説明

通信装置および通信システム

【課題】 設置時の設定の手間が少なく、設置後の伝送特性の変化に対応可能な、通信装置、通信システムを提供する。
【解決手段】 送信側の通信装置では、伝送ブロックの送信開始する場合に、識別系列と前記送信データ系列との間に波形等化用のトレーニング系列を有線伝送路に送信し、受信側では、受信した前記伝送ブロックに係る相手先通信装置を識別するとともに、相手先通信装置から伝送ブロックの送信が開始された場合に、受信したトレーニング系列を用いてデジタル波形等化用のタップ係数の計算を行い、さらに前記受信した伝送ブロックに対し計算したタップ係数を用いてデジタル波形等化を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板間、装置間、デバイス間などにおいて有線通信を行う通信装置および通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板間、装置間、デバイス間などで通信装置同士が有線伝送路を介して通信を行う場合において、通信速度が高速化するのに伴って、伝送路特性等に起因する波形歪により正常に通信を行うことが困難になってきているという問題がある。
例えば、複数の通信装置が伝送路を介し相互接続している場合、受信側の通信装置では、通信している本来の信号に加えて、伝送路同士の接続部分や他の通信装置と伝送路の接続部などで反射した信号も受信することになる。
【0003】
この反射した信号は、通信装置間の通信経路の違い、すなわち通信する際の通信装置の配置や接続距離などの違い、により異なる遅延を生じる。高速でデジタルデータを伝送している場合には、例えば数ビット分にも及ぶ時間遅れの反射信号を受信することになる。
このような信号の波形歪により正常な通信が行えなくなる場合の対策として、波形歪を補償する波形等化が用いられる。(特許文献1参照。)
【0004】
従来の波形等化方式では、まず、予め有線ネットワークの構築の際に通信装置の組合せ毎に等化特性の調整を行い、各通信装置に記憶しておく。
通信の際には、受信側の通信装置は、受信する伝送データのブロックの先頭に配置されている識別信号をもとに、送信側の通信装置(すなわち相手先通信装置)を識別する。
そして、記憶してある等化特性情報をもとに、識別した送信側の通信装置(相手先通信装置)との通信に対応した等化特性を波形等化器に設定し、受信した信号の波形等化を行うようにしている。
【0005】
このように、通信相手毎に、波形等化に必要な等化特性を予め設置時に調整して記憶しておくことにより、通信時の等化特性計算の処理負担を軽減しするとともに、波形等化により通信品質の改善を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−101444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1では、例えば(1)通信装置の設置位置が変化する場合、(2)通信装置のクロック偏差や経年変化によるクロック変動がある場合、(3)通信装置と伝送路との間でインピーダンスが変化する場合など、必要とされる等化特性が予め調整した等化特性から変化する条件では、最適でない等化特性設定により波形等化をすることになるため、逆に信号を歪ませてしまうという課題がある。
【0008】
例えば4つの通信装置が有線伝送路に接続している通信システム(図1参照。)において、通信装置が4つから3つに変更された場合(図2参照。)、あるいは、伝送路として用いるケーブルの長が変更された場合など、予め調整した等化特性は使用することができず再度等化特性の調整を行う必要がある。
従って、伝送特性が変化するような通信システムでは、等化特性の調整の手間が大きいという課題がある。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、設置時の設定の手間が少なく、設置後の伝送特性の変化に対応可能な、通信装置および通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る通信装置は、通信装置識別用の識別系列の後にデータ系列が配置された伝送ブロックを有線伝送路に送信する送信器を備え、所定の相手先通信装置に対し伝送ブロックの送信を開始する場合に、最初に送信する伝送ブロックの識別系列と送信データ系列との間に、波形等化用のトレーニング系列を送信するようにしたものである。
