説明

通信装置及びその制御方法

【課題】オフフックしてから比較的短時間に選択信号を送信可能な外付けの電話機を通信回線に接続する際に、当該通信回線に生じ得る電流及び電圧の急激な変化を低減する通信装置及びその制御方法を提供する。
【解決手段】本発明の通信装置は、通信回線に切断された状態にある外付けの電話機を通信回線に接続する際に、電話機のオフフックを検知すると、SDAAを、電話機側よりも低いインピーダンスに設定し、当該SDAAによる回線捕捉を開始する。その後、電話機から選択信号の送信が開始される前に、Hリレーを切り替えて電話機を通信回線に接続するとともに、SDAAによる回線捕捉を終了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ファクシミリ装置に代表されるような通信装置では、電話回線等の通信回線に対して、ファクシミリ通信用のファクシミリ通信部(モデム)だけでなく、通話用の電話機をも接続可能な通信装置が存在している。例えば、特許文献1では、データ通信を行うデータ通信部と通話を行う電話機とを通信回線に接続可能なファクシミリ装置が開示されている。このファクシミリ装置では、データ通信部から電話機に切り替えて通信回線に接続する際に、データ通信部と電話機とを通信回線に並列接続することによって、電話機に回線電流を供給する。これにより、接続の切り替え前に、電話機を通話可能な状態にすることができる。
【0003】
このようなファクシミリ装置は、PBXに接続される場合もあるが、多くの場合、公衆回線網(PSTN)に接続される。PSTNに接続されるファクシミリ装置やPSTN側の交換機として導入される装置は、所定の技術基準に適合するように、厳しい管理が行われている。
【0004】
一方で、近年では、DSL回線や光回線等の広帯域な伝送路を有するIPネットワークを使用して音声データを送受信する、VoIP(ボイス・オーバ・インターネット・プロトコル)と称される技術が普及しつつある。上述のようなPSTN用のファクシミリ装置をIPネットワークに対して接続するとともに、ファクシミリ装置に接続された電話機により、VoIPを使用して音声通信を行う場合、以下の点が想定される。例えば、ファクシミリ装置から出力される音声信号を、IPネットワークに適合した形式の信号に変換するインタフェースとして機能するアダプタが必要となる。このようなアダプタは、一般に、入力される音声信号をIPネットワークへ送信するだけでなく、入力されるダイヤルパルス信号を検知して、通信先を特定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05−007273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ファクシミリ装置のような通信装置に接続されるアダプタは、PSTNに接続されることがないため、PSTNに接続するために必要とされる所定の技術基準を満たす必要はない。そのため、このようなアダプタでは、PSTN用の基準によれば正規のダイヤルパルス信号として検知され得ないレベルの、短い時間幅かつ微小な電流又は電圧の変化を、ダイヤルパルス信号として誤検知してしまうおそれがある。例えば、通信装置において、装置内部のリレーの切り替えや外付けされた電話機のオフフック操作に起因して生じる、非常に短い時間幅かつ微小な電流又は電圧の変化が、アダプタにおいてダイヤルパルス信号(選択信号)として誤検知されてしまうおそれがある。その結果、電話機からのダイヤルパルス信号に基づいて、正しい宛先にダイヤルできなくなる。
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、通信装置において、外付けされた電話機を通信回線に接続する際に、通信回線に生じる電流及び電圧の急激な変化を低減する技術を提供することを目的としている。また、外付けの電話機が、オフフックしてから比較的短時間に選択信号を送信する場合にも、そのような電流及び電圧の急激な変化を低減する技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、例えば、通信装置として実現できる。通信装置は、外付けの電話機を接続するための接続手段と、接続手段を介して電話機を回線へ接続した接続状態及び切断した切断状態を切り替える切替手段と、電話機のオフフックを検知する検知手段と、電話機と並列に回線に接続され、回線の捕捉状態を制御する網制御手段とを備える通信装置であって、切断状態において、検知手段によって電話機のオフフックが検知されると、回線に接続された網制御手段のインピーダンスを、電話機側よりも低いインピーダンスに設定し、網制御手段による回線の捕捉を開始するよう制御する捕捉制御手段と、網制御手段による回線の捕捉の開始後、当該捕捉の終了タイミングよりも前に、切替手段を切断状態から接続状態に切り替えることにより、電話機を回線に接続するよう制御する接続制御手段と、終了タイミングにおいて、網制御手段による回線の捕捉状態を解放する回線解放手段と、を備え、終了タイミングは、検知手段によって電話機のオフフックが検知されるタイミングから、宛先のダイヤル番号を示す選択信号の送信が電話機によって開始されるタイミングまでの期間内のタイミングに設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、通信装置において、外付けされた電話機を通信回線に接続する際に、通信回線に生じる電流及び電圧の急激な変化を低減する技術を提供できる。また、外付けの電話機が、オフフックしてから比較的短時間に選択信号を送信する場合にも、そのような電流及び電圧の急激な変化を低減する技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係るファクシミリ装置100のブロック構成例を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係るファクシミリ装置100における、SDAA104による回線捕捉時間Tcを計測モードによって決定する動作の手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態に係るファクシミリ装置100における、電話機128を回線に接続する動作の手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態に係るファクシミリ装置100が電話機128を回線を接続する際に、SDAA104による1段階の回線捕捉制御を行う場合の動作のタイミングを示すタイミングチャートである。
