説明

通常のスタフィロコーカス抗原と反応する広い反応性のオプソニン抗体

【課題】スタフィロコッカス感染の処理のための免疫グロブリンの同定方法、及び新規なオプソニン性抗原の提供。
【解決手段】第1のアッセイにおいて、第1のスタフィロコーカス エピダーミジスの調製物と反応し、そして第2のアッセイにおいて、第2のスタフィロコーカス生物の調製物と反応する免疫グロブリンを選択する方法、該免疫グロブリンを宿主への導入に基づいて生成する単離されたオプソニン性抗原。該抗原を含む医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫グロブリン(ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を包含する)およびスタフィロコーカス:ブドウ球菌属(Staphylococcus) の感染を予防し、診断し、あるいは処置するために使用する単離された抗原に関する。本発明は、また、ブドウ球菌属(Staphylococcus) の感染を包含するが、これらに限定されない病原菌に対する薬理学的組成物の効能を決定するために使用する動物モデルに関する。
【背景技術】
【0002】
過去20年にわたって、ブドウ球菌属(Staphylococcus) の感染は、とくに入院患者において、ヒトの病的状態および死亡率の重要な原因となった。ブドウ球菌は皮膚および粘膜内層上に存在するので、局在化したおよび全身の両者の感染を生成する理想的な立場にある。衰弱したまたは免疫抑制された患者は全身感染の極端な危険な状態にある。
【0003】
ヒトにおける最も頻繁に病原性のブドウ球菌属(Staphylococcus)種はスタフィロコーカス アウレウス:黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)およびスタフィロコーカス エピダーミジス:表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis) であり、そして各々はある数の血清型を包含する。両者のグループは現在の選択する処置であり抗生物質に対する耐性を発生した。近年、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) は患者における院内感染の主要な原因となり、患者の処置は外来の物体、例えば、脳脊髄液のシャント、心臓弁、血管のカテーテル、関節プロテーゼ、および他の移植片を体の中に配置することを包含する。
【0004】
表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)は、また、連続的な外来の腹膜透析を受けている患者における手術後の創傷感染および腹膜炎の共通の原因である。腎不全のための1つの処置の形態は、腹膜腔の中に大きい体積の腹膜透析液を導入することを伴い、これは頻繁なかつ再発性感染の危険を有する。同様な方法において、免疫性の障害をもつ患者および中心静脈カテーテルを通して腹膜の栄養を受けている患者は、同様に表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) の敗血症が発生する高い危険な状態にある(非特許文献1)。
【0005】
表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) は、また、新生児の院内敗血症の普通の原因となった。直接的または間接的汚染であることがあるる非経口的栄養を受けた未熟児において、感染はしばしば起こる。このような感染は種々の理由で処置が困難である。抗生物質に対する耐性は普通である。1つの研究において、敗血症の乳児の血液培養物から単離されたブドウ球菌の大部分は抗生物質に対する耐性を増大した(非特許文献2) 。
【0006】
免疫系の刺激は軽減を提供しない。なぜなら、このような乳児は抗体、補体、および好中球の機能の欠乏から生ずる免疫性の障害を有するからである。そのうえ、脂質の注入は、現在非経口的栄養治療の標準の成分であり、細菌感染に対するこれらの乳児の既に劣った免疫応答をさらに障害する(非特許文献3) 。
【0007】
補助的免疫グロブリンの治療は、ある種の被包性細菌、例えば、インフルエンザ菌(Hemophilus influenzae)および肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae) に対する保護のある手段を提供することが示された。抗体に欠乏する乳児はこれらの細菌からの感染に対して感受性であり、そして菌血症および敗血症は普通である。抗ブドウ球菌属(Staphylococcus) 抗体および抗ヘモフィルス属(Haemophilus)抗体が存在するとき、それらは血液からそれぞれの細菌のクリアランスを促進することによって保護を提供する。感染を予防または処置するためのブドウ球菌属(Staphylococcus) に対する抗体の潜在的使用は、非常に明瞭ではなかった。
【0008】
ブドウ球菌属(Staphylococcus) の感染の初期の研究は、連続的な外来の腹膜透析を受けている患者において、腹膜の防御、例えば、オプソニン活性を追加刺激するために補助的免疫グロブリンの潜在的使用に集中された。標準の静脈内免疫グロブリン(IVIG)は表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) に対するオプソニン活性についてロット毎の変動性を有することが示された(非特許文献4)。
【0009】
この研究において、試験したIVIGのロットの1/3は補体との劣ったオプソニン化作用を有し、そして14のうちの2つのみは補体なしでオプソニン性であった。こうして、IVIGロットが大きい血漿ドナーのプールから作られるという事実にかかわらず、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)に対してすぐれたオプソニン抗体は均一に存在しなかった。そのうえ、この研究は表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) の感染または細菌性敗血症を予防または処置するためにIVIGを使用することができるかどうかを検査しなかった。
【0010】
最近の研究は、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌属(Staphylococcus)、例えば、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) 性菌血症を、脂質エマルジョンの注入を受けている新生児において菌血症を引き起こす最も普通の種として関連づけた(非特許文献5) 。血清が表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) のペプチドグリカンに対するIgG 抗体を明瞭に検出可能なレベルで有するという事実にかかわらず、これらの新生児は表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) に対する抗体を低いレベルで有した(非特許文献6)。これは驚くべきことであった。
【0011】
なぜなら、抗ペプチドグリカン抗体は主要なオプソニン抗体であると推定されたからである。こうして、これらの研究は、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) に対する新生児の感受性はオプソニン活性の障害に関係づけることができることを示唆したが、また、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) に対して向けられた多数の抗体はオプソニン性ではなく、そして新生児に受動的に与えられたとき、保護を提供することができないであろうことを示唆した。
【0012】
最近、抗原結合アッセイを使用して、合併症をもたない患者および菌血症および心内膜炎をもつ患者における表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)に対するIgG 抗体を分析した(非特許文献7)。このアッセイは表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) の超音波抽出物を使用して表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)特異的IgG を同定した。合併症をもたない菌血症をもつ患者のいずれも、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) に対するIgG 抗体をもたなかった。
【0013】
これらのデータが示唆するように、IgGは血液からの表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) の有効な根絶を提供しない。さらに、心内膜炎をもつ菌血症の89%は表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) に対するIgG を高いレベルで発生した。これらの患者において、高いレベルのIgG 抗体は重大な菌血症および心内膜炎に関連づけられたので、IgG は保護的ではなかった。これらの研究に基づいて、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) の敗血症および心内膜炎におけるIgG の保護的役割は、ことに未成熟、衰弱、脂質内注入、または免疫抑制の存在において、問題である。
【0014】
ブドウ球菌属(Staphylococcus) の感染に対する免疫グロブリンの保護を実証した文献における動物の研究は、酵素結合免疫収着アッセイ(ELISA)により菌株の特異性を示し、そして保護の研究において正常の成体のマウスを利用した。これらの研究はヒトにおいて観察される疾患をまねない。動物モデルは典型的には正常の免疫性をもつ成熟動物を使用し、次いで異常にビルレントな菌株または圧倒的な攻撃性の供与量の最菌を与えた。ヒトの患者は、また、死亡が通常二次的合併症に起因する、低いビルレンスの病原体、例えば、表皮ブドウ球菌属(Staphylococcus) による多少不活性の感染を獲得した。
【0015】
異常な菌株または圧倒的な細菌の供与量を有するモデルは、一般に急速な激症の死亡を誘発する。これらは重要な因子である。なぜなら、抗体は一般に宿主細胞の免疫系(好中球、単球、マクロファージおよび固定された網内細胞系)と共同して働くからである。したがって、抗体の治療の有効性は、宿主の機能的免疫学的能力に依存する。予測的であるためには、動物モデルは、感染が起こりかつ治療のための設定を捕捉する臨床的条件を密接に模倣しなくてはならない。そのうえ、動物の研究は一定しない結果を生じた。
【0016】
表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) の異常にビルレントの株を使用する1つのモデルが報告された。感染した成熟マウスは24〜48時間内で90〜100 %の死亡率を発生した(非特許文献8) 。表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)の表面多糖に対する抗体はこれらのマウスにおいて保護的であった。保護はIgM 画分を使用して起こるが、IgG 画分では起こらないことが示された(非特許文献9)。
【0017】
しかしながら、このモデルは典型的に感染した患者において見られるものと異なる病理学を表す。腹腔内的に攻撃したマウスは注射を受けて数分以内に敗血症の症候を発生し、そして24〜48時間で死亡した。この特定の病理学はブドウ球菌属(Staphylococcus) で感染したヒトにおいて観察されない。表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) の高度にビルレントな株は異型の型を表すことができる。そのうえ、感染したヒトからの表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) の分離株はこのモデルにおいてマウスを殺さなかった。
【0018】
1987年において、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) の選択したビルレント株に対するヒト血清中の抗体の評価を含めるように、これらの動物が拡張された(非特許文献10)。前のデータと対照的に、保護的抗体はIgA, IgMおよびIgG の免疫グロブリン画分の中に見出された。免疫グロブリンのいずれかの単一のクラス(IgG, IgM, IgA)について明らかな役割は確立することができなかった。
【0019】
この動物モデルにおいて、正常の成体マウスが使用され、そして死亡率が決定された。死亡は敗血症でなく、特定の細菌のトキシンの作用に関係づけられると考えられた(非特許文献8)。ほとんどの臨床的分離株は致死的感染を引き起こさず、そして定量的血液培養を実施しなかった。そのうえ、この研究は抗体が未成熟または免疫抑制された患者において表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) の敗血症を首尾よく予防または処置することができたかどうかに関する見識を提供しなかった。
【0020】
後の研究において、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) の莢膜多糖に対して向けられた血清型特異的抗体が動物モデルにおいて試験された。結果が示すように、血清型特異的抗体は保護的であったが、各抗体はELISA により測定して1つの血清型に対して向けられた。保護は等しく血清型特異的であった。異種株に対する保護は起こらなかった。さらに、保護はIgM 抗体により提供されると結論された。
【0021】
要約すると、とくに患者が未成熟または免疫抑制されているか、あるいは多数の表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) の血清型が含まれている場合において、IVIGが表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)の感染または敗血症に対して有効であるという注意をひきつけるような証拠はこれまで存在しない。こうして、例えば、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) の感染の病因論、診断、および処置の最近の広範な外観は、潜在的な予防的または治療的因子として、免疫グロブリンを包含しない(非特許文献1)。
【0022】
さらに、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) の感染をもつヒトの患者、とくに未成熟または免疫抑制された患者に対して適合性である、動物モデルは開発されてきていない。これは重要である。なぜなら、これらの患者は低いレベルの補体ならびに好中球およびマクロファージの機能障害を有するからである。こうして、免疫グロブリンのオプソニン活性が生体外で最適な条件下に適切であると見ることができる感染でさえ、新生児または癌患者のような患者において保護は起こることができない。そのうえ、従来のモデルは、典型的な高い危険性のヒトの患者に類似する危険因子をもたない動物を使用したということにおいて、不満足であることが示された。
【0023】
現在、抗生物質の治療はヒトにおけるブドウ球菌属(Staphylococcus) の感染の予防および治療のために選択される処置である。新しい抗生物質は絶えず開発されてきているが、抗生物質の治療単独は不十分であることがだんだん明瞭になってきた。免疫グロブリンを使用する受動的ワクチン接種は最も不明瞭である。この治療を試みた動物モデルはヒトの感染と関連性をほとんどもたずそして、しかも、明確な解決を生成しなかった。
