通信装置及びコンピュータプログラム
【課題】低通信料金でデータの通信を実行し得る技術を提供すること。
【解決手段】多機能機は、通信速度および課金時間当りの課金が異なる複数個の帯域のいずれかに従って、データの通信を実行する。CPUは、部分FAXデータを所定の通常帯域に従って送信する。CPUは、データを送信した旨を示すPPS信号を通常帯域に従って送信する。CPUは、PPS信号の応答として通信先機器がビジー状態である旨を示すRNR信号を受信することを条件として、部分FAXデータの送信を停止するとともに、使用する帯域を通常帯域より遅い最低帯域に変更する。CPUは、通信先機器がビジー状態であるか否かを問い合わせるためのRR信号を、最低帯域に従って送信する。
【解決手段】多機能機は、通信速度および課金時間当りの課金が異なる複数個の帯域のいずれかに従って、データの通信を実行する。CPUは、部分FAXデータを所定の通常帯域に従って送信する。CPUは、データを送信した旨を示すPPS信号を通常帯域に従って送信する。CPUは、PPS信号の応答として通信先機器がビジー状態である旨を示すRNR信号を受信することを条件として、部分FAXデータの送信を停止するとともに、使用する帯域を通常帯域より遅い最低帯域に変更する。CPUは、通信先機器がビジー状態であるか否かを問い合わせるためのRR信号を、最低帯域に従って送信する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、複数個の帯域のいずれかに従って、データの通信を実行する通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
帯域確保型データ通信サービスは、SIP(Session Initiation Protocol)サーバやSIPアダプタを使用し、ネットワーク回線を介して、FAX送受信などの各種通信を行うサービスである。帯域確保型ネットワークでは、回線接続単位で利用帯域(例:1Mbps(megabit per second)、64kbps(kilobit per second)など)を選択して接続することが可能である。また、利用帯域は、通信中に変更可能となっている。
【0003】
帯域確保型データ通信サービスで使用される通信規格には、ECM(Error Correction Mode)と呼ばれる規格が存在する。ECM規格は、通信回線上でエラーが発生した場合に、受信側からエラーフレームを要求し、そのエラーフレームに対応する正常フレームを送信側が再送することで、自動で訂正データを送信できる仕組みである。また、ECM規格には、RNR(Receive Not Ready)信号とRR(receive ready request)信号が存在する。RNR信号は、データ受信側からデータ送信側に送信される信号である。RNR信号は、データ受信側の処理能力の低下(例:メモリ領域の減少)に起因して、データ送信側にデータの送信を一時停止させるための信号である。RR信号は、データ送信側からデータ受信側に送信される信号である。RR信号は、データの送信を再開してよいか否かをデータ受信側に問い合わせるための信号である。なお、関連する技術として、特許文献1が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−349857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
帯域確保型データ通信サービスにおいて、データの通信に要した時間に応じた通信料金が端末装置に課される課金方式(時間課金方式)が採用される場合がある。この場合、一定時間(例えば3分)が経過するたびに、次の一定時間に対する課金が加算される。また、利用帯域が大きくなる(通信速度が速くなる)ことに応じて、一定時間に対する課金額が高くなる。
【0006】
時間課金方式では、データ受信側の処理能力が低下し、RNR信号によってデータ送信が一時停止されると、停止期間中において無駄な課金が発生することになる。そして、利用帯域が大きくなることに応じて、一定時間に対する課金額が高くなるため、停止期間中における無駄な課金額が必要以上に高くなることになる。本明細書では、このような不便性を解消することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に記載の通信装置は、帯域確保型ネットワークに接続され、通信速度が異なるとともに課金単位時間当りの通信料金が異なる複数個の帯域のいずれかに従って、通信先機器との間でデータの通信を実行する通信装置であって、データを所定の第1帯域に従って送信する第1送信手段と、データを送信した旨を示す第1信号を第1帯域に従って送信する第2送信手段と、第1信号の応答として通信先機器がビジー状態である旨を示す第2信号を受信することを条件として、第1送信手段によるデータの送信を停止するとともに、使用する帯域を第1帯域より遅い第2帯域に変更する帯域変更手段と、通信先機器がビジー状態であるか否かを問い合わせるための第3信号を第2帯域に従って送信する第3送信手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
課金単位時間当りの通信料金を用いる帯域確保型ネットワークでは、データ送信の停止期間中においても課金されるため、停止期間中において無駄な課金が発生することになる。本願に記載の通信装置では、通信先装置がビジー状態であることが判明すると、データの送信を停止するとともに、帯域を第1帯域より遅い第2帯域に変更する。これにより、利用帯域が遅くなることに応じて課金単位時間当りの通信料金が安くなることが一般的であるため、停止期間中における無駄な課金額が必要以上に高くなってしまう事態を防止できる。
【0009】
また、請求項2に記載の通信装置では、通信先機器が実際にビジー状態である期間中のみ、帯域を第2帯域にすることができる。これにより、課金額が必要以上に高くなる事態を防止することと、データ通信に必要な時間の短縮化とを両立することができる。
【0010】
通信先機器が帯域確保型ネットワークに非対応である場合には、対応している機器に比してデータ処理時間が長くなり、ビジー状態になり易い傾向がある。請求項3に記載の通信装置では、通信先機器が帯域確保型ネットワークに非対応であることを検出した場合にのみ、帯域を第1帯域から第2帯域に変更する。これにより、課金額が必要以上に高くなる事態をより効果的に防止することができる。
【0011】
第2信号を受信してから第4信号を受信するまでの第1期間は、通信先機器がビジー状態である期間である。そして、第1期間が第1帯域の課金単位時間を越えている場合は、帯域を第1帯域から第2帯域に変更することで、課金額が必要以上に高くなる事態を確実に防止できる場合である。請求項4に記載の通信装置では、第1期間が第1帯域の課金単位時間を越えている場合にのみ帯域変更を行うため、無駄な帯域変更処理が実行されてしまう事態を防止することができる。
【0012】
また、請求項5に記載の通信装置では、データ送信の停止期間中に、通信速度が最小の帯域を使用することができる。これにより、課金額が必要以上に高くなる事態をより効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】通信システムの構成の一例を示す。
【図2】IPFAX送信処理のフローチャートを示す。
【図3】原稿読取処理のフローチャートを示す。
【図4】回線接続処理のフローチャートを示す。
【図5】FAX送信処理のフローチャートを示す。
【図6】MCF/RNR受信処理のフローチャートを示す。
【図7】UPDATE処理のフローチャートを示す。
【図8】回線切断処理のフローチャートを示す。
【図9】帯域課金情報テーブルの一例を示す。
【図10】INVITEメッセージのSDPの一例を示す。
【図11】通信システムの動作を示すシーケンス図を示す。
【図12】通信システムの動作を示すシーケンス図を示す。
【図13】MCF/RNR受信処理のフローチャートを示す。
【図14】MCF/RNR受信処理のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施例)
(システムの構成)
図面を参照して第1実施例を説明する。図1に示されるように、通信システム2は、IP網4と、LAN6、8と、多機能機10、110と、SIPサーバ120と、ホームゲートウェイ130を備える。多機能機10はLAN6に接続されている。多機能機110は、ホームゲートウェイ130を介してLAN8に接続されている。LAN6、8及びSIPサーバ120は、IP網4に接続されている。多機能機10と、SIPサーバ120と、多機能機110とは、LAN6、8とIP網4を介して、相互に通信可能である。
【0015】
IP網4は、プロバイダ(インターネット接続業者)によって提供されるIP網である。IP網4は、SIPサーバ120で制御される。IP網4の一例としては、NGN(Next Generation Network)が挙げられる。NGNは、現行の公衆網を代替する次世代IPネットワークである。すなわちNGNは、現在別々に構築されている、インターネットサービス用IPネットワークと電話サービス用の電話網を、IP技術を用いてIP通信網として統合したネットワークである。
【0016】
NGNは、帯域保証機能を有している。帯域保証機能は、契約した帯域(通信速度)を保障することができる機能である。またNGNでは、回線接続単位で帯域を選択して接続することができるとともに、使用する帯域を接続中に変更することが可能である。またNGNでは、帯域確保型データ通信サービスにおいて、データの通信に要した時間に応じた通信料金が端末装置に課される課金方式(時間課金方式)が採用される場合がある。なお、帯域保証の語は、「QoS(Quality of Service)」と言い換えてもよい。
【0017】
ホームゲートウェイ130は、IP網4と多機能機110との間のデータの受け渡しを行う機器である。ホームゲートウェイ130は、TEL_I/FおよびLAN_I/F(不図示)を備える。多機能機110がT.38FAX信号(NGNを利用したIPネットワーク)に対応している場合には、多機能機110はLAN_I/Fに接続される。この場合には、多機能機10から多機能機110までの接続経路では、T.38FAX信号によって通信が行われる。また、多機能機110がT.30FAX信号(公衆電話交換回線網(PSTN))に対応している場合には、多機能機110はTEL_I/Fに接続される。この場合には、多機能機10からホームゲートウェイ130までの接続経路ではT.38FAX信号によって通信が行われ、ホームゲートウェイ130と多機能機110との接続経路ではT.30FAX信号によって通信が行われる。またこの場合には、各種の信号(DIS信号、RNR信号、RR信号、MCF信号など)が、ホームゲートウェイ130を介して、多機能機10と多機能機110との間で通信される。また、ホームゲートウェイ130は、通常のルータ機能のほか、VoIP(voice over IP)ゲートウェイ機能や、ユーザや端末の認証機能などを搭載していてもよい。
【0018】
なお、T.38FAX信号に対応している多機能機に比して、T.30FAX信号に対応している多機能機の方が、データ処理能力が低くなる。これは、T.38FAX信号が用いられる通信回線(NGNを利用したIPネットワーク)の通信速度に比して、T.30FAX信号が用いられる通信回線(PSTN)の通信速度の方が遅いため、T.38FAX信号の対応機器に比してT.30FAX信号の対応機器の方が、データ処理能力が低い(例:搭載メモリ量が少ない)ためである。よって、T.38FAX信号の対応機器に比してT.30FAX信号の対応機器の方が、後述するデータ通信停止期間DT1が発生しやすい。なお、T.30FAX信号に対応している多機能機の通信速度は、例えば、33.6kbps〜2.4kbpsまでの範囲内である。
【0019】
(多機能機10の構成)
多機能機10の構成について説明する。なお、多機能機110は、多機能機10と同様の構成を備える。多機能機10は、印刷機能、スキャナ機能、コピー機能、電子メール送受信機能、IPFAX機能、電話機能等の多機能を備える。多機能機10は、表示部12と、操作部14と、ネットワークI/F(インターフェイス)16と、スキャン実行部18と、印刷実行部20と、制御部22と、を備える。上記の各部12〜22はバス線24に接続されている。表示部12は、様々な情報を表示するためのディスプレイである。操作部14は、複数のキーによって構成される。ユーザは、操作部14を操作することによって、様々な指示を多機能機10に入力することができる。ネットワークI/F16は、LAN6に接続されている。スキャン実行部18は、CIS、CCD等のスキャン機構を備え、スキャン対象物をスキャンすることによって画像データを生成する。印刷実行部20は、インクジェットヘッド方式、レーザ方式等の印刷機構を備え、制御部22からの指示に従って印刷を行う。
