説明

通信端末装置及びその制御方法

【課題】通信端末装置から、通信端末装置に接続されている電話機への切替動作時に、回線に瞬断状態を起こさずに、確実に切り替えることができる通信端末装置を提供することを目的とする。
【解決手段】通信機器に接続する外付け電話機接続部と、通信回線の捕捉状態を、通信端末装置から、上記通信機器に切り替えるための回線切替部と、上記通信回線の捕捉状態の回線電圧を検出する回線電圧検出部と、通信回線の捕捉状態を通信端末装置から、上記通信機器に切り替える際に、回線電圧を一定に保持する回線直流電圧保持部と、上記回線直流電圧保持部を制御する回線直流電圧制御部と、上記通信端末装置が回線を捕捉している状態から、上記通信機器へ切替る際に、上記通信端末装置と上記通信機器とを、上記通信回線に並列に接続し、上記回線電圧を一定に保持する保持手段とを有する通信端末装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信端末装置に関し、特に、上記通信端末装置に接続されている電話機等の通信機器と上記通信端末装置との間で、通信回線の直流捕捉状態を切り替える動作に関する。
【背景技術】
【0002】
通信端末装置で回線を捕捉している状態から、上記通信端末装置に接続されている電話機に回線の捕捉状態を切り替えるときに、上記電話機が有するインピーダンスによっては、通信回線の回線電圧が瞬断する。つまり、上記電話機が有するインピーダンスによっては、上記切替動作によって、通信回線の回線電圧が瞬断し、回線の閉結状態を開放し、通信端末装置と電話機とを切替えることができない。
【0003】
このような事情に鑑みて、通信端末装置と、上記通信端末装置に接続されている電話機とを切り替える場合、通信端末装置と、上記通信端末装置に接続されている電話機とを、一端、並列接続する。そして、上記通信端末装置に接続されている電話機のオフフック状態を検出した後に、切り替える。
【0004】
このような通信端末装置において、回線電圧を測定する回線電圧測定部と、上記回線電圧測定部の測定値に基づいて、加入者線路抵抗を算出する線路抵抗算出部と、上記線路抵抗算出部の算出値に応じて、オフフック検出部の検出条件を変更する。これによって、通信端末装置と、上記通信端末装置に接続されている電話機との切替を制御することが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−207182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の通信端末装置では、加入者電話回線に対して、通信端末装置と上記通信端末装置に接続されている電話機とが並列に接続されている状態で、加入者電話回線に対する終端抵抗の通信規格を満足できない。このために、切替動作によって、通信回線の回線電圧が瞬断してしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、通信端末装置から、通信端末装置に接続されている電話機への切替動作時に、回線に瞬断状態を起こさず、確実に切り替えることができる通信端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、通信回線の捕捉状態を、通信端末装置から、上記通信端末装置に接続されている電話機等の通信機器に切り替え可能な通信端末装置において、上記通信機器に接続する外付け電話機接続部と、通信回線の捕捉状態を、上記通信端末装置から、上記通信機器に切り替えるための回線切替部と、上記通信回線の捕捉状態の回線電圧を検出する回線電圧検出部と、通信回線の捕捉状態を通信端末装置から、上記通信機器に切り替える際に、回線電圧を一定に保持する回線直流電圧保持部と、上記回線直流電圧保持部を制御する回線直流電圧制御部と、上記通信端末装置が回線を捕捉している状態から、上記通信機器へ切替る際に、上記通信端末装置と上記通信機器とを、上記通信回線に並列に接続し、上記回線電圧を一定に保持する保持手段とを有する通信端末装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、通信端末装置から、通信端末装置に接続されている電話機へ切り替えるときに、回線に瞬断状態を起こさずに、確実に切り替えることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
発明を実施するための最良の形態は、次の実施例である。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明の実施例1である通信端末装置100の概略構成を示すブロック図である。
【0011】
表示部1は、制御部5の制御によって、通信端末装置100の状態や時刻情報や送信先の電話番号等を表示する。
【0012】
