説明

通信装置、データ通信方法、データ通信プログラムおよびデータ通信プログラムを記録した記録媒体

【課題】V.34勧告に準拠した通信手順のエラーによる終了を低減する。
【解決手段】V.34勧告に基づく変調・復調を行う変復調部20と、INFO0aシーケンスに続くトーンA信号をトーンA位相反転信号と誤検出し、応答モデムが当該モデムからの最初のINFO0cシーケンスを正しく受信できない場合に、応答モデムからのINFO0aシーケンスが再送されてリカバリ手順に移ったことを判別し、リカバリ手順での応答モデムからのINFOhシーケンスが受信しなくとも、INFOhシーケンス受信動作中に、INFO0aシーケンスを受信したら、リカバリ手順の中止を変復調手段に指示する制御部10と、リカバリ手順を中止した後、制御手段からの指示に基づいてV.34勧告に準拠した通信手順をフェーズ2の所定位置に戻すCODEC/DAA30と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、データ通信方法、データ通信プログラムおよびデータ通信プログラムを記録した記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
ファクシミリの伝送手順は、ITU(International Telecommunication Union)によってT.30(一般交換電話網における文書ファクシミリ伝送のための手順)という勧告で規定されている。V.34は1994年に制定された33.6kbpsまでの高速モデム勧告(ITUシリーズ)であり、これをファクシミリに使用する手順はT.30ではANNEXFで定められている。
【0003】
T.30でV.34をファクシミリに使用する場合には、エラー訂正手順が必須と定められており、エラー訂正手順は勧告T.4に規定されている。V.34規格による半二重ファクシミリ通信では、フェーズ1で通信規格の決定を行い、フェーズ2でラインプロービングによりシンボルレート・キャリア周波数・プリエンファシスフィルタの決定を行い、フェーズ3でプライマリチャネルのトレーニングにより等化器のトレーニングを行い、受信側でトレーニングの結果からプライマリチャネルの信号速度の決定を行う。それ以降は、制御チャネルとプライマリチャネルが交互に繰り返される。
【0004】
制御チャネルには、送受信に関連する制御情報(線密度等の画像関連情報や信号速度、また画像が正しく受信されたか等)を含み、プライマリチャネルは再同期のための信号S,Sbar(位相反転),PP(等化器のトレーニング),B1(バイナリ信号)と画情報を含む。エラー訂正機能を使用する場合の画情報のデータフォーマットは、勧告T.4で規定されている。画情報は256もしくは64オクテットからなるフレームを含み、フレーム数は最大256個までを1回のプライマリチャネルで送信することができる。
【0005】
ところで、上記のフェーズ2では、送信側の起呼モデムと受信側の応答モデムとの間で、互いにINFO0cとINFO0aのシーケンスを送り合い、送信側からトーンB、受信側からトーンA、Aバー(位相反転信号)が送信され、送信側では40msecの間隔を経てBバー(位相反転信号)、L1,L2(プロービングトーン)が送られ、受信側からのトーンAとINFOhに対して、送信側からトーンBが送られ、これにより画情報通信速度を決定するための回線特性を測定することになっている。
【0006】
このフェーズ2のリカバリについては、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1に記載の技術は、起呼モデムあるいは応答モデムからの2度目のトーンBあるいは2度目のトーンAが所定時間(2秒)に正常に受信できなかった場合、さらに一定時間内にトーンBまたはトーンAが検出されると、V.34勧告に準拠した通信手順をフェーズ2に戻すものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように電話回線を用いたデータ通信手順はITUによって定められており、V.34勧告において33.6kbpsまでのデータ信号速度で動作するモデムが規定されている。V.34勧告ではデータ通信の準備としてフェーズ1〜フェーズ4のトレーニングを行う。また、半二重動作におけるフェーズ2では、起呼モデム、応答モデムの双方がモデムの能力(サポートしているシンボルレート、キャリア周波数、電力抑制機能の有無)をINFO0c/INFO0aで交換し、ラインプロービング(L1/L2)によって回線状況を解析し、シンボルレート・キャリア周波数・プリエンファシス係数の選択を行い、その結果を再びINFOhとして起呼モデムに送信する。なお、全てのINFOシーケンスは600bpsの2進DPSK(差動位相偏移)変調を用いて送出される。
