説明

通信端末装置

【課題】時々刻々と電波環境が変動する車車間通信において、安定性及び信頼性の高い通信を実現する。
【解決手段】送信端末として機能する場合には、協調通信判定部22で、車群間通信部20で受信したデータ等に基づいて、送信したいデータを協調通信で送信すべきか否かを判定し、協調通信ONと判定された場合には、協調通信要求送信制御部24で、同一車群に属する周辺端末から複数の中継端末を選択し、各中継端末に協調通信用の符号を割り当て、他の車群に属する車両へ協調通信によりデータを送信することを要求する協調通信要求を、選択した中継端末に送信する。中継端末として機能する場合には、協調通信要求を受けた場合には、割り当てられた符号でデータを符号化し、他の中継端末と同期をとって、車群間通信部26により、データを協調して送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、通信端末装置に係り、特に、移動体に搭載される通信端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車群同士の無線通信を行う車群内通信手段と、それぞれ別の車群に属する車両同士の無線通信を行う車群間通信手段とを備える車載通信装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の車載通信装置では、車群内通信手段で、自車両が属する車群内の他車両が送信した、当該他車両の車両状態データを受信し、車群間通信手段で、車群内通信手段が受信した、自車両が属する車群内の車両の車両状態データを、別の車群に属する車両に送信している。
【0003】
また、異なる車群に属する車両に対してフレームを送信する際、中継車両との間の通信リンクが確立されている場合に車群内通信手段を用いて中継車両に対してフレームを送信し、中継車両との間の通信リンクが確立されていない場合に車群間通信手段を用いて異なる車群の車両にフレームを送信する車々間通信装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−112422号公報
【特許文献2】特開2010−57015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、車群内の予め決められたマスタのみが車群間での通信を行っているため、マスタ間の電波状況が悪い場合には、車群間通信が成立しなくなる、という問題がある。また、時々刻々と電波環境が変動する車車間通信において、車群間通信を行うための適切なマスタを決定することは困難である、という問題もある。
【0006】
また、特許文献2の技術では、車群内の通信リンクのみを修復対象としているが、車群内の通信環境を確保しつつ、車群内通信より長距離の無線伝送になる車群間通信の信頼性も向上させる必要がある、という問題がある。
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、時々刻々と電波環境が変動する車車間通信において、安定性及び信頼性の高い通信を実現することができる通信端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の通信端末装置は、自端末を含む所定範囲内に存在し、かつ自端末が搭載された移動体と同一方向へ移動する移動体に搭載された周辺端末との間で通信を行う周辺通信手段と、データを協調通信により送信すべき状況を検出する状況検出手段と、前記状況検出手段により前記状況が検出された場合に、前記周辺端末から選択された複数の中継端末各々へ、前記複数の中継端末で協調して前記所定範囲外に存在する端末へデータを送信することを要求する協調通信要求を送信するように、前記周辺通信手段を制御する協調通信要求送信制御手段と、を含んで構成されている。
【0009】
本発明の通信端末装置によれば、周辺通信手段が、自端末を含む所定範囲内に存在し、かつ自端末が搭載された移動体と同一方向へ移動する移動体に搭載された周辺端末との間で通信を行う。また、状況検出手段が、データを協調通信により送信すべき状況を検出し、協調通信要求送信制御手段が、状況検出手段により状況が検出された場合に、周辺端末から選択された複数の中継端末各々へ、複数の中継端末で協調して所定範囲外に存在する端末へデータを送信することを要求する協調通信要求を送信するように、周辺通信手段を制御する。
【0010】
このように、自端末を含む所定範囲内に存在し、かつ自端末が搭載された移動体と同一方向へ移動する移動体に搭載された周辺端末同士は、お互いの距離が近く密に連携していることに着目し、所定範囲外の車両に搭載された端末と通信を行う場合には、協調通信により送信すべき状況を検出した上で、周辺端末から選択された複数の中継端末で協調してデータを送信するため、時々刻々と電波環境が変動する車車間通信において、安定性及び信頼性の高い通信を実現することができる。
