説明

通信装置

【課題】制御基板上に通信モジュールを装着した通信装置を、装置の安定的な動作を確保しつつ実現することを目的とする。
【解決手段】制御基板30の裏面における通信モジュール40以外の電子部品の実装面積や密度は、表面よりも小さくなっており、台座部12e〜hの高さは、制御基板30の裏面から取付具14の上面までの距離g1が、制御基板30の裏面から通信モジュール40までの距離2よりも大きくされている。このため、制御基板30の裏面と下ケース12の開口部12aに臨む取付具14の表面との間には、通信モジュール40の周囲に亘り空隙AR1及び空隙AR2が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の装置から入力された信号やデータを、通信回線を介して収集する通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、遠隔地に存在する装置や所在が不定の装置(以下、「対象装置」という)の状態を把握するためのシステムとして、対象装置が固有に保持している信号やデータ(例えば、対象装置の状態を表すもの)を、通信機能を備えた端末が、通信回線を介して収集するシステム(以下、「情報収集システム」という)が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
こうした情報収集システムでは、対象装置は、情報を収集する側の端末(以下、「収集端末」という)との間の通信を行えるように、通信機能を備える必要がある。こうした通信機能の具備に適したデバイスとして、携帯電話等の通信機能をモジュール化したもの(以下、「通信モジュール」という)が提案されており、対象装置に組み込んで利用可能とされている。
【0004】
特に最近では、対象装置に対する後付けでの通信機能の組み込みを容易にすべく、対象装置からの信号やデータの入出力機構及び処理回路を、通信モジュールと共に一の筐体内に内蔵した通信装置も提案されている。こうした通信装置を対象装置に接続することにより、対象装置から収集したデータをパケットに変換し、通信モジュールに応じた周波数の電波に乗せて収集端末等の外部装置に送信することや、外部装置から受信したパケットを対象装置に適した形式のデータに変換して対象装置に出力又は送信することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−90783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、対象装置からの信号やデータの入出力機構及び処理回路を、通信モジュールと共に一の筐体内に内蔵した通信装置において、処理回路が形成された制御基板上に通信モジュールを装着する構成については、従来において何ら提案されていなかった。
【0007】
そこで、本発明は、上記の構成によって生じる課題を解決し、制御基板上に通信モジュールを装着した通信装置を、装置の安定的な動作を確保しつつ実現することを目的として、以下の構成を採った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の通信装置は、
外部からの要求に基づいて、所定の対象装置から入力した情報を特定の端末に対して無線で送信する送信手段を備えた通信装置であって、
筐体と、
該筐体内に格納される制御基板と、
前記無線での送信を実現するための通信モジュールと、
前記筐体の前記通信モジュールと対向する位置に形成された開口部と
を備えたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
上記した本発明の通信装置によれば、筐体の通信モジュールと対向する位置に開口部が形成されるので、通信モジュールの駆動によって筐体内部に生じた熱をスムーズに筐体外部に逃がすことができる。
【0010】
筐体が樹脂を用いて形成されることも、筐体内部で発生し滞留した熱を筐体外部に逃がすことができる点で望ましい。また、通信モジュールが、制御基板の主制御装置が実装された面とは反対側の面に装着される構成を採ることも好適である。こうすれば、通信モジュールの駆動によって発生した熱が制御基板上の実装部品に直接的に影響を与える度合いを軽減することができる。
【0011】
通信モジュールと開口部との間にヒートシンクが介装された構成を採ることも、通信モジュールの駆動によって発生した熱を外部に逃がし易くなる点で望ましい。また、開口部が、通信装置を対象装置に取り付けるための金属製の取付部材で覆われる構成を採用すれば、外部への放熱を図りつつ、外部からの衝撃に対して筐体内部を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例である通信装置10の外観を示す説明図である。