【0020】
制御部22は、CPU30とメモリ32とを備える。メモリ32は、プログラム34と、帯域課金情報テーブル36と、パラメータ群38と、を格納している。CPU30は、メモリ32内のプログラム34に従って処理を実行する。
【0021】
図9に、帯域課金情報テーブル36の一例を示す。帯域課金情報テーブル36は、帯域60(例えば「2.6Mbps〜」)と、送信速度61(例えば「5.0MB/秒」)と、課金時間62(例えば「180(s)」)と、課金63(例えば「105円」)と、を記憶する。帯域60は、多機能機10が通信可能な帯域である。図9の例では、帯域60には、5個の帯域(「2.6Mbps〜」、「1Mbps〜2.6Mbps」、「512kbps〜1Mbps」、「64kbps〜512kbps」、「0kbps〜64kbps」)が存在する。多機能機10は、5個の帯域60のいずれかに従って、FAXデータの通信を実行する。各帯域は、単位時間(1秒)当たりに通信可能なデータのサイズが異なる。例えば、帯域「256kbps(kilobit per second)」は、1秒当たりに256kb(kilobit)のデータを通信可能であることを意味する。1秒当たりに通信可能なデータのサイズが大きいほど、通信速度が速いことを意味する。
【0022】
また、課金時間62は、時間課金方式が採用される場合において、課金対象となる一定時間である。時間課金方式では、課金時間62(例えば180(s))が経過するたびに、次の課金時間62に対する課金が加算される。課金63は、帯域60に従って通信する場合に必要な、課金時間62当たりの通信料金である。帯域課金情報テーブル36に示すように、帯域60が大きくなる(通信速度が速くなる)ことに応じて、課金63の課金額が高くなっている。帯域課金情報テーブル36により、例えば、帯域60=「2.6Mbps〜」に従って多機能機10が通信を実行する場合には、180秒毎に105円の通信料金が必要であることが分かる。なお、帯域課金情報テーブル36は、多機能機10のベンダによって、多機能機10の出荷前にメモリ32に予め格納されてもよい。
【0023】
パラメータ群38は、各帯域に従って、多機能機10がFAXデータの通信を行う場合に必要な各種の情報を格納する。具体的には、パラメータ群38は、使用候補帯域、送信モード、通常帯域情報、最低帯域情報、T.38対応フラグ、などを格納する。使用候補帯域は、FAXデータの送信に使用する帯域の候補となる帯域である。使用候補帯域は、複数あってもよい。送信モードには、「通常帯域送信モード」と「低帯域送信モード」が存在する。通常帯域送信モードは、通信先機器がFAXデータを受信可能な状態(ビジーでない状態)である期間に使用されるモードである。低帯域送信モードは、通信先機器がFAXデータを受信できない状態(ビジー状態)である期間に使用されるモードである。通常帯域情報は、通常帯域送信モードで用いられる帯域(通常帯域)を示す情報である。最低帯域情報は、低帯域送信モードで用いられる帯域(最低帯域)を示す情報である。通常帯域の通信速度の方が、最低帯域の通信速度よりも速い。T.38対応フラグは、通信先機器がT.38FAX信号(NGN)に対応しているか否かを示す情報である。なお、パラメータ群38は、多機能機10のベンダによって、多機能機10の出荷前にメモリ32に予め格納されてもよい。
【0024】
(SIPサーバ120の構成)
SIPサーバ120の構成について説明する。SIPサーバ120は、多機能機10、110のそれぞれについて、当該多機能機のIPアドレスと、当該多機能機のSIPURIと、を対応付けて記憶している。SIPサーバ120は、SIP(Session Initiation Protocol)を利用して、多機能機10と多機能機110との間の通信セッションを確立する。即ち、例えば、多機能機10と多機能機110との間でIPFAX送信処理を実行するための通信セッションを確立するための各種コマンドは、SIPサーバ120を経由して送信される。
【0025】
(IPFAX送信処理)
続いて、図2を参照して、IPFAX送信処理について説明する。以下では、多機能機10が、通信先機器である多機能機110にFAXデータを送信する場合を例として、IPFAX送信処理の内容を説明する。
【0026】
図2のフローは、多機能機10の電源が投入されている間に実行されるフローである。CPU30は、IPFAX送信操作が実行されることを監視している(S11)。多機能機10のユーザは、図示しない自動原稿搬送装置に原稿をセットし、その状態で、操作部14を用いて、IPFAX送信操作(例、ダイヤル入力後、スタートボタン押下)を実行することができる。IPFAX送信操作は、FAXの送信先である多機能機110のSIPURIを入力する操作を含む。CPU30は、IPFAX送信操作が実行された場合(S11:YES)に、S13へ進む。
【0027】
S13において、CPU30は、原稿読取処理を実行する。S15において、CPU30は、回線接続処理を実行する。S17において、CPU30は、FAX送信処理を実行する。S19において、CPU30は、回線切断処理を実行する。これにより、IPFAX送信処理が完了する。以下、S13ないしS15の各処理について説明する。
【0028】
(原稿読取処理)
図3を用いて、原稿読取処理(S13)を説明する。S111において、CPU30は、自動原稿搬送装置にセットされた原稿を、スキャン実行部18にスキャンさせる。これにより、スキャン実行部18は、スキャンデータを生成する。CPU30は、スキャン実行部18により生成されたスキャンデータをメモリ32に記憶する。S113において、CPU30は、メモリ32に記憶されたスキャンデータを取得し、符号化(圧縮)処理を行い、FAXデータを生成し、メモリ32に記憶する。FAXデータの符号化に用いられる方式の例としては、モノクロの場合には、JBIG方式、MMR方式、MR方式、MH方式などが挙げられる。また、カラーの場合には、JPEG符号化方式が挙げられる。 そして、回線接続処理(S15)へ進む。
【0029】
(回線接続処理)
図4を用いて、回線接続処理(S15)の処理内容を説明する。S211において、CPU30は、使用候補帯域をINVITEメッセージに設定する。具体的には、SDP(Session Description Protocol)に、使用候補とする帯域をkbps単位で記述することで、帯域を要求する。SDPは、メディアの種類(音声か映像か、など)、メディアを運ぶために使用するプロトコル、使用するポート番号などを明示するためのプロトコルである。図10に、INVITEメッセージのSDPの一例を示す。領域A1に示すように、使用する帯域60を「b=AS:64」、「b=AS:512」、「b=AS:1024」と記述することによって、「0kbps〜64kbps」、「64kbps〜512kbps」、「512kbps〜1Mbps」の各々の帯域60を、使用候補の帯域として要求することができる。また、使用候補の帯域のうち、多機能機110が対応できる帯域は、200OKによって多機能機110から通知される。
【0030】
S213において、CPU30は、S11(図2)で取得されたSIPURIを送信先として、SIPサーバ120にINVITEメッセージを送信する。SIPサーバ120は、INVITEメッセージを多機能機110に転送する。多機能機110は、INVITEメッセージを受信すると、200OKをSIPサーバ120に送信する。SIPサーバ120は、200OKを多機能機10に転送する。
【0031】
S215においてCPU30は、INVITEメッセージを送信した後に、SIPサーバ120を介して、多機能機110から200OKを受信したか否かを監視する。受信していない場合(S215:NO)にはS215へ戻り待機し、受信した場合(S215:YES)にはS219へ進む。
【0032】
S219において、CPU30は、通常帯域および最低帯域を設定する。具体的には、S215で受信した200OKを解析する。そして、S211においてINVITEメッセージを用いて要求された使用候補の帯域のうち、多機能機110が対応できる帯域を抽出する。抽出した帯域のうち、通信速度が最大の帯域を通常帯域として設定し、通信速度が最小の帯域を最低帯域として設定する。S221において、CPU30は、通常帯域に関する通常帯域情報、および最低帯域に関する最低帯域情報を、メモリ32のパラメータ群38に記憶させる。
【0033】
S223において、CPU30は、S11(図2)で取得されたSIPURIを送信先として、SIPサーバ120にACKを送信する。SIPサーバ120は、ACKを多機能機110に転送する。多機能機110は、ACKを受信する。これにより、多機能機10と多機能機110との間で通信セッションが確立される。通信セッションが確立されると、課金が開始される。本実施例では、SIPサーバ120が課金サーバとして機能する。具体的には、S223で通信セッションが確立されると、SIPサーバ120は通信時間の計測を開始する。
【0034】
S225において、CPU30は、送信モードを「通常帯域送信モード」に設定する。また、CPU30は、通常帯域に設定されている帯域60を使用して通信を行うように、ネットワークI/F16を設定する。そして、FAX送信処理(図2、S17)へ進む。
【0035】
(FAX送信処理)
図5を用いて、FAX送信処理(S17)を説明する。FAX送信処理は、IP網4を介して、FAXデータを多機能機110に送信する処理である。S302において、CPU30は、DIS信号を多機能機110から受信したか否かを判断する。DIS信号は最初のメッセージであり、応答側(多機能機110)の機能(サイズ、カラー、符号化方式、解像度、T.38有無、など)を述べる信号である。受信していない場合(S302:NO)にはS302へ戻り待機し、受信した場合(S302:YES)にはS306へ進む。
【0036】
S306においてCPU30は、通信先機器である多機能機110が、T.38規格のFAX信号をサポートしているか否かを判断する。当該判断は、S302で受信したDIS信号に含まれている「IP認識T.38モードファクシミリ動作」(bit123)情報が、オンであるか否かによって行われる。多機能機110がT.38に対応していない場合(S306:NO)にはS308に進み、CPU30は、T.38対応フラグを「非対応」に設定する。一方、T.38に対応している場合(S306:YES)にはS310に進み、CPU30は、T.38対応フラグを「対応」に設定する。
【0037】
S313において、CPU30は、DCS信号を多機能機110へ送出する。DCS信号は、送信パラメータを定義し、実際に送るデータの形式を報知するための信号である。S315において、CPU30は、CFR信号を多機能機110から受信したか否かを判断する。CFR信号は、DCS信号を受信した旨を報知する信号である。受信していない場合(S315:NO)にはS315へ戻り待機し、受信した場合(S315:YES)にはS317へ進む。
【0038】
S317においてCPU30は、通常帯域を用いて、部分FAXデータを多機能機110へ送出する。部分FAXデータは、FAXデータを複数のブロックに分割したうちの1つのブロックに該当するデータである。
【0039】
S319において、CPU30は、未送信のFAXデータが存在するか否かを判断する。存在する場合(S319:YES)には、S331へ進む。S331において、CPU30は、現在送信中のページの送信が完了したか否かを判断する。完了していない場合(S331:NO)にはS333に進み、CPU30は、PPS(Partial Page Signal)‐NULL信号を多機能機110へ送出する。一方、現在送信中のページの送信が完了した場合(S331:YES)にはS335に進み、CPU30は、PPS‐MPS(Multi Page Signal)信号を多機能機110へ送出する。S338に進むと、CPU30は、MCF/RNR受信処理を実行する。そして、S317へ戻る。
【0040】
一方、S319において、未送信のFAXデータが存在しないと判断される場合(S319:NO)には、S351へ進む。S351において、CPU30は、PPS‐EOP信号を多機能機110へ送出する。PPS‐EOP信号は、FAX送信の終了の旨のメッセージである。S353において、CPU30は、MCF/RNR受信処理を実行する。S355において、CPU30は、DCN信号を多機能機110へ送出する。DCN信号は、接続解除のメッセージを報知する信号である。そして、FAX送信処理を終了し、回線切断処理(図2、S19)へ進む。
【0041】
(MCF/RNR受信処理)