【0024】
【非特許文献1】C. C. Patrick, J. Pediatri., 116 : 497 (1990)
【非特許文献2】A. Fleerら、Pediatr. Infect. Dis. 2 : 426 (1983)
【非特許文献3】G. W. Fischer ら、Lancet 2 : 819(1980)
【非特許文献4】L. A. Clark およびC. S.F. Easmon, J. Cell. Pysiol. 39 : 856 (1986)
【非特許文献5】J. Freemanら、N. Engl. J. Med.323 : 301 (1990)
【非特許文献6】A. Fleerら、J. Infec. Dis. 2 : 426 (1985)
【非特許文献7】F. Espersen ら、Arch.Intern. Med. 147 : 689 (1987)
【非特許文献8】K. Yoshidaら、Japan. J.Microbiol. 20 : 209 (1976)
【非特許文献9】K. YoshidaおよびY. Ichiman, J. Med. Microbiol.11 : 371 (1977)
【非特許文献10】Y. Ichimanら、J. Appl. Bacteriol. 63 : 165 (1987)
【発明の開示】
【0025】
[発明の要約]
本発明は現在の方法に関連する問題および欠点を克服し、そしてブドウ球菌属(Staphylococcus) の感染の処置および予防のための新規な治療を提供する。ここにおいて広く記載するように、本発明は共通のブドウ球菌の抗原と反応する広く反応性のオプソニン抗体に関し、前記抗体から人間および動物におけるブドウ球菌属(Staphylococcus) の感染の処置および予防のためのワクチン、製剤組成物、および診断助剤をつくることができる。
【0026】
本発明は、血清、血漿、全血、または組織の個々の試料またはプールの中に見出すことができる免疫グロブリン、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であることができる単離された免疫グロブリン、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体をつくる方法、単離された抗原、単離された抗原をつくる方法、単離された免疫グロブリンまたは単離された抗原からなる製剤組成物、および製剤組成物を使用する患者の予防的または治療的処置の方法を包含する。さらに、本発明は、また、製剤組成物の生体内の効能を評価するための動物モデル、診断助剤およびブドウ球菌属(Staphylococcus) の感染を検出する方法、およびここに記載する製剤組成物を包含する、生物学的試料中の製剤組成物を検出する方法からなる。
【0027】
本発明によれば、そして広くここに記載するように、本発明の第1の目的は、ブドウ球菌属(Staphylococcus) の感染を処置するための血清、血漿、全血、または組織の個々の試料またはプールからのものであることができる免疫グロブリンの同定である。免疫グロブリンは、第1アッセイを実施して第1ブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の調製物と反応性の免疫グロブリンを同定し、第2アッセイを実施して第2ブドウ球菌属(Staphylococcus)微生物の調製物と反応性の免疫グロブリンを同定し、そして第1および第2の両者のブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物からの調製物と反応性の免疫グロブリンを選択することによって同定される。
【0028】
反応性は免疫学的アッセイにおいて決定され、前記アッセイは結合アッセイ、オプソニン化アッセイ、またはクリアランスアッセイであることができる。好ましくは、第1および第2のブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の調製物は、異なる血清型または異なる種、例えば、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) および黄色ブドウ球菌(S. aureus)から誘導され、そしてより好ましくは、第1調製物は表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) (Hay, ATCC 55133)からのものである。
【0029】
本発明によれば、そして広くここに記載するように、本発明の第2目的は、第1アッセイにおいて第1ブドウ球菌属(Staphylococcus)微生物の調製物と反応し、そして第2アッセイにおいて第2ブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の調製物と反応する免疫グロブリンの単離である。本発明は、ブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の調製物を動物の中に導入し、そして血清を単離することによって生産されたポリクローナル抗体、およびハイブリドーマ技術により生産されたモノクローナル抗体の単離を包含する。
【0030】
好ましくは、単離された免疫グロブリンは免疫グロブリンはIgG の画分またはアイソタイプのものであるが、単離された免疫グロブリンはいかなる特定の画分またはアイソタイプにも限定されず、そしてIgG, IgM,IgA, IgD, IgE 、またはそれらの任意の組み合わせであることができる。また、単離された免疫グロブリンは純粋にまたは抗原的にヒト免疫グロブリンであることが好ましく、このような免疫グロブリンはヒト抗原産生細胞をヒト抗体産生細胞と融合するか、あるいはヒトDNA 配列を前記抗体をコードする非ヒトDNA 配列と置換すると同時にもとの抗体分子の抗原結合能力を保持させることによって、直接つくることができる。
【0031】
単離された免疫グロブリンは、ブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物で感染したか、あるいは感染の疑いのある患者を処置し、そして起こり得るブドウ球菌属(Staphylococcus) の感染を予防的に防止するために使用することができる。さらに、単離された免疫グロブリンは、患者の中に導入され、そしてブドウ球菌属(Staphylococcus) で感染しそしてブドウ球菌属(Staphylococcus) の感染を患者の中に導入するようになることが疑われる物体、物品、器具およびアプライアンスを予防的に処理するために使用することができる。
【0032】
本発明によれば、そして広くここに記載するように、本発明の第3の目的は、第1アッセイにおいて第1ブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の調製物と反応し、そして第2アッセイにおいて第2ブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の調製物と反応する抗体を発生する単離された抗原である。ここにおいて使用するとき、単離された抗原は、任意の単一の抗原、異なる抗原の混合物、あるいは1種または2種以上の異なるブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物から分離された抗原の任意の組み合わせを意味する。単離された抗原は直接製剤組成物、例えば、ブドウ球菌属(Staphylococcus) のワクチンとして、そして間接的にモノクローナルおよびポリクローナルの両者の抗体を発生し、人間および動物におけるブドウ球菌属(Staphylococcus) の感染を処置または予防するために使用することができる。
【0033】
本発明によれば、そして広くここに記載するように、本発明の第4の目的は、製剤組成物の生体内の効能を評価するための動物モデルの同定である。この動物モデルは、細菌、好ましくはブドウ球菌、しかしまたウイルス、寄生生物および真菌による感染に対する広範な種類の製剤の効能を試験するために広く適用することができる。それは製剤組成物、免疫抑制剤、および病原菌を未成熟動物に投与し、そして製剤組成物が動物の死亡率を減少するか、あるいは動物からの病原菌のクリアランスを増大するかどうかを評価することからなる。製剤組成物はここに記載するように単離された免疫グロブリンまたは単離された抗原であることができ、そして予防的にまたは治療的に投与することができる。
【0034】
本発明によれば、そして広くここに記載するように、本発明の第5の目的は、診断助剤、および試薬として単離された免疫グロブリン、単離された抗原またはブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の調製物を使用するブドウ球菌属(Staphylococcus) の感染を診断する方法からなる。
【0035】
これらの診断助剤を使用して、患者または他の試料から単離されたブドウ球菌の実験室のどの分離株が病原性であるかを同定することができる。さらに、これらの診断助剤を使用して、体液中の病原性ブドウ球菌に関連する抗原を同定することができるであろう。また、これらの試薬を使用して、生物学的試料中の製剤組成物を検出して、ここに記載する製剤組成物を包含する、特定の製剤組成物の実用性を分析する。さらに、これらの試薬は、また、ブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の生物学および実験室の設定における感染の過程を実験的に検査する道具として高度に有用である。
【0036】
本発明の他の目的および利点は、一部分以下の説明の中に記載され、そして一部分この説明から明らかであるか、あるいは本発明の実施から学ぶすることができる。添付図面および表は、この明細書の中に組み込まれかつその一部分を構成し、本発明の原理を例示し、そして、この説明と一緒に、それを説明する役目をする。
【0037】
[発明の実施の形態]
ここにおいて具体化しかつ広く説明する、目的を達成するためにかつ本発明の目的に従い、本発明は、ブドウ球菌属(Staphylococcus)の感染を予防し、診断し、あるいは処置するために有用な免疫グロブリンおよび抗原の同定、生産、および単離からなる。本発明は、さらに、ここに記載する免疫グロブリンおよび調製物の組成物を包含する、製剤組成物の効能を試験するための生体内の動物モデルからなる。
【0038】
本発明の1つの態様は、第1ブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の調製物と反応性の免疫グロブリンを同定するための第1アッセイを実施し、第2ブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の調製物と反応性の免疫グロブリンを同定するための第2アッセイを実施し、そして第1および第2の両者のブドウ球菌属(Staphylococcus)微生物からの調製物と反応性の免疫グロブリンを選択するステップからなる、ブドウ球菌属(Staphylococcus) の感染を処置するための免疫グロブリンを同定する方法である。
【0039】
免疫グロブリンは血漿、血清、全血、または組織、例えば、胎盤のプールしたまたは個々の試料から誘導することができる。免疫グロブリンの単離は必要ではないが、必要であると決定される場合、このような手順は当業者によく知られている。第1および第2のアッセイは任意の免疫学的アッセイであることができ、そして好ましくは結合アッセイ、オプソニン化アッセイ、クリアランスアッセイ、またはこれらのアッセイの任意の組み合わせである。好ましくは、第1および第2のブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物は異なる血清型または異なる種のものである。
【0040】
ブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の第1および第2の調製物は、完全な細胞、化学的または物理的手段により分画された細胞、または細胞抽出物を包含するブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の任意の抽出であることができ、そして好ましくは全細胞または細胞表面の抽出物である。1つの調製物は表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)(Hay, ATCC 55133)からのものであることが好ましい。ブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の調製物は、多糖類、タンパク質、脂質および他の細菌細胞の成分から構成される。
【0041】
調製物は多糖およびタンパク質調製物、すなわち、主として多糖類、タンパク質および糖タンパク質の混合物または組み合わせを含有する調製物であることが好ましい。適当な調製物は、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)(Hay, ATCC 55133)の細菌細胞の培養物を単離し、単離された細胞をトリクロロ酢酸の溶液から構成された混合物の中に懸濁させ、この混合物をほぼ4℃において撹拌し、この混合物を遠心し、そして生ずる上澄み液を残し、上澄み液をアルコール、好ましくは無水エタノールと組み合わせ、アルコール−上澄み液の組み合わせをほぼ4℃においてインキュベーションして調製物を沈澱させ、そして沈澱した調製物を単離することによって調製することができる。
【0042】
1つの好ましいアッセイは結合アッセイであり、ここで免疫グロブリンをブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の調製物と反応させる。結合アッセイは好ましくは酵素結合免疫収着アッセイ(ELISA)、またはラジオイムノアッセイ(RIA)であるが、また、凝集アッセイ、凝固アッセイ、比色アッセイ、蛍光結合アッセイ、または任意の他の適当な結合アッセイであることができる。それは結果を直接的または間接的に決定する競合的または非競合的方法により実施することができる。
【0043】
結合アッセイにおいて、ブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物を調製物の支持に適当な任意の表面であることができる固体の支持体に固定することができる。好ましくは、固体の支持体はガラスまたはプラスチックのプレート、ウェル、ビーズ、微小ビーズ、パドル、プロペラ、またはスティックであり、そして最も好ましくは滴定プレートである。固定した調製物を免疫グロブリンとインキュベーションし、前記免疫グロブリンは単離された状態であるか、あるいは生物学流体の中に存在することができ、そして結合量を決定する。
【0044】
観測された結合量が陰性の対照の結合量より大きいとき、陽性反応が起こる。陰性の対照は抗原特異的免疫グロブリンを含有しない試料である。陽性の結合は試料の陽性/陰性反応から、あるいは1系列の反応の計算から決定することができる。この系列は、固定された抗原に特異的に結合する免疫グロブリンを測定量で含有する試料を含み、未知試料中の抗原特異的免疫グロブリンの量を決定できる標準曲線をつくることができる。あるいは、このアッセイは、実質的に同一の方法において、固体の支持体に固定された抗体を使用して実施し、そして免疫グロブリンを固定された抗体に結合した調製物に保持されるその能力により同定することができる。
【0045】
