説明

通信制御方法及びこれを用いたレーダシステム

【課題】 複数のセンサ装置から送信される大量の探知データを効率的に受信する。
【解決手段】 複数のセンサ装置から共通の情報処理装置に対して送信される目標物の探知データの通信量を制御する通信制御方法において、前記共通の情報処理装置は、複数のセンサ装置からそれぞれ送信された探知データを受信する工程と、それらの受信した探知データの通信量から前記複数のレーダ装置と情報処理装置との間の通信負荷を計算し、その通信負荷に応じた通信許可範囲を求める工程と、その求めた通信許可範囲を前記複数のレーダ装置に指示する工程とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数のセンサ装置により取得した目標物の探知情報を共通の情報処理装置において効率的に受信するための通信制御方法及びこの通信制御方法を用いて複数のレーダ装置により取得した目標物の探知情報を共通の情報処理装置において効率的に受信ないし処理するレーダシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のレーダ装置を分散配置して対空目標等の目標物を捜索するレーダシステムでは、各レーダ装置によって取得した目標物の探知情報を共通の情報処理装置にそれぞれ送信し、当該共通の情報処理装置において各レーダ装置により取得した探知情報の一元的な処理を実施している。なお、このように共通の情報処理装置により目標物の探知情報を処理するものでは、各レーダ装置に対して情報処理の結果に応じた短時間での電波の照射方向の制御を行うことができず、各レーダ装置の電波放射方向を短時間に制御しリアルタイムな目標情報収集能力を向上させるため、各レーダ装置において目標情報の処理をそれぞれ実施するよう構成し、各レーダ装置の判断により重点目標の監視、電波放射方向の制御を行うこと等が提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−51051号公報(第3−4頁、図1、図2等)
【特許文献2】特開2001−124847号公報(第2−3頁、図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のレーダシステムは以上のように構成されているので、いずれにしても各レーダ装置における探知情報の処理結果等を共通の情報処理装置において把握することが必要であり、特に後者においては、各レーダ装置において処理された探知情報の処理結果を通信装置を用いて共通の情報処理装置に送信することが必要であるが、例えば、各レーダ装置が同時に大量の探知情報を送信した場合には、通信装置自体の負荷が高くなり、探知情報の送受信ができなくなる、又は送受信動作が遅延する状況等が発生し、その結果、全体状況の把握に抜けや遅れが生じるという問題点があった。
【0005】
また、各レーダ装置から送信される情報は様々であり、重要性の高い情報からそうでない情報まで区別なく送信されており、各レーダ装置から送信された探知データを受信して一元的に管理する共通の情報処理装置においては、重要度の高い探知データをリアルタイムに把握することができないという問題点があった。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解消するためになされたものであり、各レーダ装置から送信された探知データを受信する通信装置の負荷状況を検出し、通信負荷が高い状況であっても重要度の高い探知データを優先して受信することができる新規な通信制御方法及びこれを用いたレーダシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る通信制御方法は、複数のセンサ装置から共通の情報処理装置に対して送信される目標物の探知データの通信量を制御する通信制御方法において、前記共通の情報処理装置は、複数のセンサ装置からそれぞれ送信された探知データを受信する工程と、それらの受信した探知データの通信量から前記複数のレーダ装置と情報処理装置との間の通信負荷を計算し、その通信負荷に応じた送信許可範囲を求める工程と、その求めた送信許可範囲を前記複数のレーダ装置に指示する工程とを備えたものである。
【0008】
