説明

通信装置、その処理方法、プログラム、及び通信システム

【課題】
通信パラメータの設定処理に際して、受信装置が提供装置に対して不必要な接続試行を行なうことを抑制する。
【解決手段】
通信装置は、設定された識別情報を用いて当該識別情報を持つ他の装置との間で通信パラメータ設定処理を実施して当該他の装置に通信パラメータを提供する提供装置に接続可能に構成される。ここで、通信装置は、識別情報を用いた通信パラメータ設定処理の開始が指示され、且つ当該識別情報が既に設定されている1又は複数の提供装置を通信パラメータ設定処理の候補として検出する検出手段と、自装置を識別するための端末識別情報を生成する識別情報生成手段と、端末識別情報を出力する出力手段と、候補として検出された提供装置のうち、出力手段により端末識別情報を出力するよりも前に検出された装置以外の提供装置との間で通信パラメータ設定処理を実施する設定制御手段とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、その処理方法、プログラム、及び通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
IEEE802.11規格シリーズに準拠した無線LANに代表される無線通信が知られている。このような無線通信においては、通信を行なう前に設定しなければならない設定項目が数多く存在する。通信に際しては、例えば、ネットワーク識別子として使用されるSSID(Service Set Identifier)、暗号方式、暗号鍵、認証方式、認証鍵等の通信パラメータを設定項目として設定する必要がある。これら全ての設定項目をユーザが手入力により設定するのは非常に煩雑な作業となる。
【0003】
このような煩雑な作業に対処するため、通信パラメータを簡単に設定するための業界標準の自動設定方法として、WPS(Wi-Fi Protected Service)が規格化されている。非特許文献1には、WPSによる通信パラメータの自動設定の一例が開示されている。
【0004】
非特許文献1に記載された方法では、アクセスポイント(基地局)、又はアクセスポイントと通信可能ないずれかの装置が通信パラメータの提供元の装置(以下、提供装置)となる。通信パラメータの受信側の装置(以下、受信装置)は、アクセスポイントへ一時的に接続し、提供装置から通信パラメータを受信する。なお、WPSでは、提供装置を“Registrar”と呼び、受信装置を“Enrollee”と呼んでいる。
【0005】
また、WPSの一方式として、装置を識別するための端末識別情報(例えば、PIN(Personal Information Number)コードと呼ばれる情報)を用いる手法が知られている。この方法では、Enrolleeが生成した端末識別情報をRegistrarに登録する。これにより、上述した規格に従った通信を可能にするための設定情報の送受信及び設定が自動的に行なわれ、両装置間の接続が確立される。この技術に関連して、特許文献1には、無線LANの設定時における端末識別情報の登録に係わる技術が開示されている。
【0006】
ここで、上述した端末識別情報(PINコード)は、装置に固有で割り振られている場合と、通信パラメータの設定処理が行なわれる度にその都度生成される場合との2通りがある。特に、装置上にリッチなユーザインタフェースが設けられていない場合には、端末識別情報が固定で割り振られており、当該固定の端末識別情報が装置表面にシール等で貼付されていることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−219457号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Wi-Fi CERTIFIEDTM for Wi-Fi Protected Setup: Easing the User Experience for Home and Small Office Wi-Fi Networks, http://www.wi-fi.org/wp/wifi-protected-setup
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記端末識別情報を用いた方法により通信パラメータの設定を行なう場合に、複数の提供装置が存在するときには、受信装置においては、当該複数の提供装置それぞれに対して接続を試行しなければならない。
【0010】
