Bは、データDATTの送信を終了したタイミングt1からデータDATRを安定して受信し始めるタイミングt10までのトータル時間Ttotal_diff=τ1+Tfix_diff+τ2(図11参照)を計測するとともに、キャリア検出器180Cから受けた位相差θdを時間長td(=θd/ω)に変換する。
【0184】
そして、コントローラ210Bは、クロック信号CLK_SEF_Rの位相がクロック信号CLK_SEF_Tの位相に一致しているときの一定時間Tfixに時間長tdを加算し、その加算結果Tfix+td(=Tfix_diff)をトータル時間Ttotal_diff=τ1+Tfix_diff+τ2から減算して受信機30との間でデータが往復する往復時間τ1+τ2を演算する。その後、コントローラ210Bは、往復時間τ1+τ2に基づいて、コントローラ210と同じ方法によって受信機30までの距離を演算する。
【0185】
なお、送信機10Aのコントローラ210Bが受信機30から受信した時間長tdを一定時間Tfixに加算し、その加算結果をトータル時間Ttotal_diff=τ1+Tfix_diff+τ2から減算することは、クロック信号CLK_SEF_Rの位相がクロック信号CLK_SEF_Tの位相に一致してときの受信機30における応答時間(SIFS)に受信機30において計測された応答時間(SIFS_diff)が一致するように、時間長tdに基づいて、受信機30において計測された応答時間SIFS_diffを含む一定時間Tfix_diffを調整し、その調整後の一定時間を時間τ1+Tfix+τ2(=トータル時間)から減算して往復時間τ1+τ2を演算することに相当する。その理由は、[送受信機間のの距離を正確に計測する他の方法1]において説明したとおりである。
【0186】
図16は、図15に示すキャリア検出器180Cにおける位相差θdを検出する方法を説明するための図である。受信機30において生成されたクロック信号CLK_SEF_Rの位相が送信機10Aにおいて生成されたクロック信号CLK_SEF_Tの位相とずれているために、受信機30が受信した受信データDARRの位相がクロック信号CLK_SEF_Rの位相とずれた場合(図16の(a)参照)、送信機10Aにおいて受信データDATRを安定して受信し始めるタイミング(SFDの終了位置)t_SFDは、送信機10Aにおいて生成されたクロック信号CLK_SEF_Tに同期したサンプリングタイミングとずれる。
【0187】
受信機30における位相差θd1が反映された応答時間SIFS_diffが受信機30において計測され、クロック信号CLK_SEF_Tに対して位相がずれたクロック信号CLK_SEF_Rに同期してデータが受信機30から送信機10Aへ送信されるからである。
【0188】
その結果、タイミングt_SFDは、サンプリングタイミングST2で検出され、クロック信号CLK_SEF_Rの位相がクロック信号CLK_SEF_Tの位相に対してずれていない場合に比べ、位相差θd1に相当する時間td(=θd/ω)だけ遅れる。
【0189】
そこで、送信機10Aのキャリア検出器180Cは、位相差θd1をキャリア検出器180Aと同じ方法によって検出する。そして、キャリア検出器180Cは、その検出した位相差θdをコントローラ210Bへ出力する。
【0190】
これによって、受信機30側で位相ずれを調整しなくても、送信機10Aにおいて受信機30におけるクロック信号CLK_SEF_Rの位相ずれを調整して受信機30との距離を正確に計測できる。
【0191】
図17は、実施の形態2における送信機と受信機との間の通信距離を決定する動作を説明するための更に他のフローチャートである。図17に示すフローチャートは、図5に示すフローチャートのステップS10をステップS9A,S10Aに代えたものであり、その他は、図5に示すフローチャートと同じである。
【0192】
送信機10Aのコントローラ210Bは、データDATTの送信を終了したタイミングt1からデータDATRを安定して受信し始めたタイミングt10までのトータル時間Ttotal_diff=τ1+Tfix_diff+τ2(図11参照)を計測する(ステップS9)。そして、キャリア検出器180Cは、上述した方法によって、送信機10Aにおいて生成されたクロック信号CLK_SEF_Tの位相と受信機30からの受信データを安定して受信し始めるタイミングとの位相差θdを検出し、その検出した位相差θdをコントローラ210Bへ出力する。
【0193】
コントローラ210Bは、位相差θdを時間長td(=θd/ω)に変換する(ステップS9A)。そして、コントローラ210Bは、一定時間Tfixに時間長tdを加算し、その加算結果Tfix+td(=Tfix_diff)をトータル時間Ttotal_diff=τ1+Tfix_diff+τ2から減算して往復時間τ1+τ2を演算する。その後、コントローラ210Bは、往復時間τ1+τ2の半分(τ1+τ2)/2に光速cを乗算して送信機10Aと受信機30との間の通信距離を決定する(ステップS10A)。
【0194】
これにより、一連の動作は終了する。
【0195】