【0011】
また、前記状況検出手段は、前記状況として、送信するデータの重要度が高い場合、自端末周辺に存在する周辺端末数が所定数以下の場合、妨害電波の強度が所定値以上の場合、及び自端末の位置が交差点から所定距離以内の場合の少なくとも1つを、前記周辺通信手段により受信したデータに基づいて検出することができる。これらの状況は、信頼性の高い協調通信によりデータを送信すべき状況であるといえる。
【0012】
また、本発明の通信端末装置は、前記自端末が搭載された移動体の速度を検出する速度検出手段を含んで構成することができ、前記状況検出手段は、前記速度検出手段により検出された速度が所定速度以上の場合を、前記状況として検出することができる。このような状況では、移動体の単位時間当たりの移動量が大きいため、遠くまでデータを送信する必要があり、協調通信によりデータを送信すべき状況であるといえる。
【0013】
また、本発明の通信端末装置は、前記自端末が搭載された移動体の進行方向前方の混雑度を検出する混雑度検出手段を含んで構成することができ、前記状況検出手段は、前記混雑度検出手段により検出された混雑度が所定混雑度以上の場合を、前記状況として検出することができる。このような状況では、電波が遮蔽される可能性が高いため、信頼性の高い協調通信によりデータを送信すべき状況であるといえる。
【0014】
また、本発明の通信端末装置は、前記周辺通信手段により、前記協調通信要求を受信した場合に、該協調通信要求が示すデータに協調通信のための符号化及び遅延量付加の少なくとも一方の処理をして、前記所定範囲外に存在する端末へ送信すると共に、協調通信により送信されたデータを受信する協調通信手段を含んで構成することができる。
【0015】
また、本発明の通信端末装置は、前記協調通信手段で協調通信により送信されたデータの受信に失敗した場合に、同一の協調通信要求が示すデータを受信した前記周辺端末へ、該データの再送を要求する再送要求を送信するか、または前記同一の協調通信要求が示すデータを受信した前記周辺端末が該周辺端末の周辺送受信手段により再送する該データを受信するように、前記周辺通信手段を制御する再送制御手段を含んで構成することができる。
【0016】
また、前記協調通信手段は、前記周辺通信手段により受信したデータを復調及び再変調してから送信し、前記周辺通信手段は、前記協調通信手段により受信したデータを復調及び再変調してから送信するか、または該データを復調及び再変調することなく送信することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明の通信端末装置によれば、自端末を含む所定範囲内に存在し、かつ自端末が搭載された移動体と同一方向へ移動する移動体に搭載された周辺端末同士は、お互いの距離が近く密に連携していることに着目し、所定範囲外の車両に搭載された端末と通信を行う場合には、協調通信により送信すべき状況を検出した上で、周辺端末から選択された複数の中継端末で協調してデータを送信するため、時々刻々と電波環境が変動する車車間通信において、安定性及び信頼性の高い通信を実現することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施の形態の概要を説明するためのイメージ図である。
【図2】第1の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置の構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置において実行される送信端末処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図4】第1の実施の形態における協調通信のON、OFFの設定を説明するためのイメージ図である。
【図5】第1の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置において実行される中継端末処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図6】第1の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置において実行される受信端末処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図7】第2の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置の構成を示すブロック図である。
【図8】第2の実施の形態における協調通信のON、OFFの設定を説明するためのイメージ図である。
【図9】第3の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置の構成を示すブロック図である。