【0008】
ここで、INFO0c/INFO0a信号はフェーズ2の先頭から送出されるため、回線劣化が激しい場合にはINFOシーケンスが正しく受信できないという問題がある。また、IP網を利用した通信においては、パケットロス等の障害により、受信データが欠落する場合があるという問題がある。なお、上記特許文献1に記載の技術は、トーン検出に関するリカバリであり、当該INFO0cとINFO0aの検出に関するリカバリ部分についての課題を解決するものではなかった。
【0009】
V.34勧告では、上記のような問題に備え、リカバリ手順が規定されており、INFO0c/INFO0aシーケンスが取れない場合には、再送が行われるようになっている。しかしながら、リカバリ手順によるINFOシーケンスの再送を行った場合に、先に進めず通信断(エラー終了)となる場合があった。
【0010】
そこで本発明は、パケットロス等の障害が発生して通信装置(起呼側通信装置)が応答側通信装置のトーンA信号をトーンA位相反転信号と誤認識し、また、応答側通信装置がINFO0cを正しく受信できずにリカバリ手順に移った場合に、通信装置がINFOhシーケンス受信待ち、応答側通信装置がINFO0cシーケンス受信待ちの状態が続いてリカバリ手順から抜けられなくなって通信断となることとのない通信装置、データ通信方法、データ通信プログラムおよびデータ通信プログラムを記録した記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる目的を達成するため、請求項1に記載の通信装置は、V.34勧告に準拠した半二重データ通信を実施する通信装置であって、V.34勧告に基づく変調・復調を行う変復調手段と、INFO0aシーケンスに続くトーンA信号をトーンA位相反転信号と誤検出し、応答側通信装置が当該通信装置からの最初のINFO0cシーケンスを正しく受信できない場合に、応答側通信装置からのINFO0aシーケンスが再送されてリカバリ手順に移ったことを判別し、リカバリ手順での応答側通信装置からのINFOhシーケンスが受信しなくとも、INFOhシーケンス受信動作中に、INFO0aシーケンスを受信したら、リカバリ手順の中止を変復調手段に指示する制御手段と、リカバリ手順を中止した後、制御手段からの指示に基づいてV.34勧告に準拠した通信手順をフェーズ2の所定位置に戻すCODEC/DAAと、を備えたものである。
【0012】
また、請求項2に記載のデータ通信方法は、V.34勧告に準拠した通信装置による半二重データ通信方法であって、起呼側通信装置がINFO0aシーケンスに続くトーンA信号をトーンA位相反転信号と誤検出し、応答側通信装置が起呼側通信装置からの最初のINFO0cシーケンスが正しく受信できない場合に、起呼側通信装置は、応答側通信装置からINFO0aシーケンスが再送されてリカバリ手順に移ったことを判別し、リカバリ手順での応答側通信装置からのINFOhシーケンスが受信できなくても、INFOhシーケンス受信動作中に、INFO0aシーケンスを受信したら、リカバリ手順を中止し、V.34勧告に準拠した通信手順をフェーズ2の所定の位置に戻す処理を行うようにしている。
【0013】
また、請求項3に記載のデータ通信プログラムは、V.34勧告に準拠した半二重データ通信を実施する通信装置に処理を実行させるデータ通信プログラムであって、INFO0aシーケンスに続くトーンA信号をトーンA位相反転信号と誤検出し、応答側通信装置が当該通信装置からの最初のINFO0cシーケンスを正しく受信できない場合に、応答側通信装置からのINFO0aシーケンスが再送されてリカバリ手順に移ったことを判別し、リカバリ手順での応答側通信装置からのINFOhシーケンスが受信しなくとも、INFOhシーケンス受信動作中に、INFO0aシーケンスを受信したら、リカバリ手順の中止し、V.34勧告に準拠した通信手順をフェーズ2の所定の位置に戻させる処理を実行させるものである。
