説明

通信装置及び通信システム

【課題】通信装置の他の通信装置へ送信する信号の送信レベルを、他の通信装置が所望する受信レベルに基づく値に調整する。
【解決手段】他の通信装置から送信された第1の信号を受信する第1の受信部と、第1の信号の受信レベルを測定する受信レベル測定部と、第2の信号を他の通信装置に送信する第2の送信部と、受信レベル測定部が測定した第1の信号の受信レベル、第1の信号の送信レベル、及び他の通信装置が所望する第2の信号の受信レベルに基づき第2の信号の送信レベルを調整する送信レベル調整部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、有線の伝送媒体で接続され、データを送受信する通信装置における、他の通信装置へ送信する信号の送信レベル調整に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有線の伝送媒体として光ファイバを使用する通信システムである光通信システムにおいて、光ファイバと接続する通信装置である光通信装置の光送信レベルは、伝送路となる光ファイバ、光分岐カプラ、及び接続コネクタ等による伝送路損失を考慮し、伝送路を介して接続する受信側の光通信装置の光受信レベルが、最小受光感度と最大受光感度との間になるように、設定される。光信号の送信による消費電力を、必要最小限にするためには、受信側の光通信装置の光受信レベルが、最小受光感度となるように、光送信レベルを設定すればよい。
【0003】
ところが、光通信装置の光送信レベルは、装置の製造時に固定値を設定されることが多く、この場合、光通信システムにおける所定の仕様として規定される、光通信装置間の最大伝送距離、光ファイバの最大の分岐数、及び最大の接続コネクタ数等から想定される最も大きな伝送路損失となる装置設置条件においても、伝送後の光受信レベルが、受信側の光通信装置の最小受光感度以上となるように、光送信レベルは設定される。しかしながら、実際の設置条件では、ほとんどの場合、光通信装置間の伝送路損失は、想定される最も大きな伝送路損失より小さくなるため、受信側の光通信装置の光受信レベルは、最小受光感度より大きくなる。すなわち、光通信装置は、受信側の光通信装置の最小受光感度に基づく最小の光送信レベルより大きい値で光信号を送信していることとなり、延いては光通信装置の光信号送信による消費電力が必要最小限の値より大きくなっていることとなる。
【0004】
この問題を解決する従来技術として、受信側の光通信装置において、光受信レベルを測定し、測定した光受信レベルから自装置の最小受光感度を減じることにより余裕度を算出して、算出した余裕度を送信側の光通信装置に伝達することにより、送信側の光通信装置において、余裕度に応じて光送信レベルを調整するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、送信側の光通信装置が保持する所望の光受信レベルと測定した光受信レベルとの差に応じて光送信レベルを調整するとともに、調整量を受信側の光通信装置に伝達し、受信側の光通信装置は、伝達された調整量に応じて光送信レベルを調整するものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−154375号公報(第5−6頁、図1)
【特許文献2】特開平5−56002号公報(第3−4頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
局側装置とn台の加入者側装置とを光ファイバ及び光分岐カプラを介して接続する1対n接続構成であるPON(Passive Optical Network)において、各加入者側装置の光送信レベルを、局側装置の最小受光感度に基づく最小の値にすることを考える。
【0008】
1対n接続構成であるPONにおいて、各加入者側装置が、上述した特許文献1に開示された方法により、光送信レベルを調整するには、受信側の光通信装置である局側装置は、n台の加入者側装置ごとに光受信レベルを測定し、n台の加入者側装置ごとに余裕度を算出する必要がある。ところが、各加入者側装置から局側装置への上り方向の通信は時分割多元接続であり、各加入者側装置が送信する上り光信号は断続的なバースト光信号であるため、局側装置がn台の加入者側装置ごとに光受信レベルを測定しようとすると、局側装置は、測定している上り光信号が、どの加入者側装置が送信したものかを把握し、加入者側装置ごとに余裕度を算出し、各加入者側装置に対応する余裕度をそれぞれの加入者側装置に伝達する必要があり、局側装置の回路が複雑化するという問題点があった。
