説明

通信機器の開発方法、通信機器の開発支援プログラム、通信機器

【課題】デバイス記述ファイルに定義したパラメータと、機器の仕様との間の齟齬を低減する。
【解決手段】共通化された通信仕様を用いて通信する通信機器100を開発する方法であって、通信機器100の機器仕様を定義したデバイス記述ファイルから機器仕様を定義した仕様データ602を抽出するステップと、仕様データ602を通信機器100が備える記憶装置110に書き込む書込ステップと、記憶装置110から仕様データを読み込みその仕様にしたがって通信機器100を動作させる処理を規定したプログラムを生成するステップと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共通化された通信仕様を用いて通信する通信機器を開発する技術、およびその通信機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、工場などで稼動している機器とコントローラとの間の信号のやり取りをデジタル通信を用いて行う規格として、「フィールドバス」が規定されている。
フィールドバス仕様(例えばPROFIBUSやPROFINET等)では、機器の通信仕様をコントローラなどのマスター機器に取り込む手段として、「デバイス記述ファイル」というものが使用される。
【0003】
機器ベンダーは、各フィールドバスのコンソーシアムが作成した仕様書に基づき、各種IDやデータ属性等のパラメータを記述したデバイス記述ファイルを作成する。これにより、マスター機器が通信することのできる機器を提供することが可能となる。
【0004】
例えばPROFIBUSにおけるGSDファイル等が、上述のデバイス記述ファイルに該当する。これらの仕様は、コンソーシアムが広報している解説資料等により広く認知されている(非特許文献1)。
【0005】
一方、フィールドバスデバイスに関連し、『フィールドデバイスとコントローラとの組合せおよびプラットホームに依存しないデバイス記述を可能とする装置を提供すること。』を目的とする技術として、『フィールドデバイスにはこのデバイスの機能を記述するプログラムコードがファイルされ、前記フィールドデバイスはプロセッサを有し、該プロセッサ内で前記プログラムコードが実行可能であり、前記コントローラにはランタイム環境が設けられており、前記プログラムコードは前記フィールドデバイスから前記コントローラへ前記フィールドバスを介して伝送された後は前記ランタイム環境で実行可能であり、これによってフィールドデバイスの遠隔制御および/または遠隔操作が、フィールドバスを介してフィールドデバイスパラメタを伝送することによって、前記ランタイム環境の下で実行可能であることを特徴とする装置を構成する。』というものが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−316685号公報(要約)
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】PROFIBUS System Description(Technology and Application)日本語版、日本プロフィバス協会、2003年10月発行、p.27−29
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
デバイス記述ファイルで定義したパラメータは、マスター機器だけではなく、マスター機器と通信する機器のソフトウェア上でも使用される。
機器の動作を規定するソフトウェアの開発環境とデバイス記述ファイルの作成環境は異なるため、機器のソフトウェア開発と、デバイス記述ファイルの作成とは、独立して行われる。
機器のソフトウェア開発者は、デバイス記述ファイルの記述内容を前提として、ソフトウェア仕様を設計する。あるいは、デバイス記述ファイルの作成者は、機器のソフトウェア仕様を前提として、デバイス記述ファイルを作成する。
【0009】
このとき、各設計者がそれぞれ別々に開発作業などを行うため、機器のソフトウェア仕様とデバイス記述ファイルの内容に齟齬が発生しないように、人為的に注意しながら各作業を行う必要がある。
そのため、重複した設計作業や仕様の齟齬などが発生する可能性がある。また、齟齬の有無を確認するため、機器を開発する毎に十分な検証作業が必要である。
【0010】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、デバイス記述ファイルに定義したパラメータと、機器の仕様との間の齟齬を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る通信機器の開発方法は、共通化された通信仕様を用いて通信する通信機器を開発する方法であって、前記通信機器の機器仕様を定義したデバイス記述ファイルから前記機器仕様を定義した仕様データを抽出するステップと、前記仕様データを前記通信機器が備える記憶装置に書き込む書込ステップと、前記記憶装置から前記仕様データを読み込みその仕様にしたがって前記通信機器を動作させる処理を規定したプログラムを生成するステップと、を有するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る通信機器の開発方法によれば、デバイス記述ファイルから抽出した仕様データを通信機器の記憶装置に書き込んでおき、その仕様データを読み込んで動作するプログラムによって当該通信機器の動作を規定する。
