説明

通信ネットワークにおける動作状態間の効率的な遷移

移動局(118)を休止状態またはアイドル状態にする予備ステップを含む、通信ネットワーク(100)において動作状態間を効率的に遷移するための装置および方法。次のステップは、移動局(118)へのまたはからのデータ転送を要求するステップを含む。次のステップは、移動局(118)を休止状態またはアイドル状態からアクティブ状態に遷移するステップを含む。次のステップは、ページング制御機能(PCF)(108)からRFベアラ機能(110)にデータに対するベアラ・パス・コンテキストを転送するステップを含む。このステップは、PCF間ハンドオフ手順によるトンネルを生成するステップを含むことができる。そのため、データ経路内にPCF(108)が存在していなくても、RFベアラ機能(110)とIPルータ機能(106)とは直接接続することになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、通信システムの分野に関し、特に、通信装置の呼設定に関する。
【背景技術】
【0002】
パケット・データ通信システムのなかでもとりわけ、3GPP2パケット・データ規格であるTIA/EIA/IS835 CDMA2000無線IPネットワーク規格(IS−835)および本明細書においては(WiMAX)通信規格と呼ぶIEEE802.16−2005規格は、パケット・データ・セッション中に、移動局(MS)などの無線通信デバイスに対してアクティブ状態および休止(アイドル)状態を指定することができる。アクティブ状態の場合には、MSは、専用のRF接続を介してインフラストラクチャ装置と接続している。例えば、IS−835の場合には、インフラストラクチャは、基地局(BTS:Base Transceiver Station)とパケット制御機能(PCF)との間に専用の接続を提供する。PCFは、パケット・ネットワークに接続しているパケット・データ・サービス・ノードに接続している。パケット呼は、送信するパケット・データのバーストが存在する場合には、アクティブ状態に移行する。パケット呼は、データのバースト性および時間の長さにより、何回もアクティブ状態と休止(アイドル)状態との間で遷移することができる。
【0003】
休止状態の場合で、MSがデータを送受信していない場合には、専用無線周波数(RF)接続およびBTSおよびPCF間の専用接続は解放される。パケット呼は、所定時間の間にデータの送信が行われなかった場合には、アクティブ状態から休止状態に遷移する。パケット・セッションが休止状態である場合には、ベアラのデータは送信することができず、バッファリングされなければならない。ネットワーク要素は、MSモビリティを追跡し、パケット・データを受信し、MSが再度アクティブ状態になるまでこのデータをバッファリングする。例えば、パケット制御機能は、移動局が休止状態である場合のみ役に立つ。パケット制御機能は、休止状態の移動局に対するコンテキストを維持し、PDSNと一緒にトンネルを維持する。データがネットワーク側から流れ始めると、PDSNは、パケットをPCFに転送し、これにより、PCFは、BSサービス要求をMSCに送信する。次に、移動局がページングされ、移動局が応答すると、トラフィック・チャネル(TCH)およびセレクタが移動局に割り当てられ、次に、移動局は休止状態からアクティブ状態に遷移する。要するに、バッファリングされたデータをMSに送信するためには、呼に専用のRF接続を割り当てなければならないし、BTSとPCFの間の専用の接続を再確立しなければならない。MSとPCFとの間での専用の接続を再確立するため(すなわち、A10およびA8インタフェース間のトンネリングおよびトンネリング解除により)生じた遅延は、データ・サービスの品質に悪影響を及ぼす。さらに、アクティブ状態中、PCFは、MSとPDSNの間のデータに対してコンジットとして動作するだけである。それ故、移動局がアクティブ状態である場合には、PCFリソースは必要ない。類似のプロセスがWiMAX通信の場合も行われる。
【0004】
