通信装置および半導体装置
【課題】外部機器との距離の変化に応じて駆動電力が変化した場合でも信号を正常に無線送信する。
【解決手段】通信装置1は、外部のリーダ/ライタからアンテナ20を通じて電力の供給を受けて駆動する。強度検出部11は、アンテナ20を通じて受信された受信波の強度を検出する。送信信号生成部12は、リーダ/ライタに送信する送信データと基準パルスとを重畳した送信信号パルスを生成する。変調部13は、送信信号生成部12から出力された送信信号パルスに応じて負荷変調を行う。これにより、送信データに応じた無線信号がリーダ/ライタに送信される。パルス制御部14は、送信信号パルスに現れる基準パルスのデューティ比を、受信波の強度が弱いほどHレベルの期間を短くするように変化させて、負荷変調後の変調信号波形の形状を制御する。
【解決手段】通信装置1は、外部のリーダ/ライタからアンテナ20を通じて電力の供給を受けて駆動する。強度検出部11は、アンテナ20を通じて受信された受信波の強度を検出する。送信信号生成部12は、リーダ/ライタに送信する送信データと基準パルスとを重畳した送信信号パルスを生成する。変調部13は、送信信号生成部12から出力された送信信号パルスに応じて負荷変調を行う。これにより、送信データに応じた無線信号がリーダ/ライタに送信される。パルス制御部14は、送信信号パルスに現れる基準パルスのデューティ比を、受信波の強度が弱いほどHレベルの期間を短くするように変化させて、負荷変調後の変調信号波形の形状を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナと、このアンテナを通じて外部機器から電力の供給を受けて情報を送受信する半導体装置とを備えた通信装置、およびその半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触で外部との情報の受け渡しが可能なIC(Integrated Circuit)チップが注目されている。例えば、このようなICチップにIDを記憶させ、商品などの識別や管理に利用することが考えられている。このような用途の非接触ICチップは、RFID(Radio Frequency ID)タグなどと呼ばれる。
【0003】
非接触型のICチップは、一般的に、リーダ/ライタからの電波あるいは電磁波を基に駆動電力を発生し、読み取り器と無線通信して、ICチップのメモリ内に記憶されたIDなどの情報をリーダ/ライタに送信する。このため、リーダ/ライタとの間の距離が離れるほど、ICチップが発生する駆動電力が小さくなり、リーダ/ライタに対して正常に情報を送信できなくなる。
【0004】
図16は、非接触型のICチップを用いたシステムにおける送受信信号の波形の例を示す図である。なお、ここでは、ISO/IEC(International Organization for Standardization/International Electrotechnical Commission)15693の単一副搬送波方式に従って、ICチップからリーダ/ライタに対して情報が送信される場合を想定する。
【0005】
非接触型のICチップ内では、リーダ/ライタからの受信信号に応答して、所定の送信データが生成される。この送信データは規定された方式で符号化され、さらに副搬送波と重畳される。図16において、送信信号パルスは、送信データと副搬送波とが重畳された信号を示している。この図16では例として、論理値“0”を示す1シンボル分の送信信号パルスを示しており、1シンボル中の前半には8パルスの副搬送波が現れ、後半はL(ロー)レベルに固定される。
【0006】
ICチップでは、このように生成された送信信号パルスに応じて搬送波が振幅変調され、リーダ/ライタに対して信号が送信される。図16において、アンテナ端子間信号は、変調によりアンテナ端子間に生じる変調信号を示している。リーダ/ライタは、ICチップから受信した信号を復調し、送信信号パルスに対応する受信信号パルスを得る。
【0007】
ここで、図16(A)は、ICチップとリーダ/ライタとの距離が十分近い場合の波形を示しており、この場合にはリーダ/ライタにおいて信号を正確に受信できる。しかし、ICチップとリーダ/ライタとの距離が離れるほど、リーダ/ライタからの受信波を基にICチップが発生する駆動電力が小さくなる。駆動電力が小さくなると、ICチップのアンテナ端子間に生じる変調信号の波形の立ち上がりが鈍る。
【0008】
図16(B)は、図16(A)の場合と比較してICチップとリーダ/ライタとの距離が離れている場合を示している。また、図16(C)は、これらの距離が図16(B)の場合よりさらに離れている場合を示している。これらの図のように、ICチップが受け取る電力が小さくなると、アンテナ端子間信号の波形の立ち上がりが鈍り、その信号強度も小さくなる。そして、リーダ/ライタでは、ICチップからの信号を受信できたとしても、得られる受信信号パルスの強度は小さくなり、その波形のデューティ比も崩れる。このような状態になると、リーダ/ライタでは、ICチップからの信号を正確に受信できなくなってしまう。
【0009】
なお、上記に関連する従来の技術として、受電電力レベルに対する集積回路の消費電力レベルを検出し、この消費電力レベルに応じて動作クロック周波数を変化させるようにした非接触型ICカードがあった(例えば、特許文献1参照)。また、アンテナで受信した高周波信号を検波した検波信号を高速度でサンプリングし、その検波信号の信号レベルの分布に応じて、伝送されたデータを復号するようにしたリーダ/ライタがあった(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005−191961号公報
【特許文献2】特開2001−175826号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のように、非接触型のICチップとリーダ/ライタとの距離が離れるほど、ICチップのアンテナ端子間に現れる、情報送信のための変調信号波形の立ち上がりが鈍る。このため、リーダ/ライタにおいてICチップからの信号を正確に受信できなくなるという問題があった。これに対して、ICチップで生成する送信信号パルスの形状を調整して、リーダ/ライタとの距離が離れている状態に最適化する方法が考えられる。しかし、この場合には逆に、ICチップがリーダ/ライタと十分接近し、大きな駆動電力が得られる状態では、リーダ/ライタにおいて情報を正常に受信できなくなってしまう。
【0011】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、送信先の装置との距離に応じて駆動電力が変動した場合でも、信号を正常に送信することが可能な通信装置および半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、アンテナと、外部機器から前記アンテナを通じて電力の供給を受けて情報を送受信する半導体装置とを備えた通信装置が提供される。この通信装置は、前記アンテナを通じて受信された受信波の強度を検出する強度検出部と、前記外部機器に送信する送信データと基準パルスとを重畳した送信信号パルスを生成する送信信号生成部と、前記送信信号パルスに現れる前記基準パルスのデューティ比を、検出された前記受信波の強度に応じて変化させるパルス制御部と、前記送信信号生成部から出力された前記送信信号パルスに応じて負荷変調を行う変調部と、を有する。
【0013】
この通信装置は、外部機器からアンテナを通じて電力の供給を受けて駆動する。強度検出部は、アンテナを通じて受信された受信波の強度を検出する。送信信号生成部は、外部機器に送信する送信データと基準パルスとを重畳した送信信号パルスを生成する。変調部は、送信信号生成部から出力された送信信号パルスに応じて負荷変調を行う。これにより、送信データに応じた無線信号が外部機器に送信される。パルス制御部は、送信信号パルスに現れる基準パルスのデューティ比を、検出された受信波の強度に応じて変化させる。これにより、負荷変調後の変調信号波形の形状が、受信波の強度に応じて制御される。
【0014】
また、上記目的を達成するために、上記の通信装置が備えている半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0015】
上記の通信装置および半導体装置によれば、外部機器との距離の変化に応じて駆動電力が変化した場合でも、外部機器に対して信号を正常に送信できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、実施の形態に係る通信装置の概要を示す図である。
図1に示すように、通信装置1は、半導体装置10とアンテナ20とを備えている。半導体装置10は、アンテナ20を通じて外部機器との間で非接触で通信することが可能な半導体集積回路である。このような通信装置1としては、例えば、RFIDタグ、あるいは、携帯電話機を始めとする携帯機器などが考えられる。
【0017】
半導体装置10は、アンテナ20を通じて図示しない外部機器から非接触で受信した受信波を基に、駆動電力を発生する。そして、その駆動電力により、外部機器との間で非接触で通信する。この半導体装置10は、強度検出部11、送信信号生成部12、変調部13およびパルス制御部14を備えている。
【0018】
強度検出部11は、アンテナ20を通じて受信された受信波の強度を検出する。この強度検出部11は、例えば、受信波から得られた直流電圧を安定化して装置内に電源として供給する電源回路から信号の供給を受け、この信号を基に受信波の強度を検出することができる。
【0019】
送信信号生成部12には、外部機器に送信する送信データと、基準パルスとが入力される。送信信号生成部12は、これらの送信データと基準パルスとを重畳して、送信信号パルスを生成する。
【0020】
基準パルスは、例えば、搬送波を振幅変調するために用意される副搬送波である。送信信号生成部12は、例えば、送信データのレベルに応じて、送信信号パルスにおいて基準パルスが現れる期間と、H(ハイ)レベルまたはLレベルに固定される期間とを決定する。このような信号の重畳方法は、例えば、ISO/IEC14443のタイプA方式、ISO/IEC15693の単一副搬送波方式などに利用されている。また、この他の方法の例として、送信データのレベルに応じて基準パルスの位相が逆転される、あるいは、送信データのレベルに応じて異なる周波数の基準パルスが選択的に出力されるなどの方法で、信号の重畳が行われてもよい。前者は、ISO/IEC14443のタイプB方式、後者は、ISO/IEC15693の双副搬送波方式などにそれぞれ利用されている。
【0021】
変調部13は、送信信号生成部12から出力された送信信号パルスに応じて負荷変調を行う。すなわち、変調部13は、送信信号パルスに応じて、アンテナ20のインピーダンスを変化させる。これにより、アンテナ20から送信される搬送波が振幅変調され、信号の送信が行われる。
【0022】
パルス制御部14は、送信信号パルスに現れる基準パルスのデューティ比を、強度検出部11による受信波の強度の検出結果に応じて変化させる。これにより、通信装置1と外部機器との間の距離が変化した場合でも、この外部機器に対して信号を正常に送信できるようになる。
【0023】
ここで、通信装置1と、電力供給元の外部機器との距離が離れるほど、通信装置1で得られる駆動電力は小さくなる。そして、駆動電力が小さくなるほど、変調部13から出力される変調信号の立ち上がりが鈍り、外部機器において通信装置1からの送信信号を正常に受信できなくなる。一方、駆動電力が小さい場合でも、送信信号パルスに現れる基準パルスにおけるLレベルの期間をHレベルの期間より相対的に長くすることで、外部機器で信号を受信できなくなる事態を回避できる。
【0024】
そこで、パルス制御部14は、受信波の強度により、外部機器との距離を判定する。そして、受信波の強度が小さくなるほど、送信信号パルスに現れる基準パルスにおけるLレベルの期間を長くする。これにより、従来と比較して外部機器との距離がより離れた場合でも信号を正常に送信できるようになり、通信可能な距離が長くなる。また、このように信号を正常に送信できる範囲であれば、外部機器との距離に関係なく信号を常に正常に送信でき、通信可能な範囲が広くなる。
【0025】
なお、上記の通信装置1としては、副搬送波を用いずに信号を送信するものを適用することも可能である。例えば、ISO/IEC18042NFC(Near Field Communication)では、送信データを符号化したマンチェスタ符号によって直接負荷変調が行われる。マンチェスタ符号では、論理値“1”の場合、1シンボル中の前半がHレベル、後半がLレベルとなり、論理値“0”ではその逆となる。従って、1シンボルにおけるHレベルとなる期間とLレベルとなる期間との比を受信波の強度に応じて変化させることで、上記と同様に通信可能な距離を長くすることができる。
【0026】
上記の送信信号生成部12は、例えば、1シンボル分の周期を有する基準パルスの位相を、送信データに応じて反転するか否かを決定するなどの方法により、送信データと基準パルスとを重畳した送信信号パルスとしてマンチェスタ符号を生成できる。この送信信号パルスにおいては、Hレベルの期間に基準パルスが現れることになる。そして、パルス制御部14により、送信信号パルスに現れる基準パルスのデューティ比を制御することで、通信可能な距離を長くすることができる。
【0027】
次に、上記の通信装置として、ISO/IEC15693の単一副搬送波方式に準拠したRFIDタグを適用した場合を想定して、通信装置についてのより具体的な構成および動作を説明する。
[第1の実施の形態]
図2は、第1の実施の形態の非接触通信システムの構成を示す図である。
【0028】
本実施の形態の非接触通信システムは、RFIDタグ100、リーダ/ライタ(R/W)200およびコンピュータ300を備えている。リーダ/ライタ200は、上位装置であるコンピュータ300の制御の下で、RFIDタグ100に対して信号を送信するとともに、RFIDタグ100から送信された信号を受信する。RFIDタグ100は、R/W200からの電磁波に基づく駆動電力により動作する。
【0029】