【図2】通信装置10の上面および底面を示す説明図である。
【図3】通信装置10の正面、側面、背面を示す説明図である。
【図4】通信装置10におけるカバー13を取り外した付近の外観を示す説明図である。
【図5】通信装置10における各部の取付構造を示す説明図である。
【図6】図2(A)に示す通信装置10から上ケース11を取り外した状態を示す説明図である。
【図7】制御基板30の裏面を示す説明図である。
【図8】通信装置10の制御部を示すブロック図である。
【図9】図2(A)に示す通信装置10のL−L断面矢視形状を示す説明図である。
【図10】図2(A)に示す通信装置10のR−R断面矢視形状を示す説明図である。
【図11】制御基板30の裏面における通信モジュール40の取り付け位置付近の様子を示す説明図である。
【図12】通信モジュール40を示す説明図である。
【図13】支持具71を示す説明図である。
【図14】第1貫通孔30a及び第2貫通孔30cを示す説明図である。
【図15】制御基板30に通信モジュール40が取り付けられた位置付近の縦断面を示す説明図である。
【図16】通信モジュール40が固定用部材によって制御基板30に固定される様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以上説明した本発明の構成及び作用を一層明らかにするために、以下,本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。図1は、本発明の実施例である通信装置10の外観を示す説明図である。図2(A),(B)は、それぞれ、通信装置10の上面,底面を示す説明図である。図3(A),(B),(C),(D)は、それぞれ、通信装置10の正面,右側面,左側面,背面を示す説明図である。図4は、通信装置10におけるカバー13を取り外した付近の外観を示す説明図である。図5は、通信装置10における各部の取付構造を示す説明図である。図6は、図2(A)に示す通信装置10から上ケース11を取り外した状態を示す説明図である。図7は、制御基板30の裏面を示す説明図である。
【0014】
図示した本実施例の通信装置10は、収集端末等の外部装置からの指示に基づいて受信した信号やデータを、そのまま又は対象装置に適した形式のデータに変換して対象装置に出力すると共に、該対象装置への出力後に、対象装置に出力した結果を表すデータや対象装置から入力したデータを、収集端末に対し無線で送信する機能(プル型、オンデマンド型の送信機能)を備える。こうした機能の実行により、収集端末が対象装置や通信装置10から離れた位置に存在する場合であっても、収集端末側から対象装置の動作を任意に制御し、その制御の結果を把握することが可能となる。本実施例では、上述したプル型、オンデマンド型の送信機能を実現するための通信装置10の構成が、特許請求の範囲に記載した送信手段に相当する。
【0015】
図示するように、通信装置10は、筺体を構成する樹脂製の上ケース11及び下ケース12と、上ケース11及び下ケース12内に収納される制御基板30及び取付具14を備える。筐体の大きさは、通信装置10を対象装置内部の空きスペースに設置することを可能とすべく、幅が約110ミリメートル、奥行きが約60ミリメートル、高さが約30ミリメートルというコンパクトなサイズとされている。
【0016】
図示するように、上ケース11の上面には、略左右対称な傾斜部11q,11rと凹所11f,11gが形成されている。これにより、通信装置10において、立体感のある特徴的かつ審美的なデザインと識別性が確保されている。また、上ケース11の上面には、各名板19a〜dの装着スペースとして、名板19a〜dの厚み分だけ陥没した名板装着部11a〜dが形成されている。
【0017】
上ケース11の凹所11fには、LED39a〜gの光を透過するためのレンズユニット15が、上ケース11の裏側から嵌め込まれている。上ケース11の凹所11gに形成された開口部11pには、カバー13が着脱可能に装着されている。このカバー13を取り外すことにより、使用者は、後述するSIMカード用コネクタ37へのSIMカード38の抜き差しやディップスイッチ44の切り替え操作、USBコネクタ45へのメモリや外部コンピュータの接続等の作業を行うことができる(図4を参照)。
【0018】
上ケース11の長辺側の側面には、制御基板30に実装された各種部品を筐体の外面に露出させるための切欠部11i〜nが形成されている。切欠部11i,j,k,l,m,nは、それぞれ、スイッチ31,給電用コネクタ33,プラグ32,フレームグランド34,コネクタ35,アンテナ端子36の一部(操作部位や接続部位)を通信装置10の表面に露出させるために用いられる。
【0019】
