説明

通信システム

【課題】製造が容易、かつ、安価であって、漏洩伝送線路の近傍の限られた空間内だけの通信を可能とすることができる通信システムを提供する。
【解決手段】構造体1に組み込まれ、または、構造体1上に設置された漏洩伝送線路2を備え、漏洩伝送線路2から漏洩伝送線路2により伝送される電磁波の波長の3倍未満の距離の領域内において、この漏洩伝送線路2を介しての通信が可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏洩伝送線路を使用した通信システムに関し、特に、漏洩伝送線路の近傍でのみ通信が可能な漏洩伝送線路を組み込んだ構造体を使用した通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、漏洩伝送線路として、例えば、漏洩同軸ケーブル(LCX:Leaky Coaxial Cable)が提案され、無線通信システムの送受信用アンテナとして利用されている。LCXは、例えば、列車と地上との間の無線連絡を目的として、列車軌道沿いに布設され、また、地下鉄構内や地下街と地上との間の消防無線や警察無線による連絡を目的として、地下鉄構内や地下街に布設される。また、携帯電話や無線LANに代表される無線通信システムは、いつでも、どこでも、誰でも通信ネットワークを利用できることから、急速に拡大しつつある。
【0003】
また、無線通信システムの大容量伝送にともない、使用周波数の高周波帯ヘの移行が進んでおり、地上波の行き届かない地下街やビル内のみならず、ビルの影等、電磁波不感地帯ヘ電磁波を確実に送り届けることが行われている。漏洩伝送線路は、伝送する電気信号の一部が漏洩伝送線路の外側の空間を伝搬し、周囲に電磁界を形成するので、電磁波不感地帯用のアンテナとして使用することができる。
【0004】
このような漏洩伝送線路の代表的なものとして、伝送線路型のLCX(漏洩同軸ケーブル)が使用されている。LCXは、非特許文献1に記載されているように、図16中の(a)に示すように、中心導体101と、この中心導体101を被覆した絶縁体102と、この絶縁体102の周囲に配置された外部導体103と、この外部導体103を被覆した外被104とを備えた同軸ケーブルとして構成されている。LCXの中心導体101及び外部導体103をなす材料は、一般的には銅であるが、アルミニウムを使用する場合もある。絶縁体102をなす材料としては、主にポリエチレンなどが使用されている。
【0005】
そして、LCXの外部導体103には、図16中の(b)に示すように、電磁波漏れ機構として、ケーブル長さ方向に周期的に開孔部105が設けられている。LCXの放射原理は、ケーブル内部を伝送する電気信号エネルギーの一部が、開孔部105を通して電磁波として外部ヘ放射するものである。なお、LCXも一般のアンテナと同様で、送信(放射)と受信(入射)とには可逆性が成立し、遠方まで送信できれば、遠方からの微弱な電磁波も受信できる。
【0006】
ところで、無線LANを会議室等で使用する場合には、情報セキュリティの点から、無線LANの電波がその会議室等の内部だけに留まり、外部に漏れないような通信システムが求められる。前述した従来のLCXは、電磁波を遠方にまで積極的に放射することを目的としていたため、情報セキュリティの確保のために限られた空間内だけの通信用途としては使用されていなかった。
【0007】
限られた空間内だけの通信を目的とする漏洩伝送線路では、前述した「どこでも、誰でも」が可能である通信ではなく、特許文献1に記載されているように、漏洩伝送線路の近傍でのみ無線通信を可能とする必要がある。
【0008】
特許文献1に記載されている信号伝達装置は、装置近傍でのみ通信を可能とするものである。この信号伝達装置は、図17中の(a)(b)に示すように、メッシュ状の第1導体部201とこれに平行な平板状の第2導体部202を備えている。第1導体部201と第2導体部202とに挟まれる領域203には、電磁波エネルギーが外部から供給される。メッシュ状の第1導体部201から電磁エネルギーが滲み出す領域204が生ずるので、このシート状の信号伝達装置の第1導体部201側の上面の滲み出る領域204に無線通信装置のアンテナ部を近接させると、信号伝達装置と無線通信装置との間で通信を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−82178号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】「LCX通信システム」(岸本利彦、佐々木伸共著)コロナ社初版