【0014】
また、請求項4に記載のデータ通信プログラムを記録した記録媒体は、請求項3に記載のデータ通信プログラムを記録したものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、適切な通信手順のリカバリ手順を行うことができ、V.34勧告に準拠した通信手順におけるエラーによる終了を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る通信装置の一実施形態であるモデムの構成図である。
【図2】V.34勧告で規定される通信シーケンスチャートの一例である。
【図3】パケットロスの発生により受信データが欠落する例を説明する説明図である。
【図4】データ通信処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る構成を図1から図4に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0018】
(モデム構成)
図1は、本発明に係る通信装置の一実施形態であるモデムの構成図である。本実施形態に係るモデムは、V.34勧告に準拠した半二重データ通信を実施するモデム(起呼モデム)であって、V.34勧告に基づく変調・復調を行う変復調手段(変復調部20)と、起呼モデムがINFO0aシーケンスに続くトーンA信号をトーンA位相反転信号と誤検出し、応答モデムが起呼モデムからの最初のINFO0cシーケンスを正しく受信できない場合に、応答モデムからのINFO0aシーケンスが再送されてリカバリ手順に移ったことを判別し、リカバリ手順での応答モデムからのINFOhシーケンスが受信しなくとも、INFOhシーケンス受信動作中に、INFO0aシーケンスを受信したら、リカバリ手順の中止を変復調手段に指示する制御手段(制御部10)と、リカバリ手順を中止した後、制御手段からの指示に基づいてV.34勧告に準拠した通信手順をフェーズ2の所定位置に戻すCODEC/DAA(CODEC/DAA30)と、を備えたものである。
【0019】
図1において、制御部10はホスト(パーソナルコンピュータ)からのコマンド解釈、変復調部20に対してモデム動作を行うための指示(ダイヤリング指示、応答開始指示など)、送信データ・受信データのホスト(パーソナルコンピュータ)およびモデムとのやりとり、データ圧縮・伸長、エラー訂正などを行う。
【0020】
制御部10には、条件判断やデータのビット処理が多いため、マイクロコントローラを用いることが好ましい。上記各処理は、プログラム(本発明に係るデータ通信プログラムを含む)として制御部のROM12に格納されており、CPU11で実行される。また、RAM13には、制御部10で使用する各種データが格納されている。
【0021】
変復調部20は、制御部10からの要求を解釈し、V.34規格に基づく変調・復調を行う。すなわち、送信データをD/Aコンバータへの入力となるサンプル点に変調してCODEC/DAA30に送り、回線に送出する一方、回線から入力した信号はCODEC/DAA30によりA/D変換され、変換されたデジタルデータが変復調部20に入力されたならば、このデジタルデータを受信データに復調する処理を行う。
【0022】
変復調部20には複雑なデジタル信号処理が必要であるため、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)21が採用されることが一般的である。モデムの各フェーズのシーケンス制御、変復調などのプログラムはROM22に格納され、DSP21で実行される。RAM23には、DSP21で実行される際に使用されるデータが格納される。CODEC/DAA30は、電話回線を流れるのはアナログ信号であるため、A/D,D/A変換を行うコーデック、および回線とのインターフェースであるDAAで構成される。
