説明

通信装置

【課題】宅内PLCで良好な通信を行うにあたり、分岐ロスにより減衰した通信信号を補償する中継器を設ける場合でも、宅内を停電状態にさせることのない通信装置を提供する。
【解決手段】分電盤CP内の主線路101から分岐する第一電力供給路(電源線20、分岐線21)に接続される第一通信端末装置81と、主線路101から分岐する第二電力供給路(電源線30、分岐線31)に接続される第二通信端末装置82との間で電力線搬送通信を行なうための通信装置1である。この通信装置1は、両通信端末装置81,82で通信を行なう際、第一電力供給路と第二電力供給路との間を、通信信号を伝送可能に接続する通信用配線(通信線20A,30A、接続線10C)と、通信用配線に接続され、通信信号を増幅する中継器10rと、通信用配線に配置され、商用周波数帯域の電力を減衰させる信号透過フィルタ部20f,30fとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋内配線を信号伝送路に利用して電力線搬送通信を行なうための通信装置に関する。特に、本発明は、信号伝送路における通信信号の減衰を補償することができる通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、家屋内(宅内)に配されて電力供給路に利用される屋内配線に、高周波信号を重畳して高速通信を行う電力線搬送通信(PLC:Power Line Communication)が検討されている。図4に示すように家屋100には、低圧配電線に接続される引込線200が分電盤CPに導入される。引込線200は分電盤CP内のメインブレーカーMBを介して主線路101に接続され、この主線路101からは分岐ブレーカーBを介して複数の分岐幹線110,120,130が分岐されている。また、各分岐幹線110,120,130から更に複数の分岐線111,112,121,122,131,132…が分岐される。これら分岐幹線110〜130や分岐線111〜132…から屋内配線が構築される。各分岐線111〜132…の端部には、照明器具などの電気機器が接続されたり、種々の電気機器が接続可能なコンセントが設けられる。
【0003】
このような家屋100において、分岐幹線110,120の分岐線111,121にそれぞれ電力線搬送通信装置(PLCモデム)141,142を接続し、各PLCモデム141,142にそれぞれパソコンなどの通信端末装置151,152を接続する。通信端末装置151(152)は、分岐幹線110(120)と分岐線111(121)とからなる電力供給路から電力供給を受ける。このとき、通信端末装置151,152は、分岐線111,121、分岐幹線110,120、主線路101を介して接続され、これらを信号伝送路として宅内PLCを行える。
【0004】
図4に示す屋内配線は、主線路および分岐幹線に対して複数の分岐点を有するバス型と呼ばれる配置形態である。これに対し、近年、ユニットケーブルと呼ばれるケーブルを利用して、一つの分岐点に複数の分岐線が接続されるスター型の配置形態の屋内配線を構築することも行われている。
【0005】
ユニットケーブルUは、図5に示すように複数の分岐線(配線用ケーブル)u1,u2,…unと、これら分岐線u1,u2,…unの一端を接続する分岐接続部Sと、分岐接続部Sを覆う樹脂製のモールド部(キャップ)Mとを具える。ユニットケーブルUは、予め工場で製造して各家屋に運ばれて、配線される。具体的には、モールド部Mを家屋の柱などに固定し、複数の分岐線のうち1本を分電盤に接続して主電源線とし、残りの分岐線の他端にコンセントなどを設ける。
【0006】
ところで、PLCでは、電力線を通信信号の搬送に利用しているため、通信に利用しない分岐幹線や分岐線にも通信信号が流れる、いわゆる分岐ロスが生じて、通信信号が大幅に減衰する虞がある。特に、従来の宅内PLCでは、主線路を経由して通信信号の伝送を行うため、分岐ロスが大きく、通信信号が減衰して、通信に利用する信号伝送路間において良好な通信を行えないという問題があった。
【0007】
上述のような問題点を解決するために、特許文献1には、主線路である幹線電灯線に、減衰した通信信号を補償する中継器(リピーター)を介在させた電灯線通信システムが開示されている。この電灯線通信システムでは、屋内の分岐電灯線(分岐幹線)が集約的に接続される幹線電灯線(主線路)に中継器を配置して、分岐電灯線からさらに分岐した再分岐電灯線(分岐線)の端末に接続される電灯線通信装置(PLCモデムおよび通信端末装置)からの通信信号を増幅することで、分岐ロスによる通信信号の減衰を補償している。
【0008】
