説明

通気フィルター、該通気フィルターの固定方法、および電気装置の製造方法。

【課題】保護フィルムを第2の接着層から剥がす際の、第1の接着層の剥離防止に適した形状の通気フィルターを提供すること。
【解決手段】基材シート1上に形成された第1の接着層2と、第1の接着層2上に形成された通気膜3と、通気膜3上に形成された第2の接着層4と、第2の接着層4上に形成された保護フィルム5とを有する通気フィルターであって、第1の接着層2と第2の接着層4はそれぞれ開口部を有し、保護フィルム5には保護フィルム5の外周部から第2の接着層4の開口部相当位置に至る切り目7が形成されている通気フィルターを作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水性や防塵性が必要な電子機器、例えば音響機能を有する電子装置に用いられる通気膜を備えた通気フィルター、該通気フィルターの固定方法、電気装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スピーカー、マイクロフォン、レシーバー等の電気音響変換装置を装備する携帯電話、小型ラジオ、トランシーバー、携帯音楽再生機、ノートパソコン、ヘッドホン、イヤホン、屋外マイク、デジタルカメラ等の電子機器の筐体には、音を筐体内部から外部へ、外部から内部へ通過させるための通音孔が設けられる。この通音孔には電子機器内部への水の侵入防止を一つの目的とした防水フィルター(通気膜)が取り付けられる。また、例えば光学センサーには、防塵・内外圧差の解消を主な目的とした通気膜が取り付けられる。
【0003】
通気膜を筐体に取り付ける方法は次の通りである。まず、基材シート、接着材料A(例えば両面粘着テープ)、通気膜、接着材料B、保護フィルム(剥離用シート)を順次積層した部材を作製する。次に、基材シート以外の積層物(接着材料A/通気膜/接着材料B/保護フィルム)を基材シートから剥がし取る。そして接着材料A側を筐体側として上記通音孔部分に積層物を貼り付ける。最後に、保護フィルムの端部を摘み上げることにより保護フィルムを剥がし取る。
【0004】
一般に、接着材料上の保護フィルムを摘み易くするために保護フィルムにタブを設ける手法が知られている。例えば、保護フィルムの一部を通気膜の端部から延出させた部分をタブとする方法(特許文献1)や、保護フィルムとは別の材料をタブとして取り付ける方法(特許文献2)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−10854号公報(図3)
【特許文献2】特開2005−15631号公報(図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
保護フィルムの一部を摘んで剥がし取る技術における一つの課題は、保護フィルムを摘み上げる際に、保護フィルムのみならず接着材料Aが被着体である筐体から剥がれてしまうことである。接着材料Aと被着体の接着強度に比べて接着材料Bと保護フィルムの接着強度を低くすることにより剥がれを防止し得るが、材料の選択幅が狭まってしまう。また、通気膜として多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルム(以下、「多孔質PTFE膜」と記載する)を用いた場合、多孔質PTFE膜は膜水平方向に延伸されたものであるため膜の垂直方向に対する引張強度が小さく、保護フィルムを剥がす際に通気膜自体が膜の垂直方向に断裂してしまう可能性がある。
【0007】
ところで、本発明者が検討している上記接着材料Bには開口部が形成されており、保護フィルムに接着される領域は開口の周囲を囲う枠状となっている。これは、接着材料により通気が阻害されることを避けるためである。したがって本発明の目的は、接着材料Bが枠状になっている通気フィルターにおいて、保護フィルムを摘み上げる際の接着材料Aの剥離防止に適した形状を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明者は種々の形状の保護フィルムを試作して、取り剥がし試験を繰り返したところ、保護フィルムの外周部から上記接着材料Bの開口部相当位置に至る切り目を形成することにより、保護フィルムがこの切り目を始点として接着材料Bの開口の周囲に沿って順に剥がれ、接着材料Aの上方に大きな力が加わることがなく接着材料Aの剥離が防止されることを突き止め、本発明を完成した。
【0009】
上記目的を達成し得た本発明の通気フィルターは、