図2では、リーダ/ライタ200の概略構成も示している。この図に示すように、リーダ/ライタ200は、デジタル信号処理部201、送信部202、非接触通信インタフェース(I/F)203および受信部204を備えている。
【0030】
デジタル信号処理部201は、コンピュータ300からの制御信号を受け付け、この制御信号に応じて、送信部202に対して送信データを出力する。また、受信部204からの受信データを処理し、コンピュータ300に対して応答する。
【0031】
送信部202は、デジタル信号処理部201からの送信データを変調し、非接触通信インタフェース203に出力する。
非接触通信インタフェース203は、アンテナや整合回路などを備え、送信部202からの変調信号をアンテナを通じてRFIDタグ100に送信する。また、RFIDタグ100から送信された信号を受信し、受信部204に出力する。
【0032】
受信部204は、非接触通信インタフェース203により受信された信号から受信データを復調し、デジタル信号処理部201に出力する。
図3は、第1の実施の形態におけるRFIDタグの内部構成を示す図である。
【0033】
RFIDタグ100は、非接触型のICチップ101とアンテナ102とを備えている。RFIDタグ100においては、例えば、これらの構成部品が同一の基板上に搭載されている。また、ICチップ101は、コンデンサC1、整流回路110、電源回路120、受信パワー検出回路130、クロック生成回路140、復調回路150、変調回路160、ロジック回路170およびメモリ180を備えている。
【0034】
アンテナ102は、コンデンサC1との間でLC共振回路を構成して、リーダ/ライタ200からの電磁波を捕捉して電流あるいは電圧に変換する。整流回路110は、例えば全波整流回路として構成され、アンテナ102によって受信された交流電圧を直流電圧に変換して、電源回路120に出力する。
【0035】
電源回路120は、整流回路110からの直流電圧を安定化し、ロジック回路170やメモリ180など、ICチップ101内の各部に対して電源として供給する。また、本実施の形態では、受信波の強度(以下、受信パワーと呼ぶ)の検出のために必要な信号を、受信パワー検出回路130に対して出力する。
【0036】
受信パワー検出回路130は、電源回路120からの所定の信号に基づき、リーダ/ライタ200からの受信パワーを検出して、検出結果をロジック回路170に出力する。なお、この受信パワー検出回路130の機能は、例えば、ロジック回路170内に設けられてもよい。
【0037】
クロック生成回路140は、リーダ/ライタ200からの受信波から、ICチップ101の内部で使用されるメインクロック信号を生成して、ロジック回路170へ供給する。なお、クロック信号を受信波から生成するのではなく、例えば、ICチップ101の内部に設けられたPLL(Phase Lock Loop)回路を用いて自発的に生成してもよい。
【0038】
復調回路150は、リーダ/ライタ200からの受信信号を振幅復調して、重畳されている信号パルスを抽出し、ロジック回路170に供給する。
変調回路160は、ロジック回路170から出力された送信信号パルスを負荷変調する。なお、この変調回路160の回路構成については、次の図4において具体的に説明する。
【0039】
ロジック回路170は、クロック生成回路140からのクロック信号に従って、種々の処理を実行する。例えば、復調回路150による復調信号から受信コマンドを復号する。そして、この受信コマンドを解釈して、メモリ180に対する読み書き、ステータスの遷移、応答データの生成、符号化処理などの、受信コマンドに応じた処理を実行する。また、本実施の形態では、ロジック回路170は、受信パワー検出回路130による受信パワーの検出結果に応じて、送信信号パルスのデューティ比を制御する機能も備えている。
【0040】
メモリ180は、例えばフラッシュメモリなどの不揮発性記憶媒体であり、例えば、リーダ/ライタ200に対して送信すべき応答メッセージや各種データなどを保持する。
図4は、変調回路の回路構成例を示す図である。
【0041】
変調回路160は、例えばFET(Field Effect Transistor)として構成されるトランジスタM11と、ICチップ101に対するアンテナ102の接続端子とトランジスタM11との間に挿入された抵抗R12とを備える。トランジスタM11のゲートには、ロジック回路170からの送信信号パルスMODONが入力される。この送信信号パルスMODONに応じてアンテナ102のインピーダンスが変化することにより、アンテナ102に振幅変調信号が発生する。これにより、リーダ/ライタ200に対して信号が送信される。
【0042】
ところで、RFIDタグ100では、リーダ/ライタ200との距離が離れるほど、受信波から得られる駆動電力は小さくなる。そして、駆動電力が小さくなるほど、変調回路160から出力される変調信号の立ち上がりが鈍る。変調信号波形が崩れると、リーダ/ライタ200においてRFIDタグ100からの送信信号を正常に受信できなくなる。
【0043】
これに対して、次の図5に示すように、ロジック回路170から変調回路160に供給される送信信号パルスに現れる副搬送波の波形を、受信波に基づく駆動電力が小さい状態に合わせて調整することで、リーダ/ライタ200において信号が正常に受信できない事態を回避できる。
【0044】
図5は、駆動電力が小さい状態に最適化した場合の送受信信号の波形の例を示す図である。
図5において、アンテナ端子間信号は、ICチップ101に対するアンテナ102の接続端子間に生じる変調信号を示している。また、受信信号パルスは、リーダ/ライタ200の受信部204において、受信信号から振幅復調された復調信号の波形を示している。なお、図5において、RFIDタグ100の変調回路160に入力される送信信号パルスの波形は、例として、論理値“0”を示す1シンボル分の信号波形に対応している。従って、1シンボル中の前半には、8パルス分の副搬送波が現れている。
【0045】
図5(A)は、RFIDタグ100とリーダ/ライタ200との距離が十分近く、RFIDタグ100において十分な駆動電力が得られる場合の波形を示している。また、図5(B)は、図5(A)の場合と比較して、RFIDタグ100とリーダ/ライタ200との距離が離れた場合を示している。図5(C)は、図(B)の場合と比較して、RFIDタグ100とリーダ/ライタ200との距離がさらに離れた場合を示している。
【0046】
変調回路160に入力される送信信号パルスに現れる副搬送波のパルスは、本来、1:1のデューティ比を有している。しかし、図5の例では、送信信号パルスに現れる副搬送波のデューティ比を、Lレベルの期間が相対的に長くなるように変化させている。このようにすることで、RFIDタグ100とリーダ/ライタ200とが離れ、RFIDタグ100で得られる駆動電力が小さい場合でも、リーダ/ライタ200で信号を正常に受信できるようになる。図5(C)がこの場合を示しており、リーダ/ライタ200では、正常に復調された受信信号パルスの波形が得られていることがわかる。
【0047】
しかし、送信信号パルスの形状を、上記のように常にRFIDタグ100とリーダ/ライタ200とが大きく離れた状態に最適化しておいた場合には、RFIDタグ100とリーダ/ライタ200とを近接させたときに、リーダ/ライタ200において信号を正常に受信できなくなる。図5(A)がこの場合を示しており、リーダ/ライタ200で復調された受信信号パルスのデューティ比が崩れている。リーダ/ライタ200では、このような状態の信号からデータを正常に復号することはできない。
【0048】
これに対して、本実施の形態のRFIDタグ100では、図3に示したように、受信パワー検出回路130を設け、この受信パワー検出回路130による受信パワーの検出結果に応じて、送信信号パルスに現れる副搬送波のデューティ比を変化させる。これにより、RFIDタグ100とリーダ/ライタ200との距離が近接した状態でも、離れた状態でも、RFIDタグ100からの信号をリーダ/ライタ200が常に確実に受信できるようにする。
【0049】
図6は、電源回路の構成例を示す図である。
電源回路120には、オペアンプ121と、整流回路110からの電源線とグランドとの間に挿入されたトランジスタM21と、同様に電源線とグランドとの間に直列に挿入された抵抗R22,R23とが設けられている。これらの回路要素は、いわゆるシャントレギュレータ方式の電源安定化回路を構成している。
【0050】
トランジスタM21は、例えばFETである。オペアンプ121の一方の入力端子には、一定の基準電圧Vref1が印加される。また、他方の入力端子には、抵抗R22,R23によって電源電圧が分圧された電圧が、基準電圧Vref1と比較するための比較電圧として入力される。オペアンプ121は、抵抗R22,R23により生成された比較電圧を基準電圧Vref1と一致させるように動作する。
【0051】
すなわち、整流回路110からの入力電圧が高くなり、抵抗R22,R23により生成された比較電圧が基準電圧Vrefより高くなると、オペアンプ121は、それらの電圧差に応じた電圧をトランジスタM21のゲートに印加する。トランジスタM21のドレイン・ソース間には、ゲートへの印加電圧に応じた大きさのシャント電流Ishuntが、電源線から分流される。このシャント電流Ishuntが流れることにより、電源電圧が降下する。そして、オペアンプ121への比較電圧が基準電圧Vref1に一致するまで低下すると、トランジスタM21のゲートへの印加電圧が“0”になり、シャント電流Ishuntが流れなくなる。このような動作により、電源回路120から出力される電源電圧が一定に保持される。
【0052】
このような電源回路120においては、リーダ/ライタ200からの受信波から生成された電源電圧が、所定の電圧より高くなるほど、オペアンプ121からトランジスタM21のゲートに印加される電圧が高くなる。これはすなわち、オペアンプ121からの出力電圧が、ICチップ101の受信パワーの増減を示していることを意味する。そこで、本実施の形態では、オペアンプ121からの出力電圧を、パワー検出電圧Vregoutとして受信パワー検出回路130に供給する。
【0053】
図7は、受信パワー検出回路の構成例を示す図である。
図7に示す受信パワー検出回路130は、例として、電源回路120からのパワー検出電圧Vregoutを基に、受信パワーの検出値を4段階のパワーレベル信号PWLV1〜PWLV4として出力するものである。この受信パワー検出回路130は、フラッシュ型ADコンバータと呼ばれる構成を有しており、抵抗R31〜R35、コンパレータCP41〜CP44、ラッチ回路131〜134およびAND(論理積)ゲートG51〜G54を備えている。
【0054】
抵抗R31〜R35は直列に接続されており、一定の基準電流Irefが流されて、コンパレータCP41〜CP44に供給するための比較電圧を生成する。コンパレータCP41〜CP44のそれぞれの一方の入力端子には、電源回路からのパワー検出電圧Vregoutが入力される。また、コンパレータCP41〜CP44の他方の入力端子には、抵抗R31〜R35によって分圧された比較電圧が供給される。
【0055】
各コンパレータCP41〜CP44は、パワー検出電圧Vregoutが比較電圧を超えた場合に、検出信号をHレベルにする。図7の例では、パワー検出電圧Vregoutが所定の電圧を超えると、まずコンパレータCP44からの検出信号がHレベルに変化する。そして、さらにパワー検出電圧Vregoutが上昇するのに従って、コンパレータCP43,CP42,CP41の順で、これらの各部からの検出信号がHレベルに変化する。
【0056】
ラッチ回路131〜134は、受信パワーの検出タイミングを与えるためのパワー検出用クロックCLKDETが入力されるごとに、それぞれコンパレータCP41〜CP44からの検出信号をラッチする。パワー検出用クロックCLKDETは、例えば、クロック生成回路140によって生成される。あるいは、受信パワー検出回路130の内部に、クロック生成回路140からのクロック信号を基にパワー検出用クロックCLKDETを生成する分周回路が設けられてもよい。
【0057】
ラッチ回路131からの出力信号はゲートG54に供給され、その反転信号はゲートG51〜G53に供給される。ラッチ回路132からの出力信号はゲートG53,G54に供給され、その反転信号はゲートG51,G52に供給される。ラッチ回路133からの出力信号はゲートG52〜G54に供給され、その反転信号はゲートG51に供給される。ラッチ回路134からの出力信号は、ゲートG51〜G54に出力される。ゲートG51〜G54からの出力信号は、それぞれパワーレベル信号PWLV1〜PWLV4としてロジック回路170に出力される。
【0058】
このような構成により、パワー検出電圧Vregoutが、抵抗R34,R35の間で分圧された比較電圧より高い状態において、パワーレベル信号PWLV1〜PWLV4のうちのいずれか1つのみがHレベルになる。すなわち、このような状態において、パワー検出電圧Vregoutが上昇するのに従って、パワーレベル信号PWLV1,PWLV2,PWLV3,PWLV4の順に、出力信号がHレベルとなるANDゲートG51〜G54が変化していく。
【0059】
図8は、ロジック回路が備える機能を示す図である。
ロジック回路170は、符号化回路171、分周回路172および信号重畳回路173を備えている。
【0060】
符号化回路171は、リーダ/ライタ200からの受信コマンドに応じたデータをメモリ180から読み込み、所定の符号化方式に従って符号化データModenを生成する。本実施の形態では、マンチェスタ符号化方式によって符号化データModenが生成される。
【0061】
分周回路172は、クロック生成回路140からのクロック信号CLKを分周して、クロック信号CLK1〜CLK3を生成し、信号重畳回路173に供給する。クロック信号CLKの周波数をFsとすると、クロック信号CLK1の周波数はFs/2、クロック信号CLK2の周波数はFs/4、クロック信号CLK3の周波数はFs/8とされる。
【0062】
ここで、クロック信号CLK3は、本来の副搬送波に対応するパルスである。また、クロック信号CLK1,CLK2は、送信信号パルスMODONに現れる副搬送波のデューティ比を変化させるために利用されるパルスである。