【0009】
次に、1対n接続構成であるPONにおいて、各加入者側装置が、上述した特許文献2に開示された方法により、光送信レベルを調整することを検討する。まず、特許文献2のB局を局側装置、A局を加入者側装置と考えた場合、局側装置は、n台の加入者側装置ごとに光受信レベルを測定し、所望の光受信レベルと測定した光受信レベルとの差に応じた調整量を、n台の加入者側装置ごとに算出する必要がある。これは、上述の特許文献1に開示された方法をPONに適用する場合と同様に、局側装置は、測定している上り光信号が、どの加入者側装置が送信したものかを把握し、加入者側装置ごとに調整量を算出し、各加入者側装置に対応する調整量をそれぞれの加入者側装置に伝達する必要があり、局側装置の回路が複雑化するという問題点があった。
【0010】
また、A局を局側装置、B局を加入者側装置と考えた場合、局側装置の光送信器の特性が、加入者側装置の光送信器と同じであり、局側装置の光受信器の特性も、加入者側装置の光受信器と同じである必要がある。上り方向と下り方向とで非対称である1対n接続構成のPONにおいては、局側装置の光送信器の特性は、加入者側装置の光送信器と異なり、局側装置の光受信器の特性は、加入者側装置の光受信器と異なるため、各加入者側装置が、自装置が保持する所望の受信レベルと測定した光受信レベルとの差に応じて光送信レベルを調整すると、局側装置の光受信器は、加入者側装置の光送信器が送信する光を受信できない可能性があるという問題点があった。
【0011】
この発明は、上述のような問題点を解決するためになされたもので、他の通信装置へ送信する信号の送信レベルを、他の通信装置の所望する受信レベルに基づく値に調整することを可能とする通信装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に係る通信装置は、他の通信装置と有線の伝送媒体を介してデータ送受信を行うものであり、前記他の通信装置からベースバンド伝送により送信された第1の信号を受信する第1の受信部と、前記第1の信号の受信レベルを測定する受信レベル測定部と、第2の信号を前記他の通信装置に送信する第2の送信部と、前記受信レベル測定部が測定した前記第1の信号の受信レベル、前記第1の信号の送信レベル、及び前記他の通信装置が所望する前記第2の信号の受信レベルに基づき前記第2の信号の送信レベルを調整する送信レベル調整部とを備えたものである。
【0013】
また、この発明に係る通信システムは、局側装置と1つ以上の加入者側装置とを有線の伝送媒体で接続してデータ送受信を行うものであり、前記局側装置は、前記加入者側装置から送信された第2の信号を受信する第2の受信部と、第1の信号の送信レベルを含む前記第1の信号を生成し、生成した前記第1の信号を前記加入者側装置へベースバンド伝送により送信する第1の送信部を備え、前記加入者側装置のうち少なくとも1つは、前記第1の信号の受信レベルを測定する受信レベル測定部と、前記第2の信号を前記局側装置に送信する第2の送信部と、前記第1の信号の送信レベルを含む前記第1の信号を受信して、受信した当該第1の信号から前記第1の信号の送信レベルを抽出する第1の受信部と、前記第1の受信部が抽出した前記第1の信号の受信レベル、前記第1の信号の送信レベル、及び前記局側装置が所望する前記第2の信号の受信レベルに基づき前記第2の信号の送信レベルを調整する送信レベル調整部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係る通信装置及び通信システムは、他の通信装置が送信する第1の信号の受信レベルを測定し、測定した受信レベル、第1の信号の送信レベル、及び他の通信装置の所望する第2の信号の受信レベルを用いて、第2の信号の送信レベルを調整するようにしたので、通信装置は、送信レベルを、他の通信装置の所望する受信レベルに基づく値に調整することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1に係る光通信システムの構成を示すシステム構成図である。
【図2】本発明の実施の形態2に係る光通信システムの構成を示すシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る光通信システムの構成を示すシステム構成図である。図1において光通信システムは、局側装置100(通信装置)が、加入者側装置200a(通信装置)を含むn台の加入者側装置200と、受動素子である光分岐カプラ40によって複数の光ファイバ41a〜41nに分岐した光ファイバ42(有線の伝送媒体)を介して接続する構成であり、局側装置100とn台の加入者側装置200とが光分岐カプラを介して1本の光ファイバで双方向のデータ通信(データ送受信)を行う1対n接続の光通信システムである。
