説明

通信デバイス

【課題】通信デバイスにおいて、省スペースにて触覚フィードバックを実現する。
【解決手段】逆Fアンテナであるアンテナ102には、圧電体112が固定される。振動信号源116は、低域フィルタ120を介してアンテナ102の第1端部106に振動周波数の交流信号を供給することにより、圧電体112を振動させる。通信信号源118は、帯域フィルタ122を介して第1端部106に通信周波数の交流信号を供給することにより、アンテナ102に電波を放射させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信デバイスに関し、特に、触覚フィードバック機能を備える通信デバイス、に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯情報端末やデジタルカメラ、現金自動預け払い機(ATM:Automated Teller Machine)、カーナビゲーションシステムなど、タッチパネルを搭載する電子機器は多い。タッチパネルは、厚さが数mm程度であるため、電子機器を小型化する上で好適である。しかも、ソフトウェアによって入力インタフェースを定義できるため、限られたスペースで多彩な入力を実現できるというメリットがある。
【0003】
機械式ボタンを押すときには、ボタンからの反発力が伝わるため、ユーザは入力の受け付けを触感により確信できる。しかし、タッチパネルにはストローク感がない。人工的に触感を作り出すための技術としては、さまざまな方法が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−222326号公報
【特許文献2】特開2001−230616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
中でも、圧電アクチュエータによる触感生成方法は広く多く採用されている。圧電アクチュエータは交流電圧によって振動するため、電気信号により人工的な触感を生成できる。圧電アクチュエータは1mm以下の厚みにて実現できるが、携帯型の通信デバイスでは電子回路を設置可能なスペースが逼迫している。したがって、圧電アクチュエータを収納するための領域をできる限り小さくしたい。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みて完成された発明であり、その主たる目的は、通信デバイスにおいて、省スペースにて触覚フィードバックを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る通信デバイスは、アンテナと、アンテナに固定される圧電体と、圧電体に振動周波数にて第1の交流信号を供給する触覚制御部と、アンテナに通信周波数にて第2の交流信号を供給する通信制御部を備える。
【0008】
ここでいう「通信デバイス」とは、通信機能、特にアンテナによる無線通信機能を備える装置であればよい。また、「通信デバイス」は、それ自体が独立した製品である必要はなく、所定装置のうち通信機能を担うモジュールや機能ブロックであってもよい。通信デバイスが本来的に備えているアンテナに、圧電アクチュエータとしての機能をもたせることにより、省スペースにて触覚フィードバック機能を通信デバイスに搭載しやすくなる。
【0009】
触覚制御部は、低域フィルタを経由して、第1の交流信号を圧電体に供給してもよい。低域フィルタは、低周波帯域の第1の交流信号を通過させ、高周波帯域の第2の交流信号を阻止することにより、第1の交流信号が通信制御部に干渉するのを防ぎやすくなる。また、第2の交流信号が触覚制御部に干渉するのも防ぎやすくなる。同様に、通信制御部は、帯域フィルタを経由して、第2の交流信号をアンテナに供給してもよい。帯域フィルタは、第2の交流信号を通過させ、第1の交流信号を阻止することにより、上述した干渉作用を抑制しやすくなる。
【0010】
アンテナは逆Fアンテナであってもよい。アンテナの短絡端は、キャパシタを介してグランドに接続されてもよい。
【0011】