【図10】第3の実施の形態における協調通信のON、OFFの設定を説明するためのイメージ図である。
【図11】第4の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置の構成を示すブロック図である。
【図12】第4の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置において実行される受信端末処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図13】第5の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置が受信端末として機能する場合の役割分担を説明するための図である。
【図14】第5の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置において実行される受信端末処理(非再生中継端末)ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図15】第5の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置において実行される受信端末処理(非再生受信端末)ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、本発明を適用した無線通信端末装置を車両などの移動する移動体に搭載し、複数の無線通信端末装置の間でパケットを交換することにより無線通信を行なう場合を例に説明する。
【0020】
まず、本発明の実施の形態の概要について説明する。例えば、図1に示すように、車両a、車両b、及び車両bを含む車群Aと、車両c、車両c、及び車両cを含む車群Bとが存在する場面を考える。ここで、車群とは、所定範囲内に存在し、かつ同一方向へ移動する車両の一群をいい、車群走行するように制御されているか否かは問わない。以下、同一車群内の通信を車群内通信といい、異なる車群間の通信を車群間通信という。本実施の形態では、車群内通信では、パケットを周期的に送受信する通常の通信が行われ、車群間通信では、複数の車両に搭載された無線通信端末装置を中継端末として、協調通信が行われる。なお、以下では、車両に搭載された無線通信端末装置と同等の意味で「車両」の語を用いる場合がある。
【0021】
例えば、車群Aの車両aから車群Bに属する車両へパケットを送信する場合、送信端末となる車両aは、車群A内の他の車両b、bを中継端末として選択し、図中実線の矢印で示すように、車群内通信により協調通信で送信したいデータを含むパケットを車両b、bへ送信する。車両b、bは、このパケットに協調通信のための符号化及び遅延量付加の少なくとも一方の処理(以下では、単に「符号化」ともいう。)を施して、車群Bに属する車両へ協調して送信する。図中一点鎖線の矢印は、車両bにおいて符号化されたパケットの伝送を示しており、二点鎖線の矢印は、車両bにおいて符号化されたパケットの伝送を示しており、これらにより車群間通信が行われる。受信端末となる車群Bの車両c、c(cについては後述)では、車群Aの車両b、b各々からのパケットを受信して復元する。
【0022】
また、車群間通信として協調通信を行うことにより、広い範囲に干渉を与え、車群内通信環境が悪化することを抑制するために、本実施の形態では、必要なときだけ協調通信を行う。
【0023】
次に、第1の実施の形態について説明する。図2に示すように、第1の実施の形態の無線通信端末装置10は、自端末の位置を検出するGPS装置12と、協調通信すべき状況が検出された場合に、協調通信により車群間通信を行うコンピュータ14とを含んで構成されている。
【0024】
コンピュータ14は、CPU、後述する送信端末処理、中継端末処理、及び受信端末処理の各ルーチンを実現するためのプログラムを記憶したROM、データを一時的に記憶するRAM、及びメモリ等の記憶装置を含んで構成されている。このコンピュータ14は、機能的には、同一車群内の車両同士で周期的なパケットの送受信を行う車群内通信部20と、車群内通信部20で受信したパケットが示す情報等に基づいて、協調通信を行うか否かを判定する協調通信判定部22と、協調通信を行う際に、協調通信要求を送信するよう制御する協調通信要求送信制御部24と、協調通信により異なる車群間でパケットの送受信を行う車群間通信部26と、車群間通信部26によるパケットの受信に失敗した場合に、周辺車両に再送要求を送信するよう制御する再送要求送信制御部28とを含んだ構成で表すことができる。
【0025】
なお、車群内通信部20が、本発明の周辺通信手段の一例であり、車群間通信部26が、本発明の協調通信手段の一例である。
【0026】