基材シート上に形成された第1の接着層と、該第1の接着層上に形成された通気膜と、該通気膜上に形成された第2の接着層と、該第2の接着層上に形成された保護フィルムとを有する通気フィルターであって、前記第1の接着層と前記第2の接着層はそれぞれ開口部を有し、前記保護フィルムには該保護フィルムの外周部から前記第2の接着層の開口部相当位置に至る切り目が形成されているものである。
【0010】
上記通気フィルターにおいて、前記保護フィルムの外周部は、前記第2の接着層には接着していない摘み部を有する構成とすることが望ましい。
【0011】
上記通気フィルターにおいて、前記保護フィルムは、前記第2の接着層の開口部に連通する開口部を有し、前記切り目は前記保護フィルムの外周部から該保護フィルムの開口部に至る構成とすることが望ましい。
【0012】
上記通気フィルターにおいて、前記摘み部には、所定の標識が付されていることが望ましい。
【0013】
上記通気フィルターにおいて、前記保護フィルムが有彩色で着色されていることが望ましい。
【0014】
上記通気フィルターにおいて、前記基材シートは、前記第1の接着層の開口部に連通する開口部を有していることが望ましい。
【0015】
上記通気フィルターにおいて、前記通気膜がフッ素樹脂膜であることが望ましい。
【0016】
上記通気フィルターにおいて、前記通気膜が多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜であることが望ましい。
【0017】
上記通気フィルターにおいて、前記通気膜の表面に撥液剤が添加されていることが望ましい。
【0018】
上記通気フィルターにおいて、前記接着層が両面粘着テープであることが望ましい。
【0019】
上記目的を達成し得た本発明の通気フィルターの固定方法は、
基材シート上に、開口部を有する第1の接着層と、通気膜と、開口部を有する第2の接着層と、保護フィルムとが順次積層され、かつ該保護フィルムが保護フィルムの外周部から前記第2の接着層の開口部相当位置に至る切り目を有する通気フィルターを形成する第1の工程と、前記通気フィルターから前記基材シートを剥がす第2の工程と、前記通気フィルターを被着体に装着する第3の工程と、前記切り目を挟んで2つに分断された保護フィルムの外周部の片側部を摘んで該保護フィルムを剥がし取る第4の工程とを有するものである。
【0020】
上記の方法において、前記片側部とは反対側の他の片側部を摘んで前記基材シートを剥がすことが好ましい。
【0021】
上記目的を達成し得た本発明の電気装置の製造方法は、
基材シート上に、開口部を有する第1の接着層と、通気膜と、開口部を有する第2の接着層と、保護フィルムとが順次積層され、かつ該保護フィルムが保護フィルムの外周部から前記第2の接着層の開口部相当位置に至る切り目を有する通気フィルターを形成する第1の工程と、前記通気フィルターから前記基材シートを剥がす第2の工程と、前記通気フィルターを筐体に装着する第3の工程と、前記切り目を挟んで2つに分断された保護フィルムの外周部の片側部を摘んで該保護フィルムを剥がし取る第4の工程とを有するものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、保護フィルムの外周部から第2の接着層の開口部相当位置に至る切り目を形成しているため、保護フィルムがこの切り目を始点として第2の接着層の開口の周囲に沿って順に剥がれていく。そのため、第1の接着層に大きな力が加わることがなく、第1の接着層の剥離が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態1における通気フィルターの鳥瞰図である。
【図2】本発明の実施の形態1における通気フィルターが筐体に装着された状態を示す鳥瞰図である。
【図3】(a)〜(c)は、本発明の実施の形態1における通気フィルターの保護膜が順に剥がされていく様子を示す鳥瞰図である。
【図4】(d)〜(f)は、図3に続き、通気フィルターの保護膜が順に剥がされていく様子を示す鳥瞰図である。
【図5】(a)は、本発明の実施の形態2における通気フィルターの平面図であり、(b)は、本発明の実施の形態2における他の通気フィルターの平面図である。
【図6】(a),(b)は、本発明の実施の形態2における他の通気フィルターの平面図である。
【図7】本発明の実施の形態2における他の通気フィルターの平面図である。
【図8】本発明の実施の形態2における他の通気フィルターの平面図である。