現在の規格を使用すると、休止(アイドル)状態からアクティブ状態に遷移するのに必要な時間の間に集中処理要素に高いトランザクション・コストがかかる。必要なこの時間のために、データ・サービスの加入者の気持ちは潜在的に悪影響を受ける。これらの問題のために、データ・バーストの送信後、RF接続が長時間維持され、そのため以降のデータ・バーストを直ちに送信することができる構成の開発が盛んに行われている。しかし、長時間不必要な接続を維持すると、RFリソースを効率的に使用することができない。例えば、パケット・データの一連のバーストを送信するためにチャネルを60秒間維持する場合には、1つのチャネルは、60ビジー時間呼の試行(1チャネル*3600/60)を提供することができる。しかし、チャネルがバーストの送信のために5秒間しか維持されない場合には、1つのチャネルは、720BHCA(1チャネル*3600/5)を提供することができる。後者の場合、休止状態からアクティブ状態への遷移(すなわち、呼の試行)は増大する。何故なら、チャネルがもっと短い時間の間だけしか維持されないからである。前者の場合、タイムアウト時間が長いために、専用のチャネルの使用の効率が低下し、パケット・データ・サービスをサポートするために必要な専用のチャネルの数が増大する。
【0005】
米国特許第6,965,588号に開示されている従来技術による1つの解決方法は、この問題を解決するために半休止状態を使用する方法である。この米国特許の場合には、休止状態の間、PDSNへの接続を維持しているネットワーク要素はPCFであり、半休止状態の間は、PDSNへの接続を維持しているネットワーク要素は選択および配信ユニット(SDU)である。休止状態の間、SDUは解放されるが、PCFはPDSNへの接続を維持する。MSが半休止状態にある場合には、呼のためにBSとPDSNとの間の接続を維持しているネットワーク要素はSDUである。移動局がアクティブ状態から半休止状態に移行すると、トラフィック・チャネルは解放されるが、SDUは割り当てられたままである。PCFを介してSDUとPDSNとの間にパスが存在する。移動局が半休止状態にある場合には、PCFへのSDUとPDSNへのPCFとの間にパスが存在する。RF接続上にはトラフィック・チャネルは存在しない。移動局が休止状態からアクティブ状態に遷移すると、BTSを介してMSからSDUへのトラフィック・チャネルができる。しかし、そのため、PCFがいつも存在し、使用されることになる。移動局にはサービスを提供している要素のアドレスが送信され、PCFおよびSDU両方のIPアドレスが移動局に送信されるので、移動局がアクティブ状態になると、その移動局にサービスを提供しているSDUおよびPCF要素の両方を迅速に識別することができる。この解決方法は、効率的ではあるが、第3の半休止状態の統合が必要となり、さらに移動局がアクティブ状態である間、通信路内に依然としてPCFを必要とする。そのためRFリソースを無駄遣いすることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,965,588号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それ故、通信ネットワークにおける動作状態間を効率的に遷移するための方法および装置、特に、送信するベアラ・データがあるか否かにより、RFリソースの効率的な接続により、無線通信デバイスを休止状態とアクティブ状態との間で遷移するための方法および装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、通信ネットワークにおける動作状態間を効率的に遷移するための方法および装置、特に、送信するベアラ・データがあるか否かにより、RFリソースの効率的な接続により、無線通信デバイスを休止状態すなわちアイドル状態とアクティブ状態との間で遷移するための方法および装置を提供する。
【0009】
従来技術の場合には、移動局(MS)のような無線通信デバイスは、ベース・サイト(BS)装置と通話状態でいることができる。呼接続は、パケット制御機能(PCF)などのページング制御機能を介して、およびパケット・データ・サービス・ノード(PDSN)などのIPルーティング機能上のBSおよびセレクタなどのRFベアラ機能によりサポートされる。呼(接続)が、MSとBSとの間で解放されると、BSは、MSにパケット・データ・サービス・ノード(PDSN)との接続を維持しているネットワーク要素の装置識別子を提供し、RFベアラを切断する。MSは識別子を保持し、再起動(アクティブ状態への遷移)を要求している場合には、BSに適切な識別子を送信する。休止状態またはアイドル状態(すなわち、本明細書で使用する非アクティブ状態)の場合には、PDSNへの接続を維持しているネットワーク要素はPCFである。何故なら、RFベアラはすでに解放され、切断されているからである。BSがMSから再起動要求を受信した場合には、BSはPCFをMSに対して確立されているRFベアラ・パスに接続する。