図2(B)及び図5に示すように、下ケース12の底面には開口部12aが形成されており、下ケース12の内側底面の四隅には、内側底面から隆起した形状の台座部12e〜hが形成されている。下ケース12の向かい合う2つの短辺側側面には、それぞれ、切欠部12v,12wが形成されている。カバー13を取り外した時、切欠部12vからは、USBコネクタ45の一部である接続部位が露出した状態となる。
【0020】
切欠部12w付近の底面には、取付具14に形成された係合孔14bに係合させるための係合条12bが設けられている。切欠部12v付近の底面には、取付具14に形成された嵌合孔14cに嵌め込まれる係止片12cと、嵌合孔14cへの嵌め込みに際して係止片12cに撓みを付与するためのスリット12dが設けられている(図2(B)を参照)。
【0021】
図2(B)及び図5に示すように、下ケース12の底面には、開口部12aを覆うように取付具14が装着されている。なお、本実施例では、取付具14の材料として、所定以上の熱伝導率を有すること、所定以上の曲げ強度及び耐衝撃性を確保すること、筐体内における帯電を防止すること等を考慮し、鉄を用いているが、勿論、鉄以外の金属材料を用いることも可能である。
【0022】
また、取付具14の上面(制御基板30の裏面と対向する面)には、所定の位置に、ヒートシンクとしての放熱材18が装着されている。本実施例では、放熱材18の材料として、所定以上の熱伝導率と、通信モジュール40との接触を吸収するための可撓性の双方を確保すべく、シリコン製のものを採用している。この放熱材18の位置等の詳細については後述する。
【0023】
取付具14は、その長さが下ケース12の長辺よりも長く、切欠部12v,12wと略同一の幅を有する。この取付具14の両端には、取付具14を鉛直方向と水平方向に1回ずつ折り曲げることにより、脚部14g,14hが形成されている。通信装置10は、この脚部14g,14hを介して、対象装置に取り付けられる。なお、本実施例では、取付具14は、鉛直方向への折り曲げ長として、下ケース12の底面を形成する底板の厚み以上の長さを有する。これにより、通信装置10を対象装置に取り付けた状態において、通信装置10の底面と脚部14g,14h(換言すれば、対象装置の表面)との間には、空隙AR4が形成される(図9を参照)。
【0024】
取付具14には、対角に位置する2箇所にナット20a,20bが埋め込まれている。取付具14は、その係合孔14b,嵌合孔14cを、それぞれ,係合条12b,係止片12cに嵌め込んだ後、ナット20a,20bに,それぞれ、ボルト16a,16bを螺着することにより、下ケース12に固定される。制御基板30は、下ケース12への装着後の取付具14を覆うように、台座部12e〜hに配置された後、ねじ17a〜dによる固定により下ケース12に装着される。これにより、下ケース12は、上ケース11との嵌合により、取付具14の脚部14g,14hが切欠部12v,12wから露出された状態で、筐体として一体となる。
【0025】
このように、取付具14は、その脚部14g,14hが切欠部12v,12wから露出した状態での筐体の内部への挿入、下ケース12の係合条12bや係止片12cへの嵌め込み、下ケース12に対する螺着という3つの手法によって、筐体に固定されている。従って、通信装置10を装着した対象装置に振動が生じた場合に通信装置10が対象装置から脱落するという事態を十全に防止することができる。
【0026】
こうして上ケース11及び下ケース12が筐体として一体となった状態において、下ケース12の開口部12aは、例えば、ファンを有しない通信装置10の動作によって通信装置10の内部に生じた熱を、取付具14への伝導を通じて外部に逃がすための放熱用開口として機能し、開口部12aを覆う部分における取付具14は、例えば、内部の制御基板30を衝撃から保護する壁体として機能する。放熱用開口の大きさは、通信モジュール40や制御基板30の発熱の度合い、ファンの有無等の通信装置10の内部の仕様に応じて、適宜、定めることができる。
【0027】
図6及び図7に示すように、制御基板30は、表裏面に電子部品や回路が実装された両面基板である。なお、図6及び図7を含む本明細書に添付した図面においては、制御部を構成する電子部品の一部や回路パターンについての記載を省略している。
【0028】
制御基板30は、その表面に実装される電子部品として、装置の駆動のON/OFFを操作により切り替えるためのスイッチ31、ピンタイプのACアダプタに接続される給電用のプラグ32、コネクタタイプのACアダプタに接続される給電用コネクタ33、制御基板30上の回路のグランドに接続されるフレームグランド34、シリアル通信ポートとしてのD−subコネクタ35、無線としての電波の送受信を行うアンテナ線に接続されるアンテナ端子36、データの記録及び演算処理媒体としてのSIMカード38、SIMカード38に接続されるSIMカード用コネクタ37、発光素子としてのLED39a〜g、後述する制御部の動作モードを切り替えるためのディップスイッチ44、図示しない主制御装置としてのマイクロコンピュータ等を備える。SIMカード38には、携帯電話等の装置に固有の情報(携帯電話で使われている電話番号等)が記録されている。