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、前述したような信号伝達装置においては、メッシュ状の複雑な形状の第1導体201、平板状の第2導体202、第1導体と第2導体とを平行に対向させる平板及びこれらを全体を取り囲むシースが必要となり、加工費と材料費のコストが高額であり、製作が煩雑であった。また、コネクタ取り付け加工費も高額である。
【0012】
さらに、通信エリアが平面状であればそのまま敷き詰めればよいが、通信エリアが曲がった形状の領域である場合には、その通信エリアの形状に合わせた形状の第1導体201及び第2導体202を製作しなければならならず、煩雑であった。
【0013】
そこで、本発明は、前述の実情に鑑みて提案されるものであって、製造が容易、かつ、安価であって、漏洩伝送線路の近傍の限られた空間内だけの通信を可能とすることができる通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述の課題を解決し、前記目的を達成するため、本発明に係る通信システムは、以下の構成のいずれか一つを有するものである。
【0015】
〔構成1〕
構造体に組み込まれ、または、構造体上に設置された漏洩伝送線路を備え、漏洩伝送線路から、この漏洩伝送線路により伝送される電磁波の波長の3倍未満の距離の領域内において、この漏洩伝送線路を介しての通信が可能となっていることを特徴とするものである。
【0016】
〔構成2〕
構成1を有する通信システムにおいて、漏洩伝送線路は、中心導体と、この中心導体を被覆した絶縁体と、この絶縁体の周囲に巻き付けられケーブル長手方向に周期的に複数の開孔部が形成された外部導体と、この外部導体を被覆した外被とを有する漏洩同軸ケーブルであることを特徴とするものである。
【0017】
〔構成3〕
構成1、または、構成2を有する通信システムにおいて、構造体は、机、ファンクションビーム、デスクトップパネル、パーテーション、または、ソファのいずれかであることを特徴とするものである。
【0018】
〔構成4〕
構成1乃至構成3のいずれか一つを有する通信システムにおいて、漏洩伝送線路は、机の天板の上部、内部、下部に設けられた溝内、または、天板上に設置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る通信システムは、構成1を有することにより、漏洩伝送線路から、この漏洩伝送線路により伝送される電磁波の波長の3倍未満の距離の領域内において、この漏洩伝送線路を介しての通信が可能となっているので、限られた空間内だけの通信が可能であり、セキュリティの保護を図ることができる。
【0020】
すなわち、本発明は、製造が容易、かつ、安価であって、漏洩伝送線路の近傍の限られた空間内だけの通信を可能とすることができる通信システムを提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】非特許文献2に記載されているエレクトリックダイポールからの放射について説明する図である。
【図2】LCXの近傍での電磁界の強さの変化状態を確認するための実験系を示す側面図である。
【図3】図2に示した実験系により得られた測定結果を示すグラフである。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る通信システムの構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る通信システムの要部の構成を示す断面図である。
【図6】図4に示した通信システムにおける結合損失Lcの測定結果を示すグラフである。
【図7】第1の実施の形態におけるLCXの設置状態の他の例を示す断面図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る通信システムの構成を示す斜視図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る通信システムの構成の他の例を示す斜視図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る通信システムの構成のさらに他の例を示す斜視図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係る通信システムの構成を示す斜視図である。