【特許文献1】特開2001−308756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記の特許文献1の電灯線通信システムでは、幹線電灯線(主線路)に中継器を接続する作業を行なわなければならず、この接続個所が弱点となって、将来的に損傷が生じる虞がある。主線路に何らかの損傷が生じた場合、主線路は宅内の全ての分岐幹線に電力を供給しているため、宅内全てが停電状態になる。従って、主線路に対する接続作業は、主線路に損傷を生じさせる可能性があるため好ましくない。特に、既存の屋内配線に後から中継器を増設する場合、主線路を損傷する可能性が高い。しかも、増設作業時には、メインブレーカーを切らなければならず、宅内が完全に停電状態になってしまう。
【0010】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その主目的は、宅内PLCで良好な通信を行うにあたり、分岐ロスにより減衰した通信信号を補償する中継器を設ける場合でも、宅内を停電状態にさせることのない通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、主線路から分岐して通信端末装置に電力を供給する各電力供給路間をバイパスする通信用配線を設けると共に、この通信用配線に中継器を配置することで上記の目的を達成する。
【0012】
本発明は、分電盤内の主線路から分岐する第一電力供給路に接続される第一通信端末装置と、上記主線路から分岐する第二電力供給路に接続される第二通信端末装置との間で電力線搬送通信を行なうための通信装置である。そして、本発明通信装置は、上記両通信端末装置で通信を行なう際、上記第一電力供給路と上記第二電力供給路との間を、通信信号を伝送可能に接続する通信用配線と、この通信用配線に配置され、商用周波数帯域の電力を減衰させる信号透過フィルタ部と、上記通信用配線に接続され、上記通信信号を増幅する中継器とを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の通信装置によれば、電力供給路間を接続する通信用配線により、主線路を介すること無く通信信号の伝送を行なうことができる通信信号の伝送経路を構成することができる。また、通信用配線に設けられた信号透過フィルタは、商用周波数帯域の電力を減衰させる、即ち通信信号の周波帯域(通常、商用周波数帯域よりも高周波数帯域)において低インピーダンスであるので、通信用配線に通信信号を引き込み易くすることができる。さらに、この通信用配線には中継器が接続されているため、分岐ロスにより減衰した通信信号を増幅することができる。従って、本発明通信装置によれば、良好な通信を行なうことができる。
【0014】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0015】
第一電力供給路及び第二電力供給路は、連続した配線で構成することもできるが、異なる複数の配線を接続することで構成しても良い。異なる複数の配線とする場合、例えば、バス型の配線構造を持つ家屋では、主線路から分岐する分岐幹線と、この分岐幹線に接続される分岐線とを電力供給路とする。この場合、分岐線の末端に通信端末装置が接続される。また、スター型であれば、接続部に集約的に接続される複数の配線のうち、主線路に接続される配線(電源線)と、接続部から通信端末装置側までの配線(分岐線)とを電力供給路とする。スター型の配線としては、ユニットケーブルを使用して構成することが挙げられる。この場合、ユニットケーブルのうち、主線路に接続される電源線と、分岐接続部を介して電源線と接続される分岐線とで電力供給路が形成される。
【0016】
通信用配線はそれぞれ、上記第一電力供給路及び第二電力供給路に接続されて、通信端末装置間の通信信号を伝送するバイパス路として機能する。通信用配線は、上記電力供給路に接続されて、商用周波数帯域の電力が印加されるため、この電力に耐えることができ、所望の通信信号が伝送可能な構成のものが利用できる。例えば、通信用配線は、商用周波数帯域の電力の供給に汎用されている配線、具体的には、遮蔽層のない平行二線(平型ケーブルまたは平行2心ケーブル)を利用することができる。遮蔽層を有する配線を通信用配線とすると、誘導によるノイズの影響を受け難い。
【0017】
第一(第二)電力供給路がユニットケーブルの配線(分岐線及び電源線)で構成される場合、通信用配線は、ユニットケーブルに具わる第一(第二)電力供給路以外の別の分岐線を利用することが好ましい。ユニットケーブルに予め備わっている配線を通信用配線に利用すると、各電力供給路と各通信用配線との接続作業が不要であるので好ましい。