そのため、通信機器の動作を規定するプログラムと、デバイス記述ファイルから抽出した仕様データとの結合強度を弱め、両者の間に齟齬が生じる可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態1に係る通信機器100と、その周辺の機器との配置図である。
【図2】通信機器100の機能ブロック図である。
【図3】通信機器100を開発する過程における各データの流れを示す図である。
【図4】デバイス記述ファイル601が加工されていくイメージを示す図である。
【図5】実施の形態2に係る通信機器100と、その周辺の機器との配置図である。
【図6】実施の形態3に係る通信機器100の機能ブロック図である。
【図7】実施の形態4に係る通信機器100の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る通信機器100と、その周辺の機器との配置図である。通信機器100、マスター機器200、ネットワーク管理端末300は、フィールドバス規格に準じたネットワーク500で接続されている。
【0015】
通信機器100は、ネットワーク500を介し、フィールドバス規格に準じてマスター機器200と通信する機器である。
マスター機器200は、通信機器100の親機としての役割を持つ。
ネットワーク管理端末300は、ネットワーク500の設計作業を行う端末である。
設計端末400は、通信機器100の設計作業を行う端末である。
【0016】
設計端末400は、後述するデバイス記述ファイル作成ツール410、デバイス仕様データ抽出ツール420、デバイス仕様データ書込ツール430をHDD(Hard Disk Drive)のような記憶装置に格納している。
これら各ツールは、設計端末400上で実行されるソフトウェアプログラムである。
設計端末400は、これら各ツールを実行して、設計者が通信機器100を設計する作業を支援する。
【0017】
ネットワーク管理端末300、設計端末400は、必要な入出力インターフェースを適宜備えるパーソナルコンピュータ(PC)などを用いて構成することができる。
【0018】
図2は、通信機器100の機能ブロック図である。
通信機器100は、パラメータ記憶部110、制御部120を備える。
【0019】
パラメータ記憶部110は、後述の仕様データ(書込形式)603を格納する。
制御部120は、アプリケーション部121、通信処理部122、データ管理部123を備え、通信機器100の動作を制御する。
【0020】
アプリケーション部121は、通信機器100の主要動作を実行する機能部である。
通信処理部122は、マスター機器200などの他の通信機器との間の通信に係る処理を実行する機能部である。
データ管理部123は、後述の仕様データ(書込形式)603を受け取り、パラメータ記憶部110に書き込む。また、必要に応じてパラメータ記憶部110が格納しているデータを読み出す機能も有する。
【0021】
アプリケーション部121、通信処理部122は、パラメータ記憶部110が格納している仕様データを参照し、これに基づいてフィールドバス規格に準じた動作を実行する。
【0022】
パラメータ記憶部110は、通信機器100の動作プログラムを格納する例えばフラッシュメモリ等の特定領域を割りあて構成する。または、メモリカードやHDD等外部から書き込み可能な記憶装置で構成することも可能である。
【0023】
制御部120および制御部120が備える各機能部は、これらの機能を実現する回路デバイスのようなハードウェアを用いて構成することもできるし、マイコンやCPU(Central Processing Unit)などの演算装置とその動作を規定するソフトウェアを用いて構成することもできる。
【0024】
これらをソフトウェアとして構成する場合、通信機器100の開発者は、適当な開発端末上で開発支援ツールを用いてこれらのソフトウェアを開発する。開発者が開発したソフトウェアは、実行形式のプログラムモジュールとして生成され、通信機器100が備える適当な記憶装置に書き込まれる。
【0025】
本発明における「通信機器の開発支援プログラム」は、デバイス記述ファイル作成ツール410、デバイス仕様データ抽出ツール420、デバイス仕様データ書込ツール430が相当する。
また、制御部120が備える各機能部をソフトウェアとして構成する場合は、これらのソフトウェアを開発する開発支援プログラムも、本発明における「通信機器の開発支援プログラム」に含まれる。
【0026】
図3は、通信機器100を開発する過程における各データの流れを示す図である。以下、図3に示す各データの流れについて説明する。
【0027】
(1)デバイス記述ファイル601の流れ
デバイス記述ファイル601は、通信機器100の各種仕様をフィールドバス規格にしたがって記述したデータファイルである。
設計端末400を使用する設計者は、デバイス記述ファイル作成ツール410を使用して、デバイス記述ファイル601を生成する。デバイス記述ファイル601は、設計端末400の内部で、デバイス仕様データ抽出ツール420に引き渡される。また、適当なインターフェースを介して、ネットワーク管理端末300に出力される。