【0010】
本発明によれば、アクティブ状態が再確立した場合には、PCFはバイパスされる。PCFを介して再接続する代わりに、BSがMSから再起動要求を受信した場合には、BSは、RFベアラ機能をIPルーティング機能に直接接続する。都合のよいことに、このことはネットワーク・ハードウェアを修正しなくても行うことができる。ここで図面を参照しながら、本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の装置および方法を実施するために使用することができるシステムの機能ブロック図。
【図2】本発明の第1の実施形態の動作の変化を示すブロック図。
【図3】本発明の第2の実施形態の動作の変化を示すブロック図。
【図4】データの転送がネットワークにより開始される本発明の第1の実施形態のフローチャート。
【図5】データの転送が移動局により開始される本発明の第1の実施形態のフローチャート。
【図6】アクティブ状態からアイドル状態への遷移を示す本発明の第2の実施形態のフローチャート。
【図7】アイドル状態からアクティブ状態への遷移を示す本発明の第2の実施形態のフローチャート。
【0012】
当業者であれば、本発明のこれらの種々の実施形態の図面を分かりやすくするために、商業的に実施可能な実施形態で役に立つかまたは必要な通常使用されるものであるが、周知の要素を原則的に図示したり、説明していないことを理解することができるだろう。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1および図2は、本発明の符号分割多元接続(CDMA)の実施形態による通信ネットワークの機能ブロック図を示す。MS118は、アプリケーション・ホスト102と通信するために、3つのBTS112、114、116とソフト・ハンドオフしている。アプリケーション・ホスト102は、情報をアップロードおよびダウンロードするためにパケット・ネットワーク104に接続している。パケット・ネットワーク104は、IPルータ106に接続している。IPルータ106は、パケット・データ・サービスのためにパケット・ネットワーク104とBS装置109との間にインタフェースを提供する。IPルータ106は、ページング制御機能(PCF)108に接続していて、このPCFはセレクタ110と接続している。PCFは、モビリティ・レジストラを含み、またネットワークからの着信パケットをキューイングすることができる。
【0014】
この第1の実施形態(図に示す)の場合には、システム100は、IS−835通信ネットワークである。この場合、IPルータ106はPDSNであり、PCF108は、パケット制御機能であり、RFベアラ機能111は、セレクタ110およびBTS112、114、116を含む。この実施形態の場合には、PDSNは、A10/A11インタフェースを通してPCFと通信する。PCFは、PDSNから受信したデータをバッファリングする。PCFは、A8/A9インタフェースを通してBTS用のセレクタに接続している。この実施形態の場合には、本発明は層3ベアラを通して動作することができる。
【0015】
第2の実施形態の場合には、図3に示すように、システム100は、WiMAX通信ネットワークであってもよい。この場合、IPルータ機能106は、ルータまたはフォーリン・エージェント(本発明の例の場合に使用するFA)であり、PCF108は、セルラ・アクセス・ポイント・コントローラ(CAPC)107のページング・コントローラ108であり、RFベアラ機能110は、ユーザのための1つまたは複数のアクセス・ポイント(AP)である。この実施形態の場合には、FA106は、ページング・コントローラ108と通信し、このページング・コントローラは、FA106から受信したデータをバッファリングする。ページング・コントローラ108はAPと通信する。この実施形態の場合には、本発明は層2交換網を通して動作することができる。
【0016】