通信パラメータの設定処理においては、一般的に、受信装置は、端末識別情報を生成した後、提供装置を検索する。この際、明らかに自装置(受信装置)と異なる端末識別情報が設定されている提供装置へも接続を試行してしまうことになっている。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、通信パラメータの設定処理に際して、受信装置が提供装置に対して不必要な接続試行を行なうことを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、設定された識別情報を用いて当該識別情報を持つ他の装置との間で通信パラメータ設定処理を実施して当該他の装置に通信パラメータを提供する提供装置に接続可能な通信装置であって、識別情報を用いた通信パラメータ設定処理の開始が指示され、且つ当該識別情報が既に設定されている1又は複数の提供装置を前記通信パラメータ設定処理の候補として検出する検出手段と、自装置を識別するための端末識別情報を生成する識別情報生成手段と、前記端末識別情報を出力する出力手段と、前記検出手段により前記候補として検出された提供装置のうち、前記出力手段により前記端末識別情報を出力するよりも前に前記検出手段により検出された装置以外の提供装置との間で前記通信パラメータ設定処理を実施する設定制御手段とを具備する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、通信パラメータの設定処理に際して、受信装置が提供装置に対して不必要な接続試行を行なうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態に係わる通信システムの全体構成の一例を示す図。
【図2】図1に示すステーション35のハードウェア構成の一例を示す図。
【図3】ステーション35の制御部12に実現される機能的な構成の一例を示す図。
【図4】図1に示す通信システムの処理の流れの一例を示すシーケンスチャート。
【図5】図1に示すステーション35の処理の流れの一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係わる実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
(実施形態1)
以下、本実施形態に係る通信装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、IEEE802.11シリーズに準拠した無線LANシステムを用いた例について説明するが、通信形態は必ずしもIEEE802.11準拠の無線LANには限られない。
【0017】
図1は、本発明の一実施の形態に係わる通信システムの全体構成の一例を示す図である。
【0018】
通信システムには、第1のアクセスポイント32と、第2のアクセスポイント33と、ステーション35とが配されている。
【0019】
第1のアクセスポイント32は、第1のネットワーク31を構築しており、当該ネットワークの管理装置として機能する。第2のアクセスポイント33は、第2のネットワーク34を構築しており、当該ネットワークの管理装置として機能する。ステーション35は、第1のネットワーク31及び第2のアクセスポイント33のいずれにも接続可能である。
【0020】
ここで、通信パラメータ設定処理に際しては、第1のアクセスポイント32又は第2のアクセスポイント33が通信パラメータの提供元の装置(提供装置)となり、ステーション35が当該パラメータを受信する装置(受信装置)となる。すなわち、第1のアクセスポイント32及び第2のアクセスポイント33は、WPSにおけるRegistrarに相当し、ステーション35は、WPSにおけるEnrolleeに相当する。
【0021】
第1のアクセスポイント32、第2のアクセスポイント33及びステーション35は、端末識別情報(PINコード)を用いた通信パラメータ設定処理に対応している。PINコードを用いた通信パラメータ設定処理では、アクセスポイント側に識別情報(PINコード)が予め設定されており、アクセスポイントは、その識別情報と一致するPINコードを持つステーションに通信パラメータの提供を行なう。
【0022】
なお、第1のアクセスポイント32が提供装置となった場合、ステーション35は、第1のネットワーク31に参加するために必要な情報を第1のアクセスポイント32に送信する。これにより、ステーション35は、第1のアクセスポイント32から通信パラメータの提供を受ける。同様に、第2のアクセスポイント33が提供装置となった場合、ステーション35は、第2のネットワーク34に参加するために必要な情報を第2のアクセスポイント33に送信し、第2のアクセスポイント33から通信パラメータの提供を受ける。
【0023】
以上が、通信システムの全体構成の一例についての説明である。なお、図1に示す通信システムの構成は、あくまで一例であり、このような構成に限定されない。例えば、第1のアクセスポイント32、第2のアクセスポイント33及びステーション35は、例えば、アクセスポイント機能とステーション機能との両方を持つデュアル端末として実現されても良い。
【0024】
次に、図2を用いて、図1に示すステーション35のハードウェア構成の一例について説明する。
【0025】
ステーション35は、そのハードウェア構成として、入力部11と、制御部12と、記憶部13と、無線部14と、出力部15と、アンテナ制御部17と、アンテナ18とを具備して構成される。