フラッシュメモリ2は、制御部5を制御するプログラムやオペレータメッセージ等のためのデータが格納されているブロックと、電源OFF時に、DRAMに蓄積されている画像データのバックアップ領域として使用するブロックとを有する。
【0013】
DRAM3は、オペレータによって設定可能なデータや、通信によって受信した画像データ等を格納する。
【0014】
操作部4は、通信端末装置100を操作し、また、各種の情報を入力し、複数のキー入力スイッチと、キー入力スイッチの操作回路等によって構成されている。
【0015】
制御部5は、CPUで構成され、通信端末装置100の全体を制御し、フラッシュメモリ2に格納されている制御プログラムに従って各種の制御動作を実行する。
【0016】
読取部6は、原稿を読み取る。記録部7は、画像データを記録する。通信部8は、画像データなどを通信用のフォーマットに制御し、通信回線10との接続を行うためのハード回路等によって構成されている。
【0017】
図2は、通信端末装置100における通信部8の概略構成を示すブロック図である。
【0018】
第1スイッチSW1は、通信画像信号を送受信するために、通信回線10の直流を捕捉するためのスイッチである。
【0019】
通信回線直流捕捉制御部12は、第1スイッチSW1のON/OFFを制御する。
【0020】
通信回線直流捕捉部13は、通信回線直流捕捉制御部12が第1スイッチSW1をONすると、各国の通信規格で定められている直流抵抗値で、回線を捕捉する。
【0021】
通信回線直流電圧検出部14は、通信回線直流捕捉部13が捕捉した通信回線10の直流電圧を監視する。
【0022】
通信回線直流電圧制御部15は、通信端末装置100で通信回線10を捕捉している状態から、通信端末装置100に接続されている外部電話機19に、通信回線10の捕捉状態を移行するときに、通信回線直流電圧検出部14が検出した電圧を一定に保持する。つまり、回線に対するインピーダンスを変更することにより、上記検出電圧を一定に保持する。このようにして、通信回線直流電圧制御部15が、通信回線直流捕捉部13を制御する。
【0023】
通信回線直流電圧制御部15で直流電圧を一定に保持する回線電圧は、第1スイッチSW1が接続されたON状態で、第2スイッチSW2が外部電話機19との接続を開放されたOFF状態で、通信回線直流電圧検出部14が検出した回線電圧である。また、通信回線直流電圧制御部15は、通信回線直流捕捉部13の直流インピーダンスがハイインピーダンス状態になると、第1スイッチSW1を開放する。この直流インピーダンスがハイインピーダンスになるのは、外部電話への切替動作が完了したときである。
【0024】
送受信回路部16は、通信回線10を介して、画像信号等を送受信する。
【0025】
CI検知部17は、通信回線10から送出された呼出信号(CI信号)を検知し、このCI検知部17が呼出信号を検知すると、通信端末装置100は、通信回線直流捕捉制御部12を制御し、第1スイッチSW1を接続するON状態にする。
【0026】
第2スイッチSW2は、通信端末装置100に接続された外部電話機19との接続をON/OFFするスイッチである。第2スイッチSW2は、CI検知部17が呼出信号を検出し、SW1を接続状態にする前に、外部電話機19の影響を、通信回線10に与えないために、外部電話機19との接続を切り離す。
【0027】
外部電話機19は、通信端末装置100に接続されている電話機等である。
【0028】
通信端末装置100は、通信回線の捕捉状態を、通信端末装置から、上記通信端末装置に接続されている通信機器に切り替え可能な通信端末装置である。外部電話機19と第2スイッチSW2との間に、通信機器に接続する外付け電話機接続部が設けられている。
【0029】
通信回線直流捕捉制御部12は、通信回線の捕捉状態を、上記通信端末装置から、上記通信機器に切り替えるための回線切替部の例である。通信回線直流電圧検出部14は、上記通信回線の捕捉状態の回線電圧を検出する回線電圧検出部の例である。
【0030】
通信回線直流捕捉部13は、通信回線の捕捉状態を通信端末装置から、上記通信機器に切り替える際に、回線電圧を一定に保持する回線直流電圧保持部の例である。通信回線直流電圧制御部15は、上記回線直流電圧保持部を制御する回線直流電圧制御部の例である。通信回線直流捕捉制御部12、通信回線直流捕捉部13は、通信端末装置が回線を捕捉している状態から、通信機器へ切替る際に、通信端末装置と通信機器とを、通信回線に並列に接続し、上記回線電圧を一定に保持する保持手段の例である。
【0031】
この場合、上記回線電圧を一定に保持した状態で、上記通信端末装置の回線インピーダンスがハイインピーダンス状態になったときに、並列接続状態を解除する。
【0032】
図3は、従来の通信端末装置200の通信部29の概略構成を示すブロック図である。
【0033】
第3スイッチSW3は、通信画像信号を送受信するために通信回線10の直流を捕捉する。
【0034】