IPルーティング機能106は、FAであってもよく、または非移動局のための簡単な市販のルータであってもよい。ページング・コントローラ108は、MSがアイドル状態である場合だけベアラ・パスに含まれている。ページング・コントローラ108は、MSがアクティブ状態になるとベアラ・パスから除去される。ページング・コントローラ108は、CAPC内にその中で移動局がアイドル状態になっているページング・エリアを追跡するロケーション・レジスタを含む。ページング・コントローラ108は、ネットワークからの着信パケットをキューイングすることができる。サービス提供アクセス・ポイント(AP)は、RFベアラ機能111を構成する。APは、ページング・エリアにグループ分けされ、アイドル状態の移動局は、CAPC内のロケーション・レジストラと位置の更新を行わないで、ページング・エリア内のどこにでも移動することができる。
【0017】
図1および図2のIS−835ネットワークのための第1の実施形態の例に戻って説明すると、RFベアラ機能のセレクタ110は、MS118とBTS112、114、116との間でソフト・ハンドオフを維持する。セレクタ110も、PCF108に送信するために、BTS112、114、116を介してMS118から受信した最善のデータ送信を選択し、MS118宛のデータのコピーを、MS118がソフト・ハンドオフしているすべてのBTS112、114、116に配信する。MS118へ/からの制御メッセージは、セレクタ110で発信/着信する。BTS112、114、116は、専用RFトラフィック・チャネルを通してMS118にベアラ・データおよび制御情報を送受信する。
【0018】
また、セレクタは、制御リンクを介してモビリティ・マネージャ(MM)120に接続している。MM120は、BS装置109に接続している呼に制御機能を提供する。例えば、MM120は、呼の状態を監視し、いつ呼を解放すべきかを判別し、いつソフト・ハンドオフを行うべきかを決定し、ソフト・ハンドオフしているどのBTSを追加すべきか、ドロップすべきか等を決定する。MM120は、A1インタフェース(IS−835に規定されているような)を通して移動交換局(MSC)122と接続している。MSC122は、MM120を公衆交換電話網(PSTN)126にインタフェースする。MSC122も、IS−41インタフェースを通してホーム・ロケーション・レジスタ/ビジタ・ロケーション・レジスタ(HLR/VLR)124に接続している。MS118がホーム・ネットワーク内に位置している場合には、HLR124がMS118の位置を判別し、MSC122に情報を提供する。MS118がビジタ・ネットワーク内に位置している場合には、VLR124は、HLR情報のコピーを入手し、それをビジタ・ネットワーク内のMSC123のようなMSCに提供する。MSC122およびMSC123は、IS−41インタフェースを介して接続している。ロケーション・レジスタおよびページング機能は、技術およびネットワーク・アーキテクチャに基づいて、異なるネットワーク要素において実施することができることを理解されたい。CDMAネットワークにおいては、PCFは、移動局に対するデータを格納し、移動局をページングするためにBSCおよびMSCと協働して動作することができる。
【0019】
図1の要素およびインタフェースは、当業者であれば周知のものであるので、これ以上の説明は省略する。また、本発明は、図3のWiMAXネットワークまたは本明細書に記載するIS−835のところで説明したものと同様の類似性を有する他のパケット・データ・ネットワークにも適用可能であることも理解されたい。それ故、これ以上の説明は省略する。
【0020】
本発明は、トンネリングおよびトンネリング解除による遅延の解決方法を提供する。この場合、移動局がアクティブ状態にある場合には、PCFリソースは無駄に使用されない。RFベアラをIPルータに直接接続することにより、パケット転送の際の遅延が大幅に低減するが、このことは低レイテンシを必要とするリアルタイム・サービスにとって大きな利点である。
【0021】
図2および図3を参照すると、移動局がアクティブ状態になると、ベアラ・パス・コンテキストが、PCF108からRFベアラ機能111に転送される。次に、RFベアラ機能110は、IPルータ機能と一緒にPCF間ハンドオフ手順を使用し、それ自身とIRルータとの間にトンネルを生成する。特定の実施ネットワークに対する通信規格は、このプロセスにより影響を受けないが、本発明は、IPルータ機能106に対して、RFベアラ機能111が、ページング制御機能108として現れ、制御通信に対してセキュリティ・コンテキストを有していることを要求する。
【0022】
