通信端末及び通信ネットワークシステム
【課題】 異なる無線通信ネットワークとの接続を動的に再構成可能な通信端末を提供し、ユーザーが操作する装置を小型化、省電力化しながら、多数の無線通信ネットワークを効率的に利用可能な技術を提供すること。
【解決手段】 複数の無線通信ネットワークとの接続方式等を動的に再構成可能な通信端末20であって、データ通信集約装置21と、通信アプリケーション実行装置22と、データ通信集約装置と通信アプリケーション実行装置とを接続するローカル通信経路23とを備える。データ通信集約装置21は、物理的又は論理的に構成される複数の無線通信ネットワークに対応する単数又は複数の通信手段と、ローカル通信経路を通して該通信アプリケーション実行装置と通信する第1ローカル通信手段とを備える。通信アプリケーション実行装置22が、ローカル通信経路を通して該データ通信集約装置と通信する第2ローカル通信手段と、少なくとも外部の通信ネットワークと通信するアプリケーションを実行するアプリケーション実行手段とを備える。
【解決手段】 複数の無線通信ネットワークとの接続方式等を動的に再構成可能な通信端末20であって、データ通信集約装置21と、通信アプリケーション実行装置22と、データ通信集約装置と通信アプリケーション実行装置とを接続するローカル通信経路23とを備える。データ通信集約装置21は、物理的又は論理的に構成される複数の無線通信ネットワークに対応する単数又は複数の通信手段と、ローカル通信経路を通して該通信アプリケーション実行装置と通信する第1ローカル通信手段とを備える。通信アプリケーション実行装置22が、ローカル通信経路を通して該データ通信集約装置と通信する第2ローカル通信手段と、少なくとも外部の通信ネットワークと通信するアプリケーションを実行するアプリケーション実行手段とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の無線通信ネットワークとの接続の有無又は接続方式を動的に再構成しながら通信可能な通信端末と、それを備えた通信ネットワークシステムに関し、より詳しくは、利用する無線通信ネットワークを簡易な構成で動的に再構成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、無線LAN、PHSなど様々な無線アクセスシステムが普及し、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)などの無線MANサービスも開始されようとしている。
【0003】
このようなアクセスシステムを有効活用するために、異種無線ネットワークをシームレスにハンドオーバさせる技術の研究開発がされている(非特許文献1及び2参照)。
【0004】
また、非特許文献3に開示されるように、異なる無線システムを切り替えるために異なる無線インターフェイスに接続可能なソフトウェア無線技術の研究も行われてきた。
【0005】
これらの技術をベースにすると、無線ネットワークの状況に応じて最適なものに切り替ことにより、限られた無線リソース(周波数、無線インフラ)及びネットワークリソースをより効率的に利用することが可能となる。またこれによって、トータルでのスループットやキャパシティが改善し、周波数の利用効率向上につながる。
【0006】
一方、PDAや携帯電話、小型ノートパソコン等のモバイル型通信端末は複数の無線通信方式を備えているので、利用者はこれらの方式のうち最適なものを選択して切り替えながら、あるいは、いくつかを同時に使用して通信速度を増加させ、無線通信を行うことが可能である。
【0007】
もっとも実際には、それぞれの方式あるいは無線ネットワーク事業者により、異なるデータ通信装置を使用しなければならない場合が多い。
例えば、ある無線ネットワーク事業者はUSBインターフェイスのデータ通信装置を提供し、別の無線ネットワーク事業者はPCMCIAインターフェイスのデータ通信装置を提供している場合などがある。
【0008】
ソフトウェア無線技術の進展により、技術的には単一のデータ通信装置のみを用いて複数の通信方式に切り替えながら使用することは可能であるが、一般の利用者が通常使用する装置としては普及しているとは言えない。
また、複数の無線ネットワーク事業者への接続を単一のデータ通信装置により行うことも技術的には可能であるが、各無線ネットワーク事業者は専用のデータ通信装置を提供している場合が多い。従って、一般的には複数のデータ通信装置を通信端末に接続することが必要になる。
【0009】
この際、使用する無線ネットワーク事業者や通信方式が多く、必要なデータ通信装置の数が多い場合、通信端末のデータ通信ポートが塞がって他の装置を接続することができなくなり、あるいは、そもそもデータ通信ポートの数が足りずにすべてを接続できないという場合が考えられる。
【0010】
また、モバイル型の通信端末は可搬性にすぐれた設計がなされているものの、それらのデータ通信装置を接続することにより体積が増加し、あるいは、突起物が生じることにより、モバイル型通信端末の可搬性を損ねてしまう。
さらに、データ通信装置は、無線の送受信を行う上に、通常、フロー制御や誤り訂正等の処理も行うので、モバイル端末の本体やこれに接続する他の装置と比較して電力消費に占める割合が大きい場合が多く、モバイル端末にとって重要な電池稼働時間を短くしてしまう、といった問題がある。
【0011】
非特許文献4では、パーソナルメディアゲートウェイと呼ぶ装置が紹介されている。これにより、モバイル端末から基地局と通信する機能を切り離すことができ、また、複数のモバイル端末へのアクセスポイントのように機能する。しかし、上述のデータ通信装置の選択、接続、切断、帯域の集約、通信内容の判別と振り分け、等の機能を組み込むことは想定しておらず、単なるデータ通信の中継を行っているに過ぎない。
【0012】
本発明に関連する技術としては、無線情報の収集に関する技術として本件出願人らによっても検討されている。例えば、端末が自律的に利用可能なネットワークを認識する技術として非特許文献5が、それぞれのネットワークQoS情報をリアルタイムに取得する技術として非特許文献6が、さらに高速移動に対応できるシームレスハンドオーバのために効率的な無線リソース予約を行う技術として非特許文献7がそれぞれ開示されている。
【0013】
関連する特許文献としては、ソフトウェア無線通信装置を開示する特許文献1がある。このソフトウェア無線通信装置は、受信した電波を一度ADコンバーターでアナログデジタル変換し、復調などの部分をデジタルシグナルプロセッサやマイクロプロセッサとソフトウェアで行うため、ソフトウェアを切り替えることで複数の周波数や無線方式に対応することができる。
【0014】
また、特許文献2には、それぞれの無線アクセスネットワークが有する各基地局に、無線チャネル利用状況の情報を保持するデータベース装置を接続し、各基地局側にそのデータベース装置を統合する、既存の無線アクセスネットワークが利用している周波数のデータベースを持つデータベース装置を設置したコグニティブ通信システムが開示されている。
通信方式や管理方式が異なる無線アクセス装置を統合して管理するためには、機能の共通化や異なる装置間の通信インターフェイスが要求される。しかしながら、従来の技術では、このような機能は無線システムに特化して開発された装置により実現されており、装置内の機能が異なる上、装置間のインターフェイスも共通化されておらず、汎用の機器が開発できないという問題がある。
【0015】
特許文献3には、複数の中継システムの監視情報を1つの中継システムの親局装置が集中管理することができる統合中継システムが開示されている。この中継システムは無線通信システムにおける基地局と携帯端末との間で中継を行うものであるが、トンネル等の電波の不感地帯で中継するシステムであり、複数の種類の無線通信システムを動的に再構成して使用するものではない。
【0016】
【非特許文献1】G. Wu, P. Havinga and M. Mizuno, “MIRAI Architecture for Heterogeneous Networks,” IEEE Comm. Mag., pp. 126−134, 2002年
【非特許文献2】M. Inoue, K. Mahmud, H. Murakami, M. Hasegawa and H. Morikawa, “Novel Out−Of−Band Signaling for Seamless Interworking between Heterogeneous Networks,” IEEE Wireless Commun., Vol. 11, No. 2, pp. 56−63, 2004年
【非特許文献3】H. Harada, “Software defined radio prototype toward Cognitive Radio Communication Systems,” IEEE Dyspan 2005, Vol.1, pp. 539−547, 2005年
【非特許文献4】インターネットマガジン, 株式会社インプレスR&D, pp. 86−89, 2006年2月, http://i.impressrd.jp/files/images/bn/pdf/im200602−085−strategy.pdf
【非特許文献5】宮本剛, 石津健太郎, 長谷川幹雄, 村田嘉利, “Cognitive Wireless Cloud (2) 〜無線リソース発見のためのデータ収集法〜,” 信学技法, ソフトウェア無線研究会, 2007年3月
【非特許文献6】斉藤義仰, 長谷川幹雄, 村田嘉利, “Cognitive Wireless Cloud (3) 〜 高速エンドツーエンドQoS測定方式 〜,” 信学技法, ソフトウェア無線研究会, 2007年3月
【非特許文献7】H. N. Tran, M. Hasegawa, Y. Murata, “Resource Researvation Scheme for Mobile Users in Cognitive Wireless Cloud,”信学技法, ソフトウェア無線研究会, 2007年3月
【特許文献1】特開2003−152732号公報
【特許文献2】特開2007−184850号公報
【特許文献3】特開2006−128980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上記従来技術の有する問題点に鑑みて創出されたものであり、異なる無線通信ネットワークとの接続を動的に再構成可能な通信端末を提供し、ユーザーが操作する装置を小型化、省電力化しながら、多数の無線通信ネットワークを効率的に利用可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、上記の課題を解決するために、次のような通信端末を提供する。
すなわち、請求項1に記載の発明によれば、複数の無線通信ネットワークとの接続の有無又は接続方式を動的に再構成可能な通信端末であって、データ通信集約装置と、通信アプリケーション実行装置と、該データ通信集約装置と該通信アプリケーション実行装置とを接続するローカル通信経路とを備えた通信端末を提供する。
以下の実施例において、接続の有無と切り替え可能な接続方式をあわせて接続方式等と呼ぶ。
【0019】
通信端末のデータ通信集約装置には、物理的又は論理的に構成される複数の無線通信ネットワークに対応する単数又は複数の通信手段と、ローカル通信経路を通して該通信アプリケーション実行装置と通信する第1ローカル通信手段とを備える。
具体的には、データ通信集約装置は、通信手段の選択や、通信手段における接続、切断、帯域の集約、通信内容の判別と振り分け、等の機能を持つ。
【0020】
また、通信端末の通信アプリケーション実行装置には、ローカル通信経路を通してデータ通信集約装置と通信する第2ローカル通信手段と、少なくとも外部の通信ネットワークと通信するアプリケーションを実行するアプリケーション実行手段とを備える。
【0021】
なお、本発明の接続方式には、通信に使用する周波数や変調方式、WiFi(Wireless Fidelity、IEEE 802.11bの互換性規格)やWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access、IEEE 802.16規格)といった通信方式を含む。再構成の対象としては使用する帯域や、通信の品質保証を行うレベルなども対象となる。本発明の再構成はこのように通信端末とネットワークとの任意の設定、パラメータの変更についても適用可能である。
【0022】
請求項2に記載の発明によれば、上記のデータ通信集約装置に、記憶手段に格納される接続ポリシー情報テーブルと、少なくとも該接続ポリシー情報に基づいて無線通信ネットワークの接続方式等を選択する通信ネットワーク再構成管理手段と、選択された接続方式等に接続を再構成する通信ネットワーク再構成実行手段とを備えることを特徴とする。
【0023】