【0028】
(2)仕様データ602の流れ
仕様データ602は、デバイス記述ファイル601に記述されている各種仕様データのなかから、通信機器100に取り込む必要のあるものを抽出したデータである。
設計端末400を使用する設計者は、デバイス仕様データ抽出ツール420を使用して、デバイス記述ファイル601から仕様データ602を抽出する。仕様データ602は、設計端末400の内部で、デバイス仕様データ書込ツール430に引き渡される。
【0029】
(3)仕様データ(書込形式)603の流れ
仕様データ(書込形式)603は、仕様データ602を、通信機器100が取り込むことのできる形式(例えばバイナリ形式)に変換したものである。
設計端末400を使用する設計者は、デバイス仕様データ書込ツール430を使用して、仕様データ602を仕様データ(書込形式)603に変換する。仕様データ(書込形式)603は、通信機器100のパラメータ記憶部110に書き込まれる。
【0030】
(4)ネットワーク設計データ604の流れ
ネットワーク500の設計者は、ネットワーク管理端末300を使用してデバイス記述ファイル601を取り込み、これを用いてネットワーク500の仕様を設計する。設計情報は、ネットワーク設計データ604としてマスター機器200に出力される。
マスター機器200は、ネットワーク設計データ604を使用して、ネットワーク500上の各通信機器と通信する。
【0031】
以上、本実施の形態1における各データの流れについて説明した。
次に、各機器、ツール、および各データの詳細について説明する。
【0032】
(1)デバイス記述ファイル作成ツール410
デバイス記述ファイル作成ツール410が生成するデバイス記述ファイル601には、デバイスID、ベンダーID、各種モジュールID等の各種IDや通信モジュールの設定パラメータ、送受信データの種類・型・長さ等の、通信機器100の仕様に関するパラメータ等が、フィールドバス仕様で定められた構造で配置されている。
【0033】
(2)デバイス仕様データ抽出ツール420
デバイス仕様データ抽出ツール420は、フィールドバス仕様等で定められた構造にしたがってデバイス記述ファイル601を参照し、そのデータ構造の中から、通信機器100に取り込む必要のあるパラメータを順次抽出する。
【0034】
(3)デバイス仕様データ書込ツール430
デバイス仕様データ書込ツール430は、仕様データ602を通信機器100に出力するためのデータとして仕様データ(書込形式)603を生成し、例えば設計端末400のシリアルインターフェースやUSB(Universal Serial Bus)インターフェース等を介して、通信機器100に出力する。
なお、シリアルインターフェースを介して仕様データ(書込形式)603を通信機器100に出力するためには、通信機器100とデバイス仕様データ書込ツール430の双方に、通信ハードウェアを制御するためのドライバソフトウェア等が必要となる。
【0035】
(4)通信機器100のデータ管理部123
通信機器100のデータ管理部123は、上述のインターフェース等を介して仕様データ(書込形式)603を受け取る。
データ管理部123は、受信した仕様データ(書込形式)603から、認証に必要な基本パラメータ情報(ID等)、通信処理部122が使用する通信関連パラメータ、アプリケーション部121が使用する機器関連パラメータ等を抽出し、パラメータ記憶部110に適正に格納する。
データ管理部123は、パラメータ格納のためのメモリ領域を確保する機能を有し、外部から取得したパラメータを識別し、確保したメモリ領域にパラメータを格納する。またメモリ領域の先頭番地をあらかじめ設定したアドレスに設定する。
【0036】
(5)通信機器100のアプリケーション部121、通信処理部122
通信機器100のアプリケーション部121、通信処理部122は、例えばマスター機器200との通信において、マスター機器200が送信するスレーブ機器検出要求等に応じて、パラメータ記憶部110が格納している各種IDを応答で通知する。また、通信チャネルを確立するために必要な各種デバイスパラメータなども、パラメータ記憶部110から取得する。
例えば任意のメモリ空間を確保し、先頭アドレスを格納する固定アドレスを定義するだけでパラメータ取得することは実現可能である。
【0037】
(6)マスター機器200
マスター機器200は、ネットワーク設計データ604に記述されている情報を用いてネットワーク500に接続されるデバイス(通信機器100)を認識し、フィールドバス規格に準じて、通信機器100とデータ通信を実行する。
【0038】
図4は、デバイス記述ファイル601が加工されていくイメージを示す図である。加工過程について以下で説明する。
【0039】
デバイス記述ファイル601は、例えばXML(eXtensible Markup Language)形式で作成された、特定の構造を持つデバイス記述データそのものである。
【0040】
仕様データ602は、あらかじめ設定するフィールド番号から参照できる配列データとして、例えばテキストまたはバイナリ等のデータ形式で生成される。
