説明

通信端末装置

【課題】協調通信を行う際の符号及び遅延量の少なくとも一方、並びに送信タイミングを自律的に決定する。
【解決手段】中継処理部15により、受信したパケットが中継要求パケットの場合に、中継要求パケットに含まれる他端末フレーム情報を参照して、自端末の送信スロットが「ACK」の場合に自端末が中継端末になると判断し、フレーム中の何番目の「ACK」かにより、協調通信の際の符号及び遅延量を決定し、パケット生成部18により、決定した符合で符号化した中継パケットを生成し、スロット選択部19により、送信端末の送信スロットの1スロット後のスロットを中継用スロットとして選択し、決定した遅延量も考慮して中継用スロットのタイミングで中継パケットを送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、通信端末装置に係り、特に、周辺の通信端末装置から送信されるパケットと多重化してパケットを送信する通信端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、通信方式の1つとしてTDMA(Time Division Multiple Access)方式が知られている。このTDMA方式は、一つの情報伝送路を複数の通信端末装置で共有して短時間ずつ交代で各通信端末装置から通信情報を送信する通信方式である。例えば、1つ以上の周辺端末との間で、所定周期で繰り返されるフレームを複数のスロットで時分割し、スロット単位でデータをブロードキャストする通信端末装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、送信端末及び受信端末以外の端末を中継端末として用い、空間ダイバーシチ利得を得る協調通信技術が知られている。協調通信の方式としては、送信端末−中継端末−受信端末間のチャネルが最良となる中継端末により中継する最良単一中継選択方式や、時空間符号を各中継端末のアンテナに割り当てて中継する時空間符号化方式や、各中継端末にランダムな遅延量を付加して中継する遅延ダイバーシチ方式や、時空間符号に対してランダムベクトルを乗じて中継する擬似時空間符号化方式等がある(例えば、非特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−28550
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】MIT(J.N.Laneman, G.W.Wornell)、「Distributed Space-Time-Code Protocols for Exploiting Cooperative Diversity in Wireless Networks」、IEEE Trans. Inform. Theory, 2003.
【非特許文献2】「STBCを用いるマルチホップ協力通信のフィールド伝送特性」、電子情報通信学会10年総合大会
【非特許文献3】「STBCを用いるマルチホップ協力通信装置の伝送特性」、信学技報、RCS2009−98
【非特許文献4】「Asynchronous cooperative diversity」、IEEE Trans. Wireless Commun., vol.5, no.6, Jun. 2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術のような周期的なブロードキャスト通信を行う場合よりも、例えば事故の発生等の情報を周辺の通信端末装置に送信したい場合のように、より遠くまで高信頼に情報を伝えたいという要求がある。
【0007】
そこで、協調通信を行うことにより高信頼化を図ることはできるが、従来の協調通信技術では、どの端末を中継端末とするか、また、中継端末に対する符号の割り当て、及び符号化された信号の送信タイミング等は予め定められている。しかし、例えば車車間通信等のように通信端末装置が移動体に搭載されているような場合には、時々刻々と通信端末装置が移動するため、通信端末装置のあらゆる移動を想定して、上記のような符号の割り当てや送信タイミングを予め定めておくことは非常に困難となる、という問題がある。
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、協調通信を行う際の符号及び遅延量の少なくとも一方の割り当て、並びに送信タイミングを自律的に決定することができる通信端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1の発明の通信端末装置は、所定期間のフレームを時分割した複数のスロットの各々を一単位として送信されるパケットであって、周辺の通信端末装置で生成された1フレーム分のスロット毎の受信状況を示すフレーム情報、及び該パケットが周期的に送信される通常パケットであることを示す情報または協調通信による中継を要求する中継要求パケットであることを示す情報を含むパケットを、前記周辺の通信端末装置から受信する受信手段と、前記受信手段により受信したパケットが中継要求パケットであることを示す情報が含まれた中継要求パケットの場合に、受信したパケットに含まれるフレーム情報が示すスロット毎の受信状況及び自端末がパケットを送信する送信スロットのフレーム内での位置に基づいて、協調通信の際に用いる符号及び遅延量の少なくとも一方を決定する符号遅延量決定手段と、前記符号遅延量決定手段により決定した符号で前記中継要求パケットを符号化した中継パケット、前記符号遅延量決定手段により決定した遅延量を前記中継要求パケットに付加した中継パケット、または前記符号で前記中継要求パケットを符号化し、かつ前記遅延量を付加した中継パケットを、予め定められた該中継パケットを送信するための中継用スロットのタイミングで送信する送信手段と、を含んで構成されている。
【0010】
これにより、受信したパケットに含まれるフレーム情報における自端末の送信スロットの受信状況及び位置に基づいて、自端末が中継端末となるか否か、及び中継端末となる場合の符号及び遅延量の少なくとも一方を自律的に決定することができ、また、中継パケットを予め定められた中継用スロットのタイミングで送信するため、送信タイミングを自律的に決定することができる。
【0011】
また、第1の発明において、前記フレーム情報の受信状況を、パケットを受信した場合にはビジー、パケットを受信しなかった場合にはフリーとし、前記符号遅延量決定手段は、前記受信手段により受信した前記中継要求パケットに含まれるフレーム情報における自端末の送信スロットの受信状況がビジーの場合に、自端末が中継端末になると判断すると共に、前記フレーム情報内の受信状況がビジーのスロットのうち自端末の送信スロットが何番目の位置であるかに基づいて、協調通信の際に用いる符号及び遅延量の少なくとも一方を決定することができる。このように、フレーム情報を用いた簡易な方法により、自律的に符号及び遅延量の少なくとも一方を決定することができる。
【0012】
また、第1の発明において、前記送信手段は、前記中継パケットの送信に先立って、前記中継用スロットの受信状況をスロット変更要求とするフレーム情報を含む前記通常パケットを、自端末の送信スロットのタイミングで送信することができる。これにより、中継用スロットでのパケット衝突を回避して、協調通信の信頼性を向上させることができる。
【0013】
また、第1の発明の通信端末装置は、前記受信状況のビジーを、パケットを正常に受信したことを示すACK、及びパケットを受信したが復調に失敗したことを示すNACKとし、前記受信手段により受信したパケットに含まれるフレーム情報に基づいて、スロット毎に前記NACKの割合を算出し、算出した前記NACKの割合が予め定めた閾値以上のスロットで受信したパケットを中継要求パケットと判定する判定手段をさらに含んで構成することができ、前記符号遅延量決定手段は、前記判定手段によりパケットが中継要求パケットであると判定された場合にも、協調通信の際に用いる符号及び遅延量の少なくとも一方を決定することができる。これにより、事故の情報等のイベント的な情報だけでなく、通信状況が不確かな状況において通信される通常パケットの情報についても、協調通信による中継を行うことで、通信の信頼性を向上させることができる。
【0014】
また、第2の発明の通信端末装置は、所定期間のフレームを時分割した複数のスロットの各々を一単位として送信されるパケットであって、通信端末装置の位置情報及び該パケットが周期的に送信される通常パケットであることを示す情報または協調通信による中継を要求する中継要求パケットであることを示す情報を含むパケットを、前記周辺の通信端末装置から受信する受信手段と、自端末の位置情報を検出する検出手段と、前記受信手段により受信したパケットが中継要求パケットであることを示す情報が含まれた中継要求パケットの場合に、受信したパケットに含まれる位置情報及び前記検出手段により検出された自端末の位置情報に基づいて、協調通信の際に用いる符号及び遅延量の少なくとも一方を決定する符号遅延量決定手段と、前記符号遅延量決定手段により決定した符号で前記中継要求パケットを符号化した中継パケット、前記符号遅延量決定手段により決定した遅延量を前記中継要求パケットに付加した中継パケット、または前記符号で前記中継要求パケットを符号化し、かつ前記遅延量を付加した中継パケットを、予め定められた該中継パケットを送信するための中継用スロットのタイミングで送信する送信手段と、を含んで構成されている。
【0015】
これにより、受信したパケットに含まれる位置情報に基づいて、自端末が中継端末となるか否か、及び中継端末となる場合の符号及び遅延量の少なくとも一方を自律的に決定することができ、また、中継パケットを予め定められた中継用スロットのタイミングで送信するため、送信タイミングを自律的に決定することができる。
【0016】
また、第2の発明において、前記中継要求パケットは、該パケットを中継したい方向を示す中継方向情報を含み、前記符号遅延量決定手段は、前記受信手段により受信したパケットに含まれる位置情報が示す位置、中継方向情報が示す方向、及び前記検出手段により検出された自端末の位置情報が示す位置の関係に基づいて、パケットを送信した送信端末から見た自端末の方向と前記中継したい方向とが対応する場合に、自端末が中継端末になると判断すると共に、前記送信端末から見た自端末の方向及び前記送信端末と前記自端末との距離に基づいて、協調通信の際に用いる符号及び遅延量の少なくとも一方を決定することができる。これにより、中継したい方向に存在する端末が自律的に中継端末となると判断して協調通信を行うため、協調通信の信頼性を向上させることができる。
【0017】
また、第3の発明の通信端末装置は、所定期間のフレームを時分割した複数のスロットの各々を一単位として送信されるパケットであって、中継端末をスロット番号で指定する1以上の指定情報、及び該パケットが周期的に送信される通常パケットであることを示す情報または協調通信による中継を要求する中継要求パケットであることを示す情報を含むパケットを、周辺の通信端末装置から受信する受信手段と、前記受信手段により受信したパケットが中継要求パケットであることを示す情報が含まれた中継要求パケットの場合に、前記受信したパケットに含まれる指定情報が示すスロット番号と自端末がパケットを送信する送信スロットのスロット番号が一致する場合に、自端末が中継端末になると判断すると共に、前記1以上の指定情報の何番目に自端末の送信スロットを示すスロット番号が指定されているかに基づいて、協調通信の際に用いる符号及び遅延量の少なくとも一方を決定する符号遅延量決定手段と、前記符号遅延量決定手段により決定した符号で前記中継要求パケットを符号化した中継パケット、前記符号遅延量決定手段により決定した遅延量を前記中継要求パケットに付加した中継パケット、または前記符号で前記中継要求パケットを符号化し、かつ前記遅延量を付加した中継パケットを、予め定められた該中継パケットを送信するための中継用スロットのタイミングで送信する送信手段と、を含んで構成されている。