【0063】
信号重畳回路173は、符号化回路171からの符号化データModenと、分周回路172からの副搬送波とを重畳して、送信信号パルスMODONを生成する。このとき、信号重畳回路173は、分周回路172からのクロック信号CLK1〜CLK3を利用し、受信パワー検出回路130からのパワーレベル信号PWLV1〜PWLV4に応じて、送信信号パルスMODONに現れる副搬送波のデューティ比を変化させる。
【0064】
図9は、信号重畳回路の内部構成例を示す図である。
信号重畳回路173は、ANDゲートG71〜G76とOR(論理和)ゲートG77,G78とを備えている。
【0065】
ANDゲートG71には、符号化回路171からの符号化データModenと、分周回路172からのクロック信号CLK3とが入力される。ANDゲートG72には、ANDゲートG71からの出力信号と、分周回路172からのクロック信号CLK2とが入力される。ORゲートG77には、分周回路172からのクロック信号CLK1,CLK2が入力される。
【0066】
ANDゲートG73には、ANDゲートG72からの出力信号と、分周回路172からのクロック信号CLK1と、受信パワー検出回路130からのパワーレベル信号PWLV4とが入力される。ANDゲートG74には、ANDゲートG72からの出力信号と、受信パワー検出回路130からのパワーレベル信号PWLV2とが入力される。ANDゲートG75には、ANDゲートG71、ORゲートG77からの各出力信号と、受信パワー検出回路130からのパワーレベル信号PWLV3とが入力される。ANDゲートG76には、ANDゲートG71からの出力信号と、受信パワー検出回路130からのパワーレベル信号PWLV4とが入力される。
【0067】
ANDゲートG73〜G76からの各出力信号は、それぞれパワーレベル信号PWLV1〜PWLV4がHレベルである場合の送信信号パルスMODON1〜MODON4に対応する。これらの信号は、ORゲートG78を通じて、送信信号パルスMODONとして変調回路160に出力される。
【0068】
このような回路構成において、ANDゲートG71は、デューティ比が1:1である本来の副搬送波と、符号化データModenとを重畳する機能を果たす。ANDゲートG71は、符号化回路171からの符号化データModenがHレベルの期間において、クロック信号CLK3を出力する。従って、このANDゲートG71により、符号化データModenがHレベルの期間にのみ副搬送波が現れるような送信信号パルスが生成される。そして、ANDゲートG71以外の回路要素は、生成された送信信号パルスに現れる副搬送波のデューティ比を、受信パワーに応じて変化させるための機能を果たす。
【0069】
図10は、信号重畳回路の内部に発生する信号波形を示す図である。なお、図10では、クロック信号CLK1〜CLK3の基になったクロック信号CLKも、参考のために示している。
【0070】
RFIDタグ100とリーダ/ライタ200との距離が十分近く、受信パワーが最大となる場合には、パワーレベル信号PWLV4がHレベルとなる。このとき、信号重畳回路173の出力段のORゲートG78からは、ANDゲートG76からの送信信号パルスMODON4が出力される。図10に示すように、送信信号パルスMODON4に現れる副搬送波のデューティ比は、1:1となる。
【0071】
また、RFIDタグ100とリーダ/ライタ200との距離が離れることにより、受信パワーが1段階低下し、パワーレベル信号PWLV3がHレベルになると、ORゲートG78からは、ANDゲートG75からの送信信号パルスMODON3が出力される。図10に示すように、送信信号パルスMODON3に現れる副搬送波のデューティ比は、ANDゲートG75およびORゲートG77の動作により3:5に変化する。
【0072】
さらに受信パワーが1段階低下し、パワーレベル信号PWLV2がHレベルになると、ORゲートG78からは、ANDゲートG74からの送信信号パルスMODON2が出力される。図10に示すように、送信信号パルスMODON2に現れる副搬送波のデューティ比は、ANDゲートG72の動作により2:6に変化する。
【0073】
さらに受信パワーが1段階低下し、パワーレベル信号PWLV1がHレベルになると、ORゲートG78からは、ANDゲートG73からの送信信号パルスMODON1が出力される。図10に示すように、送信信号パルスMODON1に現れる副搬送波のデューティ比は、ANDゲートG72,G73の動作により1:7に変化する。
【0074】
図11は、RFIDタグとリーダ/ライタとの間の送受信信号の波形の例を示す図である。なお、図11では、上記の図5と同様に、論理値“0”を示す1シンボル分の信号が送信される場合の信号波形を示している。
【0075】
RFIDタグ100とリーダ/ライタ200との距離が十分近く、RFIDタグ100において十分な駆動電力が得られる場合には、図11(A)に示すように、送信信号パルスMODONに現れる副搬送波のデューティ比は1:1とされる。また、図11(B)は、図11(A)の場合と比較して、RFIDタグ100とリーダ/ライタ200との距離が離れた場合を示している。図11(C)は、図11(B)の場合と比較して、RFIDタグ100とリーダ/ライタ200との距離がさらに離れた場合を示している。このように、RFIDタグ100とリーダ/ライタ200との距離が離れるほど、送信信号パルスMODONに現れる副搬送波の波形では、Hレベルの期間よりLレベルの期間の方が長くされる。
【0076】
以上のように送信信号パルスMODONの波形が制御され、このような送信信号パルスMODONが変調回路160に入力されることにより、ICチップ101に対するアンテナ102の接続端子間に生じる変調信号の波形のデューティ比も変化する。これにより、RFIDタグ100とリーダ/ライタ200との距離が図11(A)〜(C)に対応するどの距離になった場合でも、リーダ/ライタ200においてRFIDタグ100からの信号を正確に受信し、復調できるようになる。従って、信号を送受信することが可能な範囲を拡大することができる。
【0077】
また、本実施の形態では、既存の電源回路120内のノードから、受信パワーを検出するための検出信号であるパワー検出電圧Vregoutを得ている。このような構成により、回路構成を大きく変更することなく、上記のような波形制御を実現できる。従って、製造・開発コストや回路実装面積が増大することを抑止できる。
【0078】
なお、図9に示した信号重畳回路173では、本来の副搬送波と符合化データとを重畳する回路であるANDゲートG71の後段に、その出力信号に現れる副搬送波のデューティ比を可変する回路を設ける構成とした。しかし、この他に例えば、前段に、副搬送波自体のデューティ比を可変する回路を設け、その後段に、デューティ比が調整された副搬送波と符合化データとを重畳する回路を設ける構成としてもよい。
【0079】
このような構成の場合、例えば、本実施の形態のように、符号化データがHレベルの期間に副搬送波が現れるように信号を重畳する方式の他、符合化データがHレベルの期間に副搬送波が現れ、符号化データがLレベルの期間をHレベルに固定するように信号を重畳する方式(例えば、ISO/IEC14443のタイプA方式)、重畳する副搬送波の位相を符合化データのレベルごとに変える方式(例えば、ISO/IEC14443のタイプB方式)、2つの異なる周波数の副搬送波を符合化データのレベルごとに切り替えて重畳する方式(例えば、ISO/IEC15693の双副搬送波方式)などを適用した場合にも、同様の構成の前段回路を用いて、送信信号パルスに現れる副搬送波のデューティ比を容易に可変できるようになる。なお、これらの方式の場合でも、本実施の形態のように、本来の副搬送波と符号化データとを重畳する回路の後段において、デューティ比を可変する回路を設ける構成としてもよい。
[第2の実施の形態]
上記の第1の実施の形態では、電源回路120のシャントレギュレータ内のオペアンプ121からトランジスタM21のゲートに印加される電圧を、受信パワー検出用の電圧として利用した。これに対して、以下の第2の実施の形態では、シャントレギュレータに流れるシャント電流を基に、受信パワーを検出する構成を採用する。
【0080】
図12は、第2の実施の形態のRFIDタグにおける電源回路の回路構成例を示す図である。なお、この図12では、図6に対応する構成要素には同じ符号を付して示している。
【0081】
図12に示した電源回路120aでは、例として、トランジスタM21のドレイン・ソース間に流れるシャント電流Ishuntをそのまま検出する代わりに、トランジスタM22,M23からなるカレントミラー回路を用いて、シャント電流Ishuntに応じた電流を検出する。すなわち、トランジスタM21のドレインと、整流回路110からの電源線との間に、トランジスタM22を挿入し、トランジスタM22のゲートとソースとを接続する。また、トランジスタM22,M23のゲート同士、ドレイン同士を接続することで、カレントミラー回路を構成する。そして、トランジスタM23のドレイン・ソース間を流れる電流を、パワー検出電流Iregoutとして、次の図に示す受信パワー検出回路に供給する。
【0082】
このような構成では、例えば、トランジスタM22,M23のサイズをM:1(ただし、M>1)とすることで、パワー検出電流Iregoutを、シャント電流Ishuntの1/M倍とすることができる。これにより、パワー検出電流Iregoutの電圧を、後述する比較回路において基準電圧と比較するために必要な電流に適合させることができる。なお、このようなカレントミラー回路を設けずに、図6の構成におけるシャント電流Ishuntをそのままパワー検出電流として利用してもよい。
【0083】
図13は、第2の実施の形態のRFIDタグにおける受信パワー検出回路の構成例を示す図である。
図13に示す受信パワー検出回路130aは、図7に示した受信パワー検出回路130と同様に、受信パワーを4段階のパワーレベル信号PWLV1〜PWLV4として検出する。この受信パワー検出回路130aは、抵抗R36〜R40、コンパレータCP46〜CP49、ラッチ回路136〜139およびANDゲートG56〜G59を備えている。
【0084】
抵抗R36〜R40は直列に接続されており、電源回路120aからのパワー検出電流Iregoutが流されて、コンパレータCP46〜CP49に供給するための、受信パワーに応じた比較電圧を生成する。コンパレータCP46〜CP49のそれぞれの一方の入力端子には、一定の基準電圧Vref2が入力される。また、コンパレータCP46〜CP49の他方の入力端子には、抵抗R36〜R40によって分圧された比較電圧が供給される。
【0085】
各コンパレータCP46〜CP49は、比較電圧が基準電圧Vref2を超えた場合に、検出信号をHレベルにする。図13の例では、パワー検出電流Iregoutが一定の電流値を超えると、まずコンパレータCP46からの検出信号がHレベルに変化する。そして、さらにパワー検出電流Iregoutが上昇するのに従って、コンパレータCP47,CP48,CP49の順で、これらの各部からの検出信号がHレベルに変化する。
【0086】
ラッチ回路136〜139は、受信パワーの検出タイミングを与えるためのパワー検出用クロックCLKDETが入力されるごとに、それぞれコンパレータCP46〜CP49からの検出信号をラッチする。
【0087】
ラッチ回路136からの出力信号は、ゲートG56〜G59に供給される。ラッチ回路137からの出力信号はゲートG57〜G59に供給され、その反転信号はゲートG56に供給される。ラッチ回路138からの出力信号はゲートG58,G59に供給され、その反転信号はゲートG56,G57に供給される。ラッチ回路139からの出力信号はゲートG59に供給され、その反転信号はゲートG56〜G58に供給される。ゲートG56〜G59からの出力信号は、それぞれパワーレベル信号PWLV1〜PWLV4としてロジック回路170に出力される。
【0088】
このような構成により、パワー検出電流Iregoutが上昇し、抵抗R36,R37の間で分圧された電圧が基準電圧Vref2より高くなった状態において、パワーレベル信号PWLV1〜PWLV4のうちのいずれか1つのみがHレベルになる。すなわち、このような状態において、パワー検出電流Iregoutが上昇するのに従って、パワーレベル信号PWLV1,PWLV2,PWLV3,PWLV4の順に、出力信号がHレベルとなるANDゲートG56〜G59が変化していく。従って、パワーレベル信号PWLV1〜PWLV4を、図9に示した信号重畳回路173に入力することにより、第1の実施の形態と同様な送信信号パルスMODONの波形制御を実行可能になる。
【0089】
以上の第2の実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、受信パワーに応じて送信信号パルスMODONに現れる副搬送波のデューティ比が可変されるので、信号を送受信することが可能なRFIDタグとリーダ/ライタとの距離を拡大することができる。また、本実施の形態では、既存の電源回路に流れる電流を利用して、受信パワーを検出するための検出信号であるパワー検出電流Iregoutを得ている。このような構成により、回路構成の変更を最小限に留めながら、上記のような波形制御を実現できる。従って、製造・開発コストや回路実装面積が増大することを抑止できる。
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態では、電源回路において、上記のシャントレギュレータの代わりに、デジタルボリューム方式と呼ばれる電源安定化手段を採用した場合のRFIDタグの変形例について説明する。
【0090】
図14は、第3の実施の形態のRFIDタグにおける電源回路の回路構成例を示す図である。
図14に示す電源回路120bは、抵抗R61,R62、コンパレータCP63、ラッチ回路141、アップダウンカウンタ142、トランジスタM64_1〜M64_n(ただし、nは1以上の整数)および抵抗R65_1〜R65_nを備えている。これらの回路要素は、デジタルボリューム方式の電源安定化回路を構成している。
【0091】