次に、図3を参照して、第1の実施の形態の無線通信端末装置10が送信端末として機能する際の送信端末処理ルーチンについて説明する。ここでは、所定周期で繰り返されるフレームを複数のスロットで時分割し、スロット単位でパケットを送受信するTDMA(Time Division Multiple Access)方式を適用した場合について説明する。
【0027】
ステップ100で、1フレーム期間において、自端末がパケットを送信するスロットのタイミングか否かを判定することにより、データ送信タイミングか否かを判定する。データ送信タイミングの場合には、ステップ102へ移行し、データ送信タイミングではない場合には、本ステップの判定を繰り返す。
【0028】
ステップ102では、データを協調通信により送信するか否かを判定する。図4(a)に示すように、通常のデータとして送信する場合には協調通信をOFF、同図(b)に示すように、協調通信により送信する場合には協調通信をONに設定する。協調通信がOFFの場合には、車群間の通信は、データを送信したい車群に近い周辺端末を中継して送信してもよいし(車両a→車両b→車両c)、送信端末自身の通信可能エリアであれば、直接データを送信してもよい(車両a→車両c)。
【0029】
例えば、送信したいデータの重要度が高い場合には、協調通信をONにする。この判定は、例えば、自端末の位置情報など、周期的なパケットとして通常送受信しているデータは重要度を低く定め、事故情報や渋滞情報等、より遠方まで伝送したいデータは重要度を高く設定し、これから送信しようとしているデータの重要度が高いか否かにより判定することができる。
【0030】
また、自端末の周辺に存在する周辺車両の数が少ない場合には、協調通信を行ったとしても、干渉による車群内通信へ与える影響が小さいため、協調通信をONにする。この判定は、例えば、1フレーム期間中に受信したパケット数を周辺端末数としてカウントし、この周辺端末数が所定数以下か否かにより判定することができる。
【0031】
また、車車間通信で使用する周波数帯の隣接チャネルの電力(妨害電波)が強い場合、車車間通信の電波が抑圧されるため、協調通信をONにする。車車間通信で利用される周波数帯の隣接チャネルは、地上デジタル放送波及び携帯通信波が利用される予定であり、これらが妨害電波となり得る。この判定は、隣接チャネルなどからの妨害電波の強度が所定値以上か否かにより判定することができる。
【0032】
また、直線道路では、車群の進行方向のみに電波を届ければよいが、交差点では見通し外まで電波を確実に届けたいという要求があるため、自端末が交差点に近い場合には、協調通信をONにする。この判定は、GPS装置12により検出した自端末の位置、または周辺端末から受信したパケットに含まれる周辺端末の位置と、地図情報とに基づいて、自端末または自端末が属する車群と直近の交差点との距離を算出し、この距離が所定距離以内か否かにより判定することができる。
【0033】
いずれかの状況に該当することにより、協調通信をONにすると判定された場合には、ステップ104へ移行し、協調通信をOFFにすると判定された場合には、ステップ108へ移行する。
【0034】
ステップ104では、自端末が属する車群内の周辺車両から、協調通信を行う際の中継端末を選択する。中継端末の選択は、同一車群内の全ての周辺車両としてもよいし、ランダムに選択してもよいし、周辺車両から受信したパケットに含まれる周辺端末の位置に基づいて、データを送信したい異なる車群との距離が近い周辺端末を選択してもよい。そして、選択した中継端末各々に、協調通信のための符号を割り当てる。
【0035】
なお、上記ステップ102で、データの重要度により協調通信をON判定した場合には、データの重要度に応じて、中継端末数を増減してもよい。同様に、周辺端末数により協調通信をON判定した場合には、周辺端末数に応じて、妨害電波の強度により協調通信をON判定した場合には、妨害電波の強度に応じて、中継端末数を増減してもよい。
【0036】
次に、ステップ106で、送信したいデータ、協調通信により送信すべきデータであることを示す情報、協調通信の方式、選択された中継端末の識別情報、及び中継端末に割り当てられた符号を含む協調通信要求パケットを生成し、車群内通信部20により、周辺端末へ送信する。
【0037】
一方、ステップ108では、車群内通信部20により、通常のデータとして、周辺端末へ送信して、処理を終了する。
【0038】
次に、図5を参照して、第1の実施の形態の無線通信端末装置10が中継端末として機能する際の中継端末処理ルーチンについて説明する。
【0039】
ステップ120で、自端末を中継端末として選択したことを示す協調通信要求パケットを受信したか否かを判定する。具体的には、車群内通信部20により周辺端末から受信したパケットに含まれる中継端末の識別情報が自端末を示しているか否かを判定する。協調通信要求パケットを受信した場合には、ステップ122へ移行し、受信していない場合には、本ステップの判定を繰り返す。
【0040】