【0018】
これにより、受信したパケットに含まれる中継端末候補をスロット番号で指定する指定情報に基づいて、自端末が中継端末となるか否か、及び中継端末となる場合の符号及び遅延量の少なくとも一方を自律的に決定することができ、また、中継パケットを予め定められた中継用スロットのタイミングで送信するため、送信タイミングを自律的に決定することができる。
【0019】
また、第1〜第3の発明において、前記送信手段は、前記中継要求パケットを送信した通信端末装置の送信スロットに応じたスロットを前記中継用スロットとして選択することができる。このように、送信端末の送信スロットとの関係という予め定められたルールに従って、中継用スロットを選択するため、自律的に送信タイミングを決定することができる。
【0020】
また、前記通常パケット及び前記中継要求パケットと、前記中継パケットとを異なる周波数で送信することができる。これにより、中継用スロットでのパケット衝突及びスロットの混雑を抑制することができる。
【0021】
また、第4の発明の通信端末装置は、所定期間のフレームを時分割した複数のスロットの各々を一単位として送信されるパケットであって、周辺の通信端末装置で生成された1フレーム分のスロット毎の受信状況を示すフレーム情報を含むパケットを、前記周辺の通信端末装置から受信する受信手段と、スロット毎の受信状況を示すフレーム情報を生成すると共に、協調通信による中継を要求する情報を取得した場合に、予め定められた中継パケットを送信するための中継用スロットの受信状況をスロット変更要求に変更したフレーム情報を生成するフレーム情報生成手段と、前記受信手段により受信したパケットに含まれるフレーム情報に基づいて、協調通信の際に用いる符号の次数を決定する次数決定手段と、前記フレーム生成手段により生成した前記中継用スロットの受信状況をスロット変更要求に変更したフレーム情報を送信した後に、前記協調通信による中継を要求する情報及び該情報を含む中継要求パケットであることを示す情報、並びに前記次数決定手段により決定した次数を示す情報を含む中継要求パケットを、自端末がパケットを送信する送信スロットのタイミングで送信する送信手段と、を含んで構成することができる。これにより、送信端末において、自律的に中継次数を決定することができる。
【0022】
また、第4の発明において、前記フレーム情報生成手段は、前記受信手段によりパケットを正常に受信した場合にはACK、及びパケットを受信したが復調に失敗した場合にはNACKとするフレーム情報を生成し、生成したフレーム情報に基づいて、スロット毎に前記NACKの割合を算出し、算出した前記NACKの割合が予め定めた閾値以上のスロットで受信したパケットの情報を前記協調通信による中継を要求する情報として取得することができる。これにより、事故の情報等のイベント的な情報だけでなく、通信状況が不確かな状況において通信される通常パケットの情報についても、協調通信による中継を行うことで、通信の信頼性を向上させることができる。
【0023】
また、第5の発明の通信端末装置は、所定期間のフレームを時分割した複数のスロットの各々を一単位として送信されるパケットであって、自端末の位置情報を含むパケットを、周辺の通信端末装置から受信する受信手段と、協調通信による中継を要求する情報を取得した場合に、該協調通信による中継を要求する情報及び前記受信手段により受信したパケットに含まれる位置情報に基づいて、1以上の中継端末をスロット番号で指定する指定手段と、前記協調通信による中継を要求する情報及び該情報を含む中継要求パケットであることを示す情報、並びに前記指定手段により指定したスロット番号を含む中継要求パケットを、自端末がパケットを送信する送信スロットのタイミングで送信する送信手段と、を含んで構成されている。これにより、送信端末において、自律的に中継端末を決定することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明の通信端末装置によれば、受信したパケットに含まれるフレーム情報における自端末の送信スロットの受信状況及び位置に基づいて、自端末が中継端末となるか否か、及び中継端末となる場合の符号及び遅延量の少なくとも一方を自律的に決定することができ、また、中継パケットを予め定められた中継用スロットのタイミングで送信するため、送信タイミングを自律的に決定することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態の前提となる状況を説明するためのイメージ図である。
【図2】本発明の実施の形態の前提となる状況でのスロットの使用状況を説明するためのイメージ図である。
【図3】協調通信の方式の例を示す概略図である。
【図4】第1の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置の構成を示すブロック図である。
【図5】第1の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置によって送受信されるフレームの構成を示すイメージ図である。
【図6】第1の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置において実行される送信端末処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図7】符号化方式と遅延ダイバーシチ方式を組み合わせた場合の符号及び遅延量の割り当ての一例を示すイメージ図である。
【図8】第1の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置において実行される中継端末処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図9】第1の実施の形態における符号及び遅延量の決定を説明するための図である。
【図10】第1の実施の形態における中継用スロットの決定を説明するための図である。
【図11】中継用スロットにおけるパケット衝突の可能性を説明するための図である。
【図12】中継用スロットにおけるパケット衝突の可能性を説明するための図である。
【図13】第2の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置によって送受信されるフレームの構成を示すイメージ図である。
【図14】第2の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置において実行される送信端末処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図15】中継用スロット獲得フェーズを説明するための図である。
【図16】第2の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置において実行される中継端末処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図17】第2の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置によって送受信されるフレームの構成の他の例を示すイメージ図である。
【図18】第3の実施の形態におけるスロットの割り当てを説明するための図である。
【図19】第4の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置において実行される中継端末処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図20】第5の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置において実行される中継端末処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図21】第5の実施の形態における符号及び遅延量の決定を説明するための図である。
【図22】第6の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置の構成を示すブロック図である。
【図23】第6の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置によって送受信されるフレームの構成を示すイメージ図である。
【図24】第6の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置において実行される送信端末処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図25】第6の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置において実行される中継端末処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図26】第7の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置において実行される送信端末処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図27】第7の実施の形態における中継判断を説明するための図である。
【図28】第8の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置において実行される中継端末処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図29】第9の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置の構成を示すブロック図である。
【図30】第9の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置によって送受信されるフレームの構成を示すイメージ図である。
【図31】第9の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置において実行される送信端末処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図32】第9の実施の形態に係る移動体無線通信端末装置において実行される中継端末処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図33】第9の実施の形態における中継方向と符号及び遅延量の割り当てとの関係を説明するための図である。