【0029】
制御基板30は、その裏面に実装される電子部品として、携帯電話等の通信機能をモジュール化したデバイスである通信モジュール40、USBコネクタ45を備える。本実施例では、通信モジュール40が制御基板30の裏面上に装着されることを考慮し、制御基板30の裏面において、通信モジュール40以外の電子部品が実装されている部分の総面積、実装されている電子部品の密度、回路パターンが引かれている部分の面積や密度を、表面よりも小さくしている。また、制御基板30の裏面に通信モジュール40を装着する位置については、通信モジュール40が通信装置10の外側から他のデバイスと直接に接続されないこと、長辺の長さが105ミリメートル、短辺の長さが58ミリメートルという比較的小さなサイズの制御基板30において、既述したスイッチ31等の切欠部11i,j,k,l,m,n,12vからの外部露出が必要な部品の設置及び固定のためのスペースを制御基板30の外周付近の領域に確保すること等を考慮し、制御基板30の裏面の略中央部としている。
【0030】
制御基板30に実装された電子部品や回路により、通信装置10の制御部が構成される。図8は通信装置10の制御部CRを示すブロック図である。通信装置10は、各種の演算処理を実行するためのCPU52,CPU52で各種演算処理を実行するのに必要なプログラムや参照データなどを予め格納しているメモリであるROM53,CPU22で各種演算処理を実行するのに必要な各種データを一時的に格納するためのメモリであるRAM54を内蔵した1チップのマイクロコンピュータ51と、このマイクロコンピュータ51とバスにより相互に接続された通信モジュール40,シリアル入出力インタフェース55等の各部を備える。本実施例では、ROM53として、データの消去や書き込みが可能な不揮発性メモリであるフラッシュメモリを用いている。
【0031】
シリアル入出力インタフェース55は、外部の対象装置と接続されたコネクタ35を介した信号やデータの入出力を司る機能部であり、コネクタ35から入力された信号やデータをCPU52で扱えるレベルに変換し、CPU52の出力指示に基づいて伝送されてきたデータをコネクタ35で扱えるレベルに変換する。これにより、対象装置と通信装置10の間のシリアル通信が実現される。なお、本実施例では、シリアル通信方式としてRS−232Cを採用している。
【0032】
通信モジュール40には、アンテナ端子36を介した無線通信を実現するための機能部として、電波を受信する受信部、電波を送信する送信部、受信した電波からパケットを抽出ないし結合してデジタルデータを生成する処理やデジタルデータをパケットに分割して電波に乗せる処理等の各種の処理を司る無線通信インタフェースが内蔵されている。また、通信モジュール40には、SIMカード用コネクタ37に接続されたSIMカード38からのデータの読み取りや認証を実現するための機能部として、SIMカードインターフェースが内蔵されている。
【0033】
マイクロコンピュータ51は4個のLED39b,39c,39f,39gの動作を点灯,点滅,消灯のいずれかに制御し、通信モジュール40は2個のLED39d,39eの動作を点灯,点滅,消灯のいずれかに制御する。LED39bの動作はスイッチ31のON/OFFの状態に応じて制御され、LED39cの動作は通信モジュール40やROM53に格納されたファームウェアの更新の実行状態に応じて制御される。LED39fの動作は信号やデータの送信状態に応じて制御され、LED39gの動作は信号やデータの受信状態に応じて制御される。LED39d,39eの動作は、電波の状態、例えば、無線通信に利用されている周波数帯がGSM(Global System for Mobile Communications)又は3G(3rd Generation)のいずれであるか、いずれの周波数帯の電波も受信できないか等に応じて制御される。
【0034】
なお、図8では、信号ないしデータの制御に関わる主要な機能部のみを制御部CRとして表しており、電源制御に関わる機能部の一部が省略されている。そこで、通信装置10における電源供給の制御手法について、簡単に説明する。プラグ32又は給電用コネクタ33から供給された電位差5ボルトの電源は、第1のレギュレータにより電位差N1ボルトに制御され、マイクロコンピュータ51に供給される。スイッチ31がON状態である旨の信号がマイクロコンピュータ51に入力されると、マイクロコンピュータ51は、プラグ32又は給電用コネクタ33からの電源(5ボルト)が供給されていた第2のレギュレータの駆動を指示すると共に、第2のレギュレータの出力電圧をN2ボルトに制御する。これにより、第2のレギュレータから通信モジュール40、RS−232Cドライバ/レシーバ、レベル変換回路に対して、それぞれの駆動電圧であるN2ボルトの電源が供給される。