抵抗R61,R62は、整流回路110からの電源線とグランドとの間に直列に挿入されており、電源線の電圧を分圧して比較電圧を生成し、コンパレータCP63に出力する。コンパレータCP63の他方の入力端子には、所定の基準電圧Vref3が入力される。コンパレータCP63は、比較電圧が基準電圧Vref3より高くなると、出力信号をHレベルに変化させる。
【0092】
ラッチ回路141は、コンパレータCP63からの出力信号を、サンプリングクロックCLKSMPが入力されるごとにラッチして、ラッチ信号をアップダウンカウンタ142に出力する。
【0093】
アップダウンカウンタ142は、nビットのカウンタとして構成される。このアップダウンカウンタ142は、ラッチ回路141の出力信号がHレベルの場合、すなわち、入力電圧が所定の電圧より高い場合には、カウント値を増加させる。また、ラッチ回路141の出力信号がLレベルのとき、すなわち、入力電圧が所定の電圧以下の場合には、カウント値を減少させる。
【0094】
アップダウンカウンタ142のカウント値における下位からの各ビットに対応するビット信号digv1,digv2,……,digvnは、それぞれトランジスタM64_1,M64_2,……,M64_nのゲートに供給される。トランジスタM64_1,M64_2,……,M64_nは、例えばFETであり、これらと電源線との間には、抵抗R65_1,R65_2,……,R65_nがそれぞれ接続されている。
【0095】
このような構成により、トランジスタM64_1,M64_2,……,M64_nがビット信号digv1,digv2,……,digvnに応じてそれぞれオンになると、電源線の負荷が、対応する抵抗R65_1,R65_2,……,R65_nの抵抗値の分だけ変化する。
【0096】
入力電圧が増加し、アップダウンカウンタ142のカウント値が増加するのに従って、電源線の負荷が増加する。このとき、電源回路120bは、出力電圧を低下させるように動作する。逆に、入力電圧が低下し、アップダウンカウンタ142のカウント値が減少するのに従って、電源線の負荷が減少する。このとき、電源回路120bは、出力電圧を増加させるように動作する。このような動作により、出力電圧が一定に保持される。
【0097】
なお、抵抗R65_1,R65_2,……,R65_nの抵抗値は、順に1/2倍ずつ小さくされている。
以上の電源回路120bにおいては、アップダウンカウンタ142のカウント値が、受信パワーの増減に応じて変化している。そこで、本実施の形態では、アップダウンカウンタ142のカウント値、すなわちビット信号digv1,digv2,……,digvnを受信パワー検出回路130bにも出力する。そして、受信パワー検出回路130bにおいて、ビット信号digv1,digv2,……,digvnを基に、例えばm段階(ただし、mは1以上の整数)のパワーレベル信号PWLV1,PWLV2,……,PWLVmを生成する。
【0098】
受信パワー検出回路130bは、例えば、ビット信号digv1,digv2,……,digvnを基にパワーレベル信号PWLV1,PWLV2,……,PWLVmを生成するデコード機能を備えていればよい。
【0099】
なお、受信パワー検出回路130bには、必ずしもすべてのビット信号digv1,digv2,……,digvnを供給する必要はない。例えば、アップダウンカウンタ142のカウント値の上位数ビットに対応するビット信号のみを受信パワー検出回路130bに供給してもよい。また、受信パワー検出回路130bに供給されるビット信号digv1,digv2,……,digvnの数が、パワーレベル信号PWLV1,PWLV2,……,PWLVmの数、すなわち受信パワー検出の段階数と一致している必要もない。
【0100】
図15は、ビット信号に応じたデコード機能を備えた受信パワー検出回路の構成例を示す図である。
この図15では、例として、n=m=4とし、受信パワー検出回路130bは、4桁のビット信号のうち上位2ビットのビット信号digv3,digv4から4段階のパワーレベル信号PWLV1〜PWLV4をデコードするものとする。受信パワー検出回路130bは、ゲートG81〜G84を備えている。
【0101】
電源回路120bからのビット信号digv3はゲートG82,G84に供給され、その反転信号はゲートG81,G83に供給される。また、電源回路120bからのビット信号digv4はゲートG83,G84に供給され、その反転信号はゲートG81,G82に供給される。ゲートG81〜G84からは、それぞれパワーレベル信号PWLV1〜PWLV4が出力される。
【0102】
このような構成により、アップダウンカウンタ142のカウント値のうちの下位から3桁目および4桁目による2ビットの値が“00”“01”“10”“11”とカウントアップされるのに従って、パワーレベル信号PWLV1,PWLV2,PWLV3,PWLV4の順に、出力信号がHレベルとなるANDゲートG81〜G84が変化していく。従って、パワーレベル信号PWLV1〜PWLV4を、図9に示した信号重畳回路173に入力することにより、第1の実施の形態と同様な送信信号パルスMODONの波形制御を実行可能になる。
【0103】
以上の第3の実施の形態では、前述の第1,第2の実施の形態と同様に、受信パワーに応じて送信信号パルスMODONに現れる副搬送波のデューティ比が可変される。このため、信号を送受信することが可能なRFIDタグとリーダ/ライタとの距離を拡大することができる。また、本実施の形態では、既存の電源回路からの出力信号を、受信パワーを検出するための検出信号としても利用している。このような構成により、回路構成の変更を大きく変更することなく、上記のような波形制御を実現できる。従って、製造・開発コストや回路実装面積が増大することを抑止できる。
【0104】
以上の実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1) アンテナと、外部機器から前記アンテナを通じて電力の供給を受けて情報を送受信する半導体装置とを備えた通信装置において、
前記アンテナを通じて受信された受信波の強度を検出する強度検出部と、
前記外部機器に送信する送信データと基準パルスとを重畳した送信信号パルスを生成する送信信号生成部と、
前記送信信号パルスに現れる前記基準パルスのデューティ比を、検出された前記受信波の強度に応じて変化させるパルス制御部と、
前記送信信号生成部から出力された前記送信信号パルスに応じて負荷変調を行う変調部と、
を有することを特徴とする通信装置。
【0105】
(付記2) 前記パルス制御部は、前記受信波の強度が小さいほど、前記送信信号パルスに現れる前記基準パルスにおけるハイレベルの期間を短くすることを特徴とする付記1記載の通信装置。
【0106】
(付記3) 前記受信波から得られた電源電圧に応じた電圧を、所定の基準電圧に一致させるように動作する制御アンプと、前記制御アンプからの出力電圧に応じて、前記電源電圧が印加される電源線から電流を分流するトランジスタとを備え、前記電源電圧を安定化するように動作する電圧安定化部をさらに有し、
前記強度検出部は、前記制御アンプからの出力電圧を基に、前記受信波の強度を検出することを特徴とする付記1または2に記載の通信装置。
【0107】
(付記4) 前記受信波から得られた電源電圧に応じた電圧を、所定の基準電圧に一致させるように動作する制御アンプと、前記制御アンプからの出力電圧に応じて、前記電源電圧が印加される電源線から電流を分流するトランジスタとを備え、前記電源電圧を安定化するように動作する電圧安定化部をさらに有し、
前記強度検出部は、前記トランジスタにより前記電源線から分流される電流を基に、前記受信波の強度を検出することを特徴とする付記1または2に記載の通信装置。
【0108】
(付記5) 前記受信波から得られた電源電圧に応じた電圧を、所定の基準電圧と比較する比較部と、前記比較部による比較結果に応じてカウント値を増減するカウンタ部と、前記カウンタ部による前記カウント値の各ビットに対応するビット信号に応じてそれぞれスイッチング動作することで、前記電源電圧が入力される電源線の負荷を調整する負荷調整部とを備え、前記電源電圧を安定化するように動作するデジタル式電圧安定化部をさらに有し、
前記強度検出部は、前記カウンタ部による前記カウント値を基に、前記受信波の強度を検出することを特徴とする付記1または2に記載の通信装置。
【0109】
(付記6) 入力クロック信号を分周するクロック分周部をさらに有し、
前記送信信号生成部は、前記クロック分周部からの分周クロック信号のうちの1つを前記基準パルスとして利用し、
前記パルス制御部は、前記クロック分周部からの複数の分周クロック信号を基に、前記送信信号パルスに現れる前記基準パルスのデューティ比を変化させる、
ことを特徴とする付記1〜5のいずれか1つに記載の通信装置。
【0110】
(付記7) 前記パルス制御部は、前記送信信号パルスに現れる前記基準パルスのデューティ比を、前記クロック分周部からの複数の分周クロック信号を基に前記受信波の強度の段階ごとに変化させた強度別信号パルスを生成し、前記各強度別信号パルスのうちの1つを前記強度検出部により検出された前記受信波の強度に応じて選択し、前記送信信号パルスとして出力することを特徴とする付記6記載の通信装置。
【0111】
(付記8) アンテナを通じて外部機器から電力の供給を受けて情報を送受信する半導体装置において、
前記アンテナを通じて受信された受信波の強度を検出する強度検出部と、
前記外部機器に送信する送信データと基準パルスとを重畳した送信信号パルスを生成する送信信号生成部と、
前記送信信号パルスに現れる前記基準パルスのデューティ比を、検出された前記受信波の強度に応じて変化させるパルス制御部と、
前記送信信号生成部から出力された前記送信信号パルスに応じて負荷変調を行う変調部と、
を有することを特徴とする半導体装置。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】通信装置の概要を示す図である。
【図2】第1の実施の形態の非接触通信システムの構成を示す図である。
【図3】第1の実施の形態におけるRFIDタグの内部構成を示す図である。
【図4】変調回路の回路構成例を示す図である。
【図5】駆動電力が小さい状態に最適化した場合の送受信信号の波形の例を示す図である。
【図6】電源回路の構成例を示す図である。
【図7】受信パワー検出回路の構成例を示す図である。
【図8】ロジック回路が備える機能を示す図である。
【図9】信号重畳回路の内部構成例を示す図である。
【図10】信号重畳回路の内部に発生する信号波形を示す図である。
【図11】RFIDタグとリーダ/ライタとの間の送受信信号の波形の例を示す図である。
【図12】第2の実施の形態のRFIDタグにおける電源回路の回路構成例を示す図である。
【図13】第2の実施の形態のRFIDタグにおける受信パワー検出回路の構成例を示す図である。
【図14】第3の実施の形態のRFIDタグにおける電源回路の回路構成例を示す図である。
【図15】ビット信号に応じたデコード機能を備えた受信パワー検出回路の構成例を示す図である。
【図16】非接触型のICチップを用いたシステムにおける送受信信号の波形の例を示す図である。
【符号の説明】
【0113】
1 通信装置
10 半導体装置
11 強度検出部
12 送信信号生成部
13 変調部
14 パルス制御部
20 アンテナ
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナと、このアンテナを通じて外部機器から電力の供給を受けて情報を送受信する半導体装置とを備えた通信装置、およびその半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触で外部との情報の受け渡しが可能なIC(Integrated Circuit)チップが注目されている。例えば、このようなICチップにIDを記憶させ、商品などの識別や管理に利用することが考えられている。このような用途の非接触ICチップは、RFID(Radio Frequency ID)タグなどと呼ばれる。
【0003】
非接触型のICチップは、一般的に、リーダ/ライタからの電波あるいは電磁波を基に駆動電力を発生し、読み取り器と無線通信して、ICチップのメモリ内に記憶されたIDなどの情報をリーダ/ライタに送信する。このため、リーダ/ライタとの間の距離が離れるほど、ICチップが発生する駆動電力が小さくなり、リーダ/ライタに対して正常に情報を送信できなくなる。
【0004】
図16は、非接触型のICチップを用いたシステムにおける送受信信号の波形の例を示す図である。なお、ここでは、ISO/IEC(International Organization for Standardization/International Electrotechnical Commission)15693の単一副搬送波方式に従って、ICチップからリーダ/ライタに対して情報が送信される場合を想定する。
【0005】
非接触型のICチップ内では、リーダ/ライタからの受信信号に応答して、所定の送信データが生成される。この送信データは規定された方式で符号化され、さらに副搬送波と重畳される。図16において、送信信号パルスは、送信データと副搬送波とが重畳された信号を示している。この図16では例として、論理値“0”を示す1シンボル分の送信信号パルスを示しており、1シンボル中の前半には8パルスの副搬送波が現れ、後半はL(ロー)レベルに固定される。
【0006】
ICチップでは、このように生成された送信信号パルスに応じて搬送波が振幅変調され、リーダ/ライタに対して信号が送信される。図16において、アンテナ端子間信号は、変調によりアンテナ端子間に生じる変調信号を示している。リーダ/ライタは、ICチップから受信した信号を復調し、送信信号パルスに対応する受信信号パルスを得る。
【0007】
ここで、図16(A)は、ICチップとリーダ/ライタとの距離が十分近い場合の波形を示しており、この場合にはリーダ/ライタにおいて信号を正確に受信できる。しかし、ICチップとリーダ/ライタとの距離が離れるほど、リーダ/ライタからの受信波を基にICチップが発生する駆動電力が小さくなる。駆動電力が小さくなると、ICチップのアンテナ端子間に生じる変調信号の波形の立ち上がりが鈍る。
【0008】