ステップ122では、協調通信要求パケットに含まれる送信したいデータを、割り当てられた符号で符号化する。次に、ステップ124で、上記ステップ122で符号化したデータを、車群間通信部26により、他の中継端末と同期を取って同一周波数で送信する。同期の取り方は、予め定めた同一時刻で送信したり、1フレーム期間において、協調通信用に予め定められたスロットのタイミングで送信したりすることができる。
【0041】
また、協調通信の方式としては、異なる周波数帯を使って複数の中継端末から同一データを送信する方式でもよいし、データの符号化の代わりに、またはデータの符号化と組み合わせて遅延量を付加し、中継端末毎に時間をずらして順に送信する方式としてもよい。ただし、時間及び周波数の効率利用の観点から、同一周波数で同時に送信する方式が望ましい。また、協調通信を行うためには、車群内の全車両の無線通信端末装置10が時間的かつ周波数的に同期している必要ことが望ましく、例えば、本実施の形態のように、TDMA方式を採用して時間同期を確保したり、中継端末間での周波数オフセットを発生させいない再生方法を導入したりという対処が必要である。
【0042】
次に、図6を参照して、第1の実施の形態の無線通信端末装置10が受信端末として機能する際の受信端末処理ルーチンについて説明する。
【0043】
ステップ140で、車群間通信部26でデータを受信したか否かを判定する。車群間通信部26で受信するデータは、協調通信により送信されたデータである。データを受信した場合には、ステップ142へ移行し、受信していない場合には、本ステップの判定を繰り返す。
【0044】
ステップ142では、上記ステップ140でのデータの受信に失敗したか否かを判定する。この判定は、例えば、受信データに含まれる誤り検出符号により判定することができる。また、データを受信すべきスロットにおいて、上記ステップ140でデータを受信しなかった場合にも、受信に失敗したと判定するようにしてもよい。受信に失敗した場合には、ステップ144へ移行し、正常受信した場合には、ステップ148へ移行する。例えば、図1に示すように、車両c、cのように、車群Aの車両b、bからのデータを受信し、復号に成功した場合には正常受信、車両cのように、車群Aの車両b、bからのデータを受信できなかった場合、または復号に失敗した場合は、受信失敗とする。
【0045】
ステップ144では、同一のデータの受信に成功した周辺車両に対して、データの再送を要求する再送要求パケットを、車群内通信部20により周辺端末へ送信する。次に、ステップ146で、車群内通信部20で、再送されたデータを受信したか否かを判定する。受信した場合には、処理を終了し、受信していない場合には、本ステップの判定を繰り返し、所定時間経過しても再送されたデータを受信しなかった場合には、処理を終了する。
【0046】
一方、上記ステップ142で正常受信であると判定されてステップ148へ移行した場合には、車群内通信部20で、周辺車両から送信された再送要求を受信したか否かを判定する。受信した場合には、ステップ150へ移行して、上記ステップ140で受信したデータを、車群内通信部20により周辺端末へ送信する。所定時間経過しても再送要求を受信しなかった場合には、処理を終了する。
【0047】
以上説明したように、第1の実施の形態の無線通信端末装置によれば、同一車群内に存在する車両同士は、お互いの距離が近く密に連携していることに着目し、車群間通信を行う場合には、車群内の車両で協調してデータを送信することにより、車群間通信の信頼性が向上する。また、協調通信をすべき状況を判定して、必要な場合に協調通信を行うため、通常の通信の安定性も確保できる。
【0048】
次に、第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態の無線通信端末装置10と同様の構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0049】
図7に示すように、第2の実施の形態の無線通信端末装置210は、自端末が搭載された車両の速度を検出する速度センサ16と、コンピュータ214とを含んで構成されている。コンピュータ214は、機能的には、車群内通信部20と、協調通信判定部222と、協調通信要求送信制御部24と、車群間通信部26と、再送要求送信制御部28とを含んだ構成で表すことができる。第2の実施の形態の無線通信端末装置210では、協調通信判定部222の処理が第1の実施の形態と異なる。
【0050】
協調通信判定部222は、データを協調通信により送信するか否かを、自端末が搭載された車両の車速に基づいて判定する。図8(a)に示すように、低速走行時には、単位時間当たりの移動距離が小さくなるため、近くの周辺車両にのみ情報を伝えられればよい。そのため、協調通信をOFFに設定する。一方、同図(b)に示すように、高速走行時には、単位時間当たりの移動距離が大きくなるため、遠方の車両まで情報を伝えたい要求がある。そのため、協調通信をONに設定する。この判定は、速度センサ16で検出された速度が所定速度以上か否かにより判定することができる。