【図12】本発明のその他の実施の形態に係る通信システム(ファンクションビーム、デスクトップパネル)の構成を示す斜視図及び側面図である。
【図13】本発明のその他の実施の形態に係る通信システム(ブースワークステーション)の構成を示す斜視図である。
【図14】本発明のその他の実施の形態に係る通信システム(会議室)の構成を示す斜視図である。
【図15】本発明のその他の実施の形態に係る通信システム(ソファ)の構成を示す斜視図である。
【図16】従来の漏洩同軸ケーブルの構成を示す断面図及び側面図である。
【図17】従来の信号伝達装置の構成を示す断面図及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
本発明に係る通信システムは、アンテナの一種である漏洩伝送線路(LCX:漏洩同軸ケーブル)から2.5λ程度の範囲内で通信を行うことを目的とした通信システムである。
【0024】
電磁界はアンテナなどから放射される。放射される電磁界の強さは、アンテナ近傍で強く、アンテナから遠ざかるにしたがって急激に弱くなる。急激に弱くなる範囲は、使用波長をλとすると、2.5λ程度である。
【0025】
図1は、非特許文献2に記載されているエレクトリックダイポールからの放射について説明する図である。
【0026】
図1に示すように、このエレクトリックダイポールからの放射電界E、Eθ、及び、磁界Hφは、図1に示す座標系に対して、式a、式b、式cにより、でそれぞれ求められる。
【0027】
ここで、kは波数を表す(k=2πf/λ)(fは、周波数(Hz)であり、λは、波長(m)である)。pは、エレクトリックダイポール上の総電荷である(p=Ql)(Qは、単位長さあたりの電荷、lは、エレクトリックダイポールの長さである)。jは虚数記号で虚数部を表している。
【0028】
これらの式からもわかるように、電磁界成分E、Eθ、Hφは、1/R、1/R、1/Rに比例する項に分けられる。ただし、Rは、エレクトリックダイポールからの距離である。これらの項は、一般に、1/Rの項を静電界(Static field)、1/Rの項を誘導電磁界(induction field)、1/Rの項を放射電磁界(radiation field)と呼ばれている。
【0029】
電磁界の大きさは、このダイポールの近傍(R<λ/2π)では静電界と誘導界成分が優勢であり、遠方(R>λ/2π)では、放射界成分が大部分を占める状態となる。また、R=λ/2πでは、静電界、誘導電磁界、放射電磁界成分は等しくなる。したがって、電磁界成分は、エレクトリックダイポールから離れるにしたがい、近傍で急激に減少することが理解できる。急激に減少する範囲は、一般に2.5λ程度であり、本発明においては、この範囲で通信することを特徴としている。2.5λの具体的な距離は、無線LANの周波数である2.4GHzでは、およそ300mmである。
【0030】
図2は、LCXの近傍での電磁界の強さの変化状態を確認するための実験系を示す側面図である。
【0031】
図2中の(a)(b)に示すように、LCX2の近傍での電磁界の強さの変化状態を確認する実験を行った。測定周波数は、2.4GHzである。長さ1mのLCX2を木製の机1の上に水平に置いた。このLCX2の上方に、半波長標準ダイポールアンテナ7を配置し、LCX2からの距離を変化させ、標準ダイポールアンテナ7からの出力電力Pout(mW)を測定した。
【0032】
ダイポールアンテナ7を移動するラインは、LCX2の中央上のラインと中央から入力側に250mm離れたライン、及ぴ、中央から終端側に250mm離れたラインとした。なお、LCX2にはPin(mW)の電力を入力した。また、LCX2の端部には、LCX2の内部で不要な反射波が発生しないように、終端抵抗を接続した。放射電磁界の強度は、LCXの評価で一般的に使用されている式1に示す結合損失Lcで評価した。
【0033】
図3は、図2に示した実験系により得られた測定結果を示すグラフである。
【0034】