【図5】本発明の実施形態に係るファクシミリ装置100が電話機128を回線を接続する際に、SDAA104による2段階の回線捕捉制御を行う場合の動作のタイミングを示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0012】
<ファクシミリ装置100の構成>
まず、図1を参照して、本発明の実施形態に係る通信装置(ここでは、ファクシミリ装置を例に説明する。)100のブロック構成について説明する。システム・オン・チップ(SOC)101は、ファクシミリ装置100のシステム全体を制御する。ファクシミリ装置100におけるCPU(図示せず)は、SOC101上に実装されている。SOC101に接続されたメモリ140は、主記憶装置であり、SOC101のCPUのシステムワークメモリ、図2及び図3に示す処理等を実行するための制御プログラムを格納するメモリとして機能する。また、メモリ140は、ファクシミリ送信又はファクシミリ受信等の際に、画像データや各種情報を一時的に記憶するためのメモリとしても機能する。
【0013】
SOC101には、操作パネル118、読取部121、記録部122、インタフェース(IF)部123が接続されている。操作パネル118は、表示器119及びキーボード類120を備え、これらはユーザ・インタフェースとして機能する。表示器119は、装置の状態やメニューに関する表示を行う。また、キーボード類120は、ユーザからの各種の指示の入力を受け付けるボタンやテンキー等のキーボードである。読取部121は、原稿から画像を読み取って、画像データを生成する。生成された画像データは、通信回線130を介して相手側装置に対してファクシミリ送信されてもよいし、記録部122に送られて、用紙に対する画像の印刷(記録)のために使用されてもよい。インタフェース(IF)部123は、各種の情報機器が外部から接続される場合のインタフェースとして機能する。
【0014】
モデム102は、SOC101に接続されており、SOC101による制御に基づいて動作する変復調器である。モデム102は、ファクシミリ送信の対象となる、読取部121で読み取られた画像データを用いた変調処理と、通信回線130を介して受信した信号の復調処理とを行う。モデム102は、絶縁素子103を介してSDAA(シリコンDAA)104と接続されている。
【0015】
SDAA104は、網制御手段の一例であって、半導体NCU(ネットワーク制御ユニット)である。ここで、ファクシミリ装置100は、外付けの電話機128が接続される接続端子129と、通信回線130が接続される接続端子131とを備える。SDAA104は、接続端子131を介して外部の公衆回線(通信回線)130と接続されており、ファクシミリ装置100と通信回線130とのインタフェースとして機能する網制御装置である。
【0016】
SDAA104は、通信回線130を介して相手側装置との間で通信を行う際に、回線の接続(捕捉)状態を制御する。通信回線130には、接続端子129を介してファクシミリ装置100に外付けされた電話機128も接続される。電話機128は、接続端子129、Hリレー110を介して通信回線130に接続されており、SDAA104は、電話機128と並列に通信回線130に接続されている。SDAA104は、ファクシミリ送受信を行う場合に、回線を捕捉してその通信を制御するだけでなく、電話機128が通信回線130を介して相手側装置との間で音声通信を行う場合にも、回線の捕捉状態を制御する。SDAA104は、これらの制御をSOC101の制御に基づいて実行する。
【0017】
図1に示すように、SDAA104は、回線の捕捉状態を制御する際に、異なる複数のインピーダンスのDC特性を実現できるように、インピーダンス可変の回線捕捉部105を備える。SDAA104は、SOC101による制御に基づいて回線捕捉部105のインピーダンスを設定し、当該回線捕捉部105を使用して回線の捕捉状態を制御する。即ち、SDAA104は、SOC101からのインピーダンス設定又は変更指示に応じて、当該回線捕捉部105のインピーダンスを時間的に変更して、回線の捕捉状態を制御する。回線捕捉部105のインピーダンスは、例えば、回線捕捉部105が有する、予め設定された直流電圧に対する電流特性(DC‐VI特性)を変更することによって変化させることが可能である。
【0018】
なお、図1では、SDAA104が1つの回線捕捉部105を有する場合について示しているが、SDAA104は、それぞれ異なるインピーダンスの複数の回線捕捉部を備えていてもよい。この場合、SOC101は、当該複数の回線捕捉部のうち、設定すべきインピーダンスに対応する回線捕捉部を使用するようSDAA104を制御すればよい。これにより、上述と同様、SDAA104において、SOC101による制御に基づいて設定されたインピーダンスで回線の捕捉状態を制御することが可能である。
【0019】
本実施形態では、SDAA104の回線捕捉部105は、SOC101による制御に基づいて、一例として、異なる3つのインピーダンス(第1、第2及び第3のインピーダンス)のDC特性の何れかに設定され得る。ここで、第1のインピーダンス(Z1)は、通信回線130から見た場合に、電話機側(電話機128側)よりも低く、例えば、20mAの電流に対して150Ω程度の低インピーダンスである。また、第2のインピーダンス(Z2)は、第1のインピーダンスより高く、例えば、20mAの電流に対して600Ω程度の高インピーダンスである。これら第1及び第2のインピーダンスは、後述するように、電話機128を通信回線を接続する際の回線捕捉に使用される。
【0020】
また、回線捕捉部105は、SDAA104が通信回線130を介して相手側装置と通信を行う際には、第3のインピーダンス(Z3)に設定され得る。この第3のインピーダンスは、通信に使用する場合に適したインピーダンスであり、第1のインピーダンスより高く、かつ、第2のインピーダンスより低いインピーダンスであればよい。第3のインピーダンスは、20mAの電流に対して300Ω程度(中程度のインピーダンス)の、通信用に適した中程度のインピーダンスである。
【0021】