S338およびS353で実行される、MCF/RNR受信処理を、図6のフローを用いて説明する。S410において、CPU30は、MCF信号を多機能機110から受信したか否かを判断する。MCF信号は、部分FAXデータを受信した旨を報知する信号である。MCF信号を受信した場合(S410:YES)にはS412へ進む。S412において、CPU30は、メモリ32のパラメータ群38に記憶されている送信モードが、「低帯域送信モード」に設定されているか否かを判断する。送信モードが「低帯域送信モード」に設定されていない場合(S412:NO)にはMCF/RNR受信処理を終了し、設定されている場合(S412:YES)にはS414へ進む。S414において、CPU30は、UPDATE処理を実行する。UPDATE処理の内容については後述する。
【0042】
また、S410において、MCF信号を受信していない場合(S410:NO)にはS420へ進む。S420において、CPU30は、RNR信号を多機能機110から受信したか否かを判断する。受信していない場合(S420:NO)にはS428へ進み、受信した場合(S420:YES)にはS422へ進む。
【0043】
S422において、CPU30は、メモリ32のパラメータ群38に記憶されているT.38対応フラグの設定内容を判断する。T.38対応フラグが「対応」に設定されている場合(S422:対応)にはS428へ進み、「非対応」に設定されている場合(S422:非対応)にはS424へ進む。
【0044】
S424において、CPU30は、メモリ32のパラメータ群38に記憶されている送信モードが、「通常帯域送信モード」に設定されているか否かを判断する。「通常帯域送信モード」に設定されていない場合(S424:NO)にはS428へ進み、設定されている場合(S424:YES)にはS426へ進む。S426において、CPU30は、UPDATE処理を実行する。UPDATE処理の内容については後述する。
【0045】
S428において、CPU30は、RR信号を多機能機110に送出する。これにより、多機能機110に対して、FAXデータの送信を再開してよいか否かを問い合わせることができる。そしてS410へ戻る。
【0046】
(UPDATE処理)
S414およびS426で実行されるUPDATE処理を、図7のフローを用いて説明する。S502において、CPU30は、送信モードの設定内容を判断する。送信モードが「通常帯域送信モード」に設定されている場合(S502:通常帯域送信モード)には、S504へ進む。
【0047】
S504において、CPU30は、最低帯域情報をパラメータ群38から読み出して、UPDATEメッセージに設定する。UPDATEメッセージは、各種の通信設定を変更するための情報であり、FAXデータとパラレルに出力することが可能な情報である。なお、最低帯域のUPDATEメッセージへの設定方法は、S211(図4)で説明した使用候補帯域のINVITEメッセージへの設定方法と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。S506において、CPU30は、送信モードを「低帯域送信モード」に設定する。また、CPU30は、最低帯域に設定されている帯域60を使用して通信を行うように、ネットワークI/F16を設定する。そしてS513へ進む。
【0048】
一方、S502において、送信モードが「低帯域送信モード」に設定されていると判断される場合(S502:低帯域送信モード)には、S508へ進む。S508において、CPU30は、通常帯域情報をパラメータ群38から読み出して、UPDATEメッセージに設定する。S510において、CPU30は、送信モードを「通常帯域送信モード」に設定する。また、CPU30は、通常帯域に設定されている帯域60を使用して通信を行うように、ネットワークI/F16を設定する。そしてS513へ進む。
【0049】
S513において、CPU30は、UPDATEメッセージをSIPサーバ120へ送出する。SIPサーバ120は、UPDATEメッセージを多機能機110に転送する。多機能機110は、UPDATEメッセージを受信すると、200OKをSIPサーバ120に送信する。SIPサーバ120は、200OKを多機能機10に転送する。
【0050】
S515において、CPU30は、SIPサーバ120から200OKを受信したか否かを監視する。受信していない場合(S515:NO)にはS515へ戻り待機し、受信した場合(S515:YES)にはUPDATE処理を終了する。
【0051】
(回線切断処理)
図8を用いて、回線切断処理(S19)を説明する。S611において、CPU30は、BYE信号をSIPサーバ120へ送出する。BYE信号は、多機能機10と多機能機110との間に確立された通信セッションを終了するためのコマンドである。
【0052】
SIPサーバ120は、BYEを受信すると、課金処理を終了し、BYEを多機能機110に転送する。SIPサーバ120は、課金処理を終了すると、多機能機10と多機能機110との通信にかかった通信時間の計測を終了する。多機能機110は、BYEを受信すると、200OKをSIPサーバ120に送信する。SIPサーバ120は、200OKを多機能機10に転送する。S617において、CPU30は、SIPサーバ120から200OKを受信したか否かを監視する。受信していない場合(S617:NO)にはS617へ戻り待機し、受信した場合(S617:YES)には多機能機10と多機能機110との通信セッションが終了する。これにより、IPFAX送信処理が完了する。
【0053】
(動作の具体例)
本実施形態に係る通信システム2の動作の具体例を、図11および図12のシーケンス図を用いて説明する。図11および図12では、例として、使用候補帯域が「0kbps〜64kbps」、「64kbps〜512kbps」、「512kbps〜1Mbps」である場合を説明する。また、多機能機110が対応できる帯域が、「0kbps〜64kbps」および「64kbps〜512kbps」である場合を説明する。また、多機能機110がT.38FAX信号に非対応であり、多機能機110がホームゲートウェイ130のTEL_I/Fに接続されている場合を説明する。この場合、多機能機110は、ホームゲートウェイ130を介して、各種の信号(DIS信号又は、MCF信号など)を多機能機10と通信する。また、図11の期間T2において多機能機110の処理能力が低下してビジー状態となり、図12の期間T3において多機能機110が通常の状態に戻る場合を説明する。
【0054】
IPFAX送信操作が実行されると(S11:YES)、原稿読取処理(S13)が実行される。次に、回線接続処理(S15)が開始される。使用候補帯域=「0kbps〜64kbps」、「64kbps〜512kbps」、「512kbps〜1Mbps」がINVITEメッセージに設定され(S211)、INVITEメッセージがSIPサーバ120へ送出される(S213)。SIPサーバ120を介してホームゲートウェイ130から200OKを受信すると(S215:YES)、ホームゲートウェイ130が対応できる帯域が、「0kbps〜64kbps」および「64kbps〜512kbps」であることが判明する。よって、通信速度が最大の帯域(「64kbps〜512kbps」)が通常帯域に設定され、通信速度が最小の帯域(「0kbps〜64kbps」)が最低帯域に設定される(S219)。そして、SIPサーバ120にACKを送信することで、多機能機10とホームゲートウェイ130との間で通信セッションが確立される(S223)。また、送信モードが「通常帯域送信モード」に設定される(S225)。
【0055】
次に、FAX送信処理(S17)が開始される。図11の期間T1における動作を説明する。DIS信号を多機能機110から受信すると(S302:YES)、多機能機110がT.38FAX信号に対応していないため(S306:NO)、T.38対応フラグが「非対応」に設定される(S308)。DCS信号を多機能機110へ送出すると(S313)、CFR信号を多機能機110から受信する(S315:YES)。通常帯域(「64kbps〜512kbps」)を用いて部分FAXデータを多機能機110へ送出し(S317)、PPS‐NULL信号を多機能機110へ送出すると(S333)、MCF信号を多機能機110から受信する(S410:YES)。送信モードが「低帯域送信モード」に設定されていないため(S412:NO)、部分FAXデータの送出(S317)およびMCF信号の受信(S410:YES)が繰り返される。
【0056】
図11の期間T2における動作を説明する。通常帯域を用いて部分FAXデータを多機能機110へ送出し(S317)、PPS‐NULL信号を多機能機110へ送出すると(S333)、多機能機110がFAXデータを受信できない状態であるため、RNR信号を多機能機110から受信する(S420:YES)。T.38対応フラグが「非対応」に設定されており(S422:非対応)、送信モードが「通常帯域送信モード」に設定されているため(S424:YES)、UPDATE処理が実行される(S426)。送信モードが「通常帯域送信モード」に設定されているため(S502:通常帯域送信モード)、最低帯域情報をUPDATEメッセージに設定し(S504)、UPDATEメッセージをSIPサーバ120へ送出する(S513)。また送信モードが「低帯域送信モード」に設定され、最低帯域(「0kbps〜64kbps」)を用いて通信を行うように切り替えられる(S506)。200OKを受信すると(S515:YES)、UPDATE処理を終了する。
【0057】
図12の期間T3における動作を説明する。RR信号を多機能機110に送出すると(S428)、多機能機110がFAXデータを受信することができない期間の間は、RNR信号を多機能機110から受信する(S420:YES)。そして、多機能機110がFAXデータを受信することができるようになると、MCF信号を多機能機110から受信する(S410:YES)。この、RNR信号を受信(S420:YES)してからMCF信号を受信(S410:YES)するまでの期間が、多機能機110側でのデータ通信停止期間DT1である。
【0058】
送信モードが、「低帯域送信モード」に設定されているため(S412:YES)、UPDATE処理が実行される(S414)。送信モードが「低帯域送信モード」に設定されているため(S502:低帯域送信モード)、通常帯域情報をUPDATEメッセージに設定し(S508)、UPDATEメッセージをSIPサーバ120へ送出する(S513)。また送信モードが「通常帯域送信モード」に設定され、通常帯域(「64kbps〜512kbps」)を用いて通信を行うように切り替えられる(S510)。200OKを受信すると(S515:YES)、UPDATE処理を終了する。
【0059】
図12の期間T4における動作を説明する。通常帯域を用いて、最後の部分FAXデータを多機能機110へ送出すると(S317)、未送信のFAXデータが存在しないため(S319:NO)、PPS‐EOP信号を多機能機110へ送出する(S351)。MCF信号を多機能機110から受信すると(S410:YES)、送信モードが「低帯域送信モード」に設定されていないため(S412:NO)、DCN信号を多機能機110へ送出する(S355)。
【0060】
そして、回線切断処理(S19)が実行され、多機能機10と多機能機110との通信セッションが終了する。
【0061】
(効果)
以上説明した、第1実施例の説明例に係る多機能機10の効果を説明する。課金時間62当りの通信料金を用いるIP網4では、通信先機器である多機能機110が処理能力の低下によりFAXデータを受信することができない期間(データ通信停止期間DT1)においても課金されるため、当該期間中において無駄な課金が発生することになる。第1実施例に係る多機能機10では、多機能機110がFAXデータを受信できない状態(ビジー状態)であることが判明すると(S420:YES)、使用する帯域を通常帯域より遅い最低帯域に変更する(S504、S506)。これにより、図9の帯域課金情報テーブル36に示すように、利用する帯域60が遅くなることに応じて課金時間62当りの課金63が安くなることが一般的であるため、データ通信停止期間DT1の期間中の課金額が、必要以上に高くなってしまう事態を防止することができる。
【0062】
また多機能機10は、RNR信号を受信することに応じて(S420:YES)、通信先機器である多機能機110がFAXデータを受信できない状態であると判断し、使用帯域を即座に最低帯域に変更することができる(S504、S506)。また多機能機10は、RR信号(S428)に対する応答としてMCF信号を受信することに応じて(S410:YES)、通信先機器である多機能機110がFAXデータを受信できる状態に復帰したと判断し、使用帯域を通常帯域に戻すことができる(S508、S510)。これにより、多機能機110側がFAXデータを受信できない状態になっている期間中にのみ、使用帯域を最低帯域に落とすことができる。よって、課金額が必要以上に高額となる事態を防止することと、FAXデータ通信に必要な時間の短縮化とを両立することができる。