請求項3に記載の発明によれば、上記の通信ネットワーク再構成管理手段が、通信ネットワークにおける所定の通信パラメータに関して入力手段から入力されるか、又は記憶手段に格納されている要求条件情報を用い、その要求条件情報に基づいて前記接続ポリシー情報テーブルを生成する接続ポリシー情報生成部を備えたことを特徴とする。
【0024】
請求項4に記載の発明によれば、上記の所定の通信パラメータが、通信速度、通信量、回線負荷、パケットロス率、通信遅延、ジッタ、電波強度、通信料金、又はこれら各パラメータの値から所定の計算式により計算される値、の1つ、又はその組み合わせであることを特徴とする。
【0025】
請求項5に記載の発明によれば、データ通信集約装置に、各通信ネットワークから前記通信パラメータの少なくともいずれかの情報を抽出する通信ネットワーク測定情報収集手段を備える。そして、上記の通信ネットワーク再構成管理手段が、通信ネットワーク測定情報収集手段が収集した情報に基づいて接続ポリシー情報テーブルの内容を評価する接続ポリシー情報評価部を備えると共に、接続ポリシー情報生成部が、該評価に従って該接続ポリシー情報テーブルを更新することを特徴とする。
【0026】
請求項6に記載の発明によれば、データ通信集約装置に、各通信ネットワークによる周波数の利用状況を測定する周波数測定手段を備え、上記の接続ポリシー情報生成部が、周波数の利用状況に応じて、前記接続ポリシー情報テーブルを更新することを特徴とする。
【0027】
請求項7に記載の発明によれば、本発明の通信端末において、1つのデータ通信集約装置に対して、複数の通信アプリケーション実行装置を備えて、データ通信集約装置が、各通信アプリケーション実行装置のために作動する構成でもよい。
【0028】
本発明は、上記請求項1ないし7のいずれかに記載の通信端末を備えた通信ネットワークシステムとして提供することもできる。該通信ネットワークシステムは、通信端末と共に、上記複数の無線通信ネットワークと、無線通信ネットワークを介して接続される複数のサーバ装置とから構成される。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、上記構成を備えることにより次のような効果を奏する。
本発明によれば、複数のデータ通信装置を収容するためのデータ通信集約装置を新たに導入し、複数のデータ通信装置の制御に関わる機能をユーザーが持つ通信アプリケーション実行装置から切り離して提供する。
従来の方式では、モバイル端末が直接データ通信装置を収容していたため、収容できるデータ通信装置の数に制限があり、可搬性の低下や電力消費の増加という問題が発生していた。本発明により、データ通信装置の選択、接続、切断、帯域の集約、通信内容の判別と振り分け、等の機能をアプリケーション実行装置から切り離すことが可能になり、新たな機能をアプリケーション実行装置に導入する必要がなくなる。
【0030】
また、従来のモバイル端末を用いる場合も、本発明のデータ通信集約装置と、モバイル端末に既存の通信モジュールを用いて接続すれば、上述の機能を利用することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を、図面に示す実施例を基に説明する。なお、実施形態は下記に限定されるものではない。
図1には、本発明に係るネットワークシステムの全体構成を示す。3G携帯電話回線網や、PHS、無線LANなどの外部ネットワーク(10)(11)(12)の基地局(アクセスポイント)(13)(14)(15)と無線通信ネットワーク(16)により接続する通信端末(20)に特徴がある。
【0032】
通信端末(20)は、従来のモバイル端末のように、データ通信を行う部分と、アプリケーションの実行処理を行う部分とを一体に構成するのではなく、データ通信集約装置(21)と通信アプリケーション実行装置(22)とに分離して構成している。
データ通信集約装置(21)と通信アプリケーション実行装置(22)との間は、有線又は無線のローカル通信経路(23)で結ばれる。
【0033】
データ通信集約装置(21)には、物理的又は論理的に形成される無線通信ネットワーク(16)のそれぞれと通信可能な通信手段が複数配設されており、必要に応じてアンテナや通信モジュールなどを実質的に設けることもできるし、公知のソフトウェアモデム技術などを利用して1つのハードウェア資源で複数の無線通信ネットワークに対応するように構成してもよい。
【0034】
このようにデータ通信集約装置を、通信アプリケーション実行装置と分離することで、データ通信集約装置にアンテナや通信モジュールを搭載する一方、通信アプリケーション実行装置にはデータ通信集約装置と接続するための最小限のローカル通信手段を設ければよくなる。この結果、ユーザーが実際に手にする端末で、アンテナや通信モジュールを複数備えた場合に容積や消費電力が大きくなる問題を解消することができる。
【0035】
ローカル通信経路は、無線LANやBluetooth(登録商標)等の無線通信によることが好ましいが、有線LANやケーブルによる接続でもよい。
【0036】
データ通信集約装置が種類の異なる無線通信ネットワークを統合し、それらを動的に再設定することにより、周波数の利用効率、ネットワークトラフィックの負荷分散、利用者やアプリケーションが要求する通信品質などを向上させることにも寄与する。
【実施例1】
【0037】
図2は、本発明のデータ通信集約装置(21)の構成図である。データ通信集約装置(以下、本装置)(21)は周知のパーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ等により実現することができるほか、ネットワークルータに本発明の機能を備えてもよい。パーソナルコンピュータにより構成する場合には、図示しないメモリと協働して処理を実行するCPU(210)、複数の種類の無線通信ネットワークとそれぞれ通信する第1通信モジュール(211)、第2通信モジュール(212)、第3通信モジュール(213)、キーボード(214)等の入力手段、通信アプリケーション実行装置(22)と通信を行うローカル通信モジュール(215)、ハードディスク(216)等の外部記憶手段を備えている。
【0038】
第1〜第3通信モジュール(211〜213)は、例えば携帯電話通信カード、PHSデータ通信カード、無線LANカードなどの無線通信ネットワークと接続するための通信モジュールであって、CFカードやPCIカード、USB接続の機器などで広く提供されている。
一般的には第1通信モジュールのように通信モジュールにつき1つのアンテナ(211a)が設けられているが、本来はアンテナは使用周波数が近ければ共用可能であり、第2通信モジュール(212)や第3通信モジュール(213)のようにアンテナ(212a)を共用してもよい。
【0039】
ローカル通信モジュール(215)は、上述したようにローカル通信経路を構成する機器であって、無線LANアダプタやBluetoothアダプタで構成することができる。ローカル通信モジュール(215)は、上記各通信モジュール(211〜213)と別個に設けてもよいが、実際には外部ネットワークとの接続用と、ローカル接続用で共用してもよい。アンテナ(215a)についても同様である。
【0040】
もちろん、本実施例は発明の一実施例であり、通信モジュールの数や構成は任意に定めることができる。1つの通信モジュールでソフトウェア的に複数の無線通信ネットワークに対応することも可能であることは上述した通りである。
【0041】
本発明の最も簡単な構成は、上記各通信モジュール(211〜213)において無線通信ネットワークと接続可能な場合にはリンクを確立し、すべての帯域を統合して利用することである。物理的、論理的に異なる通信ネットワークを統合利用する方法は周知であり、この場合はCPU(210)に図示しないリンク統合処理部を設けてリンクの束を構成すればよい。
【0042】
以下では、この最も単純な方法ではなく、接続可能な無線通信ネットワークの中から最適なネットワークを選択し、組み合わせて利用する技術を含む本装置(21)の構成を開示する。
ここでCPU(210)には通信ネットワーク再構成管理手段(2101)と、通信ネットワーク再構成実行手段(2102)との2つの処理手段が実現される。
【0043】
前者(2101)には接続ポリシー情報に基づいてネットワーク再構成の実行を指令するネットワーク制御部(2101a)、接続ポリシー情報を生成する接続ポリシー情報生成部(2101b)を備える。
【0044】
後者(2102)には、該ネットワーク制御部(2101a)からの指令に従って公知の方法により通信ネットワークとの接続・切断や接続パラメータの設定変更等を行うネットワーク再構成実行処理部(2102a)を備える。
【0045】
ハードディスク(216)には、接続ポリシー情報テーブル(2161)と、接続ポリシー情報生成部(2101b)が参照する要求条件情報(2162)を格納している。なお、要求条件情報(2162)はキーボード(214)からユーザーが直接入力することも可能であり、備えなくともよい。
【0046】
図4には本発明にかかる通信アプリケーション実行装置(22)の構成を示す。本装置(22)も公知のパーソナルコンピュータ、携帯電話端末やPDAにより構成するのが便利である。これらにはすでに複数の無線通信ネットワークとの接続が可能な通信モジュールを備えていてもよく、既存のモバイル端末を用いることもできる。
【0047】
本装置(22)はデータ通信集約装置(21)とのローカル通信経路を構成するローカル通信モジュール(220)と、CPU(221)、キーボード等の入力手段(222)、ハードディスクやメモリ(223)から構成される。
CPU(221)にはアプリケーション実行処理部(221a)により、ハードディスク等に保存された実行ソフト(223a)のプログラムを実行処理する。この方法は公知であり、ここでは詳述しない。
【0048】
本発明ではこのアプリケーションにおいてネットワーク通信を用いることを想定している。例えば、実行ソフト(223a)が動画の再生ソフトウェアであって、通信ネットワークを通して外部のサーバ(図示しない)から取得した動画データを再生する構成が知られている。その他、実行ソフト(223a)がウェブブラウザであって、受信したデータを図示しないモニタで表示する構成でもよい。
実行ソフトの種類は任意である。
【0049】
本発明において、上記データ通信集約装置(21)が無線通信ネットワークで送受信するデータを、ローカル通信モジュール(215)(220)を介して通信アプリケーション実行装置(22)で使用する。
【0050】
次に、この通信方法について詳しく説明する。まずデータ通信集約装置(21)では図4に示す処理を行う。
まず、通信ネットワーク再構成管理手段の接続ポリシー情報生成部(2101b)が、要求条件情報(2162)を参照して接続ポリシー情報を生成する。(S10)
次いで、ネットワーク制御部(2101a)が接続ポリシー情報(2161)に基づいて通信ネットワークの選択を行う。(S11)
そして、ネットワーク制御部(2101a)から指令を受けたネットワーク再構成実行処理部(2102a)が通信ネットワークの再構成を実行処理(S12)する。
【0051】
接続ポリシー情報生成処理(S10)について説明する。本処理(S10)ではユーザーが指定した優先度である要求条件情報(2162)を考慮してどの通信ネットワークに再構成するのかを定める接続ポリシー情報を生成する。本発明において、接続ポリシー情報は、実際に通信を行った時の通信状態の評価からその情報を改善することも可能であり、これについては別実施例として説明する。
【0052】
上記要求条件情報(2162)や接続ポリシー情報(2161)では、通信パラメータに関して定義される。いかなる通信パラメータを用いるのが好適であるかを検討した。
無線情報としての要求条件には、(1)無線情報、(2)通信品質、(3)安定性、(4)コスト、(5)端末の消費電力の5つの視点が重要である。
【0053】
(1)無線情報(RF)
端末が無線リソースを利用するためには、まずその端末が無線リソースのカバーエリア内である必要がある。ある端末がある位置にいるときにどの無線リソースが利用可能であるかは、端末自身がスキャンして探索することができる。
本発明では、各通信モジュール(211〜213)が通信可能であるかの情報を取得するのが簡便である。
【0054】
(2)通信品質(End−to−end QoS)
使用するアプリケーションによって必要とされる通信品質が異なるため、(1)で述べた接続できるかどうかといった2値情報だけではなく、より細かなQoS情報が必要である。このQoS情報としては、ディレイ、ジッタ、ロス率、利用可能帯域が挙げられる。
【0055】
特に、混雑している無線リソースに新規の端末が割り込むと、既にその無線リソースを利用していた他の端末の通信品質にも悪影響を及ぼすため、新規の端末がどの程度の帯域を利用できるかを予め精度よく推定できることが重要であると考えられる。
【0056】
この利用可能帯域情報は、ネットワーク全体の負荷分散を図ることによって周波数利用効率の向上を図る本システムの目的を達成するためにも必要な情報となる.