CI(Call Indicator)検知回路108は、通信回線130に接続されており、通信回線から受信した呼び出し信号(以下では、「CI信号」と称する。)を検知する。CI検知回路108は、通信回線からのCI信号を検知すると、そのことを示すCI検知信号109をSOC101に対して送信する。SOC101は、CI検知信号109に基づいて、通信回線からCI信号の着信があったか否かを判断することができる。
【0022】
Hリレー110は、フック検知回路117を介して接続される外付けの電話機128を、DC電源113及び通信回線130の何れかに接続するための回路である。DC電源113は、フック検知回路117に対して電力を供給するためのDC電源である。Hリレー110は、切替手段の一例であり、外付けの電話機128を通信回線130へ接続した接続状態と、通信回線130から切断した切断状態との間の切り替えを行う。また、Hリレー110は、Hリレー駆動信号111を用いて、SOC101によって制御される。なお、図1に示すように、Hリレー110によって、電話機128が通信回線130から切り離されている場合、CI信号の着信(CI着信)があったとしても電話機128は鳴動しない。即ち、この場合、ファクシミリ装置100は無鳴動着信状態である。
【0023】
フック検知回路117は、検知手段の一例であり、電話機128と接続されており、電話機128のオフフック又はオンフックを検知する回路である。フック検知回路117は、電話機128のオフフック又はオンフックの検知結果を、フック検知信号114を用いてSOC101へ伝達する。SOC101は、フック検知信号114に基づいて、電話機128におけるフックの状態を判定することができる。フック検知回路117は、Hリレー110によって、通信回線130に直接接続された場合、及びDC電源113に接続された場合の何れも、電話機128に流れる電流を検知する。これによって、電話機128におけるオフフック又はオンフックの状態を検知する。
【0024】
擬似CI送出回路116は、擬似CI信号を電話機128に対して送出する回路である。疑似CI信号とは、通信回線130を介して相手側装置からのCI着信があった場合に、回線から切断された状態にある電話機128を鳴動させるために、電話機128に対して送られる信号である。擬似CI送出回路116は、SOC101からの擬似CI駆動信号115による送出指示に応じて、擬似CI信号を電話機128に対して送出する。
【0025】
ファクシミリ装置100は、通信回線130を介してVoIPアダプタ124と接続されている。VoIPアダプタ124は、300〜3400Hzの音声帯域周波数のファクシミリ又は電話機の送信信号に対して、PCM符号化等を施すとともに、SIP等のプロトコルを用いてIPネットワークへ送信する。VoIPアダプタ124からの出力信号は、一例として、ブロードバンドルータ125及び回線終端装置126を介して、光回線網127のIPネットワークに対して送信される。一方で、VoIPアダプタ124は、光回線網127から受信した信号を、300〜3400Hzの音声帯域周波数のファクシミリ又は電話機の信号に変換する。さらに、当該信号を通信回線130を介してファクシミリ装置100へ送信する。また、VoIPアダプタ124は、入力された信号からダイヤルパルスを認識し、又はファクシミリ装置100に外付けされた電話機128におけるフッキング等を認識する機能を有する。
【0026】
接続端子129を介してファクシミリ装置100に外付けされた電話機128は、自動発呼機能を備えている。自動発呼機能とは、電話機128が、ワンタッチダイヤルや短縮ダイヤル等により、予め設定された宛先(発呼先)に自動的に発呼する機能をいう。電話機128は、自動発呼機能を実行する場合、オフフックに応じて自動的に、宛先のダイヤル番号を示す選択信号を、ファクシミリ装置100を介して通信回線130上に送信する。選択信号は、ダイヤルパルス(DP)信号又はDTMF(Dual-Tone Multi-Frequency)信号である。
【0027】
<ファクシミリ装置100の動作の概要>
ファクシミリ装置100は、各種の動作モードを有する。例えば、ファクシミリ装置100は、無鳴動着信モード、及びF/Tモード(FAX/TEL切替モード)を動作モードとして有し、何れの動作モードにおいても、電話機128はHリレー110によって予め回線から切断された状態にある。ここで、無鳴動着信モードは、CI信号の着信がCI検知回路108で検知された際に、CI信号によって電話機128が鳴動させることなくファクシミリ受信を可能にする動作モードである。また、F/Tモードは、CI信号の着信がCI検知回路108で検知された際に、発信先が電話であるかファクシミリであるかをSOC101で判定する動作モードである。当該モードにおいてSOC101は、発信先が電話である場合には電話機128を鳴動させ、ファクシミリである場合にはファクシミリ受信を行う制御を実行する。本実施形態は、これらの動作モードのうち、特に無鳴動着信モードと関連するため、以下では、ファクシミリ装置100が無鳴動着信モードで動作している場合を中心として説明する。
【0028】
無鳴動着信モードにおいては、ファクシミリ装置100は、電話機128のオフフックを検知すると、通信回線130から切断された状態にある電話機128を、Hリレー110の切り替えによって通信回線130に接続する。これにより、ユーザに対して電話機128を用いた通話機能を提供する。ところが、Hリレー110を切り替える際には、通信回線130から見たファクシミリ装置100のインピーダンスが、一時的に不安定になる可能性がある。例えば、当該インピーダンスが、低インピーダンスとなった後に、高インピーダンスへ短時間のうちに変化する可能性がある。これにより通信回線130に電流及び電圧の変化が生じる結果、通信回線130に接続されたVoIPアダプタ124が当該電流及び電圧の変化をダイヤルパルスと誤認識するおそれがある。例えば、当該インピーダンスが、低インピーダンスとなって回線が捕捉された後に、高インピーダンスへ変化し、再び低インピーダンスへ戻ると、VoIPアダプタ124はこれをダイヤルパルス“1”と誤認識してしまう。その場合、SDAA104による回線捕捉の後に、ユーザがダイヤルパルス信号を電話機128から入力すると、先頭に“1”が付加されたダイヤルパルス信号としてVoIPアダプタ124に認識され、誤った電話番号へ回線が接続されることになる。
【0029】