【0026】
制御部12は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等で実現され、各構成部の動作を統括制御する。制御部12は、他の装置との間で通信パラメータの設定制御も行なう。
【0027】
記憶部13は、例えば、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)、外部記憶装置(例えば、メモリカード)等で実現され、各種情報を記憶する。記憶部13には、例えば、例えば、制御プログラムや通信パラメータ等が記憶される。ステーション35における各種動作は、制御部12が、記憶部13に記憶された制御プログラムを実行することにより行なわれる。
【0028】
アンテナ制御部17は、アンテナ18を制御する。無線部14は、アンテナ制御部17及びアンテナ18を介して無線通信を行なう。無線部14では、例えば、IEEE802.11シリーズに準拠した無線LAN(Local Area Network)通信を行なう。
【0029】
出力部15は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)やLED(Light Emitting Diode)、スピーカ等で実現され、各種情報をユーザに出力する。すなわち、出力部15は、LCDやLEDのように視覚で認知可能な視覚情報の出力や、スピーカなどを用いた音声情報の出力を行なう。なお、出力部15は、視覚情報及び音声情報の少なくともいずれかを出力できれば良い。
【0030】
入力部11は、例えば、タッチパネルやボタン等で実現され、ユーザからの指示を装置内に入力する。入力部11には、通信パラメータ設定処理の開始のトリガーを指示する設定ボタン16が設けられる。例えば、ユーザにより設定ボタン16が操作されると、通信パラメータの(自動)設定処理が開始される。
【0031】
以上が、ステーション35のハードウェア構成の一例についての説明である。なお、ここでは、図示を用いた説明については省略するが、第1のアクセスポイント32及び第2のアクセスポイント33にも、コンピュータが内蔵されている。すなわち、これらアクセスポイント32及び33も、ステーション35と同様のハードウェア構成を有している。
【0032】
次に、図3を用いて、ステーション35の制御部12に実現される機能的な構成の一例について説明する。制御部12内における各構成は、例えば、CPUがROM等に記憶されたプログラムを読み出し実行することで実現される。なお、制御部12内における構成の一部又は全てが専用のハードウェア構成で実現されても勿論構わない。
【0033】
制御部12は、その機能的な構成として、通信パラメータ設定部21と、パケット受信部22と、パケット送信部23と、検索信号送信部24と、検索信号受信部25と、ネットワーク制御部26とを具備して構成される。ここでは、無線LAN通信を行なうために必要な通信パラメータの設定処理に係わる構成について重点的に説明する。なお、無線LAN通信を行なうために必要な通信パラメータとは、例えば、ネットワーク識別子(SSID)、暗号方式、暗号鍵、認証方式、認証鍵等である。なお、この例示は、あくまで一例であり、これ以外の情報が含まれても勿論構わない。
【0034】
パケット受信部22は、各種通信に係わるパケットの受信を制御する。パケット受信部22では、例えば、ビーコン(報知信号)の受信を制御する。パケット送信部23は、各種通信に係わるパケットの送信を制御する。パケット送信部23では、例えば、ビーコンの送信を制御する。なお、ビーコンには、送信元の装置の各種情報が付加される。
【0035】
検索信号送信部24は、検索信号(例えば、プローブリクエスト)の送信を制御する。なお、プローブリクエストは、所望のネットワークを検索するためのネットワーク検索信号としての機能を果たす。また、検索信号送信部24は、プローブリクエストを受信した場合には、その応答として、プローブレスポンスの送信の制御も行なう。
【0036】
検索信号受信部25は、他の装置から検索信号(例えば、プローブリクエスト)の受信を制御する。また、検索信号受信部25は、プローブレスポンスの受信も行なう。なお、検索信号やその応答信号には、送信元の装置に関する各種情報が付加される。
【0037】
ネットワーク制御部26は、ネットワーク接続を制御する。具体的には、無線LANネットワークへの接続処理などを行なう。
【0038】
通信パラメータ設定部21は、通信パラメータの(自動)設定処理を行なう。通信パラメータ設定部21には、通信パラメータ受信部41と、通信パラメータ設定制御部42と、提供候補検出部43と、通信パラメータ記憶処理部44と、端末識別情報生成部45とが具備される。
【0039】