図3において、横軸はLCXとアンテナとの距離を示し、縦軸は結合損失Lcを示している。LCXの中央ラインでの測定値を○印、入力側に250mm離れたラインでの測定値を△印、終端側に250mm離れたラインでの測定値を□印で示している。
【0035】
図3より、LCXの近傍での結合損失Lcは小さく、つまり、放射が強く、そして、LCXから離れるにしたがって、結合損失Lcが急激に大きくなっていることがわかる。図3中の破線は、測定値に対する近似曲線である。また、ハッチングした部分は、測定系の測定限界を示す。
【0036】
図3より、LCXからの放射波の強度は、およそ300mmで急激に弱まり、その後はゆるやかな減少となることがわかる。放射強度が急激に弱まる領域では、静電界と誘導電磁界が優勢で、遠方でのゆるやかに弱まる領域では、放射電磁界が優勢と考えられる。放射強度が急激に弱まる範囲は、LCXから300mmの範囲であり、これは使用波長の約2.5倍(2.5λ)に相当していることがわかった。すなわち、この範囲で通信可能なように通信機器の通信条件を設定することによって、この範囲外への電磁波での情報漏洩を防ぐことが可能となる。
【0037】
本発明においては、漏洩伝送線路として、LCXを使用することが好ましい。LCXは、基本的に同軸ケーブル構造であり、中心導体、絶縁体、開孔部付外部導体及びシースからなる単純な構造であるので、大量生産が可能であり、安価、かつ、容易に入手することができる。また、機器と接続する為にはコネクタが必要であるが、同軸ケーブル用のコネクタは大量に販売されており、安価、かつ、容易に入手し、また、簡単にLCXに取り付けることができる。なお、LCXの一般的な市場価格は、LCXの寸法や材料にもよるが、1mあたり数100円から数1000円程度と安価で入手できる。
【0038】
なお、特許文献1に記載された信号伝達装置では、メッシュ状の複雑な第1導体、平板状の第2導体、第1導体と第2導体とを平行に対向させる平板状材料、及び、これら全体を取り囲む保護シートが必要である。そして、この伝達装置と外部機器との接続には同軸ケーブルが使用される。平板状のシートと同軸ケーブルとは形状が平面と丸とで非常に異なっており、専用の接続部品が必要である。したがって、一般のコネクタを使用することができないので、この信号伝達装置では、コネクタの取り付け部の価格が高価になる。
【0039】
そして、LCXは、ケーブル構造であり、しなやかな線状体であるため、要求される通信エリアが垂直方向に曲がっていても水平方向に曲っていても、自由に曲げて使用することができる。すなわち、LCXのどの部分でも、垂直方向にも水平方向にもあらゆる方向に曲げて使用することができる。したがって、通信エリアがどのような形状であっても、例えば、かぎがた状や円形の机でも、あるいは、障害物を避けて布設しなければならない状況でも、自由に使用できる。
【0040】
なお、特許文献1に記載された信号伝達装置は平板状の導体を用いるため、水平方向には曲げられない。したがって、通信エリアに合わせて導体の形状を変える必要があり、不便であった。
【0041】
〔第1の実施の形態〕
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る通信システムの構成を示す斜視図である。
【0042】
この通信システムにおいては、図4に示すように、構造体となる木製の机1にLCX2を取り付けている。机1の寸法は、幅0.7m、長さ1m、高さは0.7mである。LCX2は、中心導体は外径2mmの銅線、絶縁体は外径5mmのポリエチレン、外部導体は銅からなり幅2mm長さ3mmの開孔部を有し、その上をシースで覆い、全体の外径は7mmに構成されたものである。
【0043】
図5は、本発明の第1の実施の形態に係る通信システムの要部の構成を示す断面図である。
【0044】
机1の天板1aの幅方向の中央部には、図4及び図5に示すように、深さ8mm、幅7.5mmの溝3が設けられており、この溝3内にLCX2が嵌め込まれている。そして、溝3の上から、厚さ1mmのプラスチックシート4で覆っている。
【0045】
この状態で結合損失Lcを測定した。LCXの両端にはコネクタを取付け、片側は発信器5に接続し、2.4GHzの信号を入力した。終端には50Ωの終端器6を接続した。LCX2の上部には、所定の高さに半波長標準ダイポールアンテナ7を位置させ、LCX2に対する直交方向に移動させた。LCX2からダイポールアンテナ7までの高さは、10mm及び500mmとした。