他の好ましいアッセイは、比色アッセイ、ケミルミネセンスアッセイ、蛍光または放射線標識吸収アッセイ、細胞仲介殺菌アッセイ、あるいはある物質のオプソニンポテンシャルを測定する他の適当なアッセイであることができるオプソニン化アッセイである。オプソニン化アッセイにおいて、病原菌、真核生物の細胞、および試験すべきオプソニン化物質またはオプソニン化物質+オプソニン化を増強するとされている物質を一緒にインキュベーションする。最も好ましくは、オプソニン化アッセイは細胞仲介殺菌アッセイである。
【0046】
この生体外アッセイ、病原菌、典型的には細菌、食細胞およびオプソニン化物質、この場合において免疫グロブリンを一緒にインキュベーションする。食作用または結合能力をもつ真核生物の細胞を細胞仲介殺菌アッセイにおいて使用することができるが、マクロファージ、単球、好中球またはこれらの細胞の任意の組み合わせは好ましい。補体のタンパク質を含めて、古典的および別の両者の経路によりオプソニン化を観測することができる。
【0047】
インキュベーション後に残る病原菌の量または数から、免疫グロブリンのオプソニン能力を決定する。細胞仲介殺菌アッセイにおいて、このアッセイは一方のみアッセイがオプソニン化作用をもつとされる免疫グロブリンを含有する2つの同様なアッセイの間の生存する細菌の数を比較するか、あるいはインキュベーション前後の生存能力をもつ微生物の数を測定することによって達成される。
【0048】
免疫グロブリンの存在下のインキュベーション後の細菌の数の減少は、陽性のオプソニン活性を示す。細胞仲介殺菌アッセイにおいて、インキュベーション混合物を適当な細菌増殖条件下に培養することによって、陽性のオプソニン化を決定する。インキュベーション前後の試料または免疫グロブリンを含有する試料と含有しない試料との間の比較により、生存能力をもつ細菌の数の有意な減少は陽性の反応である。
【0049】
ブドウ球菌属(Staphylococcus) の感染の処置のための免疫グロブリンを同定する他の好ましい方法は、クリアランスアッセイを使用する。好ましくは、クリアランスアッセイは動物モデルにおいて実施される。とくに有用な動物モデルは、製剤組成物、免疫抑制剤、およびブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物を動物に投与し、そして製剤組成物が動物の死亡率を減少するか、あるいは動物からのブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物のクリアランスを増強するかどうかを評価するステップからなる。このアッセイはウサギ、モルモット、マウス、ラット、または任意の他の適当な実験動物を包含する未成熟の動物を使用することができる。ほ乳ラットは最も好ましい。
【0050】
免疫抑制剤はそれを投与する動物の免疫系を障害すう物質であり、そしてステロイド、抗炎症剤、プロスタグランジン、細胞免疫抑制剤、鉄、シリカ、粒子、ビーズ、脂質エマルジョンおよび任意の他の有効な免疫抑制剤から成る群より選択される。好ましくは、免疫抑制剤はシクロスポリン、デキサメタゾン、トリアムシノロン、コルチゾン、プレドニゾン、イブプロフェンまたは任意の他の関係する化合物または化合物の組み合わせである。より好ましくは、免疫抑制剤は脂質エマルジョンであり、そして選択の脂質エマルジョンは脂質内である。製剤組成物が免疫グロブリンであるとき、アッセイは投与された免疫グロブリンのクリアランスのポテンシャルを測定する。
【0051】
クリアランスは、製剤組成物が動物の病原菌のクリアランスを増強するかどうかを決定することによって評価される。これは典型的には生物学流体、例えば、血液、腹膜液、または脳脊髄液から決定される。病原菌は、生存する病原菌の増殖または同定に適当な方法で、生物学流体から培養される。処置後ある期間にわたって採った流体の試料から、当業者は病原菌をクリアーする動物の能力に対する製剤組成物の効果を決定することができる。
【0052】
しかしながら、それ以上のデータは、ある期間、例えば、日数の期間にわたって製剤組成物を投与した動物の生存率を測定することによって得ることができる。典型的には、両者の組のデータを利用する。製剤組成物がクリアランスを増強するか、あるいは死亡率を減少する場合、結果は陽性であると考える。微生物のクリアランスの増強が存在するが、被験動物がなお死亡する場合において、陽性の結果がなお示される。
【0053】
本発明の他の態様は、第1アッセイにおいて第1ブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の調製物と反応性であり、そして第2アッセイにおいて第2ブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の調製物と反応性である単離された免疫グロブリンである。第1および第2のアッセイは免疫学的アッセイであることができ、そして好ましくは結合アッセイ、オプソニン化アッセイ、クリアランスアッセイ、またはこれらのアッセイの任意の組み合わせである。第1および第2のブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物は異なる種であることができ、そして好ましくは表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) および黄色ブドウ球菌(S. aureus)である。
【0054】
あるいは、第1および第2のブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物は好ましくは異なる血清型であることができ、好ましくは表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)I型および表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) II型である。いずれの場合においても、ブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の調製物の1つは表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) (Hay, ATCC 55133)であることが最も好ましい。ブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の第1および第2の調製物は、完全な細胞、化学的または物理的手段により分画された細胞、または細胞抽出物を包含する任意のブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の調製物であることができ、そして好ましくは全細胞または細胞表面の抽出物である。
【0055】
1つの調製物は表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) (Hay, ATCC 55133)からのものであることが好ましい。ブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の調製物は、多糖類、タンパク質、脂質および他の細菌細胞の成分から構成される。調製物は多糖およびタンパク質調製物、すなわち、主として多糖類、タンパク質および糖タンパク質の混合物または組み合わせを含有する調製物であることが好ましい。
【0056】
適当な調製物は、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) (Hay, ATCC 55133)の細菌細胞の培養物を単離し、単離された細胞をトリクロロ酢酸の溶液から構成された混合物の中に懸濁させ、この混合物をほぼ4℃において撹拌し、この混合物を遠心し、そして生ずる上澄み液を残し、上澄み液をアルコール、好ましくは無水エタノールと組み合わせ、アルコール−上澄み液の組み合わせをほぼ4℃においてインキュベーションして調製物を沈澱させ、そして沈澱した調製物を単離することによって調製することができる。
【0057】
本発明の単離された免疫グロブリンは、血液、血漿、血清または組織、例えば、胎盤のプールしたまたは単一の単位から、あるいはそれらから誘導された免疫グロブリン調製物、例えば、単離された免疫グロブリン(IVIG)から単離することができる。これらの物質から免疫グロブリンを単離する方法は当業者によく知られている。簡単に述べると、1つの方法は、流体からすべての細胞および細胞破片を除去し、そして流体の免疫グロブリン部分をクロマトグラフィー、沈澱、または抽出のような方法により分画するステップからなる。これらの手順および他の手順の詳細は、Protein Purification : Principles and Practice (R. K. Scopes, Springer-Verlag 、ニューヨーク)(これを例として特別に引用によって加える)に記載されている。
【0058】
単離された免疫グロブリンは、IgG, IgM, IgA, IgD、またはIgEを包含する、任意のアイソタイプの1種または2種以上の抗体であることができる。単離された免疫グロブリンはポリクローナル抗体、最も好ましくはIgG 画分を包含する。単離された免疫グロブリンは、また、モノクローナル抗体、最も好ましくはIgG アイソタイプを包含する。抗体の特定の画分またはアイソタイプの同定および単離の手順はこの分野においてよく知られている。多数の方法は、例えば、Current Protocols in Immunology (J. E. Coliganら編、JohnWiley & Sons、ニューヨーク、1991)(これをここで特別に引用によって加える)に開示されている。本発明は、また、これらの抗体をつくる方法を包含する。
【0059】
ブドウ球菌属(Staphylococcus) の感染の処置のためのポリクローナル抗体をつくる方法は、ブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の調製物を哺乳動物の中に導入し、血清を哺乳動物から取り出し、そして第1アッセイにおいて第1ブドウ球菌属(Staphylococcus)微生物の調製物と反応し、そして第2アッセイにおいて第2ブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の調製物と反応するポリクローナル抗体を単離するステップからなる。第1および第2のアッセイは任意の免疫学的アッセイであることができ、そして好ましくは結合アッセイ、オプソニン化アッセイ、クリアランスアッセイ、またはこれらのアッセイの任意の組み合わせである。
【0060】
ブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の第1および第2の調製物は、完全な細胞、化学的または物理的手段により分画した細胞、または細胞抽出物を包含する任意のブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の調製物であることができ、そして好ましくは全細胞または細胞表面の抽出物である。哺乳動物の中に導入されるブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の調製物は、また、完全な細胞、化学的または物理的手段により分画した細胞、または細胞抽出物を包含する任意のブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の調製物であることができ、そして好ましくは全細胞または細胞表面の抽出物である。
【0061】
調製物は表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) (Hay, ATCC 55133)からのものであることが好ましい。ブドウ球菌属(Staphylococcus)微生物の調製物は、多糖類、タンパク質、脂質および他の細菌細胞の成分から構成される。調製物は多糖およびタンパク質調製物、すなわち、主として多糖類、タンパク質および糖タンパク質の混合物または組み合わせを含有する調製物であることが好ましい。
【0062】
適当な調製物は、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) (Hay, ATCC 55133)の細菌細胞の培養物を単離し、単離された細胞をトリクロロ酢酸の溶液から構成された混合物の中に懸濁させ、この混合物をほぼ4℃において撹拌し、この混合物を遠心し、そして生ずる上澄み液を残し、上澄み液をアルコール、好ましくは無水エタノールと組み合わせ、アルコール−上澄み液の組み合わせをほぼ4℃においてインキュベーションして調製物を沈澱させ、そして沈澱した調製物を単離することによって調製することができる。
【0063】
哺乳動物の中に導入されそしてポリクローナル抗体をつくるために使用されるブドウ球菌属(Staphylococcus) の調製物は、特異的および非特異的のアジュバントを含むことができる。非特異的アジュバントは、抗原に対する免疫応答を非特異的に刺激する物質であり、そしてフロインドアジュバント、水−油エマルジョン、界面活性剤、鉱油、合成ポリマー、水酸化アルミニウム、アクリルアミド、および他の適当な応答増強物質を包含する。特定のアジュバントは、抗体産生細胞により抗体の生産を増強する特定のTおよびB細胞の刺激因子を包含する。
【0064】
ブドウ球菌属(Staphylococcus) の感染の処置のためのモノクローナル抗体をつくる方法は、モノクローナル抗体を生産するハイブリドーマ細胞の発生からなる。このような方法はこの分野においてよく知られている。ある種の方法は、例えば、Antibodies : ALaboratory Manual (E. HarlowおよびD. Lane, Cold Spring HarborLab., 1988) (これを引用によって加える)に特別に記載されている。1つの方法は、抗体産生細胞を単離し、抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合してハイブリドーマ細胞を形成し、そして生ずるハイブリドーマ細胞を主張するモノクローナル抗体を生産する細胞についてスクリーニングすることからなる。
【0065】
単離された抗体産生細胞を、生体内でブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の注射、すなわち、感染により感作された細胞、ここにおいて記載したようなブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の調製物に生体内で暴露すること、すなわち、免疫化によって感作された細胞、生体外で細胞の直接暴露により感作された細胞、または任意の他の適当な手段により感作された細胞から成る群より選択される。単離された抗体産生細胞を骨髄腫細胞とこの分野においてよく知られている手順を使用して融合する。ポリエチレングリコールまたはエスパインバールウイルスを使用して融合法は好ましい。
【0066】
抗体産生細胞に対する骨髄腫細胞の融合相手は、ハイブリドーマ細胞の産生に適当な任意の細胞である。これは類似または非類似の遺伝学的起点をもつ骨髄腫細胞を包含する。例えば、いくつかの適当な骨髄腫細胞の融合相手はネズミ細胞系P3-X63Ag8, X63Ag. 653, SP2/0-Ag14, FO, NSI/1-Ag4-1, NSO/1 、およびFOX-NY、ラット細胞系Y3-Ag1. 2. 3, YB2/0 、およびIR983F、ヒト細胞U-266, FU-266 、およびHFB-1 である。宿主細胞は、融合により不死化され、融合細胞および未融合細胞の混合物から適当な選択技術、例えば、ハイポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT)選択を使用して、Monoclonal Antibodies : Principle and Practice (J. W. Goding, Academic Press、サンディエゴ、1986)(これを例示の目的でここに引用によって加える)開示されているように選択される。