【0018】
上述のように通信用配線によって両電力供給路同士を接続することで、これら電力供給路は、商用周波数帯域(例えば、50Hz又は60Hz)において短絡する。そこで、通信用配線に、商用周波数帯域の電力を減衰させる信号透過フィルタを設ける。具体的には、商用周波数帯域の電力を減衰、或いは遮断し、通信信号の使用周波数帯域(通常、商用周波数(例えば、50Hz又は60Hz)よりも高周波、例えば、1〜50MHz程度、特に2〜30MHz)の信号を伝送が可能な信号透過フィルタ部を介して両電力供給路同士を高周波的に接続する。
【0019】
信号透過フィルタ部の本体としては、通信信号の使用周波数帯域において低インピーダンスとなり、商用周波数帯域において高インピーダンスとなるハイパスフィルタ(HPF)や、特定の周波数帯域の電力を遮断するバンドパスフィルタ(BPF)やバンドエリミネーションフィルタ(BEF)が利用できる。HPFとしては、コンデンサ(キャパシタ、C)が挙げられる。通信用配線に接続配置される信号透過フィルタ部は、通信信号の周波数帯域において低インピーダンスであるので、通信端末装置から送信された通信信号は、通信用配線に引き込まれ易くなる。その結果、電力供給路に接続される通信用配線以外の配線(分岐線)に分岐する通信信号を低減することができる。
【0020】
信号透過フィルタ部は、通信用配線に一つ設ければ良いが、二つ設けてもかまわない。この場合、二つの信号透過フィルタ部の間に中継器を配置することで、商用周波数帯域の電力の影響が少ない通信信号を中継器に入力させることができる。
【0021】
その他、信号透過フィルタ部は、ケースなどに収納する構成としても良い。ケースに収納することにより、信号透過フィルタ部を保護できる。また、ケースに収納した場合、このケースに対して通信用配線を着脱自在にすることが容易にできる。例えば、ユニットケーブルを本発明通信装置の構成に利用する場合、ユニットケーブルの分岐線の端部にケースに収納した信号透過フィルタ部を形成すると共に、ケースに、別途用意した配線を着脱可能にする接続部を形成する。そして、異なるユニットケーブルに接続されるケースの接続部間を上記配線で接続することにより通信用配線を形成する。このような構成によれば、通信用配線の延長が容易であり、この通信用配線に接続する中継器の配置の自由度が高くなる。しかも、接続部間の別途用意した配線が損傷した場合でも、損傷した配線の交換が容易である。
【0022】
上述の通信用配線には、減衰した通信信号を補償する中継器を接続する。中継器は、受信した通信信号を増幅・波形整形するための装置である。ここで、通信用配線には、すでに述べたように通信信号が引き込まれ易いため、中継器の配置位置として非常に好ましい位置であると言える。しかも、特許文献1のように、主線路に中継器を接続する作業による主線路の弱点となる個所を作ることがない。このような中継器は、筐体に収納して保護することが好ましい。このような筐体は、少なくとも中継器の外周を覆えば良い。また、筐体内部に信号透過フィルタ部を収納しても良い。
【0023】
さらに、分岐ロスを低減して良好な通信信号を行なうために、通信信号が主線路に伝送され難いようにすることが好ましい。具体的には、通信装置に、通信用配線から第一電力供給路を介して主線路に通信信号が伝送されることを防止する第一ブロッキングフィルタ部と、通信用配線から第二電力供給路を介して主線路に通信信号が伝送されることを防止する第二ブロッキングフィルタ部とを設ける。このようなブロッキングフィルタ部により、各通信端末装置から送信される通信信号が、主線路に伝送されることがほとんどないため、分岐ロスを低減することができる。しかも、このブロッキングフィルタ部により、通信信号が主線路に伝わり、主線路から引込線を介して外部に漏洩したり、逆に、外部からの通信信号やノイズが電力供給路に伝送される、いわゆるクロストークを防止することができる。
【0024】
上記ブロッキングフィルタ部は、主線路から各電力供給路に商用周波数帯域の電力を伝送可能にするものでなければならない。例えば、商用周波数帯域で低インピーダンスとなり、通信信号の周波数帯域で高インピーダンスとなるローパスフィルタ(LPF)や、特定の周波数帯域の電力を遮断するBPFやBEFを利用することができる。LPFとしては、インダクタンス成分(L)とコンデンサ(キャパシタ、C)とを組み合わせたL-C回路が挙げられる。このブロッキングフィルタ部は、ケースなどに収納して保護することが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の通信装置によれば、分岐ロスにより減衰した通信信号を補償する中継器が、主線路とは別の通信用配線に設けられているので、主線路を損傷することがない。また、中継器を設ける際に、宅内を停電状態にさせることがない。