【0017】
局側装置100から各加入者側装置200への下り方向の光信号の波長と、各加入者側装置200から局側装置100への上り方向の光信号の波長とを、互いに異なるようにすることにより、局側装置100と各加入者側装置200とは、1本の光ファイバで双方向のデータ通信を行う。局側装置100から加入者側装置200aへの下り方向の通信は、時分割多重化通信であり、局側装置100が送信する下り光信号(第1の信号)は連続光信号である。加入者側装置200aは、下り光信号を連続して受信し、自装置宛て以外の光信号は破棄する。一方、加入者側装置200aから局側装置100への上り方向の通信は、時分割多元接続による通信であり、加入者側装置200aが送信する上り光信号(第2の信号)は、断続的なバースト光信号である。
【0018】
局側装置100は、上り光信号と下り光信号とを波長分離多重するWDM(Wavelength Division Multiplexing)カプラ11、n台の加入者側装置200が送信する上り光信号を受信してO/E変換する光受信器12、主信号を上位ネットワーク(図示せず)に送出するデータ受信部13、上位ネットワークから送出される主信号及び生成した情報通知用フレームを光送信器14に送出するデータ送信部15、下り光信号の光送信レベルを測定する光送信レベル測定部16、及びデータ送信部15から送出された主信号及び情報通知用フレームをE/O変換して下り光信号を送信する光送信器14から構成される。第1の送信部は、データ送信部15及び光送信器14から構成される。第2の受信部は、光受信器12及びデータ受信部13から構成される。光受信器12は、局側装置100の所望する受信レベルとしての最小受光感度B[dBm]を下回る光受信レベルでは、O/E変換することはできない。最小受光感度B[dBm]は、固定値である。
【0019】
加入者側装置200aは、上り光信号と下り光信号とを波長分離多重するWDMカプラ21、局側装置100が送信する下り光信号を受信してO/E変換する光受信器22、下り光信号の光受信レベルを測定する光受信レベル測定部23、主信号を加入者端末(図示せず)に送出するデータ受信部24、上り光信号レベルを調整する光送信レベル調整部25、加入者端末(図示せず)から送出される主信号を光送信器26に送出するデータ送信部27、及びデータ送信部27から送出された主信号をE/O変換して下り光信号を送信する光送信器26から構成される。第2の送信部は、データ送信部27及び光送信器26から構成される。第1の受信部は、光受信器22及びデータ受信部24から構成される。
【0020】
次に動作について説明する。局側装置100のWDMカプラ11は、加入者側装置200aが送信するバースト光信号である上り光信号を、光ファイバ41a、光分岐カプラ40、及び光ファイバ42を介して受信し、光受信器12に送出する。光受信器12は、上り光信号をO/E変換し、データ受信部13に送出する。データ受信部13は、主信号を上位ネットワークに送出する。
【0021】
光送信レベル測定部16は、光送信器14が送出する連続光である下り光信号の光送信レベルを測定し、測定結果(A[dBm]とする)をデータ送信部15に通知する。データ送信部15は、予め記憶されていた光受信器12の最小受光感度(B[dBm]とする)及び光送信レベル測定部16が測定した下り光信号の光送信レベルA[dBm]を加入者側装置200aに通知するために、例えば、IEEE802.3ahにて規定される拡張OAMフレームに基づく情報通知用フレームを生成し、上位ネットワークから送出される主信号及び生成した情報通知用フレームを、IEEE802.3ahにて規定されるプロトコルで光送信器14aに送出する。光送信器14aは、主信号及び情報通知用フレームを、E/O変換し、WDMカプラ11を介して光ファイバ42に、下り光信号として送出する。光ファイバ42に送出された下り光信号は、光分岐カプラ40で分配され、光ファイバ41a〜41nを介してn台の加入者側装置200に到達する。
【0022】
光送信レベル測定部16による光送信レベルの測定及びデータ送信部15による情報通知用フレームの生成は、周期的に実施されるようにしてもよいし、局側装置100に接続される監視装置(図示せず)のシステム運用者による操作に基づき実施されるようにしてもよい。周期的に実施される場合、光送信器14の光送信レベルの経年変化に対応する周期としてもよいし、局側装置100とn台の加入者側装置200との間の伝送路容量、局側装置100の負荷、又はn台の加入者側装置200のそれぞれの負荷を圧迫しない程度まで短い周期としてもよい。また、光送信レベルを測定した時に測定値を記憶しておき、光送信レベルの測定値に変化があったときのみ情報通知用フレームを生成するようにしてもよい。