【0067】
別の方法において、抗体産生細胞をサイトメガロウイルスまたは他の適当なウイルスを使用して不死化することができる。生ずるハイブリドーマ細胞、または別の方法で産生された細胞を、第1アッセイにおいて第1ブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の調製物と反応し、そして第2アッセイにおいて第2ブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の調製物と反応するモノクローナル抗体を産生する細胞についてスクリーニングする。第1および第2のアッセイは任意の免疫学的アッセイであることができ、そして好ましくは結合アッセイ、オプソニン化アッセイ、クリアランスアッセイ、またはこれらのアッセイの任意の組み合わせである。
【0068】
ブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の第1および第2の調製物は、完全な細胞、化学的または物理的手段により分画された細胞、または細胞抽出物を包含するブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の任意の調製物であることができ、そして好ましくは全細胞または細胞表面の抽出物である。ブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の第1および第2の調製物は異なる血清型または種のものであることが好ましく、そして第1ブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物が表皮ブドウ球菌属(Staphylococcus epidermidis)(Hay, ATCC 55133)であることがいっそう好ましい。
【0069】
本発明は、また、単離されたモノクローナル抗体をコードする遺伝子のDNA 配列を包含する。このDNA 配列は、すべてのこの分野においてよく知られている方法により、同定し、単離し、クローニングし、そして発現のために原核生物の細胞または真核生物の細胞に転移することができる。ある種の方法は、例えば、Current Protocolsin Molecular Biology (F. W. Ausubel ら編、John Wiley & Sons,1989) (これを特別に引用によって加える)に記載されている。
【0070】
IgG アイソタイプのモノクローナル抗体をIgG 産生ハイブリドーマ細胞の直接単離によるか、あるいは遺伝学的操作によりつくることが好ましい。モノクローナル抗体のアイソタイプの変更の1つの方法は、もとの抗体分子の抗原結合部位をコードするDNA 配列の同定を包含する。このDNA 配列を単離するか、あるいは化学的に合成しそして、また、単離するか、あるいは化学的に合成することができる異なる免疫グロブリン分子の構造的部分のDNA 配列に隣接してクローニングする。このクローンから発現された生ずる融合産生物は、もとの抗体の抗原結合能力および選択された新しい免疫グロブリン遺伝子の構造的部分、換言すると、新しいアイソタイプを有する。
【0071】
また、ヒトモノクローナル抗体をつくる方法である。純粋にヒトモノクローナル抗体は、ヒト抗体産生細胞およびヒト骨髄腫細胞の融合によりつくられる。部分的にヒトのモノクローナル抗体は、ヒト抗体産生細胞またはヒト骨髄腫細胞に対する非ヒト融合相手を利用することによってつくられる。非ヒトまたは部分的にヒトの抗体は、非ヒトハイブリドーマ細胞をヒト細胞と融合して、二重または三重(またはそれ以上)の遺伝学的起点をもつハイブリドーマを産生するキメラ化により、いっそうヒトとすることができる。あるいは、非ヒトまたは部分的にヒトの抗体は遺伝学的操作によりいっそうヒトとすることができる。
【0072】
典型的には、これは抗原結合部位のアミノ酸をエンコードするDNA のクローニングまたは化学的合成を必要とする。このDNA 配列を、異なる抗体またはアミノ酸配列の構造的部分をコードするDNA 配列に隣接してクローニングまたは配置する。この方法において、抗体分子の全体の抗原性構造を変化すると同時に、特定の抗原結合能力を保持することができる。ネズミ抗体は変更して、抗原的にいっそうヒトと見えるようにすることができる。これは可能な有害な免疫応答を減少または排除するために非常に有利である。
【0073】
さらに、他のタンパク質のDNA 配列に隣接して抗原結合部位のDNA 配列を配置することによって、発現された生ずる融合タンパク質は抗原的にターゲッティングされる。これは抗体、補体、または免疫学的因子をターゲッティングするためにことに有用である。本発明は、第1アッセイにおいて第1ブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の調製物と反応し、そして第2アッセイにおいて第2ブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の調製物と反応する抗体分子または他のタンパク質の構造的部分に取り付けられた抗原結合部位を包含する。
【0074】
本発明の他の態様は、ここにおいて記載したような単離された免疫グロブリン(ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を包含する)、および製剤学的に許容されうる担体からなる製剤組成物である。製剤学的に許容されうる担体は、無菌の液体、例えば、水および油であることができ、石油、動物、植物または合成由来のもの、例えば、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油などを包含する。製剤組成物を静脈内に投与するとき、水は好ましい担体である。生理食塩水および水性デキストロースおよびグリセロール溶液は、また、液状担体として、とくに注射可能な溶液のために使用することができる。適当な製剤組成物は、Remington's Pharmaceutical Science、第18版(A. Gennaro編、Mack Pub. 、イーストン、ペンシルベニア州)(これを例示の目的で特別に引用によって加える)に記載されている。
【0075】
本発明は、また、治療的に有効量の免疫グロブリン、ポリクローナル抗体、またはモノクローナル抗体、および製剤学的に許容されうる担体からなる製剤組成物を投与することからなる、ブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物で感染したか、あるいは感染していることが疑われる患者を処置する方法からなる。患者はヒトまたは動物、例えば、イヌ、ネコ、雌牛、ヒツジ、ブタ、ヤギ、および任意の適当な動物であることができるが、好ましくはヒトである。製剤学的に許容されうる担体はここに記載されている。
【0076】
治療的に許容されうる量は、ブドウ球菌属(Staphylococcus) の感染の処置において軽減または補助のいくつかの手段を提供すると合理的に信じられる免疫グロブリンの量である。このような治療は、ブドウ球菌属(Staphylococcus) の感染、異なる因子により引き起こされる感染、または無関係の疾患のための追加の処置、例えば、抗生物質の治療に対して主要であるか、あるいは補助的であることができる。
【0077】
本発明の他の態様は、予防的に有効量の、すべてがここに記載されている、免疫グロブリン、ポリクローナル抗体、またはモノクローナル抗体、および製剤学的に許容されうる担体からなる製剤組成物、受動的ワクチンを投与することからなる、ブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の感染を予防する方法である。この処置は全身的または局所的であることができる。全身的処置は、製剤組成物を静脈内、腹腔内、腔内、体内の注射の投与、あるいは予防的に有効量の投与に有効な方法からなる。あるいは、生理学的組成物を局所的に与えることができる。
【0078】
これは、また、感染した特定の領域への注射、例えば、筋肉内およびまた皮下注射によることができる。局在化された処置は、また、直接患者に、あるいは患者内に配置すべき物体、例えば、留置カテーテル、心臓弁、脳脊髄液シャント、関節プロテーゼ、体の中への他の移植片、およびブドウ球菌属(Staphylococcus) で感染するようになるか、あるいは患者の中にブドウ球菌属(Staphylococcus) の感染を導入する危険を有する他の物体、器具またはアプライアンスに、スワビング、浸漬、ソーキング、またはワイピングにより、予防的に有効量の免疫グロブリンを添加することからなる。
【0079】
本発明の他の態様は単離された抗原である。ここにおいて使用するとき、単離された抗原は単一の抗原、異なる抗原の混合物、または1または2以上の微生物から分離される抗原の組み合わせを意味する。単離された抗原は、タンパク質、多糖類、脂質、糖タンパク質、あるいは他の適当な抗原性物質から構成することができる。好ましくは、単離された抗原はタンパク質、多糖類および糖タンパク質を含有する。最も好ましくは、単離された抗原はタンパク質および糖タンパク質を含有する。また、単離された抗原は、タンパク質、多糖類、糖タンパク質または合成分子であることができる、単一の抗原あるいは小さい数の精製された抗原であることが最も好ましい。
【0080】
高分子の精製法は、濾過、分画、沈澱、クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、HPLC、FPLC、電気泳動、および他の適当な分離技術を包含する。タンパク質の精製法はこの分野においてよく知られている。好ましくは、単離された抗原は、ブドウ球菌属(Staphylococcus) の細菌細胞の培養物を単離し、単離された細胞をトリクロロ酢酸の溶液から構成された混合物の中に懸濁させ、この混合物をほぼ4℃において撹拌し、この混合物を遠心し、そして生ずる上澄み液を残し、上澄み液をアルコールと組み合わせ、アルコール−上澄み液の組み合わせをほぼ4℃においてインキュベーションし、そして沈澱した抗原を単離することからなる方法により精製される。
【0081】
利用する細菌細胞が表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)(Hay, ATCC 55133)である方法はより好ましい。例えば、ある数のタンパク質の精製法は、Poteins and Molecular Propeties (T. E.Creighton, W. H. Freeman and Co.、ニューヨーク、1984)(これを特別に引用によって加える)に記載されている。多糖類の多数の精製法はこの分野においてよく知られている。例えば、これらの方法のいくつかは、Carbohydrate Analysis : A Practical Approach、第2版(D. Rickwood 編、IRL Press, Oxford England, 1984)(これを特別に引用によって加える)に記載されている。
【0082】
合成抗原の同定、生産および表面の方法は、また、この分野においてよく知られている。例えば、ある数のこれらの方法は、Laboratory Techniquesin Biochemistry and Molecular Biology : Synthetic Polypeptidesas Antigens (R. H. Burden およびP. H. Knippenberg 編、Elsevier、ニューヨーク、1988)(これを特別に引用によって加える)に記載されている。
【0083】
単離された抗原は、宿主の中に導入すると、抗体を発生し、この抗体はポリクローナルまたはモノクローナルであることができ、第1アッセイにおいて第1ブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の調製物と反応し、そして第2アッセイにおいて第2ブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の調製物と反応する。ブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の第1および第2の調製物は、完全な細胞、化学的または物理的手段により分画された細胞、または細胞抽出物を包含するブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の任意の調製物であることができ、そして好ましくは全細胞または細胞表面の抽出物である。
【0084】
好ましくは、第1および第2のブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物は異なる血清型または種のものである。また、1つの調製物は表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) (Hay,ATCC 55133) からのもであることが好ましい。ブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の調製物は、多糖類、タンパク質、脂質および他の細菌細胞の成分から構成される。調製物は多糖およびタンパク質調製物、すなわち、主として多糖類、タンパク質および糖タンパク質の混合物または組み合わせを含有する調製物であることが好ましい。
【0085】
適当な調製物は、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)(Hay, ATCC 55133)の細菌細胞の培養物を単離し、単離された細胞をトリクロロ酢酸の溶液から構成された混合物の中に懸濁させ、この混合物をほぼ4℃において撹拌し、この混合物を遠心し、そして生ずる上澄み液を残し、上澄み液をアルコール、好ましくは無水エタノールと組み合わせ、アルコール−上澄み液の組み合わせをほぼ4℃においてインキュベーションして調製物を沈澱させ、そして沈澱した調製物を単離することによって調製することができる。
【0086】
第1および第2のアッセイは任意の免疫学的アッセイであることができ、そして好ましくは結合アッセイ、オプソニン化アッセイ、クリアランスアッセイ、またはこれらのアッセイの任意の組み合わせである。1つの好ましい方法はここに記載する結合アッセイを使用し、ここで単離された抗原発生した抗体を結合アッセイにおいてブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の調製物と反応させる。結合アッセイは好ましくはELISA 、またはRIA であるが、また、凝集アッセイ、凝固アッセイ、比色アッセイ、蛍光結合アッセイ、または任意の他の適当な結合アッセイであることができる。それは結果を直接的または間接的に決定する、競合的または非競合的方法により実施することができる。
【0087】
他の好ましい方法は生体外オプソニン化アッセイを使用し、このアッセイは比色アッセイ、ケミルミネセンスアッセイ、蛍光または放射線標識吸収アッセイ、細胞仲介殺菌アッセイ、あるいはある物質のオプソニンポテンシャルを測定する他の適当なアッセイであることができるオプソニン化アッセイである。好ましいオプソニン化アッセイは、ここに記載する細胞仲介殺菌アッセイである。オプソニン化アッセイは、単離された抗原が発生したポリクローナルまたはモノクローナルであることができる抗体を使用することができる。この場合において、このアッセイは発生した抗体のオプソニン活性を測定し、こうして単離された抗原のオプソニン化ポテンシャルの間接的決定を提供する。
