通信装置及び通信装置の省電力化方法
【課題】トラヒック到着間隔しきい値時間tthがスリープ導入時の制限要素となりスリープ時間が制限となり省電力効果が低下する。また、スリープ/起動に関する指令を与えてから実際に動作するまでの時間であるコマンド処理時間やデバイスの過渡応答時間に関しても、遅延が生じるため、スリープ時間の制限となり省電力効果が低下するという課題があった。
【解決手段】本願発明の通信装置2は、送信する上りトラヒックの監視を行うキュー観測部23と、スリープ及び起動のタイミング制御を上位側通信装置1に通知するスリープ/起動判定部24と、を備えることで、従来技術よりもスリープ又は起動のタイミングを効率よく行う。
【解決手段】本願発明の通信装置2は、送信する上りトラヒックの監視を行うキュー観測部23と、スリープ及び起動のタイミング制御を上位側通信装置1に通知するスリープ/起動判定部24と、を備えることで、従来技術よりもスリープ又は起動のタイミングを効率よく行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ネットワーク終端装置を省電力化するための通信装置及び通信装置の省電力化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
FTTH(Fiber To The Home)を含むブロードバンドの普及は、多様なICT(Information and Communication Technology)サービスを展開する契機となっており、固定電話とモバイル情報端末が融合した通信サービスであるFMC(Fixed−Mobile Convergence)などのホームICTサービスが開始されている。近い将来、様々な情報家電が販売され、HGW(Home GateWay)を介しネットワークへ接続することが予測されていることから、FTTHの利用者もこれに応じ、増加すると期待されている。
【0003】
一方で昨今の環境負荷低減に向けた社会的要請は重要な課題の1つである。通信装置に対する省電力化要求も厳しく、それは光アクセスシステムに対しても同様である。光アクセスシステムの消費電力は光通信ネットワークにおける消費電力の60%を占めると言われている。しかし、情報家電普及によるFTTH利用者の増加は、特に光ネットワーク終端装置(Optical network unit:ONU)の絶対数の増加、更には、これに接続するHGWの絶対数の増加も意味しており、これらの装置に対する省電力化への要請は一層強まることが予想される。
【0004】
次世代ネットワーク(NGN:Next Generation Network)におけるアクセスネットワークとホームネットワークの代表的な網構成を述べる。図1に示すように、光アクセスネットワークの代表的な網構成として、ONUと光加入者線終端装置(Optical line terminal:OLT)とが光ファイバ伝送路において1対1で接続されるシングルスター構成(Single star:SS)と、図2に示すように、複数のONUと1つのOLTとが1対n(nは自然数)で接続される受動光ネットワーク(Passive Optical Network:PON)構成とがある。SS方式においては、ONUがOLTを占有出来るので高速通信が可能であるが、装置コストが高いという欠点がある。一方PON方式においては複数のONUが1つのOLTや光ファイバ設備を共有するために経済性に優れるという理由から、多くの光アクセスシステムではPON方式が採用されている。
【0005】
ギガビットクラスのPONの代表的な規格として、IEEE802.3ahタスクフォースにおいて標準化されたEPON(Ethernet(登録商標)PON)、IEEE802.3avタスクフォースにおいて標準化された、10ギガビットクラスのPONシステムである10G−EPONとがある。また、ホームネットワークにおける代表的な網構成を述べる。ホームネットワークは、ONUのUNI(User network interface)には、HGWが接続され、その先に情報家電が接続される。
【0006】
図3に、例えば、EPONにおける従来のONUの機能ブロック図を示す。上り信号は、UNIポート、キュー管理手段、PON信号処理手段を介してPON−IF(PON−interface)へと流れる。一方下り信号は、PON−IFポート、PON信号処理手段、キュー管理手段を介してUNIポートへと流れる。ONUは上り方向に対して複数のキューを備え、キュー監視手段として各キュー内のデータ量を監視する手段を有している。また、ONUは、PON信号処理手段に、OLTに対してキュー内のデータ量を報告するMPCP(Multi−point control protocol)部と、OLTと保守監視用の制御フレームをやり取りするOAM(Operations administration and maintenance)部を有している。(特許文献1、2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−296234号公報
【特許文献2】特開2009−296231号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】“Study and Demonstration of Sleep and Adaptive Link Rate Control Mechanisms for Energy Efficient 10G−EPON” IEEE/OSA Journal of Optical Communications and Networking Vol.2,No.9,pp.716−729,September 2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
通信装置の省電力化に関する取り組みとして無通信状態(アイドル状態)である場合に未使用の機器を休止させるスリープ方式や通信量に応じてリンクレートを変化させる適応リンクレート方式などの実装が検討されている。
【0010】
また、IEEE802.3azタスクフォースでは、省電力イーサネット(登録商標)の標準化が完了した。しかしながら、上記の通信装置を用いた手法を適応した場合においては、ONUへのトラヒック到着間隔が閾値以下の場合はスリープモードに入れず、省電力効果が限定されていた。従来技術をPONシステムを構成する任意のONUiに適用した時の動作について説明する。図4に機器およびその構成要素の時間遷移を示す。一番上のタイムチャートはONU入力トラヒックであり、本実施形態ではUNI961〜96nのリンクがGigabit Ethernet(登録商標)(GbE)の場合の瞬間的なリンクレートを示すものとする。例えば初期状態である時刻t0の入力トラヒックは1Gbit/sである。まずONUに入力トラヒックが観測された場合について説明する。スリープ状態に遷移可能な一定のトラヒック到着間隔しきい値時間であるtthが終了する時刻t2までの間、トラヒックが観測されなかった場合、無通信状態と判断される。そして時刻t2においてONUに対してスリープ導入を指令するトリガ信号が与えられる。そしてt2〜t3にわたってコマンド処理時間の遅延を経て、時刻t3でスリープに入る。また、ONUに入力トラヒックが観測された場合について説明する。時刻t4においてONUに入力トラヒックが観測された場合、t4においてONUを起動を指令するトリガ信号が与えられる。そして、t4〜t5にわたってコマンド処理時間の遅延を経て、時刻t5でONUは起動する。スリープしきい値時間tthよりも入力トラヒック間隔が狭かった場合は、通信状態と判断されスリープ導入を指令するトリガをONUが与えることが出来ないため、スリープすることが出来ない。
【0011】
このように、トラヒック到着間隔しきい値時間tthがスリープ導入時の制限要素となりスリープ時間が制限となり省電力効果が低下する。また、スリープ/起動に関する指令を与えてから実際に動作するまでの時間であるコマンド処理時間やデバイスの過渡応答時間に関しても、遅延が生じるため、スリープ時間の制限となり省電力効果が低下するという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本願発明の通信装置及び通信装置の省電力化方法は、送信する上りトラヒックの監視を、ネットワーク回線を終端する上位側通信装置よりも下位側に接続される通信装置で行うことで、従来技術よりもスリープおよび起動のタイミング制御を効率よく行う。
【0013】
具体的には、本願発明の通信装置は、ネットワーク回線を終端する上位側通信装置よりも下位側に接続される通信装置であって、前記上位側通信装置に流入する上りトラヒックを一時的に蓄積するキュー管理部と、前記キュー管理部に流入する上りトラヒックの有無及び上りトラヒック量を観測するキュー観測部と、前記キュー観測部において上りトラヒックの流入が観測された場合、前記キュー観測部の観測したトラヒック量に基づいて起動又はスリープに入るタイミングを決定し、上りトラヒックを前記キュー管理部から前記上位側通信装置へ送信する前に、決定したタイミングに起動又はスリープに入る旨指示する制御信号を前記上位側通信装置へ通知するスリープ/起動判定部と、前記キュー管理部に蓄積された上りトラヒックを前記上位側通信装置へ送信する信号処理部と、を備える。
【0014】
本願発明の通信装置はキュー管理部、キュー観測部及び信号処理部を備えるため、上位側通信装置に流入する上りトラヒックを事前に把握することができる。本願発明の通信装置はスリープ/起動判定部を備えるため、上位側通信装置に流入する上りトラヒックを送信するのに必要な時間だけ上位側通信装置を起動し、その他の時間をスリープ状態にすることができる。したがって、本願発明の通信装置は通信装置を省電力化することが出来る。