なお、実施の形態2におけるデータの変調方式は、QPSKに限らず、CCK(Complementary Code Keying)およびOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)等であってもよい。
【0196】
上述したように、実施の形態2においては、受信機において生成されたクロック信号の位相が送信機において生成されたクロック信号の位相に対してずれたことに起因して発生するデータの位相とサンプリングタイミングとの位相差を検出し、その検出した位相差に基づいて、受信機におけるクロック信号の位相を調整し、またはデータが受信機へ送信されてから送信機によって受信されるまでのトータル時間を調整してデータが送信機と受信機との間で往復する往復時間を正確に計測することを特徴とする。
【0197】
この特徴により、送信機において生成されたクロック信号の位相に対して受信機において生成されたクロック信号の位相がずれても、送信機と受信機との間の距離を正確に計測できる。
【0198】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0199】
この発明は、2つの通信端末間の通信距離を正確に測定可能な通信システムに適用される。
【図面の簡単な説明】
【0200】
【図1】この発明の実施の形態1による通信システムの概略ブロック図である。
【図2】図1に示す送信機の構成を示す概略ブロック図である。
【図3】送信データ及び受信データのタイミングチャートである。
【図4】送信機が受信機からのデータを安定して受信し始めるタイミングを検出する方法を説明するための図である。
【図5】送信機と受信機との間の通信距離を決定する動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】通信の空き時間と通信距離との関係を示す図である。
【図7】送信機が生成したクロック信号の位相に対して受信機が生成したクロック信号の位相がずれている場合の受信信号のサンプリングタイミングの変化を示す図である。
【図8】実施の形態2による受信機の構成を示す概略ブロック図である。
【図9】送信機において生成されたクロック信号の位相に対する受信機において生成されたクロック信号の位相差を検出する方法を説明するための図である。
【図10】QPSKによって変調されたデータの信号空間図である。
【図11】送信データ及び受信データの他のタイミングチャートである。
【図12】実施の形態2における送信機と受信機との間の通信距離を決定する動作を説明するためのフローチャートである。
【図13】実施の形態2による受信機の構成を示す他の概略ブロック図である。
【図14】実施の形態2における送信機と受信機との間の通信距離を決定する動作を説明するための他のフローチャートである。
【図15】実施の形態2による送信機の構成を示す概略ブロック図である。
【図16】図15に示すキャリア検出器における位相差を検出する方法を説明するための図である。
【図17】実施の形態2における送信機と受信機との間の通信距離を決定する動作を説明するための更に他のフローチャートである。
【符号の説明】
【0201】
10,10A 送信機、20 無線通信空間、30,30A,30B 受信機、100 通信システム、110 アンテナ、120,240 選択器、121,122,241,242 端子、123,243 スイッチ、130,290 増幅器、140,280 ミキサー、150,270 ローパスフィルタ、160 復調器、170 クロック調整器、180,180A,180B,180C キャリア検出器、190 A/D変換器、200 カウンタ、210,210A,210B コントローラ、220 水晶発振器、230 クロック発生器、250,250A 1/N分周器、260 変調器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信空間に配置される2つの通信端末間の通信距離を測定可能な通信システムであって、
前記無線通信空間を介したデータの送信を完了する送信機と、
前記送信機からのデータを前記無線通信空間を介して受信し、その受信したデータに対する応答のためのデータを前記無線通信空間を介して前記送信機へ送信する受信機とを備え、
前記送信機及び前記受信機は、基準クロックに同期して前記データを送受信し、
前記送信機は、前記受信機への前記データの送信を完了する第1のタイミングと前記受信機からの前記データを安定して受信し始める第2のタイミングとの間のトータル時間を計測し、その計測したトータル時間に基づいて前記受信機までの通信距離を決定する、通信システム。
【請求項2】
前記第2のタイミングは、フレームの開始を示す信号の受信終了タイミングである、請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記フレームの開始を示す信号は、スタートフレームデリミタである、請求項2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記受信機は、前記送信機からの前記データの受信完了後、応答時間経過後に前記データを前記送信機へ送信し、