図16(B)は、図16(A)の場合と比較してICチップとリーダ/ライタとの距離が離れている場合を示している。また、図16(C)は、これらの距離が図16(B)の場合よりさらに離れている場合を示している。これらの図のように、ICチップが受け取る電力が小さくなると、アンテナ端子間信号の波形の立ち上がりが鈍り、その信号強度も小さくなる。そして、リーダ/ライタでは、ICチップからの信号を受信できたとしても、得られる受信信号パルスの強度は小さくなり、その波形のデューティ比も崩れる。このような状態になると、リーダ/ライタでは、ICチップからの信号を正確に受信できなくなってしまう。
【0009】
なお、上記に関連する従来の技術として、受電電力レベルに対する集積回路の消費電力レベルを検出し、この消費電力レベルに応じて動作クロック周波数を変化させるようにした非接触型ICカードがあった(例えば、特許文献1参照)。また、アンテナで受信した高周波信号を検波した検波信号を高速度でサンプリングし、その検波信号の信号レベルの分布に応じて、伝送されたデータを復号するようにしたリーダ/ライタがあった(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005−191961号公報
【特許文献2】特開2001−175826号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のように、非接触型のICチップとリーダ/ライタとの距離が離れるほど、ICチップのアンテナ端子間に現れる、情報送信のための変調信号波形の立ち上がりが鈍る。このため、リーダ/ライタにおいてICチップからの信号を正確に受信できなくなるという問題があった。これに対して、ICチップで生成する送信信号パルスの形状を調整して、リーダ/ライタとの距離が離れている状態に最適化する方法が考えられる。しかし、この場合には逆に、ICチップがリーダ/ライタと十分接近し、大きな駆動電力が得られる状態では、リーダ/ライタにおいて情報を正常に受信できなくなってしまう。
【0011】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、送信先の装置との距離に応じて駆動電力が変動した場合でも、信号を正常に送信することが可能な通信装置および半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、アンテナと、外部機器から前記アンテナを通じて電力の供給を受けて情報を送受信する半導体装置とを備えた通信装置が提供される。この通信装置は、前記アンテナを通じて受信された受信波の強度を検出する強度検出部と、前記外部機器に送信する送信データと基準パルスとを重畳した送信信号パルスを生成する送信信号生成部と、前記送信信号パルスに現れる前記基準パルスのデューティ比を、検出された前記受信波の強度に応じて変化させるパルス制御部と、前記送信信号生成部から出力された前記送信信号パルスに応じて負荷変調を行う変調部と、を有する。
【0013】
この通信装置は、外部機器からアンテナを通じて電力の供給を受けて駆動する。強度検出部は、アンテナを通じて受信された受信波の強度を検出する。送信信号生成部は、外部機器に送信する送信データと基準パルスとを重畳した送信信号パルスを生成する。変調部は、送信信号生成部から出力された送信信号パルスに応じて負荷変調を行う。これにより、送信データに応じた無線信号が外部機器に送信される。パルス制御部は、送信信号パルスに現れる基準パルスのデューティ比を、検出された受信波の強度に応じて変化させる。これにより、負荷変調後の変調信号波形の形状が、受信波の強度に応じて制御される。
【0014】
また、上記目的を達成するために、上記の通信装置が備えている半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0015】
上記の通信装置および半導体装置によれば、外部機器との距離の変化に応じて駆動電力が変化した場合でも、外部機器に対して信号を正常に送信できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、実施の形態に係る通信装置の概要を示す図である。
図1に示すように、通信装置1は、半導体装置10とアンテナ20とを備えている。半導体装置10は、アンテナ20を通じて外部機器との間で非接触で通信することが可能な半導体集積回路である。このような通信装置1としては、例えば、RFIDタグ、あるいは、携帯電話機を始めとする携帯機器などが考えられる。
【0017】
半導体装置10は、アンテナ20を通じて図示しない外部機器から非接触で受信した受信波を基に、駆動電力を発生する。そして、その駆動電力により、外部機器との間で非接触で通信する。この半導体装置10は、強度検出部11、送信信号生成部12、変調部13およびパルス制御部14を備えている。
【0018】
強度検出部11は、アンテナ20を通じて受信された受信波の強度を検出する。この強度検出部11は、例えば、受信波から得られた直流電圧を安定化して装置内に電源として供給する電源回路から信号の供給を受け、この信号を基に受信波の強度を検出することができる。
【0019】
送信信号生成部12には、外部機器に送信する送信データと、基準パルスとが入力される。送信信号生成部12は、これらの送信データと基準パルスとを重畳して、送信信号パルスを生成する。
【0020】
基準パルスは、例えば、搬送波を振幅変調するために用意される副搬送波である。送信信号生成部12は、例えば、送信データのレベルに応じて、送信信号パルスにおいて基準パルスが現れる期間と、H(ハイ)レベルまたはLレベルに固定される期間とを決定する。このような信号の重畳方法は、例えば、ISO/IEC14443のタイプA方式、ISO/IEC15693の単一副搬送波方式などに利用されている。また、この他の方法の例として、送信データのレベルに応じて基準パルスの位相が逆転される、あるいは、送信データのレベルに応じて異なる周波数の基準パルスが選択的に出力されるなどの方法で、信号の重畳が行われてもよい。前者は、ISO/IEC14443のタイプB方式、後者は、ISO/IEC15693の双副搬送波方式などにそれぞれ利用されている。
【0021】
変調部13は、送信信号生成部12から出力された送信信号パルスに応じて負荷変調を行う。すなわち、変調部13は、送信信号パルスに応じて、アンテナ20のインピーダンスを変化させる。これにより、アンテナ20から送信される搬送波が振幅変調され、信号の送信が行われる。
【0022】
パルス制御部14は、送信信号パルスに現れる基準パルスのデューティ比を、強度検出部11による受信波の強度の検出結果に応じて変化させる。これにより、通信装置1と外部機器との間の距離が変化した場合でも、この外部機器に対して信号を正常に送信できるようになる。
【0023】
ここで、通信装置1と、電力供給元の外部機器との距離が離れるほど、通信装置1で得られる駆動電力は小さくなる。そして、駆動電力が小さくなるほど、変調部13から出力される変調信号の立ち上がりが鈍り、外部機器において通信装置1からの送信信号を正常に受信できなくなる。一方、駆動電力が小さい場合でも、送信信号パルスに現れる基準パルスにおけるLレベルの期間をHレベルの期間より相対的に長くすることで、外部機器で信号を受信できなくなる事態を回避できる。
【0024】
そこで、パルス制御部14は、受信波の強度により、外部機器との距離を判定する。そして、受信波の強度が小さくなるほど、送信信号パルスに現れる基準パルスにおけるLレベルの期間を長くする。これにより、従来と比較して外部機器との距離がより離れた場合でも信号を正常に送信できるようになり、通信可能な距離が長くなる。また、このように信号を正常に送信できる範囲であれば、外部機器との距離に関係なく信号を常に正常に送信でき、通信可能な範囲が広くなる。
【0025】
なお、上記の通信装置1としては、副搬送波を用いずに信号を送信するものを適用することも可能である。例えば、ISO/IEC18042NFC(Near Field Communication)では、送信データを符号化したマンチェスタ符号によって直接負荷変調が行われる。マンチェスタ符号では、論理値“1”の場合、1シンボル中の前半がHレベル、後半がLレベルとなり、論理値“0”ではその逆となる。従って、1シンボルにおけるHレベルとなる期間とLレベルとなる期間との比を受信波の強度に応じて変化させることで、上記と同様に通信可能な距離を長くすることができる。
【0026】
上記の送信信号生成部12は、例えば、1シンボル分の周期を有する基準パルスの位相を、送信データに応じて反転するか否かを決定するなどの方法により、送信データと基準パルスとを重畳した送信信号パルスとしてマンチェスタ符号を生成できる。この送信信号パルスにおいては、Hレベルの期間に基準パルスが現れることになる。そして、パルス制御部14により、送信信号パルスに現れる基準パルスのデューティ比を制御することで、通信可能な距離を長くすることができる。
【0027】
次に、上記の通信装置として、ISO/IEC15693の単一副搬送波方式に準拠したRFIDタグを適用した場合を想定して、通信装置についてのより具体的な構成および動作を説明する。
[第1の実施の形態]
図2は、第1の実施の形態の非接触通信システムの構成を示す図である。
【0028】
本実施の形態の非接触通信システムは、RFIDタグ100、リーダ/ライタ(R/W)200およびコンピュータ300を備えている。リーダ/ライタ200は、上位装置であるコンピュータ300の制御の下で、RFIDタグ100に対して信号を送信するとともに、RFIDタグ100から送信された信号を受信する。RFIDタグ100は、R/W200からの電磁波に基づく駆動電力により動作する。
【0029】
図2では、リーダ/ライタ200の概略構成も示している。この図に示すように、リーダ/ライタ200は、デジタル信号処理部201、送信部202、非接触通信インタフェース(I/F)203および受信部204を備えている。
【0030】
デジタル信号処理部201は、コンピュータ300からの制御信号を受け付け、この制御信号に応じて、送信部202に対して送信データを出力する。また、受信部204からの受信データを処理し、コンピュータ300に対して応答する。
【0031】
送信部202は、デジタル信号処理部201からの送信データを変調し、非接触通信インタフェース203に出力する。
非接触通信インタフェース203は、アンテナや整合回路などを備え、送信部202からの変調信号をアンテナを通じてRFIDタグ100に送信する。また、RFIDタグ100から送信された信号を受信し、受信部204に出力する。
【0032】
受信部204は、非接触通信インタフェース203により受信された信号から受信データを復調し、デジタル信号処理部201に出力する。
図3は、第1の実施の形態におけるRFIDタグの内部構成を示す図である。
【0033】
RFIDタグ100は、非接触型のICチップ101とアンテナ102とを備えている。RFIDタグ100においては、例えば、これらの構成部品が同一の基板上に搭載されている。また、ICチップ101は、コンデンサC1、整流回路110、電源回路120、受信パワー検出回路130、クロック生成回路140、復調回路150、変調回路160、ロジック回路170およびメモリ180を備えている。
【0034】
アンテナ102は、コンデンサC1との間でLC共振回路を構成して、リーダ/ライタ200からの電磁波を捕捉して電流あるいは電圧に変換する。整流回路110は、例えば全波整流回路として構成され、アンテナ102によって受信された交流電圧を直流電圧に変換して、電源回路120に出力する。
【0035】
電源回路120は、整流回路110からの直流電圧を安定化し、ロジック回路170やメモリ180など、ICチップ101内の各部に対して電源として供給する。また、本実施の形態では、受信波の強度(以下、受信パワーと呼ぶ)の検出のために必要な信号を、受信パワー検出回路130に対して出力する。
【0036】
受信パワー検出回路130は、電源回路120からの所定の信号に基づき、リーダ/ライタ200からの受信パワーを検出して、検出結果をロジック回路170に出力する。なお、この受信パワー検出回路130の機能は、例えば、ロジック回路170内に設けられてもよい。
【0037】
クロック生成回路140は、リーダ/ライタ200からの受信波から、ICチップ101の内部で使用されるメインクロック信号を生成して、ロジック回路170へ供給する。なお、クロック信号を受信波から生成するのではなく、例えば、ICチップ101の内部に設けられたPLL(Phase Lock Loop)回路を用いて自発的に生成してもよい。
【0038】
復調回路150は、リーダ/ライタ200からの受信信号を振幅復調して、重畳されている信号パルスを抽出し、ロジック回路170に供給する。
変調回路160は、ロジック回路170から出力された送信信号パルスを負荷変調する。なお、この変調回路160の回路構成については、次の図4において具体的に説明する。
【0039】
ロジック回路170は、クロック生成回路140からのクロック信号に従って、種々の処理を実行する。例えば、復調回路150による復調信号から受信コマンドを復号する。そして、この受信コマンドを解釈して、メモリ180に対する読み書き、ステータスの遷移、応答データの生成、符号化処理などの、受信コマンドに応じた処理を実行する。また、本実施の形態では、ロジック回路170は、受信パワー検出回路130による受信パワーの検出結果に応じて、送信信号パルスのデューティ比を制御する機能も備えている。
【0040】
メモリ180は、例えばフラッシュメモリなどの不揮発性記憶媒体であり、例えば、リーダ/ライタ200に対して送信すべき応答メッセージや各種データなどを保持する。
図4は、変調回路の回路構成例を示す図である。
【0041】
変調回路160は、例えばFET(Field Effect Transistor)として構成されるトランジスタM11と、ICチップ101に対するアンテナ102の接続端子とトランジスタM11との間に挿入された抵抗R12とを備える。トランジスタM11のゲートには、ロジック回路170からの送信信号パルスMODONが入力される。この送信信号パルスMODONに応じてアンテナ102のインピーダンスが変化することにより、アンテナ102に振幅変調信号が発生する。これにより、リーダ/ライタ200に対して信号が送信される。