【0023】
なお、上述の情報通知用フレームのフォーマットは、拡張OAMフレームに基づくものに限定されるものではなく、最小受光感度及び光送信レベルを加入者側装置200に通知できるものであれば、特にフォーマットに制限はない。また、情報通知用フレームの宛先は、拡張OAMフレームに基づくものに限定されるものではなく、ブロードキャスト、マルチキャスト、またはユニキャストなどでもよい。マルチキャスト、またはユニキャストの場合は、n台の加入者側装置200のうちの特定の加入者側装置200が情報通知用フレームを受信することとなる。さらにまた、情報通知用フレームを局側装置100からn台の加入者側装置200に通知するためのプロトコルは、イーサネットフレーム(イーサネットは登録商標)を用いるものでもよいし、ATMセルを用いるものでもよく、情報通知用フレームを送受信できるものであれば、特に使用するプロトコルに制限はない。
【0024】
また、局側装置100から加入者側装置200aへの下り方向の通信は、時分割多重化通信であり、光送信器14が送出する下り光信号は連続光信号であるため、光送信レベル測定部16は、光送信器14が下り光信号を送出しているかどうかを判定する必要はない。また、下り光信号は、発光(1)と消灯(0)とを繰り返す光信号(ベースバンド伝送)であるが、光送信レベルの測定は所定の期間の平均送信電力を光送信レベルとするものであり、下り光信号は8B/10Bなどの符号化方式によりスクランブル化されているため、光送信レベル測定部16が測定する光送信レベルに、下り光信号の消灯の状態が連続することによる測定誤差は発生しないと考えてよい。
【0025】
次に、加入者側装置200aのWDMカプラ21は、加入者側装置200aに到達した下り光信号を受信し、光受信器22及び光受信レベル測定部23に送出する。光受信レベル測定部23は、WDMカプラ21が送出する下り光信号の光受信レベルを周期的に測定し、測定結果(C[dBm]とする)を光送信レベル調整部25に通知する。
光受信器22は、下り光信号をO/E変換し、データ受信部24に送出する。データ受信部24は、下り信号から情報通知フレームを取り出し、取り出した情報通知フレームから、局側装置100の光受信器12の最小受光感度B[dBm]及び局側装置100の光送信レベル測定部16が測定した下り光信号の光送信レベルA[dBm]を抽出し、光送信レベル調整部25に通知する。また、データ受信部24は、主信号を加入者端末に送出する。
【0026】
局側装置100から加入者側装置200aへの下り方向の通信は、時分割多重化通信であり、加入者側装置200aに到達した下り光信号は連続光信号であるため、光受信レベル測定部23は、WDMカプラ21が下り光信号を受信中かどうかを判定する必要はない。また、下り光信号は、発光(1)と消灯(0)とを繰り返す光信号(ベースバンド伝送)であるが、光受信レベルの測定は所定の期間の平均受信電力を光受信レベルとするものであり、下り光信号は8B/10Bなどの符号化方式によりスクランブル化されているため、光受信レベル測定部23が測定する光受信レベルに、下り光信号の消灯の状態が連続することによる測定誤差は発生しないと考えてよい。
【0027】
光送信レベル調整部25は、データ受信部24により通知された下り光信号の光送信レベルA[dBm]から、光受信レベル測定部23により通知された光受信レベルC[dBm]を減算する。下り光信号の光送信レベルAから光受信レベルCを減算した値(=A−C)は、局側装置100と加入者側装置200aとの間の伝送距離、光ファイバの分岐数、及び接続コネクタ数等による伝送路損失量に相当する。光送信レベル調整部25は、算出した伝送路損失量に、データ受信部24により通知された局側装置100の光受信器12の最小受光感度B[dBm]を加算し、さらに、上り光信号と下り光信号との波長の差異による伝送路損失量の差異a[dBm]及び通信の信頼性を確保するためのマージンb[dBm]が考慮された所定の値a+b[dBm]を加算して、上り光信号の光送信レベルD[dBm]を算出し、上り光信号の光送信レベルが、算出した光送信レベルD[dBm]となるように、光送信器26を調整する。
【0028】
上述により算出される光送信レベルDは、以下の数式で表すことができる。
D=B+(A−C)+a+b
【0029】