【0011】
また、本発明に係る別の通信装置は、通信装置識別用の識別系列の後にデータ系列が配置され、所定の相手先通信装置から最初に送信される場合に前記識別系列と前記データ系列との間に波形等化用のトレーニング系列が配置される伝送ブロックを、有線伝送路から受信する受信器を備え、受信器は受信した伝送ブロックに係る相手先通信装置の識別を識別系列を元に行って所定の相手先通信装置から送信が開始されたかどうかを監視し、送信が開始された場合に、受信したトレーニング系列を用いてデジタル波形等化のためのタップ係数の計算を行い、計算結果を用いてデジタル波形等化を行うようにしたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の通信装置は、特定の場合において伝送ブロック中にトレーニング系列を配置し伝送ブロックの送信または受信を行うように構成しているので、通信装置設置時あるいは通信システム構築時の調整の手間が小さく、また、通信中にトレーニング系列を利用して等化特性を変更するので、設置後の伝送特性の変化に対し通信品質を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1における、通信システムの1例を示す概要図である。
【図2】本発明の実施の形態1における、通信装置の接続条件が変化した場合の通信システムの1例を示す概要図である。
【図3】本発明の実施の形態1における、通信装置の内部構成の要部を示す概要図である。
【図4】本発明の実施の形態1における、通信装置の受信器の内部構成の要部を示す概要図である。
【図5】本発明の実施の形態1における、通信開始時において送信される伝送ブロックのフォーマットを示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1における、通信開始時において送信される伝送ブロックのフォーマットの第1の変形例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態1における、通信開始時において送信される伝送ブロックのフォーマットの第2の変形例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態1における、通信中において送信される伝送ブロックを示す図である。
【図9】本発明の実施の形態1における、通信中において同じ通信装置間で送信される伝送ブロックを示す図である。
【図10】本発明の実施の形態1における、異なる通信装置との通信に切り替わる場合の伝送ブロックを示す図である。
【図11】本発明の実施の形態1における、異なる通信装置との通信に切り替わる場合の伝送ブロックの第1の変形例を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態1における、異なる通信装置との通信に切り替わる場合の伝送ブロックの第2の変形例を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態1における、同じ通信装置との通信中において送受信される伝送ブロックを示す図である。
【図14】本発明の実施の形態1における、同じ通信装置との通信中において送受信される伝送ブロックの第1の変形例を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態1における、同じ通信装置との通信中において送受信される伝送ブロックの第2の変形例を示す図である。
【図16】本発明の実施の形態2における、通信装置の内部構成の要部を示す概要図である。
【図17】本発明の実施の形態2における、伝送信号とサンプリングタイミングの関係を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
【0015】
以下に、本発明の実施の形態1について図1ないし図15を用いて説明する。
なお、以下の各実施の形態における説明および各図において、同一ないしは同様の構成部分には同一ないしは同様の符号を付する。また、本発明の要旨の説明に不要な詳細な構成および従来技術等についてはその説明の一部を省略する。
【0016】
また、各図は、構成、構造、機能、動作を分かりやすく説明するためのものであり、本発明の通信方法、装置または通信システムの実装においては、図に記載した特定の構成および名称に依存しない。また、各部の配置関係、および数は図に記載の構成や分割範囲に限定されない。