【0015】
本願発明の通信装置では、前記信号処理部は、前記キュー管理部がしきい値時間蓄積した上りトラヒックを、前記上位側通信装置へ一括送信し、前記キュー観測部は、前記しきい値時間内に前記キュー管理部に蓄積された上りトラヒックのトラヒック量を観測し、前記スリープ/起動判定部は、前記制御信号を用いて、起動に入る旨の指示と共に、前記キュー観測部の観測したトラヒック量を送信後にスリープに入る旨の指示をしてもよい。
【0016】
本願発明の通信装置では、前記キュー管理部に蓄積された上りトラヒックを前記上位側通信装置へ出力するトラヒック出力ポートと、前記スリープ/起動判定部からの制御信号を前記上位側通信装置へ出力する制御信号出力ポートと、を備え、前記制御信号が、専用の信号線を用いて前記上位側通信装置へ送信されてもよい。
【0017】
本願発明の通信装置では、前記キュー管理部は、上りトラヒックの優先度に応じたクラス別キューを1つ以上有し、前記キュー観測部は、上りトラヒックの優先度をさらに観測し、前記スリープ/起動判定部は、前記キュー観測部が高優先度の上りトラヒックの流入を観測した場合、高優先度の上りトラヒックと低優先度の上りトラヒックを一括送信する制御信号を前記上位側通信装置へ通知し、前記信号処理部は、前記キュー管理部に蓄積された高優先度の上りトラヒック及び低優先度の上りトラヒックを前記上位側通信装置へ一括送信してもよい。
【0018】
具体的には、本願発明の通信装置の省電力化方法は、ネットワーク回線を終端する上位側通信装置よりも下位側に接続される通信装置の省電力化方法であって、前記上位側通信装置に流入する上りトラヒックをキュー管理部に流入する上りトラヒックの有無及び上りトラヒック量を観測し、上りトラヒックの流入が観測された場合、観測したトラヒック量に基づいて起動又はスリープに入るタイミングを決定し、上りトラヒックを前記キュー管理部から前記上位側通信装置へ送信する前に、決定したタイミングに起動又はスリープに入る旨指示する制御信号を前記上位側通信装置へ通知するスリープ/起動判定手順と、前記キュー管理部に蓄積された上りトラヒックを前記上位側通信装置へ送信する信号処理手順と、を順に有する。
【0019】
本願発明の省電力化方法は前記信号処理手順を有するため、上位側通信装置に流入する上りトラヒックを事前に把握することができる。本願発明の省電力化方法はスリープ/起動判定手順を有するため、上位側通信装置に流入する上りトラヒックを送信するのに必要な時間だけ上位側通信装置を起動し、その他の時間をスリープ状態にすることができる。したがって、本願発明の通信装置の省電力化方法は通信装置を省電力化することが出来る。
【0020】
本願発明の通信装置の省電力化方法では、前記信号処理手順において、前記キュー管理部がしきい値時間蓄積した上りトラヒックを、前記上位側通信装置へ一括送信し、前記スリープ/起動判定手順において、前記しきい値時間内に前記キュー管理部に蓄積された上りトラヒックのトラヒック量を観測し、前記制御信号を用いて、起動に入る旨の指示と共に、観測したトラヒック量を送信後にスリープに入る旨の指示をし、前記信号処理手順において、前記キュー管理部に蓄積された上りトラヒックを前記上位側通信装置へ一括送信してもよい。
【0021】
本願発明の通信装置の省電力化方法では、前記スリープ/起動判定手順において、前記上りトラヒックとは異なる専用の信号線を用いて、前記制御信号を前記上位側通信装置へ送信してもよい。
【0022】
本願発明の通信装置の省電力化方法では、前記スリープ/起動判定手順において、前記キュー管理部に流入するラヒックの優先度をさらに観測し、高優先度の上りトラヒックの流入を観測した場合、高優先度の上りトラヒックと該低優先度の上りトラヒックを一括送信する制御信号を前記上位側通信装置へ通知し、前記信号処理手順において、前記キュー管理部に蓄積された高優先度の上りトラヒック及び低優先度の上りトラヒックを前記上位側通信装置へ一括送信してもよい。
【0023】
なお、上記各発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明により通信装置を省電力化することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】光アクセスネットワークの代表的なシングルスター構成を示す。
【図2】光アクセスネットワークの代表的なPON構成を示す。
【図3】EPONにおける従来のONUの機能ブロック図を示す。
【図4】従来のPONシステムにおける構成要素の時間遷移を示す。
【図5】本実施形態に係る通信装置の概略構成図を示す。
【図6】実施形態1に係る通信装置の一例を示す。
【図7】実施形態1に係る通信装置の省電力化方法の一例を示す。
【図8】実施形態1においてトリガに起動情報ないしスリープ情報を載せる場合の時間遷移の一例を示す。
【図9】実施形態1においてスリープ時又は起動時にトリガを設定する場合の時間遷移の一例を示す。
【図10】実施形態2に係る通信装置の一例を示す。
【図11】実施形態3に係る通信装置の一例を示す。
【図12】実施形態4に係る通信装置の一例を示す。
【図13】実施形態4において起動情報ないしスリープ情報を載せる場合の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施の例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0027】
以下、本発明による通信装置および通信装置の省電力化手法を用いた実施形態について図面を参照して説明する。
図5に、本実施形態に係る通信装置の概略構成図を示す。本実施形態に係る通信装置は、ネットワーク回線を終端する上位側通信装置1に接続される通信装置2である。上位側通信装置1は、例えばONUである。通信装置2は、例えばHGWである。通信装置2は、上りトラヒックの情報を上位側通信装置1に先んじて把握し、上りトラヒックに応じて上位側通信装置1の一部の機能をスリープ又は起動させる。
【0028】
上位側通信装置1は、光送受信器であるTRx18と、スリープ/起動判定部14と、信号処理部15と、を有する。通信装置2は、キュー管理部22と、キュー観測部23と、タイマー21と、スリープ/起動判定部24と、信号処理部25と、を有する。
【0029】
本実施形態に係る通信装置の省電力化方法は、スリープ/起動判定手順と、信号処理手順と、を順に有する。
【0030】
スリープ/起動判定手順では、通信装置2は、以下のように動作する。
キュー管理部22は、上りトラヒックを一時的に蓄積する。キュー観測部23は、トラヒック有無を監視する機能とトラヒック流入時間としきい値との比較を行う機能とキュー管理部22に流入したトラヒック量を計算する手段を有する。これにより、通信装置2は、上りトラヒックの情報を上位側通信装置1に先んじて把握する。
【0031】
スリープ/起動判定部24は、キュー観測部23においてトラヒックの流入が観測された場合、上位側通信装置1へ起動又はスリープに入るタイミングを指示する制御信号を通知する機能を有する。このときに、スリープ/起動判定部24は、キュー観測部23の観測したトラヒック量に基づいて起動又はスリープに入るタイミングを決定する。通知は、キュー管理部22から上位側通信装置へ送信する前に行う。
【0032】
信号処理手順では、通信装置2は、以下のように動作する。
信号処理部25は、キュー管理部22に蓄積された上りトラヒックを上位側通信装置へ送信する。スリープ/起動判定部24から予め上位側通信装置1に制御信号を通知することで、上りトラヒックに応じて上位側通信装置1の一部の機能をスリープ又は起動させる。
【0033】
(実施形態1)
ネットワーク回線がアクセスネットワーク回線であり、上位側通信装置1としてONU、本実施形態に係る通信装置2としてHGWを用いた場合の本実施形態における動作について説明する。図6に示すように、ONU10とHGW20はUNIを介して接続されている。該ONU10の機能は、主に、PHY(PHYsical Layer)16、キュー管理部12、スリープ/起動判定部14、信号処理部15、TRx18を有する。該HGW20の機能は、主にPHY26、28、L2SW(Layer 2 SWitch)27、キュー管理部22、キュー観測部23、タイマー21、スリープ/起動判定部24、信号処理部25を有する。
【0034】
次に、本発明における各通信装置内および通信装置間の動作を説明する。
スリープ/起動判定手順では、HGW20及びONU10は、以下のように動作する。
HGW20は、図6に記載のキュー観測部23において、HGW20に流入するトラヒックの有無を確認する。キュー管理部22においては、キュー管理部22に流入するトラヒックに対してある一定のしきい値時間を設け、キュー管理部22内のトラヒックが流入してからしきい値時間の間、キュー管理部22においてトラヒックを蓄積する。このしきい値時間は、タイマー21により測定される。
【0035】
制御信号には、上りトラヒックの情報をONU10に先んじて把握することが出来るHGW20によって起動又はスリープに入るタイミングに関する情報と、しきい値時間の間に蓄積されたトラヒック量に関する情報が含まれている。制御信号が、HGW20からONU10へ送信される場合には、コマンド処理時間およびデバイスの応答時間を見越して一定時間早めに送信される。
【0036】
ここで、コマンド処理時間とは、スリープ/起動判定部24が制御信号を送信してからONU10のデバイスが応答するまでにかかる時間のことである。HGW20からONU10へ送信された制御信号は、ONU10のスリープ/起動判定部24において伝達され、起動又はスリープに関する指令を信号処理部25に伝達する。そして該指令を基に、ONU10の一部の機能を起動又はスリープさせる。この時、ONU10にトラヒックを送信するまでは、HGW20の該キュー管理部22にトラヒックが蓄積される。