通信回線直流捕捉制御部21は、上記第3スイッチSW3のON/OFFを制御する。
【0035】
通信回線直流捕捉部22は、通信回線直流捕捉制御部21が第3スイッチSW3をONすると、各国の通信規格で定められた直流抵抗値で回線を捕捉する。
【0036】
送受信回路部23は、通信回線10を介して画像信号等を送受信する。
【0037】
CI検知部24は、通信回線10から送出された呼出信号(CI信号)を検知し、このCI検知部24が、呼出信号を検知すると、従来の通信端末装置200は、通信回線直流捕捉制御部21を制御し第3スイッチSW3を接続するON状態にする。
【0038】
第4スイッチSW4は、従来の通信端末装置200に接続されている外部電話機28が、通信回線10に接続するか、フック検知用電源供給部27に接続するかを切り替える。
【0039】
フック検知用電源供給部27は、従来の通信端末装置200で回線を捕捉していいる状態の時に、外部電話機28のフック状態を、検知する。また、フック検知用電源供給部27より、外部電話機28に直流電圧を供給することによって、外部電話機28が有するインピーダンスとは無関係に、通信回線10への切替をスムーズに行うことができる。ただし、フック検知用の電源回路が必要であるので、高価な構成である。
【0040】
外部電話機28は、従来の通信端末装置200に接続されている電話機である。通信部29は、従来の通信端末装置の通信部である。
【0041】
図4は、実施例1における通信部8の概略を示す回路図である。
【0042】
通信回線10は、ラインL1とラインL2とによって構成され、第5スイッチSW5に入力される。通信回線10を経由した呼出信号の検出や、通信端末装置100からの発呼動作を受け付けると、第5スイッチSW5をONし、通信端末装置100と通信回線10と接続する。
【0043】
第5スイッチSW5がONされると、トランジスタQ1、抵抗R1、抵抗R2、抵抗R3、コンデンサC1によって、通信回線の直流が捕捉される。ダイオードブリッジ37によって、通信回線10のL1、L2の極性に関係なく、通信回線の直流が捕捉される。
【0044】
通信回線直流電圧制御部15は、通信端末装置100に接続されている外部電話機19に通信回線の捕捉状態を移行するときに、外部電話機19のインピーダンスによって通信回線10に瞬断状態を発生させずに、オフフック状態を移行する。なお、上記オフフック状態は、通信回線を捕捉した状態である。このために、トランジスタQ1のベース電位やトランジスタQ1のエミッタ抵抗である抵抗R1等を制御し、直流捕捉状態の移行(通信端末装置100→外部電話機19)を、通信回線10を瞬断させずに、確実に行えるよう制御する。
【0045】
図5は、従来例による回線接続の切替制御を示すタイミングチャートである。
【0046】
直流V1は、交換機が出力する直流電圧である。タイミングt1で、通信端末装置100が通信回線10の直流捕捉を開始する。タイミングt2で、通信端末装置100が通信回線10の直流を捕捉し、通信回線10の電圧は、V2に移行する。
【0047】
通信端末装置100が通信動作を実行しているときは、回線電圧はV2が保持される。通信端末装置100の通信動作が終了し、外部電話機19がオフフック状態であるときに、通信回線10の直流捕捉状態が、通信端末装置100から外部電話機19に移行される。ただ単純に第1スイッチSW1をOFFし、第2スイッチSW2をONすると、外部電話機19のもつコンデンサに電荷を充電させる期間が発生するために、開放状態となる。この状態を示したタイミングが、t3→t4の状態であり、回線電圧がV3まで上がり、誤切断が発生する。
【0048】
図6は、実施例1における受信動作時の動作を示すフローチャートである。
【0049】
実施例1は、通信端末装置100によって、通信回線10の直流捕捉状態から、通信端末装置100に接続されている外部電話機19へ、通信回線10の直流捕捉状態を移行するときの実施例である。
【0050】
S101で、通信回線10から送出された呼出信号を検知する。
【0051】
S102で、通信端末装置100が通信回線10の直流を捕捉する。通信端末装置100が通信回線10の直流を捕捉した状態は、第1スイッチSW1が接続されたON状態であり、第2スイッチSW2が外部電話機19との接続が切り離されたOFF状態になり、通信回線直流捕捉部13によって通信回線10が閉結される。
【0052】
S103で、通信回線の直流捕捉をした状態の通信回線電圧を、通信回線直流電圧検出部14が検出する。S104で、FAX通信を実行する。
【0053】
S105で、FAX通信実行中に、外部電話機19への接続切替要求信号の有/無を検出する。接続切替要求信号が無い場合、S106で、FAX通信が終了したかどうかを検出する。FAX通信が終了していなければ、S105に戻り、FAX通信が終了すれば、S112で、第1スイッチSW1をOFFした後に、終了する。S105で接続切替要求信号が有ると判断されれば、S107で、FAX通信が終了したかどうかを検出する。FAX通信が終了していなければ、S107に戻り、FAX通信が終了すれば、S108で、第2スイッチSW2が、外部電話機19と接続するようにスイッチを切り替える。