【0088】
ブドウ球菌属(Staphylococcus) の感染の処置のための免疫グロブリンを同定する他の好ましい方法は、クリアランスアッセイを使用する。好ましいクリアランスアッセイは、ここに記載した動物モデルにおいて実施される。とくに有用な動物モデルは、製剤組成物、免疫抑制剤、およびブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物を未成熟動物に投与し、そして製剤組成物が動物の死亡率を減少するか、あるいは動物からのブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物のクリアランスを増強するかどうかを評価するステップからなる。
【0089】
製剤組成物は単離された抗原からなるか、あるいはポリクローナルまたはモノクローナルであることができる抗原発生抗体からなることができる。単離された抗原からなる製剤組成物を動物に投与するとき、このアッセイは動物自身の免疫系への単離された抗原の効果を測定する。発生した抗体からなる製剤組成物を投与するとき、このアッセイは投与された抗体の効果を測定する。このアッセイはウサギ、モルモット、マウス、ラット、または任意の適当な実験動物を使用することができる。ほ乳ラットはより好ましい。
【0090】
本発明の他の好ましい態様は、単離された抗原および製剤学的に許容されうる担体から構成されたワクチンであり、このワクチンは、宿主の中に導入されると、ブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物による感染に対して保護的である抗体を発生する。製剤学的に許容されうる担体はここに記載されている。単離された抗原はここに記載されており、そして任意の単一の抗原、異なる抗原の任意の混合物、あるいは1または2以上の異なる微生物から分離される抗原の任意の組み合わせである。
【0091】
ワクチン接種は、ブドウ球菌属(Staphylococcus) の感染に危険であることが知られているか、あるいは危険であることが疑われる個体に対してとくに有益であろう。これは皮膚または粘膜組織の破壊または損傷を含む手術を行うために準備された患者、ある種の健康管理の作業者、および免疫系が治療のある形態、例えば、癌の処置のための化学療法または放射線治療から障害されるようになることが期待される患者を包含する。
【0092】
本発明の他の態様は、この製剤組成物で処置する方法からなる。ブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物で感染されているか、あるいは感染していることが疑われるヒト、または動物を処置する方法は、治療的に有効量の製剤組成物の投与からなる。ヒト、または動物におけるブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の感染を予防する方法は、予防的に有効量の製剤組成物の投与からなる。いずれの場合においても、製剤組成物の投与は全体の個体に全身的に与えられた単一または多数の供与量を含むことができる。
【0093】
投与は注射、例えば、静脈内、腹腔内または皮下注射によることができる。製剤組成物の治療的または予防的投与の方法はこの分野において知られているか、あるいは合理的な程度の実験で決定することができる。ある数の例は、The Pharmaceutical Basis of Therapeutics、第8版(A. G. Goodman ら編、Pergamon Press、ニューヨーク、1990)(これを特別に引用によって加える)に記載されている。
【0094】
本発明のなお他の態様は、製剤組成物、免疫抑制剤、および病原菌を、好ましくはほ乳ラットである、未成熟の動物に添加し、そして製剤組成物が動物の死亡率を減少するか、あるいは動物からの病原菌のクリアランスを増強するステップからなる、病原菌を処置するために使用する製剤組成物の効能を評価する方法である。病原菌が細菌、好ましくはグラム陽性細菌、寄生生物、真菌およびウイルスから成る群より選択される。免疫抑制剤はそれを投与する動物の免疫系を障害するであろう物質であり、そしてステロイド、抗炎症剤、プロスタグランジン、細胞の免疫抑制剤、鉄、シリカ、粒子、ビーズ、脂質エマルジョンおよび任意の他の有効な免疫抑制剤から成る群より選択される。
【0095】
好ましくは、免疫抑制剤はシクロスポリン、デキサメタゾン、トリアムシノロン、コルチゾン、プレドニゾン、イブプロフェンまたは任意の他の関係する化合物または化合物の組み合わせである。より好ましくは、免疫抑制剤は脂質エマルジョンであり、そして選択する脂質エマルジョンは脂質内である。製剤組成物は好ましくは予防的に投与して病原菌に対する耐性を増強する製剤組成物の効能を評価するか、あるいは治療的に投与して病原菌を直接的に死滅させるか、あるいは感染をしりぞける感染した動物の免疫応答を増殖する製剤組成物の効能を評価する。
【0096】
本発明のなお他の態様は、ブドウ球菌属(Staphylococcus) の感染の検出する診断助剤および診断助剤を使用する方法である。診断助剤は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であることができる免疫グロブリン、または単離された抗原、および抗原またはブドウ球菌属(Staphylococcus) に対する抗体を含有するか、あるいは含有することが疑われる生物学流体の試料からなる。動物におけるブドウ球菌属(Staphylococcus) の感染を検出する方法は、ブドウ球菌属(Staphylococcus) に対して特異的な抗体を含有するか、あるいは含有することが疑われる生物学的試料を単離された抗原とともに添加し、そして単離された抗原への抗体の結合量を決定することからなる。
【0097】
あるいは、この方法はブドウ球菌属(Staphylococcus) の抗原を含有するか、あるいは含有することが疑われる生物学的試料、およびブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の調製物に対して特異的な免疫グロブリンからなる。免疫グロブリンはポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体からなるが、好ましくはモノクローナル抗体である。いずれの方法もELISA 、RIA 、比色アッセイ、凝集アッセイ、または任意の他の適当な検出アッセイであることができる。それは直接的または間接的検出法を使用する競合的または非競合的アッセイで実施することができる。このような方法の例は、Immunology : A Synthesis (E. S. Golub,Sinauer Assocs., Inc. 、サンダーランド、マサチュセッツ州、1987)(これを特別に引用によって加える)に開示されている。
【0098】
非限定的態様において、診断助剤は病原菌ブドウ球菌属(Staphylococcus) を同定するために使用することができる。ブドウ球菌属(Staphylococcus) は、コアグラーゼ試験に基づいて2つのグループに分けることができる(コアグラーゼ陰性、そのうちで表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis) は最も普通の病原体であり、そしてコアグラーゼ陽性、そのうちで黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は最も普通の病原体である)。実験室の分離株は、例えば、ヒト源、動物源、または他の源から微生物学的技術により単離された任意の微生物であることができる。実験室の分離株は、また、非病原性汚染物質を含有することができる。
【0099】
実験室において診断助剤を使用して、分離株中のブドウ球菌(Staphylococci)、とくにコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(Staphylococci)が病原性であるかどうかを決定することができる。アッセイを実施する前述の方法はこの態様において適用可能である。診断助剤を使用して、動物の体液中のブドウ球菌(Staphylococci)、およびそれらの抗原を同定することができる。非限定的態様において、コアグラーゼ陰性病原性ブドウ球菌(Staphylococci)と反応することができる診断助剤を使用して、体液中の病原性ブドウ球菌(Staphylococci)、またはそれらの抗原の存在を同定し、ここで体液は脳脊髄液、血液、腹膜液、および尿を包含するが、これらに限定されない。
【0100】
診断助剤は前述の方法に従い使用される。この診断助剤を使用する検出は、ブドウ球菌(Staphylococci)による実際のまたは疑われる急性または慢性の感染の場合において実施することができる。同様に、病原性ブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物からの抗原を使用して、血液および体液中の病原性微生物に対する抗体を検出することができる。
【0101】
本発明の他の目的は、生物学的試料中の製剤組成物を検出する方法である。製剤組成物が免疫グロブリンからなるとき、この方法は製剤組成物を含有する生物学的試料を単離された抗原とともに添加し、そして単離された抗原への製剤組成物の結合量を決定することからなる。あるいは、製剤組成物が単離された抗原からなるとき、この方法は製剤組成物を含有する生物学的試料を製剤組成物に対して特異的な抗体とともに添加し、そして抗体への製剤組成物の結合量を決定することからなる。これらの方法は、なかでも、特定の製剤組成物の半減期を検出し、分布を追跡し、そして破壊生成物を同定するために使用することができる。この情報を使用して、その製剤組成物を使用する処置の最良の過程を決定することによって、よりすぐれた管理を提供することができる。
【実施例】
【0102】
実施例1
本発明の1つの目的は、第1ブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の調製物および第2ブドウ球菌属(Staphylococcus) 微生物の調製物と反応性である免疫グロブリンの同定である。標準の静脈内免疫グロブリン(IVIG)のIgG 画分をこれらの実験において使用して、大きい免疫グロブリンのプールを準備する。いくつかの会社からのIgG の種々のプールの調製物を比較のために分析した(Gamimmune, Cutter Labs., Inc. 、バークレイ、カリフォルニア州;Sandoglobuin, Sandoz、イーストハノーバー、ニュージャージイ州;Gammagard, Hyland 、ロサンジェルス、カリフォルニア州;Polygam, American Red Cross 、ワシントンDC)。
【0103】
これらのプールの各々からの試料および個々の患者からの1つの試料(SAM)を、酵素イムノアッセイ、詳しくは酵素結合免疫収着アッセイ(ELISA)において表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) に対する結合について試験した。任意の表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)株を使用することができるが、これらの実験はHay 、すなわち、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) 敗血症の子供の血液からの臨床的分離株を使用した。この株はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)(ATCC)に受託され、そして番号55133 を与えられた。簡単に述べると、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) (Hay, ATCC 55133)の培養物を、トリプシン大豆ブロス(Difco Labs. 、デトロイト、ミシガン州)の1600mlのアリコート中で37℃において対数期(18〜36時間)に成長させた。
【0104】
この培養物を5000rpm で10分間遠心し、そして細胞ボタンを小さい体積(10〜25ml)の2%のトリクロロ酢酸(TCA)pH2.0 の中に再懸濁させた。このTCA 懸濁液を一緒にし、そして4℃で一夜撹拌した。次の日に、一緒にした懸濁液を5000rpm で10分間遠心し、上澄み液を吸引しそして取って置き、そして細胞ボタンを廃棄した。上澄み液を4体積の無水エタノールと一緒にし、そして4℃において一夜貯蔵した。この溶液を2500rpm で10分間遠心し、上澄み液を吸引し、そして廃棄し、そして抗原沈澱物を生理食塩水の中に再懸濁させ、そして培養して無菌性を確実にした。生理食塩水懸濁液を凍結乾燥し、そして4℃において貯蔵した。
【0105】
40mlの被覆緩衝液の中に1.0 mgの凍結乾燥した抽出物を溶解することによって、ELISA 試験のためのTCA 抗原を各血清型からつくった。被覆緩衝液は、1.59gのNa2CO3,2.93gのNaHCO3および0.2 gのNaN3を一緒にし、そして蒸留水を1000mlの最終体積に添加することによって調製した。この溶液をpH9.6 に調節した。抗原含有溶液の100 μlのアリコートを、各血清型のための別々のプレートを使用して、96ウェルのマイクロタイタープレートの各ウェルに添加した。プレートを4℃において一夜インキュベーションし、次いでウェルを空にし、そしてPBS-ツイーンで4回すすいだ。
【0106】
PBS-ツイーンは、8.0 gのNaCl,0.2 gのKH2PO4,2.9 gのNa2HPO4, 0.2gのKCl, 0.2gのNaN3、および0.5 mlのツイーン20を一緒にし、そして蒸留水を1000mlの最終体積に添加することによって調製した。この溶液をpH7.4 に調節した。免疫グロブリンの各プールからの100 μlの試料をウェルに添加した。抗血清を含有するプレートを4℃において2時間インキュベーションし、次いでそれらを再び空にし、そしてPBS-ツイーンで4回すすいだ。原アルカリ性ホスファターゼ接合ヤギ抗ウサギIgG(Sigma Chem. Co. 、セントルイス、ミゾリー州)の1/4000希釈物をPBS-ツイーン中で調製した。40μlのアリコートをマイクロタイタープレートの各ウェルに添加し、そしてプレートを4℃において2時間インキュベーションした。
【0107】
プレートを再び空にし、そしてPBS-ツイーンで4回すすいだ。リン酸p−ニトロフェニル(SigmaChem. Co. 、セントルイス、ミゾリー州)の1mg/mlの溶液をジエタノールアミン緩衝液中で調製し、そしてこの溶液の100 μlのアリコートをマイクロタイタープレートの各ウェルに添加した。ジエタノールアミン緩衝液は、97mlのジエタノールアミンおよび0.2 gのNaN3を一緒にし、そして蒸留水を1000mlの最終体積に添加することによって調製した。この溶液をpH9.8 に調節した。これらのプレートを37℃において2時間インキュベーションした。マルチスカン(Multiskan R ) MCC/340 器具(Flow Labs.、ルガノ、スイス国)を使用して、405 nmにおける吸収を測定した。
【0108】
【表1】

【0109】