【0042】
ところで、RFIDタグ100では、リーダ/ライタ200との距離が離れるほど、受信波から得られる駆動電力は小さくなる。そして、駆動電力が小さくなるほど、変調回路160から出力される変調信号の立ち上がりが鈍る。変調信号波形が崩れると、リーダ/ライタ200においてRFIDタグ100からの送信信号を正常に受信できなくなる。
【0043】
これに対して、次の図5に示すように、ロジック回路170から変調回路160に供給される送信信号パルスに現れる副搬送波の波形を、受信波に基づく駆動電力が小さい状態に合わせて調整することで、リーダ/ライタ200において信号が正常に受信できない事態を回避できる。
【0044】
図5は、駆動電力が小さい状態に最適化した場合の送受信信号の波形の例を示す図である。
図5において、アンテナ端子間信号は、ICチップ101に対するアンテナ102の接続端子間に生じる変調信号を示している。また、受信信号パルスは、リーダ/ライタ200の受信部204において、受信信号から振幅復調された復調信号の波形を示している。なお、図5において、RFIDタグ100の変調回路160に入力される送信信号パルスの波形は、例として、論理値“0”を示す1シンボル分の信号波形に対応している。従って、1シンボル中の前半には、8パルス分の副搬送波が現れている。
【0045】
図5(A)は、RFIDタグ100とリーダ/ライタ200との距離が十分近く、RFIDタグ100において十分な駆動電力が得られる場合の波形を示している。また、図5(B)は、図5(A)の場合と比較して、RFIDタグ100とリーダ/ライタ200との距離が離れた場合を示している。図5(C)は、図(B)の場合と比較して、RFIDタグ100とリーダ/ライタ200との距離がさらに離れた場合を示している。
【0046】
変調回路160に入力される送信信号パルスに現れる副搬送波のパルスは、本来、1:1のデューティ比を有している。しかし、図5の例では、送信信号パルスに現れる副搬送波のデューティ比を、Lレベルの期間が相対的に長くなるように変化させている。このようにすることで、RFIDタグ100とリーダ/ライタ200とが離れ、RFIDタグ100で得られる駆動電力が小さい場合でも、リーダ/ライタ200で信号を正常に受信できるようになる。図5(C)がこの場合を示しており、リーダ/ライタ200では、正常に復調された受信信号パルスの波形が得られていることがわかる。
【0047】
しかし、送信信号パルスの形状を、上記のように常にRFIDタグ100とリーダ/ライタ200とが大きく離れた状態に最適化しておいた場合には、RFIDタグ100とリーダ/ライタ200とを近接させたときに、リーダ/ライタ200において信号を正常に受信できなくなる。図5(A)がこの場合を示しており、リーダ/ライタ200で復調された受信信号パルスのデューティ比が崩れている。リーダ/ライタ200では、このような状態の信号からデータを正常に復号することはできない。
【0048】
これに対して、本実施の形態のRFIDタグ100では、図3に示したように、受信パワー検出回路130を設け、この受信パワー検出回路130による受信パワーの検出結果に応じて、送信信号パルスに現れる副搬送波のデューティ比を変化させる。これにより、RFIDタグ100とリーダ/ライタ200との距離が近接した状態でも、離れた状態でも、RFIDタグ100からの信号をリーダ/ライタ200が常に確実に受信できるようにする。
【0049】
図6は、電源回路の構成例を示す図である。
電源回路120には、オペアンプ121と、整流回路110からの電源線とグランドとの間に挿入されたトランジスタM21と、同様に電源線とグランドとの間に直列に挿入された抵抗R22,R23とが設けられている。これらの回路要素は、いわゆるシャントレギュレータ方式の電源安定化回路を構成している。
【0050】
トランジスタM21は、例えばFETである。オペアンプ121の一方の入力端子には、一定の基準電圧Vref1が印加される。また、他方の入力端子には、抵抗R22,R23によって電源電圧が分圧された電圧が、基準電圧Vref1と比較するための比較電圧として入力される。オペアンプ121は、抵抗R22,R23により生成された比較電圧を基準電圧Vref1と一致させるように動作する。
【0051】
すなわち、整流回路110からの入力電圧が高くなり、抵抗R22,R23により生成された比較電圧が基準電圧Vrefより高くなると、オペアンプ121は、それらの電圧差に応じた電圧をトランジスタM21のゲートに印加する。トランジスタM21のドレイン・ソース間には、ゲートへの印加電圧に応じた大きさのシャント電流Ishuntが、電源線から分流される。このシャント電流Ishuntが流れることにより、電源電圧が降下する。そして、オペアンプ121への比較電圧が基準電圧Vref1に一致するまで低下すると、トランジスタM21のゲートへの印加電圧が“0”になり、シャント電流Ishuntが流れなくなる。このような動作により、電源回路120から出力される電源電圧が一定に保持される。
【0052】
このような電源回路120においては、リーダ/ライタ200からの受信波から生成された電源電圧が、所定の電圧より高くなるほど、オペアンプ121からトランジスタM21のゲートに印加される電圧が高くなる。これはすなわち、オペアンプ121からの出力電圧が、ICチップ101の受信パワーの増減を示していることを意味する。そこで、本実施の形態では、オペアンプ121からの出力電圧を、パワー検出電圧Vregoutとして受信パワー検出回路130に供給する。
【0053】
図7は、受信パワー検出回路の構成例を示す図である。
図7に示す受信パワー検出回路130は、例として、電源回路120からのパワー検出電圧Vregoutを基に、受信パワーの検出値を4段階のパワーレベル信号PWLV1〜PWLV4として出力するものである。この受信パワー検出回路130は、フラッシュ型ADコンバータと呼ばれる構成を有しており、抵抗R31〜R35、コンパレータCP41〜CP44、ラッチ回路131〜134およびAND(論理積)ゲートG51〜G54を備えている。
【0054】
抵抗R31〜R35は直列に接続されており、一定の基準電流Irefが流されて、コンパレータCP41〜CP44に供給するための比較電圧を生成する。コンパレータCP41〜CP44のそれぞれの一方の入力端子には、電源回路からのパワー検出電圧Vregoutが入力される。また、コンパレータCP41〜CP44の他方の入力端子には、抵抗R31〜R35によって分圧された比較電圧が供給される。
【0055】
各コンパレータCP41〜CP44は、パワー検出電圧Vregoutが比較電圧を超えた場合に、検出信号をHレベルにする。図7の例では、パワー検出電圧Vregoutが所定の電圧を超えると、まずコンパレータCP44からの検出信号がHレベルに変化する。そして、さらにパワー検出電圧Vregoutが上昇するのに従って、コンパレータCP43,CP42,CP41の順で、これらの各部からの検出信号がHレベルに変化する。
【0056】
ラッチ回路131〜134は、受信パワーの検出タイミングを与えるためのパワー検出用クロックCLKDETが入力されるごとに、それぞれコンパレータCP41〜CP44からの検出信号をラッチする。パワー検出用クロックCLKDETは、例えば、クロック生成回路140によって生成される。あるいは、受信パワー検出回路130の内部に、クロック生成回路140からのクロック信号を基にパワー検出用クロックCLKDETを生成する分周回路が設けられてもよい。
【0057】
ラッチ回路131からの出力信号はゲートG54に供給され、その反転信号はゲートG51〜G53に供給される。ラッチ回路132からの出力信号はゲートG53,G54に供給され、その反転信号はゲートG51,G52に供給される。ラッチ回路133からの出力信号はゲートG52〜G54に供給され、その反転信号はゲートG51に供給される。ラッチ回路134からの出力信号は、ゲートG51〜G54に出力される。ゲートG51〜G54からの出力信号は、それぞれパワーレベル信号PWLV1〜PWLV4としてロジック回路170に出力される。
【0058】
このような構成により、パワー検出電圧Vregoutが、抵抗R34,R35の間で分圧された比較電圧より高い状態において、パワーレベル信号PWLV1〜PWLV4のうちのいずれか1つのみがHレベルになる。すなわち、このような状態において、パワー検出電圧Vregoutが上昇するのに従って、パワーレベル信号PWLV1,PWLV2,PWLV3,PWLV4の順に、出力信号がHレベルとなるANDゲートG51〜G54が変化していく。
【0059】
図8は、ロジック回路が備える機能を示す図である。
ロジック回路170は、符号化回路171、分周回路172および信号重畳回路173を備えている。
【0060】
符号化回路171は、リーダ/ライタ200からの受信コマンドに応じたデータをメモリ180から読み込み、所定の符号化方式に従って符号化データModenを生成する。本実施の形態では、マンチェスタ符号化方式によって符号化データModenが生成される。
【0061】
分周回路172は、クロック生成回路140からのクロック信号CLKを分周して、クロック信号CLK1〜CLK3を生成し、信号重畳回路173に供給する。クロック信号CLKの周波数をFsとすると、クロック信号CLK1の周波数はFs/2、クロック信号CLK2の周波数はFs/4、クロック信号CLK3の周波数はFs/8とされる。
【0062】
ここで、クロック信号CLK3は、本来の副搬送波に対応するパルスである。また、クロック信号CLK1,CLK2は、送信信号パルスMODONに現れる副搬送波のデューティ比を変化させるために利用されるパルスである。
【0063】
信号重畳回路173は、符号化回路171からの符号化データModenと、分周回路172からの副搬送波とを重畳して、送信信号パルスMODONを生成する。このとき、信号重畳回路173は、分周回路172からのクロック信号CLK1〜CLK3を利用し、受信パワー検出回路130からのパワーレベル信号PWLV1〜PWLV4に応じて、送信信号パルスMODONに現れる副搬送波のデューティ比を変化させる。
【0064】
図9は、信号重畳回路の内部構成例を示す図である。
信号重畳回路173は、ANDゲートG71〜G76とOR(論理和)ゲートG77,G78とを備えている。
【0065】
ANDゲートG71には、符号化回路171からの符号化データModenと、分周回路172からのクロック信号CLK3とが入力される。ANDゲートG72には、ANDゲートG71からの出力信号と、分周回路172からのクロック信号CLK2とが入力される。ORゲートG77には、分周回路172からのクロック信号CLK1,CLK2が入力される。
【0066】
ANDゲートG73には、ANDゲートG72からの出力信号と、分周回路172からのクロック信号CLK1と、受信パワー検出回路130からのパワーレベル信号PWLV4とが入力される。ANDゲートG74には、ANDゲートG72からの出力信号と、受信パワー検出回路130からのパワーレベル信号PWLV2とが入力される。ANDゲートG75には、ANDゲートG71、ORゲートG77からの各出力信号と、受信パワー検出回路130からのパワーレベル信号PWLV3とが入力される。ANDゲートG76には、ANDゲートG71からの出力信号と、受信パワー検出回路130からのパワーレベル信号PWLV4とが入力される。
【0067】
ANDゲートG73〜G76からの各出力信号は、それぞれパワーレベル信号PWLV1〜PWLV4がHレベルである場合の送信信号パルスMODON1〜MODON4に対応する。これらの信号は、ORゲートG78を通じて、送信信号パルスMODONとして変調回路160に出力される。
【0068】
このような回路構成において、ANDゲートG71は、デューティ比が1:1である本来の副搬送波と、符号化データModenとを重畳する機能を果たす。ANDゲートG71は、符号化回路171からの符号化データModenがHレベルの期間において、クロック信号CLK3を出力する。従って、このANDゲートG71により、符号化データModenがHレベルの期間にのみ副搬送波が現れるような送信信号パルスが生成される。そして、ANDゲートG71以外の回路要素は、生成された送信信号パルスに現れる副搬送波のデューティ比を、受信パワーに応じて変化させるための機能を果たす。
【0069】
図10は、信号重畳回路の内部に発生する信号波形を示す図である。なお、図10では、クロック信号CLK1〜CLK3の基になったクロック信号CLKも、参考のために示している。
【0070】
RFIDタグ100とリーダ/ライタ200との距離が十分近く、受信パワーが最大となる場合には、パワーレベル信号PWLV4がHレベルとなる。このとき、信号重畳回路173の出力段のORゲートG78からは、ANDゲートG76からの送信信号パルスMODON4が出力される。図10に示すように、送信信号パルスMODON4に現れる副搬送波のデューティ比は、1:1となる。
【0071】
また、RFIDタグ100とリーダ/ライタ200との距離が離れることにより、受信パワーが1段階低下し、パワーレベル信号PWLV3がHレベルになると、ORゲートG78からは、ANDゲートG75からの送信信号パルスMODON3が出力される。図10に示すように、送信信号パルスMODON3に現れる副搬送波のデューティ比は、ANDゲートG75およびORゲートG77の動作により3:5に変化する。
【0072】
さらに受信パワーが1段階低下し、パワーレベル信号PWLV2がHレベルになると、ORゲートG78からは、ANDゲートG74からの送信信号パルスMODON2が出力される。図10に示すように、送信信号パルスMODON2に現れる副搬送波のデューティ比は、ANDゲートG72の動作により2:6に変化する。
【0073】
さらに受信パワーが1段階低下し、パワーレベル信号PWLV1がHレベルになると、ORゲートG78からは、ANDゲートG73からの送信信号パルスMODON1が出力される。図10に示すように、送信信号パルスMODON1に現れる副搬送波のデューティ比は、ANDゲートG72,G73の動作により1:7に変化する。