【0037】
本発明において図7に示す、HGW20にトラヒックが流入してからONU10へトラヒックを送信するまでのHGW20の動作をフローチャートを用いて説明する。
まず、HGW20の該キュー管理部22にトラヒックが流入した時に、キュー管理部22にトラヒックが無かった場合を説明する。HGW20の該キュー管理部22にトラヒックが流入した時(S101)、キュー管理部22にトラヒックが無かった場合は(S102においてNO)、タイマー21をリセットし、起動させ(S103)、キュー管理部22にトラヒックを蓄積させる(S104)。次にキュー管理部22内のトラヒック量を計算し(S105)、ONU10の起動時間及びコマンド処理時間を見越して、一定時間早めにONU10へ制御信号を送信する(S106)。そして、ONU10へトラヒックを送信する(S107)。
【0038】
HGW20の該キュー管理部22にトラヒックが流入した場合、既にトラヒックが有る場合について説明する。HGW20の該キュー管理部22にトラヒックが流入した時に(S101)、キュー管理部22に既にトラヒックが有る場合において(S102においてYES)、もしタイマー21が起動中でない場合(S108においてNO)つまりは、しきい値時間をTthとすると、Tth≧Tである場合は、タイマー21をリセットし、再起動させ(S103)、キュー管理部22にトラヒックを蓄積させる(S104)。次にキュー管理部22内のトラヒック量を計算し(S105)、ONU10の起動時間・コマンド処理時間を見越して、一定時間早めにONU10へ制御信号を送信する(S106)。そして、ONU10へトラヒックを送信する(S107)。
【0039】
もし、タイマー21が起動中である場合(S108においてYES)、つまりは、T<Tthである場合は、該キュー管理部22にトラヒックを蓄積させる(S104)。次にキュー管理部22内のトラヒック量を計算し(S105)、ONU10の起動時間・コマンド処理時間を見越して、ONU10へ制御信号を早めに送信する(S106)。そして、ONU10へトラヒックを送信する(S107)。
【0040】
本実施形態に係る通信装置の省電力化方法は、以上の作業を繰り返す。本実施形態において設定する一定のしきい値時間は、流入したトラヒックにおいて許容される遅延時間よりも短く設定される。また、該一定のしきい値時間とは、HGW20の該キュー管理部22内において蓄積させるバッファ量と関係がある。例えば、1Gリンクの場合、HGW20のキュー管理部22において10[ms]間蓄積するために必要な容量は、120[kByte]である。
【0041】
上述したフローチャートに基づき、任意のHGW20、ONU10へ適用した時の動作について説明する。図8に時間的遷移を示す。上段のタイムチャートは、HGW20から事前に通知された制御信号を送るタイミング、中段のタイムチャートは、コマンド処理遅延による制御信号の遅延、下段のタイムチャートは、本発明によるONU10の起動状態を示す。図8において制御信号は、時刻t3にHGW20からONU10へ送信している。そしてコマンド処理時間t3〜t4を経て、時刻t4〜t5において休止していたONU10のTRx18を含む一部の機能が起動し、HGW20のキュー管理部22内に蓄積されたトラヒックを時刻t5〜t6の間に全て送信した後、時刻t6〜t7においてスリープを指令するコマンド処理を経てONU10の一部の機能をスリープさせる。
【0042】
このような動作を繰り返すことで、従来手法よりもスリープ時間を長時間化することが出来る。また、従来手法では、ONU10において入力トラヒック到着間隔がしきい値と同等もしくは、しきい値以下であった場合、例えば図4に示す時刻t10〜t11の場合のようなトラヒック間隔である場合、スリープすることが出来なかったが、ONU10においてしきい値時間を設けないこと、さらにはONU10のスリープ又は起動のコマンド処理およびデバイスの起動時間を見越して予めスリープ又は起動のタイミングに関する制御信号を送信して通知することで、スリープ時間を長時間化することが出来るため、従来手法と比較して省電力効果を向上させることが出来る。
【0043】
実施形態1の動作は、下記に示す手法を用いても良い。
上位側通信装置1および通信装置2は、本実施形態においては上位側通信装置1をONU、通信装置2をHGWとしたが、このように別筐体でも良いし、一つの筐体の中に同一基板上にONUとHGWのような機能を持つ構成であっても良い。
【0044】
また、トラヒックのモニタ方法としては、本実施形態においては、トラヒック流入の有無を行っていたが、フレーム到着間隔、キュー長の監視などでも良い。また、しきい値時間の測定方法としては、本実施形態においては、タイマー21を用いてしきい値時間を計測したが、バッファ量を計算する方法でも良い。
【0045】
また、起動又はスリープに入るタイミングに関する情報として、観測時間やしきい値時間内に該キュー管理部22内に蓄積されたトラヒック量を用いても良い。
【0046】
また、制御信号を送信する手法としては、図8に示すように起動又はスリープタイミングに関する情報を一括で送信する手法や図9に示すように、起動又はスリープに関する情報を各々に分けて送信する手法でも良い。
【0047】
図9のタイムチャートを用いて説明する。上段のタイムチャートは、HGW20から事前に通知された制御信号を送信するタイミング、中段のタイムチャートは、HGW20からコマンド処理遅延による制御信号の遅延、下段のタイムチャートは、本発明によるONU10の起動状態を示す。HGW20はONU10への上りトラヒックをONU10より先んじて把握出来るため、制御信号には、ONU10の起動タイミング又はスリープタイミングに関する情報が含まれている。前者の情報は、上りトラヒックがHGW20のキュー管理部22に蓄積されている場合に、事前に制御信号が送信され、HGW20のキュー管理部22に蓄積されているトラヒックが無くなる前に、スリープの指令に要するコマンド処理時間およびデバイスの応答時間を見越して一定時間早めにHGW20からONU10へ制御信号が送信される。これらの制御信号を用いてスリープ又は起動させる。
【0048】
図9において、時刻t4にHGW20からONU10へ制御信号が送信される。そしてコマンド処理時間t4〜t5を経て、時刻t5〜t6において休止していたONU10のTRx18を含む一部の機能が起動し、時刻t6からHGW20のキュー管理部22内に蓄積されたトラヒックの送信が開始される。そして制御信号をHGW20のキュー管理部22内にトラヒックが無くなる前にスリープの指令に要する時間を見越して、時刻t7に制御信号をHGW20からONU10へ送信する。時刻t7〜t8において、スリープを指令するコマンド処理を経てONU10の一部の機能をスリープさせる。このような動作を繰り返しても良い。
【0049】
(実施形態2)
この場合では、図10に示す通信装置の構成において、実施形態1とは異なる信号伝達手法である。図6では、スリープに関する制御信号はPHY28、16を通じてイーサネット(登録商標)などの主信号と共に送信され、ONU10側でデータを識別してスリープ用専用信号を改めて出力しなければならないので、処理に時間を要する。一方、図10では、専用の制御信号出力ポート29と信号線19を設け、直接ONU10に制御信号を伝達させるため、図6に示す方法よりも伝達時間を短縮することが出来る。従って、HGW20からONU10へ送信するまでにトラヒックを蓄積する時間を短縮することが出来るため、遅延を制御しつつ省電力化が可能である。
【0050】
(実施形態3)
本実施形態は、図11に示す通信装置の構成において、実施形態1とは異なりONU10にキュー管理部12を備えない場合について説明する。
図11では、ONU10の構成において上りトラヒックを管理するキュー管理部12を持たない構成を示す。本発明は、HGW20構成内におけるキュー管理部22において上りのトラヒックの管理を行うため、ONU10構成内において上りのトラヒックを管理するキュー管理部12を削除することが出来る。そのためONU10のキュー管理部12を削除することで、より省電力効果を高めることが出来る。
【0051】
(実施形態4)
本実施形態は、図12に示す通信装置の構成において、実施形態1とは異なりHGW20にトラヒックの種類に応じたクラス別キューを持つ場合について説明する。図12に示す通信装置の構成においては、HGW20のキュー管理部22においてキュー#1およびキュー#2である。前記クラス別キューのうち、キュー#1には、予め指定されたSession Initiation Protocol(SIP)を利用した Voice over Internet Protocol(VoIP)通信などの優先度の高いトラヒックが流入する。また、キュー#2にはそれ以外の優先度の低いトラヒックが流入する。
【0052】
次に、実施形態4における通信装置内および上位側通信装置間の動作を説明する。
スリープ/起動判定手順では、HGW20は以下のように動作する。
HGW20は、トラヒックの種類を監視し、予め指定された高優先度のトラヒックがキュー#1に流入した場合、優先度の高いトラヒックに対する通信品質を保持するために、ONU10へ予め優先度の高いトラヒックが流入したことを、制御信号の送信により通知する。このときの制御信号には、HGW20の該キュー管理部22のキュー#1にトラヒックが流入したという情報、上りトラヒックの到着タイミングに関する情報、およびキュー管理部22に蓄積しているキュー#1、#2に蓄積されているトラヒック量に関する情報が含まれている。
【0053】