例えば、IS−835実施形態の場合には、移動局がアクティブ状態になると、ベアラ・パスA10コンテキストが、PCFからセレクタに転送される。次に、セレクタは、PDSNとのA11PCF間ハンドオフ手順を使用し、それ自身とPDSNとの間にA10トンネルを生成する。A10/A11規格は影響を受けない。PDSNから見た場合、セレクタはPCFのように見え、A11通信に対するセキュリティ・コンテキストを有する。このアプローチは、呼が従来技術と同じシーケンスで処理される場合より呼設定時間を短縮する。
【0023】
CDMAの場合には、本発明は、a)ネットワークがMSに転送されるパケット・データを有している場合、またはb)MSがパケット・データ転送を開始する場合の両方に適用可能である。WiMAXの場合には、本発明は、MSがa)アクティブ・モードからアイドル・モードに切り替わった場合、およびb)アイドル・モードからアクティブ・モードに切り替わった場合に適用可能である。
【0024】
図4は、IS−835ネットワークが、MSに転送されるパケット・データを有している場合を示す。この例の場合、PCF108が、休止状態のMS118に対するデータを受信した場合、PCF108は、A1インタフェースとして機能している基地局コントローラ(BSC)内の呼制御(CC)機能に警告を与える。次に、BSCは、CCにBSサービス要求を送信することにより、MSC122にMSをページングするように要求する。MSCは、A1インタフェースによりページ・メッセージを送信する。これにより無線(over−the−air)でMSがページングされる。MSが応答した場合には、セレクタ110がMSに割り当てられる。PCF108は、移動局に対する呼コンテキストおよびバッファリグされたデータをセレクタに転送する。次に、セレクタは、PDSN106と一緒にA10トンネルを設定することができる。
【0025】
A10トンネルの確立が、A8の従来の確立とほぼ同時に行うことができる場合には、セレクタへのコンテキストおよびデータの転送は、追加ステップになる。それ故、プッシュ・ツゥ・トーク(PTT)のような呼設定時間が非常に重要なリアルタイム・アプリケーションの場合には、セレクタは、PCFが休止状態MSに対するデータを受信した後であって、MSからページ応答を受信する前に割り当てられる。MSが休止モードになった場合には、セレクタはPCFに通知し、PCFがそれ自身に戻るトンネルを移動することができるようにする。トンネル転送を行うために、再度PCF間ハンドオフ技術が使用される。
【0026】
図4は、MSが、IS−835ネットワークにおいてパケット・データ転送を開始したがっている場合である。この例の場合には、発呼によりMSが休止状態からアクティブ状態に遷移した場合、本発明を使用すれば、セレクタ110は、PCF108をバイパスし、それ自身にA10トンネルを転送することができる。より詳細には、MSは、BSC内の呼制御(CC)機能に警告を発する。セレクタ110がMSに割り当てられ、それ自身にPDSN106へのA10トンネルを転送する。この場合、PDSN106は、古いA10トンネルをクリアする。その結果、セレクタ110は、PCFをバイパスし、PDSN106と直接通信する。
【0027】
図6および図7は、WiMAX通信システムにおける本発明の一例を示す。IEEE802.16−2005(WiMaX)においては、MSがアクティブ状態にある場合には、アクセス・ポイント(AP)によりトランスポート接続が可能になり、データがIPルーティング機能から直接APに送出される。MSがアクティブ状態でない場合には、トランスポート接続はアイドル状態になり、APがすべてのRFリソースを解放し、代わりに、セルラ・アクセス・ポイント・コントローラ(CAPC)内のページング制御機能(PCF)が、ネットワークからの移動局のために、着信データをインターセプトし、キューイングする。アイドル状態のMSに対するパケットを受信した場合には、CAPC内のPCFは、最後にMSを含んでいることが分かったページング・エリア内のすべてのAPをページングする。MSが作動すると(すなわち、ページに応答すると)、キューイングされたデータが、現在作動したMSと関連しているAPに送信される。キューイングされたデータは、APとIPルーティング機能の間のベアラ・パスがAPを直接ポイントするようにリダイレクトされている間にMSに送出される。通常、アイドル状態の場合には、RFベアラ機能は解放される。
【0028】