端末識別情報生成部45は、自装置を識別するための端末識別情報(PINコード)を生成する。PINコードは、通信パラメータ設定処理の都度、ランダムな値が生成される。提供候補検出部43は、通信パラメータの提供元となる装置(提供装置)の候補を検出する。提供装置の検出は、検索信号送信部24及び検索信号受信部25による検索信号の送信と応答とに基づいて行なわれる。なお、提供装置の候補の検出は、例えば、パケット受信部22によるビーコンの受信に基づいて行なっても良い。提供装置から通信パラメータの提供を受ける場合、ステーション35は、当該提供装置に通信パラメータの提供の依頼を要求し、通信パラメータの提供を受ける。なお、以降の説明では通信パラメータの提供を受ける装置を受信装置と呼ぶ場合もある。
【0040】
通信パラメータ受信部41は、通信相手の装置から通信パラメータを受信する。通信パラメータ設定制御部42は、通信パラメータに係わる処理を統括制御する。通信パラメータ設定制御部42では、例えば、通信パラメータの設定処理における各種プロトコルを制御する。この他、通信パラメータ設定制御部42は、通信パラメータの設定処理を開始してからの経過時間が所定時間(通信パラメータ設定処理の制限時間)を越えたか否かの判定も行なう。当該所定時間を越えたと判定した場合には、通信パラメータ設定制御部42は、通信パラメータの設定処理を中止する。
【0041】
ここで、通信パラメータ設定制御部42には、判定部46と、除外リスト管理部47とが具備される。判定部46は、提供候補検出部43により検出された1又は複数の提供装置の候補のうち、所定条件に合致する提供装置を判定する。除外リスト管理部47は、提供装置の候補から除外する装置が登録される除外リストを記憶部13上で管理する。除外リスト管理部47は、例えば、除外リストに装置を登録したり、また、削除したりする。
【0042】
通信パラメータ記憶処理部44は、提供装置から提供を受けた通信パラメータを記憶部13に格納する。本実施形態においては、他の装置から通信パラメータの提供を受けた際に、当該通信パラメータを設定済パラメータとして記憶部13に記憶する。記憶部13に記憶された設定済パラメータは、当該設定済パラメータを用いて構成したネットワークでの通信が終了した時点で破棄されても良い。また、記憶部13に記憶された後、一定時間の経過後、装置の電源オフ時等に破棄されても良いし、明示的に削除を指示しない限り半永久的に保持されても良い。
【0043】
次に、図4を用いて、図1に示す通信システムにおける処理の流れの一例について説明する。ここでは、ステーション35が、端末識別情報(PINコード)を用いた方法によりアクセスポイントとの間で通信パラメータの設定処理を行なう場合の処理の流れの一例について説明する。
【0044】
まず、第1のアクセスポイント32において、端末識別情報(PINコード)が入力される(F101)。その後、第1のアクセスポイント32は、ビーコン又はプローブレスポンスを送信する(F102)。このとき、ビーコン又はプローブレスポンスには、通信パラメータの設定処理が開始済みであることを示す付加情報が含まれる。すなわち、PINコードを用いた通信パラメータ設定処理における提供装置においては、PINコードが設定済みであれば、上述した付加情報をビーコン又はプローブレスポンスに含めて送信する。
【0045】
なお、通信パラメータの設定処理が開始済みであることを示す情報とは、例えば、WPSにおいては、Selected Registrarフラグに「1」が設定されていることを示す。PINコードを用いた方式では、提供装置にPINコードが設定済みである場合のみ、Selected Registrarフラグが「1」となる。そのため、F102の処理は、PINコードが既に設定済みであるということを周囲の装置に報知している状態となる。
【0046】
ここで、ステーション35は、端末識別情報を用いた通信パラメータの設定処理を開始する(F103)。この処理が開始すると、ステーション35は、まず、ネットワークの検索処理を実施する(F104)。ネットワーク検索処理では、通信パラメータ設定処理を既に開始済みの装置(第1のアクセスポイント32)と、通信パラメータ設定処理を未だ開始していない装置(第2のアクセスポイント33)とが検出される。なお、このとき、検出されたアクセスポイントが通信パラメータ設定処理を開始しているか否かは、上述した付加情報に基づいて判定することができる。
【0047】
ここで、ステーション35におけるPINコードが可変の場合(すなわち、通信パラメータ設定処理毎に異なる値となる場合)、F104の処理が行なわれたタイミングでは、ステーション35においてPINコードが未生成であり且つ、未報知(未表示)である。そのため、第1のアクセスポイント32に設定済みのPINコードが、ステーション35のPINコードと一致する確率は極めて低い。なぜならば、WPSにおいては、PINコードが8ケタあり、且つ最後の1ケタがチェックサムであるので、偶然同一のPINコードになる可能性が10の7乗分の1であるためである。そのため、可変のPINコードを利用する場合、ステーション35は、F104のタイミングで検出された第1のアクセスポイント32(通信パラメータ設定処理を既に開始済みの装置)を通信パラメータ設定処理の提供装置の候補から除外する(F105)。