【0057】
(3)安定性
通信品質がダイナミックに変動する無線通信においては、(2)で述べた瞬時的なQoS情報のみならず、その安定性も重要なパラメータとなる。例えば、一時的に広帯域が使える無線リソースよりも、帯域が狭くても安定しているほうが望まれる場合があると考えられる。
【0058】
具体例としては、ユーザーの移動にともない無線リソースの切り替えを繰り返して通信を継続するといった場合、切り替えの回数をなるべく減らしたいという要求があると考えられる。
このような目的のためには、その無線リソースを継続して利用できる時間を推定することが有効である。
【0059】
(4)コスト
ユーザーもしくは用途によって、QoS保証よりも通信料金が低いことが優先される場合があると考えられる。ユーザーの満足度の観点から通信料金も無線リソース選択の重要なパラメータとなる。
【0060】
(5)端末の消費電力
無線通信の利用中、端末のバッテリが切れてしまうとそれ以上の通信は不可能であるため、無線リソースの選択において、その通信にどれだけの消費電力を必要とするかも重要な要素となる。
【0061】
まず、これらの要求条件の1つ以上の条件をユーザーの要求条件として用いる。具体的には、各要求条件について優先順位をユーザーがキーボード(214)から入力して定義しておくことができる。また、単に「コスト重視」「通信品質重視」のように択一的に選択してもよい。
【0062】
さらに、要求条件は利用中のアプリケーションなどによって自動的に定義される構成でもよい。例えば、画像伝送などの高速通信の必要なアプリケーションがユーザーによって起動された時に、要求条件情報(2162)の設定を自動的に「通信品質重視」に変更する処理を実装すればよい。
【0063】
次に、接続ポリシー情報として定めるためにどのような通信パラメータを用いればよいのか説明する。上記(1)〜(5)の要求条件に対応して取得可能な情報は次の通りである。
【0064】
無線情報
(1−1)無線の種類
まず、無線の種類の情報が必須である。これらは各通信モジュール(211〜213)においてどのような無線通信ネットワークと接続可能であるかは自明である。
【0065】
(1−2) RSSI(Received Signal Strength Indicator)
通信品質を推定するための情報である。無線の種類によってBER(Bit Error Rate)等の他のパラメータを利用することもある。これらについても周知技術により各通信モジュール(211〜213)から取得できる。
【0066】
(2)通信品質(End−to−end QoS)
(2−1)ディレイ、通信の遅延時間
(2−2)ジッタ
(2−3)ロス率
【0067】
以上3項目は、サービス品質を確保するために必須の情報である。アプリケーションの種類によって要求されるQoSレベルは異なる。これらはアプリケーション実行装置(22)のアプリケーション実行処理部(221a)において必要とされる値を周知の技術により求めることができる。
【0068】
(2−4)アクセスポイントの帯域
アクセスポイントに固有の値となる。(1−1)無線の種類から導かれる値である。
(2−5)利用可能帯域
アクセスポイントの他の端末の利用状況により変化する動的情報となる。
(2−6)アクセスポイントに接続している端末数
アクセスポイントの混雑度を示す指標となる。空き帯域を計測することは困難な場合があり、接続端末数をパラメータとして使用することが多い。以上の2つのパラメータはアクセスポイント側から取得する。
(2−7)アプリケーションの種類
アプリケーションの種類によって要求されるQoSレベルが異なるために必要な情報である。通信アプリケーション実行装置(22)のアプリケーション実行処理部(221a)が実行中のアプリケーションを取得することができる。
【0069】
(3)安定性
(3−1)アクセスポイントに接続している端末数
アクセスポイントの混雑度を示す指標となる。空き帯域を計測することは困難な場合があり、接続端末数をパラメータとして使用することが多い。
(3−2)端末の位置
通信端末に図示しないGPS受信部を備えることにより端末の位置を取得できる。
(3−3)移動速度
通信端末に加速度センサ等を備えることで端末の移動速度を取得することができる。カバーエリアからそのアクセスポイントにどれ程の時間とどまることができるかの推定が可能である。
(3−4)カバーエリア
各無線アクセスのカバーエリアと、上述の端末の位置、移動速度情報を組み合わせて、端末がその無線アクセスに滞在できる時間を推定することができる。この情報の取得のために無線アクセス毎の通信可能エリアのマップ情報をハードディスク等に備えておく。
【0070】
(4)コスト
(4−1)通信料金
最適な無線リソースの基準は、保証されるQoSと通信料金の兼ね合いとなると考えられる。よって各無線リソースを利用した際の料金情報が必要となる。具体的には計時手段と、料金表のデータテーブルにより通信料金を算出することができる。
【0071】
(5)消費電力
(5−1)各無線アクセスに接続した場合の通信端末の消費電力
通信端末のバッテリ容量と消費電力から、通信端末を利用できる時間を推定するために用いる情報である。予め消費電力のデータを格納しておいてもよいし、実際に消費電力を計測する手段を備えてもよい。
【0072】
本発明の接続ポリシー情報生成部(2101b)の処理について説明する。
本システムでは、通信品質がダイナミックに変動する環境で、個々のユーザーの嗜好による満足度を最大化するためのアーキテクチャを備えている。ここでユーザーの満足度とは、単なるアプリケーションQoSのことではなく、ユーザーの心理的な満足度も含む。従って、あるユーザーがある無線リソースを利用したときの満足度をいかに数値化して接続ポリシー情報に反映させるのかが問題となる。
【0073】
上記の要求条件の中には、通信料金のようなユーザーの満足度とのグラフが描ける種類のものから、RSSIのようにユーザーの満足度と直接にはマッピングできない種類のものまで、多岐に亘っている。これらの情報は大きく、通信品質、アプリケーションQoS、主観評価値、ユーザー満足度の4種類に分類できる。
【0074】
ここで通信品質とは、RSSI、ディレイ、ジッタ、ロス率等の測定可能な品質情報を言う。
アプリケーションQoSとはビデオアプリケーションにおけるS/N 等の、アプリケーションレイヤにおける品質情報を言う。
主観評価値とは、アプリケーションの品質に対して人間が評価した値を言う。人間の五感を通すことで、アプリケーションQoSよりもユーザーの心理的な満足度に近い評価基準である。
ユーザー満足度とは、各ユーザーの嗜好を反映した、主観的な満足度を表す評価値である。
【0075】
これらの情報を、ユーザー満足度とマッピングできるように変換することで、すべての情報を無線リソース選択に反映できると考えられる。
【0076】
これら4種類の情報の中で、通信品質とアプリケーションQoSは密接な関係にあり、両者の相互変換に関しては多数の研究が行われている。また、主観評価値に関しては、目標とするMoS値を達成するためにアプリケーションQoSの要求値が生じるのであり、この両者の変換も主観評価実験の積み重ねにより可能である。
【0077】
接続ポリシー生成部(2101b)ではこれらの周知の相関を予め変換条件として備えておき、要求条件に基づき定義することができる。
そこで、ユーザー満足度と主観評価値との変換が残る課題となる。主観評価は、ITU−Rなどで厳密に定められた測定環境において評価を行う。しかし、例えばビデオストリーミングの場合、同じ評点を得たビデオ再生でも、「これだけの料金を払ったのにこの程度の画質なのか」と満足しないユーザーもいれば、「モバイルなのにこんなに良い画質なのか」と十分満足するユーザーもいる。
【0078】
例えば、軸を主観評価値(MoS値)、縦軸を満足度としたときのグラフはユーザーによって異なり、図5のようなさまざまなパターンがある。あるユーザーのMoS値と満足度の関係が図5(a)のようになったとする。これはあるMoS値を閾値として、それ以上なら満足、それ以下なら不満足だということを表している。これに対して、同図(b)のように、もっと緩やかなグラフとなるユーザーも存在するであろうし、同図(c)のように閾値の高いユーザーも存在すると考えられる。
【0079】
接続ポリシー生成部(2101b)では、このような満足度とMoS値の対応関係をユーザー毎、アプリケーション毎に作成し、無線リソース選択に反映させることで、ユーザー満足度の最大化を図る。
【0080】
データ通信集約装置(21)では、ユーザーの嗜好に沿って最適な無線リソースを選択するために、図6に示すような選択アルゴリズムを用いる。
【0081】
すなわち、データ通信集約装置(21)において、通信アプリケーション実行装置(22)で実行するアプリケーション毎に、アプリケーションの要求QoSと優先順位の設定を行い、この情報を本装置(21)の要求条件情報(2162)に格納する。そして、まず各通信モジュール(211〜213)で通信可能なアクセスポイント(60)の情報を取得する。このうち、アクセスポイントe,f,gについてはRSSIが所定の閾値を下回ることから候補から除外する。
【0082】
一方、アプリケーション毎に、要求QoSを定義しておく。このデータはデータ通信集約装置(21)に格納してもよいし、通信アプリケーション実行装置(22)に格納して、アプリケーションを実行するたびにローカル通信経路を通してデータ通信集約装置(21)に送信してもよい。例えばVoIPアプリケーション(61)についてディレイ、ジッタ等の各値の閾値を定める。
【0083】
要求条件(62)と要求QoS(64)に加え、上述したユーザー満足度のバランス(63)を 接続ポリシー情報生成部(2101b)に集約し、通信ネットワークの選択を行う。例えば、利用可能なアクセスポイントの中から、まず要求QoSを満たすアクセスポイントを選択候補として選抜し、その中でユーザーのコスト要求及び消費電力の要求に合致する選択候補に絞り込む。
【0084】
接続ポリシー情報生成部(2101b)では、図7に示すような周波数測定部(2103b)が検知した周波数の利用状況、電波干渉の程度に応じて、混雑する帯域の優先順位を下げる処理や、1つの通信ネットワークの選択が集中しないように分散してポリシー情報を生成することもできる。
【0085】
2つ以上の選択候補が残る場合には、バランス(63)を考慮して、所定のコスト変動幅で満足度が所定値以上高まる場合には、その良好な方を選択する。
【0086】
接続ポリシー情報生成部(2101b)は例えば以上のようなアルゴリズムによりVoIPアプリケーションの場合には、アクセスポイントbを選択(65)、ビデオアプリケーション(66)の場合にはアクセスポイントa+b+dによるリンクアグリゲーションを選択(67)する。このように選択した結果を接続ポリシー情報テーブル(2161)に格納する。
【0087】