【0063】
また、T.38FAX信号に対応している多機能機に比して、T.38FAX信号に対応していない多機能機の方が、データ処理能力が低い場合が多く、FAXデータを受信できない状態になり易い傾向がある。そこで多機能機10は、多機能機110がT.38FAX信号に非対応であることを検出した場合(S306:NO、S422:非対応)にのみ、使用帯域を通常帯域から最低帯域に変更する処理を実行する。これにより、課金額が必要以上に高額となってしまう事態を、より効果的に防止することができる。
【0064】
(第2実施例)
第2実施例を説明する。第2実施例は、第1実施例で行われるMCF/RNR受信処理(S338、S353)を一部変更する実施例である。具体的には、データ通信停止期間DT1(RNR信号を受信してからMCF信号を受信するまでの期間)を毎度計測して、データ通信停止期間DT1の平均値である平均停止期間を算出する。そして、平均停止期間が通常帯域の課金時間を超えていた場合に、帯域を最低帯域に変更するという実施例である。また第2実施例では、メモリ32のパラメータ群38には、平均停止期間がさらに記憶される。なお、第2実施例のその他の構成や動作については、第1実施例と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0065】
(MCF/RNR受信処理)
第2実施例に係るMCF/RNR受信処理を、図13および図14のフローを用いて説明する。S710において、CPU30は、MCF信号を多機能機110から受信したか否かを判断する。MCF信号を受信した場合(S710:YES)にはS712へ進む。S712において、CPU30は、データ通信停止期間DT1を計測中であるか否かを判断する。計測中ではない場合(S712:NO)にはS722へ進み、計測中である場合(S712:YES)にはS714へ進む。S714において、CPU30は、データ通信停止期間DT1の計測を終了する。
【0066】
S716において、CPU30は、平均停止期間がメモリ32のパラメータ群38に記憶されているか否かを判断する。記憶されていない場合(S716:NO)には、初回の計測であると判断され、S718へ進む。S718において、CPU30は、今回計測したデータ通信停止期間DT1を、平均停止期間としてメモリ32に記憶させる。また、平均停止期間が記憶されている場合(S716:YES)にはS720に進み、CPU30は、今回計測したデータ通信停止期間DT1を用いて、平均停止期間を更新する。
【0067】
S722において、CPU30は、送信モードが「低帯域送信モード」に設定されているか否かを判断する。送信モードが「低帯域送信モード」に設定されていない場合(S722:NO)にはMCF/RNR受信処理を終了し、設定されている場合(S722:YES)にはS724へ進む。S724において、CPU30は、UPDATE処理を実行する。
【0068】
また、S710においてMCF信号を受信していない場合(S710:NO)には、S730(図14)へ進む。S730において、CPU30は、RNR信号を多機能機110から受信したか否かを判断する。受信していない場合(S730:NO)にはS746へ進み、受信した場合(S730:YES)にはS732へ進む。
【0069】
S732において、CPU30は、送信モードが「通常帯域送信モード」に設定されているか否かを判断する。「通常帯域送信モード」に設定されていない場合(S732:NO)にはS746へ進み、設定されている場合(S732:YES)にはS734へ進む。S734において、CPU30は、データ通信停止期間DT1を計測中であるか否かを判断する。計測中である場合(S734:YES)にはS738へ進み、計測中ではない場合(S734:NO)にはS736へ進む。S736において、CPU30は、データ通信停止期間DT1の計測を開始する。
【0070】
S738において、CPU30は、平均停止期間がメモリ32のパラメータ群38に記憶されているか否かを判断する。記憶されていない場合(S738:NO)には、初めてRNR信号を受信した場合であるため、帯域を変更する処理を実行しないと判断され、S746へ進む。一方、平均停止期間が記憶されている場合(S738:YES)にはS740へ進み、CPU30は、平均停止期間が、通常帯域の課金時間62を超えているか否かを判断する。越えていない場合(S740:NO)にはS746へ進み、越えている場合(S740:YES)にはS742へ進んでUPDATE処理を実行する。S746において、CPU30は、RR信号を多機能機110に送出する。そしてS710(図13)へ戻る。
【0071】
なお、図9に示す帯域課金情報テーブル36の例では、「2.6Mbps〜」および「1Mbps〜2.6Mbps」の帯域の課金時間62は、180秒に設定されている。すると、「2.6Mbps〜」または「1Mbps〜2.6Mbps」の帯域が通常帯域に設定されている場合に、データ通信停止期間DT1の最大値が60秒になるようにIP網4側で設定が行われている場合には、S740において、平均停止期間(60秒以下)が通常帯域の課金時間62(180秒)を越えることはない。よってこの場合には、UPDATE処理(S742)が行われないため、通常帯域から最低帯域に切り替えられることはない。
【0072】
(効果)
以上説明した、第2実施例の説明例に係る多機能機10の効果を説明する。RNR信号を受信してからMCF信号を受信するまでのデータ通信停止期間DT1は、通信先機器である多機能機110がビジー状態である期間である。そして、データ通信停止期間DT1が通常帯域の課金時間62を越えている場合は、帯域を通常帯域から最低帯域に変更することで、課金額が必要以上に高くなる事態を確実に防止できる場合である。そこで、第2実施例に係る多機能機10では、データ通信停止期間DT1の平均値(平均停止期間)が通常帯域の課金時間62を越えている場合(S740:YES)にのみ帯域変更を行うことができるため、無駄な帯域変更処理が実行されてしまう事態を防止することができる。
【0073】
また多機能機10は、平均停止期間を用いて、帯域変更処理の実行可否を判断する。これにより、データ通信停止期間DT1が極端に長くなる場合や短くなる場合などの異常発生時においても、確実に帯域変更処理の実行可否を判断することができる。
【0074】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0075】
(変形例)
本実施例では、通信先機器である多機能機110がT.38FAX信号に非対応であることを検出した場合(S306:NO、S422:非対応)にのみ、使用帯域を通常帯域から最低帯域に変更する場合を説明したが、この形態に限られない。通信先機器がT.38FAX信号に対応しているか否かに関わらず、使用帯域を変更する形態であってもよい。この場合、図5のフローにおいてS306、S308、S310のステップを省略し、図6のフローにおいてS422のステップを省略すればよい。
【0076】
多機能機110がT.38FAX信号に対応している場合には、多機能機110は、ホームゲートウェイ130を介さずに、LAN8に直接接続されていてもよい。この場合には、多機能機10から多機能機110までの接続経路では、T.38FAX信号によって通信が行われる。また、多機能機10と多機能機110との間では、各種の信号(DIS信号又は、MCF信号など)の通信が直接に行われる。
【0077】
S219で設定される最低帯域は、多機能機110が対応できる帯域のうち通信速度が最小の帯域に限られない。単位時間当たりの課金額が、通常帯域よりも安い帯域であれば、何れの帯域を最低帯域として設定してもよい。
【0078】
S219で設定される通常帯域は、多機能機110が対応できる帯域のうち通信速度が最大の帯域に限られない。例えば、送信するFAXデータのサイズに基づいて、多機能機110が対応できる帯域のうちの1つの帯域を、通常帯域として選択する形態であってもよい。
【0079】
第2実施例のS740において、帯域変更処理の実行可否を判断する際に用いられる値は、平均停止期間に限られない。例えば、前回のデータ通信停止期間DT1をメモリ32に記憶しておき、前回のデータ通信停止期間DT1が通常帯域の課金時間62を超えている場合に帯域を変更するとしても良い。
【0080】
本実施形態では、多機能機10が多機能機110に対してFAX送信処理を実行する場合を例に説明した。しかしながら、本技術は各種のデータ送信処理(例:電子メール送信処理)に適用可能である。
【0081】
本実施形態で説明した帯域課金情報テーブル36(図9)の記憶内容は、例示である。よって、帯域60の数、帯域60、送信速度61などは、これらの値に限定されない。
【0082】
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【0083】
なお、IP網4は帯域確保型ネットワークの一例である。課金時間62は課金単位時間の一例である。多機能機110は通信先機器の一例である。通常帯域は第1帯域の一例である。S317を実行するCPU30は第1送信手段の一例である。PPS信号は第1信号の一例である。S333を実行するCPU30は第2送信手段の一例である。RNR信号は第2信号の一例である。最低帯域は第2帯域の一例である。S504を実行するCPU30は帯域変更手段の一例である。RR信号は第3信号の一例である。S428を実行するCPU30は第3送信手段の一例である。MCF信号は第4信号の一例である。DIS信号は第5信号の一例である。データ通信停止期間DT1は第1期間の一例である。
【符号の説明】
【0084】
2:通信システム、4:IP網、10:多機能機、110:多機能機、120:SIPサーバ、62:課金時間、DT1:データ通信停止期間
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、複数個の帯域のいずれかに従って、データの通信を実行する通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
帯域確保型データ通信サービスは、SIP(Session Initiation Protocol)サーバやSIPアダプタを使用し、ネットワーク回線を介して、FAX送受信などの各種通信を行うサービスである。帯域確保型ネットワークでは、回線接続単位で利用帯域(例:1Mbps(megabit per second)、64kbps(kilobit per second)など)を選択して接続することが可能である。また、利用帯域は、通信中に変更可能となっている。
【0003】
帯域確保型データ通信サービスで使用される通信規格には、ECM(Error Correction Mode)と呼ばれる規格が存在する。ECM規格は、通信回線上でエラーが発生した場合に、受信側からエラーフレームを要求し、そのエラーフレームに対応する正常フレームを送信側が再送することで、自動で訂正データを送信できる仕組みである。また、ECM規格には、RNR(Receive Not Ready)信号とRR(receive ready request)信号が存在する。RNR信号は、データ受信側からデータ送信側に送信される信号である。RNR信号は、データ受信側の処理能力の低下(例:メモリ領域の減少)に起因して、データ送信側にデータの送信を一時停止させるための信号である。RR信号は、データ送信側からデータ受信側に送信される信号である。RR信号は、データの送信を再開してよいか否かをデータ受信側に問い合わせるための信号である。なお、関連する技術として、特許文献1が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−349857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
帯域確保型データ通信サービスにおいて、データの通信に要した時間に応じた通信料金が端末装置に課される課金方式(時間課金方式)が採用される場合がある。この場合、一定時間(例えば3分)が経過するたびに、次の一定時間に対する課金が加算される。また、利用帯域が大きくなる(通信速度が速くなる)ことに応じて、一定時間に対する課金額が高くなる。
【0006】