【0026】
また、本発明の通信装置によれば、主線路を介することのない通信用配線を設け、この通信用配線に通信信号の周波数帯域における電力に対して低インピーダンスとなる信号透過フィルタ部を設けることで通信信号を引き込み易くすることができる。そして、引き込まれた通信信号を中継器により増幅することで、宅内PLCにおいて良好な通信を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
<実施例1>
図1は、本発明通信装置を具える宅内電力線搬送通信システムを示す概略構成図である。以下、図において同一符号は同一物を示す。このシステムは、家屋内の屋内配線のうち、一部の屋内配線(分岐線21,31)を信号伝送路に利用して宅内PLCを行うものである。具体的には、分電盤CPに第一電力供給路(電源線20及び分岐線21)を介して接続されるパソコンといった通信端末装置(第一通信端末装置)81と、分電盤CPに第二電力供給路(電源線30及び分岐線31)に接続される通信端末装置(第二通信端末装置)82との間で通信信号の授受を行う。なお、通信端末装置81,82は、それぞれPLCモデム71,72を介して分岐線21,31に接続されており、このPLCモデム71または72は、外部と通信可能に構成しても良い。
【0028】
屋内配線は、ユニットケーブル2,3,5から構成される。ケーブル2は、複数の分岐線21,22と、分電盤CP内の主線路101に接続される電源線20と、これら分岐線21,22及び電源線20を電気的に接続する分岐接続部2jと、この接続部2jを覆う樹脂製のモールド部2mとから構成される。ケーブル3,5についても同様であり、電源線30,50、分岐線31,32,51,52、分岐接続部3j,5j、樹脂製のモールド部3m,5mをそれぞれ具える。各分岐線21,22,31,32,51,52の一端は、分岐接続部2j,3j,5jに接続され、他端にコンセントや照明機器などが設けられる。各電源線20,30,50は、一端が分岐接続部2j,3j,5jに接続され、他端が主線路101に接続されている。この電源線20,30,50により、各分岐線21,22,31,32,51,52には、電力が供給される。
【0029】
このような屋内配線をPLCの信号伝送路とするにあたり、このシステムでは、通信装置1を具える。通信装置1は、リピーター(中継器)10rにより減衰した通信信号を増幅し、ユニットケーブル2,3に接続される通信端末装置81,82間で良好に通信を行えるようにするための装置である。ここで、ユニットケーブル5は、通常の宅内配線用であり、宅内PLCに利用しない。以下、この通信装置1を説明する。
【0030】
通信装置1は、ユニットケーブル2の電源線20と、ユニットケーブル3の電源線30との間を接続する通信用配線により、通信端末装置81,82の間で通信信号の伝送を可能とするものである。通信用配線は、具体的には、分岐接続部2jに接続される通信線20Aと、分岐接続部3jに接続される通信線30Aと、両通信線20A,30Aを接続する接続線10Cとからなる。
【0031】
通信線20A(30A)は、分岐線21,22(31,32)と同様にユニットケーブル2(3)に予め接続された汎用の分岐線を使用した。
【0032】
通信線20A(30A)には、商用周波数帯域の電力を減衰させる信号透過フィルタ部20f(30f)が設けられている。フィルタ部20f(30f)は、商用周波数帯域で高インピーダンスとなり、通信信号の使用周波数帯域で低インピーダンスとなるハイパスフィルタ(HPF)であり、コンデンサを利用している。通信線20A(30A)にフィルタ部20f(30f)が設けられていることにより、通信線20A(30A)に通信信号を引き込み易くすることができるので、分岐ロスを低減することができる。また、フィルタ部20f(30f)により通信用配線(20A,10C,30A)により接続されるユニットケーブル2,3が短絡することも防止できる。
【0033】
また、ユニットケーブル2(3)に接続される通信線20A(30A)の端部には端子部が設けられている。この端子部と、接続線10Cの両端部に設けられる嵌合部10tとを嵌合させることにより、通信線20A、接続線10C、通信線30Aを接続して通信用配線を構成する。
【0034】