光送信レベル調整部25による上り光信号の光送信レベルDの算出は、局側装置100から情報通知用フレームを受信するたびに実施されるようにしてもよいし、情報通知用フレームの受信とは同期させずに、周期的に実施されるようにしてもよい。また、局側装置100に接続される監視装置(図示せず)のシステム運用者による操作に基づき実施されるようにしてもよい。周期的に実施される場合、局側装置100とn台の加入者側装置200との間の伝送路損失量の経年変化に対応する周期としてもよいし、n台の加入者側装置200のそれぞれの負荷を圧迫しない程度まで短い周期としてもよい。また、周期的に実施される場合、n台の加入者側装置200は、局側装置100の光受信器12の最小受光感度B及び局側装置100の光送信レベル測定部16が測定した下り光信号の光送信レベルAを、情報通知用フレームから抽出するたびに保持しておくこととなる。
【0030】
データ送信部27は、加入者端末から送出される主信号を、光送信器26に送出する。光送信器26は、主信号をE/O変換し、光送信レベル調整部25により算出された光送信レベルD[dBm]で、WDMカプラ21を介して光ファイバ41aに、上り光信号として送出する。光ファイバ41aに送出された上り光信号は、光分岐カプラ40及び光ファイバ42を介して局側装置100に到達する。
【0031】
局側装置100に到達した上り光信号は、局側装置100と加入者側装置200aとの間の伝送路損失により減衰するが、1本の光ファイバで双方向のデータ通信を行う光通信システムにおいては、上り方向の伝送路損失は、下り方向の伝送路損失と略等しいものである。光送信レベル調整部25は、光送信レベル測定部16により測定された下り光信号の光送信レベルA[dBm]から、光受信レベル測定部23により測定された光受信レベルC[dBm]を減算することにより算出した、局側装置100と加入者側装置200aとの間の伝送路損失量、及び上り光信号と下り光信号との波長の差異による伝送路損失量の差異及び通信の信頼性を確保するためのマージンが考慮された所定の値a+b[dBm]に基づき、上り光信号の光送信レベルを決定しているため、局側装置100は、上り光信号を、局側装置100の所望する受信レベルである、光受信器12の最小受光感度B[dBm]以上の最小の光受信レベルで受信することが可能である。
【0032】
このように、本実施の形態1では、加入者側装置200aは、上り光信号の光送信レベルを、局側装置100の所望する受信レベルに基づく値とすることが可能となり、加入者側装置200aの上り光信号の光送信による消費電力を必要最小限の値にすることができる。
【0033】
また、本実施の形態1では、光送信レベル調整部25は、光送信レベル測定部16によって測定された下り光信号の光送信レベル及び光受信レベル測定部23によって測定された下り光信号の光受信レベルに基づき、上り光信号の光送信レベルを決定しているため、経年変化等に伴い光送信器14の特性が変化した場合であっても、加入者側装置200aは、局側装置100の所望する受信レベルに基づく光送信レベルで、上り光信号を送信することが可能となり、加入者側装置200aの上り光信号の光送信による消費電力を必要最小限の値にすることができる。
【0034】
さらに、本実施の形態1では、光送信レベル調整部25は、光送信レベル測定部16によって測定された下り光信号の光送信レベル及び光受信レベル測定部23によって測定された下り光信号の光受信レベルに基づく、局側装置100と加入者側装置200aとの間の伝送路損失量によって、上り光信号の光送信レベルを決定しているため、光分岐カプラ40、光ファイバ41、及び光ファイバ42の経年変化等に伴い、局側装置100と加入者側装置200aとの間の伝送路損失量が変化した場合であっても、加入者側装置200aは、局側装置100が所望する受信レベルに基づく光送信レベルで、上り光信号を送信することが可能となり、加入者側装置200aの上り光信号の光送信による消費電力を必要最小限の値にすることができる。
【0035】
なお、本実施の形態1では、局側装置100が送出する情報通知用フレームに含まれる光送信レベルAは、局側装置100の光送信レベル測定部16により測定される光送信レベルとするように構成したが、局側装置100の光送信器14に設定される固定値の光送信レベルとするように構成してもよい。この場合、経年変化等による光送信器14の特性の変化に対応して上り光信号の光送信レベルを算出することはできなくなるが、局側装置100の光送信レベル測定部16が不要となるため、局側装置100の製造コストや組み立てコストを小さくすることが可能となる。
【0036】
実施の形態2.