そして、ネットワーク制御部(2101a)は、通信アプリケーション実行装置(22)から実行中のアプリケーションと、その時点で利用可能なアクセスポイントの情報を取得すると、接続ポリシー情報テーブル(2161)から、アプリケーションと利用可能なアクセスポイントの組み合わせを検索し、使用する無線通信ネットワークを決定する。決定された無線通信ネットワークはネットワーク再構成実行処理部(2102a)に再構成実行処理を指令し、対応する通信モジュール(211〜213)における通信を開始する。
【0088】
次に、このネットワーク再構成処理について詳述する。
本発明の簡便な実施態様としては、ネットワーク再構成処理について、既存のハンドオーバ技術など、ネットワークの切り替えに関する技術を適宜用いることができる。また、後述するようにリンクアグリゲーションによりリンクする通信ネットワークの組み合わせを切り替える技術を適用することもできる。これらは公知の技術であるから、本発明のネットワーク再構成実行処理部(2102a)の構成は適宜設計することができる。
【実施例2】
【0089】
本発明の構成は以上であるが、次にネットワーク再構成を行った後に、その結果を評価し、接続ポリシー情報(2161)を更新する構成を説明する。
【0090】
図7がこのときの本装置(21’)の構成図、図8が処理フローチャートである。
上記実施例に加えて、通信ネットワーク再構成管理手段(2101)に接続ポリシー情報評価部(2101c)を備え、通信ネットワーク再構成実行処理(S12)の後に、測定情報収集部(2103a)と周波数測定部(2103b)による通信ネットワーク測定情報収集ステップ(S13)、接続ポリシー情報評価部(2101c)による接続ポリシー情報評価ステップ(S14)、接続ポリシー情報生成部(2101b)による接続ポリシー情報更新ステップ(S15)を有する。
【0091】
具体的にはネットワーク制御部で選択された通信ネットワークにより実際に通信を行い、その時の通信パラメータを測定する。この値が、要求条件情報(2162)を満たしているか否か、あるいは要求条件情報(2162)から所定の閾値内に収まっているかを比較評価し、収まっていないときには、測定値を元に接続ポリシー情報生成部(2101b)で再計算し、接続ポリシー情報テーブル(2161)を更新する。
【0092】
例えば、通信アプリケーション実行装置(22)で実行するアプリケーションのQoSが得られているかどうか評価し、得られていない時には別の通信ネットワークを選択したり、リンクアグリゲーションの組み合わせを変化させた接続ポリシー情報に更新する。
【実施例3】
【0093】
さらに、本発明は図9に示すように、1つのデータ通信集約装置(24)に対して、複数の通信アプリケーション実行装置(22)(22)(22)を設けてもよい。この態様の具体的なイメージとしては、職場や家庭などでデータ通信集約装置(21)を1基設置して、それと各ユーザーが使用する複数の通信アプリケーション実行装置(22)とを接続し、データ通信集約装置(21)で通信している通信回線を共用するものである。
【0094】
図10に示すデータ通信集約装置(24)は、各通信アプリケーション実行装置(22)で要求される通信パラメータの値を統合する要求値統合処理部(240)を設けて各通信アプリケーション実行装置で実行されているアプリケーションの要求を満たすように処理してもよい。
例えば、ある通信アプリケーション実行装置(22)で動画再生を行っていて必要な通信速度が1Mbpsであるとき、別の通信アプリケーション実行装置(22)がデータ通信集約装置(24)と接続を開始して、通信速度0.5Mbpsを必要とするときに、データ通信集約装置(24)は現行のリンクのみでは1.5Mbpsの通信速度を得られない場合には別なリンクを確立するように処理する。
【0095】
この例では、通信速度の合計値を算出したが、最大値や平均値でもよい。またパケットロス率について要求がある場合には、最小値を統合値として選択することが好ましい。
このように、要求値統合処理部(240)の処理は、通信パラメータの特性に応じて、あるいは実際に適当となるような選択に従って、統計値又は所定の計算式による要求値の算出を行うことができる。
【0096】
このように複数の通信アプリケーション実行装置(22)を用いる場合、データ通信集約装置(21)では、アプリケーションに応じて、いずれの無線通信ネットワークを使用するかを振り分けることが必要になることがある。
この場合、接続先の外部サーバのIPアドレスや、使用されるポート番号を調べることで各通信アプリケーション実行装置(22)で実行中のアプリケーションを取得することもできる。
【0097】
このような技術は公知であり、トラフィックの負荷分散機能を持つルータなどでは、アプリケーションごとに特定のサーバや別のルータに振り分けるため、もしくは転送処理の優先度が高いアプリケーション(音声など)のキューイングにおいて、他のパケットよりも早く転送されるようにすることが行われている。
また、トラフィック監視装置においても、組織内でどのアプリケーションがどのくらい使われているかを把握する技術として、アプリケーションの種類を取得する技術が用いられている。
さらに、ファイヤウォールの設定においても、アプリケーションを同定する機能が備えられており、この場合にはポート番号などによって判別している。ポート番号は、well−known portとして定められており、例えば非特許文献7にはこの一覧が記載されている。
【0098】
【非特許文献7】ホームページ http://www.iana.org/assignments/port−numbers
【0099】
本発明ではこれらの技術を用いて、実行中のアプリケーションに応じ、要求条件情報(2162)に基づいて適切な無線通信ネットワークを選択することもできる。
なお、各通信アプリケーション実行装置(22)からローカル通信経路(23)を通して直接通知するようにしてもよい。
【0100】
本構成によるデータ通信集約装置(24)は、無線LANルータと一体的に構成してもよい。無線LANルータでは、周知のルータ機能の他、無線LANで接続するユーザー端末に対してDHCPサーバ機能によりIPアドレスを付与する機能等を備える。これらの機能を有しながら、既存の無線LANルータのように単一のネットワークと接続するのではなく、複数の無線通信ネットワークを動的に再構成しながら接続する本発明の構成を適用した無線LANルータを提供してもよい。
【0101】
本発明は以上の構成により、次のような産業上の利用可能性を有する。
すなわち、災害発生時等において通常の通信回線が切断された場合、衛星通信やその他の利用可能な広域・遠距離通信のデータ通信装置をデータ通信集約装置が収容することにより、利用可能な方式を最大限利用して、安定した広帯域の通信を提供できるため、復旧までの間に周辺の被災者が通信を継続することができる。
また、イベント等により臨時に新たな通信帯域が必要になる場合でも、データ通信集約装置をアクセスポイントのように設置することにより、通信速度がより高速、あるいは、利用者の収容量がより多い通信を、利用者に提供することが可能になる。
さらに、家庭内の無線LANルータの機能として実装し、実行する通信アプリケーションの要求や、通信コストの要求に合わせて最適な接続先を自動的に選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明による通信ネットワークシステムの全体構成図である。
【図2】本発明におけるデータ通信集約装置の構成図である。
【図3】本発明における通信アプリケーション実行装置の構成図である。
【図4】本発明のデータ通信集約装置における処理フローチャートである。
【図5】主観評価値(MoS値)と満足度の関係を示すグラフである。
【図6】ユーザーの嗜好に沿った無線リソースの選択アルゴリズムである。
【図7】本発明におけるデータ通信集約装置の別構成図である。
【図8】本発明(実施例2)の処理フローチャートである。
【図9】本発明による通信ネットワークシステム(実施例3)の全体構成図である。
【図10】本発明におけるデータ通信集約装置(実施例3)の構成図である。
【符号の説明】
【0103】
10 3G携帯電話回線網
11 PHS
12 WiFi(無線LAN)
13 アクセスポイント1
14 アクセスポイント2
15 アクセスポイント3
16 無線通信ネットワーク
20 通信端末
21 データ通信集約装置
22 通信アプリケーション実行装置
23 ローカル通信経路
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の無線通信ネットワークとの接続の有無又は接続方式を動的に再構成しながら通信可能な通信端末と、それを備えた通信ネットワークシステムに関し、より詳しくは、利用する無線通信ネットワークを簡易な構成で動的に再構成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、無線LAN、PHSなど様々な無線アクセスシステムが普及し、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)などの無線MANサービスも開始されようとしている。
【0003】
このようなアクセスシステムを有効活用するために、異種無線ネットワークをシームレスにハンドオーバさせる技術の研究開発がされている(非特許文献1及び2参照)。
【0004】
また、非特許文献3に開示されるように、異なる無線システムを切り替えるために異なる無線インターフェイスに接続可能なソフトウェア無線技術の研究も行われてきた。
【0005】
これらの技術をベースにすると、無線ネットワークの状況に応じて最適なものに切り替ことにより、限られた無線リソース(周波数、無線インフラ)及びネットワークリソースをより効率的に利用することが可能となる。またこれによって、トータルでのスループットやキャパシティが改善し、周波数の利用効率向上につながる。
【0006】
一方、PDAや携帯電話、小型ノートパソコン等のモバイル型通信端末は複数の無線通信方式を備えているので、利用者はこれらの方式のうち最適なものを選択して切り替えながら、あるいは、いくつかを同時に使用して通信速度を増加させ、無線通信を行うことが可能である。
【0007】
もっとも実際には、それぞれの方式あるいは無線ネットワーク事業者により、異なるデータ通信装置を使用しなければならない場合が多い。
例えば、ある無線ネットワーク事業者はUSBインターフェイスのデータ通信装置を提供し、別の無線ネットワーク事業者はPCMCIAインターフェイスのデータ通信装置を提供している場合などがある。
【0008】
ソフトウェア無線技術の進展により、技術的には単一のデータ通信装置のみを用いて複数の通信方式に切り替えながら使用することは可能であるが、一般の利用者が通常使用する装置としては普及しているとは言えない。