【0074】
図11は、RFIDタグとリーダ/ライタとの間の送受信信号の波形の例を示す図である。なお、図11では、上記の図5と同様に、論理値“0”を示す1シンボル分の信号が送信される場合の信号波形を示している。
【0075】
RFIDタグ100とリーダ/ライタ200との距離が十分近く、RFIDタグ100において十分な駆動電力が得られる場合には、図11(A)に示すように、送信信号パルスMODONに現れる副搬送波のデューティ比は1:1とされる。また、図11(B)は、図11(A)の場合と比較して、RFIDタグ100とリーダ/ライタ200との距離が離れた場合を示している。図11(C)は、図11(B)の場合と比較して、RFIDタグ100とリーダ/ライタ200との距離がさらに離れた場合を示している。このように、RFIDタグ100とリーダ/ライタ200との距離が離れるほど、送信信号パルスMODONに現れる副搬送波の波形では、Hレベルの期間よりLレベルの期間の方が長くされる。
【0076】
以上のように送信信号パルスMODONの波形が制御され、このような送信信号パルスMODONが変調回路160に入力されることにより、ICチップ101に対するアンテナ102の接続端子間に生じる変調信号の波形のデューティ比も変化する。これにより、RFIDタグ100とリーダ/ライタ200との距離が図11(A)〜(C)に対応するどの距離になった場合でも、リーダ/ライタ200においてRFIDタグ100からの信号を正確に受信し、復調できるようになる。従って、信号を送受信することが可能な範囲を拡大することができる。
【0077】
また、本実施の形態では、既存の電源回路120内のノードから、受信パワーを検出するための検出信号であるパワー検出電圧Vregoutを得ている。このような構成により、回路構成を大きく変更することなく、上記のような波形制御を実現できる。従って、製造・開発コストや回路実装面積が増大することを抑止できる。
【0078】
なお、図9に示した信号重畳回路173では、本来の副搬送波と符合化データとを重畳する回路であるANDゲートG71の後段に、その出力信号に現れる副搬送波のデューティ比を可変する回路を設ける構成とした。しかし、この他に例えば、前段に、副搬送波自体のデューティ比を可変する回路を設け、その後段に、デューティ比が調整された副搬送波と符合化データとを重畳する回路を設ける構成としてもよい。
【0079】
このような構成の場合、例えば、本実施の形態のように、符号化データがHレベルの期間に副搬送波が現れるように信号を重畳する方式の他、符合化データがHレベルの期間に副搬送波が現れ、符号化データがLレベルの期間をHレベルに固定するように信号を重畳する方式(例えば、ISO/IEC14443のタイプA方式)、重畳する副搬送波の位相を符合化データのレベルごとに変える方式(例えば、ISO/IEC14443のタイプB方式)、2つの異なる周波数の副搬送波を符合化データのレベルごとに切り替えて重畳する方式(例えば、ISO/IEC15693の双副搬送波方式)などを適用した場合にも、同様の構成の前段回路を用いて、送信信号パルスに現れる副搬送波のデューティ比を容易に可変できるようになる。なお、これらの方式の場合でも、本実施の形態のように、本来の副搬送波と符号化データとを重畳する回路の後段において、デューティ比を可変する回路を設ける構成としてもよい。
[第2の実施の形態]
上記の第1の実施の形態では、電源回路120のシャントレギュレータ内のオペアンプ121からトランジスタM21のゲートに印加される電圧を、受信パワー検出用の電圧として利用した。これに対して、以下の第2の実施の形態では、シャントレギュレータに流れるシャント電流を基に、受信パワーを検出する構成を採用する。
【0080】
図12は、第2の実施の形態のRFIDタグにおける電源回路の回路構成例を示す図である。なお、この図12では、図6に対応する構成要素には同じ符号を付して示している。
【0081】
図12に示した電源回路120aでは、例として、トランジスタM21のドレイン・ソース間に流れるシャント電流Ishuntをそのまま検出する代わりに、トランジスタM22,M23からなるカレントミラー回路を用いて、シャント電流Ishuntに応じた電流を検出する。すなわち、トランジスタM21のドレインと、整流回路110からの電源線との間に、トランジスタM22を挿入し、トランジスタM22のゲートとソースとを接続する。また、トランジスタM22,M23のゲート同士、ドレイン同士を接続することで、カレントミラー回路を構成する。そして、トランジスタM23のドレイン・ソース間を流れる電流を、パワー検出電流Iregoutとして、次の図に示す受信パワー検出回路に供給する。
【0082】
このような構成では、例えば、トランジスタM22,M23のサイズをM:1(ただし、M>1)とすることで、パワー検出電流Iregoutを、シャント電流Ishuntの1/M倍とすることができる。これにより、パワー検出電流Iregoutの電圧を、後述する比較回路において基準電圧と比較するために必要な電流に適合させることができる。なお、このようなカレントミラー回路を設けずに、図6の構成におけるシャント電流Ishuntをそのままパワー検出電流として利用してもよい。
【0083】
図13は、第2の実施の形態のRFIDタグにおける受信パワー検出回路の構成例を示す図である。
図13に示す受信パワー検出回路130aは、図7に示した受信パワー検出回路130と同様に、受信パワーを4段階のパワーレベル信号PWLV1〜PWLV4として検出する。この受信パワー検出回路130aは、抵抗R36〜R40、コンパレータCP46〜CP49、ラッチ回路136〜139およびANDゲートG56〜G59を備えている。
【0084】
抵抗R36〜R40は直列に接続されており、電源回路120aからのパワー検出電流Iregoutが流されて、コンパレータCP46〜CP49に供給するための、受信パワーに応じた比較電圧を生成する。コンパレータCP46〜CP49のそれぞれの一方の入力端子には、一定の基準電圧Vref2が入力される。また、コンパレータCP46〜CP49の他方の入力端子には、抵抗R36〜R40によって分圧された比較電圧が供給される。
【0085】
各コンパレータCP46〜CP49は、比較電圧が基準電圧Vref2を超えた場合に、検出信号をHレベルにする。図13の例では、パワー検出電流Iregoutが一定の電流値を超えると、まずコンパレータCP46からの検出信号がHレベルに変化する。そして、さらにパワー検出電流Iregoutが上昇するのに従って、コンパレータCP47,CP48,CP49の順で、これらの各部からの検出信号がHレベルに変化する。
【0086】
ラッチ回路136〜139は、受信パワーの検出タイミングを与えるためのパワー検出用クロックCLKDETが入力されるごとに、それぞれコンパレータCP46〜CP49からの検出信号をラッチする。
【0087】
ラッチ回路136からの出力信号は、ゲートG56〜G59に供給される。ラッチ回路137からの出力信号はゲートG57〜G59に供給され、その反転信号はゲートG56に供給される。ラッチ回路138からの出力信号はゲートG58,G59に供給され、その反転信号はゲートG56,G57に供給される。ラッチ回路139からの出力信号はゲートG59に供給され、その反転信号はゲートG56〜G58に供給される。ゲートG56〜G59からの出力信号は、それぞれパワーレベル信号PWLV1〜PWLV4としてロジック回路170に出力される。
【0088】
このような構成により、パワー検出電流Iregoutが上昇し、抵抗R36,R37の間で分圧された電圧が基準電圧Vref2より高くなった状態において、パワーレベル信号PWLV1〜PWLV4のうちのいずれか1つのみがHレベルになる。すなわち、このような状態において、パワー検出電流Iregoutが上昇するのに従って、パワーレベル信号PWLV1,PWLV2,PWLV3,PWLV4の順に、出力信号がHレベルとなるANDゲートG56〜G59が変化していく。従って、パワーレベル信号PWLV1〜PWLV4を、図9に示した信号重畳回路173に入力することにより、第1の実施の形態と同様な送信信号パルスMODONの波形制御を実行可能になる。
【0089】
以上の第2の実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、受信パワーに応じて送信信号パルスMODONに現れる副搬送波のデューティ比が可変されるので、信号を送受信することが可能なRFIDタグとリーダ/ライタとの距離を拡大することができる。また、本実施の形態では、既存の電源回路に流れる電流を利用して、受信パワーを検出するための検出信号であるパワー検出電流Iregoutを得ている。このような構成により、回路構成の変更を最小限に留めながら、上記のような波形制御を実現できる。従って、製造・開発コストや回路実装面積が増大することを抑止できる。
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態では、電源回路において、上記のシャントレギュレータの代わりに、デジタルボリューム方式と呼ばれる電源安定化手段を採用した場合のRFIDタグの変形例について説明する。
【0090】
図14は、第3の実施の形態のRFIDタグにおける電源回路の回路構成例を示す図である。
図14に示す電源回路120bは、抵抗R61,R62、コンパレータCP63、ラッチ回路141、アップダウンカウンタ142、トランジスタM64_1〜M64_n(ただし、nは1以上の整数)および抵抗R65_1〜R65_nを備えている。これらの回路要素は、デジタルボリューム方式の電源安定化回路を構成している。
【0091】
抵抗R61,R62は、整流回路110からの電源線とグランドとの間に直列に挿入されており、電源線の電圧を分圧して比較電圧を生成し、コンパレータCP63に出力する。コンパレータCP63の他方の入力端子には、所定の基準電圧Vref3が入力される。コンパレータCP63は、比較電圧が基準電圧Vref3より高くなると、出力信号をHレベルに変化させる。
【0092】
ラッチ回路141は、コンパレータCP63からの出力信号を、サンプリングクロックCLKSMPが入力されるごとにラッチして、ラッチ信号をアップダウンカウンタ142に出力する。
【0093】
アップダウンカウンタ142は、nビットのカウンタとして構成される。このアップダウンカウンタ142は、ラッチ回路141の出力信号がHレベルの場合、すなわち、入力電圧が所定の電圧より高い場合には、カウント値を増加させる。また、ラッチ回路141の出力信号がLレベルのとき、すなわち、入力電圧が所定の電圧以下の場合には、カウント値を減少させる。
【0094】
アップダウンカウンタ142のカウント値における下位からの各ビットに対応するビット信号digv1,digv2,……,digvnは、それぞれトランジスタM64_1,M64_2,……,M64_nのゲートに供給される。トランジスタM64_1,M64_2,……,M64_nは、例えばFETであり、これらと電源線との間には、抵抗R65_1,R65_2,……,R65_nがそれぞれ接続されている。
【0095】
このような構成により、トランジスタM64_1,M64_2,……,M64_nがビット信号digv1,digv2,……,digvnに応じてそれぞれオンになると、電源線の負荷が、対応する抵抗R65_1,R65_2,……,R65_nの抵抗値の分だけ変化する。
【0096】
入力電圧が増加し、アップダウンカウンタ142のカウント値が増加するのに従って、電源線の負荷が増加する。このとき、電源回路120bは、出力電圧を低下させるように動作する。逆に、入力電圧が低下し、アップダウンカウンタ142のカウント値が減少するのに従って、電源線の負荷が減少する。このとき、電源回路120bは、出力電圧を増加させるように動作する。このような動作により、出力電圧が一定に保持される。
【0097】
なお、抵抗R65_1,R65_2,……,R65_nの抵抗値は、順に1/2倍ずつ小さくされている。
以上の電源回路120bにおいては、アップダウンカウンタ142のカウント値が、受信パワーの増減に応じて変化している。そこで、本実施の形態では、アップダウンカウンタ142のカウント値、すなわちビット信号digv1,digv2,……,digvnを受信パワー検出回路130bにも出力する。そして、受信パワー検出回路130bにおいて、ビット信号digv1,digv2,……,digvnを基に、例えばm段階(ただし、mは1以上の整数)のパワーレベル信号PWLV1,PWLV2,……,PWLVmを生成する。
【0098】
受信パワー検出回路130bは、例えば、ビット信号digv1,digv2,……,digvnを基にパワーレベル信号PWLV1,PWLV2,……,PWLVmを生成するデコード機能を備えていればよい。
【0099】
なお、受信パワー検出回路130bには、必ずしもすべてのビット信号digv1,digv2,……,digvnを供給する必要はない。例えば、アップダウンカウンタ142のカウント値の上位数ビットに対応するビット信号のみを受信パワー検出回路130bに供給してもよい。また、受信パワー検出回路130bに供給されるビット信号digv1,digv2,……,digvnの数が、パワーレベル信号PWLV1,PWLV2,……,PWLVmの数、すなわち受信パワー検出の段階数と一致している必要もない。
【0100】
図15は、ビット信号に応じたデコード機能を備えた受信パワー検出回路の構成例を示す図である。
この図15では、例として、n=m=4とし、受信パワー検出回路130bは、4桁のビット信号のうち上位2ビットのビット信号digv3,digv4から4段階のパワーレベル信号PWLV1〜PWLV4をデコードするものとする。受信パワー検出回路130bは、ゲートG81〜G84を備えている。
【0101】
電源回路120bからのビット信号digv3はゲートG82,G84に供給され、その反転信号はゲートG81,G83に供給される。また、電源回路120bからのビット信号digv4はゲートG83,G84に供給され、その反転信号はゲートG81,G82に供給される。ゲートG81〜G84からは、それぞれパワーレベル信号PWLV1〜PWLV4が出力される。