時間課金方式では、データ受信側の処理能力が低下し、RNR信号によってデータ送信が一時停止されると、停止期間中において無駄な課金が発生することになる。そして、利用帯域が大きくなることに応じて、一定時間に対する課金額が高くなるため、停止期間中における無駄な課金額が必要以上に高くなることになる。本明細書では、このような不便性を解消することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に記載の通信装置は、帯域確保型ネットワークに接続され、通信速度が異なるとともに課金単位時間当りの通信料金が異なる複数個の帯域のいずれかに従って、通信先機器との間でデータの通信を実行する通信装置であって、データを所定の第1帯域に従って送信する第1送信手段と、データを送信した旨を示す第1信号を第1帯域に従って送信する第2送信手段と、第1信号の応答として通信先機器がビジー状態である旨を示す第2信号を受信することを条件として、第1送信手段によるデータの送信を停止するとともに、使用する帯域を第1帯域より遅い第2帯域に変更する帯域変更手段と、通信先機器がビジー状態であるか否かを問い合わせるための第3信号を第2帯域に従って送信する第3送信手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
課金単位時間当りの通信料金を用いる帯域確保型ネットワークでは、データ送信の停止期間中においても課金されるため、停止期間中において無駄な課金が発生することになる。本願に記載の通信装置では、通信先装置がビジー状態であることが判明すると、データの送信を停止するとともに、帯域を第1帯域より遅い第2帯域に変更する。これにより、利用帯域が遅くなることに応じて課金単位時間当りの通信料金が安くなることが一般的であるため、停止期間中における無駄な課金額が必要以上に高くなってしまう事態を防止できる。
【0009】
また、請求項2に記載の通信装置では、通信先機器が実際にビジー状態である期間中のみ、帯域を第2帯域にすることができる。これにより、課金額が必要以上に高くなる事態を防止することと、データ通信に必要な時間の短縮化とを両立することができる。
【0010】
通信先機器が帯域確保型ネットワークに非対応である場合には、対応している機器に比してデータ処理時間が長くなり、ビジー状態になり易い傾向がある。請求項3に記載の通信装置では、通信先機器が帯域確保型ネットワークに非対応であることを検出した場合にのみ、帯域を第1帯域から第2帯域に変更する。これにより、課金額が必要以上に高くなる事態をより効果的に防止することができる。
【0011】
第2信号を受信してから第4信号を受信するまでの第1期間は、通信先機器がビジー状態である期間である。そして、第1期間が第1帯域の課金単位時間を越えている場合は、帯域を第1帯域から第2帯域に変更することで、課金額が必要以上に高くなる事態を確実に防止できる場合である。請求項4に記載の通信装置では、第1期間が第1帯域の課金単位時間を越えている場合にのみ帯域変更を行うため、無駄な帯域変更処理が実行されてしまう事態を防止することができる。
【0012】
また、請求項5に記載の通信装置では、データ送信の停止期間中に、通信速度が最小の帯域を使用することができる。これにより、課金額が必要以上に高くなる事態をより効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】通信システムの構成の一例を示す。
【図2】IPFAX送信処理のフローチャートを示す。
【図3】原稿読取処理のフローチャートを示す。
【図4】回線接続処理のフローチャートを示す。
【図5】FAX送信処理のフローチャートを示す。
【図6】MCF/RNR受信処理のフローチャートを示す。
【図7】UPDATE処理のフローチャートを示す。
【図8】回線切断処理のフローチャートを示す。
【図9】帯域課金情報テーブルの一例を示す。
【図10】INVITEメッセージのSDPの一例を示す。
【図11】通信システムの動作を示すシーケンス図を示す。
【図12】通信システムの動作を示すシーケンス図を示す。
【図13】MCF/RNR受信処理のフローチャートを示す。
【図14】MCF/RNR受信処理のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施例)
(システムの構成)
図面を参照して第1実施例を説明する。図1に示されるように、通信システム2は、IP網4と、LAN6、8と、多機能機10、110と、SIPサーバ120と、ホームゲートウェイ130を備える。多機能機10はLAN6に接続されている。多機能機110は、ホームゲートウェイ130を介してLAN8に接続されている。LAN6、8及びSIPサーバ120は、IP網4に接続されている。多機能機10と、SIPサーバ120と、多機能機110とは、LAN6、8とIP網4を介して、相互に通信可能である。
【0015】
IP網4は、プロバイダ(インターネット接続業者)によって提供されるIP網である。IP網4は、SIPサーバ120で制御される。IP網4の一例としては、NGN(Next Generation Network)が挙げられる。NGNは、現行の公衆網を代替する次世代IPネットワークである。すなわちNGNは、現在別々に構築されている、インターネットサービス用IPネットワークと電話サービス用の電話網を、IP技術を用いてIP通信網として統合したネットワークである。
【0016】
NGNは、帯域保証機能を有している。帯域保証機能は、契約した帯域(通信速度)を保障することができる機能である。またNGNでは、回線接続単位で帯域を選択して接続することができるとともに、使用する帯域を接続中に変更することが可能である。またNGNでは、帯域確保型データ通信サービスにおいて、データの通信に要した時間に応じた通信料金が端末装置に課される課金方式(時間課金方式)が採用される場合がある。なお、帯域保証の語は、「QoS(Quality of Service)」と言い換えてもよい。
【0017】
ホームゲートウェイ130は、IP網4と多機能機110との間のデータの受け渡しを行う機器である。ホームゲートウェイ130は、TEL_I/FおよびLAN_I/F(不図示)を備える。多機能機110がT.38FAX信号(NGNを利用したIPネットワーク)に対応している場合には、多機能機110はLAN_I/Fに接続される。この場合には、多機能機10から多機能機110までの接続経路では、T.38FAX信号によって通信が行われる。また、多機能機110がT.30FAX信号(公衆電話交換回線網(PSTN))に対応している場合には、多機能機110はTEL_I/Fに接続される。この場合には、多機能機10からホームゲートウェイ130までの接続経路ではT.38FAX信号によって通信が行われ、ホームゲートウェイ130と多機能機110との接続経路ではT.30FAX信号によって通信が行われる。またこの場合には、各種の信号(DIS信号、RNR信号、RR信号、MCF信号など)が、ホームゲートウェイ130を介して、多機能機10と多機能機110との間で通信される。また、ホームゲートウェイ130は、通常のルータ機能のほか、VoIP(voice over IP)ゲートウェイ機能や、ユーザや端末の認証機能などを搭載していてもよい。
【0018】
なお、T.38FAX信号に対応している多機能機に比して、T.30FAX信号に対応している多機能機の方が、データ処理能力が低くなる。これは、T.38FAX信号が用いられる通信回線(NGNを利用したIPネットワーク)の通信速度に比して、T.30FAX信号が用いられる通信回線(PSTN)の通信速度の方が遅いため、T.38FAX信号の対応機器に比してT.30FAX信号の対応機器の方が、データ処理能力が低い(例:搭載メモリ量が少ない)ためである。よって、T.38FAX信号の対応機器に比してT.30FAX信号の対応機器の方が、後述するデータ通信停止期間DT1が発生しやすい。なお、T.30FAX信号に対応している多機能機の通信速度は、例えば、33.6kbps〜2.4kbpsまでの範囲内である。
【0019】
(多機能機10の構成)
多機能機10の構成について説明する。なお、多機能機110は、多機能機10と同様の構成を備える。多機能機10は、印刷機能、スキャナ機能、コピー機能、電子メール送受信機能、IPFAX機能、電話機能等の多機能を備える。多機能機10は、表示部12と、操作部14と、ネットワークI/F(インターフェイス)16と、スキャン実行部18と、印刷実行部20と、制御部22と、を備える。上記の各部12〜22はバス線24に接続されている。表示部12は、様々な情報を表示するためのディスプレイである。操作部14は、複数のキーによって構成される。ユーザは、操作部14を操作することによって、様々な指示を多機能機10に入力することができる。ネットワークI/F16は、LAN6に接続されている。スキャン実行部18は、CIS、CCD等のスキャン機構を備え、スキャン対象物をスキャンすることによって画像データを生成する。印刷実行部20は、インクジェットヘッド方式、レーザ方式等の印刷機構を備え、制御部22からの指示に従って印刷を行う。
【0020】
制御部22は、CPU30とメモリ32とを備える。メモリ32は、プログラム34と、帯域課金情報テーブル36と、パラメータ群38と、を格納している。CPU30は、メモリ32内のプログラム34に従って処理を実行する。
【0021】
図9に、帯域課金情報テーブル36の一例を示す。帯域課金情報テーブル36は、帯域60(例えば「2.6Mbps〜」)と、送信速度61(例えば「5.0MB/秒」)と、課金時間62(例えば「180(s)」)と、課金63(例えば「105円」)と、を記憶する。帯域60は、多機能機10が通信可能な帯域である。図9の例では、帯域60には、5個の帯域(「2.6Mbps〜」、「1Mbps〜2.6Mbps」、「512kbps〜1Mbps」、「64kbps〜512kbps」、「0kbps〜64kbps」)が存在する。多機能機10は、5個の帯域60のいずれかに従って、FAXデータの通信を実行する。各帯域は、単位時間(1秒)当たりに通信可能なデータのサイズが異なる。例えば、帯域「256kbps(kilobit per second)」は、1秒当たりに256kb(kilobit)のデータを通信可能であることを意味する。1秒当たりに通信可能なデータのサイズが大きいほど、通信速度が速いことを意味する。
【0022】
また、課金時間62は、時間課金方式が採用される場合において、課金対象となる一定時間である。時間課金方式では、課金時間62(例えば180(s))が経過するたびに、次の課金時間62に対する課金が加算される。課金63は、帯域60に従って通信する場合に必要な、課金時間62当たりの通信料金である。帯域課金情報テーブル36に示すように、帯域60が大きくなる(通信速度が速くなる)ことに応じて、課金63の課金額が高くなっている。帯域課金情報テーブル36により、例えば、帯域60=「2.6Mbps〜」に従って多機能機10が通信を実行する場合には、180秒毎に105円の通信料金が必要であることが分かる。なお、帯域課金情報テーブル36は、多機能機10のベンダによって、多機能機10の出荷前にメモリ32に予め格納されてもよい。
【0023】
パラメータ群38は、各帯域に従って、多機能機10がFAXデータの通信を行う場合に必要な各種の情報を格納する。具体的には、パラメータ群38は、使用候補帯域、送信モード、通常帯域情報、最低帯域情報、T.38対応フラグ、などを格納する。使用候補帯域は、FAXデータの送信に使用する帯域の候補となる帯域である。使用候補帯域は、複数あってもよい。送信モードには、「通常帯域送信モード」と「低帯域送信モード」が存在する。通常帯域送信モードは、通信先機器がFAXデータを受信可能な状態(ビジーでない状態)である期間に使用されるモードである。低帯域送信モードは、通信先機器がFAXデータを受信できない状態(ビジー状態)である期間に使用されるモードである。通常帯域情報は、通常帯域送信モードで用いられる帯域(通常帯域)を示す情報である。最低帯域情報は、低帯域送信モードで用いられる帯域(最低帯域)を示す情報である。通常帯域の通信速度の方が、最低帯域の通信速度よりも速い。T.38対応フラグは、通信先機器がT.38FAX信号(NGN)に対応しているか否かを示す情報である。なお、パラメータ群38は、多機能機10のベンダによって、多機能機10の出荷前にメモリ32に予め格納されてもよい。
【0024】
(SIPサーバ120の構成)
SIPサーバ120の構成について説明する。SIPサーバ120は、多機能機10、110のそれぞれについて、当該多機能機のIPアドレスと、当該多機能機のSIPURIと、を対応付けて記憶している。SIPサーバ120は、SIP(Session Initiation Protocol)を利用して、多機能機10と多機能機110との間の通信セッションを確立する。即ち、例えば、多機能機10と多機能機110との間でIPFAX送信処理を実行するための通信セッションを確立するための各種コマンドは、SIPサーバ120を経由して送信される。