【0041】
仕様データ(書込形式)603は、仕様データ602をパラメータ記憶部110に書き込み可能な16進数のバイト列に変換し、データ書き込み等のインターフェースとして必要なヘッダー部やチェック部を付加したものである。
【0042】
以上のように、本実施の形態1では、通信機器100に格納する仕様データを、デバイス記述ファイル601に基づき各ツールで自動生成する。
これにより、同じくデバイス記述ファイル601に基づき通信機器100と通信するマスター機器200との間で、機器仕様に関する設定を容易に共通化することができる。また、上述のフィールドバスシステムの潜在的な課題の削減等、ソフトウェア品質向上の効果が期待できる。
【0043】
また、本実施の形態1によれば、通信機器100のデバイス記述に関するパラメータ設定が自動化されることから、通信機器100の設計作業の効率化が期待できる。
【0044】
また、本実施の形態1によれば、通信機器100のアプリケーション部121と通信処理部122は、デバイス記述ファイル601に記述したパラメータをもとに動作する。
これにより、例えば経年劣化等で予期しない不具合が発生した場合においても、パラメータ記憶部110が格納している仕様データを書き換えるのみで対応できる場合には、デバイス記述ファイル601に記述する機器仕様を変更して仕様データ(書込形式)603を再度書き込むのみで、不具合に対応することができる。
そのため、不具合対応が容易になる効果が期待できる。
【0045】
実施の形態2.
実施の形態1では、設計端末400と通信機器100を、シリアルインターフェースなどを介して直接接続し、仕様データ(書込形式)603を書き込む例を説明した。
本発明の実施の形態2では、ネットワーク500を介して仕様データ(書込形式)603を通信機器100に書き込む構成と動作例を説明する。
【0046】
図5は、本実施の形態2に係る通信機器100と、その周辺の機器との配置図である。
本実施の形態2において、ネットワーク管理端末300は、実施の形態1で説明したデバイス記述ファイル作成ツール410、デバイス仕様データ抽出ツール420、デバイス仕様データ書込ツール430をHDDの記憶装置に格納している。ネットワーク管理端末300は、これら各ツールを実行する。
なお、設計端末400は、本実施の形態2では存在しない。
【0047】
本実施の形態2において、デバイス仕様データ書込ツール430は、フィールドバス規格に準じて、ネットワーク500を介して通信機器100と通信する処理を実行する。
また、デバイス仕様データ書込ツール430は、そのために必要な通信処理(例えばフィールドバス規格に準じた通信プロトコル処理など)を実行する。
【0048】
本実施の形態2において、通信機器100の制御部120は、以下の2つの動作モードを有する。
【0049】
(動作モード1)通信機器100本体の動作を実行する動作モード
(動作モード2)仕様データ(書込形式)603を受け取ってパラメータ記憶部110に書き込む動作モード
【0050】
以上、本実施の形態2に係る各機器などの構成を説明した。
次に、本実施の形態2に係る動作について説明する。
【0051】
(1)設計者は、実施の形態1と同様に、デバイス記述ファイル作成ツール410、デバイス仕様データ抽出ツール420、デバイス仕様データ書込ツール430が提供する各機能を実行する。
【0052】
(2)デバイス仕様データ書込ツール430は、フィールドバス規格に準じて、ネットワーク500を介して仕様データ(書込形式)603を通信機器100に送信する。仕様データ(書込形式)603の内容は、例えば通信データのペイロード部に記述すればよい。
【0053】
(3)通信機器100の制御部120は、ネットワーク500を介して仕様データ(書込形式)603を受信すると、上述の(動作モード2)に移行する。または、通信機器100の本体筐体に適当なスイッチを設けておき、このスイッチが押下されると、制御部120が上述の(動作モード2)に移行する、といった手法も考えられる。
【0054】
(4)制御部120は、ネットワーク500を介して受信した仕様データ(書込形式)603を、パラメータ記憶部110に書き込む。
【0055】
以上のように、本実施の形態2によれば、例えば実際の設置場所で稼動段階にある通信機器100に対しても、稼働中のネットワーク500を使って、デバイス記述ファイル601を更新する作業を容易に行うことができる。
これにより、デバイス記述ファイル601に関連する不具合に対しての対応処置が迅速かつ容易に実施できる効果が期待できる。
【0056】
また、本実施の形態2では、デバイス仕様データ書込ツール430を、ネットワーク管理端末300上に配置した。
もし、デバイス仕様データ書込ツール430を、実施の形態1と同様に設計端末400に配置すると、フィールドバス規格に準じた通信処理を改めて開発する必要がある。しかし、ネットワーク管理端末300は、元来よりネットワーク500を介して通信する機能を備えているので、ネットワーク500に係る通信機能は、ネットワーク管理端末300と共通化することができる。
これにより、システム構成をより単純化でき、コスト低減の効果が期待できる。
【0057】
実施の形態3.