図6は、WiBB接続が、アクティブ・モードからアイドル・モードに切り替わる場合を示す。この場合、MSは、アイドル・モードを要求し、ネットワークは、RFベアラ・リソースを解放する。アクティブ・モードである場合には、MSは、アクティブ状態にあり、ベアラ・データは、移動局のためのルータ/FAおよびAP間を流れている。次に、MSは、APをアイドル・モードにするように要求する。次に、APは、ロケーション・レジストラに、MSがCAPC内でアイドル・モード・サポートを要求したページング・エリアを通知する。次に、CAPC内のページング制御機能は、この特定のMSのためにそれ自身にベアラ・パスをリダイレクトする。例えば、このことは、CAPCからIPルーティング機能に層2パケットを送信することにより行うことができ、そのため、インタリービング層2スイッチは、MSのMACアドレスが現在到達可能な正しいポートを知ることができ、そのため、以降のダウンリンク・パケットは、CAPC内のページング制御機能に戻る逆の経路を流れる。次に、MSは、アイドル・モードになるように指示される。この時点で、MSは、ページング・エリア内の任意のAP上でページング・チャネルを静かに再選択し、監視することができる。
【0029】
図7は、WiMAX接続が、アイドル・モードからアクティブ・モードに切り替わる場合を示す。この場合、MS宛のベアラ・データは、ルータ/FAのところに到着し、MSに送出される。アイドル・モードの場合、ルータ/FAは、データ・パケットを(すでに詳細に説明したように)ページング・コントローラに送出する。CAPCは、MSが最後に関連したページング・エリアにパケットをマッピングし、パケットをキューイングする。CAPCは、ページング・エリアの一部であるすべてのAPにページを送信する。APの1つ上でページング・チャネルを監視しているMSは、ページに応答し、アクティブ状態に遷移しようとする。APは、CAPCに自身がMSの位置を発見したことを通知し、またベアラ・パスを更新するので、以降のデータ・パケットは、直接APにルータ/FAにより送信される。MSからの任意のパケットは、APに送信される。CAPCは、すべてのキューイングされたパケットをAPに送出する。次に、CAPCは、もはやベアラ・パス内に存在しない。
【0030】
ルータ/FA,CAPCおよびAP間のネットワークは、層2イーサネット(登録商標)・ネットワークである。APまたはCAPCからルータ/FAにイーサネット(登録商標)制御パケットを送信することにより、ベアラを容易にリダイレクトすることができる。イーサネット(登録商標)・フレームは、MSの媒体アクセス・コントロール(MAC)アドレスを含んでいるので、各MSは、層2ネットワークを通るそれ自身のデータ経路を有する。層2スイッチは、所与のMACアドレスを含むパケットが到着するポートを更新し、そのため逆方向のパケットは、ネットワークを通して下方に戻る同じ経路を流れる。
【0031】
本発明の場合には、システム・オペレータが、加入者の観点からのデータ・サービスの品質、RFチャネルの利用、バッテリー電力、およびアクセス・チャネル容量間で最適なバランスをとるために、アクティブ状態および休止(アイドル)状態の遷移の動作を調整することができることに留意されたい。この調整は、MSが休止(アイドル)状態でいる時間を修正することにより行うことができる。
【0032】
本発明は、WiMAX、CDMA−1XおよびEvDOアーキテクチャのような、IPをベースとする新しい無線アーキテクチャで広い用途を有する。任意の無線ネットワークにおいては、電源がオンになっている移動局は、いつでも使用可能なRFリソースを使用することができるが、すべての電源がオンになっている移動局がそうできるわけではない。アイドル状態、休止状態およびアクティブ状態のコンセプトは、無線ネットワークに共通のものである。移動局が休止状態にある場合には、移動局は、セッション・コンテキストを確立している。移動局がアクティブ状態になると、BTSおよびBSCリソースが割り当てられる。本発明の場合には、このセッション・コンテキストを維持しているネットワーク・エンティティは、ベアラ・データの経路内に位置している必要はない。何故なら、このエンティティはコンテキストを維持しているからである。本発明は、移動局がアクティブ状態になった場合に、ベアラ・パスからPCFを除去するために、新しい方法ですでに確立しているPCF間ハンドオフ技術を利用する。
【0033】