【図34】第10の実施の形態における位置情報と符号及び遅延量の割り当てとの関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、本発明を適用した無線通信端末装置を車両などの移動する移動体に搭載し、複数の無線通信端末装置の間でパケット(packet)を交換することにより無線通信を行なう場合を例に説明する。
【0027】
まず、本発明の実施の形態の前提となる状況について説明する。
【0028】
図1に示すように、端末Aの通信可能エリア内に端末B及び端末Cが存在し、端末B及び端末Cの通信可能エリア内であって端末Aの通信可能エリア外に端末Dが存在する場合を考える。詳細は後述するが、端末A〜端末Dは、図2に示すように、所定期間の1フレームをN個(ここでは8個)に分割したスロットから各々選択したスロットのタイミングでパケットを送信する。この1つのスロットは、1パケットを送信できる期間を示すものであり、1フレーム期間を周期的に繰り返すことで、各端末はシングルホップの周期ブロードキャスト通信を実施している。
【0029】
このような状況で、端末Aが、例えば事故の発生を示す情報を取得した場合に、この情報を通常のシングルホップのブロードキャスト通信で送信すると、端末D及びその後続の端末まで伝えることができない。
【0030】
そこで、端末B及び端末Cを中継端末として、送信端末Aが送信したパケットを受信端末Dに中継する協調通信を実施する。この状況を協調通信の各従来方式に対応させた場合を図3に示す。同図(A)は最良単一中継選択方式、(B)は時空間符号化方式、(C)は遅延ダイバーシチ方式、(D)は擬似時空間符号化方式、及び(E)はSTSK方式である。
【0031】
中継端末B及びCは、各協調通信の方式に従って、それぞれ適切な符号及び遅延量を用いて送信端末Aから送信されたパケットを符号化及び遅延させて中継する必要がある。また、中継端末B及びCは、符号化したパケットをタイミングを同期させて送信する必要がある。これらの符号及び遅延量、並びに送信タイミングを自律的に決定する方法について、以下の各実施の形態で詳細に説明する。
【0032】
図4に示すように、第1の実施の形態に係る無線通信ネットワークの移動体無線通信端末装置10は、受信アンテナ11を介して周辺の他の移動体無線通信端末装置10が送信したパケットを受信する受信回路12と、受信したパケットがどのスロットを用いて送信されてきたのかを検出するパケット検出部13と、検出されたパケットから送信されてきたデータを復元するパケット復調部14と、自端末が送信端末として機能する場合に、中継次数を決定すると共に、自端末が中継端末として機能する場合に、符号及び遅延量を決定する中継処理部15と、パケット検出部13でパケットを検出したスロットの受信状況、及びパケット復調部14によるパケットの復調の成否情報に基づいて、送信パケットに埋め込む後述するフレーム情報を生成するフレーム情報生成部16と、フレーム情報を蓄積するためのフレーム情報蓄積部17と、フレーム情報生成部16により生成されたフレーム情報を埋め込んだパケットを生成すると共に、中継する場合には中継処理部15での処理結果に基づいて中継要求パケットまたは中継パケット(詳細は後述)を生成するパケット生成部18と、パケットを送信するスロットを選択し、選択したスロットに基づいて、パケットの送信タイミングを制御するスロット選択部19と、送信アンテナ21を介してパケットを送信する送信回路20とを備えている。
【0033】
ここで、第1の実施の形態の移動体無線通信端末装置10によって送受信されるフレームの構成について図5を用いて説明する。1フレームは、例えば100msに設定され、フレーム周期が周期的に繰り返されている。各フレーム周期は、N個の期間に分割されたN個のスロットにより構成されている。この1つのスロットは、1パケットを送信できる期間を示すものである。移動体無線通信端末装置10では、このスロットの単位でパケットをやりとりする。なお、1フレーム周期は各移動体無線通信端末装置10のデータの送信周期に合わせて設定するとよい。例えば、各移動体無線通信端末装置10において、100msに1度のパケットの送信を保証するためには、100msに設定すると良い。本実施の形態に係る移動体無線通信端末装置10では、フレーム周期は100msとされているものとする。
【0034】
パケットは、プリアンブルと、パケットが通常パケットか中継に関連するパケットかを示す中継フラグと、中継する際の符号化方式と、符号化するアンテナの本数である中継次数と、当該パケットを送信した移動体無線通信端末装置10で検出された1フレーム周期中のスロットの受信状況を示すフレーム情報(FI)と、送信対象となる実データが含まれるデータ領域と、スロットの同期ずれの影響を軽減するためのガードタイムとを有している。なお、本発明ではスロットの同期方法に関しては限定しないが、例えば同期のための基準局を設ける等の何らかの手段によって、ガードタイムで補償できる程度の同期がとれているものとする。
【0035】
中継フラグは、例えば、該当のパケットが、通常のシングルホップで送信される通常パケットであることを示す「0」、送信端末から中継端末候補へ協調通信による中継を要求する中継要求パケットであることを示す「1」、中継端末から受信端末へ中継される中継パケットであることを示す「2」とすることができる。なお、中継端末候補とは、送信端末からのパケットを受信可能な端末であり、実際に中継端末となるか否かは中継候補端末が自律的に判断する。
【0036】
フレーム情報には、スロット数分の領域が設けられている。本実施の形態では、N個のスロットに対応してN個の領域[SI、SI、・・・、SI]が設けられている。各領域(CS)には、「ACK」(正常受信)、「RTC」(スロット変更要求:パケット衝突)、「NACK」(受信失敗)、及び「FREE」(空き)の何れかを示す観測情報が設定される。観測情報の「ACK」は、対象となるスロットにおいて、パケットの受信が成功したことを示す。なお、パケットの受信が成功したとは、単にパケットを受信・検出しただけでなく、パケット内の情報を復調できたことをいう。また、「RTC」は、パケットが衝突したことを示す。また、「NACK」は、対象となるスロットにおいて、パケットの受信が失敗したことを示し、パケットを受信・検出したが、パケット内の情報を復調できなかったことを示す。「FREE」は、対象となるスロットにおいて、パケットが受信されなかったことを示す。
【0037】
また、パケットには、符号化方式及び変調方式が含まれ、例えば、図3に示す方式のいずれの方式を使用するか、どのような変調方式を使用するか等の情報を設定する。
【0038】
次に、移動体無線通信端末装置10の通常のシングルホップ通信時の動作について説明する。まず受信処理では、パケット検出部13により、スロットiのタイミングで受信回路12の状態を取り込み、パケットが受信されたか否かを検出する。また、パケット復調部14により、検出されたパケットを復調して他の移動体無線通信端末装置10から送られてきたデータを復元してパケットに含まれるフレーム情報をフレーム情報蓄積部17に蓄積すると共に、復調成否情報を生成する。そして、フレーム情報生成部16で、パケット検出部13での検出結果及びパケット復調部14の復調成否情報に基づいて、スロットiの観測情報を生成する。この受信処理をスロット毎に1フレーム分実行することで、直近1フレーム分のフレーム情報を生成することができる。
【0039】
なお、以下では、フレーム情報生成部16で生成したフレーム情報と、受信したパケットに含まれるフレーム情報とを区別するために、フレーム情報生成部16で生成したフレーム情報を自端末フレーム情報(自端末FI)、受信したパケットに含まれるフレーム情報を他端末フレーム情報(他端末FI)という。また、自端末FIの観測情報を自端末観測情報(自端末CS)、他端末FIの観測情報を他端末観測情報(他端末CS)という。
【0040】
次に、通常のシングルホップ通信時の送信処理では、スロット選択部19により、フレーム情報生成部16で生成された自端末フレーム情報、及びフレーム情報蓄積部17に蓄積された他端末フレーム情報を参照して、パケットを送信する送信スロットを選択する。送信スロットは、例えば、自端末フレーム情報及び他端末フレーム情報において、観測情報が全て「FREE」となっているスロットを選択することができる。そして、1フレーム期間において、選択した送信スロットのタイミングで、フレーム情報生成部16により生成したフレーム情報を含むパケットを送信する。また、フレーム情報生成部16により生成したフレーム情報を、フレーム情報蓄積部17に1フレーム分記録した上でリセットして、受信処理の待機状態となる。
【0041】
次に、図6を参照して、協調通信時に第1の実施の形態の移動体無線通信端末装置10が送信端末として機能する場合に実行される送信端末処理ルーチンについて説明する。
【0042】
ステップ100で、協調通信による中継を要求する情報(以下、中継要求情報という)を取得したか否かを判定する。中継要求情報とは、例えば、事故情報などの通常のシングルホップ通信時のパケットには含まれない情報である。中継要求情報の取得は、例えば、カーナビゲーションシステムと連動して取得したり、他の移動体無線通信端末装置から取得したり、自車両に搭載された車載カメラやレーザレーダ等により検出された車両周辺状況から判断して取得したりすることができる。中継要求情報を取得した場合には、ステップ102へ移行し、取得しない場合には、本ステップの判定を繰り返す。
【0043】
ステップ102では、フレーム情報蓄積部17に蓄積された前フレームの自端末フレーム情報を確認する。
【0044】
次に、ステップ104で、前フレームの自端末フレーム情報の観測情報に含まれる「ACK」の数が2以上か否かを判定する。「ACK」が2以上の場合には、ステップ106へ移行し、2より小さい場合には、ステップ108へ移行する。
【0045】
ステップ106では、自端末観測情報の「ACK」の数以下の数を協調通信の際の中継次数kとして決定する。中継次数とは、協調通信の際の中継局のアンテナの数であり、1つのアンテナに1つの符号が対応する。ここでは、「ACK」の数は中継端末候補の数であるので、「ACK」の数より小さい数を中継次数として決定した場合には、1つのアンテナに複数の中継端末が割り当てられることになる。1つのアンテナに割り当てられた中継端末は、それぞれ異なる遅延量を設定して、符号化したパケットを送信する。図7に、1つのアンテナに複数の中継端末が割り当てられ、それぞれ異なる遅延量が設定された例として、符号化方式と遅延ダイバーシチ方式とを組み合わせた場合のイメージ図を示す。
【0046】
このように、電波の相反性を利用して、「ACK」の数に基づいて中継次数を自律的に決定することができる。また、自端末フレーム情報の生成及び蓄積の際に、パケット受信時の受信電力も合わせて記録しておき、受信電力が所定の閾値以上の場合の「ACK」の数を用いて中継次数を決定するようにしてもよい。これにより、協調通信の確実性が向上する。
【0047】
一方、ステップ108では、中継次数kを1に決定する。中継次数kが1の場合、中継端末では符号化は行われず、遅延量のみが設定される。
【0048】
次に、ステップ110で、上記ステップ100で取得した中継要求情報をデータ領域に含め、中継フラグを「1」、中継次数を「k」に設定した中継要求パケットを生成して、自端末の送信スロットのタイミングで送信して処理を終了する。