【0051】
以上説明したように、第2の実施の形態の無線通信端末装置によれば、車速によって協調通信のON、OFFを切り替えることで、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0052】
次に、第3の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態の無線通信端末装置10と同様の構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0053】
図9に示すように、第3の実施の形態の無線通信端末装置310は、自端末が搭載された車両の前方領域を撮像する撮像装置18と、コンピュータ314とを含んで構成されている。コンピュータ314は、機能的には、車群内通信部20と、協調通信判定部322と、協調通信要求送信制御部24と、車群間通信部26と、再送要求送信制御部28とを含んだ構成で表すことができる。第3の実施の形態の無線通信端末装置310では、協調通信判定部322の処理が第1の実施の形態と異なる。
【0054】
協調通信判定部322は、データを協調通信により送信するか否かを、自端末が搭載された車両の前方の混雑度で判定する。図10(a)に示すように、車両前方が混雑していない場合には、電波が届き易いため、協調通信をOFFに設定する。一方、同図(b)に示すように、車両前方が混雑している場合には、電波が遮蔽されて電波が届き難くなるため、協調通信をONに設定する。この判定は、撮像装置18で撮像された前方画像から検出される前方の混雑度が所定混雑度以上か否かにより判定することができる。
【0055】
また、撮像装置18に代えて、または撮像装置18と共に、レーザレーダ等を用いて車両前方の混雑度を検出してもよい。
【0056】
以上説明したように、第3の実施の形態の無線通信端末装置によれば、車両前方の混雑度によって協調通信のON、OFFを切り替えることで、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0057】
次に、第4の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態の無線通信端末装置10と同様の構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0058】
図11に示すように、第4の実施の形態の無線通信端末装置410は、GPS装置12と、コンピュータ414とを含んで構成されている。コンピュータ414は、機能的には、車群内通信部20と、協調通信判定部22と、協調通信要求送信制御部24と、車群間通信部26と、再送要求送信制御部428と、再生非再生切替部30とを含んだ構成で表すことができる。
【0059】
第1の実施の形態では、車群間通信部26において、協調通信により送信されたデータの受信に失敗した場合には、再送要求を送信し、正常受信した周辺端末がこの再送要求を受けてデータの再送を行う場合について説明したが、第4の実施の形態では、正常受信した受信端末は、再送要求の有無にかかわらずデータを再送する場合について説明する。従って、再送要求送信制御部428は、第1の実施の形態と異なり、受信失敗した場合に、再送要求を送信することなく、再送されたデータを車群内通信部20で受信するように制御すればよい。
【0060】
次に、図12を参照して、第4の実施の形態の無線通信端末装置410が受信端末として機能する際の受信端末処理ルーチンについて説明する。
【0061】
ステップ140で、車群間通信部26でデータを受信したか否かを判定する。データを受信した場合には、ステップ400へ移行し、受信していない場合には、本ステップの判定を繰り返す。
【0062】
ステップ400では、上記ステップ140で受信したデータから誤りが検出されたか否かを判定する。この判定は、受信データに含まれる誤り検出符号により判定することができる。誤りが検出された場合には、ステップ402へ移行し、車群内通信部20により、受信したデータを復調及び再変調することなく再送信(非再生中継)する。誤りが検出されたデータを再生して送信すると、誤ったデータが正しいデータとして復元されてしまう可能性があるため、誤ったデータは誤ったまま再送するものである。
【0063】
一方、誤りが検出されなかった場合には、ステップ404へ移行し、車群内通信部20により、受信したデータを復調及び再変調して再送信(再生中継)して、処理を終了する。
【0064】