【図9】実施の形態1における通気フィルターの断面図である。
【図10】実施の形態3における通気フィルターの断面図である。
【図11】本発明の実施の形態4における通気フィルターの平面図である。
【図12】本発明の実施の形態4における他の通気フィルターの平面図である。
【図13】本発明の実施の形態5における通気フィルターの平面図である。
【図14】(a),(b)は、本発明の実施の形態5における他の通気フィルターの平面図である。
【図15】本発明の実施の形態6における通気フィルターの断面図である。
【図16】本発明の実施の形態6における他の通気フィルターの断面図である。
【図17】本発明の実施の形態6における他の通気フィルターの断面図である。
【図18】本発明の実施の形態7における通気フィルターの断面図である。
【図19】本発明の実施の形態8における通気フィルターの断面図である。
【図20】本発明の実施の形態8における他の通気フィルターの断面図である。
【図21】本発明の実施の形態8における他の通気フィルターの断面図である。
【図22】本発明の実施の形態8における他の通気フィルターの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
1.通気フィルターの構造
以下、本発明の実施の形態における通気フィルターの構造について図面を参照しながら説明する。
【0025】
(実施の形態1)
1.通気フィルターの構造概要
図1は、本発明の実施の形態1に係る通気フィルターの鳥瞰図である。図1において、基材シート1上に、第1の接着層2、通気膜3、第2の接着層4、保護フィルム5が順次積層されて通気フィルターが構成されている。第1の接着層2と第2の接着層4はそれぞれ開口部2a,4aを有している(断面図である図19〜図22参照)。保護フィルム5には保護フィルム5の外周部から第2の接着層4の開口部4aに相当する位置に至る切り目7が形成されている。
【0026】
2.通気フィルターの固定方法および電気装置の製造方法
以上のように構成されている通気フィルターを被着体に固定する方法について説明する。まず、基材シート1以外の積層物(第1の接着層2/通気膜3/第2の接着層4/保護フィルム5)を基材シート1から剥がし取る。そしてこの積層物を図2に示すように、第1の接着層2側を被着体である筐体6側にして装着する(貼り付ける)。
【0027】
次に、第2の接着層4から保護フィルム5を剥がす工程について説明する。図3の(a)〜(c)は、本実施の形態1における通気フィルターの保護フィルムが順に剥がされていく様子を示す鳥瞰図である。図3(a)に示すように保護フィルム5の外周部であって、切り目7によって2つに分断された部分の片側部(以下、該片側部を「摘み部8」と記載し(図5参照)、他の片側部は「タブ9(図5参照)」と記載する。以下、図6(b)の態様を除いて同じ。)をピンセットで摘み、保護フィルム5を上方に引き上げていく。図3ではピンセットを用いた例を示しているが、勿論、「摘む」乃至「引き上げる」ことは、自動化可能な工程である。図3(b)に示すように切れ目7が離間した後は、図3(c)、図4(d)、(e)に示すように第2の接着層4の周囲に沿って保護フィルム5が順次剥がれていく。図4(e)の状態まで到達すれば、保護フィルム5が元の平面状の形状に戻ろうとする弾性力が働くため、ピンセットをそれ以上に引き上げなくても保護フィルム5は第2の接着層4から容易に(半自動的に)離脱する。つまり、ピンセットによる引き上げ長さは短くて済む。したがって、この工程を自動化する場合、ピンセットに代えて用いる制御アーム(図示せず)のワーキングディスタンス(駆動範囲)を短くすることができる。このため、本発明は、制御アームを含む剥離装置(図示せず)の小型化にも有用である。なお、図4(d)、(e)では図面が複雑になることを避けるためピンセットの図示を省略している。
【0028】
以上の説明では、保護フィルム5の外周部のうち、保護フィルム5の裏面と第2の接着層4とが接着されていない部分であって切り目7によって2つに分断された部分の片側部を摘み部8と称し、この摘み部8を上方に摘み上げる例について説明したが、保護フィルム5が第2の接着層4に接着していない部分が存在することを本発明の必須要件とするものではない。保護フィルム5の裏面全体が第2の接着層4に接着していたとしても、保護フィルム5の一部を摘み上げれば保護フィルム5は第2の接着層4の周囲に沿って順次剥がれていく効果がある。例えば、後掲の図10に示されるように、保護フィルム5が第2の接着層4に接着している部分であっても摘み上げることは可能である。