また、複数の無線ネットワーク事業者への接続を単一のデータ通信装置により行うことも技術的には可能であるが、各無線ネットワーク事業者は専用のデータ通信装置を提供している場合が多い。従って、一般的には複数のデータ通信装置を通信端末に接続することが必要になる。
【0009】
この際、使用する無線ネットワーク事業者や通信方式が多く、必要なデータ通信装置の数が多い場合、通信端末のデータ通信ポートが塞がって他の装置を接続することができなくなり、あるいは、そもそもデータ通信ポートの数が足りずにすべてを接続できないという場合が考えられる。
【0010】
また、モバイル型の通信端末は可搬性にすぐれた設計がなされているものの、それらのデータ通信装置を接続することにより体積が増加し、あるいは、突起物が生じることにより、モバイル型通信端末の可搬性を損ねてしまう。
さらに、データ通信装置は、無線の送受信を行う上に、通常、フロー制御や誤り訂正等の処理も行うので、モバイル端末の本体やこれに接続する他の装置と比較して電力消費に占める割合が大きい場合が多く、モバイル端末にとって重要な電池稼働時間を短くしてしまう、といった問題がある。
【0011】
非特許文献4では、パーソナルメディアゲートウェイと呼ぶ装置が紹介されている。これにより、モバイル端末から基地局と通信する機能を切り離すことができ、また、複数のモバイル端末へのアクセスポイントのように機能する。しかし、上述のデータ通信装置の選択、接続、切断、帯域の集約、通信内容の判別と振り分け、等の機能を組み込むことは想定しておらず、単なるデータ通信の中継を行っているに過ぎない。
【0012】
本発明に関連する技術としては、無線情報の収集に関する技術として本件出願人らによっても検討されている。例えば、端末が自律的に利用可能なネットワークを認識する技術として非特許文献5が、それぞれのネットワークQoS情報をリアルタイムに取得する技術として非特許文献6が、さらに高速移動に対応できるシームレスハンドオーバのために効率的な無線リソース予約を行う技術として非特許文献7がそれぞれ開示されている。
【0013】
関連する特許文献としては、ソフトウェア無線通信装置を開示する特許文献1がある。このソフトウェア無線通信装置は、受信した電波を一度ADコンバーターでアナログデジタル変換し、復調などの部分をデジタルシグナルプロセッサやマイクロプロセッサとソフトウェアで行うため、ソフトウェアを切り替えることで複数の周波数や無線方式に対応することができる。
【0014】
また、特許文献2には、それぞれの無線アクセスネットワークが有する各基地局に、無線チャネル利用状況の情報を保持するデータベース装置を接続し、各基地局側にそのデータベース装置を統合する、既存の無線アクセスネットワークが利用している周波数のデータベースを持つデータベース装置を設置したコグニティブ通信システムが開示されている。
通信方式や管理方式が異なる無線アクセス装置を統合して管理するためには、機能の共通化や異なる装置間の通信インターフェイスが要求される。しかしながら、従来の技術では、このような機能は無線システムに特化して開発された装置により実現されており、装置内の機能が異なる上、装置間のインターフェイスも共通化されておらず、汎用の機器が開発できないという問題がある。
【0015】
特許文献3には、複数の中継システムの監視情報を1つの中継システムの親局装置が集中管理することができる統合中継システムが開示されている。この中継システムは無線通信システムにおける基地局と携帯端末との間で中継を行うものであるが、トンネル等の電波の不感地帯で中継するシステムであり、複数の種類の無線通信システムを動的に再構成して使用するものではない。
【0016】
【非特許文献1】G. Wu, P. Havinga and M. Mizuno, “MIRAI Architecture for Heterogeneous Networks,” IEEE Comm. Mag., pp. 126−134, 2002年
【非特許文献2】M. Inoue, K. Mahmud, H. Murakami, M. Hasegawa and H. Morikawa, “Novel Out−Of−Band Signaling for Seamless Interworking between Heterogeneous Networks,” IEEE Wireless Commun., Vol. 11, No. 2, pp. 56−63, 2004年
【非特許文献3】H. Harada, “Software defined radio prototype toward Cognitive Radio Communication Systems,” IEEE Dyspan 2005, Vol.1, pp. 539−547, 2005年
【非特許文献4】インターネットマガジン, 株式会社インプレスR&D, pp. 86−89, 2006年2月, http://i.impressrd.jp/files/images/bn/pdf/im200602−085−strategy.pdf
【非特許文献5】宮本剛, 石津健太郎, 長谷川幹雄, 村田嘉利, “Cognitive Wireless Cloud (2) 〜無線リソース発見のためのデータ収集法〜,” 信学技法, ソフトウェア無線研究会, 2007年3月
【非特許文献6】斉藤義仰, 長谷川幹雄, 村田嘉利, “Cognitive Wireless Cloud (3) 〜 高速エンドツーエンドQoS測定方式 〜,” 信学技法, ソフトウェア無線研究会, 2007年3月
【非特許文献7】H. N. Tran, M. Hasegawa, Y. Murata, “Resource Researvation Scheme for Mobile Users in Cognitive Wireless Cloud,”信学技法, ソフトウェア無線研究会, 2007年3月
【特許文献1】特開2003−152732号公報
【特許文献2】特開2007−184850号公報
【特許文献3】特開2006−128980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上記従来技術の有する問題点に鑑みて創出されたものであり、異なる無線通信ネットワークとの接続を動的に再構成可能な通信端末を提供し、ユーザーが操作する装置を小型化、省電力化しながら、多数の無線通信ネットワークを効率的に利用可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、上記の課題を解決するために、次のような通信端末を提供する。
すなわち、請求項1に記載の発明によれば、複数の無線通信ネットワークとの接続の有無又は接続方式を動的に再構成可能な通信端末であって、データ通信集約装置と、通信アプリケーション実行装置と、該データ通信集約装置と該通信アプリケーション実行装置とを接続するローカル通信経路とを備えた通信端末を提供する。
以下の実施例において、接続の有無と切り替え可能な接続方式をあわせて接続方式等と呼ぶ。
【0019】
通信端末のデータ通信集約装置には、物理的又は論理的に構成される複数の無線通信ネットワークに対応する単数又は複数の通信手段と、ローカル通信経路を通して該通信アプリケーション実行装置と通信する第1ローカル通信手段とを備える。
具体的には、データ通信集約装置は、通信手段の選択や、通信手段における接続、切断、帯域の集約、通信内容の判別と振り分け、等の機能を持つ。
【0020】
また、通信端末の通信アプリケーション実行装置には、ローカル通信経路を通してデータ通信集約装置と通信する第2ローカル通信手段と、少なくとも外部の通信ネットワークと通信するアプリケーションを実行するアプリケーション実行手段とを備える。
【0021】
なお、本発明の接続方式には、通信に使用する周波数や変調方式、WiFi(Wireless Fidelity、IEEE 802.11bの互換性規格)やWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access、IEEE 802.16規格)といった通信方式を含む。再構成の対象としては使用する帯域や、通信の品質保証を行うレベルなども対象となる。本発明の再構成はこのように通信端末とネットワークとの任意の設定、パラメータの変更についても適用可能である。
【0022】
請求項2に記載の発明によれば、上記のデータ通信集約装置に、記憶手段に格納される接続ポリシー情報テーブルと、少なくとも該接続ポリシー情報に基づいて無線通信ネットワークの接続方式等を選択する通信ネットワーク再構成管理手段と、選択された接続方式等に接続を再構成する通信ネットワーク再構成実行手段とを備えることを特徴とする。
【0023】
請求項3に記載の発明によれば、上記の通信ネットワーク再構成管理手段が、通信ネットワークにおける所定の通信パラメータに関して入力手段から入力されるか、又は記憶手段に格納されている要求条件情報を用い、その要求条件情報に基づいて前記接続ポリシー情報テーブルを生成する接続ポリシー情報生成部を備えたことを特徴とする。
【0024】
請求項4に記載の発明によれば、上記の所定の通信パラメータが、通信速度、通信量、回線負荷、パケットロス率、通信遅延、ジッタ、電波強度、通信料金、又はこれら各パラメータの値から所定の計算式により計算される値、の1つ、又はその組み合わせであることを特徴とする。
【0025】
請求項5に記載の発明によれば、データ通信集約装置に、各通信ネットワークから前記通信パラメータの少なくともいずれかの情報を抽出する通信ネットワーク測定情報収集手段を備える。そして、上記の通信ネットワーク再構成管理手段が、通信ネットワーク測定情報収集手段が収集した情報に基づいて接続ポリシー情報テーブルの内容を評価する接続ポリシー情報評価部を備えると共に、接続ポリシー情報生成部が、該評価に従って該接続ポリシー情報テーブルを更新することを特徴とする。
【0026】
請求項6に記載の発明によれば、データ通信集約装置に、各通信ネットワークによる周波数の利用状況を測定する周波数測定手段を備え、上記の接続ポリシー情報生成部が、周波数の利用状況に応じて、前記接続ポリシー情報テーブルを更新することを特徴とする。
【0027】
請求項7に記載の発明によれば、本発明の通信端末において、1つのデータ通信集約装置に対して、複数の通信アプリケーション実行装置を備えて、データ通信集約装置が、各通信アプリケーション実行装置のために作動する構成でもよい。
【0028】
本発明は、上記請求項1ないし7のいずれかに記載の通信端末を備えた通信ネットワークシステムとして提供することもできる。該通信ネットワークシステムは、通信端末と共に、上記複数の無線通信ネットワークと、無線通信ネットワークを介して接続される複数のサーバ装置とから構成される。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、上記構成を備えることにより次のような効果を奏する。