【0023】
(V.34勧告の規定)
図2は、V.34勧告(以下、単に、勧告とも記す)で規定される標準的な通信シーケンスチャートである。先ず、フェーズ1では、送信側からのCNG(コーリングトーン)(図示省略)に対して受信側からANSam(応答トーン)を返送し、送信側からCM(起呼メニュー信号)に対して、受信側からJM(共通メニュー信号)が返送される。これにより、起呼および着呼側の利用可能な変調モードが選択される。
【0024】
以下に、半2重モデムのフェーズ2の送受信信号についてV.34勧告による規定を説明する。
(12.2.1.1) 起呼モデムのエラーフリー動作
(12.2.1.1.1) フェーズ1を終わる75±5msの無音期間中、起呼モデムは受信器を設定してINFO0aを受信してトーンAを検出する。75±5msの無音期間が過ぎると、起呼モデムはビット28が0に設定された状態でINFO0cを送りその後トーンBを送る。
(12.2.1.1.2) INFO0aを受信すると、モデムは受信器を設定してトーンAおよびその後のトーンA位相反転を検出する。
(12.2.1.1.3) トーンA位相反転を検出すると、起呼モデムは40±10ms間待ってからトーンB位相反転を送信する。トーンBは位相反転後さらに10ms間送信され、モデムは 160ms間信号L1を送信する。次に、モデムは信号L2を送信して、受話器を設定し、トーンAを検出する。
(12.2.1.1.4) トーンAを検出すると、起呼モデムはトーンBを送信し受信器を設定してINFOhを受信する。INFOhを受信すると、モデムは(12.3.1)項に従って動作する。
【0025】
(12.2.1.2) 応答モデムのエラーフリー動作
(12.2.1.2.1) フェーズ1を終了する75±5msの無音期間中、応答モデムは受信器を設定してINFO0cを受信してトーンBを検出する。75±5msの無音期間中、応答モデムはビット28が0に設定された状態でINFO0aを送ってからトーンAを送る。
(12.2.1.2.2) INFO0cを受信すると、モデムは受信器を設定してトーンBを検出してINFO0cを受信する。
(12.2.1.2.3) トーンBが検出され、トーンAが少なくとも50ms間送出されると、応答モデムはトーンA位相反転を送信する。トーンAは位相反転後さらに10ms間送信され、モデムは無音を送信する。次に、モデムは受信器を設定してトーンB位相反転を検出する。
(12.2.1.2.4) トーンB位相反転を検出すると、応答モデムはプロービング信号L1およびL2を受信するように設定される。
(12.2.1.2.5) 応答モデムは、その160ms期間中に信号L1を受信する。次に、応答モデムは500msを超えない期間L2を受信することができる。その後、応答モデムはトーンAを送信してから受信器を設定してトーンBを検出する。
(12.2.1.2.6) トーンBが検出されると、応答モデムは25ms間トーンAを続けて送信してからINFOh を送る。INFOh を送った後で、モデムは(12.3.2)項に従って動作する。
【0026】
(12.2.1.3) 起呼モデムのリカバリメカニズム
(12.2.1.3.1) (12.2.1.2)項または(12.1.1.3)項で、INFO0aを正しく受信する前にトーンAが検出された場合、または繰返しINFO0aが受信された場合、モデムは繰り返してINFO0cを送る。ビット28が1に設定された状態で起呼モデムがINFO0aを受信すると、起呼モデムはトーンA(トーンA内の位相反転が続く)を検出するように自動的に設定して、現在のINFO0cシーケンスの送信を完了し、トーンBを送信する。代りに、起呼モデムがINFO0aを正しく受信してトーンAを検出した場合、トーンA内の位相反転を検出するように自動的に設定して現在のINFO0cシーケンスの送信を完了して、トーンBを送信する。いずれの場合でも、起呼モデムは(12.2.1.1.3)項に従って動作する。
(12.2.1.3.2) (12.2.1.1.3)項で、トーンA位相反転が検出されない場合、起呼モデムはトーンBを続けて送信して応答モデムが別の位相反転を送信するのを待つ。