【0049】
次に、図8を参照して、協調通信時に第1の実施の形態の移動体無線通信端末装置10が中継端末として機能する場合に実行される中継端末処理ルーチンについて説明する。
【0050】
ステップ150で、パケット検出部13により、受信回路12の状態を取り込み、パケットが受信されたか否かを検出し、パケット復調部14により、検出されたパケットを復調して他の移動体無線通信端末装置10から送られてきたデータを復元すると共に、パケットに含まれる他端末フレーム情報をフレーム情報蓄積部17に蓄積する。
【0051】
次に、ステップ152で、復元されたデータの中継フラグを確認し、中継フラグが、受信したパケットが中継要求パケットであることを示す「1」であるか否かを判定する。中継フラグが「1」の場合には、ステップ154へ移行し、中継フラグが「1」ではない場合には、ステップ166へ移行する。
【0052】
ステップ154では、上記ステップ150でフレーム情報蓄積部17に蓄積した他端末フレーム情報を参照して、自端末が通常パケットを送信する際に使用する送信スロットmの他端末観測情報(他端末CS)を確認する。例えば、端末A〜F(送信端末:端末A、自端末:端末B)が送信スロットとして図9に示すように各スロットを使用している場合、自端末Bの送信スロットは4番目であるので、送信端末Aからの他端末フレーム情報の4番目のスロットの観測情報を確認する。
【0053】
次に、ステップ156で、上記ステップ154で確認した他端末CSが「ACK」か否かを判定する。他端末CS=「ACK」の場合には、送信端末と自端末との間の通信が正常に行われていることを示しているため、自端末が中継端末になると判断して、ステップ158へ移行する。一方、他端末CS≠「ACK」の場合には、送信端末と自端末との間の通信が正常に行われていないことを示しているため、協調通信の信頼性を保つために自端末は中継端末にはならないと判断して、ステップ168へ移行する。
【0054】
ステップ158では、上記ステップ150でフレーム情報蓄積部17に蓄積した他端末フレーム情報において、観測情報が「ACK」となっているスロットの内、自端末の送信スロットmが何番目のスロットか(OACK)を算出する。上記の図9の例では、送信端末Aからのパケットを受信した1番目のスロットは、送信端末A自体の送信スロットであることがわかる。この送信端末の送信スロットを除いて、観測情報が「ACK」となっているスロットの内、自端末Bの送信スロットは2番目であるので、OACK=2となる。
【0055】
次に、ステップ160で、受信したパケットに含まれる中継次数、及び上記ステップ158で算出したOACKに基づいて、協調通信の際の符号及び遅延量を決定する。具体的には、中継次数kに基づいてアンテナID#1〜ID#kを設定し、「ACK」のスロットに順番にアンテナID#2、・・・、アンテナID#k、・・・、アンテナID#1を割り当てる。アンテナIDにはそれぞれ異なる符合が対応している。
【0056】
中継次数kより「ACK」の数の方が多い場合には、アンテナID#1の次に再びアンテナID#2から割り当てる。この2周目のアンテナIDの割り当ての際には、遅延量を付加する。中継次数kの2倍より「ACK」の数の方が多い場合には、2周目のアンテナID#1の次に再びアンテナID#2から割り当てる。この3周目のアンテナIDの割り当ての際には、2周目に付加した遅延量より多い遅延量を付加する。
【0057】
従って、自端末に割り当てられる符号(アンテナID)は、上記ステップ158で算出したOACKを中継次数kで除したときの剰余(整数)に1を加算した値として決定する。また、自端末に割り当てられる遅延量は、OACKから1を減算した値を中継次数kで除した商(整数)に所定の基準遅延量τを乗算した値として決定する。基準遅延量τは、例えば、直交波周波数分割多重(OFDM)のサンプリング間隔等とすることができ、最大許容遅延量はOFDMのガードインターバルとして設定されている時間である。ただし、ガードインターバルがガードタイムより大きい場合には、最大許容遅延量はガードタイムとなる。
【0058】
例えば、上記の図9の例で、受信したパケットに含まれる中継次数kが「2」の場合には、OACK「2」を中継次数「2」で除したときの剰余0に1を加算して1が得られるため、アンテナID#1が割り当てられる。また、OACK「2」から1を減算した値1を中継次数「2」で除した商0に所定の基準遅延量τを乗算すると0となるため、遅延量はなしと決定できる。
【0059】
なお、図9の例で、中継次数kが「2」の場合には、端末C(OACK=1)はアンテナID#2及び遅延量0、端末D(OACK=3)はアンテナID#2及び遅延量τ、端末E(OACK=4)はアンテナID#1及び遅延量τが割り当てられる。
【0060】
次に、ステップ162で、データ領域に上記ステップ150で復元したデータから得られる中継要求情報を含め、中継フラグを中継端末から送信される中継パケットであることを示す「2」に設定し、中継次数を中継要求パケットに設定されていた中継次数と同様の「k」に設定し、上記ステップ160で決定したアンテナIDに対応した符号で符号化した中継パケットを生成する。
【0061】
次に、ステップ164で、予め定めたルールに従って中継パケットを送信するための中継用スロットを選択する。各中継端末は、同一のスロットで中継パケットを送信する必要があるため、予め定めたルールに従って中継用スロットを選択するものである。ここでは、図10に示すように、通常のシングルホップ通信で用いられる周波数fとは異なる周波数を、中継パケットを送信するための周波数fとして使用する場合について説明する。中継用スロットは、例えば、送信端末の送信スロットのnスロット後のスロット等のように、送信端末の送信スロットとの位置関係が予め対応付けられたスロットを選択する。図10は、送信端末Aの送信スロット♯1の1スロット後のスロット♯2を中継用スロットとして選択する例である。スロットの対応付けは、1スロット後のスロットに限定されるものではなく、送信スロットと同一のスロットや、2スロット後のスロット等としてもよい。ただし、送信スロットの1スロット後のスロットを中継用スロットとして選択した場合が、中継要求パケットを受信してから中継パケットを送信するまでのタイムラグを最短にすることができる。
【0062】
そして、1フレーム期間において、選択した中継用スロットのタイミングで、上記ステップ162で生成した中継パケットを送信する。この際、遅延量が付加されている中継パケットについては、遅延量も考慮したタイミングで中継パケットを送信する。
【0063】
上記ステップ152で、中継フラグ≠1と判定されてステップ166へ移行した場合には、中継フラグが、受信したパケットが通常パケットであることを示す「0」であるか否かを判定する。中継フラグが「0」の場合には、ステップ168へ移行し、上述した通常のシングルホップ通信時の受信処理を実行する。一方、中継フラグが「0」ではない場合には、中継フラグが、受信したパケットが中継端末から送信された中継パケットであることを示す「2」であると判定して、ステップ170へ移行する。
【0064】
ステップ170では、協調通信における受信端末として機能して、各中継端末から受信した中継パケットを復元する。これにより、送信端末から送信され中継端末を介して中継された中継要求情報を取得することができる。そして、受信端末として機能した後は、取得した中継要求情報をさらに遠くまで伝えるために、送信端末として機能する。なお、中継の回数や中継すべき距離等を予め定めておき、その回数や距離に達するまで中継を繰り返すようにするとよい。
【0065】
以上説明したように、第1の実施の形態の移動体無線通信端末装置によれば、受信したパケットに含まれる他端末フレーム情報における自端末の送信スロットの受信状況及び位置に基づいて、自端末が中継端末となるか否か、及び中継端末となる場合の符号及び遅延量を自律的に決定することができ、また、予め定めたルールに従った中継用スロットを選択して中継パケットを送信するため、送信タイミングを自律的に決定することができる。
【0066】
次に、第2の実施の形態について説明する。第1の実施の形態では、予め定めたルールに従って中継用スロットを選択する場合について説明したが、例えば、図11(A)に示すように、端末B及び端末Cが端末Aのパケットを中継し、端末D及び端末Eが端末Gのパケットを中継する場合であって、端末Aの送信スロットと端末Gの送信スロットとが同一の場合には、同図(B)に示すように、同一の中継用スロットが選択されることとなり、中継パケットの衝突が生じてしまう。また、図12(A)に示すように、端末B及び端末Cが端末Aのパケットを中継し、端末Bの通信可能エリア内に端末Dが存在する場合を考える。通常のシングルホップの周波数fと中継用の周波数fを異ならせていたとしても、2周波の間隔が近い場合には送信と受信とが同時に行えない。従って、送信端末Aの送信スロットの1スロット後のスロットと端末Dの送信スロットとが同一の場合には、同図(B)に示すように、端末Dはパケットを受信できなくなってしまう。このような問題は、通常のシングルホップと中継用とで同一の周波数を用いている場合には、より顕著となる。
【0067】
そこで、第2の実施の形態では、中継パケットの送信に先立って、中継用スロットを獲得するための中継用スロット獲得フェーズを設ける場合について説明する。なお、第2の実施の形態の移動体無線通信端末装置の構成は、第1の実施の形態の移動体無線通信端末装置10の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0068】
ここで、第2の実施の形態の移動体無線通信端末装置によって送受信されるフレームの構成について図13を用いて説明する。フレーム情報の構成以外は、第1の実施の形態におけるフレームの構成と同様であるので、説明を省略する。
【0069】
第2の実施の形態におけるフレーム情報には、第1の実施の形態と同様に、スロット数分の領域が設けられており、さらにフレーム情報のスロット毎の領域の各々は2つの領域に分けられている。第2の実施の形態では、一方の領域(CS)には、第1の実施の形態と同様に、パケット検出部13での検出結果及びパケット復調部14の復調成否情報に基づくスロットの受信状況を示す自端末観測情報が設定される。また、パケットが衝突したことを示す「RTC」に加えて、中継用スロットとして獲得したいスロットに対しても「RTC」が設定される。他方の領域(FF)には、通常の処理を示す「Direct」、及び他端末観測情報の転送要求を示す「Forward」が設定される。
【0070】
次に、図14を参照して、協調通信時に第2の実施の形態の移動体無線通信端末装置が送信端末として機能する場合に実行される送信端末処理ルーチンについて説明する。なお、第1の実施の形態の送信端末処理と同一の処理については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0071】
ステップ100で、中継要求情報を取得したと判定された場合には、ステップ200へ移行し、中継用スロットnを決定する。中継用スロットnは、第1の実施の形態と同様に、自端末の送信スロットの1スロット後のスロット等のように決定することができる。また、1フレーム中からランダムに決定してもよいし、フレーム情報蓄積部17に蓄積された前フレームの自端末フレーム情報及び他端末フレーム情報を参照して、観測情報が全て「FREE」のスロットを中継用スロットとして決定してもよい。