【0035】
RS−232Cドライバ/レシーバは、供給されたN2ボルトの電源を、RS−232Cによるシリアル入出力を実現可能な電位差に変換してコネクタ35に供給する。通信モジュール40の内部(制御部)の駆動電圧は、N3ボルトとされており、マイクロコンピュータ51の駆動電圧と異なっている。このため、レベル変換回路は、通信モジュール40とマイクロコンピュータ51の間に接続され、通信モジュール40とマイクロコンピュータ51の間のやり取りが可能となるように電圧レベルを変換している。なお、プラグ32又は給電用コネクタ33からの電源(5ボルト)は、LED39aを備えたLEDドライバICにも供給されている。従って、LED39aの動作はプラグ32又は給電用コネクタ33からの電源供給状態に応じて制御される。
【0036】
次に、通信装置10の内部構造について説明する。図9,図10は、図2(A)に示す通信装置10の、それぞれ、L−L断面矢視形状,R−R断面矢視形状を示す説明図である。既述したように、制御基板30の裏面における通信モジュール40以外の電子部品の実装面積や密度は、表面よりも小さくなっている。このため、図9及び図10に示すように、制御基板30の裏面と下ケース12の内底面又は取付具14の表面との間には、通信モジュール40の周囲に亘り、空隙AR1が形成されている。
【0037】
図9及び図10に示すように、通信モジュール40は、制御基板30の裏面と対向する面(以下、「モジュール正面」という)にシールド板40cを備えると共に、下ケース12の内底面又は取付具14の表面と対向する面(以下、「モジュール背面」という)に導電部材40b及びシールド板40aを備える。本実施例では、モジュール背面のほぼ全面に導電部材40bとしての銅箔が塗布されており、この銅箔面は通信モジュール40のグランドに電気的に接続されている。これにより、シールド板40a,40c及び導電部材40bは、通信モジュール40の電磁シールドとして機能する。
【0038】
なお、本実施例では、シールド板40aはモジュール背面の発熱し易い領域(以下、「発熱領域」という)を避けて装着されているため、モジュール背面の発熱領域においては導電部材40bが露出している状態となっている。一方、既述した放熱材18は、取付具14を下ケース12に装着した状態において、取付具14上面におけるモジュール背面の発熱領域に対向する位置に、予め装着されている。こうして下ケース12に装着される放熱材18の厚みは、下ケース12に制御基板30を装着した状態において、取付具14上面とモジュール背面の間に形成される間隔とほぼ同じ厚みとされている。このため、図9及び図10に示すように、モジュール背面の発熱領域には、取付具14の上面に装着された放熱材18が接触している。
【0039】
本実施例では、図9及び図10に示すように、制御基板30の裏面から取付具14の上面までの距離g1が、制御基板30の裏面から通信モジュール40のシールド板40aまでの高さg2よりも大きくなるように、台座部12e〜hの高さを決定している。このため、通信モジュール40と下ケース12の内底面又は取付具14の表面との間には、空隙AR2が形成されている。
【0040】
このような構成により、モジュール背面の発熱領域から発生した熱は、そのほとんどが放熱材18に吸収されて、熱伝導率の高い取付具14にスムーズに伝導し、下ケース12の底面の開口部12aから外部に放出される。また、放熱材に吸収されずに発熱領域の周囲に放射された熱や制御基板30や通信モジュール40の駆動によって発生した熱は、空隙AR1や空隙AR2内を対流して、筐体内部の取付具14の全体に伝導し、取付具14が臨む開口部12aや取付具14の脚部14g,14hから外部に放出される。
【0041】
空隙AR2の容積は、制御基板30の裏面から下ケース12の内底面までの距離が大きいほど拡大し、この拡大に伴って筐体内での蓄熱防止効が高まることになる。しかしながら、本実施例では、対象装置内への設置を実現するための筐体のコンパクト性を保つために、ファンを用いることなく、筐体内の通信モジュール40周りで発生した熱を開口部12aに伝達して外部への放熱効率を向上し、これにより筐体内での蓄熱を防止している。
【0042】
次に、通信モジュール40を制御基板30に装着ないし固定する手法について説明する。図11(A)は、通信モジュール40の装着位置付近における制御基板30の裏面を示し、図11(B)は、図11(A)に示す制御基板30のM−M断面矢視形状を示している。図示するように、制御基板30の裏面には、通信モジュール40を制御基板30に電気的に接続するための雌コネクタ42が装着されている。雌コネクタ42は凹形の縦断面形状を有し、雌コネクタ42の内周面及び内底面には接点パターンが印刷されている。