【0025】
(IPFAX送信処理)
続いて、図2を参照して、IPFAX送信処理について説明する。以下では、多機能機10が、通信先機器である多機能機110にFAXデータを送信する場合を例として、IPFAX送信処理の内容を説明する。
【0026】
図2のフローは、多機能機10の電源が投入されている間に実行されるフローである。CPU30は、IPFAX送信操作が実行されることを監視している(S11)。多機能機10のユーザは、図示しない自動原稿搬送装置に原稿をセットし、その状態で、操作部14を用いて、IPFAX送信操作(例、ダイヤル入力後、スタートボタン押下)を実行することができる。IPFAX送信操作は、FAXの送信先である多機能機110のSIPURIを入力する操作を含む。CPU30は、IPFAX送信操作が実行された場合(S11:YES)に、S13へ進む。
【0027】
S13において、CPU30は、原稿読取処理を実行する。S15において、CPU30は、回線接続処理を実行する。S17において、CPU30は、FAX送信処理を実行する。S19において、CPU30は、回線切断処理を実行する。これにより、IPFAX送信処理が完了する。以下、S13ないしS15の各処理について説明する。
【0028】
(原稿読取処理)
図3を用いて、原稿読取処理(S13)を説明する。S111において、CPU30は、自動原稿搬送装置にセットされた原稿を、スキャン実行部18にスキャンさせる。これにより、スキャン実行部18は、スキャンデータを生成する。CPU30は、スキャン実行部18により生成されたスキャンデータをメモリ32に記憶する。S113において、CPU30は、メモリ32に記憶されたスキャンデータを取得し、符号化(圧縮)処理を行い、FAXデータを生成し、メモリ32に記憶する。FAXデータの符号化に用いられる方式の例としては、モノクロの場合には、JBIG方式、MMR方式、MR方式、MH方式などが挙げられる。また、カラーの場合には、JPEG符号化方式が挙げられる。 そして、回線接続処理(S15)へ進む。
【0029】
(回線接続処理)
図4を用いて、回線接続処理(S15)の処理内容を説明する。S211において、CPU30は、使用候補帯域をINVITEメッセージに設定する。具体的には、SDP(Session Description Protocol)に、使用候補とする帯域をkbps単位で記述することで、帯域を要求する。SDPは、メディアの種類(音声か映像か、など)、メディアを運ぶために使用するプロトコル、使用するポート番号などを明示するためのプロトコルである。図10に、INVITEメッセージのSDPの一例を示す。領域A1に示すように、使用する帯域60を「b=AS:64」、「b=AS:512」、「b=AS:1024」と記述することによって、「0kbps〜64kbps」、「64kbps〜512kbps」、「512kbps〜1Mbps」の各々の帯域60を、使用候補の帯域として要求することができる。また、使用候補の帯域のうち、多機能機110が対応できる帯域は、200OKによって多機能機110から通知される。
【0030】
S213において、CPU30は、S11(図2)で取得されたSIPURIを送信先として、SIPサーバ120にINVITEメッセージを送信する。SIPサーバ120は、INVITEメッセージを多機能機110に転送する。多機能機110は、INVITEメッセージを受信すると、200OKをSIPサーバ120に送信する。SIPサーバ120は、200OKを多機能機10に転送する。
【0031】
S215においてCPU30は、INVITEメッセージを送信した後に、SIPサーバ120を介して、多機能機110から200OKを受信したか否かを監視する。受信していない場合(S215:NO)にはS215へ戻り待機し、受信した場合(S215:YES)にはS219へ進む。
【0032】
S219において、CPU30は、通常帯域および最低帯域を設定する。具体的には、S215で受信した200OKを解析する。そして、S211においてINVITEメッセージを用いて要求された使用候補の帯域のうち、多機能機110が対応できる帯域を抽出する。抽出した帯域のうち、通信速度が最大の帯域を通常帯域として設定し、通信速度が最小の帯域を最低帯域として設定する。S221において、CPU30は、通常帯域に関する通常帯域情報、および最低帯域に関する最低帯域情報を、メモリ32のパラメータ群38に記憶させる。
【0033】
S223において、CPU30は、S11(図2)で取得されたSIPURIを送信先として、SIPサーバ120にACKを送信する。SIPサーバ120は、ACKを多機能機110に転送する。多機能機110は、ACKを受信する。これにより、多機能機10と多機能機110との間で通信セッションが確立される。通信セッションが確立されると、課金が開始される。本実施例では、SIPサーバ120が課金サーバとして機能する。具体的には、S223で通信セッションが確立されると、SIPサーバ120は通信時間の計測を開始する。
【0034】
S225において、CPU30は、送信モードを「通常帯域送信モード」に設定する。また、CPU30は、通常帯域に設定されている帯域60を使用して通信を行うように、ネットワークI/F16を設定する。そして、FAX送信処理(図2、S17)へ進む。
【0035】
(FAX送信処理)
図5を用いて、FAX送信処理(S17)を説明する。FAX送信処理は、IP網4を介して、FAXデータを多機能機110に送信する処理である。S302において、CPU30は、DIS信号を多機能機110から受信したか否かを判断する。DIS信号は最初のメッセージであり、応答側(多機能機110)の機能(サイズ、カラー、符号化方式、解像度、T.38有無、など)を述べる信号である。受信していない場合(S302:NO)にはS302へ戻り待機し、受信した場合(S302:YES)にはS306へ進む。
【0036】
S306においてCPU30は、通信先機器である多機能機110が、T.38規格のFAX信号をサポートしているか否かを判断する。当該判断は、S302で受信したDIS信号に含まれている「IP認識T.38モードファクシミリ動作」(bit123)情報が、オンであるか否かによって行われる。多機能機110がT.38に対応していない場合(S306:NO)にはS308に進み、CPU30は、T.38対応フラグを「非対応」に設定する。一方、T.38に対応している場合(S306:YES)にはS310に進み、CPU30は、T.38対応フラグを「対応」に設定する。
【0037】
S313において、CPU30は、DCS信号を多機能機110へ送出する。DCS信号は、送信パラメータを定義し、実際に送るデータの形式を報知するための信号である。S315において、CPU30は、CFR信号を多機能機110から受信したか否かを判断する。CFR信号は、DCS信号を受信した旨を報知する信号である。受信していない場合(S315:NO)にはS315へ戻り待機し、受信した場合(S315:YES)にはS317へ進む。
【0038】
S317においてCPU30は、通常帯域を用いて、部分FAXデータを多機能機110へ送出する。部分FAXデータは、FAXデータを複数のブロックに分割したうちの1つのブロックに該当するデータである。
【0039】
S319において、CPU30は、未送信のFAXデータが存在するか否かを判断する。存在する場合(S319:YES)には、S331へ進む。S331において、CPU30は、現在送信中のページの送信が完了したか否かを判断する。完了していない場合(S331:NO)にはS333に進み、CPU30は、PPS(Partial Page Signal)‐NULL信号を多機能機110へ送出する。一方、現在送信中のページの送信が完了した場合(S331:YES)にはS335に進み、CPU30は、PPS‐MPS(Multi Page Signal)信号を多機能機110へ送出する。S338に進むと、CPU30は、MCF/RNR受信処理を実行する。そして、S317へ戻る。
【0040】
一方、S319において、未送信のFAXデータが存在しないと判断される場合(S319:NO)には、S351へ進む。S351において、CPU30は、PPS‐EOP信号を多機能機110へ送出する。PPS‐EOP信号は、FAX送信の終了の旨のメッセージである。S353において、CPU30は、MCF/RNR受信処理を実行する。S355において、CPU30は、DCN信号を多機能機110へ送出する。DCN信号は、接続解除のメッセージを報知する信号である。そして、FAX送信処理を終了し、回線切断処理(図2、S19)へ進む。
【0041】
(MCF/RNR受信処理)
S338およびS353で実行される、MCF/RNR受信処理を、図6のフローを用いて説明する。S410において、CPU30は、MCF信号を多機能機110から受信したか否かを判断する。MCF信号は、部分FAXデータを受信した旨を報知する信号である。MCF信号を受信した場合(S410:YES)にはS412へ進む。S412において、CPU30は、メモリ32のパラメータ群38に記憶されている送信モードが、「低帯域送信モード」に設定されているか否かを判断する。送信モードが「低帯域送信モード」に設定されていない場合(S412:NO)にはMCF/RNR受信処理を終了し、設定されている場合(S412:YES)にはS414へ進む。S414において、CPU30は、UPDATE処理を実行する。UPDATE処理の内容については後述する。
【0042】
また、S410において、MCF信号を受信していない場合(S410:NO)にはS420へ進む。S420において、CPU30は、RNR信号を多機能機110から受信したか否かを判断する。受信していない場合(S420:NO)にはS428へ進み、受信した場合(S420:YES)にはS422へ進む。
【0043】
S422において、CPU30は、メモリ32のパラメータ群38に記憶されているT.38対応フラグの設定内容を判断する。T.38対応フラグが「対応」に設定されている場合(S422:対応)にはS428へ進み、「非対応」に設定されている場合(S422:非対応)にはS424へ進む。
【0044】
S424において、CPU30は、メモリ32のパラメータ群38に記憶されている送信モードが、「通常帯域送信モード」に設定されているか否かを判断する。「通常帯域送信モード」に設定されていない場合(S424:NO)にはS428へ進み、設定されている場合(S424:YES)にはS426へ進む。S426において、CPU30は、UPDATE処理を実行する。UPDATE処理の内容については後述する。
【0045】
S428において、CPU30は、RR信号を多機能機110に送出する。これにより、多機能機110に対して、FAXデータの送信を再開してよいか否かを問い合わせることができる。そしてS410へ戻る。
【0046】
(UPDATE処理)
S414およびS426で実行されるUPDATE処理を、図7のフローを用いて説明する。S502において、CPU30は、送信モードの設定内容を判断する。送信モードが「通常帯域送信モード」に設定されている場合(S502:通常帯域送信モード)には、S504へ進む。
【0047】
S504において、CPU30は、最低帯域情報をパラメータ群38から読み出して、UPDATEメッセージに設定する。UPDATEメッセージは、各種の通信設定を変更するための情報であり、FAXデータとパラレルに出力することが可能な情報である。なお、最低帯域のUPDATEメッセージへの設定方法は、S211(図4)で説明した使用候補帯域のINVITEメッセージへの設定方法と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。S506において、CPU30は、送信モードを「低帯域送信モード」に設定する。また、CPU30は、最低帯域に設定されている帯域60を使用して通信を行うように、ネットワークI/F16を設定する。そしてS513へ進む。
【0048】
一方、S502において、送信モードが「低帯域送信モード」に設定されていると判断される場合(S502:低帯域送信モード)には、S508へ進む。S508において、CPU30は、通常帯域情報をパラメータ群38から読み出して、UPDATEメッセージに設定する。S510において、CPU30は、送信モードを「通常帯域送信モード」に設定する。また、CPU30は、通常帯域に設定されている帯域60を使用して通信を行うように、ネットワークI/F16を設定する。そしてS513へ進む。
【0049】
S513において、CPU30は、UPDATEメッセージをSIPサーバ120へ送出する。SIPサーバ120は、UPDATEメッセージを多機能機110に転送する。多機能機110は、UPDATEメッセージを受信すると、200OKをSIPサーバ120に送信する。SIPサーバ120は、200OKを多機能機10に転送する。