【0102】
このような構成により、アップダウンカウンタ142のカウント値のうちの下位から3桁目および4桁目による2ビットの値が“00”“01”“10”“11”とカウントアップされるのに従って、パワーレベル信号PWLV1,PWLV2,PWLV3,PWLV4の順に、出力信号がHレベルとなるANDゲートG81〜G84が変化していく。従って、パワーレベル信号PWLV1〜PWLV4を、図9に示した信号重畳回路173に入力することにより、第1の実施の形態と同様な送信信号パルスMODONの波形制御を実行可能になる。
【0103】
以上の第3の実施の形態では、前述の第1,第2の実施の形態と同様に、受信パワーに応じて送信信号パルスMODONに現れる副搬送波のデューティ比が可変される。このため、信号を送受信することが可能なRFIDタグとリーダ/ライタとの距離を拡大することができる。また、本実施の形態では、既存の電源回路からの出力信号を、受信パワーを検出するための検出信号としても利用している。このような構成により、回路構成の変更を大きく変更することなく、上記のような波形制御を実現できる。従って、製造・開発コストや回路実装面積が増大することを抑止できる。
【0104】
以上の実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1) アンテナと、外部機器から前記アンテナを通じて電力の供給を受けて情報を送受信する半導体装置とを備えた通信装置において、
前記アンテナを通じて受信された受信波の強度を検出する強度検出部と、
前記外部機器に送信する送信データと基準パルスとを重畳した送信信号パルスを生成する送信信号生成部と、
前記送信信号パルスに現れる前記基準パルスのデューティ比を、検出された前記受信波の強度に応じて変化させるパルス制御部と、
前記送信信号生成部から出力された前記送信信号パルスに応じて負荷変調を行う変調部と、
を有することを特徴とする通信装置。
【0105】
(付記2) 前記パルス制御部は、前記受信波の強度が小さいほど、前記送信信号パルスに現れる前記基準パルスにおけるハイレベルの期間を短くすることを特徴とする付記1記載の通信装置。
【0106】
(付記3) 前記受信波から得られた電源電圧に応じた電圧を、所定の基準電圧に一致させるように動作する制御アンプと、前記制御アンプからの出力電圧に応じて、前記電源電圧が印加される電源線から電流を分流するトランジスタとを備え、前記電源電圧を安定化するように動作する電圧安定化部をさらに有し、
前記強度検出部は、前記制御アンプからの出力電圧を基に、前記受信波の強度を検出することを特徴とする付記1または2に記載の通信装置。
【0107】
(付記4) 前記受信波から得られた電源電圧に応じた電圧を、所定の基準電圧に一致させるように動作する制御アンプと、前記制御アンプからの出力電圧に応じて、前記電源電圧が印加される電源線から電流を分流するトランジスタとを備え、前記電源電圧を安定化するように動作する電圧安定化部をさらに有し、
前記強度検出部は、前記トランジスタにより前記電源線から分流される電流を基に、前記受信波の強度を検出することを特徴とする付記1または2に記載の通信装置。
【0108】
(付記5) 前記受信波から得られた電源電圧に応じた電圧を、所定の基準電圧と比較する比較部と、前記比較部による比較結果に応じてカウント値を増減するカウンタ部と、前記カウンタ部による前記カウント値の各ビットに対応するビット信号に応じてそれぞれスイッチング動作することで、前記電源電圧が入力される電源線の負荷を調整する負荷調整部とを備え、前記電源電圧を安定化するように動作するデジタル式電圧安定化部をさらに有し、
前記強度検出部は、前記カウンタ部による前記カウント値を基に、前記受信波の強度を検出することを特徴とする付記1または2に記載の通信装置。
【0109】
(付記6) 入力クロック信号を分周するクロック分周部をさらに有し、
前記送信信号生成部は、前記クロック分周部からの分周クロック信号のうちの1つを前記基準パルスとして利用し、
前記パルス制御部は、前記クロック分周部からの複数の分周クロック信号を基に、前記送信信号パルスに現れる前記基準パルスのデューティ比を変化させる、
ことを特徴とする付記1〜5のいずれか1つに記載の通信装置。
【0110】
(付記7) 前記パルス制御部は、前記送信信号パルスに現れる前記基準パルスのデューティ比を、前記クロック分周部からの複数の分周クロック信号を基に前記受信波の強度の段階ごとに変化させた強度別信号パルスを生成し、前記各強度別信号パルスのうちの1つを前記強度検出部により検出された前記受信波の強度に応じて選択し、前記送信信号パルスとして出力することを特徴とする付記6記載の通信装置。
【0111】
(付記8) アンテナを通じて外部機器から電力の供給を受けて情報を送受信する半導体装置において、
前記アンテナを通じて受信された受信波の強度を検出する強度検出部と、
前記外部機器に送信する送信データと基準パルスとを重畳した送信信号パルスを生成する送信信号生成部と、
前記送信信号パルスに現れる前記基準パルスのデューティ比を、検出された前記受信波の強度に応じて変化させるパルス制御部と、
前記送信信号生成部から出力された前記送信信号パルスに応じて負荷変調を行う変調部と、
を有することを特徴とする半導体装置。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】通信装置の概要を示す図である。
【図2】第1の実施の形態の非接触通信システムの構成を示す図である。
【図3】第1の実施の形態におけるRFIDタグの内部構成を示す図である。
【図4】変調回路の回路構成例を示す図である。
【図5】駆動電力が小さい状態に最適化した場合の送受信信号の波形の例を示す図である。
【図6】電源回路の構成例を示す図である。
【図7】受信パワー検出回路の構成例を示す図である。
【図8】ロジック回路が備える機能を示す図である。
【図9】信号重畳回路の内部構成例を示す図である。
【図10】信号重畳回路の内部に発生する信号波形を示す図である。
【図11】RFIDタグとリーダ/ライタとの間の送受信信号の波形の例を示す図である。
【図12】第2の実施の形態のRFIDタグにおける電源回路の回路構成例を示す図である。
【図13】第2の実施の形態のRFIDタグにおける受信パワー検出回路の構成例を示す図である。
【図14】第3の実施の形態のRFIDタグにおける電源回路の回路構成例を示す図である。
【図15】ビット信号に応じたデコード機能を備えた受信パワー検出回路の構成例を示す図である。
【図16】非接触型のICチップを用いたシステムにおける送受信信号の波形の例を示す図である。
【符号の説明】
【0113】
1 通信装置
10 半導体装置
11 強度検出部
12 送信信号生成部
13 変調部
14 パルス制御部
20 アンテナ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナと、外部機器から前記アンテナを通じて電力の供給を受けて情報を送受信する半導体装置とを備えた通信装置において、
前記アンテナを通じて受信された受信波の強度を検出する強度検出部と、
前記外部機器に送信する送信データと基準パルスとを重畳した送信信号パルスを生成する送信信号生成部と、
前記送信信号パルスに現れる前記基準パルスのデューティ比を、検出された前記受信波の強度に応じて変化させるパルス制御部と、
前記送信信号生成部から出力された前記送信信号パルスに応じて負荷変調を行う変調部と、
を有することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記パルス制御部は、前記受信波の強度が小さいほど、前記送信信号パルスに現れる前記基準パルスにおけるハイレベルの期間を短くすることを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項3】
前記受信波から得られた電源電圧に応じた電圧を、所定の基準電圧に一致させるように動作する制御アンプと、前記制御アンプからの出力電圧に応じて、前記電源電圧が印加される電源線から電流を分流するトランジスタとを備え、前記電源電圧を安定化するように動作する電圧安定化部をさらに有し、
前記強度検出部は、前記制御アンプからの出力電圧を基に、前記受信波の強度を検出することを特徴とする請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記受信波から得られた電源電圧に応じた電圧を、所定の基準電圧に一致させるように動作する制御アンプと、前記制御アンプからの出力電圧に応じて、前記電源電圧が印加される電源線から電流を分流するトランジスタとを備え、前記電源電圧を安定化するように動作する電圧安定化部をさらに有し、
前記強度検出部は、前記トランジスタにより前記電源線から分流される電流を基に、前記受信波の強度を検出することを特徴とする請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項5】
前記受信波から得られた電源電圧に応じた電圧を、所定の基準電圧と比較する比較部と、前記比較部による比較結果に応じてカウント値を増減するカウンタ部と、前記カウンタ部による前記カウント値の各ビットに対応するビット信号に応じてそれぞれスイッチング動作することで、前記電源電圧が入力される電源線の負荷を調整する負荷調整部とを備え、前記電源電圧を安定化するように動作するデジタル式電圧安定化部をさらに有し、
前記強度検出部は、前記カウンタ部による前記カウント値を基に、前記受信波の強度を検出することを特徴とする請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項6】
アンテナを通じて外部機器から電力の供給を受けて情報を送受信する半導体装置において、
前記アンテナを通じて受信された受信波の強度を検出する強度検出部と、
前記外部機器に送信する送信データと基準パルスとを重畳した送信信号パルスを生成する送信信号生成部と、
前記送信信号パルスに現れる前記基準パルスのデューティ比を、検出された前記受信波の強度に応じて変化させるパルス制御部と、
前記送信信号生成部から出力された前記送信信号パルスに応じて負荷変調を行う変調部と、
を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項1】
アンテナと、外部機器から前記アンテナを通じて電力の供給を受けて情報を送受信する半導体装置とを備えた通信装置において、
前記アンテナを通じて受信された受信波の強度を検出する強度検出部と、
前記外部機器に送信する送信データと基準パルスとを重畳した送信信号パルスを生成する送信信号生成部と、
前記送信信号パルスに現れる前記基準パルスのデューティ比を、検出された前記受信波の強度に応じて変化させるパルス制御部と、
前記送信信号生成部から出力された前記送信信号パルスに応じて負荷変調を行う変調部と、
を有することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記パルス制御部は、前記受信波の強度が小さいほど、前記送信信号パルスに現れる前記基準パルスにおけるハイレベルの期間を短くすることを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項3】
前記受信波から得られた電源電圧に応じた電圧を、所定の基準電圧に一致させるように動作する制御アンプと、前記制御アンプからの出力電圧に応じて、前記電源電圧が印加される電源線から電流を分流するトランジスタとを備え、前記電源電圧を安定化するように動作する電圧安定化部をさらに有し、
前記強度検出部は、前記制御アンプからの出力電圧を基に、前記受信波の強度を検出することを特徴とする請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記受信波から得られた電源電圧に応じた電圧を、所定の基準電圧に一致させるように動作する制御アンプと、前記制御アンプからの出力電圧に応じて、前記電源電圧が印加される電源線から電流を分流するトランジスタとを備え、前記電源電圧を安定化するように動作する電圧安定化部をさらに有し、
前記強度検出部は、前記トランジスタにより前記電源線から分流される電流を基に、前記受信波の強度を検出することを特徴とする請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項5】
前記受信波から得られた電源電圧に応じた電圧を、所定の基準電圧と比較する比較部と、前記比較部による比較結果に応じてカウント値を増減するカウンタ部と、前記カウンタ部による前記カウント値の各ビットに対応するビット信号に応じてそれぞれスイッチング動作することで、前記電源電圧が入力される電源線の負荷を調整する負荷調整部とを備え、前記電源電圧を安定化するように動作するデジタル式電圧安定化部をさらに有し、
前記強度検出部は、前記カウンタ部による前記カウント値を基に、前記受信波の強度を検出することを特徴とする請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項6】
アンテナを通じて外部機器から電力の供給を受けて情報を送受信する半導体装置において、
前記アンテナを通じて受信された受信波の強度を検出する強度検出部と、
前記外部機器に送信する送信データと基準パルスとを重畳した送信信号パルスを生成する送信信号生成部と、
前記送信信号パルスに現れる前記基準パルスのデューティ比を、検出された前記受信波の強度に応じて変化させるパルス制御部と、
前記送信信号生成部から出力された前記送信信号パルスに応じて負荷変調を行う変調部と、
を有することを特徴とする半導体装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−109699(P2010−109699A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279773(P2008−279773)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】
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