図2は、本発明の実施の形態2に係る光通信システムの構成を示すシステム構成図である。図1と同じ符号のものは同様の機能を有するので、説明を繰り返さない。実施の形態1では、局側装置101が、下り光信号の光送信レベル及び上り信号の最小受光感度を加入者側装置200に情報通知フレームとして送出し、加入者側装置200が、受信した情報通知フレームから取り出した下り光信号の光送信レベル及び上り信号の最小受光感度に基づき、加入者側装置200aの光送信レベルを調整するものについて説明したが、実施の形態2では、予めメモリ30に記憶されている局側装置101の下り光信号の光送信レベル及び上り信号の最小受光感度に基づき、加入者側装置201の光送信レベルを調整するものについて説明する。
【0037】
局側装置101は、上位ネットワーク(図示せず)から送出される主信号を光送信器17に送出するデータ送信部18、及びデータ送信部18から送出される主信号をE/O変換して下り光信号を送信する光送信器17を含んで構成される。第1の送信部は、データ送信部18及び光送信器17から構成される。
【0038】
加入者側装置201aは、局側装置101が送信する下り光信号を受信してO/E変換する光受信器22、下り光信号の光受信レベルを測定する光受信レベル測定部23、主信号を加入者端末(図示せず)に送出するデータ受信部28、上り光信号レベルを調整する光送信レベル調整部29、並びに局側装置101の光送信器17の光送信レベルA及び局側装置101の光受信器12の最小受光感度Bを記憶するメモリ30(記憶部)を含んで構成される。第1の受信部は、光受信器22及びデータ受信部28から構成される。
【0039】
次に動作について説明する。局側装置101における、上り光信号の受信から上位ネットワークへの送出については、実施の形態1と同様である。
【0040】
局側装置101のデータ送信部18は、上位ネットワークから送出される主信号を、光送信器17に送出する。光送信器17は、主信号をE/O変換し、WDMカプラ11を介して光ファイバ42に、下り光信号として送出する。光ファイバ42に送出された下り光信号は、光分岐カプラ40で分配され、光ファイバ41a〜41nを介してn台の加入者側装置201に到達する。
【0041】
次に、加入者側装置201aのWDMカプラ21は、加入者側装置201aに到達した下り光信号を受信し、光受信器22及び光受信レベル測定部23に送出する。光受信レベル測定部23は、WDMカプラ21が送出する下り光信号の光受信レベルを周期的に測定し、測定結果(C[dBm]とする)を光送信レベル調整部29に通知する。光受信器22は、下り光信号をO/E変換し、データ受信部28に送出する。データ受信部28は、主信号を加入者端末に送出する。
【0042】
光送信レベル調整部29は、メモリ30が記憶する局側装置101の光送信器17の光送信レベルA[dBm]から、光受信レベル測定部23により通知された光受信レベルC[dBm]を減算する。下り光信号の光送信レベルAから光受信レベルCを減算した値(=A−C)は、局側装置101と加入者側装置201aとの間の伝送距離、光ファイバの分岐数、及び接続コネクタ数等による伝送路損失量に相当する。光送信レベル調整部29は、算出した伝送路損失量に、メモリ30が記憶する局側装置101の光受信器12の最小受光感度B[dBm]を加算し、さらに、上り光信号と下り光信号との波長の差異による伝送路損失量の差異a[dBm]及び通信の信頼性を確保するためのマージンb[dBm]が考慮された所定の値a+b[dBm]を加算して、上り光信号の光送信レベルD[dBm]を算出し、上り光信号の光送信レベルが、算出した光送信レベルD[dBm]となるように、光送信器26を調整する。
【0043】
上述により算出される光送信レベルDは、以下の数式で表すことができる。
D=B+(A−C)+a+b
【0044】
光送信レベル調整部29による上り光信号の光送信レベルDの算出は、周期的に実施されるようにしてもよいし、局側装置101に接続される監視装置(図示せず)のシステム運用者による操作に基づき実施されるようにしてもよい。周期的に実施される場合、局側装置101とn台の加入者側装置201との間の伝送路損失量の経年変化に対応する周期としてもよいし、n台の加入者側装置201のそれぞれの負荷を圧迫しない程度まで短い周期としてもよい。
【0045】
データ送信部27は、加入者端末から送出される主信号を、光送信器26に送出する。光送信器26は、主信号をE/O変換し、光送信レベル調整部29により算出された光送信レベルD[dBm]で、WDMカプラ21を介して光ファイバ41aに、上り光信号として送出する。光ファイバ41aに送出された上り光信号は、光分岐カプラ40及び光ファイバ42を介して局側装置101に到達する。
【0046】