【0046】
図6は、図4に示した通信システムにおける結合損失Lcの測定結果を示すグラフである。
【0047】
図6において、ダイポールアンテナ7がLCX2に接近している場合(高さ10mm)の結合損失Lcを○印で示す。LCX2からのダイポールアンテナ7の高さが10mmの場合には、LCX2の真上で結合損失Lcは低く、すなわち、放射が強く、水平方向に離れるにしたがって、結合損失Lcが増加する。
【0048】
セキュリティが確保できて、かつ、安定して通信ができる範囲は、LCX2の真上から水平方向300mm以内と考えられる。
【0049】
また、図6において、LCX2からのダイポールアンテナ7の高さが500mmの場合を△印で示す。高さ500mmの場合は、LCX2の真上でも結合損失Lcが大きく、すなわち、放射が弱く、水平方向に離れても結合損失Lcはあまり変化しなかった。これは、高さが500mmでは、すでに放射界に入っているので、水平方向への移動に対する電磁界強度の変化が緩やかだからである。
【0050】
第1の実施の形態における構造体(机1)を用いて、無線LANの通信実験を行った。無線LANのアクセスポイント(AP)をLCX2に接続し、無線LAN装置を組み込んだパーソナルコンピュータを使用した。パーソナルコンピュータは机1の天板1aの上面に配置した。
【0051】
その結果、天板1a上にパーソナルコンピュータを置いた場合には、LCX2から300mmの範囲では問題なく無線LAN通信ができたが、300mmを越えると通信が不安定となり、1m付近ではほとんど通信ができない状態だった。また、パーソナルコンピュータを手に持ってLCX2の真上で持ち上げたところ、LCX2からの高さが300mm付近までは問題なく通信できたが、それ以上の高さになると、通信状態に障害が現れた。
【0052】
このように、第1の実施の形態では、天板1aの表面付近でのみ、LCX2からの距離が300mmの範囲で情報セキュリティを維持した通信が可能であることがわかった。
【0053】
図7は、第1の実施の形態におけるLCXの設置状態の他の例を示す断面図である。
【0054】
LCX2は、図7中の(a)に示すように、天板1aの上部に設けた溝3内に組み込んでもよいし、図7中の(b)に示すように、天板1aの裏側に設けた溝3a内に組み込んでもよいし、あるいは、図7中の(c)に示すように、天板1aの内部に穿設した穴3b内に組み込んでもよい。
【0055】
〔第2の実施の形態〕
前述の第1の実施の形態においては、机1の天板1aの幅が0.7mであり、この場合には、中央部にLCX2を1本配置すれば、セキュリティを維持した通信エリアが確保できた。しかし、天板の幅が広くなると、LCX2からの通信範囲は300mm程度なので、直線状の1本のLCX2では、通信エリアの確保が困難である。
【0056】
図8は、本発明の第2の実施の形態に係る通信システムの構成を示す斜視図である。
【0057】
図8に示すように、構造体となる机1の天板1aの幅が1.5m程度である場合には、この天板1aには、第1の実施の形態におけると同様の寸法及び断面形状を有する溝3を矩形状に設けて、この溝3内にLCX2を配置するとよい。
【0058】
この実施の形態においては、天板1a上において、図8中にハッチングで示す通信可能領域でセキュリティを確保した通信ができた。
【0059】
図9は、本発明の第2の実施の形態に係る通信システムの構成の他の例を示す斜視図である。
【0060】
LCX2の配置形状、すなわち、溝3の形状は、図9に示すように、矩形の1辺がないコの字状としても、天板1a上において、図9中にハッチングで示す通信可能領域でセキュリティを確保した通信ができた。
【0061】
図10は、本発明の第2の実施の形態に係る通信システムの構成のさらに他の例を示す斜視図である。
【0062】
また、LCXの配置形状は、図10に示すように、半円を互い違いに接続した形状(蛇行した形状)としても、天板1a上において、図10中にハッチングで示す通信可能領域でセキュリティを確保した通信ができた。
【0063】
〔第3の実施の形態〕
図11は、本発明の第3の実施の形態に係る通信システムの構成を示す斜視図である。
【0064】