【0043】
また、制御基板30の裏面には、通信モジュール40が装着される位置の外周付近に、一組の第1貫通孔30a及び第2貫通孔30cと、この組と同じ位置関係でこの組の対角に位置するもう一組の第1貫通孔30b及び第2貫通孔30dが形成されている。第1貫通孔30aは第1貫通孔30bと同一の形状を有し、第2貫通孔30cは第2貫通孔30dと同一の形状を有している。
【0044】
雌コネクタ42に装着される通信モジュール40のモジュール正面を図12(A)に示す。図12(B)は、図12(A)に示す通信モジュール40のN−N断面矢視形状を表している。通信モジュール40は、雌コネクタ42との接続部分として、凸形の縦断面形状を有する雄コネクタ41を備える。雄コネクタ41の外周面には雌コネクタ42との導通が可能な接点パターンが印刷されている。なお、本実施例では、モジュール正面に装着されるシールド板40cの高さは、雄コネクタ41の高さよりも、長さh2だけ高くなっている。このことを考慮し、本実施例では、雌コネクタ42の底面の厚みh1の値を、長さh2よりも大きな値としている。
【0045】
通信モジュール40は金属製の支持具71,72によって制御基板30に固定される。図13(A)は支持具71の左側面、図13(B)は支持具71の正面、図13(C)は支持具71の底面を表している。図13に示すように、支持具71は、通信モジュール40の固定用の嵌合孔71bが形成された頭部71a、制御基板30への固定用のねじ孔71rが形成された脚部71p、頭部71aと脚部71pを繋ぐ胴部71hを備える。本実施例では、胴部71hの幅w2は、最も幅広な頭部71aの幅w3よりも小さく、最も幅狭な脚部71pの幅w1よりも大きな寸法とされている。なお、支持具72は支持具71と同一の形状を有している。
【0046】
制御基板30に形成された第1貫通孔30a及び第2貫通孔30cは、上述の支持具71を制御基板30に装着するための孔であり、第1貫通孔30b及び第2貫通孔30dは、上述の支持具72を制御基板30に装着するための孔である。図14に示すように、第1貫通孔30aは、支持具72を挿入するための挿入領域IRと、挿入した支持具を孔内で平行移動させるためのスライド領域SRとから構成されており、スライド領域SRの孔幅は、挿入領域IRから遠ざかるにつれて漸減されている。挿入領域IRとスライド領域SRとの境目の部位における孔幅d2は、最も幅広な挿入領域IRの孔幅d3よりも小さく、スライド領域SRの最も幅狭な部位の孔幅d1よりも大きな寸法とされている。
【0047】
本実施例では、第1貫通孔30a及び第2貫通孔30cと支持具71との位置及び大きさの関係を、次の通りとしている。支持具71の胴部71hの幅w2は、第1貫通孔30aの孔幅d3よりも小さく、孔幅d2よりも大きな寸法とされている。支持具71の頭部71aの幅w3は、第1貫通孔30aの孔幅d3よりも若干大きな寸法とされている。支持具71の脚部71pの幅w1は、第1貫通孔30aの孔幅d1よりも若干小さな寸法とされている。また、図13に示したねじ孔71rの中心から胴部71hの正面までの距離w4は、図14に示した第2貫通孔30cの中心から第1貫通孔30aのスライド領域SRの最も幅狭な部位までの距離d4と同一の寸法とされている。
【0048】
通信モジュール40と制御基板30との装着は、通信モジュール40の雄コネクタ41を、制御基板30の裏面に設けられた雌コネクタ42に差し込むことにより、実現される。図15は、制御基板30に通信モジュール40が取り付けられた位置付近の縦断面を示す説明図である。図15に示すように、通信モジュール40が制御基板30に装着された状態においては、シールド板40cと雄コネクタ41との高さの差分である長さh2よりも雌コネクタ42の底面の厚みh1の方が大きいために、通信モジュール40と制御基板30の裏面との間に、厚みh1と長さh2との差分の間隔を有する空隙AR3が形成される(図9及び図10を参照)。この空隙AR3の存在により、制御基板30の導電パターンとの接触が回避される。また、空隙AR3が制御基板30と下ケース12の間で発生した熱の対流経路となることで、開口部12aからの放熱を促進することができる。
【0049】
また、本実施例では、図9に示すように、通信装置10を対象装置に取り付けた状態において、通信装置10の底面と対象装置の表面との間に空隙AR4が形成される。この空隙AR4が開口部12aから放出された熱の対流経路となることで、通信装置10における開口部12aの外側付近での熱の滞留を防止することができる。特に、通信装置10が図3(A)に示す正面及び図3(D)に示す背面を上下方向として対象装置に装着される場合には、空隙AR4内での対流により上昇した熱は、その上昇を通信装置10の底面や取付具14に遮られることなく通信装置10の外部上方に上昇していくので、放熱の速度をより高めることができる。