また、他の発明に係るレーダシステムは、レーダ電波を送受信して目標物の探知データを取得する複数のレーダ装置と、これら複数のレーダ装置によりそれぞれ取得された探知データを共通的に処理する情報処理装置とを備え、前記情報処理装置は、前記複数のレーダ装置から送信された探知データの通信量から前記複数のレーダ装置と情報処理装置との間の通信負荷を計算し、その通信負荷に応じた送信許可範囲を求める通信制御部及びその求められた送信許可範囲を前記複数のレーダ装置に対して指示するデータ通信部を有するレーダシステムにおいて、前記複数のレーダ装置は、取得した探知データのうち前記情報処理装置から指示された送信許可範囲により許可された探知データを選択して前記共通の情報処理装置に送信するものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、各センサ装置と共通の情報処理装置との間における通信負荷が高い状況であっても重要度の高い探知データを優先して受信することができ、複数のセンサ装置から送信される大量の探知データを効率的に受信することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
以下、この発明の実施形態1を図1及び図2を用いて説明する。図1は実施の形態1によるレーダシステムを示すブロック構成図である。図1において、1a,1b,1cはセンサ装置であるレーダ装置、2は各レーダ装置1a,1b,1cから送信された目標物の探知データを受信ないし処理して観測エリア内の全体状況を把握し、また後述するように各レーダ装置1a,1b,1cから送信される探知データの通信量を制御する共通の情報処理装置、3a,3b,3cは各レーダ装置1a,1b,1cに設けられ、レーダ電波を送受信して目標物の探知情報(以下、探知データという)を検出する目標捜索部、4a,4b,4cは情報処理装置2からの指示に基づいて目標捜索部3a,3b,3cにより検出された各探知データをそれぞれ情報処理装置2に対して送信するデータ通信部、5は情報処理装置2に設けられ、各レーダ装置1a,1b,1c内のデータ通信部4a,4b,4cを介して送信された目標物についての各探知データを受信するデータ通信部、6はデータ通信部5における通信量から定期的に通信負荷状況を計算し、その計算された通信負荷に応じた送信許可範囲を算出する通信制御部、7a、7b、7cは各レーダ装置1a,1b,1cの目標捜索部3a,3b,3cにより検出され、データ通信部4a,4b,4cを介してそれぞれ送信された探知データ、8は共通の情報処理装置2の通信制御部6において求められた送信許可範囲に基づく通信制御情報である。
【0011】
次に動作について説明する。まず、各レーダ装置1a,1b,1cでは、目標捜索部3a,3b,3cにより航空機等の目標物について探知データをそれぞれ検出する。各目標捜索部3a,3b,3cにより検出された探知データは対応するデータ通信部4a,4b,4cにそれぞれ出力される。各データ通信部4a,4b,4cでは、対応する目標捜索部3a,3b,3cから出力された探知データのうち共通の情報処理装置2から通知された通信制御情報に基づいて探知データを選択し、その選択した探知データを共通の情報処理装置2に対してそれぞれ送信する。このように、各レーダ装置1a,1b,1cでは、目標捜索部3a,3b,3cにより検出された探知データのうち共通の情報処理装置2から通知された通信制御情報に基づき選択された探知データのみが共通の情報処理装置2に対してそれぞれ送信される。
【0012】
次に、共通の情報処理装置2の動作について説明する。各レーダ装置1a,1b,1cから送信された探知データはデータ通信部5により受信され、その通信量が通信制御部6により監視される。通信制御部6はデータ通信部5において受信した通信量から各レーダ装置1a,1b,1cと共通の情報処理装置2との間の通信負荷及び通信負荷の変化率等を定期的に計算しており、これらの大小に応じて各レーダ装置1a,1b,1cが送信すべき探知データの「しきい値」(以下、送信許可範囲という)を求め、当該送信許可範囲に基づく通信制御信号をデータ通信部5に出力する。データ通信部5は、通信制御部6から出力された通信制御情報を各レーダ装置1a,1b,1cに対して送信する。このように、各レーダ装置1a,1b,1cと共通の情報処理装置2との間の通信負荷に応じた送信許可範囲が共通の情報処理装置2から各レーダ装置1a,1b,1cに対して送信されるので、各レーダ装置1a,1b,1cは取得した探知データのうち共通の情報処理装置2に対して送信すべき探知データを選択することができる。
【0013】