上記ステップ400で誤りが検出された場合には、上記ステップ402を経て、ステップ406へ移行し、車群内通信部20により、周辺車両から再生中継されたデータを受信したか否かを判定する。受信した場合には、処理を終了し、受信していない場合には、本ステップの判定を繰り返し、所定時間経過しても再生中継されたデータを受信しなかった場合には、処理を終了する。
【0065】
以上説明したように、第4の実施の形態の無線通信端末装置によれば、受信したデータの誤り検出の結果に基づいて、車群内でデータを再送する際の方法を、再生中継か非再生中継かに切り替えるため、安定性及び信頼性を確保しつつ、効率化も図ることができる。
【0066】
次に、第5の実施の形態について説明する。なお、第5の実施の形態の無線通信端末装置の構成は、第4の実施の形態の無線通信端末装置410の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0067】
第4の実施の形態では、受信したパケットの状態で再生中継か非再生中継かを切り替える場合について説明したが、第5の実施の形態では、過去の通信実績に基づいて、再生中継か非再生中継かを切り替える点が異なる。
【0068】
再生中継は、受信したデータに誤りがあった場合は、誤った情報の伝播を防止するため、再送することはできない。そのため、仮に、車群内の全ての車両が車群間通信に失敗した場合には、再生中継できる車両が1台もなくなることになる。車車間通信の場合には、定期的に特定の車群との通信が発生しているため、第5の実施の形態では、特定の車群から送信されたデータに対して、過去に受信失敗が連続した、または受信成功確率が低い場合に、再生中継から非再生中継に切り替えると共に、非再生中継を行う端末と行わない端末とを役割分担させる。
【0069】
例えば、図13(a)に示すように、車群間通信の受信端末となる車群Bの各端末を、車群Aからのデータを受信する非再生中継端末と、非再生中継を行わず、同一車群B内の車両から非再生中継されたデータを受信する非再生受信端末との2種類に役割分担する。同図(a)の場合は、端末c、c、cが非再生中継端末、端末c、cが非再生受信端末となっている。
【0070】
次に、第5の実施の形態の無線通信端末装置410の作用について説明する。なお、以下では、再生中継と非再生中継との切り替えにおいて、非再生中継に切り替えられている場面について説明する。
【0071】
まず、例えば、車群B内の各端末を役割分担する。役割分担は、車群B内で周期的に通信しているパケットに基づいて、各端末の位置情報により決定したり、受信成功率により決定したりすることができる。
【0072】
そして、非再生中継端末に決定した端末は、図14に示す受信端末処理(非再生中継端末)ルーチンを実行する。なお、第4の実施の形態の受信端末処理ルーチンと同一の処理については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0073】
ステップ140で、車群間通信部26でデータを受信したか否かを判定する。データを受信した場合には、ステップ402へ移行し、受信していない場合には、本ステップの判定を繰り返す。
【0074】
ステップ402では、図13(b)に示すように、車群内通信部20により、受信したデータを復調及び再変調することなく再送信(非再生中継)する。
【0075】
次に、ステップ406へ移行し、車群内通信部20により、周辺車両から再生中継されたデータを受信したか否かを判定する。受信した場合には、処理を終了し、受信していない場合には、本ステップの判定を繰り返し、所定時間経過しても再生中継されたデータを受信しなかった場合には、処理を終了する。
【0076】
一方、非再生受信端末に決定した端末は、図15に示す受信端末処理(非再生受信端末)ルーチンを実行する。なお、第4の実施の形態の受信端末処理ルーチンと同一の処理については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0077】
ステップ140で、車群間通信部26でデータを受信したか否かを判定する。データを受信した場合には、ステップ500へ移行し、受信していない場合には、本ステップの判定を繰り返す。
【0078】
ステップ500では、上記ステップ140で受信したデータを復調及び再生し、次に、ステップ400で、復調及び再生したデータから誤りが検出されたか否かを判定する。誤りが検出されなかった場合には、ステップ404へ移行し、車群内通信部20により、上記ステップ500で復調及び再生したデータを再送信(再生中継)する。一方、誤りが検出された場合には、ステップ406へ移行して、車群内通信部20により、周辺車両から再生中継されたデータを受信したか否かを判定する。受信した場合には、処理を終了し、受信していない場合には、本ステップの判定を繰り返し、所定時間経過しても再生中継されたデータを受信しなかった場合には、処理を終了する。
【0079】