前記送信機は、前記応答時間を含む一定時間を前記トータル時間から減算して前記データが前記受信機との間で往復する往復時間を演算し、その演算した往復時間に基づいて前記受信機までの通信距離を決定する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項5】
前記データは、先頭から同期信号部、フレーム開始部およびフレーム部を順次含み、
前記一定時間は、前記応答時間と、前記同期信号部の検出時間と、前記フレーム開始部の検出時間との和である、請求項4に記載の通信システム。
【請求項6】
前記受信機は、前記送信機から受信したデータに基づいて、前記送信機において生成された基準クロック信号を推定し、その推定した基準クロック信号に基づいて前記応答時間を決定して前記データを前記送信機へ送信する、請求項4または請求項5に記載の通信システム。
【請求項7】
前記送信機は、前記受信機との通信において、前記受信機から受信したデータに基づいて前記受信機において生成された第1の基準クロック信号を推定し、自己が生成した第2の基準クロック信号の位相を前記推定した第1の基準クロック信号の位相と比較し、前記第2の基準クロック信号の位相が前記第1の基準クロック信号の位相とずれているとき、前記受信機との通信距離の変化を測定する、請求項1に記載の通信システム。
【請求項8】
前記受信機は、前記送信機から受信したデータの位相と自己が生成した第1の基準クロック信号の位相との位相差を検出し、その検出した位相差に基づいて前記第1の基準クロック信号の位相を前記送信機において生成された第2の基準クロック信号の位相に一致させて応答時間を計測し、前記応答時間の計測後、前記データを前記送信機へ送信し、
前記送信機は、前記応答時間を含む一定時間を前記トータル時間から減算して前記データが前記受信機との間で往復する往復時間を演算し、その演算した往復時間に基づいて前記受信機までの通信距離を決定する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項9】
前記受信機は、前記送信機から受信したデータの位相と自己が生成した第1の基準クロック信号の位相との位相差を検出し、その検出した位相差を時間長に変換するとともに、前記第1の基準クロック信号に同期して第1の応答時間を計測し、前記第1の応答時間の計測後、前記データおよび前記時間長を前記送信機へ送信し、
前記送信機は、自己が生成した第2の基準クロック信号の位相に前記第1の基準クロック信号の位相が一致しているときの前記受信機における第2の応答時間に前記第1の応答時間が一致するように前記時間長に基づいて前記第1の応答時間を含む一定時間を調整し、その調整後の一定時間を前記トータル時間から減算して前記データが前記受信機との間で往復する往復時間を演算し、その演算した往復時間に基づいて前記受信機までの通信距離を決定する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項10】
前記送信機は、前記受信機から受信したデータの位相と自己が生成した第1の基準クロック信号の位相との位相差を検出し、その検出した位相差を時間長に変換するとともに、前記受信機において生成された第2の基準クロック信号の位相が前記第1の基準クロック信号の位相に一致しているときの前記受信機における第1の応答時間に前記第2の基準クロックに同期して計測された前記受信機の第2の応答時間が一致するように前記第2の応答時間を含む一定時間を調整し、その調整後の一定時間を前記トータル時間から減算して前記データが前記受信機との間で往復する往復時間を演算し、その演算した往復時間に基づいて前記受信機までの通信距離を決定する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項1】
無線通信空間に配置される2つの通信端末間の通信距離を測定可能な通信システムであって、
前記無線通信空間を介したデータの送信を完了する送信機と、
前記送信機からのデータを前記無線通信空間を介して受信し、その受信したデータに対する応答のためのデータを前記無線通信空間を介して前記送信機へ送信する受信機とを備え、
前記送信機及び前記受信機は、基準クロックに同期して前記データを送受信し、
前記送信機は、前記受信機への前記データの送信を完了する第1のタイミングと前記受信機からの前記データを安定して受信し始める第2のタイミングとの間のトータル時間を計測し、その計測したトータル時間に基づいて前記受信機までの通信距離を決定する、通信システム。
【請求項2】
前記第2のタイミングは、フレームの開始を示す信号の受信終了タイミングである、請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記フレームの開始を示す信号は、スタートフレームデリミタである、請求項2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記受信機は、前記送信機からの前記データの受信完了後、応答時間経過後に前記データを前記送信機へ送信し、