【0050】
S515において、CPU30は、SIPサーバ120から200OKを受信したか否かを監視する。受信していない場合(S515:NO)にはS515へ戻り待機し、受信した場合(S515:YES)にはUPDATE処理を終了する。
【0051】
(回線切断処理)
図8を用いて、回線切断処理(S19)を説明する。S611において、CPU30は、BYE信号をSIPサーバ120へ送出する。BYE信号は、多機能機10と多機能機110との間に確立された通信セッションを終了するためのコマンドである。
【0052】
SIPサーバ120は、BYEを受信すると、課金処理を終了し、BYEを多機能機110に転送する。SIPサーバ120は、課金処理を終了すると、多機能機10と多機能機110との通信にかかった通信時間の計測を終了する。多機能機110は、BYEを受信すると、200OKをSIPサーバ120に送信する。SIPサーバ120は、200OKを多機能機10に転送する。S617において、CPU30は、SIPサーバ120から200OKを受信したか否かを監視する。受信していない場合(S617:NO)にはS617へ戻り待機し、受信した場合(S617:YES)には多機能機10と多機能機110との通信セッションが終了する。これにより、IPFAX送信処理が完了する。
【0053】
(動作の具体例)
本実施形態に係る通信システム2の動作の具体例を、図11および図12のシーケンス図を用いて説明する。図11および図12では、例として、使用候補帯域が「0kbps〜64kbps」、「64kbps〜512kbps」、「512kbps〜1Mbps」である場合を説明する。また、多機能機110が対応できる帯域が、「0kbps〜64kbps」および「64kbps〜512kbps」である場合を説明する。また、多機能機110がT.38FAX信号に非対応であり、多機能機110がホームゲートウェイ130のTEL_I/Fに接続されている場合を説明する。この場合、多機能機110は、ホームゲートウェイ130を介して、各種の信号(DIS信号又は、MCF信号など)を多機能機10と通信する。また、図11の期間T2において多機能機110の処理能力が低下してビジー状態となり、図12の期間T3において多機能機110が通常の状態に戻る場合を説明する。
【0054】
IPFAX送信操作が実行されると(S11:YES)、原稿読取処理(S13)が実行される。次に、回線接続処理(S15)が開始される。使用候補帯域=「0kbps〜64kbps」、「64kbps〜512kbps」、「512kbps〜1Mbps」がINVITEメッセージに設定され(S211)、INVITEメッセージがSIPサーバ120へ送出される(S213)。SIPサーバ120を介してホームゲートウェイ130から200OKを受信すると(S215:YES)、ホームゲートウェイ130が対応できる帯域が、「0kbps〜64kbps」および「64kbps〜512kbps」であることが判明する。よって、通信速度が最大の帯域(「64kbps〜512kbps」)が通常帯域に設定され、通信速度が最小の帯域(「0kbps〜64kbps」)が最低帯域に設定される(S219)。そして、SIPサーバ120にACKを送信することで、多機能機10とホームゲートウェイ130との間で通信セッションが確立される(S223)。また、送信モードが「通常帯域送信モード」に設定される(S225)。
【0055】
次に、FAX送信処理(S17)が開始される。図11の期間T1における動作を説明する。DIS信号を多機能機110から受信すると(S302:YES)、多機能機110がT.38FAX信号に対応していないため(S306:NO)、T.38対応フラグが「非対応」に設定される(S308)。DCS信号を多機能機110へ送出すると(S313)、CFR信号を多機能機110から受信する(S315:YES)。通常帯域(「64kbps〜512kbps」)を用いて部分FAXデータを多機能機110へ送出し(S317)、PPS‐NULL信号を多機能機110へ送出すると(S333)、MCF信号を多機能機110から受信する(S410:YES)。送信モードが「低帯域送信モード」に設定されていないため(S412:NO)、部分FAXデータの送出(S317)およびMCF信号の受信(S410:YES)が繰り返される。
【0056】
図11の期間T2における動作を説明する。通常帯域を用いて部分FAXデータを多機能機110へ送出し(S317)、PPS‐NULL信号を多機能機110へ送出すると(S333)、多機能機110がFAXデータを受信できない状態であるため、RNR信号を多機能機110から受信する(S420:YES)。T.38対応フラグが「非対応」に設定されており(S422:非対応)、送信モードが「通常帯域送信モード」に設定されているため(S424:YES)、UPDATE処理が実行される(S426)。送信モードが「通常帯域送信モード」に設定されているため(S502:通常帯域送信モード)、最低帯域情報をUPDATEメッセージに設定し(S504)、UPDATEメッセージをSIPサーバ120へ送出する(S513)。また送信モードが「低帯域送信モード」に設定され、最低帯域(「0kbps〜64kbps」)を用いて通信を行うように切り替えられる(S506)。200OKを受信すると(S515:YES)、UPDATE処理を終了する。
【0057】
図12の期間T3における動作を説明する。RR信号を多機能機110に送出すると(S428)、多機能機110がFAXデータを受信することができない期間の間は、RNR信号を多機能機110から受信する(S420:YES)。そして、多機能機110がFAXデータを受信することができるようになると、MCF信号を多機能機110から受信する(S410:YES)。この、RNR信号を受信(S420:YES)してからMCF信号を受信(S410:YES)するまでの期間が、多機能機110側でのデータ通信停止期間DT1である。
【0058】
送信モードが、「低帯域送信モード」に設定されているため(S412:YES)、UPDATE処理が実行される(S414)。送信モードが「低帯域送信モード」に設定されているため(S502:低帯域送信モード)、通常帯域情報をUPDATEメッセージに設定し(S508)、UPDATEメッセージをSIPサーバ120へ送出する(S513)。また送信モードが「通常帯域送信モード」に設定され、通常帯域(「64kbps〜512kbps」)を用いて通信を行うように切り替えられる(S510)。200OKを受信すると(S515:YES)、UPDATE処理を終了する。
【0059】
図12の期間T4における動作を説明する。通常帯域を用いて、最後の部分FAXデータを多機能機110へ送出すると(S317)、未送信のFAXデータが存在しないため(S319:NO)、PPS‐EOP信号を多機能機110へ送出する(S351)。MCF信号を多機能機110から受信すると(S410:YES)、送信モードが「低帯域送信モード」に設定されていないため(S412:NO)、DCN信号を多機能機110へ送出する(S355)。
【0060】
そして、回線切断処理(S19)が実行され、多機能機10と多機能機110との通信セッションが終了する。
【0061】
(効果)
以上説明した、第1実施例の説明例に係る多機能機10の効果を説明する。課金時間62当りの通信料金を用いるIP網4では、通信先機器である多機能機110が処理能力の低下によりFAXデータを受信することができない期間(データ通信停止期間DT1)においても課金されるため、当該期間中において無駄な課金が発生することになる。第1実施例に係る多機能機10では、多機能機110がFAXデータを受信できない状態(ビジー状態)であることが判明すると(S420:YES)、使用する帯域を通常帯域より遅い最低帯域に変更する(S504、S506)。これにより、図9の帯域課金情報テーブル36に示すように、利用する帯域60が遅くなることに応じて課金時間62当りの課金63が安くなることが一般的であるため、データ通信停止期間DT1の期間中の課金額が、必要以上に高くなってしまう事態を防止することができる。
【0062】
また多機能機10は、RNR信号を受信することに応じて(S420:YES)、通信先機器である多機能機110がFAXデータを受信できない状態であると判断し、使用帯域を即座に最低帯域に変更することができる(S504、S506)。また多機能機10は、RR信号(S428)に対する応答としてMCF信号を受信することに応じて(S410:YES)、通信先機器である多機能機110がFAXデータを受信できる状態に復帰したと判断し、使用帯域を通常帯域に戻すことができる(S508、S510)。これにより、多機能機110側がFAXデータを受信できない状態になっている期間中にのみ、使用帯域を最低帯域に落とすことができる。よって、課金額が必要以上に高額となる事態を防止することと、FAXデータ通信に必要な時間の短縮化とを両立することができる。
【0063】
また、T.38FAX信号に対応している多機能機に比して、T.38FAX信号に対応していない多機能機の方が、データ処理能力が低い場合が多く、FAXデータを受信できない状態になり易い傾向がある。そこで多機能機10は、多機能機110がT.38FAX信号に非対応であることを検出した場合(S306:NO、S422:非対応)にのみ、使用帯域を通常帯域から最低帯域に変更する処理を実行する。これにより、課金額が必要以上に高額となってしまう事態を、より効果的に防止することができる。
【0064】
(第2実施例)
第2実施例を説明する。第2実施例は、第1実施例で行われるMCF/RNR受信処理(S338、S353)を一部変更する実施例である。具体的には、データ通信停止期間DT1(RNR信号を受信してからMCF信号を受信するまでの期間)を毎度計測して、データ通信停止期間DT1の平均値である平均停止期間を算出する。そして、平均停止期間が通常帯域の課金時間を超えていた場合に、帯域を最低帯域に変更するという実施例である。また第2実施例では、メモリ32のパラメータ群38には、平均停止期間がさらに記憶される。なお、第2実施例のその他の構成や動作については、第1実施例と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0065】
(MCF/RNR受信処理)
第2実施例に係るMCF/RNR受信処理を、図13および図14のフローを用いて説明する。S710において、CPU30は、MCF信号を多機能機110から受信したか否かを判断する。MCF信号を受信した場合(S710:YES)にはS712へ進む。S712において、CPU30は、データ通信停止期間DT1を計測中であるか否かを判断する。計測中ではない場合(S712:NO)にはS722へ進み、計測中である場合(S712:YES)にはS714へ進む。S714において、CPU30は、データ通信停止期間DT1の計測を終了する。
【0066】
S716において、CPU30は、平均停止期間がメモリ32のパラメータ群38に記憶されているか否かを判断する。記憶されていない場合(S716:NO)には、初回の計測であると判断され、S718へ進む。S718において、CPU30は、今回計測したデータ通信停止期間DT1を、平均停止期間としてメモリ32に記憶させる。また、平均停止期間が記憶されている場合(S716:YES)にはS720に進み、CPU30は、今回計測したデータ通信停止期間DT1を用いて、平均停止期間を更新する。
【0067】
S722において、CPU30は、送信モードが「低帯域送信モード」に設定されているか否かを判断する。送信モードが「低帯域送信モード」に設定されていない場合(S722:NO)にはMCF/RNR受信処理を終了し、設定されている場合(S722:YES)にはS724へ進む。S724において、CPU30は、UPDATE処理を実行する。
【0068】
また、S710においてMCF信号を受信していない場合(S710:NO)には、S730(図14)へ進む。S730において、CPU30は、RNR信号を多機能機110から受信したか否かを判断する。受信していない場合(S730:NO)にはS746へ進み、受信した場合(S730:YES)にはS732へ進む。
【0069】
S732において、CPU30は、送信モードが「通常帯域送信モード」に設定されているか否かを判断する。「通常帯域送信モード」に設定されていない場合(S732:NO)にはS746へ進み、設定されている場合(S732:YES)にはS734へ進む。S734において、CPU30は、データ通信停止期間DT1を計測中であるか否かを判断する。計測中である場合(S734:YES)にはS738へ進み、計測中ではない場合(S734:NO)にはS736へ進む。S736において、CPU30は、データ通信停止期間DT1の計測を開始する。