図13(c)に示すように、非再生受信端末cは受信に成功し、非再生受信端末c5は受信に失敗した場合には、端末cから再生中継されるデータを受信するのは、非再生中継端末である端末c、c、c、及び受信に失敗した非再生受信端末cである。
【0080】
以上説明したように、第5の実施の形態の無線通信端末装置によれば、過去の通信実績に基づいて、受信端末となる車群内の各端末が、非再生中継端末及び非再生受信端末の役割を担って受信処理を行うため、受信処理の確実性を向上させることができる。
【0081】
なお、第4及び第5の実施の形態では、受信端末として機能する際の車群内通信について、再生中継または非再生中継を切り替える場合について説明したが、送信端末として機能する際の車群内通信、及び中継端末として機能する際の車群間通信についても適用してもよい。なお、車群間通信は長距離通信となるため誤りが生じ易いが、車群内通信は誤りが生じ難いため、再生中継が適している。
【0082】
また、上記実施の形態のように、車群間通信及び車群内通信の二階層にしたことにより、車群間通信では強い電波を用い、車群内通信では弱い電波を用いるような構成とすることも可能である。これにより、利用効率が向上する。
【符号の説明】
【0083】
10、210、310、410 無線通信端末装置
12 GPS装置
14、214、314、414 コンピュータ
16 速度センサ
18 撮像装置
20 車群内通信部
22、222、322 協調通信判定部
24 協調通信要求送信制御部
26 車群間通信部
28、428 再送要求送信制御部
30 再生非再生切替部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自端末を含む所定範囲内に存在し、かつ自端末が搭載された移動体と同一方向へ移動する移動体に搭載された周辺端末との間で通信を行う周辺通信手段と、
データを協調通信により送信すべき状況を検出する状況検出手段と、
前記状況検出手段により前記状況が検出された場合に、前記周辺端末から選択された複数の中継端末各々へ、前記複数の中継端末で協調して前記所定範囲外に存在する端末へデータを送信することを要求する協調通信要求を送信するように、前記周辺通信手段を制御する協調通信要求送信制御手段と、
を含む通信端末装置。
【請求項2】
前記状況検出手段は、前記状況として、送信するデータの重要度が高い場合、自端末周辺に存在する周辺端末数が所定数以下の場合、妨害電波の強度が所定値以上の場合、及び自端末の位置が交差点から所定距離以内の場合の少なくとも1つを、前記周辺通信手段により受信したデータに基づいて検出する請求項1記載の通信端末装置。
【請求項3】
前記自端末が搭載された移動体の速度を検出する速度検出手段を含み、
前記状況検出手段は、前記速度検出手段により検出された速度が所定速度以上の場合を、前記状況として検出する
請求項1または請求項2記載の通信端末装置。
【請求項4】
前記自端末が搭載された移動体の進行方向前方の混雑度を検出する混雑度検出手段を含み、
前記状況検出手段は、前記混雑度検出手段により検出された混雑度が所定混雑度以上の場合を、前記状況として検出する
請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の通信端末装置。
【請求項5】
前記周辺通信手段により、前記協調通信要求を受信した場合に、該協調通信要求が示すデータに協調通信のための符号化及び遅延量付加の少なくとも一方の処理をして、前記所定範囲外に存在する端末へ送信すると共に、協調通信により送信されたデータを受信する協調通信手段を含む請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の通信端末装置。
【請求項6】
前記協調通信手段で協調通信により送信されたデータの受信に失敗した場合に、同一の協調通信要求が示すデータを受信した前記周辺端末へ、該データの再送を要求する再送要求を送信するか、または前記同一の協調通信要求が示すデータを受信した前記周辺端末が該周辺端末の周辺送受信手段により再送する該データを受信するように、前記周辺通信手段を制御する再送制御手段を含む請求項1〜請求項5のいずれか1項記載の通信端末装置。
【請求項7】
前記協調通信手段は、前記周辺通信手段により受信したデータを復調及び再変調してから送信し、
前記周辺通信手段は、前記協調通信手段により受信したデータを復調及び再変調してから送信するか、または該データを復調及び再変調することなく送信する
請求項5または請求項6記載の通信端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−209609(P2012−209609A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71322(P2011−71322)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】