【0048】
次に、ステーション35は、F103の処理で起動された通信パラメータの設定処理を実行するため、PINコードを内部的に生成し、それを出力部15などのユーザインタフェースに出力する(F106)。
【0049】
ここで、ステーション35の出力部15に表示されたPINコードを参照したユーザは、第2のアクセスポイント33へ入力部(不図示)を介して入力する(F107)。PINコードが入力されたため、第2のアクセスポイント33は、通信パラメータ設定処理を起動する。そして、第2のアクセスポイント33は、第1のアクセスポイント32と同様に、通信パラメータの設定処理が開始済みであることを示す情報をビーコン又はプローブレスポンスに含めて送信する(F108)。
【0050】
ステーション35は、F105のPINコードの生成及び表示処理の後、再度、ネットワーク検索処理を実施する(F109)。このとき、ステーション35は、第1のアクセスポイント32と第2のアクセスポイント33とを検出する。ステーション35は、F104の処理のタイミングで検出された第1のアクセスポイント32を除外しているため、第2のアクセスポイント33との間で通信パラメータ設定処理を実施する(F110、F111)。すなわち、第2のアクセスポイント33から通信パラメータが提供され、ステーション35は、当該提供された通信パラメータを受信し、それを設定する。
【0051】
なお、ステーション35におけるPINコードが固定であれば、F104の処理のタイミングにおいても、ステーション35のPINコードと第1のアクセスポイント32のPINコードとが一致する可能性は十分にある。例えば、ユーザがステーション35の表面にシール等で貼付されたPINコードを参照して第1のアクセスポイント32に入力可能であるためである。この場合、F105の処理で第1のアクセスポイント32を除外する必要はなく、第1のアクセスポイント32も通信パラメータ設定処理の提供装置の候補となる。そのため、ステーション35におけるPINコードが固定であれば、第1のアクセスポイント32が通信パラメータの設定処理を開始済みであることを検出した時点(F104)で通信パラメータの設定処理を行なうようにしても良い。
【0052】
また、F109の処理において、ステーション35は、第1のアクセスポイント32及び第2のアクセスポイント33がともに通信パラメータの設定処理を開始済みであることを検出している。このとき、ステーション35は、第1のアクセスポイント32及び第2のアクセスポイント33との間で交互に通信パラメータの設定処理を試行しても良い。
【0053】
次に、図5を用いて、図1に示すステーション35における処理の流れの一例について説明する。
【0054】
ユーザによりPINコード方式による通信パラメータの設定処理の開始指示がなされると、この処理は開始する(S201でYES)。通信パラメータ設定処理の開始指示は、例えば、ステーション35に設けられた設定ボタン16がユーザにより押下されることによりなされる。
【0055】
この処理が開始すると、ステーション35は、まず、提供候補検出部43において、ネットワーク検索処理を実施する(S202)。この処理では、例えば、ステーション35は、他の装置から送信されてくるビーコンを受信する。また、例えば、ステーション35は、アクティブスキャンを実施し、プローブリクエストをブロードキャストした後、アクセスポイントからのプローブレスポンスを受信する。
【0056】
ここで、ステーション35は、提供候補検出部43において、通信パラメータの設定処理が開始済みであることを示す付加情報が含まれる信号(ビーコン、プローブリクエスト)を受信したか否かの判定を行なう。すなわち、通信パラメータの設定処理を開始済みのアクセスポイントを検出したか否かの判定を行なう(S203)。上述した通り、WPSにおいては、アクセスポイントで通信パラメータの設定処理が開始されていれば、ビーコン及びプローブレスポンスには、所定の付加情報が含まれている。このとき、プローブレスポンスにSelected Registrarが設定されており、その情報フラグが1であれば、ステーション35は、通信パラメータの設定処理を開始済みのアクセスポイントを検出したと判定する。なお、ここでは、WPSについての具体例を説明したが、これに限られず、アクセスポイントにおいて、通信パラメータの設定処理が開始済みであるか否かや、PINコードが設定済みであるか否かを判定できれば良く、どのような方法を用いても良い。
【0057】
判定の結果、該当のアクセスポイントを検出できなければ(S204でNO)、ステーション35は、端末識別情報生成部45において、PINコードを生成し、当該生成したPINコードを出力部15に表示等する(S207)。
【0058】