前記送信機は、前記応答時間を含む一定時間を前記トータル時間から減算して前記データが前記受信機との間で往復する往復時間を演算し、その演算した往復時間に基づいて前記受信機までの通信距離を決定する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項5】
前記データは、先頭から同期信号部、フレーム開始部およびフレーム部を順次含み、
前記一定時間は、前記応答時間と、前記同期信号部の検出時間と、前記フレーム開始部の検出時間との和である、請求項4に記載の通信システム。
【請求項6】
前記受信機は、前記送信機から受信したデータに基づいて、前記送信機において生成された基準クロック信号を推定し、その推定した基準クロック信号に基づいて前記応答時間を決定して前記データを前記送信機へ送信する、請求項4または請求項5に記載の通信システム。
【請求項7】
前記送信機は、前記受信機との通信において、前記受信機から受信したデータに基づいて前記受信機において生成された第1の基準クロック信号を推定し、自己が生成した第2の基準クロック信号の位相を前記推定した第1の基準クロック信号の位相と比較し、前記第2の基準クロック信号の位相が前記第1の基準クロック信号の位相とずれているとき、前記受信機との通信距離の変化を測定する、請求項1に記載の通信システム。
【請求項8】
前記受信機は、前記送信機から受信したデータの位相と自己が生成した第1の基準クロック信号の位相との位相差を検出し、その検出した位相差に基づいて前記第1の基準クロック信号の位相を前記送信機において生成された第2の基準クロック信号の位相に一致させて応答時間を計測し、前記応答時間の計測後、前記データを前記送信機へ送信し、
前記送信機は、前記応答時間を含む一定時間を前記トータル時間から減算して前記データが前記受信機との間で往復する往復時間を演算し、その演算した往復時間に基づいて前記受信機までの通信距離を決定する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項9】
前記受信機は、前記送信機から受信したデータの位相と自己が生成した第1の基準クロック信号の位相との位相差を検出し、その検出した位相差を時間長に変換するとともに、前記第1の基準クロック信号に同期して第1の応答時間を計測し、前記第1の応答時間の計測後、前記データおよび前記時間長を前記送信機へ送信し、
前記送信機は、自己が生成した第2の基準クロック信号の位相に前記第1の基準クロック信号の位相が一致しているときの前記受信機における第2の応答時間に前記第1の応答時間が一致するように前記時間長に基づいて前記第1の応答時間を含む一定時間を調整し、その調整後の一定時間を前記トータル時間から減算して前記データが前記受信機との間で往復する往復時間を演算し、その演算した往復時間に基づいて前記受信機までの通信距離を決定する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項10】
前記送信機は、前記受信機から受信したデータの位相と自己が生成した第1の基準クロック信号の位相との位相差を検出し、その検出した位相差を時間長に変換するとともに、前記受信機において生成された第2の基準クロック信号の位相が前記第1の基準クロック信号の位相に一致しているときの前記受信機における第1の応答時間に前記第2の基準クロックに同期して計測された前記受信機の第2の応答時間が一致するように前記第2の応答時間を含む一定時間を調整し、その調整後の一定時間を前記トータル時間から減算して前記データが前記受信機との間で往復する往復時間を演算し、その演算した往復時間に基づいて前記受信機までの通信距離を決定する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の通信システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2006−20274(P2006−20274A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−366436(P2004−366436)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度独立行政法人情報通信研究機構、研究テーマ「自律分散型無線ネットワークの研究開発」に関する委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(393031586)株式会社国際電気通信基礎技術研究所 (905)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度独立行政法人情報通信研究機構、研究テーマ「自律分散型無線ネットワークの研究開発」に関する委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(393031586)株式会社国際電気通信基礎技術研究所 (905)
【Fターム(参考)】
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