表Iに示すように、試験したプールの結合活性において顕著な差が存在した。ほとんどの試料は低いレベルの表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) に対する抗体を含有した。興味あることには、最低の活性の1つをもつ試料(2801)および最高の活性をもつ試料(40R09)の両者は同一源(Cutter Laboratories)からのものである。より高い結合性のプールの中で、069 および40R09 は別々の会社から入手した。
【0110】
このデータが示すように、単一の免疫グロブリンの調製方法は、試験したプールの各々がヒト血清の非常に大きい収集を表すという事実にかかわらず、高い力価の表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) に対する抗体の存在を保証することができない。反応性抗体の含量の変動は、同一会社により調製された調製物の間でおよび同一調製ロットの間で起こり、すべての免疫グロブリンのプールは明確でありそして特定の同定可能な抗体の含量の差は顕著であることを示す。
【0111】
実施例2
第2の免疫グロブリン結合の研究において、ほとんど100 人のヒト患者からの血漿の不規則的試料をELISA においてスクリーニングした。表皮ブドウ球菌(S.epidermidis) の4つの異なる株に対する抗体力価を決定した。1つの株はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection) 米国マリイランド州ロックビレ)から入手した(ATCC 31423;血清型I)。
【0112】
他の2つ(血清型IIおよびIII )は聖マリアンナ医科大学(St.Marianna University School of Medicine、日本国)のY.イチマン博士により提供され、そして従来記載されたものであった(Y.Ichiman, J. Appl. Bacteriol. 56 : 311 (1984)) 。各々調製物は前述したように調製した。ELISA は前述したように実施したが、ただし40μlの各試料を使用した。第1図に示すように、有意な数の試料は臨床株、Hay (ATCC 55133)を包含する表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)の各株に対する抗体を含有した。このデータが示すように、結合において多くの変動性が存在したが、単一の試料内に交差反応性抗体が存在しうる。
【0113】
実施例3
図1の試料が表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) に対する多数の明確なかつ株特異的抗体を単に含有する可能性を除外するために、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) の加熱死滅全細胞のワクチンまたは表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) 調製物のTCA 調製ワクチンのいずれかで免疫化した。表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) のTCA 処理調製物は前述したように調製した。この調製物の1mgを1.0 mlの通常の生理食塩水中に溶解し、そしてニュージーランド白ウサギに筋肉内投与した。
【0114】
1週の休息後、第2の1.0 mlの投与量を与えた。1週後に与えた最終の投与量は一次免疫化の系列を完結した。免疫化の同一の第3(P3)、第4(P4)、または第5(P5)の過程を含めることができ、そして上のような追加の追加刺激の系列を使用して特定の抗体のレベルをさらに増加することができる。さらに追加刺激の免疫化を追加の間隔で与えた。
【0115】
全細菌細胞のワクチンは次のようにして調製した。トリプシン大豆ブロスに表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) (Hay, ATCC 55133)を接種し、そして37℃において3時間インキュベーションした。この調製物の20mlのアリコートを3000rpm において10分間遠心し、上澄み液を廃棄し、そして細胞のペレットを通常の生理食塩水の中に再懸濁させた。生理食塩水を使用する第2洗浄を反復遠心後に実施し、そして最終の懸濁液を生理食塩水中で調製して10mlの合計体積を得た。
【0116】
細菌を56℃に60分間加熱して加熱死滅全細胞のワクチンを生成し、これを培養して無菌性を保証した。この全細胞調製物の1ml(約109 細胞)をニュージーランド白ウサギに毎日5日間静脈内投与した。1週の休息後、ウサギを再び毎日5日間免疫化した。免疫化の同一の第3(P3)、第4(P4)、または第5(P5)の過程を含めることができ、そして上のような追加の追加刺激の系列を使用して特定の抗体のレベルをさらに増加することができる。さらに追加刺激の免疫化を追加の間隔で与えた。
【0117】
脾細胞の調製物を使用する免疫化後に得られた血清は表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) に対する抗体の顕著な増加を示したが、免疫応答の全体の大きさはTCA 抗原免疫化後に得られた血清において減少した(図2および図3)。しかしながら、TCA 処理血清および全細胞処理血清は、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) のすべての3つの血清型+ワクチン株に対する広く反応性の抗体を産生した。これらの動物を本来暴露した単一のみの株が存在し、そして免疫化前に結合の等しいバックグラウンドのレベルが存在したので、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) (Hay, ATCC 55133)の両者の調製物は多数の表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) 血清型と反応性の抗体を産生したことが明らかである。
【0118】
実施例4
すべての抗体は、所定の微生物に対して向けられた抗体であってさえ、免疫性を増強することができず、そして感染からの増強される保護を提供することができない。換言すると、抗原に結合する抗体オプソニン化または感染した動物からの抗原のクリアランスを必ずしもこと増強することができるとは限らない。したがって、好中球仲介細菌アッセイを使用して、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)に対する機能的活性を決定した。
【0119】
デキストラン沈降およびフィコール−ハイパーク(ficoll−hypaque)分別遠心により、好中球を大人の静脈血液から単離した。洗浄した好中球(ほぼ106 細胞/ウェル)をマイクロタイタープレートの丸底ウェルにほぼ3×104 の対数中期細菌(表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) Hay, ATCC 55133)とともに添加した。新生児のウサギ血清(10μl)を、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) に対する抗体の不存在を確実にするためにスクリーニングし、活性補体源として使用した。
【0120】
40μlの免疫グロブリン(または血清)を種々の希釈において添加し、そしてプレートを37℃において一定の激しく振盪でインキュベーションした。10μlの試料を各ウェルから0時間およびインキュベーション後2時間に取った。各々を希釈し、激しく撹拌して細菌を分散し、そして血液寒天プレート上で37℃において一夜培養して生存能力をもつ細菌の数を定量した。対照は好中球+補体単独から成っていた。結果を対照と比較して観測された細菌コロニーの数の減少%として表す。
【0121】
【表2】

【0122】
オプソニン活性はある試料で0%〜23%の間で変化し、そして他の試料で90%〜97%で変化した。結合アッセイにおいて観察されたように、使用した調製技術および観察された機能的活性の間に相関関係を見出すことができなかった。しかしながら、表Iにおいて高度の結合(光学密度>1.0 )を有した免疫グロブリンのあるものは、また、表IIにおいて高いレベルのオプソニン活性を有した(例えば、40R07, 40R09およびSAM)。
【0123】
換言すると、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)のTCA 処理調製物に結合した免疫グロブリンのあるもののみは表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) の食作用および死滅を促進した。こうして、最初に生体外スクリーニングアッセイを使用して、ブドウ球菌属(Staphylococcus) の感染を予防しかつ処置するために信頼性あるレベルの抗体をまた有する、高いレベルの表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) に対する抗体を含有する免疫グロブリンについて選択することができた。
【0124】
実施例5
S.エピダーミジスに対するオプソニン抗体が血清型特異性S.エピダーミジス抗原に対して特異的であるか、又はそれらが共通のスタフィロコッカス抗原に特異的であるかを決定することは重要である。これらの択一性を調査するため、特定の高力価イムノグロブリンをS.エピダーミジスの調製品(Hay, ATCC 55133)に事前吸着させ、次いで3種のグラム陽性球菌に対するオプソニン活性について検査した。吸着細菌を血液寒天プレートの上で一夜増殖させ、プレートからかき取り、正常食塩水の中に懸濁し、そして0.5 mlのマクロフューズチューブの中でそのチューブの容量の1/5にまでペレット化した。
【0125】
それぞれに0.4 mlのイムノグロブリンを添加した後、それらのチューブをボルテックスに付し、そしてエンドオーバーエンドタンブラー(Fisher Scientific Co., Pittsuburgh, Pa) 上で低速で、4℃でローテートした。翌日、細菌をマクロフューズチューブの中で沈降させ、そしてその上清液を取出し、次いで0.2 μmの膜フィルターで濾過した。その細菌イムノグロブリンは検出可能なS.エピダーミジス結合性抗体を含まず、従って直ちに、又は70℃で保存した後に使用した。
【0126】
特定の高力価イムノグロブリン(特異的イムノグロブリン)は2種のスタフィロコッカスのオプソニン化を示し、そしてその一方の種のストレプトコッカスを検査した(図4)。S.エピダーミジスの調製品を事前吸着された特定のイムノグロブリンに関して、S.エピダーミジスに対するオプソニン活性は完全に排除されていた(95%〜0%の殺菌活性)。しかしながら、別の属であるストレプトコッカス アガラクチエ(Streptococcus agalactiae) は減少しなかった(93%〜94%)。
【0127】
驚くべきことに、S.アウレウス(Walter Reed Army Medical Center のDr. Mendiolaの好意により提供)のオプソニン活性(これはS.エピダーミジスに対する抗体活性のほぼ半分のレベルの特定イムノグロブリンにおいて存在)は下がり、これもS.エピダーミジスとS.アウレウスにより共有される抗原に対する抗体であることを示唆する。
【0128】
従って、この特定のイムノグロブリン調製品は、S.エピダーミジスの吸着により同定されうる共通の抗−スタフィロコッカス抗体によってオプソニン化を助長する。抗体抜きでは、どの細菌に対しても殺菌活性は示されなかった(好中球と補体単独)。従って、抗−スタフィロコッカス抗体は、S.エピダーミジスに対する特異的な防御及びその他のスタフィロコッカス血清型及び種に対する広域防御を供しうる、重要なスタフィロコッカス抗原に対して特異的であった。
【0129】
実施例6
TCA 処理した及び全血調製品で免疫したウサギ由来の血清のオプソニン活性を決定した。ウサギを、S.エピダーミジス(Hay, ATCC55133)のTCA 処置した又は全血調製品のいづれかで免疫した。前述の通りに血清を回収し、そして好中球媒介型殺菌アッセイにおいて、S.エピダーミジスの3種の血清型株とワクチン株に対するオプソニン化活性について検査した。
【0130】
図5及び6に示す通り、TCA 処置及び全血調製品の両者は3種の血清型全てに対して非常に高いオプソニン活性を有する抗体応答を誘発した。TCA 処置調製品を用いて事前ワクチン化した血清は血清型Iに対して若干の活性を示したが(図5)、オプソニン活性は接種後ほぼ2倍となり、スタフィロコッカスの共通抗体が事前上原因となっていることを示唆する。これらのデーターは、S.エピダーミジス莢膜抗原に対する抗体が免疫性にとって重要であり、そして1又は数種の抗原が種々の血清型間で抗原性的に類似しうることを示す。
【0131】
実施例7
ワクチン化ウサギ血清のオプソニン活性を、試験細菌としてS.アウレウス タイプ5を用いて再度決定した(図7)。S.アウレウスに対する全体的なオプソニン活性はS.エピダーミジスの株に対して認められた活性ほど高くなかったが、免疫動物由来の血清サンプルはワクチンしていないサンプルに比して有意な活性を供した。このデーターは、S.エピダーミジスに対するオプソニン抗体がS.アウレウスに対しても防御的であることを示唆し、更にこれらの抗体が1又は数種のスタフィロコッカス共通抗原に対して特異的でありうることを再び示唆する。
【0132】
実施例8
数多くの細菌、例えばS.エピダーミジスは正常なヒトにおける病原体ではない。しかしながら未熟な免疫系を有する幼児及び損傷した免疫系を有する個体においては、S.エピダーミジスは敗血症、そして死の原因となりうる。従って、任意の敗血症動物モデルにおいて、これらの原因を含ませることは重要である。未熟な免疫系を有する動物を利用し、そしてその動物を免疫抑制にかけることにより、敗血症ヒト患者について認められる状況が研究できることがわかっている。これらの研究にとって授乳ラットモデルが最も有効であることが実証されており、従って好適な動物モデルである。S.エピダーミジスを注射した正常な赤ん坊のラットは2時間以内に菌血症にかかり、そしてその直後に感染症をゆっくりと排除し始める。
【0133】
【表3】

【0134】
動物は全て感染後72時間以内に菌血症を排除し(表III )、正常な環境のもとで、損傷は受けてはいるが新生児免疫が事実上S.エピダーミジスをコントロールできることを示唆している。しかしながら、産まれた直後のS.エピダーミジスで感染されたラットにおける一部の研究は、致死的な感染症が未だ発症しうることを示した(データーは示さない)。
【0135】
実施例9
授乳ラットにおけるS.エピダーミジス死に対するイントラリピッド効果をアッセイした。Wistarラットにイントラピリッド、免疫抑制剤を生後直ちに注射した。動物にイントラリピッドを生後2日目から投与した。2日間にわたり1日2回投与した。イントラリピッドの最後の投与と共に、動物に一定の特定のイムノグロブリン及び食塩水も付与した。この最後の投与の後、それらの動物にS.エピダーミジス(Hay, ATCC 55133)の調製品を皮下注射により感染せしめた。血液サンプルをプレート上に継代培養し、スタフィロコッカスにより菌血症が生じたかどうかを確認及び治療後の排除を追った。全ての動物を、生存性を調べるために5日間追跡した。
【0136】
【表4】

【0137】
S.エピダーミジスのみを受容した動物は有効に感染症に打ち勝ち、そして生存した。感染前にイントラリピッドで処置した動物のみS.エピダーミジスに耐えるその能力の著しい低下を示した。増大した頻度で死が起こり、これはイントラリピッドの増大する投与量に相関した。
【0138】
実施例10