【0017】
まず、通信システムの構成について説明する。
図1および図2は、本発明の実施の形態1における、設置状態の異なる通信システムを示す概念図である。
【0018】
図において、100は有線伝送路、101ないし104は通信装置を示す。
ここでは図中の矢印は、各通信装置101ないし104が有線伝送路100に対し送信および受信の双方を行うことを示している。即ち本実施の形態では、通信装置101ないし104の各々が送受信機能を有する通信装置の場合を例に説明する。ただし、送信または受信のいずれか一方を有する通信装置であってもよい。
【0019】
各通信装置101ないし104は相互に有線伝送路100で接続されている。
ここで、有線伝送路100における信号の伝送方法としては、例えば単一信号伝送、差動信号伝送など各種伝送方法が可能であり、また、同軸線路構造、ストリップ線路構造、フラットケーブル構造など各種構造が可能である。
また、有線伝送路100と通信装置101ないし104との接続形態としては、バス接続、スター接続、ツリー接続など、各種形態が可能である。
【0020】
また、通信装置101ないし104は、例えば(1)パーソナルコンピュータといった各種アプリケーションを実行する機能も含むもの、(2)単に他の処理装置(図示しない)から入力した情報等を相手先通信装置に転送するもの、など各種の装置形態が可能である。
【0021】
また、通信装置間の通信方式としては、一方向通信、半2重通信、全2重通信など、あるいは、1対1通信、1対多通信など、各種方式が適用可能である。
【0022】
図3に、有線伝送路100に接続された通信装置101ないし104の内部構成の要部を示す。
301はスリーステートバッファ(3-state buffer。トライステートバッファと呼ばれることもある。)、302は送信器、303は受信器を示す。
【0023】
スリーステートバッファ301は、信号の入出力制御を行い、送信器302から信号を送信する状態(送信モード)、受信器303に信号を受信する状態(受信モード)、ハイインピーダンス状態の3状態を切り替える役割を果たす。
【0024】
通信装置101ないし104は、通信開始時または通信に先立って、スリーステートバッファの状態を送信モードないしは受信モードに設定し、送信または受信が可能な状態にする。
なお、スリーステートバッファ301を使用する代わりに、送信器302及び受信器302自体に同様な制御機能を設けるなど他の切り替え手段によって行ってもよい。
【0025】
送信器302は、通信の相手となる別の通信装置(以下、相手先通信装置。)に対し、後述する各種系列が配置された伝送ブロックを、有線伝送路100に信号として送信する。各種系列および伝送ブロックの詳細については後述する。
なお、以下の説明において系列という用語を用いる場合に、信号により送受信される各種情報、ビット列、数値列等を示す場合のほかに、各種情報、ビット列、数値列等に対応する信号または信号部分を示す場合がある。また、信号という用語を用いる場合に、送受信される信号そのものを示す場合のほかに、信号波形、サンプリングされた信号データ等を示す場合がある。
【0026】
受信器303は、相手先通信装置の送信器302が送信した信号を有線伝送路100から受信し、相手先通信装置を識別するとともに、受信した信号に対し波形等化を行う。
【0027】
図4に、受信器303の内部構成の要部を示す。
401は識別回路、402は遅延回路、403はタップ係数計算回路、404は等化回路である。
【0028】
識別回路401は、受信器303が有線伝送路100から受信した信号を入力し、信号中の伝送ブロックに係る相手先通信装置を識別する。また、識別回路401は、相手先通信装置と通信を開始した場合に、タップ係数計算回路403に識別結果およびタップ係数計算用制御情報を出力する。
【0029】
タップ係数計算用制御情報としては、(1)タップ係数計算開始の指示、(2)所定の相手先通信装置から最初に送信された伝送ブロックの検出の結果、などが挙げられる。
【0030】
遅延回路402は、受信器303が有線伝送路100から受信した信号を入力し、遅延させた信号をタップ係数計算回路403及び等化回路404に対し信号を出力する。
遅延回路402では、少なくとも、識別回路401において通信装置の識別が完了するまで信号を遅延させる。
【0031】