もし優先度の高いトラヒックがキュー管理部22のキュー#1に流入し、かつ優先度の低いトラヒックがキュー#2に流入した場合、あらかじめ優先度の低いトラヒックにおいてはキュー#2においてある一定のしきい値時間蓄積させる。
【0054】
信号処理手順では、HGW20は以下のように動作する。
優先度の高いトラヒックの送信タイミングに合わせて優先度の低いトラヒックをまとめて一括送信する。これにより、スリープ/起動の遷移回数を削減し、スリープ時間を増やすことで省電力効果を向上させることが出来る。
【0055】
本実施形態の通信装置内および通信装置間の動作に基づき、任意のHGW20、ONU10へ適用した時の動作について説明する。図13に時間的遷移を示す。上段のタイムチャートは、HGW20のキュー#1に流入したトラヒック、2段目のタイムチャートは、HGW20のキュー#2に流入したトラヒック、3段目のタイムチャートは、HGW20から事前に通知された制御信号、4段目のタイムチャートは、コマンド処理遅延による制御信号の遅延、そして下段は、本発明によるONU10起動状態を示す。
【0056】
図13のようにキュー#1およびキュー#2にトラヒックが流入した時、HGW20の該キュー#1と該キュー2のトラヒックを一括で送信するため、キュー#2のトラヒックはHGW20の該キュー#2にて蓄積させる。つまりは、時刻t0〜t1、t2〜t3、t4〜t5の間に流入したキュー#2のトラヒックは該キュー#2にて蓄積させる。また、制御信号は、時刻t7にHGW20からONU10へ送信している。そして、コマンド処理時間t7〜t8を経て、時刻t8〜t9において休止していたONU10のTRx18を含む一部の機能が起動し、HGW20のキュー#1に流入したトラヒックとキュー#2において蓄積していたトラヒックは、時刻t9〜t11において一括で送信される。その後、時刻t11〜t12においてスリープを指令するコマンド処理を経て時刻t12〜t13において、ONU10の一部の機能をスリープさせる。
【0057】
このような動作を繰り返すことで、従来手法よりもスリープ/起動の遷移回数を削減し、スリープ時間を増やすことで省電力効果を向上させることが出来る。また、従来手法においては、ONU10上のキュー管理部12においてトラヒックのクラス別キューを設ける手法が提案されているが、本手法を用いてONU10を起動させる際、ONU10よりも下位側のHGW20のキュー管理部22において、トラヒックのクラス別キューを設けかつ、流入したトラヒックの情報や、キュー管理部22に蓄積しているトラヒック量に関する情報を制御信号として、HGW20からONU10へコマンド処理時間およびデバイスの応答時間を見越して一定時間早めに送信されるため、遅延を最小限に留めることが出来る。
【0058】
実施形態4の動作は、下記に示す手法を用いても良い。
本実施形態におけるHGW20の該キュー観測部23におけるトラヒックの監視方法は、図12に示すように予め指定された種類のトラヒックが入るキュー#1を備えておき、該キュー#1に予め指定されたトラヒックが流入したかどうかを監視していたが、その他にも、IPパケットのヘッダにおけるType of Service(ToS)の値をフレーム毎に観測する機能をキュー管理部22内に備えておき、高優先度のトラヒックを確認する方法でも良いし、IPパケットのToS値をVLANタグ付きMACフレームのClass of Service(CoS)の値と1対1に対応するように運営し、CoS値をフレーム毎に観測する機能をキュー管理部22に備えておく方法でも良い。さらに、HGW20上のVoIPのセッションの開始、終了を監視する手法や、情報家電のオンフック、オフフックを監視し、高優先度のトラヒックがあるかどうかを監視しても良い。また、予め指定したトラヒックとして、SIPを利用したVoIP通信を挙げたが、これに限らない。
【0059】
実施形態1〜4は、EPON(Ethernet(登録商標) Passive Optical Network)および10G−EPON、さらには他のPON、例えばITU−T(International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector)勧告準拠のB−PONおよびG−PON、さらにはWDM−PONやCDM−PON等の光アクセスネットワーク用装置のみならず、2つの互いに接続された通信装置に対して適用可能である。また、実施形態1〜4は、それらを組み合わせることが可能であり、その場合にはそれぞれの実施形態が有する効果を相乗的に奏することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1:上位側通信装置
2:通信装置
10:ONU
12:キュー管理部
14:スリープ/起動判定部
15:信号処理部
16:PHY
18:TRx
19:信号線
20:HGW
21:タイマー
22:キュー管理部
23:キュー観測部
24:スリープ/起動判定部
25:信号処理部
26、28:PHY
27:L2SW
29:制御信号出力ポート
31:VoIP
32:PC
91:OLT
92、921、92i、92n:ONU
93、931、93i、93n:HGW
95:光ファイバ伝送路
96、961、96i、96n:UNI
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ネットワーク終端装置を省電力化するための通信装置及び通信装置の省電力化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
FTTH(Fiber To The Home)を含むブロードバンドの普及は、多様なICT(Information and Communication Technology)サービスを展開する契機となっており、固定電話とモバイル情報端末が融合した通信サービスであるFMC(Fixed−Mobile Convergence)などのホームICTサービスが開始されている。近い将来、様々な情報家電が販売され、HGW(Home GateWay)を介しネットワークへ接続することが予測されていることから、FTTHの利用者もこれに応じ、増加すると期待されている。
【0003】
一方で昨今の環境負荷低減に向けた社会的要請は重要な課題の1つである。通信装置に対する省電力化要求も厳しく、それは光アクセスシステムに対しても同様である。光アクセスシステムの消費電力は光通信ネットワークにおける消費電力の60%を占めると言われている。しかし、情報家電普及によるFTTH利用者の増加は、特に光ネットワーク終端装置(Optical network unit:ONU)の絶対数の増加、更には、これに接続するHGWの絶対数の増加も意味しており、これらの装置に対する省電力化への要請は一層強まることが予想される。
【0004】
次世代ネットワーク(NGN:Next Generation Network)におけるアクセスネットワークとホームネットワークの代表的な網構成を述べる。図1に示すように、光アクセスネットワークの代表的な網構成として、ONUと光加入者線終端装置(Optical line terminal:OLT)とが光ファイバ伝送路において1対1で接続されるシングルスター構成(Single star:SS)と、図2に示すように、複数のONUと1つのOLTとが1対n(nは自然数)で接続される受動光ネットワーク(Passive Optical Network:PON)構成とがある。SS方式においては、ONUがOLTを占有出来るので高速通信が可能であるが、装置コストが高いという欠点がある。一方PON方式においては複数のONUが1つのOLTや光ファイバ設備を共有するために経済性に優れるという理由から、多くの光アクセスシステムではPON方式が採用されている。
【0005】
ギガビットクラスのPONの代表的な規格として、IEEE802.3ahタスクフォースにおいて標準化されたEPON(Ethernet(登録商標)PON)、IEEE802.3avタスクフォースにおいて標準化された、10ギガビットクラスのPONシステムである10G−EPONとがある。また、ホームネットワークにおける代表的な網構成を述べる。ホームネットワークは、ONUのUNI(User network interface)には、HGWが接続され、その先に情報家電が接続される。
【0006】
図3に、例えば、EPONにおける従来のONUの機能ブロック図を示す。上り信号は、UNIポート、キュー管理手段、PON信号処理手段を介してPON−IF(PON−interface)へと流れる。一方下り信号は、PON−IFポート、PON信号処理手段、キュー管理手段を介してUNIポートへと流れる。ONUは上り方向に対して複数のキューを備え、キュー監視手段として各キュー内のデータ量を監視する手段を有している。また、ONUは、PON信号処理手段に、OLTに対してキュー内のデータ量を報告するMPCP(Multi−point control protocol)部と、OLTと保守監視用の制御フレームをやり取りするOAM(Operations administration and maintenance)部を有している。(特許文献1、2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−296234号公報
【特許文献2】特開2009−296231号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】“Study and Demonstration of Sleep and Adaptive Link Rate Control Mechanisms for Energy Efficient 10G−EPON” IEEE/OSA Journal of Optical Communications and Networking Vol.2,No.9,pp.716−729,September 2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