【0054】
S109で、通信回線直流電圧検出部14が通信回線直流電圧を検出し、S110では、S103で検出した回線電圧の状態を保持するように、通信回線直流電圧制御部15が制御する。
【0055】
S111で、通信端末装置100の通信回線に対する直流抵抗のインピーダンスを検出し、通信回線に対する直流抵抗のインピーダンスがハイインピーダンス状態でなければ、S109に戻る。通信回線に対する直流抵抗のインピーダンスがハイインピーダンス状態であれば、S112で、第1スイッチSW1をOFFし、終了する。
【0056】
上記実施例を構成する手段(部)を、工程に置き換えると、上記実施例を、通信端末装置の制御方法の発明として把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施例1である通信端末装置100の概略構成を示すブロック図である。
【図2】通信端末装置100における通信部8の概略構成を示すブロック図である。
【図3】従来の通信端末装置200における通信部29の概略構成を示すブロック図である。
【図4】実施例1における通信部8の概略を示す回路図である。
【図5】従来例による回線接続の切替制御を示すタイミングチャートである。
【図6】実施例1における受信動作時の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0058】
100…通信端末装置、
1…表示部、
2…フラッシュメモリ、
3…DRAM、
4…操作部、
5…制御部、
6…読取部、
7…記録部、
8…通信部、
10…通信回線、
SW1…第1スイッチ、
12…通信回線直流捕捉制御部、
13…通信回線直流捕捉部、
14…通信回線直流電圧検出部、
15…通信回線直流電圧制御部、
16…送受信回路部、
17…CI検知部、
SW2…第2スイッチ、
19…外部電話機、
SW3…第3スイッチ、
21…通信回線直流捕捉制御部、
22…通信回線直流捕捉部、
23…送受信回路部、
24…CI検知部、
25…フック検知部、
SW4…第4スイッチ、
27…フック検知用電源供給部、
28…外部電話機、
29…従来の通信部、
200…従来の通信端末装置、
SW5…第5スイッチ、
37…ダイオードブリッジ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信回線の捕捉状態を、通信端末装置から、上記通信端末装置に接続されている通信機器に切り替え可能な通信端末装置において、
上記通信機器に接続する外付け電話機接続部と;
通信回線の捕捉状態を、上記通信端末装置から、上記通信機器に切り替えるための回線切替部と;
上記通信回線の捕捉状態の回線電圧を検出する回線電圧検出部と;
通信回線の捕捉状態を通信端末装置から、上記通信機器に切り替える際に、回線電圧を一定に保持する回線直流電圧保持部と;
上記回線直流電圧保持部を制御する回線直流電圧制御部と;
上記通信端末装置が回線を捕捉している状態から、上記通信機器へ切替る際に、上記通信端末装置と上記通信機器とを、上記通信回線に並列に接続し、上記回線電圧を一定に保持する保持手段と;
を有することを特徴とする通信端末装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記回線電圧を一定に保持した状態で、上記通信端末装置の回線インピーダンスがハイインピーダンス状態になったときに、並列接続状態を解除することを特徴とする通信端末装置。
【請求項3】
通信回線の捕捉状態を、通信端末装置から、上記通信端末装置に接続されている通信機器に切り替え可能な通信端末装置の制御方法において、
通信回線の捕捉状態を、上記通信端末装置から、上記通信機器に切り替えるための回線切替工程と;
上記通信回線の捕捉状態の回線電圧を検出する回線電圧検出工程と;
通信回線の捕捉状態を通信端末装置から、上記通信機器に切り替える際に、回線電圧を一定に保持する回線直流電圧保持工程と;
上記通信端末装置が回線を捕捉している状態から、上記通信機器へ切替る際に、上記通信端末装置と上記通信機器とを、上記通信回線に並列に接続し、上記回線電圧を一定に保持する保持手段と;
を有することを特徴とする通信端末装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−154034(P2010−154034A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327830(P2008−327830)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】