以上の実施の形態1〜2では、設計者が別の通信機器100の機器仕様を定義したデバイス記述ファイル601を選択してしまう可能性がある。しかし、この場合でも、仕様データ(書込形式)603を書き込む手順は自動化されているため、通信機器100に誤った仕様データが設定されてしまう可能性がある。
【0058】
そこで、本発明の実施の形態3では、仕様データ(書込形式)603をパラメータ記憶部110に書き込む際に、その内容の妥当性を確認する構成と動作例を説明する。
【0059】
図6は、本実施の形態3に係る通信機器100の機能ブロック図である。
本実施の形態3に係る通信機器100は、実施の形態1〜2で説明した構成に加えて、新たに機器コード判定部124を備える。また、パラメータ記憶部110は、機器コード111をあらかじめ格納している。
【0060】
機器コード111は、デバイス記述ファイル601に記述される、通信機器100固有の機器コードのみを取り出したものである。この機器コード111は、通信機器100を開発する過程で、あらかじめパラメータ記憶部110に書き込まれているものとする。
【0061】
機器コード判定部124は、データ管理部123が仕様データ(書込形式)603を受け取ってパラメータ記憶部110に書き込む際に、その仕様データ(書込形式)603に記述されている機器コードと、パラメータ記憶部110に格納されている機器コード111とを比較する。
機器コード判定部124は、両者が合致しない場合、仕様データ(書込形式)603をパラメータ記憶部110に書き込むことを禁止する。
【0062】
以上のように、本実施の形態3によれば、デバイス記述ファイル601と、通信機器100が動作時に使用する仕様データとの整合を、より確実に確保することができる。
【0063】
なお、本実施の形態3において、デバイス仕様データ書込ツール430は、パラメータ記憶部110に書き込んだ仕様データ(書込形式)603を、データ管理部123を介して読み戻す機能を有してもよい。
この場合、デバイス仕様データ書込ツール430は、仕様データ(書込形式)603が正しくパラメータ記憶部110に書き込まれたか否かをチェックすることができる。
両者が合致しない場合、デバイス仕様データ書込ツール430は、パラメータ記憶部110に仕様データ(書込形式)603を書き込むことを中止する。既に書き込んだデータを削除してもよい。
【0064】
このチェック機能と、機器コード判定部124の機能とを併用することにより、デバイス記述ファイル601と、通信機器100が動作時に使用する仕様データとの整合を、より確実に確保することができる。
【0065】
本実施の形態3では、通信機器100固有のデータの1例として機器コードを例に説明したが、その他のパラメータを用いてもよい。
【0066】
実施の形態4.
図7は、本発明の実施の形態4に係る通信機器100の機能ブロック図である。
以上の実施の形態1〜3では、アプリケーション部121および通信処理部122は、パラメータ記憶部110から仕様データを直接取得することとしたが、図7に示すようにデータ管理部123を介して仕様データを取得するようにしてもよい。
【0067】
なお、図7では実施の形態1の図1と同様の構成のもとで、データ管理部123を介して仕様データを取得する構成を例示したが、その他の実施の形態における構成の下でも、同様の手法を用いることができる。
【0068】
実施の形態5.