この問題に対処するために、本実施形態に係るファクシミリ装置100は、外付けの電話機128を通信回線130に接続する際に、上述のような当該通信回線に生じる電流及び電圧の急激な変化を低減するために、以下の動作を実行する。具体的には、SDAA104は、Hリレー110を切り替える(電話機128を通信回線130に接続する)前に、回線捕捉部105のインピーダンスを、通信回線130から見て電話機128側よりも低いインピーダンスのDC特性に設定して回線捕捉を行う。これにより、回線捕捉中に、通信回線130から見たインピーダンスが高インピーダンスに変化しないようにする。その後、Hリレー110を切り替えて、電話機128を通信回線130に接続した後に、SDAA104による回線の捕捉状態を解放する。これにより、通信回線130上の回線電流の全てが電話機128側へ流れることになり、電話機128が回線に接続される。
【0030】
さらに、本実施形態に係るファクシミリ装置100では、電話機128が自動発呼機能を備える場合、上述の動作に起因した問題が生じる可能性がある。具体的には、電話機128から自動発呼機能により送信される選択信号(DP信号又はDTMF信号)が、通信回線130に出力されずにファクシミリ装置100内で消失してしまい、電話機128からの発呼が正常に行われなくなる可能性がある。
【0031】
電話機128は、自動発呼機能により発呼する場合、自動的にオフフックを行うとともに、予め設定された選択信号の送信を自動的に開始する。オフフックを行ってから選択信号を送信するまでの所要時間は、電話機によって異なり、電話機によっては非常に短いことが知られている。即ち、電話機128は、自動発呼機能を使用する場合には、オフフックを行ってから比較的短時間に選択信号を送信する可能性がある。電話機128から送信された選択信号は、接続端子129を介してファクシミリ装置100に入力される。このとき、ファクシミリ装置100内で上述のようにSDAA104が回線捕捉を行っており、電話機128がHリレー110によって通信回線130から切断された状態であると、選択信号が通信回線130に送られずに消失してしまう。このように、SDAA104による回線捕捉制御のタイミングと選択信号の送信タイミングとが重なると、電話機128からの選択信号がファクシミリ装置100内で消失するおそれがある。この場合、通信回線130に選択信号が送信されず、電話機128が自動発呼機能により正常に発呼することができなくなる。
【0032】
本実施形態に係るファクシミリ装置100は、上述の問題に対処するために、通信回線130へ電話機128を接続する際にSDAA104による回線捕捉制御を行う場合に、電話機128から選択信号の送信が開始される前に、当該回線捕捉制御を完了させる。これにより、ファクシミリ装置100は、通信回線130へ電話機128を接続する際にSDAA104による回線捕捉を行う場合にも、電話機128が自動発呼機能により正常に発呼することを可能にする。ファクシミリ装置100では、後述するように、回線捕捉制御の終了タイミングは、SDAA104による回線捕捉制御を行う時間長として予め決定される回線捕捉時間Tcに基づいて設定される。なお、回線捕捉時間Tcは、例えば、操作パネル118から入力された情報に基づいて、又は、電話機128がオフフックを行ってから選択信号の送信が開始されるまでの時間について、予め測定して得られた計測値に基づいて、決定され得る。
【0033】
SDAA104による回線捕捉制御が完了すると、通信回線130上の回線電流の全てが電話機128側へ流れ始める。その際にも、電話機128によっては、インピーダンスが一時的に不安定になる場合がある。この場合、上述と同様、通信回線130に電流及び電流の変化が生じ、上述と同様、当該変化に起因してVoIPアダプタ124が誤動作するおそれがある。
【0034】
これに対して、ファクシミリ装置100は、電話機128を通信回線130に接続した(Hリレー110を切り替えた)後、SDAA104の回線捕捉状態を解放する前に、SDAA104のインピーダンスをより高いインピーダンスに変更してもよい。例えば、SDAA104は、Hリレー110の切り替え前に、第1のインピーダンス(Z1)で回線捕捉を行っている場合には、第1のインピーダンス(Z1)より高い第2のインピーダンス(Z2)に変更してもよい。ファクシミリ装置100は、その後に回線を解放することによって、電話機128へ流れ込む電流量が、徐々に(段階的に)増加するように制御する。即ち、SDAA104は、2つインピーダンスZ1,Z2を用いた2段階の回線捕捉制御を行ってもよい。これにより、電話機128側のインピーダンスが不安定となることを防止できるとともに、ファクシミリ装置100に接続されるVoIPアダプタ124においてダイヤルパルスの誤認識を防止することが可能である。
【0035】
ただし、SDAA104において、このような2段階の回線捕捉制御を行うためには、SDAA104による回線捕捉制御を実行可能な回線捕捉時間Tcが十分に確保されている必要がある。この回線捕捉時間Tcは、電話機128がオフフックを行ってから選択信号の送信が開始されるまでに要する時間Tmよりも短い必要がある。このため、2段階の回線捕捉制御を行うために十分な回線捕捉時間Tcを確保できない場合には、SDAA104はインピーダンスを回線捕捉制御中に変更することなく、1段階の回線捕捉制御を行えばよい。
【0036】
<回線捕捉時間Tcの決定手順>
以下では、本実施形態に係るファクシミリ装置100の動作について、より詳細に説明する。上述のようなSDAA104による回線捕捉制御を行うためには、SDAA104による回線捕捉時間Tcを予め決定しておく必要がある。回線捕捉時間Tcは、SDAA104による回線捕捉を開始してから終了するまでの時間長(SDAA104による回線捕捉制御を行う時間長)に相当する。オフフックされた電話機128を通信回線130に接続する際には、予め決定された回線捕捉時間Tcに基づいて、SDAA104による回線捕捉制御の終了タイミングが設定される。回線捕捉時間Tcは、以下のように、計測モード又は手動モードにより決定可能である。なお、何れのモードを使用するかについては、操作パネル118を介してユーザが予め指定できるようにすればよい。
【0037】
(計測モードの場合)