(12.2.1.3.3) (12.2.1.1.4)項で、トーンB位相反転の送信から2700ms以内にトーンAが検出されない場合、起呼モデムはトーンBを送信し、受話器を設定してトーンA(トーンA内の位相反転が続く)を検出する。次に、モデムは(12.2.1.1.3)項に従って動作する。
(12.2.1.3.4) (12.2.1.1.4)項で、(12.2.1.1.4)項のトーンBの送信から2000ms以内にINFOhが検出されない場合、起呼モデムはトーンBを送り続け、受話器を設定してトーンAを検出する。トーンAを検出すると、起呼モデムは(12.2.1.1.4)項に従って動作する。
【0027】
(12.2.1.4) 応答モデムのリカバリメカニズム
(12.2.1.4.1) (12.2.1.2.2)項または(12.2.1.2.3)項で、INFO0cを正しく受信する前にトーンBが検出されるか、または繰返しINFO0cが受信された場合、モデムは繰り返してINFO0aを送る。ビット28が1に設定された状態で応答モデムがINFO0cを受信すると、応答モデムはトーンBを検出するように自動的に設定して現在のINFO0aシーケンスの送信を完了して、トーンAを送信する。代りとして、応答モデムがINFO0cを正しく受信してトーンBを検出した場合、現在のINFO0aシーケンスの送信を完了してトーンAを送信する。いずれの場合でも、応答モデムは(12.2.1.2.3)項に従って動作する。
(12.2.1.4.2) (12.2.1.2.4)項で、(12.2.1.2.3)項のトーンA位相反転の送信から2000ms以内にトーンB位相反転が検出されない場合、応答モデムは受話器を設定してトーンBを検出する。トーンBを検出すると、応答モデムはトーンAを送信してから(12.2.1.2.3)項に従って動作する。
(12.2.1.4.3) (12.2.1.2.6)項で、(12.2.1.2.5)項のトーンAの送信開始から2000ms以内にトーンBが検出されない場合、応答モデムはINFOhを送ってから半二重化スタートアップのフェーズ3を実行する。
【0028】
(データ通信処理)
次に、リカバリが発生してストップしてしまう状況と、その対策について説明する。IP網を利用した通信において、図3に示すように、パケットロスが発生(図中の矢印部分)すると、受信データが欠落することがある。また、回線状態が悪く、位相ヒットが発生した場合もデータが欠落することがある。
【0029】
この場合、応答側モデムにおいて、INFO0aに続くトーンAが送信されているときにパケットロスが発生すると、トーンA信号をトーンA位相反転信号と誤検出することがある。このとき、起呼側モデムは、INFO0aシーケンスに続くトーンA信号、トーンA位相反転信号を受信するので、勧告に従って、L2送信を送信する手順まで進み、さらにトーンA信号、INFOhシーケンスを受信しようとする。
【0030】
また、応答側モデムは、最初のINFO0cを正しく受信できない可能性があるので、リカバリ手順(12.2.1.4.1)項に従ってINFO0aの再送を行う。
【0031】
このため、起呼モデムは、L2を送信した後のトーンAに続くINFOhシーケンスを受信することができないので、リカバリ手順(12.2.1.3.4)項に従ってトーンB送信に移行する。
【0032】
応答側モデムは、このリカバリ手順中、INFO0aの再送を行い、INFO0cを受信しようとするが、起呼側モデムからINFO0cシーケンスが送信されない(トーンB送信を行う)ので、INFO0aの再送を繰り返す。
【0033】
また、起呼側モデムは、トーンBを送信し、トーンAを検出し、INFOhシーケンスを検出しようとするが、応答側モデムからINFOhシーケンスが送信されないので、リカバリ手順(12.2.1.3.4)項に従ってトーンB送信に移行する。
【0034】
このように、起呼側モデム、応答側モデムとも上記の状態から抜け出せない状態となる。しかしながら、勧告には、上記現象を回避するリカバリ手順については、記載がされていない。このため、本実施形態に係るモデムは、パケットロス等の障害により、起呼モデムが、応答モデムのINO0aシーケンスに続くトーンA信号をトーンA位相反転信号と誤認識し、また応答モデムが起呼モデムからの最初のINFO0cシーケンスを正しく受信できないために、INFO0aシーケンスが再送されてリカバリ手順に入った場合、起呼モデム側のリカバリ手順でINFOhシーケンスが受信できなくても、リカバリ手順での応答モデムからのINFOhシーケンス受信動作中にINFO0aシーケンスを受信すれば、フェーズ2の前半(INFOc送信)に戻すようにしている。