通信装置の省電力化に関する取り組みとして無通信状態(アイドル状態)である場合に未使用の機器を休止させるスリープ方式や通信量に応じてリンクレートを変化させる適応リンクレート方式などの実装が検討されている。
【0010】
また、IEEE802.3azタスクフォースでは、省電力イーサネット(登録商標)の標準化が完了した。しかしながら、上記の通信装置を用いた手法を適応した場合においては、ONUへのトラヒック到着間隔が閾値以下の場合はスリープモードに入れず、省電力効果が限定されていた。従来技術をPONシステムを構成する任意のONUiに適用した時の動作について説明する。図4に機器およびその構成要素の時間遷移を示す。一番上のタイムチャートはONU入力トラヒックであり、本実施形態ではUNI961〜96nのリンクがGigabit Ethernet(登録商標)(GbE)の場合の瞬間的なリンクレートを示すものとする。例えば初期状態である時刻t0の入力トラヒックは1Gbit/sである。まずONUに入力トラヒックが観測された場合について説明する。スリープ状態に遷移可能な一定のトラヒック到着間隔しきい値時間であるtthが終了する時刻t2までの間、トラヒックが観測されなかった場合、無通信状態と判断される。そして時刻t2においてONUに対してスリープ導入を指令するトリガ信号が与えられる。そしてt2〜t3にわたってコマンド処理時間の遅延を経て、時刻t3でスリープに入る。また、ONUに入力トラヒックが観測された場合について説明する。時刻t4においてONUに入力トラヒックが観測された場合、t4においてONUを起動を指令するトリガ信号が与えられる。そして、t4〜t5にわたってコマンド処理時間の遅延を経て、時刻t5でONUは起動する。スリープしきい値時間tthよりも入力トラヒック間隔が狭かった場合は、通信状態と判断されスリープ導入を指令するトリガをONUが与えることが出来ないため、スリープすることが出来ない。
【0011】
このように、トラヒック到着間隔しきい値時間tthがスリープ導入時の制限要素となりスリープ時間が制限となり省電力効果が低下する。また、スリープ/起動に関する指令を与えてから実際に動作するまでの時間であるコマンド処理時間やデバイスの過渡応答時間に関しても、遅延が生じるため、スリープ時間の制限となり省電力効果が低下するという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本願発明の通信装置及び通信装置の省電力化方法は、送信する上りトラヒックの監視を、ネットワーク回線を終端する上位側通信装置よりも下位側に接続される通信装置で行うことで、従来技術よりもスリープおよび起動のタイミング制御を効率よく行う。
【0013】
具体的には、本願発明の通信装置は、ネットワーク回線を終端する上位側通信装置よりも下位側に接続される通信装置であって、前記上位側通信装置に流入する上りトラヒックを一時的に蓄積するキュー管理部と、前記キュー管理部に流入する上りトラヒックの有無及び上りトラヒック量を観測するキュー観測部と、前記キュー観測部において上りトラヒックの流入が観測された場合、前記キュー観測部の観測したトラヒック量に基づいて起動又はスリープに入るタイミングを決定し、上りトラヒックを前記キュー管理部から前記上位側通信装置へ送信する前に、決定したタイミングに起動又はスリープに入る旨指示する制御信号を前記上位側通信装置へ通知するスリープ/起動判定部と、前記キュー管理部に蓄積された上りトラヒックを前記上位側通信装置へ送信する信号処理部と、を備える。
【0014】
本願発明の通信装置はキュー管理部、キュー観測部及び信号処理部を備えるため、上位側通信装置に流入する上りトラヒックを事前に把握することができる。本願発明の通信装置はスリープ/起動判定部を備えるため、上位側通信装置に流入する上りトラヒックを送信するのに必要な時間だけ上位側通信装置を起動し、その他の時間をスリープ状態にすることができる。したがって、本願発明の通信装置は通信装置を省電力化することが出来る。
【0015】
本願発明の通信装置では、前記信号処理部は、前記キュー管理部がしきい値時間蓄積した上りトラヒックを、前記上位側通信装置へ一括送信し、前記キュー観測部は、前記しきい値時間内に前記キュー管理部に蓄積された上りトラヒックのトラヒック量を観測し、前記スリープ/起動判定部は、前記制御信号を用いて、起動に入る旨の指示と共に、前記キュー観測部の観測したトラヒック量を送信後にスリープに入る旨の指示をしてもよい。
【0016】
本願発明の通信装置では、前記キュー管理部に蓄積された上りトラヒックを前記上位側通信装置へ出力するトラヒック出力ポートと、前記スリープ/起動判定部からの制御信号を前記上位側通信装置へ出力する制御信号出力ポートと、を備え、前記制御信号が、専用の信号線を用いて前記上位側通信装置へ送信されてもよい。
【0017】
本願発明の通信装置では、前記キュー管理部は、上りトラヒックの優先度に応じたクラス別キューを1つ以上有し、前記キュー観測部は、上りトラヒックの優先度をさらに観測し、前記スリープ/起動判定部は、前記キュー観測部が高優先度の上りトラヒックの流入を観測した場合、高優先度の上りトラヒックと低優先度の上りトラヒックを一括送信する制御信号を前記上位側通信装置へ通知し、前記信号処理部は、前記キュー管理部に蓄積された高優先度の上りトラヒック及び低優先度の上りトラヒックを前記上位側通信装置へ一括送信してもよい。
【0018】
具体的には、本願発明の通信装置の省電力化方法は、ネットワーク回線を終端する上位側通信装置よりも下位側に接続される通信装置の省電力化方法であって、前記上位側通信装置に流入する上りトラヒックをキュー管理部に流入する上りトラヒックの有無及び上りトラヒック量を観測し、上りトラヒックの流入が観測された場合、観測したトラヒック量に基づいて起動又はスリープに入るタイミングを決定し、上りトラヒックを前記キュー管理部から前記上位側通信装置へ送信する前に、決定したタイミングに起動又はスリープに入る旨指示する制御信号を前記上位側通信装置へ通知するスリープ/起動判定手順と、前記キュー管理部に蓄積された上りトラヒックを前記上位側通信装置へ送信する信号処理手順と、を順に有する。
【0019】
本願発明の省電力化方法は前記信号処理手順を有するため、上位側通信装置に流入する上りトラヒックを事前に把握することができる。本願発明の省電力化方法はスリープ/起動判定手順を有するため、上位側通信装置に流入する上りトラヒックを送信するのに必要な時間だけ上位側通信装置を起動し、その他の時間をスリープ状態にすることができる。したがって、本願発明の通信装置の省電力化方法は通信装置を省電力化することが出来る。
【0020】
本願発明の通信装置の省電力化方法では、前記信号処理手順において、前記キュー管理部がしきい値時間蓄積した上りトラヒックを、前記上位側通信装置へ一括送信し、前記スリープ/起動判定手順において、前記しきい値時間内に前記キュー管理部に蓄積された上りトラヒックのトラヒック量を観測し、前記制御信号を用いて、起動に入る旨の指示と共に、観測したトラヒック量を送信後にスリープに入る旨の指示をし、前記信号処理手順において、前記キュー管理部に蓄積された上りトラヒックを前記上位側通信装置へ一括送信してもよい。
【0021】
本願発明の通信装置の省電力化方法では、前記スリープ/起動判定手順において、前記上りトラヒックとは異なる専用の信号線を用いて、前記制御信号を前記上位側通信装置へ送信してもよい。
【0022】
本願発明の通信装置の省電力化方法では、前記スリープ/起動判定手順において、前記キュー管理部に流入するラヒックの優先度をさらに観測し、高優先度の上りトラヒックの流入を観測した場合、高優先度の上りトラヒックと該低優先度の上りトラヒックを一括送信する制御信号を前記上位側通信装置へ通知し、前記信号処理手順において、前記キュー管理部に蓄積された高優先度の上りトラヒック及び低優先度の上りトラヒックを前記上位側通信装置へ一括送信してもよい。
【0023】
なお、上記各発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明により通信装置を省電力化することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】光アクセスネットワークの代表的なシングルスター構成を示す。
【図2】光アクセスネットワークの代表的なPON構成を示す。
【図3】EPONにおける従来のONUの機能ブロック図を示す。
【図4】従来のPONシステムにおける構成要素の時間遷移を示す。
【図5】本実施形態に係る通信装置の概略構成図を示す。
【図6】実施形態1に係る通信装置の一例を示す。
【図7】実施形態1に係る通信装置の省電力化方法の一例を示す。
【図8】実施形態1においてトリガに起動情報ないしスリープ情報を載せる場合の時間遷移の一例を示す。
【図9】実施形態1においてスリープ時又は起動時にトリガを設定する場合の時間遷移の一例を示す。
【図10】実施形態2に係る通信装置の一例を示す。
【図11】実施形態3に係る通信装置の一例を示す。
【図12】実施形態4に係る通信装置の一例を示す。
【図13】実施形態4において起動情報ないしスリープ情報を載せる場合の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施の例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0027】
以下、本発明による通信装置および通信装置の省電力化手法を用いた実施形態について図面を参照して説明する。