図2を参照して、ファクシミリ装置100における、SDAA104による回線捕捉時間Tcを計測モードによって決定する動作の手順について説明する。図2のフローチャートは、SOC101のCPUがメモリ140内のプログラムを実行することによって実現される。ファクシミリ装置100は、計測モードの場合、電話機128のオフフックを検知してから、電話機128からの選択信号の送信が開始されるまでの時間を計測する。さらに、ファクシミリ装置100は、得られた計測値Tmに基づいて、回線捕捉時間Tcを決定する。以下で説明する計測モードは、例えば、電話機128がファクシミリ装置100に外付けで接続された際の初期設定時に実行されてもよいし、電話機128がファクシミリ装置100に接続された後に、任意のタイミングに実行されてもよい。あるいは、操作パネル118を介したユーザの操作に従って実行されてもよい。
【0038】
計測モードでは、まず、S101で、SOC101は、Hリレー駆動信号111を用いてHリレー110を制御して、電話機128を通信回線130から切り離す。これにより、図1に示すように、Hリレー110は、DC電源113をフック検知回路117に接続した状態に切り替わる。フック検知回路117は、DC電源113から供給される電力を用いて、電話機128のオフフックを検知可能となる。
【0039】
次に、ユーザの直接の操作又はファクシミリ装置100から送られる指示に応じて、電話機128が、自動発呼機能による発呼(オフフック及び選択信号の送信)を試験的に実行する。S102で、SOC101は、フック検知回路117によって電話機128のオフフックが検知されたか否かを判定する。フック検知回路117は、電話機128のオフフックを検知すると、そのことを示すフック検知信号114をSOC101に送信する。SOC101は、フック検知信号114に基づいて、電話機128のオフフックが検知されていないと判定した場合には、S102の判定処理を繰り返す。一方で、SOC101は、当該オフフックが検知されたと判定した場合、処理をS103へ進める。
【0040】
S103で、SOC101は、S101におけるオフフックの検知に応じてタイマをスタートさせて、計時を開始する。さらに、S104で、SOC101は、Hリレー駆動信号111を用いてHリレー110を制御して、電話機128を通信回線130に接続するように、Hリレー110の切替処理を行う。その後、S105で、SOC101は、電話機128から送信された選択信号(DP信号又はDTMF信号)を検知したか否かを判定する。ここで、SOC101は、選択信号を検知していないと判定した場合には、S105の判定処理を繰り返すことによって、選択信号を検知するまで待機する。SOC101は、S105で、選択信号を検知すると、処理をS106に進める。S106で、SOC101は、タイマをストップさせることによって、S103でタイマをスタートさせてからストップさせるまでの時間の計測値Tmを得る。この計測値Tmは、電話機128のオフフックが検知されてから、電話機128によって選択信号の送信が開始されるまでの時間の計測値に相当する。
【0041】
S107で、SOC101は、計測値Tmが、所定の基準値Tref以上であるか否かを判定する。この基準値Trefは、ファクシミリ装置100が電話機128を通信回線130に接続する際に実行する、SDAA104による1段階の回線捕捉制御を実行するために、最低限必要な時間として定められる。本実施形態では、一例として、基準値Tref=400[ms]とする。ここで、SOC101は、計測値Tmが、基準値Tref以上であると判定した場合、処理をS108へ進める一方で、基準値Tref未満であると判定した場合、処理をS109へ進める。
【0042】
S108で、SOC101は、計測値Tmを用いて回線捕捉時間Tcを決定する。具体的には、SOC101は、回線捕捉時間Tcを、計測値Tmよりも短い時間に決定する。これは、電話機128のオフフックが検知されるタイミングから、電話機128から選択信号の送信が開始されるタイミングまでの期間内に、SDAA104による回線捕捉制御を完了させるためである。また、回線捕捉時間Tcと計測値Tmとの差分は、電話機128のオフフックが検知されてから、SDAA104による回線捕捉制御が開始されるまでの遅延時間を考慮して定めることが望ましい。即ち、SDAA104による回線捕捉制御にある程度の時間的な余裕を与えるために、そのような遅延時間を考慮して、回線捕捉時間Tcを計測値Tmよりもある程度短くする必要があるであろう。例えば、計測値Tmから100ms減算して得られた値を、回線捕捉時間Tcとして決定すればよい。SOC101は、決定した回線捕捉時間Tcを、メモリ140等の記憶装置に保存する。
【0043】
一方で、S109で、SOC101は、SDAA104による回線捕捉制御を無効化する。即ち、電話機128が選択信号の送信を開始する前に、SDAA104による回線捕捉制御を実行するために十分な時間を確保できない場合には、SOC101は、SDAA104による回線捕捉制御を行わず、電話機128を通信回線130に接続する。
【0044】
S108で決定された回線捕捉時間Tcに基づいて、SOC101は、SDAA104による回線捕捉制御の終了タイミングを設定することが可能である。SOC101は、電話機128のオフフックが検知された後、SDAA104による回線捕捉を開始したタイミングから、回線捕捉時間Tcが経過するタイミングを、当該終了タイミングとして設定すればよい。なお、計測モードによる回線捕捉時間Tcの決定は、複数回の計測により得られた計測値に基づいて行われてもよい。その場合、回線捕捉時間Tcを、S101〜S106を複数回実行することによって得られた複数の計測値の何れよりも短い時間に決定すればよい。例えば、S101〜S106により計測値が得られるごとに、S108で、その計測値がそれまでに得られた計測値よりも値が小さい場合に、新たな回線捕捉時間Tcを決定し、メモリ140に保存されたデータを更新すればよい。このように、複数回の計測により得られた計測値に基づいて回線捕捉時間Tcを決定することによって、Tcをより適切な値に決定できるようになる。
【0045】
(手動モードの場合)