【0029】
以上のように、保護フィルム5に、保護フィルム5の外周部から第2の接着層4の開口部相当位置に至る切り目7を形成していることにより、第1の接着層2の剥離が防止された非常に有効な通気フィルターの固定方法が実現され、被着体が電子機器を構成する筐体6である場合には、有効な電気装置の製造方法が実現される。
【0030】
3.個々の構成要素の詳細説明
以下、通気フィルターを構成する基材シート1、第1の接着層2、通気膜3、第2の接着層4、保護フィルム5についてそれぞれ詳細に説明する。
【0031】
(1)基材シート
本実施の形態における基材シート1は、薄い通気膜3を保管、運搬する役割を担うものであり、シート状の部材であれば材質等に特段の制限はないが、基材シート1の基材としては少なくとも片面あるいは両面がシリコーン系離型剤で処理されたPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを用いることが好ましい。PET以外に選択し得る材料としては、例えば、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、ポリカーボネート等の樹脂フィルム、グラシン紙、上質紙、コート紙、含浸紙、合成紙などの紙、アルミニウム、ステンレススチール等の金属箔などが挙げられる。
【0032】
基材シート1の厚さは、例えば、10〜150μm、好ましくは50〜125μmである。なお、基材の表面には、離型剤や粘着剤との接着性を向上させるため、コロナ放電処理、プラズマ処理、フレームプラズマ処理などを施してもよく、プライマー層などを設けてもよい。プライマー層としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン系共重合体、ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、これらの変性物などの高分子材料(所謂アンカーコート剤)を使用することが出来る。
【0033】
(2)第1・第2の接着層
第1・第2の接着層2,4は、開口部2a,4aを有する。開口部の形状は特に限定されず、円状、楕円状、矩形状、多角形状のものであってもよい。開口パターンを持った第1・第2の接着層2,4を形成する方法としては、例えば、スクリーン印刷による方法や、接着剤の融液をグラビアパターンロールで基材シート1に転写する方法がある。
【0034】
上記のように、第1・第2の接着層2,4として接着剤そのものを層状に形成したものでもよいが、両面粘着テープを使用することもできる。両面粘着テープには、ポリエチレン不織布、ポリプロピレン不織布、ナイロン不織布等を芯材とした不織布基材両面粘着テープ、PET基材両面粘着テープ、ポリイミド基材両面粘着テープ、ナイロン基材両面粘着テープ、発泡体(例えば、ウレタンフォーム、シリコーンフォーム、アクリルフォーム、ポリエチレンフォーム)基材両面粘着テープ、基材レス両面粘着テープなど様々なタイプのものを用いることができる。
【0035】
なお、保護フィルム5に切り目7を設けるという本発明の基本的構成の採用に加えて、第1の接着層2と被着体の接着強度に比べて第2の接着層4と保護フィルムの接着強度を低くすることも好ましい形態である。なお、切り目7の形成位置や長さを調節することにより、仮に第1の接着層2と被着体の接着強度に比べて第2の接着層4と保護フィルムの接着強度が高くても保護フィルム5のみの剥離作業が可能となるため、材料の選択可能範囲が拡がる。
【0036】
なお、本発明において接着剤とは、物と物を貼り合わせるのに用いる物質一般を指すものであり、粘着剤と呼ばれるものを含むものとする。
【0037】
(3)通気膜
通気膜3の構成材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイミド等を使用することができるが、好ましくは防水性に優れたフッ素樹脂、更に好ましくは、多孔質PTFEのフィルムを用いることが推奨される。通気膜3の微視的形状としては、ネット状、メッシュ状、多孔質のものを用いることができる。多孔質PTFE膜は、防滴性に優れ、水滴、油滴、塵埃の侵入を防止しつつ電気装置の内外に通気性を持たせる用途に適している。
【0038】