タップ係数計算回路403は、識別回路401からの識別結果およびタップ係数計算用制御情報を入力し、有線伝送路100から受信した信号をもとにデジタル波形等化用のタップ係数を計算する。また、タップ係数計算回路403は、計算したタップ係数を等化回路404へ出力する。
タップ係数を計算するためのアルゴリズムとしては、LMSアルゴリズムや、NLMSアルゴリズム、RLSアルゴリズム等が挙げられる。また、SMIアルゴリズムやその近似処理または前期アルゴリズムとの複合処理によって計算することも可能である。
なお、識別系列もタップ係数の計算に使用してもよい。
【0032】
等価回路404は、タップ係数計算回路403から計算後のタップ係数情報を入力し、遅延回路402から出力された遅延信号に対しデジタル波形等化処理を行って出力する。
等化回路404の手法としては、線形等化、判定帰還型等化、最尤系列推定、ターボ等化等が挙げられる。但し、タップ係数計算回路のタップ係数計算アルゴリズムや等化回路404の等化手法は、ここで挙げたもの以外のものを使用してもよく、本発明を限定するものではない。
【0033】
以下に、特定の通信装置間の通信における、伝送ブロックの送受信動作について説明する。
【0034】
本実施の形態においては、発明をわかりやすく説明するため、通信装置101から伝送ブロックを送信し通信装置104で受信する、1対1通信の場合を例に説明する。
【0035】
まず、通信装置間で通信を開始する場合について説明する。
送信側の通信装置である通信装置101は、スリーステートバッファ301を送信モードに設定した後、伝送ブロックを有線伝送路100に送信する。
【0036】
図5に、送信される伝送ブロックのフォーマットの1例を示す。
図において、伝送ブロックは左側から順番に送受信される。
伝送ブロックでは、識別系列501、トレーニング系列502、データ系列504の順に配置・構成される。言い換えると、識別系列501とデータ系列504との間にトレーニング系列502が配置される。
【0037】
識別系列501は、各通信装置を識別するために使用される。識別系列501には、通信装置の製造時、あるいは通信装置の通信システムへの設置時、あるいは通信に先立って、割当てられる装置識別番号をそのまま用いても、あるいは、識別番号に対応する別の情報を用いてもよい。
伝送ブロック中における識別系列501により、伝送ブロックを送信する通信装置の情報を、受信する側である相手先通信装置に提供する。
【0038】
識別系列501には、具体的には例えば、系列間の相関が小さい複数の系列や符号の組合せの中から、各通信装置に識別系列として割り当てることにより、送信した装置の識別精度を高くすることができる。
さらに、反射した信号の影響を抑圧するために、受信時間がずれた場合の相関が小さい系列を用いることにより、反射した信号の影響を抑圧することができる。このような系列として、例えば直交符号が挙げられるが、直交符号に限定されない。
【0039】
トレーニング系列502は、受信側の通信装置、ここでは通信装置104、のタップ係数計算回路403がデジタル等化処理用のタップ係数を計算するために使用される。
【0040】
なお、伝送ブロックにおける識別系列とトレーニング系列とを異なるものとして扱っているが、例えば、識別系列を繰返したものをトレーニング系列として利用するなど共通性を持たせてもよい。この場合、識別系列とトレーニング系列の双方を利用することにより、識別およびタップ係数計算を効率よく行うことができる。
【0041】
データ系列504は、実際に通信装置間で送受信されるユーザデータ、アプリケーションデータ、上位プロトコルデータなどの情報やビット列を送受信するために使用される。
【0042】
図6および図7に、図5に示したフォーマットの変形例を示す。
図6および図7では、トレーニング系列とデータ系列の間に別途、識別系列をさらに配置し、1つの伝送ブロックで複数の識別系列を用いている。
さらに図7では、複数の識別系列に対し異なった識別系列を割り当てている。これにより、先頭の識別系列601とトレーニング系列602とを受信できず2つ目の識別系列603のみ受信した場合に、受信器303は、次にトレーニング系列とデータ系列のどちらを受信するか判別することが可能となる。
【0043】
一方、受信側の通信装置である通信装置104は、スリーステートバッファ301を受信モードに設定する。