以上の実施の形態1〜4では、通信機器100、マスター機器200、ネットワーク管理端末300、設計端末400は、それぞれ1台のみ記載したが、これらの台数は任意でよい。
【0069】
また、以上の実施の形態1〜4では、ネットワーク500および各機器の通信仕様としてフィールドバスを例に説明したが、その他の通信仕様を用いる通信機器およびネットワークにおいても、同様の手法を用いることができる。
【符号の説明】
【0070】
100 通信機器、110 パラメータ記憶部、120 制御部、121 アプリケーション部、122 通信処理部、123 データ管理部、124 機器コード判定部、200 マスター機器、300 ネットワーク管理端末、400 設計端末、410 デバイス記述ファイル作成ツール、420 デバイス仕様データ抽出ツール、430 デバイス仕様データ書込ツール、500 ネットワーク、601 デバイス記述ファイル、602 仕様データ、603 仕様データ(書込形式)、604 ネットワーク設計データ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通化された通信仕様を用いて通信する通信機器を開発する方法であって、
前記通信機器の機器仕様を定義したデバイス記述ファイルから前記機器仕様を定義した仕様データを抽出するステップと、
前記仕様データを前記通信機器が備える記憶装置に書き込む書込ステップと、
前記記憶装置から前記仕様データを読み込みその仕様にしたがって前記通信機器を動作させる処理を規定したプログラムを生成するステップと、
を有することを特徴とする通信機器の開発方法。
【請求項2】
前記記憶装置に格納されている前記仕様データを前記プログラムに引き渡すことを仲介するデータ管理プログラムを生成するステップを有する
ことを特徴とする請求項1記載の通信機器の開発方法。
【請求項3】
前記書込ステップでは、
通信ネットワークを介して前記仕様データを前記記憶装置に書き込む
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の通信機器の開発方法。
【請求項4】
前記仕様データに含まれるデータのうち前記通信機器を識別することのできるパラメータを前記記憶装置にあらかじめ書き込んでおくステップを有し、
前記書込ステップでは、
前記仕様データに含まれるパラメータと前記記憶装置が格納しているパラメータを比較して、
両者が合致しなければ前記仕様データを前記記憶装置に書き込まない
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の通信機器の開発方法。
【請求項5】
共通化された通信仕様を用いて通信する通信機器を開発することを支援するステップをコンピュータに実行させる開発支援プログラムであって、
前記コンピュータに、
前記通信機器の機器仕様を定義したデバイス記述ファイルから前記機器仕様を定義した仕様データを抽出するステップと、
前記仕様データを前記通信機器が備える記憶装置に書き込む書込ステップと、
前記記憶装置から前記仕様データを読み込みその仕様にしたがって前記通信機器を動作させる処理を規定したプログラムを生成するステップと、
を実行させることを特徴とする通信機器の開発支援プログラム。
【請求項6】
前記コンピュータに、
前記記憶装置に格納されている前記仕様データを前記プログラムに引き渡すことを仲介するデータ管理プログラムを生成するステップを実行させる
ことを特徴とする請求項5記載の通信機器の開発支援プログラム。
【請求項7】
前記書込ステップで、前記コンピュータに、
通信ネットワークを介して前記仕様データを前記記憶装置に書き込ませる
ことを特徴とする請求項5または請求項6記載の通信機器の開発支援プログラム。
【請求項8】
前記書込ステップでは、前記コンピュータに、
前記仕様データに含まれるパラメータと前記記憶装置が格納しているパラメータを比較させて、
両者が合致しなければ前記仕様データを前記記憶装置に書き込むことを中止させる
ことを特徴とする請求項5ないし請求項7のいずれかに記載の通信機器の開発支援プログラム。
【請求項9】
共通化された通信仕様を用いて通信する通信機器であって、
前記機器仕様を定義した仕様データを格納する記憶装置と、
前記記憶装置から前記仕様データを読み込みその仕様にしたがって動作する処理を規定したプログラムを実行する制御部と、
を備えたことを特徴とする通信機器。
【請求項10】
前記制御部は、
前記記憶装置に格納されている前記仕様データを前記プログラムに引き渡すことを仲介するデータ管理プログラムを実行する
ことを特徴とする請求項9記載の通信機器。
【請求項11】
前記制御部は、
他の通信機器と通信するモードと、
通信ネットワークを介して前記仕様データを受信し前記記憶装置に書き込むモードと、
の2つの動作モードを有する
ことを特徴とする請求項9または請求項10記載の通信機器の開発方法。
【請求項12】
前記記憶装置は、
前記仕様データに含まれるデータのうち前記通信機器を識別することのできるパラメータをあらかじめ格納しており、
前記制御部は、
前記仕様データに含まれるパラメータと前記記憶装置が格納しているパラメータを比較して、
両者が合致しなければ前記仕様データを前記記憶装置に書き込まない
ことを特徴とする請求項9ないし請求項11のいずれかに記載の通信機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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