手動モードでは、ユーザは、操作パネル118を介して回線捕捉時間Tcを予め入力することが可能である。ただし、回線捕捉時間Tcは、計測モードの場合と同様、電話機128がオフフックを行ってから選択信号の送信を開始するまでに要する時間(上述の計測値Tmに相当)よりも短い時間として入力される必要がある。SOC101は、電話機128のオフフックが検知された際に、SDAA104による回線捕捉を開始したタイミングから、入力された回線捕捉時間Tcが経過するタイミングを、上述の終了タイミングとして設定すればよい。なお、この手動モードは、初期設定時等、任意のタイミングに実行可能である。また、ユーザが操作パネル118を介した操作に応じて入力可能な回線捕捉時間Tcの選択肢を予め用意しておき、ユーザにそれらの選択肢の何れかを選択させてもよい。例えば、300ms、600ms、及び1.6sを、回線捕捉時間Tcの選択肢として用意してもよい。
【0046】
<無鳴動着信モードにおける電話機128の回線接続手順>
次に、図3を参照して、無鳴動着信モードで動作中のファクシミリ装置100における、外付けの電話機128がオフフック状態となった場合に電話機128を回線に接続する動作の手順について説明する。図3のフローチャートは、SOC101のCPUがメモリ140内のプログラムを実行することによって実現される。また、図3と併せて、図4及び図5を参照して、各動作のタイミングについても説明する。図4は、ファクシミリ装置100がSDAA104による1段階の回線捕捉制御を行う場合、図5は、ファクシミリ装置100がSDAA104による2段階の回線捕捉制御を行う場合をそれぞれ示している。なお、図4(図5)では、電話機128の状態401(501)、SDAA104の状態402(502)、及びHリレー110の状態403(503)を示している。
【0047】
無鳴動着信モードにおいては、まず、S201で、SOC101は、S101と同様、Hリレー駆動信号111を用いてHリレー110を制御して、電話機128を通信回線130から切り離す。これにより、フック検知回路117は、DC電源113から供給される電力を用いて、電話機128のオフフックを検知可能となる。次に、S202で、SOC101は、SOC101は、フック検知回路117によって電話機128のオフフックが検知されたか否かを判定する。フック検知回路117は、電話機128のオフフックを検知すると(411,511)、そのことを示すフック検知信号114をSOC101に送信する。SOC101は、フック検知信号114に基づいて、電話機128のオフフックが検知されていないと判定した場合には、S202の判定処理を繰り返す。一方で、SOC101は、当該オフフックが検知されたと判定した場合、処理をS203へ進める。
【0048】
ここで、電話機128は、図4(図5)のタイミング411(511)でオフフックを行った後、タイミング415(516)において選択信号の送信を開始する。従って、ファクシミリ装置100では、タイミング411(511)からタイミング415(516)までの期間内に、SDAA104による回線捕捉制御を終了させる必要がある。
【0049】
次に、S203で、SOC101は、SDAA104による回線捕捉を実行するか否かを判定する。ここで、図2のS109においてSDAA104による回線捕捉制御が無効化されている場合には、SDAA104による回線捕捉を実行しないと判定して、処理をS212に進める。この場合、S212で、SOC101は、Hリレー駆動信号111を用いてHリレー110を制御して、電話機128を通信回線130に接続するように、Hリレー110の切替処理を行う。即ち、電話機128を通信回線130に接続する前に、SDAA104による回線捕捉制御を実行することなく、電話機128の回線接続処理を完了させる。一方で、S203で、SOC101は、SDAA104による回線捕捉を実行すると判定した場合、処理をS204へ進める。
【0050】
S204で、SOC101は、手動モード又は計測モードで決定された回線捕捉時間Tcが、予め定められた閾値以上(閾値Tth以上)であるか否かを判定する。ここで、SOC101は、回線捕捉時間Tcが閾値Tth以上であると判定した場合、S207へ処理を進める一方で、回線捕捉時間Tcが閾値未満(閾値Tth未満)であると判定した場合、S205へ処理を進める。ここで、この閾値Tthは、SDAA104による2段階の回線捕捉制御を行うために最低限必要な時間として予め定められる。本実施形態では、一例として、閾値Tthは、予め800msに定められている。回線捕捉時間Tcが閾値Tth未満である場合には、2段階の回線捕捉制御(S207〜S209)を行うには必要な時間が不足するため、1段階の回線捕捉制御(S205〜S206)が実行されることになる。
【0051】
(1段階の回線捕捉制御の場合)
S205で、SOC101は、SDAA104を制御して、SDAA104の回線捕捉部105のインピーダンスを、通信回線130に対して並列に接続された電話機128側の回路のインピーダンスよりも低い第1のインピーダンス(Z1)に設定する。さらに、SOC101は、Z1に設定された回線捕捉部105を使用して回線の捕捉を開始するよう、SDAA104を制御する(412)。このとき、SOC101は、SDAA104による回線捕捉制御の終了タイミングを、図4に示すように、タイミング412から回線捕捉時間Tcの経過後のタイミング414に設定する。その後、SOC101は、処理をS206へ進める。なお、S205で、SOC101は、捕捉制御手段の一例として機能する。
【0052】
その後、一定時間が経過すると、S206で、SOC101は、Hリレー駆動信号111によりHリレー110を制御して、電話機128を通信回線130に接続するように、Hリレー110の切替処理を行う(413)。ここで、S206におけるHリレー110の切替処理は、SDAA104による回線捕捉の開始後、当該捕捉の終了タイミング(414)よりも前に行われればよい。
【0053】
これにより、通信回線130からの回線電流が電話機128に向かって流れ始める。しかし、上述のとおり、回線捕捉部105は、電話機128側よりも低いインピーダンス(Z1)に設定されているため、回線電流の大部分は、Hリレー110側(電話機128側)ではなくSDAA104側に流れることになる。このように、通信回線130からHリレー110側へ流れる電流は、SDAA104側よりも非常に少ないため、Hリレー110の切り替えに伴う、電話機128側に流れる電流に急激な変化が生じることを防ぐことができる。なお、S206で、SOC101は、接続制御手段の一例として機能する。その後、SOC101は、2段階の回線捕捉制御の場合のS209のように回線捕捉部105のインピーダンスを変更させることはせず、回線捕捉を継続するとともに、S210へ処理を進める。