図5に、本実施形態に係る通信装置の概略構成図を示す。本実施形態に係る通信装置は、ネットワーク回線を終端する上位側通信装置1に接続される通信装置2である。上位側通信装置1は、例えばONUである。通信装置2は、例えばHGWである。通信装置2は、上りトラヒックの情報を上位側通信装置1に先んじて把握し、上りトラヒックに応じて上位側通信装置1の一部の機能をスリープ又は起動させる。
【0028】
上位側通信装置1は、光送受信器であるTRx18と、スリープ/起動判定部14と、信号処理部15と、を有する。通信装置2は、キュー管理部22と、キュー観測部23と、タイマー21と、スリープ/起動判定部24と、信号処理部25と、を有する。
【0029】
本実施形態に係る通信装置の省電力化方法は、スリープ/起動判定手順と、信号処理手順と、を順に有する。
【0030】
スリープ/起動判定手順では、通信装置2は、以下のように動作する。
キュー管理部22は、上りトラヒックを一時的に蓄積する。キュー観測部23は、トラヒック有無を監視する機能とトラヒック流入時間としきい値との比較を行う機能とキュー管理部22に流入したトラヒック量を計算する手段を有する。これにより、通信装置2は、上りトラヒックの情報を上位側通信装置1に先んじて把握する。
【0031】
スリープ/起動判定部24は、キュー観測部23においてトラヒックの流入が観測された場合、上位側通信装置1へ起動又はスリープに入るタイミングを指示する制御信号を通知する機能を有する。このときに、スリープ/起動判定部24は、キュー観測部23の観測したトラヒック量に基づいて起動又はスリープに入るタイミングを決定する。通知は、キュー管理部22から上位側通信装置へ送信する前に行う。
【0032】
信号処理手順では、通信装置2は、以下のように動作する。
信号処理部25は、キュー管理部22に蓄積された上りトラヒックを上位側通信装置へ送信する。スリープ/起動判定部24から予め上位側通信装置1に制御信号を通知することで、上りトラヒックに応じて上位側通信装置1の一部の機能をスリープ又は起動させる。
【0033】
(実施形態1)
ネットワーク回線がアクセスネットワーク回線であり、上位側通信装置1としてONU、本実施形態に係る通信装置2としてHGWを用いた場合の本実施形態における動作について説明する。図6に示すように、ONU10とHGW20はUNIを介して接続されている。該ONU10の機能は、主に、PHY(PHYsical Layer)16、キュー管理部12、スリープ/起動判定部14、信号処理部15、TRx18を有する。該HGW20の機能は、主にPHY26、28、L2SW(Layer 2 SWitch)27、キュー管理部22、キュー観測部23、タイマー21、スリープ/起動判定部24、信号処理部25を有する。
【0034】
次に、本発明における各通信装置内および通信装置間の動作を説明する。
スリープ/起動判定手順では、HGW20及びONU10は、以下のように動作する。
HGW20は、図6に記載のキュー観測部23において、HGW20に流入するトラヒックの有無を確認する。キュー管理部22においては、キュー管理部22に流入するトラヒックに対してある一定のしきい値時間を設け、キュー管理部22内のトラヒックが流入してからしきい値時間の間、キュー管理部22においてトラヒックを蓄積する。このしきい値時間は、タイマー21により測定される。
【0035】
制御信号には、上りトラヒックの情報をONU10に先んじて把握することが出来るHGW20によって起動又はスリープに入るタイミングに関する情報と、しきい値時間の間に蓄積されたトラヒック量に関する情報が含まれている。制御信号が、HGW20からONU10へ送信される場合には、コマンド処理時間およびデバイスの応答時間を見越して一定時間早めに送信される。
【0036】
ここで、コマンド処理時間とは、スリープ/起動判定部24が制御信号を送信してからONU10のデバイスが応答するまでにかかる時間のことである。HGW20からONU10へ送信された制御信号は、ONU10のスリープ/起動判定部24において伝達され、起動又はスリープに関する指令を信号処理部25に伝達する。そして該指令を基に、ONU10の一部の機能を起動又はスリープさせる。この時、ONU10にトラヒックを送信するまでは、HGW20の該キュー管理部22にトラヒックが蓄積される。
【0037】
本発明において図7に示す、HGW20にトラヒックが流入してからONU10へトラヒックを送信するまでのHGW20の動作をフローチャートを用いて説明する。
まず、HGW20の該キュー管理部22にトラヒックが流入した時に、キュー管理部22にトラヒックが無かった場合を説明する。HGW20の該キュー管理部22にトラヒックが流入した時(S101)、キュー管理部22にトラヒックが無かった場合は(S102においてNO)、タイマー21をリセットし、起動させ(S103)、キュー管理部22にトラヒックを蓄積させる(S104)。次にキュー管理部22内のトラヒック量を計算し(S105)、ONU10の起動時間及びコマンド処理時間を見越して、一定時間早めにONU10へ制御信号を送信する(S106)。そして、ONU10へトラヒックを送信する(S107)。
【0038】
HGW20の該キュー管理部22にトラヒックが流入した場合、既にトラヒックが有る場合について説明する。HGW20の該キュー管理部22にトラヒックが流入した時に(S101)、キュー管理部22に既にトラヒックが有る場合において(S102においてYES)、もしタイマー21が起動中でない場合(S108においてNO)つまりは、しきい値時間をTthとすると、Tth≧Tである場合は、タイマー21をリセットし、再起動させ(S103)、キュー管理部22にトラヒックを蓄積させる(S104)。次にキュー管理部22内のトラヒック量を計算し(S105)、ONU10の起動時間・コマンド処理時間を見越して、一定時間早めにONU10へ制御信号を送信する(S106)。そして、ONU10へトラヒックを送信する(S107)。
【0039】
もし、タイマー21が起動中である場合(S108においてYES)、つまりは、T<Tthである場合は、該キュー管理部22にトラヒックを蓄積させる(S104)。次にキュー管理部22内のトラヒック量を計算し(S105)、ONU10の起動時間・コマンド処理時間を見越して、ONU10へ制御信号を早めに送信する(S106)。そして、ONU10へトラヒックを送信する(S107)。
【0040】
本実施形態に係る通信装置の省電力化方法は、以上の作業を繰り返す。本実施形態において設定する一定のしきい値時間は、流入したトラヒックにおいて許容される遅延時間よりも短く設定される。また、該一定のしきい値時間とは、HGW20の該キュー管理部22内において蓄積させるバッファ量と関係がある。例えば、1Gリンクの場合、HGW20のキュー管理部22において10[ms]間蓄積するために必要な容量は、120[kByte]である。
【0041】
上述したフローチャートに基づき、任意のHGW20、ONU10へ適用した時の動作について説明する。図8に時間的遷移を示す。上段のタイムチャートは、HGW20から事前に通知された制御信号を送るタイミング、中段のタイムチャートは、コマンド処理遅延による制御信号の遅延、下段のタイムチャートは、本発明によるONU10の起動状態を示す。図8において制御信号は、時刻t3にHGW20からONU10へ送信している。そしてコマンド処理時間t3〜t4を経て、時刻t4〜t5において休止していたONU10のTRx18を含む一部の機能が起動し、HGW20のキュー管理部22内に蓄積されたトラヒックを時刻t5〜t6の間に全て送信した後、時刻t6〜t7においてスリープを指令するコマンド処理を経てONU10の一部の機能をスリープさせる。
【0042】
このような動作を繰り返すことで、従来手法よりもスリープ時間を長時間化することが出来る。また、従来手法では、ONU10において入力トラヒック到着間隔がしきい値と同等もしくは、しきい値以下であった場合、例えば図4に示す時刻t10〜t11の場合のようなトラヒック間隔である場合、スリープすることが出来なかったが、ONU10においてしきい値時間を設けないこと、さらにはONU10のスリープ又は起動のコマンド処理およびデバイスの起動時間を見越して予めスリープ又は起動のタイミングに関する制御信号を送信して通知することで、スリープ時間を長時間化することが出来るため、従来手法と比較して省電力効果を向上させることが出来る。
【0043】
実施形態1の動作は、下記に示す手法を用いても良い。
上位側通信装置1および通信装置2は、本実施形態においては上位側通信装置1をONU、通信装置2をHGWとしたが、このように別筐体でも良いし、一つの筐体の中に同一基板上にONUとHGWのような機能を持つ構成であっても良い。
【0044】
また、トラヒックのモニタ方法としては、本実施形態においては、トラヒック流入の有無を行っていたが、フレーム到着間隔、キュー長の監視などでも良い。また、しきい値時間の測定方法としては、本実施形態においては、タイマー21を用いてしきい値時間を計測したが、バッファ量を計算する方法でも良い。
【0045】
また、起動又はスリープに入るタイミングに関する情報として、観測時間やしきい値時間内に該キュー管理部22内に蓄積されたトラヒック量を用いても良い。
【0046】
また、制御信号を送信する手法としては、図8に示すように起動又はスリープタイミングに関する情報を一括で送信する手法や図9に示すように、起動又はスリープに関する情報を各々に分けて送信する手法でも良い。
【0047】