局側装置101に到達した上り光信号は、局側装置101と加入者側装置201aとの間の伝送路損失により減衰するが、1本の光ファイバで双方向のデータ通信を行う光通信システムにおいては、上り方向の伝送路損失は、下り方向の伝送路損失と略等しいものである。光送信レベル調整部29は、メモリ30が記憶する局側装置101の光送信器17の光送信レベルA[dBm]から、光受信レベル測定部23により測定された光受信レベルC[dBm]を減算することにより算出した、局側装置101と加入者側装置201aとの間の伝送路損失量、及び上り光信号と下り光信号との波長の差異による伝送路損失量の差異及び通信の信頼性を確保するためのマージンが考慮された所定の値a+b[dBm]に基づき、上り光信号の光送信レベルを決定しているため、局側装置101は、上り光信号を、局側装置101の所望する受信レベルである、光受信器12の最小受光感度B[dBm]以上の最小の光受信レベルで受信することが可能である。
【0047】
このように、本実施の形態2では、加入者側装置201aは、上り光信号の光送信レベルを局側装置101の所望する受信レベルに基づく値とすることが可能となり、加入者側装置201aの上り光信号の光送信による消費電力を必要最小限の値にすることができる。また、局側装置101の構成を、実施の形態1よりも簡素な構成にすることができる。
【0048】
また、上記実施の形態1と同様、光送信レベル調整部29は、メモリ30に記憶された下り光信号の光送信レベル及び光受信レベル測定部23によって測定された下り光信号の光受信レベルに基づく、局側装置101と加入者側装置201aとの間の伝送路損失量によって、上り光信号の光送信レベルを決定しているため、光分岐カプラ40、光ファイバ41、及び光ファイバ42の経年変化等に伴い、局側装置101と加入者側装置201aとの間の伝送路損失量が変化した場合であっても、加入者側装置201aは、局側装置101が所望する受信レベルに基づく光送信レベルで、上り光信号を送信することが可能となり、加入者側装置201aの上り光信号の光送信による消費電力を必要最小限の値にすることができる。
【0049】
また、上記実施の形態1及び2では、上り光信号の光送信レベル算出時に、上り光信号と下り光信号との波長の差異による伝送路損失量の差異a及び通信の信頼性を確保するためのマージンbが考慮された所定の値a+bを加算する形態としているが、情報通知用フレームに含まれる、または、メモリ30が記憶する、局側装置101の光受信器12の最小受光感度Bを、光受信器12の最小受光感度Bに所定の値aまたはbを加算した値(=B+a or B+b or B+a+b)とするようにしてもよい。この場合、光送信レベル調整部25または29は、光送信レベル算出時に、所定の値aまたはbを加算する必要はない。
【0050】
なお、上記実施の形態1及び2において、光受信レベル測定部23による下り光信号の光受信レベルCの測定時に、エンドユーザや作業者などによる光ファイバの操作などの要因で、一時的に局側装置100、101と加入者側装置200a、201aとの間の伝送路損失が変化していた場合、下り光信号の光受信レベルCの測定結果が異常値となり、算出される光送信レベルDも異常値となる可能性がある。光送信レベルDが異常値のまま、光送信器26を調整すると、光送信器26から送出され、局側装置100、101に到達した上り光信号の光信号レベルは、局側装置100、101の光受信器12の最大受光感度を上回り、上り方向の通信品質が劣化したり、光受信器12に障害が発生する可能性がある。このため、光送信レベルに上限を設け、算出された光送信レベルDが上限を超えた場合は、再度、光受信レベル測定部23による下り光信号の光受信レベルCの測定を実施するか、光送信レベル調整部25a、25bによる光送信器26の光送信レベルの調整を取りやめて予め決められた所定の光送信レベルで上り光信号を送出するなどのフェールセーフ設計を施すことが望ましい。
【0051】
また、上記実施の形態1及び2では、局側装置100、101が、n台の加入者側装置200、201と、分岐した光ファイバ42を介して接続する1対n接続構成の光通信システムについて実施する形態としたが、本発明は、1台の光通信装置が、対向する1台の光通信装置と、光ファイバを介して接続する光通信システムにおいても実施することが可能である。
【0052】
さらに、上記実施の形態1及び2では、伝送媒体が光ファイバである光通信システムについて実施する形態としたが、本発明は、伝送媒体が光ファイバではなく、同軸ケーブルなど、伝送媒体が有線である通信システムにおいても実施することが可能である。この場合、1対n接続構成の通信システムだけでなく、1台の通信装置が、対向する1台の通信装置と、有線の伝送媒体を介して接続する通信システムにおいても実施することが可能である。
【符号の説明】
【0053】
12 光受信器
13 データ受信部
14、17 光送信器
15、18 データ送信部
16 光送信レベル測定部
22 光受信器
23 光受信レベル測定部
24、28 データ受信部
25、29 光送信レベル調整部
26 光送信器
27 データ送信部
30 メモリ
41、42 光ファイバ
100、101 局側装置
200、201 加入者側装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の通信装置と有線の伝送媒体を介してデータ送受信を行う通信装置において、
前記他の通信装置からベースバンド伝送により送信された第1の信号を受信する第1の受信部と、