ここで、図2は図1に示す各レーダ装置1a,1b,1cと共通の情報処理装置2との間の通信負荷に応じて求められる送信許可範囲の概念図である。図2に示すように、レーダ装置1aでは探知データA、B、レーダ装置1bでは探知データC、D、レーダ装置1cでは探知データE、Fをそれぞれ保持しており、その内、探知データA、B、Cが重要性の高い探知データとする。また各探知データA〜Fにおいてこれらを構成するデータ項目が高/中/低の3ランクの優先度区分に分けられるものとする。例えば、各レーダ装置1a,1b,1cと共通の情報処理装置2との間の通信負荷が充分低い場合には、通信制御部6は送信許可範囲9に基づく通信制御情報をデータ通信部5に出力し、各レーダ装置1a,1b,1cは図2のデータA-高〜データF-低の全データを共通の情報処理装置2に対して送信することになるが、各レーダ装置1a,1b,1cと共通の情報処理装置2との間の通信負荷が高くなった場合には、通信制御部6は各レーダ装置1a,1b,1cから送信される探知データを重要性の高い探知データA、B、Cに制限するため送信許可範囲10に基づく通信制御情報をデータ通信部5に出力する。さらに通信負荷が高くなった場合には、通信制御部6は各レーダ装置1a,1b,1cから送信する探知データの種類をもっとも優先度の高い探知データA-高、データB-高、データC-高のみに制限するため送信許可範囲11に基づく通信制御情報をデータ通信部5に出力する。
【0014】
以上のように、実施の形態1によるレーダシステムでは、単にレーダ装置毎ではなく、複数のレーダ装置1a,1b,1cがそれぞれ保持する探知データの重要度に着目して優先度を決定しており、共通の情報処理装置2は、通信負荷が高い状況の場合には、複数のレーダ装置において取得された探知データのうち重要度の高い探知データを優先して受信することができ、複数のレーダ装置から送信される大量の探知データを効率的に受信することができる。例えば、実施の形態1では、レーダ装置1aが保持する探知データA−低の優先度をレーダ装置2aが保持する探知データD−高、レーダ装置3aが保持する探知データE−高等よりも高く設定している。
【0015】
なお、実施の形態1では、レーダ電波を送受信するレーダ装置をセンサ装置とするレーダシステムの場合を例として説明したが、センサ装置としてはこれに限られるものではなく、各種のセンサ装置を用いることができる。例えば、自ら電波を発射せずに到来電波を受信して目標物の探知等を行う電波探知装置等をセンサ装置とするシステムにおいても上述したような通信制御方法を同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態1によるレーダシステムを示すブロック構成図である。
【図2】図1に示す各レーダ装置1a,1b,1cと共通の情報処理装置2との間の通信負荷に応じて求められる送信許可範囲の概念図である。
【符号の説明】
【0017】
1a,1b,1c レーダ装置(センサ装置)、2 共通の情報処理装置、
3a,3b,3c 目標捕捉部、4a,4b,4c データ通信部、
5 データ通信部、6 通信制御部、7a,7b,7c 探知データ、
8 通信制御情報、9,10,11 送信許可範囲。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセンサ装置から共通の情報処理装置に対して送信される目標物の探知データの通信量を制御する通信制御方法において、前記共通の情報処理装置は、複数のセンサ装置からそれぞれ送信された探知データを受信する工程と、それらの受信した探知データの通信量から前記複数のレーダ装置と情報処理装置との間の通信負荷を計算し、その通信負荷に応じた送信許可範囲を求める工程と、その求めた送信許可範囲を前記複数のレーダ装置に指示する工程とを備えた通信制御方法。
【請求項2】
前記複数のレーダ装置と情報処理装置との間の通信負荷を定期的に計算する請求項1に記載の通信制御方法。
【請求項3】
レーダ電波を送受信して目標物の探知データを取得する複数のレーダ装置と、これら複数のレーダ装置によりそれぞれ取得された探知データを共通的に処理する情報処理装置とを備え、前記情報処理装置は、前記複数のレーダ装置から送信された探知データの通信量から前記複数のレーダ装置と情報処理装置との間の通信負荷を計算し、その通信負荷に応じた送信許可範囲を求める通信制御部及びその求められた送信許可範囲を前記複数のレーダ装置に対して指示するデータ通信部を有するレーダシステムにおいて、前記複数のレーダ装置は、取得した探知データのうち前記情報処理装置から指示された送信許可範囲により許可された探知データを選択して前記共通の情報処理装置に送信するレーダシステム。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−51599(P2008−51599A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−226774(P2006−226774)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】