ところが多孔質PTFEは、汎用的な高分子ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)と比較して一般的に表面エネルギーが低く、材料中の微細な分子鎖同士の結束が弱い。そのため多孔質PTFEは他の高分子多孔質膜に比べて強度が低い。特に、音響機器の防水に用いられる多孔質PTFE膜は、音響特性向上のために薄く構成され、そのため厚さ方向の強度は非常に低い。したがって、通気膜3の構成材料として多孔質PTFE膜を用いる場合には、本発明を適用すれば、保護フィルム5の剥離時の膜垂直方向の引張力が軽減されるため、通気膜3の断裂防止に極めて有効である。
【0039】
次に、多孔質PTFE膜の製造方法について説明する。多孔質PTFE膜は、PTFEのファインパウダーを成形助剤と混合することにより得られるペーストの成形体から、成形助剤を除去した後、高温高速度で延伸、さらに必要に応じて焼成することにより得られるものである。一軸延伸の場合、ノード(折り畳み結晶)が延伸方向に直角に細い島状となっていて、このノード間を繋ぐようにすだれ状にフィブリル(折り畳み結晶が延伸により解けて引出された直鎖状の分子束)が延伸方向に配向している。そして、フィブリル間、又はフィブリルとノードとで画される空間が空孔となった繊維質構造となっている。また、二軸延伸の場合には、フィブリルが放射状に広がり、フィブリルを繋ぐノードが島状に点在して、フィブリルとノードとで画された空間が多数存在するクモの巣状の繊維質構造となっている。
【0040】
通気膜3は、一軸延伸多孔質PTFE膜であっても良いし、二軸延伸多孔質PTFE膜であってもよい。
【0041】
通気膜3は、単独で(単層で)使用できるだけの強度を有することが好ましいが、不織布、織物や編物等のネット等、伸縮性を持つ通気性の補強層と積層して使用してもよい。
【0042】
通気膜3の物理的特性としては、1kPa以上、より好ましくは10kPa以上の耐水圧と、1000秒以下、より好ましくは100秒以下の透気度(JIS P 8117)を備えることが望ましい。
【0043】
通気膜3は、その細孔内表面に撥液性を付与されているのが好ましい。通気膜3に撥液性を持たせることで、体脂や機械油、水滴などの様々な汚染物が、通気膜3の細孔内に浸透若しくは保持されるのを抑制できる。これらの汚染物質は、通気膜3の捕集特性や通気特性を低下させ、通気膜としての機能を損なわせる原因となる。
【0044】
なお、特許請求の範囲及び本明細書において、撥液性を付与する方法としては、撥液性材料を使用する、もしくは、撥液剤を添加することでも可能であり、この場合の「撥液」とは、液体をはじく性質乃至は機能を指すものであるとし、「撥液剤」には、「撥水剤」、「撥油剤」、「撥水撥油剤」等を含むものとする。以下、撥水撥油性ポリマーを例に挙げて説明する。
【0045】
撥水撥油性ポリマーとしては、含フッ素側鎖を有するポリマーを用いることができる。撥水撥油性ポリマーおよびそれを多孔質PTFE膜に複合化する方法の詳細についてはWO94/22928号公報などに開示されている。
【0046】
また、通気膜3には上記の撥液性材料のほか、親水性材料、導電性材料、着色材料、帯電防止材料、抗菌性材料などを付加することにより、様々な機能性を付与することができる。
【0047】
(4)保護フィルム
保護フィルム5は、保管中や運搬中の通気膜3を保護するものであり、材料としては紙に離型処理をしたものや樹脂フィルムが好適に用いられる。樹脂フィルムの素材は特に制限はないが、PE、PPなどのポリオレフィン系樹脂;PETなどのポリエステル系樹脂;などが一般的である。また、樹脂フィルムには、シリコーン系樹脂などを樹脂フィルム表面にコーティングするなどの離型処理を施してもよい。保護フィルムの厚さは特段制限されないが、薄すぎると保護の機能を果たさないため、10μm以上、好ましくは50μm以上とする。さらに、保護フィルム5に適度な弾性力を持たせることにより上述したように、保護フィルム5を少し上方に引き上げるだけで保護フィルム5の全体が容易に剥がれるので、保護フィルム5をPE、PPなどの樹脂で構成する場合は、保護フィルム5の厚さを10μm以上、好ましくは50μm以上とすることが望ましい。一方、保護フィルム5が厚すぎると保護フィルム5の剛性が大きくなり、保護フィルム5の加工性が悪化したり、保護フィルム5を剥がし取りにくくなったりするため、150μm以下、好ましくは125μm以下とすることが望ましい。
【0048】
本実施の形態1において、摘み部8は、第2の接着層4には接着していない構成とすることが望ましい。例えば、保護フィルム5の外形を第2の接着層4の外形から延出させるように形成してもよいし、逆に第2の接着層4の外形を保護フィルム5の外形よりも窪ませるように形成してもよい。これにより、保護フィルム5を摘んで剥がす作業が効率的となる。
【0049】
本実施の形態1において、保護フィルム5の外周部には、切り目7を挟んで片側部に上記摘み部8を備えるほか、他の片側部に第2の接着層4には接着していないタブ9を備えていてもよい。図1の状態にある通気フィルターを図2に示すように筐体6に装着する際、タブ9を掴んで通気フィルターのハンドリングを行えば、薄くて破損しやすい通気膜3に直接触れずに作業を行うことができる。
【0050】
なお、搬送時に基材シート1から通気フィルターを剥がし取るための位置決め、或いは通気フィルターを被着体に貼り付ける時の位置決めのため、後掲の図5(a)に示すように、保護フィルム5のタブ9に円状の孔、或いは図5(b)に示すように長円状の孔を設けてもよい。その他、孔は長方形、正方形などの矩形状(図示せず)であっても良いし、一つのタブ9に複数の孔を設けていてもよい。
【0051】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2にかかる通気フィルターについて説明する。図5〜8は、本発明の実施の形態2にかかる通気フィルターの平面図を示すものであり、保護フィルム5に付された標識の様々なバリエーションを示すものである。
【0052】
本発明の通気フィルターの保護フィルム5には透明な材料を用いることが多い。そのため、保護フィルム5を剥がし取る際に保護フィルム5を摘むべき場所(摘み部8)の認識が困難となる場合がある。そこで本実施の形態では、保護フィルム5(特に摘み部8)に光学的に認識可能な標識(例えば、文字、記号、図柄、色)を付して摘むべき場所の認識をし易くする例について説明する。なお、光学的に認識可能とは、目視による区別が可能であるだけでなく、CCDその他の光学センサーによって検出する場合も含まれ、可視光線のみならず赤外線や紫外線による認識も含まれる。
【0053】
図5(a),(b)では、摘み部8に認識可能な円形の標識10が付されている。
【0054】
図6(a)では、摘み部8に数字(○囲みの「2」の文字)の標識10bが付されている。一方、タブ9に数字(○囲みの「1」の文字)の標識10aが付されているのは、通気フィルターを図2に示すように筐体6に装着する際に掴むべきタブ9と、保護フィルム5を剥がし取る際に摘むべき摘み部8との区別をつき易くするためである。
【0055】
一方、図6(b)に示すように、標識10bを切り目7に対して、図6(a)の例とは反対側、すなわち標識10aと同じ側に配置することも可能である。この場合は、標識10bを付した部分が摘み部8であり、この摘み部8を摘み上げることによっても本発明の効果が奏される。なお、通気フィルターを筐体6に装着する際にはタブ9を掴むが、掴む位置(標識10a)は、図6(a),(b)に示すように切り目7からできるだけ離れていることが望ましい。切り目7に近い位置でタブ9を掴んでしまうと、切り目7に沿って保護フィルム5だけが剥離される可能性があるためである。
【0056】
図7では、摘み部8の一部範囲が着色されて標識10と為している。なお、図示はしていないが、保護フィルム5の見落としによる剥離作業忘れの防止のため、保護フィルム5の全体に着色を施してもよい。この場合は、摘み部8の上記範囲は、別の異なる色に着色することが好ましい。
【0057】
図8では、タブ9の一部に切り目7の位置を示す矢印形状の標識10が付されている。この矢印は、摘み部8に付されていてもよい。
【0058】
(実施の形態3)
以下、本発明の実施の形態3にかかる通気フィルターについて説明する。
【0059】
図9は、図1に示した実施の形態1にかかる通気フィルターの断面図であり、図10は、実施の形態3にかかる通気フィルターの断面図である。実施の形態1にかかる通気フィルターでは保護フィルム5の端部を第2の接着層4の端部よりも外側に延出させることにより摘み部8を形成しているが、実施の形態3では図10に示すように、保護フィルム5とは別の延出部材5bを設けて摘み部8を形成してもよい。
【0060】
(実施の形態4)
以下、本発明の実施の形態4にかかる通気フィルターについて説明する。図11及び図12は、本発明の実施の形態4にかかる通気フィルターの平面図であり、保護フィルム5の切り目7の形態のバリエーションを示すものである。実施の形態1では、保護フィルム5において広く延出した部分に切り目7を形成した例を説明したが、切り目7の形成位置はこれに限らず、図11に示すように、保護フィルム5の周囲何れの場所でもよい。また、図12に示すように、切り目7は曲線状に形成されていてもよい。