【0050】
なお、通信装置10の筐体を熱伝導率の高い材料(例えば、金属)で成形した場合には、筐体内部で発生した熱は、筐体の全部又は一部に伝わって外気に触れることにより、筐体の外部に逃がされる。これに対し、本実施例の通信装置10のように、筺体を構成する上ケース11及び下ケース12を樹脂で成形した場合には、樹脂の熱伝導率が金属よりも低いため、筐体内部で発生した熱が金属製の筐体の場合よりも外部に逃げにくい。このため、本実施例の通信装置10では、上述したシリコン製の放熱材18、金属製の取付具14、下ケース12底面の開口部12a、空隙AR1〜AR4等の熱を外部に逃がすための構造を採用しているのである。
【0051】
図16(A)は、制御基板30に通信モジュール40が装着された状態を示している。この後、通信モジュール40は、固定用部材としての支持具71,72、ねじ73,74及び座金75,76を用いて、制御基板30に固定される。この様子を、第1貫通孔30b、第2貫通孔30dに支持具72、ねじ74及び座金76を用いて固定する場合を例として、図16(B)及び図16(C)に示した。
【0052】
まず、制御基板30の裏面側の第1貫通孔30b内の挿入領域IRから支持具72の脚部72pを挿入した後、挿入領域IR内で、支持具72の頭部72aを、胴部72hを中心として通信モジュール40の第1角部に向かう方向に回転させる。これにより、支持具72は図16(B)に示す状態となる。なお、支持具72の頭部72aの幅w3は、第1貫通孔30bの孔幅d3よりも若干大きな寸法とされているので、回転後に支持具72が第1貫通孔30bから抜け落ちてしまうことを防止することができる。
【0053】
次に、支持具72の頭部72aを手に持って、支持具72を図16(B)に示す白抜き矢印の方向に平行移動させて、支持具72の胴部72hを、第1貫通孔30bのスライド領域SRの最も幅狭な部位に当接させる。これにより、支持具72の頭部72aの嵌合孔72b内に通信モジュール40の第1角部が進入し、第2貫通孔30dに脚部72pのねじ孔72rが重なった状態となる。この状態から、制御基板30の裏面上に、第2貫通孔30dの中心に合わせて座金76を置き、この座金76を介してねじ74を第2貫通孔30dに挿入し、ねじ孔72rに螺嵌する。これにより、支持具72は図16(C)に示すような、通信モジュール40が第1角部において制御基板30に固定された状態となる。
【0054】
この後、上述したと同様の手法で、第1貫通孔30a、第2貫通孔30cに対して支持具71、ねじ73及び座金75を用いることにより、通信モジュール40は、第1角部の対角に位置する第2角部において制御基板30に固定される。これにより、通信モジュール40は、対角に位置する2つの角部が嵌合孔71b,72bに進入した状態で、支持具71,72が制御基板30に螺着された状態となる。従って、通信モジュール40は、支持具71,72によって位置移動不能に拘束され、制御基板30に完全に固定された状態となる。なお、通信モジュール40を制御基板30から取り外す際には、上述した取り付けとは逆の手順を行えばよい。
【0055】
このように、通信モジュール40は、その雄コネクタ41を制御基板30の雌コネクタ42に差し込むだけでなく、更に、その対角を制御基板30に螺着された支持具71,72によって位置移動不能に拘束することにより、制御基板30に固定されている。従って、通信装置10を装着した対象装置に振動が生じた場合に通信モジュール40が対象装置から脱落するという事態を十全に防止することができる。
【0056】
以上本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる様態で実施し得ることは勿論である。
【0057】
例えば、本実施例では、通信装置10の筐体内部で発生した熱を、放熱材18と取付具14を媒介として開口部12aに逃がす構成を採用したが、通信装置10が外部からの衝撃や水がかり等から保護する必要のない場所に設置される場合等には、熱を外部に逃がすための構造として、放熱材18や取付具14を設けることなく、開口部12aのみを設ける構成とすることも可能である。この場合には、開口部12aを通信モジュール40の発熱領域に対抗する位置に設けることが、放熱効率を高めることができる点で好ましい。
【0058】
また、本実施例では、通信装置10の筐体内部で発生した熱を、放熱材18、取付具14、開口部12aの順に空隙AR4へ逃がす構成を採用したが、この空隙AR4相当の空隙を確保しつつ、開口部12aに臨む取付具14にヒートシンクを装着する構成としても良い。こうすれば、取付具14から空隙AR4への放熱を更に促進することができる。