S.エピダーミジス(Hay, ATCC 55133)の致死感染症に対する防御を供するうえでの特定の高力価(特異的)イムノグロブリンの効果を授乳ラットモデルにおいて決定した。生後2日目のWistarラットに20%のイントラリピッドの腹腔膜内注射0.2 mlを2回付与した。翌日、動物に再び同一の一連の20%のイントラリピッドと、ワクチン済動物由来のイムノグロブリン又は血清の注射を施した。最後の注射の後、約5×107 の細胞のS.エピダーミジス(Hay, ATCC55133)を尾のねもとに皮下注射した。死を5日間にわたって調べた。
【0139】
【表5】

【0140】
S.エピダーミジス(lot No. 40R09)の調製品に結合又はオプソニン化する能力について選んだ特異的なイムノグロブリンは、免疫損傷動物モデルにおいて致死感染症からの完全防御を供した。それらの結果は未感染動物から得た結果と同じである。選択していない低力価イムノグロブリン(いわゆる標準イムノグロブリン)は20%の死亡率を示し、そして他のコントロールは予測通りであった。未処置及び未感染動物は50%以上の死亡率を有していた。第二の類似の実験においては、特異的な高力価イムノグロブリン及びワクチン誘発高力価ウサギ血清(共に強く防御性である)はほぼ同じ結果を示し、一方食塩水コントロールは40%以上の死亡率を有していた。全体的に、これらのデーターは、S.エピダーミジスに対して特異的な抗体が授乳ラットモデルにおいて防御性である事実を示唆する。
【0141】
実施例11
ELISA アッセイにおいてS.エピダーミジスの調製品に結合し、そして細胞媒介殺菌アッセイ(特異的イムノグロブリン)においてS.エピダーミジス生物をオプソニン化するイムノグロブリンを、授乳ラットモデルにおいてS.エピダーミジスの排除を助長するその能力について試験した。一定間隔で血液サンプルを感染動物から採取した(図8)。ELISA 又はオプソニンアッセイにおいて事前に同定された特異的なイムノグロブリンのみ処置にわたって経時的に細菌のレベルを下げ、そしてこれらの動物が表Vにおいて上昇生存率を示した。S.エピダーミジスの調製品をオプソニン化しない又はそれに結合しないイムノグロブリンは感染動物の血液からの細菌の排除を助長しなかった。
【0142】
実施例12
S.エピダーミジスに対する抗体を、授乳ラット排除アッセイにおいて、S.エピダーミジスの国際幾何学分類グループに対する防御性を供する能力について分析した(図9)。特異的なイムノグロブリンは米国株(ATCC 55133) 、プロトタイプ研究室株(ATCC31423 、莢膜血清型I)及び2種の日本株(莢膜血清型II及びIII )に対する生存率を高めた。
【0143】
S.エピダーミジスの調製品に対して事前吸着させておいた特異的なイムノグロブリンは生存率の上昇を示さなかった(図10)。この研究にわたって経時的に採取した血液サンプルからの細菌測定数は、特異的なイムノグロブリンがスタフィロコッカス菌血症を迅速に排除することを示した。食塩水又は事前吸着済イムノグロブリンで処置したラットは存続の菌血症及び増大死亡率を有した(図11)。
【0144】
生存率が抗体の機能的な抗−スタフィロコッカス活性に関係するかどうかを決定するため、様々なレベルのS.エピダーミジスに対するオプソニン食作用殺菌活性を有するイムノグロブリン調製品(特異的なイムノグロブリン)を食塩水及び事前吸着イムノグロブリン(これらはS.エピダーミジスに対する殺菌活性を有さない)と比較した。有意な関係が、抗体のオプソニン食作用殺菌活性とスタフィロコッカス敗血症における生存率との間で認められた(図12)。食塩水、標準イムノグロブリン及び事前吸着特異的イムノグロブリンは類似の劣った防御性を供したが(それぞれわずかに、又はオプソニン食作用殺菌抗体を全く有さない)、未吸着の特異的なイムノグロブリンは一慣した良好な生存率を供し、オプソニン抗−スタフィロコッカス抗体の存在が生存率に関係することを示唆した。
【0145】
実施例13
これまでの報告は、多数のS.エピダーミジス血清型があることを示唆する。更に、S.エピダーミジスの他に多数のコアギュラーゼ陰性スタフィロコッカスがある。広域反応性抗体が最も有効となるには、全ての病原性コアギュラーゼ陰性スタフィロコッカスを理想的にカバーするべきである。しかしながら、数多くのコアギュラーゼ陰性スタフィロコッカスはめったにヒトに感染症を及ぼすことはない。従って、広域反応性抗体が全ての病原性コアギュラーゼ陰性細菌に結合可能であるかどうかを知ることは重要であろう。
【0146】
ウサギを3種のS.エピダーミジス株(ATCC-31432, S.エピダーミジス360 及びS.エピダーミジス10)のうちの1つのスタフィロコッカスで免疫した。S.エピダーミジス360 はHay のタイプの株(ATCC 55133) と同じ血清型である。この抗血清は下記のようにして同定した:抗−Iを株ATCC 31432に対して発生させた;抗−IIを株S.エピダーミジス360 に対して発生させた;そして抗−III を株S.エピダーミジス10に対して発生させた。
【0147】
患者から単離したコアギュラーゼ陰性スタフィロコッカスを種形成させ、そして患者において正常無菌部位から≧2の陽性培養物があるなら病原体として特定した(培養物は種々の時間において又は種々の部位から得た)。次にこれらの培養物をELISA アッセイにおいてウサギ抗血清(抗−I、抗−II及び抗−III )と反応させた。
【0148】
ELISA アッセイ
ELISA プレートの用意。S.エピダーミジス抽出抗原の100 λアリコートを96穴マイクロアッセイプレート(Nunclon (商標、Nunc,Demark) のウェルに加え、そしてこれらを4℃で一夜保存した。ウェル使用前にツイーン(0.5 mlのツイーン20/1lの脱イオン水)で緩やかに洗った。
【0149】
抗血清の用意
抗−I、抗−II及び抗III と称したウサギ抗血清をFischer G. W. ら、J. Exper. Med. 148 : 776-786 (1978) の一般方法に従って作った。抗血清調製品を次に使用前にPBS-ツイーンの中で100 倍に希釈した。更に、系列希釈をPBS-ツイーンで同様に行った。このウサギ抗血清(抗−I、抗−II、抗−III )を更に、2種の異種株との吸着により調製して、これらの株のうちの一方に特異的でない一般のスタフィロコッカス抗体を除去した。
【0150】
抗体反応性の分析。マイクロアッセイプレートを、複数の希釈率(1/100 〜1/12800)の抗血清40λを用いて用意した。抗血清をマイクロアッセイプレートの適当なウェルに加えた。正常食塩水をコントロールとして用い、そして同様に希釈した。プレートを4℃で2時間インキュベートした。アルカリホスファターゼ−コンジュゲート化ヤギ抗−ウサギIgG (Sigma, St. Louis, MO)をPBS-ツイーンで1/400 の希釈率に用意した。この調製品40λを次に適当な行の各ウェルに加えた。PBS-ツイーン単独を一本のウェル行に加えた。再びプレートを4℃で2時間インキュベートした。
【0151】
4−ニトロフェニルホスフェートを酵素反応のための基質として用い、そしてこれは5mgの基質錠剤(104 錠のホスフェート基質錠剤、Sigma)を5mlの10%のジエタノールアミンバッファー(下記参照)の中に溶かした。この基質調製品100 λを、37℃でのインキュベーションの後適宜各ウェルに加え、そして吸収をTiter tek (商標)MultiskanMCC/340 装置(Flow Laboratories, Lugano, Switzerland) を用いて120 分にて405 nmで測定した。試薬の用意。Voller, D.らBull. W. H. O. 53 : 55-64 (1976)の方法からのバッファーの用意。
【0152】
【表6】

【0153】
これらの研究の結果を表VIに示す。ヒト病原体として、S.エピダーミジスの他に3種のコアギュラーゼ陰性スタフィロコッカスが同定された。各3つの病原スタフィロコッカスは、単一のS.エピダーミジス株(S.エピダーミジス360)による免疫後に得られたウサギ抗血清と反応した。この抗血清に他の2種のS.エピダーミジス株(この抗血清でなく別の抗血清を作るのに使用したもの)を吸着させることは、単一のS.エピダーミジス株により誘発されるスタフィロコッカス−反応性抗体を除去しなかった。しかしながら、その他の株に対して発生させた抗血清はS.エピダーミジス360 による吸着後にどの病原株とも反応しなかった。更に、S.エピダーミジス Hay (ATCC 55133)は広域に反応性抗血清と反応し、この生物由来の抗原が広域反応性抗血清における抗体と結合することを示した。
【0154】
Ichiman とYoshida はS.エピダーミジスを3つの血清型に分類した(J. Appl. Bacteriol. 51 : 229 (1981))。しかしながら、彼らはマウス毒性検査を利用して病原が任意の特定の1又は数種の株に関連することを実証することはできなかった(Ichiman, J. Appl.Bacteriol. 56 : 311 (1984)) 。本例において示す、全ての病原性ヒトコアギュラーゼ陰性スタフィロコッカスが、他の2種の株ではなくて単一のS.エピダーミジス株による免疫によって誘引された抗体と反応することを示す結果は新たな所見である。
【0155】
免疫性S.エピダーミジス株及びS.エピダーミジス Hay (ATCC55133)は共に、全てのヒト病原体が反応する抗血清と反応する。その結果は、ヒト病原体の表層上の抗原と、免疫性株及びS.エピダーミジス Hay (ATCC 55133)の表層上の抗原とが類似していることを明らかに実証する。従って、適当な構成を有する単一S.エピダーミジス(例えば、S.エピダーミジス Hay (ATCC 55133))に対する抗体は、コアギュラーゼ陰性スタフィロコッカスに対して広域防御性を授けることができる。更に、これらの抗原決定基に対して発生せしめた抗体は研究室単離物における病原性と非病原性スタフィロコッカスとを区別するのに有用である。これらの抗体は、哺乳動物体液、例えば脳脊髄流体、血液、腹腔流体及び尿の中の病原性スタフィロコッカス及びその抗原、又はそれらに特異的な抗体を検出するのに利用もできうる。
【0156】
【表7】

【0157】
本発明の他の態様及び使用は、本明細書に開示される本発明の詳細及び実施の考慮から当業者に明らかであろう。その詳細及び例は単に例示的であって、本発明の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】図1は、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) の血清型I,II,III 、およびHay に対する結合について試験したヒト血漿の抗体力価を示す。
【図2】図2は、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) の血清型I,II,III 、およびHay に対する結合について試験した表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) (Hay, ATCC 55133)のTCA 調製した調製物で免疫化したウサギからの血清の免疫化前および免疫化後のELISA 力価を示す。
【図3】図3は、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) の血清型I,II,III 、およびHay に対する結合について試験した表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) (Hay, ATCC 55133)の全細胞調製物で免疫化したウサギからの血清の免疫化前および免疫化後のELISA 力価を示す。
【図4】図4は、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) の調製物に対して結合する能力について選択した免疫グロブリン、および表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) の調製物で前吸収した選択した免疫グロブリンを使用する、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) 、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、およびストレプトコッカス・アガラクチアエ(Streptococcusagalactiae) 微生物の好中球仲介オプソニン化。陰性の対照は好中球+補体単独である。
【図5】図5は、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) の血清型I,II,III 、およびHay に対する結合について試験した表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) (Hay, ATCC 55133)のTCA 調製した調製物で免疫化前および免疫化後のウサギの血清の殺菌応答%として測定したオプソニン活性を示す。
【図6】図6は、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) の血清型I,II,III 、およびHay に対する結合について試験した表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) (Hay, ATCC 55133)の全細胞調製物で免疫化前および免疫化後のウサギの血清の殺菌応答%として測定してオプソニン活性を示す。
【図7】図7は、黄色ブドウ球菌(S. aureus)5型に対する表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) (Hay, ATCC 55133)のTCA 調製または全細胞調製物で免疫化前または免疫化後の血清のオプソニン活性を示す。オプソニンアッセイは、固体寒天上への継代培養前の反応混合物の2希釈物を使用して計算した。
【図8】図8は、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) の調製物に結合する能力について選択した高い力価の免疫グロブリン、あるいは未選択の低い力価の免疫グロブリンで処置したほ乳ラットからの血液の試料中の表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) の菌血症のレベルを示す。
【図9】図9は、脂質内+表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) で処置したほ乳ラットにおける生存率に対する定方向(directed)(選択した高い力価の)免疫グロブリンおよび生理食塩水の注射の効果を示す。
【図10】図10は、脂質内+表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) で処置したほ乳ラットにおける生存率に対する定方向(選択した高い力価の)免疫グロブリン、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) の調製物で前吸収した定方向免疫グロブリン、および生理食塩水の注射の効果を示す。
【図11】図11は、脂質内+表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) で処置したほ乳ラットの血液中の菌血症のレベル対する定方向(選択した高い力価の)免疫グロブリン、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) の調製物で前吸収した定方向免疫グロブリン、および生理食塩水の注射の効果を示す。