【0070】
S738において、CPU30は、平均停止期間がメモリ32のパラメータ群38に記憶されているか否かを判断する。記憶されていない場合(S738:NO)には、初めてRNR信号を受信した場合であるため、帯域を変更する処理を実行しないと判断され、S746へ進む。一方、平均停止期間が記憶されている場合(S738:YES)にはS740へ進み、CPU30は、平均停止期間が、通常帯域の課金時間62を超えているか否かを判断する。越えていない場合(S740:NO)にはS746へ進み、越えている場合(S740:YES)にはS742へ進んでUPDATE処理を実行する。S746において、CPU30は、RR信号を多機能機110に送出する。そしてS710(図13)へ戻る。
【0071】
なお、図9に示す帯域課金情報テーブル36の例では、「2.6Mbps〜」および「1Mbps〜2.6Mbps」の帯域の課金時間62は、180秒に設定されている。すると、「2.6Mbps〜」または「1Mbps〜2.6Mbps」の帯域が通常帯域に設定されている場合に、データ通信停止期間DT1の最大値が60秒になるようにIP網4側で設定が行われている場合には、S740において、平均停止期間(60秒以下)が通常帯域の課金時間62(180秒)を越えることはない。よってこの場合には、UPDATE処理(S742)が行われないため、通常帯域から最低帯域に切り替えられることはない。
【0072】
(効果)
以上説明した、第2実施例の説明例に係る多機能機10の効果を説明する。RNR信号を受信してからMCF信号を受信するまでのデータ通信停止期間DT1は、通信先機器である多機能機110がビジー状態である期間である。そして、データ通信停止期間DT1が通常帯域の課金時間62を越えている場合は、帯域を通常帯域から最低帯域に変更することで、課金額が必要以上に高くなる事態を確実に防止できる場合である。そこで、第2実施例に係る多機能機10では、データ通信停止期間DT1の平均値(平均停止期間)が通常帯域の課金時間62を越えている場合(S740:YES)にのみ帯域変更を行うことができるため、無駄な帯域変更処理が実行されてしまう事態を防止することができる。
【0073】
また多機能機10は、平均停止期間を用いて、帯域変更処理の実行可否を判断する。これにより、データ通信停止期間DT1が極端に長くなる場合や短くなる場合などの異常発生時においても、確実に帯域変更処理の実行可否を判断することができる。
【0074】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0075】
(変形例)
本実施例では、通信先機器である多機能機110がT.38FAX信号に非対応であることを検出した場合(S306:NO、S422:非対応)にのみ、使用帯域を通常帯域から最低帯域に変更する場合を説明したが、この形態に限られない。通信先機器がT.38FAX信号に対応しているか否かに関わらず、使用帯域を変更する形態であってもよい。この場合、図5のフローにおいてS306、S308、S310のステップを省略し、図6のフローにおいてS422のステップを省略すればよい。
【0076】
多機能機110がT.38FAX信号に対応している場合には、多機能機110は、ホームゲートウェイ130を介さずに、LAN8に直接接続されていてもよい。この場合には、多機能機10から多機能機110までの接続経路では、T.38FAX信号によって通信が行われる。また、多機能機10と多機能機110との間では、各種の信号(DIS信号又は、MCF信号など)の通信が直接に行われる。
【0077】
S219で設定される最低帯域は、多機能機110が対応できる帯域のうち通信速度が最小の帯域に限られない。単位時間当たりの課金額が、通常帯域よりも安い帯域であれば、何れの帯域を最低帯域として設定してもよい。
【0078】
S219で設定される通常帯域は、多機能機110が対応できる帯域のうち通信速度が最大の帯域に限られない。例えば、送信するFAXデータのサイズに基づいて、多機能機110が対応できる帯域のうちの1つの帯域を、通常帯域として選択する形態であってもよい。
【0079】
第2実施例のS740において、帯域変更処理の実行可否を判断する際に用いられる値は、平均停止期間に限られない。例えば、前回のデータ通信停止期間DT1をメモリ32に記憶しておき、前回のデータ通信停止期間DT1が通常帯域の課金時間62を超えている場合に帯域を変更するとしても良い。
【0080】
本実施形態では、多機能機10が多機能機110に対してFAX送信処理を実行する場合を例に説明した。しかしながら、本技術は各種のデータ送信処理(例:電子メール送信処理)に適用可能である。
【0081】
本実施形態で説明した帯域課金情報テーブル36(図9)の記憶内容は、例示である。よって、帯域60の数、帯域60、送信速度61などは、これらの値に限定されない。
【0082】
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【0083】
なお、IP網4は帯域確保型ネットワークの一例である。課金時間62は課金単位時間の一例である。多機能機110は通信先機器の一例である。通常帯域は第1帯域の一例である。S317を実行するCPU30は第1送信手段の一例である。PPS信号は第1信号の一例である。S333を実行するCPU30は第2送信手段の一例である。RNR信号は第2信号の一例である。最低帯域は第2帯域の一例である。S504を実行するCPU30は帯域変更手段の一例である。RR信号は第3信号の一例である。S428を実行するCPU30は第3送信手段の一例である。MCF信号は第4信号の一例である。DIS信号は第5信号の一例である。データ通信停止期間DT1は第1期間の一例である。
【符号の説明】
【0084】
2:通信システム、4:IP網、10:多機能機、110:多機能機、120:SIPサーバ、62:課金時間、DT1:データ通信停止期間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯域確保型ネットワークに接続され、通信速度が異なるとともに課金単位時間当りの通信料金が異なる複数個の帯域のいずれかに従って、通信先機器との間でデータの通信を実行する通信装置であって、
データを所定の第1帯域に従って送信する第1送信手段と、
前記データを送信した旨を示す第1信号を前記第1帯域に従って送信する第2送信手段と、
前記第1信号の応答として前記通信先機器がビジー状態である旨を示す第2信号を受信することを条件として、前記第1送信手段によるデータの送信を停止するとともに、使用する帯域を前記第1帯域より遅い第2帯域に変更する帯域変更手段と、
前記通信先機器がビジー状態であるか否かを問い合わせるための第3信号を前記第2帯域に従って送信する第3送信手段と、
を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記帯域変更手段は、
前記第3信号の応答として前記通信先機器がビジー状態でない旨を示す第4信号を受信することを条件として、帯域を前記第1帯域に戻し、前記第1送信手段は、前記第1帯域に従ってデータの送信を再開することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記帯域変更手段は、
前記通信先機器が前記帯域確保型ネットワークに非対応である旨を示す第5信号を受信している場合に、帯域を前記第1帯域から前記第2帯域に変更することを特徴とする請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記帯域変更手段は、
前記第2信号を受信してから前記第4信号を受信するまでの第1期間が、前記第1帯域の課金単位時間を越えている場合に、帯域を前記第1帯域から前記第2帯域に変更することを特徴とする請求項2または3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記帯域変更手段は、前記複数個の帯域のうち前記通信速度が最小の帯域を前記第2帯域として使用することを特徴とする請求項1ないし4の何れか1項に記載の通信装置。
【請求項6】
帯域確保型ネットワークに接続され、通信速度が異なるとともに課金単位時間当りの通信料金が異なる複数個の帯域のいずれかに従って、通信先機器との間でデータの通信を実行する通信装置のためのプログラムであって、
データを所定の第1帯域に従って送信部に送信させる第1送信手段と、
前記データを送信した旨を示す第1信号を前記第1帯域に従って前記送信部に送信させる第2送信手段と、
前記第1信号の応答として前記通信先機器がビジー状態である旨を示す第2信号受信することを条件として、前記第1送信手段によるデータの送信を停止するとともに、使用する帯域を前記第1帯域より遅い第2帯域に変更する帯域変更手段と、
前記通信先機器がビジー状態であるか否かを問い合わせるための第3信号を前記第2帯域に従って前記送信部に送信させる第3送信手段と、
を前記通信装置に搭載されるコンピュータに機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項1】
帯域確保型ネットワークに接続され、通信速度が異なるとともに課金単位時間当りの通信料金が異なる複数個の帯域のいずれかに従って、通信先機器との間でデータの通信を実行する通信装置であって、
データを所定の第1帯域に従って送信する第1送信手段と、
前記データを送信した旨を示す第1信号を前記第1帯域に従って送信する第2送信手段と、
前記第1信号の応答として前記通信先機器がビジー状態である旨を示す第2信号を受信することを条件として、前記第1送信手段によるデータの送信を停止するとともに、使用する帯域を前記第1帯域より遅い第2帯域に変更する帯域変更手段と、
前記通信先機器がビジー状態であるか否かを問い合わせるための第3信号を前記第2帯域に従って送信する第3送信手段と、
を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記帯域変更手段は、
前記第3信号の応答として前記通信先機器がビジー状態でない旨を示す第4信号を受信することを条件として、帯域を前記第1帯域に戻し、前記第1送信手段は、前記第1帯域に従ってデータの送信を再開することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記帯域変更手段は、
前記通信先機器が前記帯域確保型ネットワークに非対応である旨を示す第5信号を受信している場合に、帯域を前記第1帯域から前記第2帯域に変更することを特徴とする請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記帯域変更手段は、
前記第2信号を受信してから前記第4信号を受信するまでの第1期間が、前記第1帯域の課金単位時間を越えている場合に、帯域を前記第1帯域から前記第2帯域に変更することを特徴とする請求項2または3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記帯域変更手段は、前記複数個の帯域のうち前記通信速度が最小の帯域を前記第2帯域として使用することを特徴とする請求項1ないし4の何れか1項に記載の通信装置。
【請求項6】
帯域確保型ネットワークに接続され、通信速度が異なるとともに課金単位時間当りの通信料金が異なる複数個の帯域のいずれかに従って、通信先機器との間でデータの通信を実行する通信装置のためのプログラムであって、
データを所定の第1帯域に従って送信部に送信させる第1送信手段と、
前記データを送信した旨を示す第1信号を前記第1帯域に従って前記送信部に送信させる第2送信手段と、
前記第1信号の応答として前記通信先機器がビジー状態である旨を示す第2信号受信することを条件として、前記第1送信手段によるデータの送信を停止するとともに、使用する帯域を前記第1帯域より遅い第2帯域に変更する帯域変更手段と、
前記通信先機器がビジー状態であるか否かを問い合わせるための第3信号を前記第2帯域に従って前記送信部に送信させる第3送信手段と、
を前記通信装置に搭載されるコンピュータに機能させることを特徴とするプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−31023(P2013−31023A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166154(P2011−166154)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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