一方、該当のアクセスポイントを検出した場合(S204でYES)、ステーション35は、判定部46において、通信パラメータの設定処理の方式を判定する。ここで、該当のアクセスポイントがPIN方式以外の方式を実施していれば(S205でNO)、ステーション35は、上述したS207の処理を実施する。
【0059】
また、該当のアクセスポイントがPIN方式を実施していれば(S205でYES)、ステーション35は、除外リスト管理部47において、当該アクセスポイントを除外リストへ登録する(S206)。すなわち、当該アクセスポイントを通信パラメータ設定処理の候補から除外する。
【0060】
一方、S205の判定の結果、該当のアクセスポイントがPIN方式を実施していなければ(S205でYES)、ステーション35は、上述したS207の処理を実施する。
【0061】
PINコードを出力部15に表示等した後、ステーション35は、通信パラメータ設定制御部42において、S201の開始指示から所定時間が経過したか否かを判定する。なお、所定時間は、例えば、通信パラメータの設定処理におけるプロトコル仕様上の制限時間を示す。
【0062】
ここで、所定時間を経過していれば(S208でYES)、ステーション35は、この処理を終了する。このとき、ステーション35は、出力部15において、タイムアウトエラーの表示等を行なっても良い。
【0063】
一方、所定時間を経過していなければ(S208でNO)、ステーション35は、S202及びS203の処理と同様に、ネットワーク検索処理を実施し(S209)、上記条件に該当するアクセスポイントの検索を行なう(S210)。
【0064】
S210の処理の結果、該当のアクセスポイントを検出できれば(S211でYES)、ステーション35は、S205の処理と同様に、該当のアクセスポイントがPIN方式を実施しているか否かを判定する。PIN方式を実施していれば(S212でYES)、ステーション35は更に、該当のアクセスポイントが除外リストに登録されているか否かを判定する。
【0065】
判定の結果、除外リストに登録されていなければ(S213でYES)、ステーション35は、通信パラメータ設定制御部42において、当該アクセスポイントとの間で通信パラメータの設定処理を実施する(S214)。すなわち、除外リストに登録された装置以外のアクセスポイントから通信パラメータを受信し、それを設定した後、この処理を終了する。
【0066】
なお、S210の処理の結果、該当のアクセスポイントが検出できなかった場合や(S211でNO)、該当のアクセスポイントがPIN方式以外の方式を実施していた場合には(S212でNO)、ステーション35は、再度、S208の処理に戻る。また、該当のアクセスポイントが除外リストに登録されていた場合にも(S213でNO)、ステーション35は、再度、S208の処理に戻る。
【0067】
以上が、ステーション35における処理の流れの一例についての説明である。なお、S206の処理において、除外リストに登録されたアクセスポイントは、通信パラメータ設定処理が正常終了したタイミング、又は改めて通信パラメータ設定処理を開始するタイミング等で除外リストから削除すれば良い。その他、除外リストに登録されているアクセスポイントのSelected Registrarフラグの値が「1」以外に遷移したタイミングで削除しても良い。
【0068】
また、上述した説明では、S205の処理で除外リストにアクセスポイントを登録しているが、この処理は、ステーション35のPINコードが可変である場合にのみ実施すれば良い。すなわち、PINコードが固定である場合は、除外リストへの登録は行なわない。
【0069】
以上説明したように本実施形態によれば、PINコードの表示前にPIN方式による通信パラメータ設定処理を開始済みであるアクセスポイントに対する通信パラメータ設定処理の試行を抑制できる。そのため、通信パラメータ設定処理が不必要に行なわれることがなくなり、例えば、無駄なネットワークトラフィックを低減できる。
【0070】
以上が本発明の代表的な実施形態の例であるが、本発明は、上記及び図面に示す実施形態に限定することなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施できるものである。
【0071】
例えば、上述した説明では、IEEE802.11準拠の無線LAN(無線LANネットワーク)を利用する場合を例に挙げて説明したが、これに限られない。例えば、ワイヤレスUSB(Universal Serial Bus)、MBOA、Bluetooth(登録商標)、UWB、ZigBee等の他の無線媒体を用いても良い。また更に、有線LAN等の有線を利用した通信媒体を用いても良い。なお、MBOA(Multi Band OFDM Alliance)やUWB(Ultra Wide Band)には、ワイヤレスUSB、ワイヤレス1394、WINETなどが含まれる。
【0072】
(その他の実施形態)
本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定された識別情報を用いて当該識別情報を持つ他の装置との間で通信パラメータ設定処理を実施して当該他の装置に通信パラメータを提供する提供装置に接続可能な通信装置であって、