【0072】
次に、ステップ202で、フレーム情報生成部16で生成したフレーム情報のスロットnの自端末CSを「RTC」、スロットnのFFを「Forward」に変更したフレーム情報を生成する。次に、ステップ204で、上記ステップ202で生成したフレーム情報を含むパケットを、自端末の送信スロットのタイミングで送信する。FFが「Forward」に設定されていることから、このパケットを受信した端末は、自端末CSを「RTC」とする自端末フレーム情報を生成してパケットに含めて送信する。スロットnを使用する端末がこのパケットを受信して「RTC」を受け付けることによりスロット変更を行うため、中継用スロットnが獲得される。なお、上記ステップ200〜204を「中継用スロット獲得フェーズ」という。
【0073】
例えば、上述の図12(A)に示すような状況で、図15に示すようなスロット使用状況の場合には、送信端末Aの中継用スロット獲得フェーズで、2番目のスロットを中継用スロットとして獲得するために、自端末CS=「RTC」、自端末FF=「Forward」とするフレーム情報を生成してパケットに含めて送信する。このパケットを受信した端末B及び端末Cは、自端末CS=「RTC」とするフレーム情報を生成してパケットに含めて送信する。端末Bからパケットを受信した端末Dは、自端末の送信スロットが「RTC」となっていることから、送信スロットを変更し、中継用スロットが獲得される。
【0074】
次に、ステップ206で、1フレーム期間分のパケットを受信して、自端末フレーム情報を生成する。次に、ステップ104〜110で、上記ステップ206で生成した自端末フレーム情報に基づいて、中継次数を決定して、中継要求パケットを生成して、自端末の送信スロットのタイミングで送信して処理を終了する。
【0075】
次に、図16を参照して、協調通信時に第2の実施の形態の移動体無線通信端末装置が中継端末として機能する場合に実行される中継端末処理ルーチンについて説明する。なお、第1の実施の形態の中継端末処理と同一の処理については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0076】
ステップ150〜162を実行して、中継パケットを生成する。次に、ステップ264で、送信端末の中継用スロット獲得フェーズで獲得されたスロットを中継用スロットとして選択する。具体的には、送信端末の送信スロットの前フレームで受信した中継要求パケットに含まれている他端末フレーム情報を参照して、他端末CSが「RTC」及び他端末FFが「Foward」となっているスロットを中継用スロットとして選択する。そして、選択した中継用スロットのタイミングで、上記ステップ162で生成した中継パケットを、上記ステップ160で決定した遅延量も考慮して送信する。
【0077】
また、上記ステップ152で、中継フラグ≠1と判定されてステップ166へ移行し、中継フラグが「0」であると判定された場合には、ステップ265へ移行し、中継フラグが「0」ではない場合には、ステップ170へ移行する。
【0078】
ステップ265では、受信した中継要求パケットに含まれている他端末フレーム情報の全ての他端末FFを確認し、「Forward」となっているスロットが存在するか否かを判定する。全ての他端末FFが「Direct」の場合には、ステップ168へ移行する。1つでも「Forward」が含まれている場合には、ステップ269へ移行する。
【0079】
ステップ269では、通常の受信処理に加え、自端末フレーム情報を更新する処理を行う。自端末フレーム情報の更新では、自端末で観測した情報に基づいて生成したフレーム情報に対して、上記ステップ265でFFが「Forward」であると判定されたスロットnの自端末CSを「RTC」に変更する。本ステップの処理により、図15に示すように、中継用スロットとして獲得したいスロットの観測情報「RTC」が転送され、中継用スロットが獲得される。
【0080】
以上説明したように、第2の実施の形態の移動体無線通信端末装置によれば、第1の実施の形態の効果に加え、中継パケットの送信に先立って中継用スロット獲得フェーズを設けることで、中継用スロットで送信されるパケットの衝突を回避して協調通信の信頼性をより高めることができる。
【0081】
なお、第2の実施の形態では、図13に示すようなフレーム構成の場合について説明したが、他の例として、図17に示すようなフレーム構成としてもよい。この例では、フレーム情報は、第1の実施の形態と同様に、スロット数分の領域(CS)が設けられている。また、転送要求のスロット番号を設定する領域(FP)が設けられている。中継用スロットとしてスロットnを獲得したい場合には、自端末CS=「RTC」とすると共に、FPに「n」を設定することで、第2の実施の形態と同様に、観測情報「RTC」を転送することができる。
【0082】
また、中継要求パケットにおいて、自端末FF=「Forward」と設定し、中継フラグ=「1」かつ自端末FF=「Forward」の場合には、スロットnを中継用スロットとして選択するようにしてもよい。この場合、前フレームの他端末CS及び他端末FFを参照する必要がなくなる。上記他の例の場合には、中継フラグ=「1」かつFPに値設定ありの場合に、FPに設定されているスロットを中継用スロットとして選択するようにしてもよい。
【0083】
また、中継用スロットとして1スロットのみ獲得する場合だけでなく、複数のスロットを獲得することもできる。その場合、獲得したいスロットの全てについて、CS=「RTC」及びFF=「Forward」とするフレーム情報を生成すればよい。
【0084】
次に、第3の実施の形態について説明する。第2の実施の形態では、中継用スロット獲得フェーズを設けて中継用スロットでのパケット衝突を回避する場合について説明したが、第3の実施の形態では、スロットの割り当てにより、中継用スロットでのパケット衝突を回避する場合について説明する。なお、第3の実施の形態の移動体無線通信端末装置の構成は、第1の実施の形態の移動体無線通信端末装置10の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0085】
ここで、図18を参照して、第3の実施の形態の移動体無線通信端末装置におけるスロットの割り当てについて説明する。
【0086】
第3の実施の形態では、通常のシングルホップ通信の周波数と協調通信の周波数とを同一の周波数とする。1フレームをN個に分割したN個のスロットで構成し、奇数番目のスロット(図中「a」)を通常のシングルホップ通信用のスロットとして割り当て、偶数番目のスロット(図中「b」)を協調通信用のスロットとして割り当てる。中継用スロットは、協調通信用のスロットから選択する。送信端末が中継要求パケットを送信してから中継端末が中継パケットを送信するまでのタイムラグを考慮すると、送信端末の送信スロットの次のスロットを中継用スロットとして選択することが好ましい。例えば、送信端末A(送信スロット#1)からの中継要求パケットを受信した場合には、スロット#1の次のスロットであるスロット#2を中継用スロットとして選択することができる。
【0087】
以上説明したように、第3の実施の形態の移動体無線通信端末装置によれば、第1の実施の形態の効果に加え、通常のシングルホップ通信用のスロットと協調通信用のスロットとを予め割り当てておくことにより、中継用スロットで送信されたパケットの衝突を回避して協調通信の信頼性をより高めることができる。
【0088】
なお、第3の実施の形態では、通常のシングルホップ通信用のスロットと協調通信用のスロットとを交互に割り当てる場合について説明したが、1フレームの前半にシングルホップ通信用、後半に協調通信用のスロットを割り当てたり、ランダムに割り当てたりしてもよい。また、通常のシングルホップ通信用のスロットと協調通信用のスロットとが同数になるように割り当てる必要はなく、割り当てる数に差を設けてもよい。その場合、スロット利用率を考慮して、シングルホップ通信用のスロットの方が多くなるように割り当てるようにするとよい。
【0089】
次に、第4の実施の形態について説明する。第2の実施の形態では、送信端末において中継用スロット獲得フェーズを設ける場合について説明したが、第4の実施の形態では、中継端末において中継用スロット獲得フェーズを設ける場合について説明する。なお、第4の実施の形態の移動体無線通信端末装置の構成は、第1の実施の形態の移動体無線通信端末装置10の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0090】
ここで、図19を参照して、協調通信時に第4の実施の形態の移動体無線通信端末装置が中継端末として機能する場合に実行される中継端末処理ルーチンについて説明する。なお、第1の実施の形態の中継端末処理と同一の処理については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0091】
ステップ150及び152を実行して、中継フラグが「1」であると判定されると、ステップ400へ移行して、上記ステップ150で受信した中継要求パケットを、所定の記憶領域に記憶する。次に、ステップ200〜204で、第2の実施の形態の送信端末処理ルーチンで実行される中継用スロット獲得フェーズと同様の処理を実行する。なお、中継端末での中継用スロット獲得フェーズでの中継用スロットnの決定(ステップ200)では、他の中継端末と共通した中継用スロットnが決定されるような決定ルールを適用する。例えば、送信端末の送信スロットの1スロット後のスロットを中継用スロットnとして決定する。
【0092】
次に、ステップ154〜160を実行して、協調通信の際の符号及び遅延量を決定して、次に、ステップ462で、データ領域に、上記ステップ400で所定の記憶領域に記憶した中継要求パケットに含まれる中継要求情報を含め、中継フラグを「2」に設定し、中継次数を「k」に設定し、上記ステップ160で決定したアンテナIDに対応した符号で符号化した中継パケットを生成する。
【0093】
次に、ステップ464で、上記ステップ200で決定した中継用スロットnを選択して、選択した中継用スロットのタイミングで、上記ステップ462で生成した中継パケットを、上記ステップ160で決定した遅延量も考慮して送信する。
【0094】
以上説明したように、第4の実施の形態の移動体無線通信端末装置によれば、第1の実施の形態の効果に加え、中継パケットの送信に先立って中継用スロット獲得フェーズを設けることで、中継用スロットで送信されたパケットの衝突を回避して協調通信の信頼性をより高めることができる。
【0095】
次に、第5の実施の形態について説明する。第1の実施の形態では、中継端末の送信スロットが他端末フレーム内の何番目の「ACK」かによって符号及び遅延量を決定する場合について説明したが、第5の実施の形態では、「NACK」の場合も含めて符号及び遅延量を決定する場合について説明する。なお、第5の実施の形態の移動体無線通信端末装置の構成は、第1の実施の形態の移動体無線通信端末装置10の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0096】