接続線10Cおよび嵌合部10tは、接続箱10の内部に配置されている。接続箱10の内部には、さらに、リピーター(中継器)10rが収納されている。接続箱10により接続線10Cやリピーター10rを保護することができる。また、接続箱10に接続線10Cと嵌合部10tとを設けて、接続箱10と通信線20A,30Aとを着脱可能な構成とすることで、通信線20A,30Aをユニットケーブル2,3に接続し易くすることができる。
【0035】
リピーター10rは、受信した通信信号を増幅・波形整形して伝送するための装置であり、接続線10Cに並列に接続されている。リピーター10rは、公知のものを使用した。リピーター10rとしては、波形を読み取ってデジタル化してから再度波形を作り直すクラス1リピーターや、波形をアナログのまま整形して転送するクラス2リピーターなどを利用することができる。
【0036】
上述のような構成を備える本発明の通信装置1では、電源線20および分岐線21からなる電力供給路と、電源線30および分岐線31からなる電力供給路とが通信用配線(20A,10C,30A)により接続されており、この通信用配線を通信信号の伝送に利用することができる。また、通信用配線には信号透過フィルタ部20f,30fが設けられており、通信用配線に通信信号を引き込み易く、且つ、引き込んだ通信信号をリピーター(中継器)により増幅させることができる、従って、本発明通信装置を具えた宅内PLCシステムを構築することで、分岐ロスにより減衰した通信信号を補償して良好な通信を行なうことができる。また、本発明通信装置は、簡単に屋内配線に取り付けることができ、設置作業性に優れる上に、リピーターを接続する際に主線路を損傷することがない。
【0037】
<変形例1−1>
本変形例では、実施例1とは異なる構成を有する通信用配線を使用した通信システムを説明する。本変形例では、通信用配線の構成以外は、実施例1と共通であるので、相違点についてのみ説明する。
【0038】
図2は、通信システムのうち、ユニットケーブル2の近傍を拡大した図である。本例では、構成の異なる2本のケーブル20a,20bで通信用配線の通信線20Aを構成する。ケーブル20aは、ユニットケーブルに予め設けられている分岐線であり、その端部に信号透過フィルタ部20fを設けている。信号透過フィルタ部20fは、ケースに収納され、ケースに嵌合部20tが形成されている。一方、ケーブル20bは、その両端に端子部が設けられた汎用の平行2心ケーブルであり、一端側の端部が嵌合部20tに接続され、他端側の端部が嵌合部10tに接続される。このような構成によれば、通信線20Aのうち、ケーブル20bの部分を損傷しても、このケーブル20bを取り替えるだけで簡単に修理することができる。なお、図1におけるユニットケーブル3についてもユニットケーブル2と同様に構成すると良い。
【0039】
<実施例2>
実施例2では、実施例1の構成に加えて、通信信号が主線路に伝送されることを防止する構成を備えることで、分岐ロスを低減し、より良好な通信を行なうことができる通信装置を説明する。
【0040】
実施例2の通信装置は、図3に示すように、実施例1の構成に加えて電源線にブロッキングフィルタ部25f(35f)を設けている。ブロッキングフィルタ25f(35f)は、商用周波数帯域の電力の通過を許容し、通信信号の使用周波数帯域の信号を減衰または遮断させる構成である。このブロッキングフィルタ部25f(35f)は、商用周波数帯域の電力の通過を許容し、通信信号の使用周波数帯域の信号を減衰させるローパスフィルタ(LPF)からなる。フィルタ部は、インダクタンス成分となるコイルと、コンデンサとからなるL-C回路で構成している。回路は、保護のためにケースに収納している。
【0041】
このようなフィルタ部25f(35f)を電源線20(30)に配置することで、通信端末装置81(82)からの通信信号は、分岐線21(31)から分岐接続部2j(3j)を介して電源線20(30)に伝送されても、フィルタ部25f(35f)で減衰する。従って、通信信号がフィルタ部25f(35f)よりも主線路101側に伝送されることを防止できる。また、外部からの通信信号やノイズが引込線200から主線路101を介して電源線20(30)に伝送されても、フィルタ部25f(35f)で減衰して、分岐線21(31)側に伝送されることを防止できる。このブロッキングフィルタ部25f(35f)により、通信端末装置81(82)から送信された通信信号は、主線路101に伝送されることがないので、分岐ロスを低減することができる。また、主線路101から引込線を介して外部に通信信号が漏れたり、外部からの通信信号やノイズを受け取る、いわゆるクロストークを防止することができる。
【0042】