【0061】
切り目7を直線で形成する場合、その角度は特に制限されない。例えば図11に示すように第2の接着層4の外周線に対する切り目7の侵入角α(切り目7に対して摘み部8と同じ側に形成される角)は何度であってもよいが、第1の接着層2と筐体6との剥離防止のためには、保護フィルム5の引き剥がれ初めが最も重要であるため、好ましくは鋭角である。具体的には、例えば10度〜90度、好ましくは30度〜60度である。なお、侵入角αが鈍角(90度超)となる場合は、αの補角に相当する角β(=180度−α)は、鋭角となる。この場合は、摘み部8を切り目7に対して反対側の位置(即ち角βと同じ側)に変更することにより、鋭角である角βの部分を始点として保護フィルム5を剥がすことができる。
【0062】
(実施の形態5)
以下、本発明の実施の形態5にかかる通気フィルターについて説明する。図13及び図14は、本発明の実施の形態5にかかる通気フィルターの平面図である。実施の形態1では、保護フィルム5は、第2の接着層4の開口部4aに連通する開口部5aを有し、切り目7は保護フィルム5の外周部から保護フィルム5の開口部5aに至る例について説明したが、本実施の形態では、図13に示すように保護フィルム5に開口部5aが設けられていない。実施の形態1のような開口部5aが設けられていれば保護フィルム5の引き剥がしは一層スムーズではあるが、通気膜3の保護の観点では実施の形態5にかかる通気フィルターの方が有利である。
【0063】
図13に示したように保護フィルム5に開口部5aを設けない場合には、保護フィルム5の引き剥がしをスムーズにするために、図14(a)に示すように、切り目7は保護フィルム5の外周部から接着層4の開口部4aに相当する位置を通り、さらに第2の接着層4の開口部4aの内側にまで到達していることが望ましい。さらには、図14(b)に示すように、切り目7は開口部4aの長手方向に延びる延長部7aを備えることが望ましい。延長部7aの存在によって、保護フィルム5が第2の接着層4の外周に沿ってより円滑に剥がれやすくなるからである。
【0064】
(実施の形態6)
以下、本発明の実施の形態6にかかる通気フィルターについて説明する。図15〜17は、本発明の実施の形態6にかかる通気フィルターの断面図である。これらは、通気フィルターの積層構造の様々なバリエーションを示すものである。
【0065】
実施の形態1でも説明した通りであるが、第1の接着層2は、単一の粘着剤層(例えばアクリル系粘着剤)で構成してもよいが、図15に示すように、粘着層2b/テープ基材2c/粘着層2bの三層構造を有する両面粘着テープで構成することができる。勿論、第2の接着層4も両面粘着テープで構成することができる。両面粘着テープの材料例は、実施の形態1において説明した通りである。
【0066】
他にも、図16に示すように通気膜3と保護フィルム5との間は、両面粘着テープで構成される第2の接着層4/スペーサー12(例えば、PET、スポンジ材)/第2の接着層4の積層構造としてもよい。スペーサー12を一層挟むことにより、通気膜3と電気音響変換装置内の振動膜との距離を最適に調整することが可能となる。
【0067】
他にも、図17に示すように通気膜3と保護フィルム5との間は、下から順に、両面粘着テープで構成される第2の接着層4/スペーサー12/粘着層4bとしてもよい。
【0068】
(実施の形態7)
以下、本発明の実施の形態7にかかる通気フィルターについて説明する。図18は、本発明の実施の形態7にかかる通気フィルターの断面図である。実施の形態1でも説明した通りであるが、通気膜3は単独で(単層で)使用できるだけの強度を有することが好ましいが、図18に示すように補強膜11(例えば、不織布、織物や編物等のネット等、伸縮性を持つもの)と積層して使用してもよい。補強膜11と通気膜3の積層順序に特に制限はなく、図18に示した順とは逆に補強膜11が通気膜3の上側であってもよい。また補強膜11と通気膜3は必ずしも密着している必要はなく、間に別途両面粘着テープ(図示せず)を挟んでいてもよい。補強膜11と通気膜3の間に両面粘着テープを挟んだ場合には、補強膜11と通気膜3を密着させているものと比較して、音響特性の劣化が少ない点で有利である。
【0069】
(実施の形態8)
以下、本発明の実施の形態8にかかる通気フィルターについて説明する。
図19〜22は、本発明の実施の形態8にかかる通気フィルターの断面図である。図20、22に示すように、基材シート1には、第1の接着層2の開口部2aに連通する開口部1aが形成されていてもよい。