【0035】
すなわち、起呼側モデムにおけるINFOhシーケンスのリカバリ手順中に、INFO0aシーケンスが受信された場合には、リカバリ手順を抜け、フェーズ2の先頭に戻り、INFO0cを送信するものである。
【0036】
このようにすることにより、以下に詳細に述べるように、パケットロス等の障害が発生して起呼モデムが応答モデム側のトーンA信号をトーンA位相反転信号と誤認識し、また、応答モデムがINFO0cを正しく受信できずにリカバリ手順に移った場合に、起呼側モデムがINFOhシーケンス受信待ち、応答側モデムがINFO0c受信待ちの状態が続く場合でも、再度、起呼モデムからフェーズ2手順を最初から行うことができ、リカバリ確度を向上させ、通信断になる可能性を極力少なくすることができる。
【0037】
本実施形態に係るモデムが実行するデータ通信処理(本発明に係るデータ通信方法)について、図4に示すフローチャートを参照して説明する。図4に示すフローチャートは、上記のリカバリ手順を備えた起呼モデムのフェーズ2送信部の動作フローである。
【0038】
先ず、起呼側モデムの送信部は、INFO0cを送信し(S101)、続いてトーンBを送信する(S102)。ここで、起呼モデムはINFO0aが検出されず、トーンAのみを検出した場合(S103:Y)は、INFO0cを再送信した後(S111)、INFO0a(ビット28=1)を正しく受信できたか、あるいはINFO0aに続いてトーンAを受信できたかを判別し(S112)、受信できたならば(S112:Y)、トーンBを送信する(S113)。
【0039】
一方、トーンAのみの検出でなかった場合(S103:N)は、INFO0aに続いてトーンAが検出されたか否かを判別し(S104)、検出されたのであれば(S104:Y)、正常に検出できたことになる(S105へ移る)。また、INFO0aとトーンAの順番で検出できないとき(S104:N)は、S102に戻って、トーンBを送信する。
【0040】
次に、トーンA位相反転が検出されたか否かを判別する(S105)。検出できたとき(S105:Y)は、トーンB位相反転を送信し(S106)、続いてプロービング回線信号L1、L2を送信する(S107)。
【0041】
一方、トーンA位相反転を検出できないとき(S105:N)は、トーンBを続けて送信し(S113)、別の位相反転を検出するか否かを判別する(S114)。トーンA位相反転を検出できないとき(S114:N)は、再びS113に戻りトーンBを送信する。また、検出できたとき(S114:Y)は、トーンB位相反転を送信し(S106)、続いてプロービング回線信号L1,L2を送信する(S107)。
【0042】
次に、トーンAが検出されたか否かを判別する(S108)。検出できたとき(S108:Y)は、トーンBを送信する(S109)。一方、トーンAを検出できないとき(S108:N)は、トーンBを送信し(S117)、トーンA、続いてトーンA位相反転が検出されるか否かを判別する(S118)。検出できたとき(S118:Y)は、トーンB位相反転を送信し(S106)、検出できないとき(S118:N)は、トーンBを送信する(S113)。
【0043】
次に、INFOhが検出されたか否かを判別する(S110)。検出できたとき(S110:Y)は、フェーズ3へ移行する。一方、INFOhを検出できないとき(S110:N)は、INFO0aが検出されるか否かを判別し(S115)、検出されたとき(S115:Y)は、INFO0cを再送信する(S111)。また、INFO0aが検出されない場合(S115:N)は、再度、トーンBを送信する(S116)。このようにすることにより、リカバリ確度を向上させ、通信断になる可能性を極力少なくすることができる。
【0044】