【図12】図12は、定方向(選択した高い力価の)免疫グロブリン、非選択の低い力価の免疫グロブリン、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis) の調製物で前吸収した定方向免疫グロブリン、および生理食塩水を使用する、生体外で測定したオプソニン活性とほ乳ラットのモデルにおける生存率との間の関係を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタフィロコーカス感染の処理のための免疫グロブリンの同定方法であって:
a)第1のスタフィロコーカス生物の調製物と反応性である免疫グロブリンを同定するための第1アッセイを行ない、
b)第2のスタフィロコーカス生物の調製物と反応性である免疫グロブリンを同定するための第2アッセイを行ない、そして
c)前記第1及び第2のスタフィロコーカス生物からの調製物と反応性である免疫グロブリンを選択する段階を含んで成る方法。
【請求項2】
個々のアッセイが結合アッセイである請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項3】
前記第1のスタフィロコーカス生物がスタフィロコーカス エピダーミジス(ATCC 55133) である請求の範囲第2項記載の方法。
【請求項4】
前記スタフィロコーカス エピダーミジス(ATCC 55133) 調製物が
a)スタフィロコーカス エピダーミジス(ATCC 55133) の細菌細胞の培養物を単離し、
b)トリクロロ酢酸の溶液から成る混合物に前記単離した細胞を懸濁し、
c)前記混合物を約4℃で撹拌し;
d)前記混合物を遠心分離し、そしてその得られた上清液を保存し;
e)前記上清液とアルコールとを組合し、
f)前記アルコール−上清液の組合せを、調製物を沈殿せしめるために約4℃でインキュベートし、そして
g)その沈殿せしめられた調製物を単離する段階を含んで成る方法により調製される請求の範囲第3項記載の方法。
【請求項5】
個々のアッセイがオプソニン化アッセイである請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項6】
前記オプソニン化アッセイが細胞介在殺菌アッセイである請求の範囲第5項記載の方法。
【請求項7】
個々のアッセイがクリアランスアッセイである請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項8】
前記クリアランスアッセイが、
a)未熟な動物に免疫グロブリン、免疫抑制剤及びスタフィロコーカス生物を投与し、そして
b)前記免疫グロブリンが動物の死亡率を減じるか、又は動物からのスタフィロコーカス生物のクリアランスを増強するかどうかを評価する段階を含んで成る請求の範囲第7項記載の方法。
【請求項9】
前記第1及び第2のスタフィロコーカス生物が異なった血清型のものである請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項10】
前記第1及び第2のスタフィロコーカス生物が異なった種のものである請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項11】
第1のアッセイにおいて第1のスタフィロコーカス生物の調製物と反応し、そして第2のアッセイにおいて第2のスタフィロコーカス生物の調製物と反応する単離された免疫グロブリン。
【請求項12】
個々のアッセイが結合アッセイである請求の範囲第11項記載の単離された免疫グロブリン。
【請求項13】
前記第1のスタフィロコーカス生物がスタフィロコーカスエピダーミジス(ATCC 55133) である請求の範囲第12項記載の単離された免疫グロブリン。
【請求項14】
前記スタフィロコーカス エピダーミジス(ATCC 55133) の調製物が
a)スタフィロコーカス エピダーミジス(ATCC 55133) の細菌細胞の培養物を単離し、
b)トリクロロ酢酸の溶液から成る混合物に前記単離した細胞を懸濁し、
c)前記混合物を約4℃で撹拌し;
d)前記混合物を遠心分離し、そしてその得られた上清液を保存し;
e)前記上清液とアルコールとを組合し、
f)前記アルコール−上清液の組合せを、調製物を沈殿せしめるために約4℃でインキュベートし、そして
g)その沈殿せしめられた調製物を単離する段階を含んで成る方法により調製される請求の範囲第13項記載の単離された免疫グロブリン。
【請求項15】
個々のアッセイがオプソニン化アッセイである請求の範囲第11項記載の単離された免疫グロブリン。
【請求項16】
前記オプソニン化アッセイが細胞介在殺菌アッセイである請求の範囲第15項記載の単離された免疫グロブリン。
【請求項17】
個々のアッセイがクリアランスアッセイである請求の範囲第11項記載の単離された免疫グロブリン。
【請求項18】
前記クリアランスアッセイが、
a)未熟な動物に免疫グロブリン、免疫抑制剤及びスタフィロコーカス生物を投与し、そして
b)前記免疫グロブリンが動物の死亡率を減じるか、又は動物からのスタフィロコーカス生物のクリアランスを増強するかどうかを評価する段階を含んで成る請求の範囲第17項記載の単離された免疫グロブリン。
【請求項19】
前記第1及び第2のスタフィロコーカス生物が異なった血清型のものである請求の範囲第11項記載の単離された免疫グロブリン。
【請求項20】
前記第1及び第2のスタフィロコーカス生物が異なった種のものである請求の範囲第11項記載の単離された免疫グロブリン。
【請求項21】
ポリクローナル抗体を含んで成る請求の範囲第11項記載の単離された免疫グロブリン。
【請求項22】
ポリクローナル抗体のIgG 画分を含んで成る請求の範囲第21項記載の単離された免疫グロブリン。
【請求項23】
モノクローナル抗体を含んで成る請求の範囲第11項記載の単離された免疫グロブリン。
【請求項24】
IgG イソタイプのモノクローナル抗体を含んで成る請求の範囲第23項記載の単離された免疫グロブリン。
【請求項25】
前記免疫グロブリンが異なった種の病原性スタフィロコーカス生物と反応する請求の範囲第11項記載の単離された免疫グロブリン。
【請求項26】
前記スタフィロコーカス生物が凝集酵素陰性である請求の範囲第25項記載の単離された免疫グロブリン。
【請求項27】
a)請求の範囲第11項記載の単離された免疫グロブリン、及び
b)医薬的に許容できるキャリヤーを含んで成る医薬組成物。
【請求項28】
請求の範囲第27項記載の医薬組成物の治療的有効量の投与を含んで成る、スタフィロコーカス生物により感染された又は感染していると凝わしいヒトを処理するための方法。
【請求項29】
請求の範囲第27項記載の医薬組成物の予防的有効量の投与を含んで成る、ヒトにおけるスタフィロコーカス生物の感染を予防するための方法。
【請求項30】
スタフィロコーカス感染の処理のためのポリクローナル抗体を製造するための方法であって、
a)スタフィロコーカス生物の調製物を哺乳類に導入し、
b)前記哺乳類から血清を除き、そして
c)第1のアッセイにおいて第1のスタフィロコーカス生物の調製物と反応し、そして第2のアッセイにおいて第2のスタフィロコーカス生物の調製物と反応するポリクローナル抗体を単離する段階を含んで成る方法。
【請求項31】
スタフィロコーカス感染の処理のためのモノクローナル抗体を製造するための方法であって、
a)抗体産生細胞を単離し、
b)ハイブリドーマ細胞を形成するために前記抗体産生細胞と骨髄腫細胞とを融合し、そして
c)第1のアッセイにおいて第1のスタフィロコーカス生物の調製物と反応し、そして第2のアッセイにおいて第2のスタフィロコーカス生物の調製物と反応するモノクローナル抗体を生成する細胞について前記得られたハイブリドーマ細胞をスクリーニングする段階を含んで成る方法。
【請求項32】
第1のアッセイにおいて第1のスタフィロコーカス生物の調製物と反応し、そして第2のアッセイにおいて第2のスタフィロコーカス生物の調製物と反応する抗体を、宿主中への導入に基づいて生成する単離された抗原。
【請求項33】
a)スタフィロコーカスの細菌細胞の培養物を単離し、
b)トリクロロ酢酸の溶液から成る混合物に前記単離した細胞を懸濁し、
c)前記混合物を約4℃で撹拌し;
d)前記混合物を遠心分離し、そしてその得られた上清液を保存し;
e)前記上清液とアルコールとを組合し、
f)前記アルコール−上清液の組合せを、抗原を沈殿せしめるために約4℃でインキュベートし、そして
g)その沈殿せしめられた抗原を単離する段階を含んで成る方法により単離される請求の範囲第32項記載の単離された抗原。
【請求項34】
前記細菌細胞がスタフィロコーカス エピダーミジス(ATCC55133)である請求の範囲第32項記載の単離された抗原。
【請求項35】
個々のアッセイが結合アッセイである請求の範囲第32項記載の単離された抗原。
【請求項36】
前記第1のスタフィロコーカス生物がスタフィロコーカスエピダーミジス(ATCC 55133) である請求の範囲第35項記載の単離された抗原。
【請求項37】
個々のアッセイがオプソニン化アッセイである請求の範囲第32項記載の単離された抗原。
【請求項38】
前記オプソニン化アッセイが細胞介在殺菌アッセイである請求の範囲第37項記載の単離された抗原。
【請求項39】
個々のアッセイがクリアランスアッセイである請求の範囲第32項記載の単離された抗原。
【請求項40】
前記クリアランスアッセイが、
a)未熟な動物に抗体、免疫抑制剤及びスタフィロコーカス生物を投与し、そして
b)前記抗体が動物の死亡率を減じるか、又は動物からのスタフィロコーカス生物のクリアランスを増強するかどうかを評価する段階を含んで成る請求の範囲第39項記載の単離された抗原。
【請求項41】
前記第1及び第2のスタフィロコーカス生物が異なった血清型のものである請求の範囲第32項記載の単離された抗原。
【請求項42】
前記第1及び第2のスタフィロコーカス生物が異なった種のものである請求の範囲第32項記載の単離された抗原。
【請求項43】
a)請求の範囲第32項記載の単離された抗原、及び
b)医薬的に許容できるキャリヤー
を含んで成る医薬組成物。
【請求項44】
請求の範囲第43項記載の医薬組成物の治療的有効量の投与を含んで成る、スタフィロコーカス生物により感染された又は感染していると凝わしいヒトを処理するための方法。
【請求項45】
請求の範囲第43項記載の医薬組成物の予防的有効量の投与を含んで成る、ヒトにおけるスタフィロコーカス生物の感染を予防するための方法。
【請求項46】
a)スタフィロコーカス生物の細菌細胞の培養物を単離し、
b)トリクロロ酢酸の溶液から成る混合物に前記単離した細胞を懸濁し、
c)前記混合物を約4℃で撹拌し;
d)前記混合物を遠心分離し、そしてその得られた上清液を保存し;
e)前記上清液とアルコールとを組合し、
f)前記アルコール−上清液の組合せを、抗原を沈殿せしめるために約4℃でインキュベートし、そして
g)その沈殿せしめられた抗原を単離する段階を含んで成る抗原を単離するための方法。
【請求項47】
前記スタフィロコーカス生物がスタフィロコーカス エピダーミジス(ATCC 55133) である請求の範囲第46項記載の方法。
【請求項48】
感染性物質を処理するために医薬組成物の効能を評価するための方法であって、
a)未熟な動物に医薬組成物、免疫抑制剤及び感染性物質を投与し、そして
b)前記医薬組成物が動物の死亡率を減じるか、又は動物からの感染性物質のクリアランスを増強するかどうかを評価する段階を含んで成る方法。
【請求項49】
前記未熟動物が授乳ラットである請求の範囲第48項記載の方法。
【請求項50】
前記免疫抑制剤が、ステロイド、抗炎症剤、プロスタグランジン、細胞免疫抑制剤、鉄、シリカ、粒子、ビーズ及び脂質エマルジョンから成る群から選択される請求の範囲第48項記載の方法。
【請求項51】
前記感染性物質が、細菌、寄生体、菌類及びウィルスから成る群から選択される請求の範囲第48項記載の方法。
【請求項52】
前記感染性物質がグラム陽性細菌である請求の範囲第48項記載の方法。
【請求項53】
前記グラム陽性細菌がスタフィロコーカス エピダーミジスである請求の範囲第52項記載の方法。
【請求項54】
前記医薬組成物が予防的に投与される請求の範囲第48項記載の方法。
【請求項55】
前記医薬組成物が治療的に投与される請求の範囲第48項記載の方法。
【請求項56】
スタフィロコーカス抗原を含むか又は含むことが凝われている生物学的サンプル及び請求の範囲第11項記載の単離された免疫グロブリンを含んで成る、スタフィロコーカス感染の検出のための診断用エイド。
【請求項57】
スタフィロコーカスに対する抗体を含むか又は含むことが凝われている生物学的サンプル及び請求の範囲第32項記載の単離された抗原を含んで成る、スタフィロコーカス感染の検出のための診断用エイド。
【請求項58】
スタフィロコーカス抗原を含むか又は含むことが凝われている生物学的サンプルを請求の範囲第11項記載の単離された免疫グロブリンに添加し、そして前記単離された免疫グロブリンに対するスタフィロコーカス抗原の結合の量を測定することを含んで成る、スタフィロコーカス感染の検出のための方法。
【請求項59】
抗体を含むか又は含むことが凝われている生物学的サンプルを請求の範囲第32項記載の単離された抗原に添加し、そして前記単離された抗原に対する抗体の結合の量を測定することを含んで成る、スタフィロコーカス感染の検出のための方法。
【請求項60】
医薬組成物を含む生物学的サンプルを請求の範囲第11項記載の単離された免疫グロブリンに添加し、そして前記単離された免疫グロブリンに対する医薬組成物の結合の量を測定することを含んで成る、生物学的サンプルにおける医薬組成物の検出のための方法。
【請求項61】
医薬組成物を含む生物学的サンプルを請求の範囲第32項記載の単離された抗原に添加し、そして前記単離された抗原に対する医薬組成物の結合の量を測定することを含んで成る、生物学的サンプルにおける医薬組成物の検出のための方法。
【請求項62】
実験用単離物における病原性スタフィロコーカスを同定するための方法であって、アッセイにおいて請求の範囲第25項記載の単離された免疫グロブリンと前記実験用単離物とを反応せしめることを含んで成る方法。
【請求項63】
前記アッセイが結合アッセイである請求の範囲第62項記載の方法。
【請求項64】
前記アッセイが、ELISA アッセイ及びラジオイムノアッセイから成る群から選択される請求の範囲第62項記載の方法。
【請求項65】
病原性スタフィロコーカスに対する抗体を検出するための方法であって、アッセイにおいて請求の範囲第32項記載の抗原と前記抗体とを反応せしめることを含んで成り、ここで前記第1及び第2のスタフィロコーカス生物が病原性である方法。
【請求項66】
病原性スタフィロコーカスからの抗原を検出するための方法であって、アッセイにおいて請求の範囲第25項記載の単離された免疫グロブリンと前記抗原とを反応せしめることを含んで成る方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−119468(P2007−119468A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−291093(P2006−291093)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【分割の表示】特願平5−516636の分割
【原出願日】平成5年3月18日(1993.3.18)
【出願人】(501497208)ヘンリー エム.ジャクソン ファウンデーション フォー ザ アドバンスメント オブ ミリタリー メディスン (1)
【Fターム(参考)】