図9のタイムチャートを用いて説明する。上段のタイムチャートは、HGW20から事前に通知された制御信号を送信するタイミング、中段のタイムチャートは、HGW20からコマンド処理遅延による制御信号の遅延、下段のタイムチャートは、本発明によるONU10の起動状態を示す。HGW20はONU10への上りトラヒックをONU10より先んじて把握出来るため、制御信号には、ONU10の起動タイミング又はスリープタイミングに関する情報が含まれている。前者の情報は、上りトラヒックがHGW20のキュー管理部22に蓄積されている場合に、事前に制御信号が送信され、HGW20のキュー管理部22に蓄積されているトラヒックが無くなる前に、スリープの指令に要するコマンド処理時間およびデバイスの応答時間を見越して一定時間早めにHGW20からONU10へ制御信号が送信される。これらの制御信号を用いてスリープ又は起動させる。
【0048】
図9において、時刻t4にHGW20からONU10へ制御信号が送信される。そしてコマンド処理時間t4〜t5を経て、時刻t5〜t6において休止していたONU10のTRx18を含む一部の機能が起動し、時刻t6からHGW20のキュー管理部22内に蓄積されたトラヒックの送信が開始される。そして制御信号をHGW20のキュー管理部22内にトラヒックが無くなる前にスリープの指令に要する時間を見越して、時刻t7に制御信号をHGW20からONU10へ送信する。時刻t7〜t8において、スリープを指令するコマンド処理を経てONU10の一部の機能をスリープさせる。このような動作を繰り返しても良い。
【0049】
(実施形態2)
この場合では、図10に示す通信装置の構成において、実施形態1とは異なる信号伝達手法である。図6では、スリープに関する制御信号はPHY28、16を通じてイーサネット(登録商標)などの主信号と共に送信され、ONU10側でデータを識別してスリープ用専用信号を改めて出力しなければならないので、処理に時間を要する。一方、図10では、専用の制御信号出力ポート29と信号線19を設け、直接ONU10に制御信号を伝達させるため、図6に示す方法よりも伝達時間を短縮することが出来る。従って、HGW20からONU10へ送信するまでにトラヒックを蓄積する時間を短縮することが出来るため、遅延を制御しつつ省電力化が可能である。
【0050】
(実施形態3)
本実施形態は、図11に示す通信装置の構成において、実施形態1とは異なりONU10にキュー管理部12を備えない場合について説明する。
図11では、ONU10の構成において上りトラヒックを管理するキュー管理部12を持たない構成を示す。本発明は、HGW20構成内におけるキュー管理部22において上りのトラヒックの管理を行うため、ONU10構成内において上りのトラヒックを管理するキュー管理部12を削除することが出来る。そのためONU10のキュー管理部12を削除することで、より省電力効果を高めることが出来る。
【0051】
(実施形態4)
本実施形態は、図12に示す通信装置の構成において、実施形態1とは異なりHGW20にトラヒックの種類に応じたクラス別キューを持つ場合について説明する。図12に示す通信装置の構成においては、HGW20のキュー管理部22においてキュー#1およびキュー#2である。前記クラス別キューのうち、キュー#1には、予め指定されたSession Initiation Protocol(SIP)を利用した Voice over Internet Protocol(VoIP)通信などの優先度の高いトラヒックが流入する。また、キュー#2にはそれ以外の優先度の低いトラヒックが流入する。
【0052】
次に、実施形態4における通信装置内および上位側通信装置間の動作を説明する。
スリープ/起動判定手順では、HGW20は以下のように動作する。
HGW20は、トラヒックの種類を監視し、予め指定された高優先度のトラヒックがキュー#1に流入した場合、優先度の高いトラヒックに対する通信品質を保持するために、ONU10へ予め優先度の高いトラヒックが流入したことを、制御信号の送信により通知する。このときの制御信号には、HGW20の該キュー管理部22のキュー#1にトラヒックが流入したという情報、上りトラヒックの到着タイミングに関する情報、およびキュー管理部22に蓄積しているキュー#1、#2に蓄積されているトラヒック量に関する情報が含まれている。
【0053】
もし優先度の高いトラヒックがキュー管理部22のキュー#1に流入し、かつ優先度の低いトラヒックがキュー#2に流入した場合、あらかじめ優先度の低いトラヒックにおいてはキュー#2においてある一定のしきい値時間蓄積させる。
【0054】
信号処理手順では、HGW20は以下のように動作する。
優先度の高いトラヒックの送信タイミングに合わせて優先度の低いトラヒックをまとめて一括送信する。これにより、スリープ/起動の遷移回数を削減し、スリープ時間を増やすことで省電力効果を向上させることが出来る。
【0055】
本実施形態の通信装置内および通信装置間の動作に基づき、任意のHGW20、ONU10へ適用した時の動作について説明する。図13に時間的遷移を示す。上段のタイムチャートは、HGW20のキュー#1に流入したトラヒック、2段目のタイムチャートは、HGW20のキュー#2に流入したトラヒック、3段目のタイムチャートは、HGW20から事前に通知された制御信号、4段目のタイムチャートは、コマンド処理遅延による制御信号の遅延、そして下段は、本発明によるONU10起動状態を示す。
【0056】
図13のようにキュー#1およびキュー#2にトラヒックが流入した時、HGW20の該キュー#1と該キュー2のトラヒックを一括で送信するため、キュー#2のトラヒックはHGW20の該キュー#2にて蓄積させる。つまりは、時刻t0〜t1、t2〜t3、t4〜t5の間に流入したキュー#2のトラヒックは該キュー#2にて蓄積させる。また、制御信号は、時刻t7にHGW20からONU10へ送信している。そして、コマンド処理時間t7〜t8を経て、時刻t8〜t9において休止していたONU10のTRx18を含む一部の機能が起動し、HGW20のキュー#1に流入したトラヒックとキュー#2において蓄積していたトラヒックは、時刻t9〜t11において一括で送信される。その後、時刻t11〜t12においてスリープを指令するコマンド処理を経て時刻t12〜t13において、ONU10の一部の機能をスリープさせる。
【0057】
このような動作を繰り返すことで、従来手法よりもスリープ/起動の遷移回数を削減し、スリープ時間を増やすことで省電力効果を向上させることが出来る。また、従来手法においては、ONU10上のキュー管理部12においてトラヒックのクラス別キューを設ける手法が提案されているが、本手法を用いてONU10を起動させる際、ONU10よりも下位側のHGW20のキュー管理部22において、トラヒックのクラス別キューを設けかつ、流入したトラヒックの情報や、キュー管理部22に蓄積しているトラヒック量に関する情報を制御信号として、HGW20からONU10へコマンド処理時間およびデバイスの応答時間を見越して一定時間早めに送信されるため、遅延を最小限に留めることが出来る。
【0058】
実施形態4の動作は、下記に示す手法を用いても良い。
本実施形態におけるHGW20の該キュー観測部23におけるトラヒックの監視方法は、図12に示すように予め指定された種類のトラヒックが入るキュー#1を備えておき、該キュー#1に予め指定されたトラヒックが流入したかどうかを監視していたが、その他にも、IPパケットのヘッダにおけるType of Service(ToS)の値をフレーム毎に観測する機能をキュー管理部22内に備えておき、高優先度のトラヒックを確認する方法でも良いし、IPパケットのToS値をVLANタグ付きMACフレームのClass of Service(CoS)の値と1対1に対応するように運営し、CoS値をフレーム毎に観測する機能をキュー管理部22に備えておく方法でも良い。さらに、HGW20上のVoIPのセッションの開始、終了を監視する手法や、情報家電のオンフック、オフフックを監視し、高優先度のトラヒックがあるかどうかを監視しても良い。また、予め指定したトラヒックとして、SIPを利用したVoIP通信を挙げたが、これに限らない。
【0059】
実施形態1〜4は、EPON(Ethernet(登録商標) Passive Optical Network)および10G−EPON、さらには他のPON、例えばITU−T(International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector)勧告準拠のB−PONおよびG−PON、さらにはWDM−PONやCDM−PON等の光アクセスネットワーク用装置のみならず、2つの互いに接続された通信装置に対して適用可能である。また、実施形態1〜4は、それらを組み合わせることが可能であり、その場合にはそれぞれの実施形態が有する効果を相乗的に奏することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1:上位側通信装置
2:通信装置
10:ONU
12:キュー管理部
14:スリープ/起動判定部
15:信号処理部
16:PHY
18:TRx
19:信号線
20:HGW
21:タイマー
22:キュー管理部
23:キュー観測部
24:スリープ/起動判定部
25:信号処理部
26、28:PHY
27:L2SW
29:制御信号出力ポート
31:VoIP
32:PC
91:OLT
92、921、92i、92n:ONU
93、931、93i、93n:HGW
95:光ファイバ伝送路
96、961、96i、96n:UNI
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワーク回線を終端する上位側通信装置よりも下位側に接続される通信装置であって、
前記上位側通信装置に流入する上りトラヒックを一時的に蓄積するキュー管理部と、
前記キュー管理部に流入する上りトラヒックの有無及び上りトラヒック量を観測するキュー観測部と、