識別情報を用いた通信パラメータ設定処理の開始が指示され、且つ当該識別情報が既に設定されている1又は複数の提供装置を前記通信パラメータ設定処理の候補として検出する検出手段と、
自装置を識別するための端末識別情報を生成する識別情報生成手段と、
前記端末識別情報を出力する出力手段と、
前記検出手段により前記候補として検出された提供装置のうち、前記出力手段により前記端末識別情報を出力するよりも前に前記検出手段により検出された装置以外の提供装置との間で前記通信パラメータ設定処理を実施する設定制御手段と
を具備することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記提供装置は、
前記識別情報を用いた通信パラメータ設定処理の開始が指示された場合に、識別情報が既に設定されているときには、そのことを示す付加情報を含めた信号を送信し、
前記検出手段は、
前記信号に含まれる前記付加情報に基づいて前記通信パラメータ設定処理の候補を検出する
ことを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項3】
前記信号は、
プローブリクエストの送信の応答として前記提供装置から受信するプローブレスポンス、又はビーコンである
ことを特徴とする請求項2記載の通信装置。
【請求項4】
前記識別情報生成手段は、
前記通信パラメータ設定処理が行なわれる都度、前記端末識別情報をランダムに生成する
ことを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項5】
設定された識別情報を用いて当該識別情報を持つ他の装置との間で通信パラメータ設定処理を実施して当該他の装置に通信パラメータを提供する提供装置と、該提供装置との間で前記通信パラメータ設定処理を実施して前記通信パラメータを受信する受信装置とを含む通信システムであって、
前記提供装置は、
前記識別情報を用いた通信パラメータ設定処理の開始が指示された場合に、識別情報が既に設定されているときには、そのことを示す付加情報を含めた信号を送信し、
前記受信装置は、
前記信号の受信に基づいて、識別情報を用いた通信パラメータ設定処理の開始が指示され、且つ当該識別情報が既に設定されている1又は複数の提供装置を前記通信パラメータ設定処理の候補として検出する検出手段と、
自装置を識別するための端末識別情報を生成する識別情報生成手段と、
前記端末識別情報を出力する出力手段と、
前記検出手段により前記候補として検出された提供装置のうち、前記出力手段により前記端末識別情報を出力するよりも前に前記検出手段により検出された装置以外の提供装置との間で前記通信パラメータ設定処理を実施する設定制御手段と
を具備することを特徴とする通信システム。
【請求項6】
設定された識別情報を用いて当該識別情報を持つ他の装置との間で通信パラメータ設定処理を実施して当該他の装置に通信パラメータを提供する提供装置に接続可能な通信装置の処理方法であって、
検出手段が、識別情報を用いた通信パラメータ設定処理の開始が指示され、且つ当該識別情報が既に設定されている1又は複数の提供装置を前記通信パラメータ設定処理の候補として検出する工程と、
識別情報生成手段が、自装置を識別するための端末識別情報を生成する工程と、
出力手段が、前記端末識別情報を出力する工程と、
設定制御手段が、前記検出手段により前記候補として検出された提供装置のうち、前記出力手段により前記端末識別情報を出力するよりも前に前記検出手段により検出された装置以外の提供装置との間で前記通信パラメータ設定処理を実施する工程と
を含むことを特徴とする処理方法。
【請求項7】
設定された識別情報を用いて当該識別情報を持つ他の装置との間で通信パラメータ設定処理を実施して当該他の装置に通信パラメータを提供する提供装置に接続可能な通信装置に内蔵されたコンピュータを、
識別情報を用いた通信パラメータ設定処理の開始が指示され、且つ当該識別情報が既に設定されている1又は複数の提供装置を前記通信パラメータ設定処理の候補として検出する検出手段、
自装置を識別するための端末識別情報を生成する識別情報生成手段、
前記端末識別情報を出力する出力手段、
前記検出手段により前記候補として検出された提供装置のうち、前記出力手段により前記端末識別情報を出力するよりも前に前記検出手段により検出された装置以外の提供装置との間で前記通信パラメータ設定処理を実施する設定制御手段
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−227563(P2012−227563A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90405(P2011−90405)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】