触覚制御部および通信制御部は、いずれもアンテナの給電端から第1および第2の交流信号を供給してもよい。あるいは、通信制御部は、アンテナの給電端から第2の交流信号を供給し、触覚制御部は、アンテナに固定される圧電体に第1の交流信号を直接供給してもよい。ここでいう「直接」とは、触覚制御部がアンテナ本体を経由せずに圧電体に第1の交流信号を供給する、という意味であり、触覚制御部と圧電体の間へ、帯域フィルタのようなアンテナ以外の他の部材を設置することを排除する意味ではない。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、省スペースにて触覚フィードバック機能を通信デバイスに搭載させやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態におけるアンテナの側面図である。
【図2】通信デバイスの機能ブロック図である。
【図3】第1実施形態において、振動時におけるアンテナの回路図を模式的に示す図である。
【図4】第1実施形態において、通信時におけるアンテナの回路図を模式的に示す図である。
【図5】アンテナの側面図の第1変形例である。
【図6】アンテナの側面図の第2変形例である。
【図7】第2実施形態におけるアンテナの側面図である。
【図8】第2実施形態において、振動時におけるアンテナの回路図を模式的に示す図である。
【図9】第2実施形態において、通信時におけるアンテナの回路図を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態におけるアンテナ102の側面図である。アンテナ102は、通信デバイス100に含まれる。ここでいう通信デバイス100とは、携帯電話やスマートフォン、カーナビゲーションシステムなど通信機能を備える電子デバイスであればよい。本実施形態における通信デバイス100は携帯電話のような携帯型の情報端末であると想定して説明する。
【0016】
本実施形態におけるアンテナ102はいわゆる逆Fアンテナであり、金属製のシム板104により形成される。なお、アンテナ102は逆Fアンテナである必要はなく、逆Lアンテナのような他のアンテナであってもよい。
【0017】
アンテナ102は、給電端として機能する第1端部106、短絡端として機能する第2端部108、開放端として機能する第3端部110を有する。第3端部110側には、圧電体112が導電性ペーストや樹脂系の接着剤により接着されている。圧電体112はシム板104の裏面側に設置され、反対の表面側に通信デバイス100のタッチパネル、あるいは、タッチパネルと機構的に接続された部材(以下、単に「パネル114」とよぶ)が位置する。圧電体112はd31モードにて伸縮する。圧電体112は、ジルコン・チタン酸鉛(PZT)、チタン酸バリウム、ニオブ酸リチウム等により形成される。圧電体112の表面には蒸着やスパッタにより銅や銀による電極が形成され、この電極は接地される。圧電体112とシム板104により「圧電アクチュエータ」が形成される。
【0018】
通信信号源118は、帯域フィルタ122を介して第1端部106(給電端)に接続される。通信信号源118は、通信周波数にて交流信号(第2交流信号)をアンテナ102に供給する。通信周波数は、100MHz〜数10GHzである。帯域フィルタ122は、通信周波数帯の第2交流信号のみを通過させる。第2端部108は、キャパシタCを介して接地される。キャパシタCは、第2交流信号を通過させるため、通信信号源118にとって第2端部108は短絡端となる。
【0019】
振動信号源116は、低域フィルタ120を介して第1端部106と接続される。振動信号源116は、振動周波数にて交流信号(第1交流信号)をアンテナ102の圧電体112に供給する。振動周波数は、10kHz以下である。低域フィルタ120は、振動周波数帯の第1交流信号のみを通過させる。キャパシタCは、高周波である第2交流信号は通過させるが、低周波である第1交流信号は通過させないように、定数設定されている。キャパシタ C が低周波数の第1交流信号を通過させないため、振動信号源116にとって第2端部108は開放端(ハイ・インピーダンス状態)となる。ユーザが図示しないタッチパネルに触れたとき、振動信号源116は第1交流信号を生成し、この第1交流信号が圧電体112の電極に印加されることによって圧電効果を生じ、圧電体112が振動する。圧電体112の振動は、平面的に接続されたシム板104も振動させることにより、アンテナ102を介してパネル114に伝導する。
【0020】