本明細書で図示し、説明したシーケンスおよび方法は、記載した順序とは異なる順序で実行することができる。図面に示す特定のシーケンス、機能および動作は、本発明の1つまたは複数の実施形態を単に説明するためのものに過ぎず、当業者であれば他の実施態様を思い付くことができるだろう。図面は、通常の当業者であれば理解し、適切に実行することができる本発明の種々の実施態様を説明するためのものである。同じ目的を達成するために計算された任意の装置を、図の特定の実施形態の代わりに使用することができる。
【0034】
本発明は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアまたはこれらの任意の組合せを含む任意の適切な形で実施することができる。任意選択として、本発明の一部を、1つまたは複数のデータ・プロセッサおよび/またはデジタル信号プロセッサ上で稼働しているコンピュータ・ソフトウェアとして実施することができる。本発明の実施形態の要素および構成要素は、任意の適切な方法で、物理的に、機能的におよび論理的に実施することができる。実際、機能は、1つのユニット、複数のユニットまたは他の機能ユニットの一部として実施することができる。それ故、本発明は、1つのユニット内で実施することができるし、または異なるユニットおよびプロセッサ間で物理的および機能的に分散することができる。
【0035】
本発明をいくつかの実施形態を参照しながら説明してきたが、この説明は、本明細書で説明した特定の形状に限定するためのものではない。それどころか、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってだけ制限される。さらに、ある機能は、特定の実施形態に関連して記載してあるように思われるかもしれないが、当業者であれば、上記実施形態の種々の機能は、本発明により組み合わせることができることを理解することができるだろう。特許請求の範囲内における「備える」という用語は、他の要素またはステップの存在を除外するものではない。
【0036】
さらに、個々に列挙してあるが、複数の手段、要素または方法ステップは、例えば、1つのユニットまたはプロセッサにより実施することができる。さらに、個々の機能を異なる請求項に含ませることができるが、これらの機能はおそらく有利に結合することができ、異なる請求項に記載されているからといって、機能の組合せを行うことができないことを意味するものではなく、および/またはこのような組合せが不利であることを意味するものでもない。請求項の1つの範疇にある機能が記載されているからといって、この範疇に限定されることを意味するものではなく、それどころか、このことは、この機能を他の請求項の範疇に適切なものとして等しく適用可能であることを示すものである。
【0037】
さらに、請求項内の機能の順序は、その機能が作用しなければならない任意の特定の順序を意味するものでもないし、特に、ある方法請求項内の個々のステップの順序は、これらのステップをこの順序で実行しなければならないことを意味するものでもない。それどころか、これらのステップは任意の適切な順序で実行することができる。さらに、1つと表示してあっても、複数であってもよい。それ故、「ある(「a」または「an」)」、「第1の」、「第2の」等は複数であってもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ネットワークにおいて、動作状態間を効率的に遷移するための方法であって、
移動局を非アクティブ状態にするステップと、
データの転送を要求するステップと、
前記移動局を前記非アクティブ状態からアクティブ状態に遷移させるステップと、
前記データに対するベアラ・パス・コンテキストをページング制御機能(PCF)からRFベアラ機能に転送するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記転送ステップが、PCF間ハンドオフ手順によりトンネルを生成するステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記転送ステップが、前記データ経路内に前記PCFが存在しない状態で、前記RFベアラ機能をIPルータ機能に直接接続するステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記RFベアラ機能が、前記IPルータから見た場合、前記PCFのように見える請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記RFベアラ機能が、セレクタおよび少なくとも1つの基地局であり、前記PCFが、パケット制御機能であり、および前記IPルータが、パケット・データ・サービス・ノード(PDSN)であり、前記転送ステップが、前記ベアラ・パスA10コンテキスト・トンネルを前記パケット制御機能から前記セレクタに転送するステップを含む請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記RFベアラ機能がセレクタであり、前記PCFがパケット制御機能であり、前記IPルータがパケット・データ・サービス・ノード(PDSN)であり、前記要求ステップが、前記PCFが前記非アクティブ移動局に転送されるデータを受信するステップを含み、
A1インタフェースのための基地局コントローラ(BSC)内の呼制御(CC)機能に警告を行うステップと、
前記CCにBSサービス要求を送信するステップと、
前記移動局に前記A1インタフェース上のページ・メッセージを送信するステップと、
前記ページ・メッセージに応答するステップと、
前記移動局に対してセレクタを割り当てるステップと、
をさらに含み、
前記転送ステップが、前記セレクタに、前記呼コンテキストおよび前記移動局に対する前記バッファリングされたデータを転送するステップと、前記PDSNと一緒にA10トンネルを設定するステップとを含む請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記移動局により前記非アクティブ状態になるステップと、
その前記PCFに通知するステップと、
前記PCFが、自身に戻る前記A10トンネルを移動することができるようにするステップと、
をさらに含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記RFベアラ機能が、セレクタおよび少なくとも1つの基地局であり、前記PCFが、パケット制御機能であり、前記IPルータが、パケット・データ・サービス・ノード(PDSN)であり、前記要求ステップが、前記移動局から転送されるデータを前記移動局が発信するステップを含み、前記転送ステップが、前記セレクタが前記PCFをバイパスし、それ自身に対して前記A10トンネルを転送することができるようにするステップを含む請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記RFベアラ機能が、アクセス・ポイント(AP)であり、前記PCFが、ページング制御機能であり、前記IPルータが、標準IPルータおよびフォーリン・エージェント(FA)からなるグループのうちの1つであり、前記要求ステップが、前記PCFが非アクティブ移動局に転送される着信データをキューイングするステップを含み、前記転送ステップが、前記APが前記PCFをバイパスし、トランスポート接続を前記IPルータに直接転送することができるようにするステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
通信ネットワークにおいて動作状態間を効率的に遷移するためのシステムであって、
非アクティブ状態の移動局(MS)であって、前記ネットワークと前記移動局の間のデータの転送を要求し、前記非アクティブ状態からアクティブ状態に遷移する移動局(MS)と、
RFベアラ機能と、
IPルータ機能と、
ページング・コントローラから前記RFベアラ機能に前記データに対するベアラ・パス・コンテキストを転送するページング・コントローラであって、前記RFベアラ機能が、前記データ経路内に前記ページング・コントローラが存在しない状態で、IPルータに直接接続しているページング・コントローラと、
を備えるシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−514266(P2010−514266A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541432(P2009−541432)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際出願番号】PCT/US2007/079005
【国際公開番号】WO2008/073552
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(390009597)モトローラ・インコーポレイテッド (649)
【氏名又は名称原語表記】MOTOROLA INCORPORATED
【Fターム(参考)】