本発明によれば、複数のデータ通信装置を収容するためのデータ通信集約装置を新たに導入し、複数のデータ通信装置の制御に関わる機能をユーザーが持つ通信アプリケーション実行装置から切り離して提供する。
従来の方式では、モバイル端末が直接データ通信装置を収容していたため、収容できるデータ通信装置の数に制限があり、可搬性の低下や電力消費の増加という問題が発生していた。本発明により、データ通信装置の選択、接続、切断、帯域の集約、通信内容の判別と振り分け、等の機能をアプリケーション実行装置から切り離すことが可能になり、新たな機能をアプリケーション実行装置に導入する必要がなくなる。
【0030】
また、従来のモバイル端末を用いる場合も、本発明のデータ通信集約装置と、モバイル端末に既存の通信モジュールを用いて接続すれば、上述の機能を利用することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を、図面に示す実施例を基に説明する。なお、実施形態は下記に限定されるものではない。
図1には、本発明に係るネットワークシステムの全体構成を示す。3G携帯電話回線網や、PHS、無線LANなどの外部ネットワーク(10)(11)(12)の基地局(アクセスポイント)(13)(14)(15)と無線通信ネットワーク(16)により接続する通信端末(20)に特徴がある。
【0032】
通信端末(20)は、従来のモバイル端末のように、データ通信を行う部分と、アプリケーションの実行処理を行う部分とを一体に構成するのではなく、データ通信集約装置(21)と通信アプリケーション実行装置(22)とに分離して構成している。
データ通信集約装置(21)と通信アプリケーション実行装置(22)との間は、有線又は無線のローカル通信経路(23)で結ばれる。
【0033】
データ通信集約装置(21)には、物理的又は論理的に形成される無線通信ネットワーク(16)のそれぞれと通信可能な通信手段が複数配設されており、必要に応じてアンテナや通信モジュールなどを実質的に設けることもできるし、公知のソフトウェアモデム技術などを利用して1つのハードウェア資源で複数の無線通信ネットワークに対応するように構成してもよい。
【0034】
このようにデータ通信集約装置を、通信アプリケーション実行装置と分離することで、データ通信集約装置にアンテナや通信モジュールを搭載する一方、通信アプリケーション実行装置にはデータ通信集約装置と接続するための最小限のローカル通信手段を設ければよくなる。この結果、ユーザーが実際に手にする端末で、アンテナや通信モジュールを複数備えた場合に容積や消費電力が大きくなる問題を解消することができる。
【0035】
ローカル通信経路は、無線LANやBluetooth(登録商標)等の無線通信によることが好ましいが、有線LANやケーブルによる接続でもよい。
【0036】
データ通信集約装置が種類の異なる無線通信ネットワークを統合し、それらを動的に再設定することにより、周波数の利用効率、ネットワークトラフィックの負荷分散、利用者やアプリケーションが要求する通信品質などを向上させることにも寄与する。
【実施例1】
【0037】
図2は、本発明のデータ通信集約装置(21)の構成図である。データ通信集約装置(以下、本装置)(21)は周知のパーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ等により実現することができるほか、ネットワークルータに本発明の機能を備えてもよい。パーソナルコンピュータにより構成する場合には、図示しないメモリと協働して処理を実行するCPU(210)、複数の種類の無線通信ネットワークとそれぞれ通信する第1通信モジュール(211)、第2通信モジュール(212)、第3通信モジュール(213)、キーボード(214)等の入力手段、通信アプリケーション実行装置(22)と通信を行うローカル通信モジュール(215)、ハードディスク(216)等の外部記憶手段を備えている。
【0038】
第1〜第3通信モジュール(211〜213)は、例えば携帯電話通信カード、PHSデータ通信カード、無線LANカードなどの無線通信ネットワークと接続するための通信モジュールであって、CFカードやPCIカード、USB接続の機器などで広く提供されている。
一般的には第1通信モジュールのように通信モジュールにつき1つのアンテナ(211a)が設けられているが、本来はアンテナは使用周波数が近ければ共用可能であり、第2通信モジュール(212)や第3通信モジュール(213)のようにアンテナ(212a)を共用してもよい。
【0039】
ローカル通信モジュール(215)は、上述したようにローカル通信経路を構成する機器であって、無線LANアダプタやBluetoothアダプタで構成することができる。ローカル通信モジュール(215)は、上記各通信モジュール(211〜213)と別個に設けてもよいが、実際には外部ネットワークとの接続用と、ローカル接続用で共用してもよい。アンテナ(215a)についても同様である。
【0040】
もちろん、本実施例は発明の一実施例であり、通信モジュールの数や構成は任意に定めることができる。1つの通信モジュールでソフトウェア的に複数の無線通信ネットワークに対応することも可能であることは上述した通りである。
【0041】
本発明の最も簡単な構成は、上記各通信モジュール(211〜213)において無線通信ネットワークと接続可能な場合にはリンクを確立し、すべての帯域を統合して利用することである。物理的、論理的に異なる通信ネットワークを統合利用する方法は周知であり、この場合はCPU(210)に図示しないリンク統合処理部を設けてリンクの束を構成すればよい。
【0042】
以下では、この最も単純な方法ではなく、接続可能な無線通信ネットワークの中から最適なネットワークを選択し、組み合わせて利用する技術を含む本装置(21)の構成を開示する。
ここでCPU(210)には通信ネットワーク再構成管理手段(2101)と、通信ネットワーク再構成実行手段(2102)との2つの処理手段が実現される。
【0043】
前者(2101)には接続ポリシー情報に基づいてネットワーク再構成の実行を指令するネットワーク制御部(2101a)、接続ポリシー情報を生成する接続ポリシー情報生成部(2101b)を備える。
【0044】
後者(2102)には、該ネットワーク制御部(2101a)からの指令に従って公知の方法により通信ネットワークとの接続・切断や接続パラメータの設定変更等を行うネットワーク再構成実行処理部(2102a)を備える。
【0045】
ハードディスク(216)には、接続ポリシー情報テーブル(2161)と、接続ポリシー情報生成部(2101b)が参照する要求条件情報(2162)を格納している。なお、要求条件情報(2162)はキーボード(214)からユーザーが直接入力することも可能であり、備えなくともよい。
【0046】
図4には本発明にかかる通信アプリケーション実行装置(22)の構成を示す。本装置(22)も公知のパーソナルコンピュータ、携帯電話端末やPDAにより構成するのが便利である。これらにはすでに複数の無線通信ネットワークとの接続が可能な通信モジュールを備えていてもよく、既存のモバイル端末を用いることもできる。
【0047】
本装置(22)はデータ通信集約装置(21)とのローカル通信経路を構成するローカル通信モジュール(220)と、CPU(221)、キーボード等の入力手段(222)、ハードディスクやメモリ(223)から構成される。
CPU(221)にはアプリケーション実行処理部(221a)により、ハードディスク等に保存された実行ソフト(223a)のプログラムを実行処理する。この方法は公知であり、ここでは詳述しない。
【0048】
本発明ではこのアプリケーションにおいてネットワーク通信を用いることを想定している。例えば、実行ソフト(223a)が動画の再生ソフトウェアであって、通信ネットワークを通して外部のサーバ(図示しない)から取得した動画データを再生する構成が知られている。その他、実行ソフト(223a)がウェブブラウザであって、受信したデータを図示しないモニタで表示する構成でもよい。
実行ソフトの種類は任意である。
【0049】
本発明において、上記データ通信集約装置(21)が無線通信ネットワークで送受信するデータを、ローカル通信モジュール(215)(220)を介して通信アプリケーション実行装置(22)で使用する。
【0050】
次に、この通信方法について詳しく説明する。まずデータ通信集約装置(21)では図4に示す処理を行う。
まず、通信ネットワーク再構成管理手段の接続ポリシー情報生成部(2101b)が、要求条件情報(2162)を参照して接続ポリシー情報を生成する。(S10)
次いで、ネットワーク制御部(2101a)が接続ポリシー情報(2161)に基づいて通信ネットワークの選択を行う。(S11)
そして、ネットワーク制御部(2101a)から指令を受けたネットワーク再構成実行処理部(2102a)が通信ネットワークの再構成を実行処理(S12)する。
【0051】
接続ポリシー情報生成処理(S10)について説明する。本処理(S10)ではユーザーが指定した優先度である要求条件情報(2162)を考慮してどの通信ネットワークに再構成するのかを定める接続ポリシー情報を生成する。本発明において、接続ポリシー情報は、実際に通信を行った時の通信状態の評価からその情報を改善することも可能であり、これについては別実施例として説明する。
【0052】
上記要求条件情報(2162)や接続ポリシー情報(2161)では、通信パラメータに関して定義される。いかなる通信パラメータを用いるのが好適であるかを検討した。
無線情報としての要求条件には、(1)無線情報、(2)通信品質、(3)安定性、(4)コスト、(5)端末の消費電力の5つの視点が重要である。
【0053】
(1)無線情報(RF)
端末が無線リソースを利用するためには、まずその端末が無線リソースのカバーエリア内である必要がある。ある端末がある位置にいるときにどの無線リソースが利用可能であるかは、端末自身がスキャンして探索することができる。
本発明では、各通信モジュール(211〜213)が通信可能であるかの情報を取得するのが簡便である。
【0054】
(2)通信品質(End−to−end QoS)
使用するアプリケーションによって必要とされる通信品質が異なるため、(1)で述べた接続できるかどうかといった2値情報だけではなく、より細かなQoS情報が必要である。このQoS情報としては、ディレイ、ジッタ、ロス率、利用可能帯域が挙げられる。
【0055】
特に、混雑している無線リソースに新規の端末が割り込むと、既にその無線リソースを利用していた他の端末の通信品質にも悪影響を及ぼすため、新規の端末がどの程度の帯域を利用できるかを予め精度よく推定できることが重要であると考えられる。
【0056】
この利用可能帯域情報は、ネットワーク全体の負荷分散を図ることによって周波数利用効率の向上を図る本システムの目的を達成するためにも必要な情報となる.