振動周波数帯と通信周波数帯は周波数が5桁も離れている。このため、第1交流信号はアンテナ102の通信機能に干渉しないし、第2交流信号はアンテナ102の触覚生成機能にも干渉しない。また、振動信号源116は低域フィルタ120を介してアンテナ102と接続され、通信信号源118は帯域フィルタ122を介してアンテナ102と接続されている。2つのフィルタにより、触覚生成機能と通信機能がいっそう明確に分離されている。この結果、アンテナ102は単一のデバイスでありながら、第1交流信号に対しては圧電アクチュエータとして機能し、第2交流信号に対しては通常のアンテナとして機能する。
【0021】
図2は、通信デバイス100の機能ブロック図である。信号制御部124は、第1および第2交流信号の生成を統合的に制御する。具体的には、信号制御部124は、CPUとコンピュータプログラムにより実現される機能ブロックである。入力検出部126は、タッチパネルを含み、ユーザの接触を検出する。ユーザがタッチパネルを触ると、その旨を示す接触信号を信号制御部124に送る。信号制御部124は、接触信号を受信すると、触覚制御部128に第1交流信号を発生させる。すなわち、信号制御部124と触覚制御部128が図1の振動信号源116に対応する。
【0022】
触覚制御部128は、DAコンバータや電圧増幅回路を含む電子回路として形成される。触覚制御部128は、振動周波数にて生成した第1交流信号を低域フィルタ120を介してアンテナ102に供給する。低域フィルタ120は、第1交流信号に含まれる高周波成分をカットする。低域フィルタ120のカットオフ周波数は振動周波数に対応して数十kHz以下に設定される。また、アンテナ102が第2交流信号により通信するときにも第2交流信号は低域フィルタ120によりカットされるため、低域フィルタ120は第2交流信号が触覚制御部128に逆流的に供給されるのを防ぐことができる。
【0023】
一方、通常の通信時においては、信号制御部124は通信制御部130に第2交流信号を発生させる。すなわち、信号制御部124と通信制御部130が図1の通信信号源118に対応する。
【0024】
通信制御部130は、既知の通信回路であり、通信周波数にて生成した第2交流信号を帯域フィルタ122を介してアンテナ102に供給する。あるいは、通信制御部130は、アンテナ102が通信周波数帯にて受信した第2交流信号を信号制御部124に供給する。帯域フィルタ122は、第2交流信号の通信周波数帯のみを通過させる。具体的には、帯域フィルタ122は、数100MHz〜10GHzの交流信号のみを通過させる。アンテナ102に第1交流信号が供給されるときにも、低周波数の第1交流信号は帯域フィルタ122によりカットされるため、帯域フィルタ122は、第1交流信号が通信制御部130に逆流的に供給されるのを防ぐことができる。
【0025】
図3は、第1実施形態において、振動時におけるアンテナ102の回路図を模式的に示す図である。いいかえれば、低周波数の第1交流信号周波数近傍における等価回路を示している。振動信号源116の第1交流信号はキャパシタCを通過できないので、振動信号源116にとって第2端部108はハイ・インピーダンス(開放端)となる。また、帯域フィルタ122により、第1端部106も開放端となる。振動信号源116から供給される第1交流信号は、低域フィルタ120からシム板104を経由して、圧電体112に供給される。圧電体112は伸縮方向に振動し、パネル114には振動が伝えられる。
【0026】
図4は、第1実施形態において、通信時におけるアンテナ102の回路図を模式的に示す図である。いいかえれば、高周波数の第2交流信号周波数近傍における等価回路を示している。通信信号源118の第2交流信号はキャパシタCを通過するので、通信信号源118にとって第2端部108は短絡端となる。低域フィルタ120により、第1端部106は開放端となる。この結果、開放端(第3端部110)、給電端(第1端部106)、短絡端(第2端部108)を有する逆Fアンテナの構成となる。第2端部108の接地点から、第3端部110までの長さは電気長換算でn×(λ/4)となるように設定される。nは整数、λは第2交流信号の波長である。通信信号源118から供給される第2交流信号は、帯域フィルタ122からシム板104に供給される。シム板104の第3端部110側から電波が放射される。
【0027】
図5に示すように、圧電体112はシム板104の裏面ではなく表面に接着されてもよい。あるいは、図6に示すように、圧電体112a、112bをシム板104の両面に接着し、バイモルフ(Bimorph)構造の圧電アクチュエータとしてもよい。また、単板の圧電体のみならず、積層構造の圧電体を用いてもよい。なお、上述のような電波送信時に限らず、同様の構成は電波受信時にも有効に適用される。