ここで、図20を参照して、協調通信時に第5の実施の形態の移動体無線通信端末装置が中継端末として機能する場合に実行される中継端末処理ルーチンについて説明する。なお、第1の実施の形態の中継端末処理と同一の処理については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0097】
ステップ150〜160を実行して、協調通信の際の符号及び遅延量を決定して、次に、ステップ550へ移行する。また、上記ステップ156で、他端末CS≠「ACK」と判定された場合にも、ステップ550へ移行する。
【0098】
ステップ550では、上記ステップ150で受信した中継要求パケットに含まれる他端末フレーム情報内の観測情報「ACK」の数をカウントし、「ACK」の数が所定の閾値以上か否かを判定する。中継端末の数が不足する場合には協調通信の信頼性が低下する可能性があるため、「ACK」の数が少ない場合には「NACK」となっているスロットを使用している端末も中継候補端末として含めるための判定である。「ACK」の数が閾値以上の場合には、ステップ162へ移行し、閾値未満の場合には、ステップ557へ移行する。
【0099】
ステップ557では、他端末CSが「NACK」か否かを判定する。他端末CS=「NACK」の場合には、ステップ559へ移行し、他端末CS≠「NACK」の場合には、ステップ168へ移行する。
【0100】
ステップ559では、上記ステップ158と同様の処理により、上記ステップ150でフレーム情報蓄積部17に蓄積した他端末フレーム情報において、観測情報が「NACK」となっているスロットの内、自端末の送信スロットmが何番目のスロットか(ONACK)を算出する。次に、ステップ561で、上記ステップ160と同様の処理により、受信したパケットに含まれる中継次数、及び上記ステップ559で算出したONACKに基づいて、協調通信の際の符号及び遅延量を決定する。
【0101】
上記ステップ158及び160、並びに上記ステップ559及び561の処理により、図21に示すように、「ACK」毎、及び「NACK」毎に符号及び遅延量が決定される。
【0102】
以上説明したように、第5の実施の形態の移動体無線通信端末装置によれば、他端末観測情報が「ACK」となる端末が不足する場合に、他端末観測情報が「NACK」となる端末も含めて中継端末とするため、協調通信時の信頼性を保つことができる。また、「ACK」毎、及び「NACK」毎に符号及び遅延量を決定するため、受信状況が正常でない可能性がある端末(他端末観測情報が「NACK」の端末)に一方の符号が偏ることを防止して、協調通信時の信頼性をより適切に保つことができる。
【0103】
次に、第6の実施の形態について説明する。第1〜第5の実施の形態では、中継端末候補において、自端末が中継端末となるか否かを決定する場合について説明したが、第6の実施の形態では、送信端末において、中継端末を指定する場合について説明する。なお、第1の実施の形態の移動体無線通信端末装置10と同一の構成については、同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0104】
図22に示すように、第6の実施の形態に係る無線通信ネットワークの移動体無線通信端末装置610は、受信回路12と、パケット検出部13と、パケット復調部14と、自端末が送信端末として機能する場合に中継端末を指定すると共に、自端末が中継端末として機能する場合に符号及び遅延量の割り当てを判断する中継処理部615と、フレーム情報生成部16と、フレーム情報蓄積部17と、パケット生成部18と、スロット選択部19と、送信回路20と、スロット番号と位置情報とを対応させて記録するスロット位置情報対応記録部622と、GPS装置等で構成された自端末の位置情報を検出する自端末位置情報検出部623と、を備えている。
【0105】
スロット位置情報対応記録部622には、通常のシングルホップ通信時に、パケットを受信する毎に、受信したパケットに含まれる位置情報とパケットを受信したスロット番号とを対応付けて記録する。
【0106】
ここで、第6の実施の形態の移動体無線通信端末装置610によって送受信されるフレームの構成について図23を用いて説明する。中継端末候補をスロット番号で指定する中継候補スロット番号が設けられている点以外は、第1の実施の形態におけるフレームの構成と同様であるので、説明を省略する。
【0107】
中継候補スロット番号には、中継処理部615により、送信端末において中継要求情報を中継したい方向が決定され、決定された方向に該当する位置情報に対応するスロット番号がスロット位置情報対応記録部622から抽出されて、そのスロット番号が設定される。
【0108】
次に、図24を参照して、協調通信時に第6の実施の形態の移動体無線通信端末装置610が送信端末として機能する場合に実行される送信端末処理ルーチンについて説明する。なお、第1の実施の形態の送信端末処理と同一の処理については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0109】
ステップ100で、中継要求情報が取得されると、ステップ600へ移行し、中継要求情報を中継したい方向を決定する。決定の方法は、予め中継要求情報の種別と中継したい方向との対応関係を定めておき、上記ステップ100で取得した中継要求情報に基づいて決定する。例えば、進行方向前方で発生した事故情報などを後続車両へ中継したい場合であれば、自端末位置情報検出部623で検出された自端末の位置情報に基づいて、後続車両の方向を中継したい方向として決定する。
【0110】
次に、ステップ602で、上記ステップ600で決定した方向に該当する位置情報に対応するスロット番号を、スロット位置情報対応記録部622から抽出する。抽出されたスロット番号のスロットを送信スロットとして使用している端末が中継端末候補となる。
【0111】
次に、ステップ604で、上記ステップ602で抽出したスロット数が2以上か否かを判定する。スロット数が2以上の場合には、ステップ606へ移行し、スロット数以下の数を協調通信の際の中継次数kとして決定する。一方、スロット数が2より小さい場合には、ステップ108へ移行し、中継次数kを1に決定する。
【0112】
次に、ステップ611で、上記ステップ100で取得した中継要求情報をデータ領域に含め、中継フラグを「1」、中継次数を「k」、中継候補スロット番号に上記ステップ602で抽出した中継端末候補のスロット番号を設定した中継要求パケットを生成して、自端末の送信スロットのタイミングで送信して処理を終了する。
【0113】
次に、図25を参照して、協調通信時に第6の実施の形態の移動体無線通信端末装置610が中継端末として機能する場合に実行される中継端末処理ルーチンについて説明する。なお、第1の実施の形態の中継端末処理と同一の処理については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0114】
ステップ150及び152を実行して、中継フラグが「1」であると判定されると、ステップ656へ移行し、受信したパケットの中継候補スロット番号を確認し、自端末の送信スロットmと一致するスロット番号が存在するか否かを判定する。一致するスロット番号が存在する場合には、自端末が中継端末として指定されていると判断して、ステップ658へ移行し、存在しない場合には、自端末は中継端末にはならないと判断して、ステップ168へ移行する。
【0115】
ステップ658では、中継候補スロット番号に設定されているj個の中継候補端末のスロット番号の内、自端末の送信スロットmが何番目の中継端末候補か(O中継)を算出する。
【0116】
次に、ステップ660で、第1の実施の形態の中継端末処理のステップ160と同様の処理により、受信したパケットに含まれる中継次数、及び上記ステップ658で算出したO中継に基づいて、協調通信の際の符号及び遅延量を決定する。次に、ステップ162で、中継パケットを生成して、次に、ステップ164で、中継パケットを送信する。
【0117】
以上説明したように、第6の実施の形態の移動体無線通信端末装置によれば、送信端末において所望の中継端末を指定するため、中継要求情報に応じて適切な協調通信を行うことができる。
【0118】
なお、第6の実施の形態では、送信端末において、中継したい方向に該当する位置情報の端末を中継候補端末とする場合について説明したが、パケットを受信した際の受信電力が所定の閾値以上の場合に、そのパケットを受信したスロット番号を中継候補スロット番号に設定して、中継候補端末としてもよい。
【0119】
次に、第7の実施の形態について説明する。第1〜第6の実施の形態では、送信端末が中継要求情報を取得した場合に協調通信を行う場合について説明したが、第7の実施の形態では、通信状況に応じて通常パケットを協調通信により中継する場合について説明する。第7の実施の形態の移動体無線通信端末装置の構成は、第1の実施の形態の移動体無線通信端末装置10の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0120】
ここで、図26を参照して、協調通信時に第7の実施の形態の移動体無線通信端末装置が送信端末として機能する場合に実行される送信端末処理ルーチンについて説明する。なお、第1の実施の形態の送信端末処理と同一の処理については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0121】
ステップ700で、自端末の送信スロットmのタイミングで、通常パケットを送信し、次に、ステップ702で、受信待機状態となる。
【0122】
次に、ステップ704で、パケット検出部13により、スロットiのタイミングで受信回路12の状態を取り込み、パケットが受信されたか否かを検出し、パケット復調部14により、検出されたパケットを復調して他の移動体無線通信端末装置10から送られてきたデータを復元してパケットに含まれるフレーム情報をフレーム情報蓄積部17に蓄積する。
【0123】
次に、ステップ706で、上記ステップ700でパケットを送信してから1フレーム期間が経過し、次フレームでの送信タイミング(スロットm)となったか否かを判定する。送信タイミングとなった場合には、ステップ708へ移行し、送信タイミングとなっていない場合には、ステップ702へ戻る。
【0124】
ステップ708では、フレーム情報蓄積部17に蓄積した1フレーム期間の各スロット毎の他端末フレーム情報を参照して、自端末の送信スロットmの他端末CSの「ACK」数及び「NACK」数をカウントして、「NACK」の割合を算出する。「NACK」の割合は、「NACK」の数/(「ACK」の数+「NACK」の数)で算出することができる。例えば、図27に示すように、送信端末A(送信スロット♯1)が、1フレーム期間において端末B〜Dの各々からパケットを受信した場合には、端末B〜Dの他端末フレーム情報の他端末CSの「ACK」数及び「NACK」数をカウントする。ここでは、「ACK」数=1、「NACK」数=2となるため、「NACK」の割合は、2/3となる。
【0125】
次に、ステップ710で、上記ステップ708で算出した「NACK」の割合が所定の閾値以上か否かを判定する。「NACK」の割合が所定の閾値以上の場合には、自端末から送信したパケットが周辺端末で正常に受信されていない確率が高いと判断して、協調通信を行うために、ステップ104へ移行する。ステップ104〜108で中継次数kを決定し、次に、ステップ714へ移行して、本来なら通常パケットとして通常のシングルホップ通信により送信する予定であった情報をデータ領域に含め、中継フラグを「1」、中継次数を「k」に設定した中継要求パケットを生成して、生成した中継要求パケットを送信して処理を終了する。