受信器303の識別回路501は、受信した識別系列に対して、相手先通信装置または相手先通信装置候補に対応した識別系列との相関を計算し、計算結果が最大となる、すなわち、相関が最大となる識別系列を求め、受信した伝送ブロックはその系列が割り当てられた通信装置からの送信されたものであると判定する。
【0044】
識別回路401は、受信した伝送ブロックが通信装置101との通信開始後の最初の伝送ブロックであるかを監視し、上記識別結果から最初の伝送ブロックであると判断した場合は、タップ係数計算回路403に対し、タップ係数の計算を行うよう、タップ係数計算用制御情報を出力する。
【0045】
タップ係数計算回路403は、タップ係数計算用制御情報を入力すると、受信したトレーニング系列をもとにタップ係数を計算してタップ係数を初期化または更新し、計算したタップ係数の情報を等化回路404に出力する。
【0046】
等化回路404は、新たなタップ係数をもとに等化特性を変更する。
【0047】
ここで、受信した伝送ブロックが通信開始後の最初の伝送ブロックであるかを監視する方法としては、(1)識別回路401が監視する方法、(2)図7に示すように識別系列にトレーニング系列の有無を識別するための情報を含ませ識別回路401においてその有無を検出することで監視する方法、(3)上記(1)と(2)を組み合わせる方法、など各種方法が可能である。
なお、上記(2)の場合には、受信した伝送ブロックが通信開始後の最初の伝送ブロックであるかを監視せず、トレーニング系列の有無のみを監視し、その結果に従ってタップ係数の計算および波形等化をするようにしてもよい。
【0048】
次に、通信開始後に、通信装置101と通信装置104との間でデータを連続して送受信する場合について説明する。
この場合、連続するデータを1つの伝送ブロック内のデータ系列としてまとめて送受信する、あるいは、図8に示すようなトレーニング系列が配置されない伝送ブロックで連続して送受信することが可能である。
【0049】
図8の場合、(1)連続するデータを複数のデータ系列に分割配置して各々のデータ系列の前に識別系列を配置する方法、(2)1つの伝送ブロック中に識別系列を追加的に配置する方法のいずれでも同様なフォーマットになることがわかる。
【0050】
図8の場合は、通信中に常時相手先通信装置を確認しながら通信を行うことができる。
【0051】
次に、同じ通信装置間での伝送ブロックの送受信が短時間中断し、その後送信が再開される場合について説明する。
この場合には、伝送特性は大きく変化することは少ないと考えることができるので、図9に示すように、再開後の伝送ブロックにトレーニング系列を配置することなく送信することも可能である。この場合、受信側の通信装置104は、中断前に用いていたタップ係数を使用して等化回路404を動作させる。
なお、識別系列を利用してタップ係数を計算し、通信のなかった時間の変動分を補償するようにタップ係数計算回路403または等化回路404においてタップ係数を更新するようにしてもよい。
【0052】
次に、所定の通信装置の間の通信開始の別の場合として、受信側の通信装置104はそのままで、送信側の通信装置が通信装置104から他の通信装置に切り替わる場合、即ち伝送ブロックを送信する側の通信装置が切り替わる場合について説明する。
図10に、異なる通信装置との通信に切り替わる場合の伝送ブロックの伝送の様子を示す。
図において、切り替わる前の相手先通信装置101からは識別系列A901およびデータ系列902が配置された伝送ブロックが送信され、その後、切り替わった後の相手先通信装置から、トレーニング系列1002が配置された伝送ブロックが最初に送信されているのがわかる。
【0053】
受信側の通信装置104の識別回路401は、受信した伝送ブロックが、切り替わった後の通信装置からの最初の伝送ブロックであることを検出した場合に、タップ係数情報の更新、および切り替わった後の相手先通信装置から受信する伝送ブロックに関して波形等化を行う。
【0054】
図11および図12に、図10の変形例を示す。
切り替わった後の相手先通信装置から最初に送信される伝送ブロックは、図6および図7に示した図5の変形例と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0055】
なお、図5〜図7に示した場合と同様に、受信した受信側の通信装置104は、トレーニング系列のほかに識別系列もタップ係数の計算に使用することができる。
【0056】
次に、本実施の形態では、通信中に、伝送ブロックの送信が長時間中断した後に同じ相手先通信装置からの送信が再開された場合について説明する。