【0054】
(2段階の回線捕捉制御の場合)
S207及びS208は、1段階の回線捕捉制御の場合のS205及びS206とそれぞれ同様である。S207で、SOC101は、SDAA104の回線捕捉部105のインピーダンスをZ1に設定し、当該回線捕捉部105を使用して回線の捕捉を開始するよう、SDAA104を制御する(512)。このとき、SOC101は、SDAA104による回線捕捉制御の終了タイミングを、図5に示すように、タイミング512から回線捕捉時間Tcの経過後のタイミング515に設定する。S207の後、一定時間が経過すると、S208で、SOC101は、Hリレー駆動信号111によりHリレー110を制御して、電話機128を通信回線130に接続するように、Hリレー110の切替処理を行う(513)。S207及びS208で、SOC101は、それぞれ接続制御手段及び捕捉制御手段の一例として機能する。その後、SOC101は、処理をS209へ進める。
【0055】
S209で、SOC101は、SDAA104を制御して、SDAA104の回線捕捉部105のインピーダンスを、電話機128がS208で回線に接続される前の第1のインピーダンス(Z1)よりも高い、第2のインピーダンス(Z2)に変更させる(514)。ここで、S209における回線捕捉部105のインピーダンスの変更は、電話機128がS208で通信回線130に接続された(513)後、SDAA104による回線捕捉の終了タイミング(514)よりも前に行われればよい。
【0056】
これにより、SDAA104は、インピーダンスがZ2に変更された回線捕捉部105を使用して、回線捕捉を継続する。S209の後、SOC101は、処理をS210へ進める。S209の処理によって、通信回線130に接続されたSDAA104のインピーダンスが、電話機128側よりも高くなる。その結果、Hリレー110を介して電話機128へ流れる電流が、回線捕捉部105のインピーダンスの変更前よりも増加することになる。このように、SDAA104による2段階の回線捕捉制御によって、以下のS210で回線捕捉状態を解放する際に、通信回線130側から見た電話機128側の回路のインピーダンスが一時的に不安定になり、回線にノイズが生じることを防ぐことが可能となる。
【0057】
(回線解放制御)
S206又はS209の後、S210で、SOC101は、回線捕捉時間Tcに基づいて設定された終了タイミング(414,515)において、SDAA104を制御して、SDAA104による回線の捕捉状態を解放する。その結果、通信回線130からの回線電流が、全て電話機128へ流れ込むことになる。即ち、電話機128に流れる電流は、それまでよりさらに増加する。以上により、電話機128の通信回線130への接続が完了する。このように、電話機128を通信回線130へ接続する際のSDAA104による回線捕捉制御は、電話機128から選択信号の送信が開始されるタイミング415(516)よりも前に、終了する。なお、S210において、SOC101は、回線解放手段の一例として機能する。
【0058】
以上のように、本実施形態によれば、ファクシミリ装置100において、外付けの電話機128を回線に接続する際に、SDAA104による回線捕捉制御を行う。具体的には、SDAA104による回線捕捉制御は、まず、回線から切断された電話機128を回線に接続する前に、回線に接続されたSDAA104のインピーダンスを、回線に並列に接続された電話機128側の回路よりも低いインピーダンスに設定して行われる。これにより、電話機128側の回路よりもSDAA104に対して回線からの電流の大部分が流れ込む。その後、Hリレー110の切替処理により電話機128を回線に接続した後、SDAA104による回線捕捉状態を解放する。これにより、SDAA104が回線捕捉状態を解放して、回線からの全ての電流が電話機128へ流れ込む前に、Hリレー110の切替処理に起因して回線に生じる電流及び電圧の変化(雑音)を低減できる。
【0059】
また、本実施形態によれば、ファクシミリ装置100は、上述のSDAA104による回線捕捉制御を、外付けの電話機128から選択信号が送信される前に完了させる。この電話機128は、自動発呼機能等を実行する場合には、オフフックのタイミングから短時間に選択信号の送信を開始する。本実施形態では、このような場合に、SDAA104による回線捕捉制御によって当該選択信号をファクシミリ装置100内で消失させてしまうことなく、Hリレー110の切替処理に起因して回線に生じる上述の雑音を低減可能となる。
【0060】
さらに、本実施形態によれば、電話機128のオフフックが検知されてから、電話機128から選択信号の送信が開始されるまでに、十分な時間を確保可能な場合には、SDAA104による2段階の回線捕捉制御を行ってもよい。この場合、上述のHリレー110の切替処理の後、回線捕捉状態を解放する前に、SDAA104のインピーダンスを、当該切替処理前のインピーダンスより高いインピーダンスに一時的に変更する。これにより、回線から電話機128に流れ込む電流が、Hリレー110の切替処理前よりも増加する。その後、SDAA104が回線捕捉状態を解放すると、回線からの全ての電流が電話機128に流れ始める。このように、電話機128に流れ込む電流を徐々に(段階的に)増加させることによって、回線捕捉状態の解放に伴って回線に生じる雑音を低減することも可能となる。
【0061】
なお、本実施形態では、上述の1段階及び2段階の回線捕捉制御は、図3に示したように、入力された、又は計測処理に基づいて決定された回線捕捉時間Tcと、2段階の回線捕捉制御を実行可能か否か判断するための所定の閾値との比較結果に応じて、選択的に実行されてもよい。これにより、外付けの電話機が、自動発呼機能等によってオフフックから比較的短時間に選択信号の送信を開始する場合に、回線捕捉時間Tcに応じて、適切な回線捕捉制御を自動的に選択し、かつ、電話機128を回線に接続する際に回線に生じる雑音を低減可能となる。
【0062】
<その他の実施形態>
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外付けの電話機を接続するための接続手段と、前記接続手段を介して前記電話機を回線へ接続した接続状態及び切断した切断状態を切り替える切替手段と、前記電話機のオフフックを検知する検知手段と、前記電話機と並列に前記回線に接続され、前記回線の捕捉状態を制御する網制御手段とを備える通信装置であって、