【0028】
[第2実施形態]
図7は、第2実施形態におけるアンテナ102の側面図である。第2実施形態においては、第2端部108は、キャパシタCを介することなく直接接地される。また、振動信号源116は、第1端部106ではなく、圧電体112に第1交流信号を直接供給する。いいかえれば、シム板104を経由することなく、圧電体112に第1交流電流が供給される。それ以外の基本的な構成は第1実施形態と同様である。
【0029】
図8は、第2実施形態において、振動時におけるアンテナ102の回路図を模式的に示す図である。帯域フィルタ122により、第1端部106は開放端となる。振動信号源116から供給される第1交流信号は、低域フィルタ120を経由し、シム板104を経由することなくそのまま圧電体112に供給される。圧電体112は伸縮方向に振動し、パネル114には振動が伝えられる。
【0030】
図9は、第2実施形態において、通信時におけるアンテナ102の回路図を模式的に示す図である。低域フィルタ120により圧電体112は非接地状態となるため、アンテナ102は逆Fアンテナの構成となる。通信信号源118から第1端部106(給電端)に第2交流信号が供給され、シム板104の第3端部110側から電波が放射される。
【0031】
以上、実施形態に基づいて通信デバイス100の構成を説明した。通信デバイス100がもともと備えているアンテナ102に圧電体112を貼り付けることにより、アンテナ102を圧電アクチュエータとしても機能させることができる。このため、省スペースにて触覚フィードバックを提供することが可能となる。また、振動周波数と通信周波数は大きく離れているため、一方が他方に干渉しにくい構成となっている。特に、低域フィルタ120や帯域フィルタ122により、このような干渉がいっそう抑制されている。
【0032】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【0033】
アンテナ102のシム板104は、矩形の板状である必要はなく、曲線部を有してもよい。また、先端部をベンド、スパイラル、メアンダ加工することにより、誘導成分や容量成分を持たせてもよい。このような加工によりアンテナの周波数特性を微調整してもよい。また、アンテナ102は複数の通信周波数に対応する複共振構造を有してもよい。
【符号の説明】
【0034】
100 通信デバイス、102 アンテナ、104 シム板、106 第1端部、108 第2端部、110 第3端部、112 圧電体、114 パネル、116 振動信号源、118 通信信号源、120 低域フィルタ、122 帯域フィルタ、124 信号制御部、126 入力検出部、128 触覚制御部、130 通信制御部、C キャパシタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナと、
前記アンテナに固定される圧電体と、
前記圧電体に、振動周波数にて第1の交流信号を供給する触覚制御部と、
前記アンテナに、通信周波数にて第2の交流信号を供給する通信制御部と、
を備えることを特徴とする通信デバイス。
【請求項2】
前記触覚制御部は、低域フィルタを経由して、前記第1の交流信号を前記圧電体に供給することを特徴とする請求項1に記載の通信デバイス。
【請求項3】
前記アンテナは逆Fアンテナであることを特徴とする請求項1または2に記載の通信デバイス。
【請求項4】
前記アンテナの短絡端は、キャパシタを介してグランドに接続されることを特徴とする請求項3に記載の通信デバイス。
【請求項5】
前記触覚制御部および前記通信制御部は、いずれも前記アンテナの給電端から前記第1および第2の交流信号を供給することを特徴とする請求項3または4に記載の通信デバイス。
【請求項6】
前記通信制御部は、前記アンテナの給電端から前記第2の交流信号を供給し、
前記触覚制御部は、前テナに固定される前記圧電体に前記第1の交流信号を直接供給することを特徴とする請求項3に記載の通信デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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