【0057】
図13に示すように、中断した期間Xが所定の時間(予め設定した時間)以上であった場合には、同じ通信装置間の通信であっても、トレーニング系列1302を配置した伝送ブロックを送信する。期間Xは、(1)通信システムで規定する、(2)通信ないしは送受信に先立ち別途通信装置の間で情報交換をする、(3)送信側通信装置から受信側通信装置へ通知する、など各種方法が可能である。
【0058】
図14および図15に、図13の変形例を示す。
【0059】
送信再開後に最初に送信される伝送ブロックは、図6および図7、または図11および図12に示した変形例と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0060】
以上のように、本実施の形態の通信装置は、伝送ブロックの送信が開始される場合、または、同じ通信装置間で通信中に所定時間以上送受信が中断しその後再開した場合に、トレーニング系列を配置した伝送ブロックを送信し、また、トレーニング系列の配置された伝送ブロックによりタップ係数計算を更新ないしは初期化してデジタル波形等化処理を行うようにしている。
これにより、通信装置設置時の調整の手間を減らすことができ、また、上記のように特定の場合にトレーニング系列を送受信するため通信中のオーバーヘッドを大きく増加させることもないので、通信装置および通信システムの冗長度の増加を抑えつつ良好な通信を実現することができる。
【0061】
なお、本実施の形態では、受信器303に遅延回路402を備えた場合について説明したが、遅延回路402が無くても、識別系列を受信した後のトレーニング系列によりタップ係数の計算を実施することができるため、遅延回路がない構成にしてもよい。
【0062】
また、本実施の形態では、識別系列を、受信側の通信装置において送信側の通信装置を識別するために用いているが、識別系列に受信側の通信装置を識別するための情報を追加してもよい。これにより、受信側の通信装置は、受信不要な伝送ブロックの処理をしないようにできるので消費エネルギーを削減することができる。
【0063】
また、本実施の形態では、タップ係数計算回路404がタップ係数を設定した後は係数の変更はされないが、タップ係数計算回路404がタップ係数を等化回路に設定した後にタップ係数の微調整を継続的に行うようにしても良い。
また、タップ係数計算回路403は、トレーニング系列602のほかに識別系列601も用いて等化用のタップ係数を計算し、等化回路404に設定してもよい。
【0064】
実施の形態2.
【0065】
以下に、本発明の実施の形態2について図16および図17を用いて説明する。
なお、以下では上記実施の形態1との差異を中心に説明する。
【0066】
図16は、本発明の実施の形態2における通信装置の受信器の内部構成の要部を示す概要図である。
【0067】
本実施の形態では、実施の形態1における識別回路1601と遅延回路1602の間が接続されている。
【0068】
識別回路1601は、受信した信号をサンプリングして、サンプリングの結果をもとに伝送ブロックを送信した通信装置を識別するとともに、遅延回路1602に対し遅延時間の変更を指示するための情報を出力する。
【0069】
遅延回路1602は、識別回路1601から指示を入力し、遅延時間の変更を行う。
【0070】
図17は、本発明の実施の形態2における、伝送される信号と識別回路401におけるサンプリングタイミングの関係を示す概要図である。
図において、(A)、(B)、(C)がサンプリングのタイミングを示す。
【0071】
識別回路1601は、1ビット分の時間より短いサンプリングタイミングで、受信した伝送ブロックの信号をサンプリングし、各々のタイミングでのサンプリング結果と識別系列または識別系列候補との相関を計算し、最も相関の大きいタイミングを最適なタイミングとして選択する。
識別回路1601は、選択されたタイミングを基準にしてタップ係数計算回路403と等化回路404に受信した信号が入力されるように、遅延回路1602に対し遅延時間を変更するよう指示を行う。
【0072】
以上のように、本実施の形態における通信装置および通信システムでは、波形等化を行う信号のタイミングを調整して等化を行うことができるので、非同期で動作する通信装置の間で通信を行う場合にも、良好な通信を行うことができる。
【0073】