【0059】
本実施例では、取付具14の形状を、開口部12aを含む通信装置10の底面を覆う形状としたが、取付具14が開口部12aを覆わない形態を採用することも可能である。この場合には、例えば、通信装置10の底面に、開口部12aを覆い、かつ、通信モジュール40に接する態様で、放熱材18を装着すれば、通信装置10の筐体内部で発生した熱を、放熱材18から開口部12aに逃がすことができる。
【0060】
また、本実施例では、開口部12aが取付具14によって下ケース12の内部から覆われる構成を採用したが、この構成に替えて、開口部12aが取付具14によって下ケース12の外部から覆われる構成を採用しても差し支えない。
【0061】
本実施例の通信装置10を、自動販売機等の各種の対象装置から信号やデータを入力した場合に、当該信号やデータを収集端末に対して自動的に無線で送信する機能(プッシュ型の送信機能)を備えた構成とすることも可能である。こうして送信されたデータを収集端末が受信することにより、収集端末が対象装置や通信装置10から離れた位置に存在する場合であっても、収集端末側で対象装置の状態をリアルタイムに把握することが可能となる。更に、複数の収集端末を中央の管理装置に通信接続することにより、情報の管理ないし監視のシステムを構築することも可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
対象装置の状態を無線で送信する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
10…通信装置
11…上ケース
11a〜d…名板装着部
11f…凹所
11g…凹所
11i…切欠部
11j…切欠部
11k…切欠部
11l…切欠部
11m…切欠部
11n…切欠部
11p…開口部
11q…傾斜部
11r…傾斜部
12…下ケース
12a…開口部
12b…係合条
12c…係止片
12d…スリット
12e〜h…台座部
12v…切欠部
12w…切欠部
13…カバー
14…取付具
14b…係合孔
14c…嵌合孔
14g…脚部
14h…脚部
15…レンズユニット
16a〜b…ボルト
17a〜d…ねじ
18…放熱材
19a〜d…名板
20a〜b…ナット
30…制御基板
30a,30b…第1貫通孔
30c,30d…第2貫通孔
31…スイッチ
32…プラグ
33…給電用コネクタ
34…フレームグランド
35…コネクタ
36…アンテナ端子
37…SIMカード用コネクタ
38…SIMカード
39a〜g…LED
40…通信モジュール
40a…シールド板
40b…導電部材
40c…シールド板
41…雄コネクタ
42…雌コネクタ
44…ディップスイッチ
45…USBコネクタ
51…マイクロコンピュータ
52…CPU
53…ROM
54…RAM
55…シリアル入出力インタフェース
70…固定用部材
71,72…支持具
71a,72a…頭部
71b,72b…嵌合孔
71h,72h…胴部
71p,72p…脚部
71r,72r…ねじ孔
73…ねじ
74…ねじ
75…座金
76…座金
CR…制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの要求に基づいて、所定の対象装置から入力した情報を特定の端末に対して無線で送信する送信手段を備えた通信装置であって、
筐体と、
該筐体内に格納される制御基板と、
前記無線での送信を実現するための通信モジュールと、
前記筐体の前記通信モジュールと対向する位置に形成された開口部と
を備えた通信装置。
【請求項2】
前記筐体が樹脂を用いて形成された請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記通信モジュールが、前記制御基板の主制御装置が実装された面とは反対側の面に装着された請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記通信モジュールと前記開口部との間にヒートシンクが介装された請求項1ないし3のいずれかに記載の通信装置。
【請求項5】
前記開口部が、前記通信装置を前記対象装置に取り付けるための金属製の取付部材で覆われた請求項1ないし4のいずれかに記載の通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−19428(P2012−19428A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156424(P2010−156424)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(000106690)サン電子株式会社 (161)
【Fターム(参考)】