以上説明した起呼側モデムのフェーズ2送信部による処理フロー(データ通信方法)は、プログラム(データ通信プログラム)で実行することもできる。当該データ通信プログラムは、例えばインターネット上からのダウンロードによって提供し、通信装置にインストールすることで、上記の処理を実行させることができる。
【0045】
また、データ通信プログラムをモデムで実行可能なプログラムに変換し、変換されたプログラムをCD−ROM等の記録媒体に格納しておけば、ファクシミリ装置またはモデム等の通信装置に記録媒体を装着し、プログラムをインストールすることで、上記の処理を実行させることができる。
【0046】
尚、上述の実施形態は本発明の好適な実施の例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0047】
10 制御部
11 CPU
12 ROM
13 RAM
20 変復調部
21 DSP
22 ROM
23 RAM
30 CODEC/DAA
【先行技術文献】
【特許文献】
【0048】
【特許文献1】特開平11‐150580号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
V.34勧告に準拠した半二重データ通信を実施する通信装置であって、
V.34勧告に基づく変調・復調を行う変復調手段と、
INFO0aシーケンスに続くトーンA信号をトーンA位相反転信号と誤検出し、応答側通信装置が当該通信装置からの最初のINFO0cシーケンスを正しく受信できない場合に、
前記応答側通信装置からのINFO0aシーケンスが再送されてリカバリ手順に移ったことを判別し、前記リカバリ手順での前記応答側通信装置からのINFOhシーケンスが受信しなくとも、INFOhシーケンス受信動作中に、INFO0aシーケンスを受信したら、前記リカバリ手順の中止を前記変復調手段に指示する制御手段と、
前記リカバリ手順を中止した後、前記制御手段からの指示に基づいてV.34勧告に準拠した通信手順をフェーズ2の所定位置に戻すCODEC/DAAと、
を備えたことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
V.34勧告に準拠した通信装置による半二重データ通信方法であって、
起呼側通信装置がINFO0aシーケンスに続くトーンA信号をトーンA位相反転信号と誤検出し、応答側通信装置が前記起呼側通信装置からの最初のINFO0cシーケンスが正しく受信できない場合に、
前記起呼側通信装置は、前記応答側通信装置からINFO0aシーケンスが再送されてリカバリ手順に移ったことを判別し、前記リカバリ手順での前記応答側通信装置からのINFOhシーケンスが受信できなくても、INFOhシーケンス受信動作中に、INFO0aシーケンスを受信したら、前記リカバリ手順を中止し、V.34勧告に準拠した通信手順をフェーズ2の所定の位置に戻す処理
を行うようにしたことを特徴とするデータ通信方法。
【請求項3】
V.34勧告に準拠した半二重データ通信を実施する通信装置に処理を実行させるデータ通信プログラムであって、
INFO0aシーケンスに続くトーンA信号をトーンA位相反転信号と誤検出し、応答側通信装置が当該通信装置からの最初のINFO0cシーケンスを正しく受信できない場合に、
前記応答側通信装置からのINFO0aシーケンスが再送されてリカバリ手順に移ったことを判別し、前記リカバリ手順での前記応答側通信装置からのINFOhシーケンスが受信しなくとも、INFOhシーケンス受信動作中に、INFO0aシーケンスを受信したら、前記リカバリ手順の中止し、V.34勧告に準拠した通信手順をフェーズ2の所定の位置に戻させる処理
を実行させることを特徴とするデータ通信プログラム。
【請求項4】
請求項3に記載のデータ通信プログラムを記録した記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−10165(P2012−10165A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145224(P2010−145224)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】