前記第1の信号の受信レベルを測定する受信レベル測定部と、
第2の信号を前記他の通信装置に送信する第2の送信部と、
前記受信レベル測定部が測定した前記第1の信号の受信レベル、前記第1の信号の送信レベル、及び前記他の通信装置が所望する前記第2の信号の受信レベルに基づき前記第2の信号の送信レベルを調整する送信レベル調整部とを備えたことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記第1の受信部は、
前記第1の信号の送信レベルを含む前記第1の信号を受信して、受信した当該第1の信号から前記第1の信号の送信レベルを抽出し、
前記送信レベル調整部は、
前記第1の受信部が抽出した前記第1の信号の送信レベルを用いて前記第2の信号の送信レベルを調整することを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項3】
前記第1の受信部は、
前記他の通信装置が所望する前記第2の信号の受信レベルを含む前記第1の信号を受信して、受信した当該第1の信号から前記他の通信装置が所望する前記第2の信号の受信レベルを抽出し、
前記送信レベル調整部は、
前記第1の受信部が抽出した前記他の通信装置が所望する前記第2の信号の受信レベルを用いて前記第2の信号の送信レベルを調整することを特徴とする請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記第1の信号の送信レベルを予め記憶する記憶部を備え、
前記送信レベル調整部は、
前記記憶部に記憶されている前記第1の信号の送信レベルを用いて前記第2の信号の送信レベルを調整することを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項5】
前記他の通信装置が所望する前記第2の信号の受信レベルを予め記憶する記憶部を備え、
前記送信レベル調整部は、
前記記憶部に記憶されている前記他の通信装置が所望する前記第2の信号の受信レベルを用いて前記第2の信号の送信レベルを調整することを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項6】
他の通信装置と有線の伝送媒体を介してデータ送受信を行う通信装置において、
前記他の通信装置から送信された第2の信号を受信する第2の受信部と、
第1の信号の送信レベルを含む前記第1の信号を生成し、生成した前記第1の信号を前記他の通信装置へベースバンド伝送により送信する第1の送信部とを備えたことを特徴とする通信装置。
【請求項7】
前記第1の信号の送信レベルを測定する送信レベル測定部を備え、
前記第1の送信部は、
前記送信レベル測定部が測定した前記第1の信号の送信レベルを含む前記第1の信号を前記他の通信装置へ送信することを特徴とする請求項6記載の通信装置。
【請求項8】
他の通信装置と有線の伝送媒体を介してデータ送受信を行う通信装置において、
前記他の通信装置から送信された第2の信号を受信する第2の受信部と、
前記第2の受信部が所望する受信レベルを含む第1の信号を生成し、生成した前記第1の信号を前記他の通信装置へベースバンド伝送により送信する第1の送信部とを備えたことを特徴とする通信装置。
【請求項9】
局側装置と1つ以上の加入者側装置とを有線の伝送媒体で接続してデータ送受信を行う通信システムにおいて、
前記局側装置は、
前記加入者側装置から送信された第2の信号を受信する第2の受信部と、
第1の信号の送信レベルを含む前記第1の信号を生成し、生成した前記第1の信号を前記加入者側装置へベースバンド伝送により送信する第1の送信部を備え、
前記加入者側装置のうち少なくとも1つは、
前記第1の信号の受信レベルを測定する受信レベル測定部と、
前記第2の信号を前記局側装置に送信する第2の送信部と、
前記第1の信号の送信レベルを含む前記第1の信号を受信して、受信した当該第1の信号から前記第1の信号の送信レベルを抽出する第1の受信部と、
前記第1の受信部が抽出した前記第1の信号の受信レベル、前記第1の信号の送信レベル、及び前記局側装置が所望する前記第2の信号の受信レベルに基づき前記第2の信号の送信レベルを調整する送信レベル調整部とを備えたことを特徴とする通信システム。
【請求項10】
前記第1の送信部は、
前記第2の受信部が所望する前記第2の信号の受信レベルを含む前記第1の信号を送信し、
前記第1の受信部は、
前記第2の受信部が所望する前記第2の信号の受信レベルを含む前記第1の信号を受信して、受信した当該第1の信号から前記第2の受信部が所望する前記第2の信号の受信レベルを抽出し、
前記送信レベル調整部は、
前記第1の受信部が抽出する前記第2の受信部が所望する前記第2の信号の受信レベルを用いて前記第2の信号の送信レベルを調整することを特徴とする請求項9記載の通信システム。

【図1】
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【図2】
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