前記キュー観測部において上りトラヒックの流入が観測された場合、前記キュー観測部の観測したトラヒック量に基づいて起動又はスリープに入るタイミングを決定し、上りトラヒックを前記キュー管理部から前記上位側通信装置へ送信する前に、決定したタイミングに起動又はスリープに入る旨指示する制御信号を前記上位側通信装置へ通知するスリープ/起動判定部と、
前記キュー管理部に蓄積された上りトラヒックを前記上位側通信装置へ送信する信号処理部と、
を備える通信装置。
【請求項2】
前記信号処理部は、前記キュー管理部がしきい値時間蓄積した上りトラヒックを、前記上位側通信装置へ一括送信し、
前記キュー観測部は、前記しきい値時間内に前記キュー管理部に蓄積された上りトラヒックのトラヒック量を観測し、
前記スリープ/起動判定部は、前記制御信号を用いて、起動に入る旨の指示と共に、前記キュー観測部の観測したトラヒック量を送信後にスリープに入る旨の指示をする
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記キュー管理部に蓄積された上りトラヒックを前記上位側通信装置へ出力するトラヒック出力ポートと、
前記スリープ/起動判定部からの制御信号を前記上位側通信装置へ出力する制御信号出力ポートと、
を備え、
前記制御信号が、専用の信号線を用いて前記上位側通信装置へ送信される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記キュー管理部は、上りトラヒックの優先度に応じたクラス別キューを1つ以上有し、
前記キュー観測部は、上りトラヒックの優先度をさらに観測し、
前記スリープ/起動判定部は、前記キュー観測部が高優先度の上りトラヒックの流入を観測した場合、高優先度の上りトラヒックと低優先度の上りトラヒックを一括送信する制御信号を前記上位側通信装置へ通知し、
前記信号処理部は、前記キュー管理部に蓄積された高優先度の上りトラヒック及び低優先度の上りトラヒックを前記上位側通信装置へ一括送信する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の通信装置。
【請求項5】
ネットワーク回線を終端する上位側通信装置よりも下位側に接続される通信装置の省電力化方法であって、
前記上位側通信装置に流入する上りトラヒックをキュー管理部に流入する上りトラヒックの有無及び上りトラヒック量を観測し、上りトラヒックの流入が観測された場合、観測したトラヒック量に基づいて起動又はスリープに入るタイミングを決定し、上りトラヒックを前記キュー管理部から前記上位側通信装置へ送信する前に、決定したタイミングに起動又はスリープに入る旨指示する制御信号を前記上位側通信装置へ通知するスリープ/起動判定手順と、
前記キュー管理部に蓄積された上りトラヒックを前記上位側通信装置へ送信する信号処理手順と、
を順に有する通信装置の省電力化方法。
【請求項6】
前記信号処理手順において、前記キュー管理部がしきい値時間蓄積した上りトラヒックを、前記上位側通信装置へ一括送信し、
前記スリープ/起動判定手順において、前記しきい値時間内に前記キュー管理部に蓄積された上りトラヒックのトラヒック量を観測し、前記制御信号を用いて、起動に入る旨の指示と共に、観測したトラヒック量を送信後にスリープに入る旨の指示をし、
前記信号処理手順において、前記キュー管理部に蓄積された上りトラヒックを前記上位側通信装置へ一括送信する
ことを特徴とする請求項5に記載の通信装置の省電力化方法。
【請求項7】
前記スリープ/起動判定手順において、前記上りトラヒックとは異なる専用の信号線を用いて、前記制御信号を前記上位側通信装置へ送信する
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の通信装置の省電力化方法。
【請求項8】
前記スリープ/起動判定手順において、前記キュー管理部に流入するラヒックの優先度をさらに観測し、高優先度の上りトラヒックの流入を観測した場合、高優先度の上りトラヒックと該低優先度の上りトラヒックを一括送信する制御信号を前記上位側通信装置へ通知し、
前記信号処理手順において、前記キュー管理部に蓄積された高優先度の上りトラヒック及び低優先度の上りトラヒックを前記上位側通信装置へ一括送信する
ことを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載の通信装置の省電力化方法。
【請求項1】
ネットワーク回線を終端する上位側通信装置よりも下位側に接続される通信装置であって、
前記上位側通信装置に流入する上りトラヒックを一時的に蓄積するキュー管理部と、
前記キュー管理部に流入する上りトラヒックの有無及び上りトラヒック量を観測するキュー観測部と、
前記キュー観測部において上りトラヒックの流入が観測された場合、前記キュー観測部の観測したトラヒック量に基づいて起動又はスリープに入るタイミングを決定し、上りトラヒックを前記キュー管理部から前記上位側通信装置へ送信する前に、決定したタイミングに起動又はスリープに入る旨指示する制御信号を前記上位側通信装置へ通知するスリープ/起動判定部と、
前記キュー管理部に蓄積された上りトラヒックを前記上位側通信装置へ送信する信号処理部と、
を備える通信装置。
【請求項2】
前記信号処理部は、前記キュー管理部がしきい値時間蓄積した上りトラヒックを、前記上位側通信装置へ一括送信し、
前記キュー観測部は、前記しきい値時間内に前記キュー管理部に蓄積された上りトラヒックのトラヒック量を観測し、
前記スリープ/起動判定部は、前記制御信号を用いて、起動に入る旨の指示と共に、前記キュー観測部の観測したトラヒック量を送信後にスリープに入る旨の指示をする
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記キュー管理部に蓄積された上りトラヒックを前記上位側通信装置へ出力するトラヒック出力ポートと、
前記スリープ/起動判定部からの制御信号を前記上位側通信装置へ出力する制御信号出力ポートと、
を備え、
前記制御信号が、専用の信号線を用いて前記上位側通信装置へ送信される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記キュー管理部は、上りトラヒックの優先度に応じたクラス別キューを1つ以上有し、
前記キュー観測部は、上りトラヒックの優先度をさらに観測し、
前記スリープ/起動判定部は、前記キュー観測部が高優先度の上りトラヒックの流入を観測した場合、高優先度の上りトラヒックと低優先度の上りトラヒックを一括送信する制御信号を前記上位側通信装置へ通知し、
前記信号処理部は、前記キュー管理部に蓄積された高優先度の上りトラヒック及び低優先度の上りトラヒックを前記上位側通信装置へ一括送信する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の通信装置。
【請求項5】
ネットワーク回線を終端する上位側通信装置よりも下位側に接続される通信装置の省電力化方法であって、
前記上位側通信装置に流入する上りトラヒックをキュー管理部に流入する上りトラヒックの有無及び上りトラヒック量を観測し、上りトラヒックの流入が観測された場合、観測したトラヒック量に基づいて起動又はスリープに入るタイミングを決定し、上りトラヒックを前記キュー管理部から前記上位側通信装置へ送信する前に、決定したタイミングに起動又はスリープに入る旨指示する制御信号を前記上位側通信装置へ通知するスリープ/起動判定手順と、
前記キュー管理部に蓄積された上りトラヒックを前記上位側通信装置へ送信する信号処理手順と、
を順に有する通信装置の省電力化方法。
【請求項6】
前記信号処理手順において、前記キュー管理部がしきい値時間蓄積した上りトラヒックを、前記上位側通信装置へ一括送信し、
前記スリープ/起動判定手順において、前記しきい値時間内に前記キュー管理部に蓄積された上りトラヒックのトラヒック量を観測し、前記制御信号を用いて、起動に入る旨の指示と共に、観測したトラヒック量を送信後にスリープに入る旨の指示をし、
前記信号処理手順において、前記キュー管理部に蓄積された上りトラヒックを前記上位側通信装置へ一括送信する
ことを特徴とする請求項5に記載の通信装置の省電力化方法。
【請求項7】
前記スリープ/起動判定手順において、前記上りトラヒックとは異なる専用の信号線を用いて、前記制御信号を前記上位側通信装置へ送信する
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の通信装置の省電力化方法。
【請求項8】
前記スリープ/起動判定手順において、前記キュー管理部に流入するラヒックの優先度をさらに観測し、高優先度の上りトラヒックの流入を観測した場合、高優先度の上りトラヒックと該低優先度の上りトラヒックを一括送信する制御信号を前記上位側通信装置へ通知し、
前記信号処理手順において、前記キュー管理部に蓄積された高優先度の上りトラヒック及び低優先度の上りトラヒックを前記上位側通信装置へ一括送信する
ことを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載の通信装置の省電力化方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−46165(P2013−46165A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181726(P2011−181726)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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