【0070】
また、図19、20に示すように、保護フィルム5には、第2の接着層4の開口部4aに連通する開口部5aが形成されていてもよい。これらの組み合わせは通気フィルター作製方法の違いから図19〜22に示すように4通りある。
【符号の説明】
【0071】
1 基材シート
1a 開口部
2 第1の接着層
2a 開口部
2b 粘着層
2c テープ基材
3 通気膜
4 第2の接着層
4a 開口部
4b 粘着層
4c 両面粘着テープ基材
5 保護フィルム
5a 開口部
5b 延出部材
6 筐体(被着体)
7 切り目
7a 延長部
8 摘み部
9 タブ
10,10a,10b 標識
11 補強膜
12 スペーサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シート上に形成された第1の接着層と、該第1の接着層上に形成された通気膜と、該通気膜上に形成された第2の接着層と、該第2の接着層上に形成された保護フィルムとを有する通気フィルターであって、前記第1の接着層と前記第2の接着層はそれぞれ開口部を有し、前記保護フィルムには該保護フィルムの外周部から前記第2の接着層の開口部相当位置に至る切り目が形成されていることを特徴とする通気フィルター。
【請求項2】
前記保護フィルムの外周部は、前記第2の接着層には接着していない摘み部を有する請求項1に記載の通気フィルター。
【請求項3】
前記保護フィルムは、前記第2の接着層の開口部に連通する開口部を有し、前記切り目は前記保護フィルムの外周部から該保護フィルムの開口部に至る、請求項1または2に記載の通気フィルター。
【請求項4】
前記摘み部には、所定の標識が付されている請求項2または3に記載の通気フィルター。
【請求項5】
前記保護フィルムが有彩色で着色されている請求項1〜4のいずれかに記載の通気フィルター。
【請求項6】
前記基材シートは、前記第1の接着層の開口部に連通する開口部を有している請求項1〜5のいずれかに記載の通気フィルター。
【請求項7】
前記通気膜がフッ素樹脂膜である請求項1〜6のいずれかに記載の通気フィルター。
【請求項8】
前記通気膜が多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜である請求項1〜6のいずれかに記載の通気フィルター。
【請求項9】
前記通気膜の表面に撥液剤が添加された請求項1〜8のいずれかに記載の通気フィルター。
【請求項10】
前記接着層が両面粘着テープである請求項1〜9のいずれかに記載の通気フィルター。
【請求項11】
基材シート上に、開口部を有する第1の接着層と、通気膜と、開口部を有する第2の接着層と、保護フィルムとが順次積層され、かつ該保護フィルムが保護フィルムの外周部から前記第2の接着層の開口部相当位置に至る切り目を有する通気フィルターを形成する第1の工程と、前記通気フィルターから前記基材シートを剥がす第2の工程と、前記通気フィルターを被着体に装着する第3の工程と、前記切り目を挟んで2つに分断された保護フィルムの外周部の片側部を摘んで該保護フィルムを剥がし取る第4の工程とを有する通気フィルターの固定方法。
【請求項12】
前記片側部とは反対側の他の片側部を摘んで前記基材シートを剥がす請求項11に記載の通気フィルターの固定方法。
【請求項13】
基材シート上に、開口部を有する第1の接着層と、通気膜と、開口部を有する第2の接着層と、保護フィルムとが順次積層され、かつ該保護フィルムが保護フィルムの外周部から前記第2の接着層の開口部相当位置に至る切り目を有する通気フィルターを形成する第1の工程と、前記通気フィルターから前記基材シートを剥がす第2の工程と、前記通気フィルターを筐体に装着する第3の工程と、前記切り目を挟んで2つに分断された保護フィルムの外周部の片側部を摘んで該保護フィルムを剥がし取る第4の工程とを有する電気装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate


【公開番号】特開2011−115687(P2011−115687A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273901(P2009−273901)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000107387)ジャパンゴアテックス株式会社 (121)
【Fターム(参考)】