また、本例では、さらにユニットケーブル4を設けて、通信端末装置81,82以外の通信端末装置を後から接続できるようにした。ユニットケーブル4の構成は、ユニットケーブル2,3と同様の構成を有している。具体的には、ユニットケーブル4の電源線40が主線路101に接続され、通信線40Aが接続線10Cに接続されている。また、電源線40にブロッキングフィルタ部45fが配置されている。従って、ユニットケーブル4の分岐線41の端部に設けられるコンセントOLにモデムと通信端末装置を接続することで、3台の通信端末装置による電力線搬送通信を行うことができる。
【0043】
なお、上述した実施形態は、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であり、上述した構成に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明通信装置は、屋内配線を信号伝送路として利用する宅内電力線搬送通信に好適に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、実施例1に記載の通信装置の概略構成図である。
【図2】図2は、変形例1−1に記載の通信装置の概略構成図であって、ユニットケーブルの近傍を示す。
【図3】図3は、実施例2に記載の通信装置の概略構成図である。
【図4】図4は、屋内配線を利用してPLC方式の通信システムを構築した状態を示す概略構成図である。
【図5】図5は、ユニットケーブルの概略構成図である。
【符号の説明】
【0046】
1 通信装置
2,3,4,5 ユニットケーブル
20,30,40,50 電源線 21,22,31,32,41,51,52 分岐線
2j,3j,4j,5j 分岐接続部 2m,3m,4m,5m モールド部
10 接続箱 10C 接続線 10r リピーター 10t,20t 嵌合部
20A,30A,40A 通信線 20a ケーブル(分岐線) 20b ケーブル(平行2心ケーブル)
20f,30f,40f 信号透過フィルタ部
25f,35f,45f ブロッキングフィルタ部
71,72 PLCモデム 81,82 通信端末装置
100 家屋 101 主線路 CP 分電盤 MB メインブレーカー B 分岐ブレーカー
110,120,130 分岐幹線 111,112,121,122,131,132 分岐線
141,142 PLCモデム 151,152 通信端末装置
200 引込線 OL コンセント
U ユニットケーブル u1〜un 分岐線 S 接続部 M モールド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分電盤内の主線路から分岐する第一電力供給路に接続される第一通信端末装置と、前記主線路から分岐する第二電力供給路に接続される第二通信端末装置との間で電力線搬送通信を行なうための通信装置であって、
前記両通信端末装置で通信を行なう際、前記第一電力供給路と前記第二電力供給路との間を、通信信号を伝送可能に接続する通信用配線と、
前記通信用配線に配置され、商用周波数帯域の電力を減衰させる信号透過フィルタ部と、
前記通信用配線に接続され、前記通信信号を増幅する中継器とを備えることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記通信用配線から前記第一電力供給路を介して前記主線路に前記通信信号が伝送されることを防止する第一ブロッキングフィルタ部と、
前記通信用配線から前記第二電力供給路を介して前記主線路に前記通信信号が伝送されることを防止する第二ブロッキングフィルタ部とを備えることを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記中継器が筐体に収納されていることを特徴とする請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記第一電力供給路は、第一ユニットケーブルの配線で構成され、
前記第二電力供給路は、第二ユニットケーブルの配線で構成され、
前記通信用配線は、前記第一ユニットケーブルの配線と前記第二ユニットケーブルの配線を接続して構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−141523(P2008−141523A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−326079(P2006−326079)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(592189860)住友電工産業電線株式会社 (7)
【Fターム(参考)】