【0057】
(3)安定性
通信品質がダイナミックに変動する無線通信においては、(2)で述べた瞬時的なQoS情報のみならず、その安定性も重要なパラメータとなる。例えば、一時的に広帯域が使える無線リソースよりも、帯域が狭くても安定しているほうが望まれる場合があると考えられる。
【0058】
具体例としては、ユーザーの移動にともない無線リソースの切り替えを繰り返して通信を継続するといった場合、切り替えの回数をなるべく減らしたいという要求があると考えられる。
このような目的のためには、その無線リソースを継続して利用できる時間を推定することが有効である。
【0059】
(4)コスト
ユーザーもしくは用途によって、QoS保証よりも通信料金が低いことが優先される場合があると考えられる。ユーザーの満足度の観点から通信料金も無線リソース選択の重要なパラメータとなる。
【0060】
(5)端末の消費電力
無線通信の利用中、端末のバッテリが切れてしまうとそれ以上の通信は不可能であるため、無線リソースの選択において、その通信にどれだけの消費電力を必要とするかも重要な要素となる。
【0061】
まず、これらの要求条件の1つ以上の条件をユーザーの要求条件として用いる。具体的には、各要求条件について優先順位をユーザーがキーボード(214)から入力して定義しておくことができる。また、単に「コスト重視」「通信品質重視」のように択一的に選択してもよい。
【0062】
さらに、要求条件は利用中のアプリケーションなどによって自動的に定義される構成でもよい。例えば、画像伝送などの高速通信の必要なアプリケーションがユーザーによって起動された時に、要求条件情報(2162)の設定を自動的に「通信品質重視」に変更する処理を実装すればよい。
【0063】
次に、接続ポリシー情報として定めるためにどのような通信パラメータを用いればよいのか説明する。上記(1)〜(5)の要求条件に対応して取得可能な情報は次の通りである。
【0064】
無線情報
(1−1)無線の種類
まず、無線の種類の情報が必須である。これらは各通信モジュール(211〜213)においてどのような無線通信ネットワークと接続可能であるかは自明である。
【0065】
(1−2) RSSI(Received Signal Strength Indicator)
通信品質を推定するための情報である。無線の種類によってBER(Bit Error Rate)等の他のパラメータを利用することもある。これらについても周知技術により各通信モジュール(211〜213)から取得できる。
【0066】
(2)通信品質(End−to−end QoS)
(2−1)ディレイ、通信の遅延時間
(2−2)ジッタ
(2−3)ロス率
【0067】
以上3項目は、サービス品質を確保するために必須の情報である。アプリケーションの種類によって要求されるQoSレベルは異なる。これらはアプリケーション実行装置(22)のアプリケーション実行処理部(221a)において必要とされる値を周知の技術により求めることができる。
【0068】
(2−4)アクセスポイントの帯域
アクセスポイントに固有の値となる。(1−1)無線の種類から導かれる値である。
(2−5)利用可能帯域
アクセスポイントの他の端末の利用状況により変化する動的情報となる。
(2−6)アクセスポイントに接続している端末数
アクセスポイントの混雑度を示す指標となる。空き帯域を計測することは困難な場合があり、接続端末数をパラメータとして使用することが多い。以上の2つのパラメータはアクセスポイント側から取得する。
(2−7)アプリケーションの種類
アプリケーションの種類によって要求されるQoSレベルが異なるために必要な情報である。通信アプリケーション実行装置(22)のアプリケーション実行処理部(221a)が実行中のアプリケーションを取得することができる。
【0069】
(3)安定性
(3−1)アクセスポイントに接続している端末数
アクセスポイントの混雑度を示す指標となる。空き帯域を計測することは困難な場合があり、接続端末数をパラメータとして使用することが多い。
(3−2)端末の位置
通信端末に図示しないGPS受信部を備えることにより端末の位置を取得できる。
(3−3)移動速度
通信端末に加速度センサ等を備えることで端末の移動速度を取得することができる。カバーエリアからそのアクセスポイントにどれ程の時間とどまることができるかの推定が可能である。
(3−4)カバーエリア
各無線アクセスのカバーエリアと、上述の端末の位置、移動速度情報を組み合わせて、端末がその無線アクセスに滞在できる時間を推定することができる。この情報の取得のために無線アクセス毎の通信可能エリアのマップ情報をハードディスク等に備えておく。
【0070】
(4)コスト
(4−1)通信料金
最適な無線リソースの基準は、保証されるQoSと通信料金の兼ね合いとなると考えられる。よって各無線リソースを利用した際の料金情報が必要となる。具体的には計時手段と、料金表のデータテーブルにより通信料金を算出することができる。
【0071】
(5)消費電力
(5−1)各無線アクセスに接続した場合の通信端末の消費電力
通信端末のバッテリ容量と消費電力から、通信端末を利用できる時間を推定するために用いる情報である。予め消費電力のデータを格納しておいてもよいし、実際に消費電力を計測する手段を備えてもよい。
【0072】
本発明の接続ポリシー情報生成部(2101b)の処理について説明する。
本システムでは、通信品質がダイナミックに変動する環境で、個々のユーザーの嗜好による満足度を最大化するためのアーキテクチャを備えている。ここでユーザーの満足度とは、単なるアプリケーションQoSのことではなく、ユーザーの心理的な満足度も含む。従って、あるユーザーがある無線リソースを利用したときの満足度をいかに数値化して接続ポリシー情報に反映させるのかが問題となる。
【0073】
上記の要求条件の中には、通信料金のようなユーザーの満足度とのグラフが描ける種類のものから、RSSIのようにユーザーの満足度と直接にはマッピングできない種類のものまで、多岐に亘っている。これらの情報は大きく、通信品質、アプリケーションQoS、主観評価値、ユーザー満足度の4種類に分類できる。
【0074】
ここで通信品質とは、RSSI、ディレイ、ジッタ、ロス率等の測定可能な品質情報を言う。
アプリケーションQoSとはビデオアプリケーションにおけるS/N 等の、アプリケーションレイヤにおける品質情報を言う。
主観評価値とは、アプリケーションの品質に対して人間が評価した値を言う。人間の五感を通すことで、アプリケーションQoSよりもユーザーの心理的な満足度に近い評価基準である。
ユーザー満足度とは、各ユーザーの嗜好を反映した、主観的な満足度を表す評価値である。
【0075】
これらの情報を、ユーザー満足度とマッピングできるように変換することで、すべての情報を無線リソース選択に反映できると考えられる。
【0076】
これら4種類の情報の中で、通信品質とアプリケーションQoSは密接な関係にあり、両者の相互変換に関しては多数の研究が行われている。また、主観評価値に関しては、目標とするMoS値を達成するためにアプリケーションQoSの要求値が生じるのであり、この両者の変換も主観評価実験の積み重ねにより可能である。
【0077】
接続ポリシー生成部(2101b)ではこれらの周知の相関を予め変換条件として備えておき、要求条件に基づき定義することができる。
そこで、ユーザー満足度と主観評価値との変換が残る課題となる。主観評価は、ITU−Rなどで厳密に定められた測定環境において評価を行う。しかし、例えばビデオストリーミングの場合、同じ評点を得たビデオ再生でも、「これだけの料金を払ったのにこの程度の画質なのか」と満足しないユーザーもいれば、「モバイルなのにこんなに良い画質なのか」と十分満足するユーザーもいる。
【0078】
例えば、軸を主観評価値(MoS値)、縦軸を満足度としたときのグラフはユーザーによって異なり、図5のようなさまざまなパターンがある。あるユーザーのMoS値と満足度の関係が図5(a)のようになったとする。これはあるMoS値を閾値として、それ以上なら満足、それ以下なら不満足だということを表している。これに対して、同図(b)のように、もっと緩やかなグラフとなるユーザーも存在するであろうし、同図(c)のように閾値の高いユーザーも存在すると考えられる。
【0079】
接続ポリシー生成部(2101b)では、このような満足度とMoS値の対応関係をユーザー毎、アプリケーション毎に作成し、無線リソース選択に反映させることで、ユーザー満足度の最大化を図る。
【0080】
データ通信集約装置(21)では、ユーザーの嗜好に沿って最適な無線リソースを選択するために、図6に示すような選択アルゴリズムを用いる。
【0081】
すなわち、データ通信集約装置(21)において、通信アプリケーション実行装置(22)で実行するアプリケーション毎に、アプリケーションの要求QoSと優先順位の設定を行い、この情報を本装置(21)の要求条件情報(2162)に格納する。そして、まず各通信モジュール(211〜213)で通信可能なアクセスポイント(60)の情報を取得する。このうち、アクセスポイントe,f,gについてはRSSIが所定の閾値を下回ることから候補から除外する。
【0082】
一方、アプリケーション毎に、要求QoSを定義しておく。このデータはデータ通信集約装置(21)に格納してもよいし、通信アプリケーション実行装置(22)に格納して、アプリケーションを実行するたびにローカル通信経路を通してデータ通信集約装置(21)に送信してもよい。例えばVoIPアプリケーション(61)についてディレイ、ジッタ等の各値の閾値を定める。
【0083】
要求条件(62)と要求QoS(64)に加え、上述したユーザー満足度のバランス(63)を 接続ポリシー情報生成部(2101b)に集約し、通信ネットワークの選択を行う。例えば、利用可能なアクセスポイントの中から、まず要求QoSを満たすアクセスポイントを選択候補として選抜し、その中でユーザーのコスト要求及び消費電力の要求に合致する選択候補に絞り込む。
【0084】
接続ポリシー情報生成部(2101b)では、図7に示すような周波数測定部(2103b)が検知した周波数の利用状況、電波干渉の程度に応じて、混雑する帯域の優先順位を下げる処理や、1つの通信ネットワークの選択が集中しないように分散してポリシー情報を生成することもできる。
【0085】
2つ以上の選択候補が残る場合には、バランス(63)を考慮して、所定のコスト変動幅で満足度が所定値以上高まる場合には、その良好な方を選択する。
【0086】
接続ポリシー情報生成部(2101b)は例えば以上のようなアルゴリズムによりVoIPアプリケーションの場合には、アクセスポイントbを選択(65)、ビデオアプリケーション(66)の場合にはアクセスポイントa+b+dによるリンクアグリゲーションを選択(67)する。このように選択した結果を接続ポリシー情報テーブル(2161)に格納する。
【0087】
そして、ネットワーク制御部(2101a)は、通信アプリケーション実行装置(22)から実行中のアプリケーションと、その時点で利用可能なアクセスポイントの情報を取得すると、接続ポリシー情報テーブル(2161)から、アプリケーションと利用可能なアクセスポイントの組み合わせを検索し、使用する無線通信ネットワークを決定する。決定された無線通信ネットワークはネットワーク再構成実行処理部(2102a)に再構成実行処理を指令し、対応する通信モジュール(211〜213)における通信を開始する。
【0088】
次に、このネットワーク再構成処理について詳述する。
本発明の簡便な実施態様としては、ネットワーク再構成処理について、既存のハンドオーバ技術など、ネットワークの切り替えに関する技術を適宜用いることができる。また、後述するようにリンクアグリゲーションによりリンクする通信ネットワークの組み合わせを切り替える技術を適用することもできる。これらは公知の技術であるから、本発明のネットワーク再構成実行処理部(2102a)の構成は適宜設計することができる。
【実施例2】
【0089】
本発明の構成は以上であるが、次にネットワーク再構成を行った後に、その結果を評価し、接続ポリシー情報(2161)を更新する構成を説明する。
【0090】
図7がこのときの本装置(21’)の構成図、図8が処理フローチャートである。
上記実施例に加えて、通信ネットワーク再構成管理手段(2101)に接続ポリシー情報評価部(2101c)を備え、通信ネットワーク再構成実行処理(S12)の後に、測定情報収集部(2103a)と周波数測定部(2103b)による通信ネットワーク測定情報収集ステップ(S13)、接続ポリシー情報評価部(2101c)による接続ポリシー情報評価ステップ(S14)、接続ポリシー情報生成部(2101b)による接続ポリシー情報更新ステップ(S15)を有する。
【0091】
具体的にはネットワーク制御部で選択された通信ネットワークにより実際に通信を行い、その時の通信パラメータを測定する。この値が、要求条件情報(2162)を満たしているか否か、あるいは要求条件情報(2162)から所定の閾値内に収まっているかを比較評価し、収まっていないときには、測定値を元に接続ポリシー情報生成部(2101b)で再計算し、接続ポリシー情報テーブル(2161)を更新する。