【0126】
一方、ステップ710で、「NACK」の割合が所定の閾値未満であると判定された場合には、ステップ712へ移行して、通常パケットとしてシングルホップ通信により送信する。
【0127】
第7の実施の形態の移動体無線通信端末装置が中継端末として機能する場合には、上記送信端末処理で送信された中継要求パケットを、第1〜第6の実施の形態と同様に処理することができる。
【0128】
以上説明したように、第7の実施の形態の移動体無線通信端末装置によれば、中継要求情報を取得した場合だけでなく、受信した他端末フレーム情報に基づいて判断した通信状況に応じて、自端末から通常のシングルホップ通信で送信されたパケットが他端末で正常に受信されていないと判断される場合にも、協調通信を行うことにより、通信の信頼性を向上させることができる。
【0129】
次に、第8の実施の形態について説明する。第7の実施の形態では、送信端末が通信状況に応じて通常パケットを協調通信により中継するか否かを判定する場合について説明したが、第8の実施の形態では、中継端末において、協調通信により中継すべきパケットを判断する場合について説明する。第8の実施の形態の移動体無線通信端末装置の構成は、第1の実施の形態の移動体無線通信端末装置10の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0130】
ここで、図28を参照して、協調通信時に第8の実施の形態の移動体無線通信端末装置が中継端末として機能する場合に実行される中継端末処理ルーチンについて説明する。なお、第1の実施の形態の中継端末処理と同一の処理については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0131】
ステップ850の受信待機状態から、次に、ステップ852で、パケット検出部13により、スロットiのタイミングで受信回路12の状態を取り込み、パケットが受信されたか否かを検出し、パケット復調部14により、検出されたパケットを復調して他の移動体無線通信端末装置10から送られてきたデータを復元してパケットに含まれるフレーム情報をフレーム情報蓄積部17に蓄積する。また、データ領域内の情報を所定の記憶領域に記憶する。
【0132】
次に、ステップ854で、スロットiを基準に過去1フレーム期間にフレーム情報蓄積部17に蓄積した他端末フレーム情報を参照して、送信端末の送信スロットiの他端末CSの「ACK」数及び「NACK」数をカウントして、「NACK」の割合を算出する。「NACK」の割合は、「NACK」の数/(「ACK」の数+「NACK」の数)で算出することができる。
【0133】
次に、ステップ858で、上記ステップ854で算出した「NACK」の割合が所定の閾値以上か否かを判定する。「NACK」の割合が所定の閾値以上の場合には、送信スロットiを使用する送信端末のパケットが周辺端末で正常に受信されていない確率が高いと判断して、協調通信を行うために、ステップ154へ移行する。ステップ154〜160を実行して、協調通信の際の符号及び遅延量を決定する。
【0134】
次に、ステップ862で、データ領域に上記ステップ852で記憶したパケットに含まれる情報を含め、中継フラグを「2」、中継次数を「k」に設定した中継パケットを生成し、次に、ステップ164で、生成した中継パケットを送信して処理を終了する。
【0135】
なお、上記ステップ156で、中継端末の送信スロットmについての他端末CSが「ACK」ではないと判定された場合には、中継端末にはならないと判断して、そのまま処理を終了する。
【0136】
また、上記ステップ858で、「NACK」の割合が所定の閾値未満であると判定された場合には、ステップ850へ戻る。
【0137】
以上説明したように、第8の実施の形態の移動体無線通信端末装置によれば、中継端末において、送信端末のパケットが他端末で正常に受信されていないと判断させた場合には、受信した通常パケットを協調通信により中継することで、通信の信頼性を向上させることができる。
【0138】
次に、第9の実施の形態について説明する。第1〜第8の実施の形態では、他端末フレーム情報における自端末の送信スロットの受信状況及びフレーム内の位置に基づいて、協調通信の際の符号及び遅延量を決定する場合について説明したが、第9の実施の形態では、自端末の位置情報及び受信したパケットに含まれる位置情報に基づいて、協調通信の際の符号及び遅延量を決定する場合について説明する。なお、第1の実施の形態の移動体無線通信端末装置10と同一の構成については、同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0139】
図29に示すように、第9の実施の形態に係る無線通信ネットワークの移動体無線通信端末装置910は、受信回路12と、パケット検出部13と、パケット復調部14と、自端末が送信端末として機能する場合に、中継要求情報に基づいて中継したい方向を決定すると共に、自端末が中継端末として機能する場合に、自端末の位置情報、受信したパケットに含まれる位置情報及び中継したい方向に基づいて符号及び遅延量を決定する中継処理部915と、フレーム情報生成部16と、フレーム情報蓄積部17と、パケット生成部18と、スロット選択部19と、送信回路20と、GPS装置等で構成された自端末の位置情報を検出する自端末位置情報検出部923と、を備えている。
【0140】
ここで、第9の実施の形態の移動体無線通信端末装置910によって送受信されるフレームの構成について図30を用いて説明する。中継したい方向が設定される中継方向が設けられている点以外は、第1の実施の形態におけるフレームの構成と同様であるので、説明を省略する。
【0141】
中継方向には、自端末位置情報検出部923により検出された自端末の位置、及び取得した中継要求情報の種別に応じて、中継処理部915により決定された中継したい方向dが、例えば絶対方位等の形式で設定される。
【0142】
次に、図31を参照して、協調通信時に第9の実施の形態の移動体無線通信端末装置910が送信端末として機能する場合に実行される送信端末処理ルーチンについて説明する。なお、第1の実施の形態の送信端末処理と同一の処理については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0143】
ステップ100で、中継要求情報が取得されると、ステップ900へ移行し、中継要求情報を中継したい方向dを決定する。決定の方法は、予め中継要求情報の種別と中継したい方向との対応関係を定めておき、上記ステップ100で取得した中継要求情報に基づいて決定する。例えば、進行方向前方で発生した事故の情報を後続車両へ中継したい場合であれば、自端末位置情報検出部923で検出された自端末の位置情報に基づいて、後続車両の方向を中継したい方向dとして決定する。
【0144】
次に、ステップ102〜108で、中継次数kを決定し、次に、ステップ911で、上記ステップ100で取得した中継要求情報及び自端末位置情報検出部923で検出された自端末位置情報をデータ領域に含め、中継フラグを「1」、中継次数を「k」、中継方向を上記ステップ900で決定した方向「d」に設定した中継要求パケットを生成して、自端末の送信スロットのタイミングで送信して処理を終了する。
【0145】
次に、図32を参照して、協調通信時に第9の実施の形態の移動体無線通信端末装置910が中継端末として機能する場合に実行される中継端末処理ルーチンについて説明する。なお、第1の実施の形態の中継端末処理と同一の処理については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0146】
ステップ150及び152を実行して、中継フラグが「1」であると判定されると、ステップ954へ移行し、受信したパケットに含まれる送信端末の位置情報と、自端末位置情報検出部923で検出された自端末の位置情報とに基づいて、送信端末から見た自端末の方向Dを算出する。
【0147】
次に、ステップ956で、上記ステップ954で算出した方向「D」と上記ステップ150で受信したパケットに含まれる中継方向に設定された方向「d」とが一致するか否かを判定する。この判定は、方向Dと方向dとが完全に一致する場合だけでなく、例えば、図33に示すように、中継したい方向dと直交する送信端末Aを通る直線を基準として方向d側に自端末が存在する場合には、方向Dと方向dとが一致すると判定することができる。方向Dと方向dとが一致する場合には、自端末が中継端末になると判断してステップ960へ移行し、一致しない場合には、自端末は中継端末にはならないと判断してステップ168へ移行する。
【0148】
ステップ960では、算出された方向「D」と中継したい方向「d」との関係に基づいて、アンテナIDを割り当てる。例えば、図33のように、送信端末Aから中継したい方向「d」を見たときの送信端末Aの左側に存在する中継端末にはアンテナID#1を、右側に存在する中継端末にはアンテナID#2を割り当てることができる。また、送信端末の位置情報と自端末の位置情報とに基づいて、送信端末と自端末との距離を算出し、算出した距離に応じた遅延量を決定する。遅延量は、例えば、遅延ダイバーシチの効果が出るように、送信端末と自端末との距離に反比例した値とすることができる。
【0149】
次に、ステップ162で、上記ステップ960で決定した符合で符号化した中継パケットを生成し、次に、ステップ164で、上記ステップ960で決定した遅延量を考慮して中継用スロットのタイミングで中継パケットを送信する。
【0150】
以上説明したように、第9の実施の形態の移動体無線通信端末装置によれば、送信端末が中継したい方向を決定し、中継端末候補が中継したい方向と送信端末から見た自端末の方向に基づいて、自端末が中継端末となるか否か、中継端末となる場合の符号及び遅延量を自律的に決定することができる。
【0151】
次に、第10の実施の形態について説明する。第9の実施の形態では、送信端末が中継したい方向を指定する場合について説明したが、第10の実施の形態では、中継したい方向の指定がない場合であっても、位置情報に基づいて、協調通信の際の符号及び遅延量を決定する場合について説明する。第10の実施の形態の移動体無線通信端末装置の構成は、第9の実施の形態の移動体無線通信端末装置910の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0152】
第10の実施の形態の移動体無線通信端末装置が中継端末として機能する場合において、中継処理部915では、受信したパケットに含まれる送信端末の位置情報に基づいて、送信端末の位置の周辺領域を方位に応じた複数の領域に分割し、自端末位置情報検出部923により検出された自端末の位置情報に基づいて、自端末がどの領域に位置するかによって符号及び遅延量を割り当てる。
【0153】