なお、上記各実施の形態では、通信装置間の通信動作と、伝送ブロックの送信(受信)動作を区別して記載しているが、(1)通信開始に伴い別途通信相手を設定するための情報交換を行うようにし、その後、上記各実施の形態に記載の伝送ブロックの送受信を行うよう構成する、(2)上記各実施の形態に記載の伝送ブロックの送信開始により通信装置間の通信開始とみなされるように装置等を構成するなど、してもよい。
【0074】
その際に、上記各実施の形態に記載のデータ伝送用の伝送ブロックのほかに、通信制御用の伝送ブロックを規定して、上記各実施の形態に記載と同様な系列または伝送ブロックを規定してもよい。
【0075】
また、上記各実施の形態では、具体的な実装方法について記載していないが、(1)ハードウェアで構成して動作させる、(2)プログラムと処理装置によりソフトウェアとして動作させる、(3)ハードウェアとソフトウェアを混在するなど、各種実装形態が可能である。
【0076】
また、上記各実施の形態では、通信開始時、所定期間以上送信中断後、相手先通信装置の切り替え時、において最初に送信する伝送ブロックのみトレーニング系列を配置するようにしているが、最初から数えて所定の数のブロックにおいてトレーニング系列を配置してもよい。所定の数の値は、通信に先立ち通信装置間で情報交換してもよく、あるいは、通信システムの設計時に予め規定するようにしてもよい。
【0077】
また、上記各実施の形態では、伝送ブロック中に複数の識別系列を配置して送信する場合に、同じ通信装置を示す異なる識別系列を配置しているが、図に示したものと順番を入れ替えるなどしてもよく、その順番は限定されない。
【0078】
また、通信開始時、所定期間以上送信中断後、相手先通信装置の切り替え時、の各々の動作時に対して複数の伝送ブロックのフォーマットを示しているが、(1)各動作時において同様なフォーマットを用いる、(2)異なったフォーマットを用いる、など各種の使用方法が適用可能である。
【0079】
また、上記各実施の形態では、伝送ブロックにおいて各系列が隣接して配置されているが、予め規定された固定パターン、例えば固定値の1ビットを系列の前あるいは系列間に配置するなどしてもよい。
【0080】
さらに、上記各実施の形態は例示であり、上記各実施の形態の組合せを含め、当該技術分野の通常の知識をもつ者により本発明の技術的思想を外れない範囲内で各部の配置、位置関係、動作条件など種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0081】
100 伝送路
101、102、103、104 通信装置
301 スリーステートバッファ
302 送信器
303 受信器
401、1601 識別回路
402、1602 遅延回路
403 タップ係数計算回路
404 等化回路
1701 信号波形
1702〜1704 サンプリングタイミング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信装置識別用の第1の識別系列の後にデータ系列が配置された伝送ブロックを、有線伝送路に送信する送信器を備え、
前記送信器は、
所定の相手先通信装置に対し前記伝送ブロックの送信を開始する場合に、
最初に送信する前記伝送ブロックの前記識別系列と前記送信データ系列との間に、波形等化用のトレーニング系列を送信することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記送信器は、
前記所定の相手先通信装置に対する前記伝送ブロックの送信を所定時間以上中断しその後再開する場合に、
最初に送信する前記伝送ブロックの前記識別系列と前記送信データ系列との間に、波形等化用のトレーニング系列を送信することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記送信器は、
前記トレーニング系列と前記データ系列の間に、前記通信装置識別用の第2の識別系列を送信することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記識別系列は、前記送信を行う通信装置の各々に割当てられた識別情報を含むことを特徴とする請求項1から請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記識別系列はさらに、前記伝送ブロック中の前記トレーニング系列の有無を示す情報を含むことを特徴とする請求項1から請求項4に記載の通信装置。
【請求項6】