【0092】
例えば、通信アプリケーション実行装置(22)で実行するアプリケーションのQoSが得られているかどうか評価し、得られていない時には別の通信ネットワークを選択したり、リンクアグリゲーションの組み合わせを変化させた接続ポリシー情報に更新する。
【実施例3】
【0093】
さらに、本発明は図9に示すように、1つのデータ通信集約装置(24)に対して、複数の通信アプリケーション実行装置(22)(22)(22)を設けてもよい。この態様の具体的なイメージとしては、職場や家庭などでデータ通信集約装置(21)を1基設置して、それと各ユーザーが使用する複数の通信アプリケーション実行装置(22)とを接続し、データ通信集約装置(21)で通信している通信回線を共用するものである。
【0094】
図10に示すデータ通信集約装置(24)は、各通信アプリケーション実行装置(22)で要求される通信パラメータの値を統合する要求値統合処理部(240)を設けて各通信アプリケーション実行装置で実行されているアプリケーションの要求を満たすように処理してもよい。
例えば、ある通信アプリケーション実行装置(22)で動画再生を行っていて必要な通信速度が1Mbpsであるとき、別の通信アプリケーション実行装置(22)がデータ通信集約装置(24)と接続を開始して、通信速度0.5Mbpsを必要とするときに、データ通信集約装置(24)は現行のリンクのみでは1.5Mbpsの通信速度を得られない場合には別なリンクを確立するように処理する。
【0095】
この例では、通信速度の合計値を算出したが、最大値や平均値でもよい。またパケットロス率について要求がある場合には、最小値を統合値として選択することが好ましい。
このように、要求値統合処理部(240)の処理は、通信パラメータの特性に応じて、あるいは実際に適当となるような選択に従って、統計値又は所定の計算式による要求値の算出を行うことができる。
【0096】
このように複数の通信アプリケーション実行装置(22)を用いる場合、データ通信集約装置(21)では、アプリケーションに応じて、いずれの無線通信ネットワークを使用するかを振り分けることが必要になることがある。
この場合、接続先の外部サーバのIPアドレスや、使用されるポート番号を調べることで各通信アプリケーション実行装置(22)で実行中のアプリケーションを取得することもできる。
【0097】
このような技術は公知であり、トラフィックの負荷分散機能を持つルータなどでは、アプリケーションごとに特定のサーバや別のルータに振り分けるため、もしくは転送処理の優先度が高いアプリケーション(音声など)のキューイングにおいて、他のパケットよりも早く転送されるようにすることが行われている。
また、トラフィック監視装置においても、組織内でどのアプリケーションがどのくらい使われているかを把握する技術として、アプリケーションの種類を取得する技術が用いられている。
さらに、ファイヤウォールの設定においても、アプリケーションを同定する機能が備えられており、この場合にはポート番号などによって判別している。ポート番号は、well−known portとして定められており、例えば非特許文献7にはこの一覧が記載されている。
【0098】
【非特許文献7】ホームページ http://www.iana.org/assignments/port−numbers
【0099】
本発明ではこれらの技術を用いて、実行中のアプリケーションに応じ、要求条件情報(2162)に基づいて適切な無線通信ネットワークを選択することもできる。
なお、各通信アプリケーション実行装置(22)からローカル通信経路(23)を通して直接通知するようにしてもよい。
【0100】
本構成によるデータ通信集約装置(24)は、無線LANルータと一体的に構成してもよい。無線LANルータでは、周知のルータ機能の他、無線LANで接続するユーザー端末に対してDHCPサーバ機能によりIPアドレスを付与する機能等を備える。これらの機能を有しながら、既存の無線LANルータのように単一のネットワークと接続するのではなく、複数の無線通信ネットワークを動的に再構成しながら接続する本発明の構成を適用した無線LANルータを提供してもよい。
【0101】
本発明は以上の構成により、次のような産業上の利用可能性を有する。
すなわち、災害発生時等において通常の通信回線が切断された場合、衛星通信やその他の利用可能な広域・遠距離通信のデータ通信装置をデータ通信集約装置が収容することにより、利用可能な方式を最大限利用して、安定した広帯域の通信を提供できるため、復旧までの間に周辺の被災者が通信を継続することができる。
また、イベント等により臨時に新たな通信帯域が必要になる場合でも、データ通信集約装置をアクセスポイントのように設置することにより、通信速度がより高速、あるいは、利用者の収容量がより多い通信を、利用者に提供することが可能になる。
さらに、家庭内の無線LANルータの機能として実装し、実行する通信アプリケーションの要求や、通信コストの要求に合わせて最適な接続先を自動的に選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明による通信ネットワークシステムの全体構成図である。
【図2】本発明におけるデータ通信集約装置の構成図である。
【図3】本発明における通信アプリケーション実行装置の構成図である。
【図4】本発明のデータ通信集約装置における処理フローチャートである。
【図5】主観評価値(MoS値)と満足度の関係を示すグラフである。
【図6】ユーザーの嗜好に沿った無線リソースの選択アルゴリズムである。
【図7】本発明におけるデータ通信集約装置の別構成図である。
【図8】本発明(実施例2)の処理フローチャートである。
【図9】本発明による通信ネットワークシステム(実施例3)の全体構成図である。
【図10】本発明におけるデータ通信集約装置(実施例3)の構成図である。
【符号の説明】
【0103】
10 3G携帯電話回線網
11 PHS
12 WiFi(無線LAN)
13 アクセスポイント1
14 アクセスポイント2
15 アクセスポイント3
16 無線通信ネットワーク
20 通信端末
21 データ通信集約装置
22 通信アプリケーション実行装置
23 ローカル通信経路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線通信ネットワークとの接続の有無又は接続方式(以下、接続方式等という)を動的に再構成可能な通信端末であって、データ通信集約装置と、通信アプリケーション実行装置と、該データ通信集約装置と該通信アプリケーション実行装置とを接続するローカル通信経路とを備え、
該データ通信集約装置が、
物理的又は論理的に構成される複数の無線通信ネットワークに対応する単数又は複数の通信手段と、
該ローカル通信経路を通して該通信アプリケーション実行装置と通信する第1ローカル通信手段と
を備えると共に、
該通信アプリケーション実行装置が、
該ローカル通信経路を通して該データ通信集約装置と通信する第2ローカル通信手段と、
少なくとも外部の通信ネットワークと通信するアプリケーションを実行するアプリケーション実行手段と
を備えた
ことを特徴とする通信端末。
【請求項2】
前記データ通信集約装置に、
記憶手段に格納される接続ポリシー情報テーブルと、
少なくとも該接続ポリシー情報に基づいて無線通信ネットワークの接続方式等を選択する通信ネットワーク再構成管理手段と、
選択された接続方式等に接続を再構成する通信ネットワーク再構成実行手段と
を備えた請求項1に記載の通信端末。
【請求項3】
前記通信ネットワーク再構成管理手段が、
無線通信ネットワークにおける所定の通信パラメータに関して入力手段から入力されるか、又は記憶手段に格納されている要求条件情報を用い、
該要求条件情報に基づいて前記接続ポリシー情報テーブルを生成する接続ポリシー情報生成部を備えた
請求項1又は2に記載の通信端末。
【請求項4】
前記通信パラメータが、通信速度、通信量、回線負荷、パケットロス率、通信遅延、ジッタ、電波強度、通信料金、又はこれら各パラメータの値から所定の計算式により計算される値、の1つ、又はその組み合わせである
請求項3に記載の通信端末。
【請求項5】
前記データ通信集約装置に、
各無線通信ネットワークから前記通信パラメータの少なくともいずれかの情報を抽出する通信ネットワーク測定情報収集手段を備え、
前記通信ネットワーク再構成管理手段が、
該通信ネットワーク測定情報収集手段が収集した情報に基づいて前記接続ポリシー情報テーブルの内容を評価する接続ポリシー情報評価部を備えると共に、
前記接続ポリシー情報生成部が、該評価に従って該接続ポリシー情報テーブルを更新する
請求項3又は4に記載の通信端末。
【請求項6】
前記データ通信集約装置に、
各無線通信ネットワークによる周波数の利用状況を測定する周波数測定手段を備え、
前記接続ポリシー情報生成部が、周波数の利用状況に応じて、前記接続ポリシー情報テーブルを更新する
請求項3ないし5のいずれかに記載の通信端末。
【請求項7】
前記通信端末において、
前記データ通信集約装置に対して、複数の前記通信アプリケーション実行装置を備えて、該データ通信集約装置が、各通信アプリケーション実行装置のために作動する
請求項1ないし6のいずれかに記載の通信端末。
【請求項8】
前記請求項1ないし7のいずれかに記載の通信端末と、
前記複数の無線通信ネットワークと、
該無線通信ネットワークを介して接続される複数のサーバ装置と
から構成される通信ネットワークシステム。
【請求項1】
複数の無線通信ネットワークとの接続の有無又は接続方式(以下、接続方式等という)を動的に再構成可能な通信端末であって、データ通信集約装置と、通信アプリケーション実行装置と、該データ通信集約装置と該通信アプリケーション実行装置とを接続するローカル通信経路とを備え、
該データ通信集約装置が、
物理的又は論理的に構成される複数の無線通信ネットワークに対応する単数又は複数の通信手段と、
該ローカル通信経路を通して該通信アプリケーション実行装置と通信する第1ローカル通信手段と
を備えると共に、
該通信アプリケーション実行装置が、
該ローカル通信経路を通して該データ通信集約装置と通信する第2ローカル通信手段と、
少なくとも外部の通信ネットワークと通信するアプリケーションを実行するアプリケーション実行手段と
を備えた
ことを特徴とする通信端末。
【請求項2】
前記データ通信集約装置に、
記憶手段に格納される接続ポリシー情報テーブルと、
少なくとも該接続ポリシー情報に基づいて無線通信ネットワークの接続方式等を選択する通信ネットワーク再構成管理手段と、
選択された接続方式等に接続を再構成する通信ネットワーク再構成実行手段と
を備えた請求項1に記載の通信端末。
【請求項3】
前記通信ネットワーク再構成管理手段が、
無線通信ネットワークにおける所定の通信パラメータに関して入力手段から入力されるか、又は記憶手段に格納されている要求条件情報を用い、
該要求条件情報に基づいて前記接続ポリシー情報テーブルを生成する接続ポリシー情報生成部を備えた
請求項1又は2に記載の通信端末。
【請求項4】
前記通信パラメータが、通信速度、通信量、回線負荷、パケットロス率、通信遅延、ジッタ、電波強度、通信料金、又はこれら各パラメータの値から所定の計算式により計算される値、の1つ、又はその組み合わせである
請求項3に記載の通信端末。
【請求項5】
前記データ通信集約装置に、
各無線通信ネットワークから前記通信パラメータの少なくともいずれかの情報を抽出する通信ネットワーク測定情報収集手段を備え、
前記通信ネットワーク再構成管理手段が、
該通信ネットワーク測定情報収集手段が収集した情報に基づいて前記接続ポリシー情報テーブルの内容を評価する接続ポリシー情報評価部を備えると共に、
前記接続ポリシー情報生成部が、該評価に従って該接続ポリシー情報テーブルを更新する
請求項3又は4に記載の通信端末。
【請求項6】
前記データ通信集約装置に、
各無線通信ネットワークによる周波数の利用状況を測定する周波数測定手段を備え、
前記接続ポリシー情報生成部が、周波数の利用状況に応じて、前記接続ポリシー情報テーブルを更新する
請求項3ないし5のいずれかに記載の通信端末。
【請求項7】
前記通信端末において、
前記データ通信集約装置に対して、複数の前記通信アプリケーション実行装置を備えて、該データ通信集約装置が、各通信アプリケーション実行装置のために作動する
請求項1ないし6のいずれかに記載の通信端末。
【請求項8】
前記請求項1ないし7のいずれかに記載の通信端末と、
前記複数の無線通信ネットワークと、
該無線通信ネットワークを介して接続される複数のサーバ装置と
から構成される通信ネットワークシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−34738(P2010−34738A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193199(P2008−193199)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】
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