例えば、図34(A)に示すように、送信端末Aを基準とした4方位(北(N)、南(S)、東(E)、西(W))に基づいて、N〜Eの領域、E〜Sの領域、S〜Wの領域、W〜Nの領域に分割する。そして、N〜Eの領域及びS〜Wの領域にはアンテナID#1を割り当て、E〜Sの領域及びW〜Nの領域にはアンテナID#2を割り当てる。このようにアンテナIDを割り当てることにより、中継端末から中継パケットを受信する受信端末がどの位置に存在しても、アンテナID#1に対応する符号で符号化されたパケット及びアンテナID#2に対応する符号で符号化されたパケットをバランス良く受信することができる。
【0154】
そして、例えば端末Bでは、送信端末Aから受信したパケットに含まれる送信端末Aの位置情報と自端末位置情報検出部923で検出された自端末の位置情報との相対関係から、自端末がN〜Eの領域に存在すると判定し、アンテナID#1であると決定する。また、図34(B)に示すように、4方位からの角度に応じて遅延量を決定する。E〜Sの領域では、東南の方向に位置する場合に遅延量が最大量となるように決定することができる。
【0155】
以上説明したように、第10の実施の形態の移動体無線通信端末装置によれば、中継したい方向の指定がない場合であっても、送信端末の位置情報及び中継端末の位置情報に基づいて、中継端末において自律的に協調通信の際の符号及び遅延量を決定することができる。
【0156】
なお、上記各実施の形態の処理は、適宜組み合わせて実施することができる。
【0157】
また、上記各実施の形態の送信端末処理ルーチン及び中継端末処理ルーチンをプログラムとして規定し、CPUによって実行するようにしてもよい。また、そのプログラムを記録媒体に記録して提供してもよい。
【符号の説明】
【0158】
10、610、910 移動体無線通信端末装置
11 受信アンテナ
12 受信回路
13 パケット検出部
14 パケット復調部
15、615、915 中継処理部
16 フレーム情報生成部
17 フレーム情報蓄積部
18 パケット生成部
19 スロット選択部
20 送信回路
21 送信アンテナ
622 スロット位置情報対応記録部
623、923 自端末位置情報検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定期間のフレームを時分割した複数のスロットの各々を一単位として送信されるパケットであって、周辺の通信端末装置で生成された1フレーム分のスロット毎の受信状況を示すフレーム情報、及び該パケットが周期的に送信される通常パケットであることを示す情報または協調通信による中継を要求する中継要求パケットであることを示す情報を含むパケットを、前記周辺の通信端末装置から受信する受信手段と、
前記受信手段により受信したパケットが中継要求パケットであることを示す情報が含まれた中継要求パケットの場合に、受信したパケットに含まれるフレーム情報が示すスロット毎の受信状況及び自端末がパケットを送信する送信スロットのフレーム内での位置に基づいて、協調通信の際に用いる符号及び遅延量の少なくとも一方を決定する符号遅延量決定手段と、
前記符号遅延量決定手段により決定した符号で前記中継要求パケットを符号化した中継パケット、前記符号遅延量決定手段により決定した遅延量を前記中継要求パケットに付加した中継パケット、または前記符号で前記中継要求パケットを符号化し、かつ前記遅延量を付加した中継パケットを、予め定められた該中継パケットを送信するための中継用スロットのタイミングで送信する送信手段と、
を含む通信端末装置。
【請求項2】
前記フレーム情報の受信状況を、パケットを受信した場合にはビジー、パケットを受信しなかった場合にはフリーとし、
前記符号遅延量決定手段は、前記受信手段により受信した前記中継要求パケットに含まれるフレーム情報における自端末の送信スロットの受信状況がビジーの場合に、自端末が中継端末になると判断すると共に、前記フレーム情報内の受信状況がビジーのスロットのうち自端末の送信スロットが何番目の位置であるかに基づいて、協調通信の際に用いる符号及び遅延量の少なくとも一方を決定する
請求項1記載の通信端末装置。
【請求項3】
前記送信手段は、前記中継パケットの送信に先立って、前記中継用スロットの受信状況をスロット変更要求とするフレーム情報を含む前記通常パケットを、自端末の送信スロットのタイミングで送信する請求項1または請求項2記載の通信端末装置。
【請求項4】
前記受信状況のビジーを、パケットを正常に受信したことを示すACK、及びパケットを受信したが復調に失敗したことを示すNACKとし、
前記受信手段により受信したパケットに含まれるフレーム情報に基づいて、スロット毎に前記NACKの割合を算出し、算出した前記NACKの割合が予め定めた閾値以上のスロットで受信したパケットを中継要求パケットと判定する判定手段を含み、
前記符号遅延量決定手段は、前記判定手段によりパケットが中継要求パケットであると判定された場合にも、協調通信の際に用いる符号及び遅延量の少なくとも一方を決定する、
請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の通信端末装置。
【請求項5】
所定期間のフレームを時分割した複数のスロットの各々を一単位として送信されるパケットであって、通信端末装置の位置情報及び該パケットが周期的に送信される通常パケットであることを示す情報または協調通信による中継を要求する中継要求パケットであることを示す情報を含むパケットを、前記周辺の通信端末装置から受信する受信手段と、
自端末の位置情報を検出する検出手段と、
前記受信手段により受信したパケットが中継要求パケットであることを示す情報が含まれた中継要求パケットの場合に、受信したパケットに含まれる位置情報及び前記検出手段により検出された自端末の位置情報に基づいて、協調通信の際に用いる符号及び遅延量の少なくとも一方を決定する符号遅延量決定手段と、
前記符号遅延量決定手段により決定した符号で前記中継要求パケットを符号化した中継パケット、前記符号遅延量決定手段により決定した遅延量を前記中継要求パケットに付加した中継パケット、または前記符号で前記中継要求パケットを符号化し、かつ前記遅延量を付加した中継パケットを、予め定められた該中継パケットを送信するための中継用スロットのタイミングで送信する送信手段と、
を含む通信端末装置。
【請求項6】
前記中継要求パケットは、該パケットを中継したい方向を示す中継方向情報を含み、
前記符号遅延量決定手段は、前記受信手段により受信したパケットに含まれる位置情報が示す位置、中継方向情報が示す方向、及び前記検出手段により検出された自端末の位置情報が示す位置の関係に基づいて、パケットを送信した送信端末から見た自端末の方向と前記中継したい方向とが対応する場合に、自端末が中継端末になると判断すると共に、前記送信端末から見た自端末の方向及び前記送信端末と前記自端末との距離に基づいて、協調通信の際に用いる符号及び遅延量の少なくとも一方を決定する
請求項5記載の通信端末装置。
【請求項7】
所定期間のフレームを時分割した複数のスロットの各々を一単位として送信されるパケットであって、中継端末をスロット番号で指定する1以上の指定情報、及び該パケットが周期的に送信される通常パケットであることを示す情報または協調通信による中継を要求する中継要求パケットであることを示す情報を含むパケットを、周辺の通信端末装置から受信する受信手段と、
前記受信手段により受信したパケットが中継要求パケットであることを示す情報が含まれた中継要求パケットの場合に、前記受信したパケットに含まれる指定情報が示すスロット番号と自端末がパケットを送信する送信スロットのスロット番号が一致する場合に、自端末が中継端末になると判断すると共に、前記1以上の指定情報の何番目に自端末の送信スロットを示すスロット番号が指定されているかに基づいて、協調通信の際に用いる符号及び遅延量の少なくとも一方を決定する符号遅延量決定手段と、
前記符号遅延量決定手段により決定した符号で前記中継要求パケットを符号化した中継パケット、前記符号遅延量決定手段により決定した遅延量を前記中継要求パケットに付加した中継パケット、または前記符号遅延量決定手段により決定した符号で前記中継要求パケットを符号化し、かつ前記遅延量を付加した中継パケットを、予め定められた該中継パケットを送信するための中継用スロットのタイミングで送信する送信手段と、
を含む通信端末装置。
【請求項8】
前記送信手段は、前記中継要求パケットを送信した通信端末装置の送信スロットに応じたスロットを前記中継用スロットとして選択する請求項1〜請求項7のいずれか1項の通信端末装置。
【請求項9】
前記通常パケット及び前記中継要求パケットと、前記中継パケットとを異なる周波数で送信する請求項1〜請求項8のいずれか1項記載の通信端末装置。
【請求項10】
所定期間のフレームを時分割した複数のスロットの各々を一単位として送信されるパケットであって、前記周辺の通信端末装置で生成された1フレーム分のスロット毎の受信状況を示すフレーム情報を含むパケットを、周辺の通信端末装置から受信する受信手段と、
スロット毎の受信状況を示すフレーム情報を生成すると共に、協調通信による中継を要求する情報を取得した場合に、予め定められた中継パケットを送信するための中継用スロットの受信状況をスロット変更要求に変更したフレーム情報を生成するフレーム情報生成手段と、
前記受信手段により受信したパケットに含まれるフレーム情報に基づいて、協調通信の際に用いる符号の次数を決定する次数決定手段と、
前記フレーム生成手段により生成した前記中継用スロットの受信状況をスロット変更要求に変更したフレーム情報を送信した後に、前記協調通信による中継を要求する情報及び該情報を含む中継要求パケットであることを示す情報、並びに前記次数決定手段により決定した次数を示す情報を含む中継要求パケットを、自端末がパケットを送信する送信スロットのタイミングで送信する送信手段と、
を含む通信端末装置。
【請求項11】
前記フレーム情報生成手段は、前記受信手段によりパケットを正常に受信した場合にはACK、及びパケットを受信したが復調に失敗した場合にはNACKとするフレーム情報を生成し、生成したフレーム情報に基づいて、スロット毎に前記NACKの割合を算出し、算出した前記NACKの割合が予め定めた閾値以上のスロットで受信したパケットの情報を前記協調通信による中継を要求する情報として取得する請求項10記載の通信端末装置。
【請求項12】
所定期間のフレームを時分割した複数のスロットの各々を一単位として送信されるパケットであって、自端末の位置情報を含むパケットを、周辺の通信端末装置から受信する受信手段と、
協調通信による中継を要求する情報を取得した場合に、該協調通信による中継を要求する情報及び前記受信手段により受信したパケットに含まれる位置情報に基づいて、1以上の中継端末をスロット番号で指定する指定手段と、
前記協調通信による中継を要求する情報及び該情報を含む中継要求パケットであることを示す情報、並びに前記指定手段により指定したスロット番号を含む中継要求パケットを、自端末がパケットを送信する送信スロットのタイミングで送信する送信手段と、
を含む通信端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公開番号】特開2012−34245(P2012−34245A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172852(P2010−172852)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】