第3の実施の形態では、図11に示すように、円形の天板1bを有する構造体となる机、または、ミーティングテーブル1において、天板1bの中心部を中心とする円形状に溝3を形成し、この溝3内にLCX2を配置した。この場合には、LCX2は、天板1bの下部に設けてもよい。
【0065】
この場合においても、天板1a上において、図11中にハッチングで示す通信可能領域でセキュリティを確保した通信ができた。
【0066】
〔その他の実施の形態〕
図12は、本発明のその他の実施の形態に係る通信システム(ファンクションビーム、デスクトップパネル)の構成を示す斜視図及び側面図である。
【0067】
本発明に係る通信システムは、図12中の(a)(b)に示すように、机上に設置される構造体であり、机上棚やトレー、ディスプレイ等のオプション部材を取り付け可能としたファンクションビーム(商品名)(オプション部材等の取り付け部が設けられたビーム部材(もしくは杆状部材))8の上部、または、下部にLCX2を設置して構成してもよい。
【0068】
また、本発明に係る通信システムは、図12中の(c)(d)に示すように、机上に設置される構造体であり、デスク上空間と他の空間とを区画するデスクトップパネル9の上部、または、下部にLCX2を設置して構成してもよい。
【0069】
図13は、本発明のその他の実施の形態に係る通信システム(ブースワークステーション)の構成を示す斜視図である。
【0070】
本発明に係る通信システムは、図13に示すように、ブースワークステーション(商品名)(仕切りパネルで周囲を区画して構成された執務空間構成什器)を構成するものとして構成してもよい。すなわち、ブースを形成する構造体となるパーティション(商品名)(間仕切り装置、または、間仕切りパネル等)11の上下方向の中間部にLCXを設置して構成してもよい。
【0071】
図14は、本発明のその他の実施の形態に係る通信システム(会議室)の構成を示す斜視図である。
【0072】
本発明に係る通信システムは、図14に示すように、構造体となる会議室のデスク12上に設けられた配線ボックス13中にLCX2を設置して構成してもよい。
【0073】
図15は、本発明のその他の実施の形態に係る通信システム(ソファ)の構成を示す斜視図である。
【0074】
本発明に係る通信システムは、図15に示すように、構造体となるソファ14の座面と背凭れとの間の部分にLCX2を設置して構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、漏洩伝送線路を使用した通信システムに適用され、特に、近傍での通信が可能な漏洩伝送線路を組み込んだ構造体を使用した通信システムに適用される。
【符号の説明】
【0076】
1 机
1a 天板
2 LCX
3 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体に組み込まれ、または、構造体上に設置された漏洩伝送線路を備え、
前記漏洩伝送線路から、この漏洩伝送線路により伝送される電磁波の波長の3倍未満の距離の領域内において、この漏洩伝送線路を介しての通信が可能となっている
ことを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記漏洩伝送線路は、中心導体と、この中心導体を被覆した絶縁体と、この絶縁体の周囲に巻き付けられケーブル長手方向に周期的に複数の開孔部が形成された外部導体と、この外部導体を被覆した外被とを有する漏洩同軸ケーブルである
ことを特徴とする請求項1記載の通信システム。
【請求項3】
前記構造体は、机、ファンクションビーム、デスクトップパネル、パーティション、または、ソファのいずれかである
ことを特徴とする請求項1、または、請求項2記載の通信システム。
【請求項4】
前記漏洩伝送線路は、前記机の天板の上部、内部、下部に設けられた溝内、または、天板上に設置されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−244194(P2011−244194A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114345(P2010−114345)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】