通信装置識別用の識別系列の後にデータ系列が配置されるとともに、所定の相手先通信装置から最初に送信される場合に前記識別系列と前記データ系列との間に波形等化用のトレーニング系列が配置される伝送ブロックを、
有線伝送路から受信する受信器を備え、
前記受信器は、
受信した前記伝送ブロックに係る相手先通信装置の識別を前記識別系列を元に行って、前記所定の相手先通信装置から送信が開始されたかどうかを監視し、
前記所定の相手先通信装置からの送信が開始された場合に、
受信した前記トレーニング系列を用いてデジタル波形等化のためのタップ係数の計算を行い、前記受信した伝送ブロックに対し前記計算の結果を用いてデジタル波形等化を行うことを特徴とする通信装置。
【請求項7】
通信装置識別用の識別系列の後にデータ系列が配置されるとともに、所定の相手先通信装置から最初に送信される場合に前記識別系列と前記データ系列との間に波形等化用のトレーニング系列が配置される伝送ブロックを、
有線伝送路から受信する受信器を備え、
前記受信器は、
受信した前記伝送ブロックに係る相手先通信装置の識別を前記識別系列を元に行うとともに、
受信した前記伝送ブロックの前記トレーニング系列の有無を監視し、
前記トレーニング系列がある場合に、
受信した前記トレーニング系列を用いてデジタル波形等化のためのタップ係数の計算を行い、前記受信した伝送ブロックに対し前記計算の結果を用いてデジタル波形等化を行うことを特徴とする通信装置。
【請求項8】
前記受信器は、
前記所定の相手先通信装置からの送信が所定時間以上中断しその後再開された場合に、
受信した前記伝送ブロックのトレーニング系列を用いてデジタル波形等化のためのタップ係数の計算を行い、さらに前記受信した伝送ブロックに対し前記計算結果を用いて前記デジタル波形等化を行うことを特徴とする請求項6または請求項7に記載の通信装置。
【請求項9】
前記受信器は、
受信した前記伝送ブロックの前記識別系列を1ビット分の時間長より短い間隔でサンプリングを行ったものと、前記識別系列の候補と、の相関が最も大きいサンプリングタイミングを選択し、前記相関が最も大きいサンプリングタイミングで、前記タップ係数の計算および前記デジタル波形等化を行うことを特徴とする請求項6から請求項8に記載の通信装置。
【請求項10】
通信装置識別用の識別系列の後にデータ系列が配置された伝送ブロックを、有線伝送路に送信する送信器と、前記伝送ブロックを有線伝送路から受信する受信器とを備え、
前記送信器は、
所定の相手先通信装置に対し前記伝送ブロックの送信を開始する場合に、最初に送信する前記伝送ブロックの前記識別系列と前記送信データ系列との間に、波形等化用のトレーニング系列を送信し、
前記受信器は、
受信した前記伝送ブロックに係る相手先通信装置の識別を前記識別系列を元に行って、前記所定の相手先通信装置から送信が開始されたかどうかを監視し、
前記所定の相手先通信装置からの送信が開始された場合に、
受信した前記伝送ブロックのトレーニング系列を用いてデジタル波形等化用のタップ係数の計算を行い、前記受信した伝送ブロックに対し前記計算の結果を用いてデジタル波形等化を行うことを特徴とする通信システム。
【請求項11】
通信装置識別用の識別系列の後にデータ系列が配置された伝送ブロックを、有線伝送路に送信する送信器と、前記伝送ブロックを有線伝送路から受信する受信器とを備え、
前記送信器は、
所定の相手先通信装置に対し前記伝送ブロックの送信を開始する場合に、最初に送信する前記伝送ブロックの前記識別系列と前記送信データ系列との間に、波形等化用のトレーニング系列を送信し、
前記受信器は、
受信した前記伝送ブロックに係る相手先通信装置の識別を前記識別系列を元に行うとともに、
受信した前記伝送ブロックの前記トレーニング系列の有無を監視し、
前記トレーニング系列がある場合に、
受信した前記伝送ブロックのトレーニング系列を用いてデジタル波形等化用のタップ係数の計算を行い、前記受信した伝送ブロックに対し前記計算の結果を用いてデジタル波形等化を行うことを特徴とする通信システム

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2012−114712(P2012−114712A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262454(P2010−262454)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】