前記切断状態において、前記検知手段によって前記電話機のオフフックが検知されると、前記回線に接続された前記網制御手段のインピーダンスを、前記電話機側よりも低いインピーダンスに設定し、前記網制御手段による前記回線の捕捉を開始するよう制御する捕捉制御手段と、
前記網制御手段による前記回線の捕捉の開始後、当該捕捉の終了タイミングよりも前に、前記切替手段を前記切断状態から前記接続状態に切り替えることにより、前記電話機を前記回線に接続するよう制御する接続制御手段と、
前記終了タイミングにおいて、前記網制御手段による前記回線の捕捉状態を解放する回線解放手段と、
を備え、
前記終了タイミングは、前記検知手段によって前記電話機のオフフックが検知されるタイミングから、宛先のダイヤル番号を示す選択信号の送信が前記電話機によって開始されるタイミングまでの期間内のタイミングに設定されること
を特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記捕捉制御手段は、さらに、
前記電話機が前記回線に接続された後、前記終了タイミングよりも前に、前記網制御手段のインピーダンスを、前記電話機が前記回線に接続される前のインピーダンスよりも高いインピーダンスに変更するよう前記網制御手段を制御すること
を特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記検知手段によって前記電話機のオフフックが検知されてから、前記電話機によって前記選択信号の送信が開始されるまでの時間を予め計測する計測手段と、
前記網制御手段による前記回線の捕捉を開始してから終了するまでの時間長である回線捕捉時間を、前記計測手段によって計測された計測値よりも短い時間に決定する決定手段と、
前記網制御手段による前記回線の捕捉が開始されたタイミングから、前記決定手段によって決定された前記回線捕捉時間が経過するタイミングを、前記終了タイミングとして設定する設定手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記計測手段は、前記検知手段によって前記電話機のオフフックが検知されてから、前記電話機によって前記選択信号の送信が開始されるまでの時間を、複数回にわたって計測し、
前記決定手段は、前記計測手段によって計測された複数の計測値の何れよりも短い時間に、前記回線捕捉時間を決定すること
を特徴とする請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記網制御手段による前記回線の捕捉を開始してから終了するまでの時間長である回線捕捉時間を、前記電話機がオフフックを行ってから前記選択信号の送信を開始するまでに要する時間よりも短い時間として予め入力する入力手段と、
前記網制御手段による前記回線の捕捉が開始されたタイミングから、前記入力手段によって入力された前記回線捕捉時間が経過するタイミングを、前記終了タイミングとして設定する設定手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項6】
前記捕捉制御手段は、
前記回線捕捉時間が予め定められた閾値以上であるか否かを判定する判定手段を備え、
前記回線捕捉時間が前記予め定められた閾値以上であると判定された場合には、前記電話機が前記回線に接続された後、前記終了タイミングよりも前に、前記網制御手段のインピーダンスを、前記電話機が前記回線に接続される前のインピーダンスよりも高いインピーダンスに変更するよう前記網制御手段を制御する一方で、
前記回線捕捉時間が前記予め定められた閾値未満であると判定された場合には、前記網制御手段のインピーダンスを変更せずに前記回線の捕捉を継続するよう前記網制御手段を制御すること
を特徴とする請求項3乃至5の何れか1項に記載の通信装置。
【請求項7】
前記選択信号は、前記電話機の自動発呼機能により、前記電話機からオフフックに応じて自動的に前記回線を介して送信されることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の通信装置。
【請求項8】
前記網制御手段は、それぞれ異なるインピーダンスの複数の回線捕捉手段を備え、
前記捕捉制御手段は、前記複数の回線捕捉手段のうち、設定すべきインピーダンスに対応する回線捕捉手段を使用するよう前記網制御手段を制御すること
を特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の通信装置。
【請求項9】
外付けの電話機を接続するための接続手段と、前記接続手段を介して前記電話機を回線へ接続した接続状態及び切断した切断状態を切り替える切替手段と、前記電話機のオフフックを検知する検知手段と、前記電話機と並列に前記回線に接続され、前記回線の捕捉状態を制御する網制御手段とを備える通信装置の制御方法であって、
捕捉制御手段が、前記切断状態において、前記検知手段によって前記電話機のオフフックが検知されると、前記回線に接続された前記網制御手段のインピーダンスを、前記電話機側よりも低いインピーダンスに設定し、前記網制御手段による前記回線の捕捉を開始するよう制御する捕捉制御工程と、
接続制御手段が、前記網制御手段による前記回線の捕捉の開始後、当該捕捉の終了タイミングよりも前に、前記切替手段を前記切断状態から前記接続状態に切り替えることにより、前記電話機を前記回線に接続するよう制御する接続制御工程と、
回線解放手段が、前記終了タイミングにおいて、前記網制御手段による前記回線の捕捉状態を解放する回線解放工程と、
を含み、
前記終了タイミングは、前記検知手段によって前記電話機のオフフックが検知されるタイミングから、宛先のダイヤル番号を示す選択信号の送信が前記電話機によって開始されるタイミングまでの期間内のタイミングに設定されること
を特徴とする通信装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−156721(P2012−156721A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13372(P2011−13372)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】