説明

通気フィルム

【課題】他のフィルムに密着性よく接着させることができ、かつ接着後の剥離が容易な4−メチル−1−ペンテン系樹脂フィルムを提供する。
【解決手段】本発明の通気フィルムは、4−メチル−1−ペンテン系樹脂からなり、表面に凹凸構造を有する。前記通気フィルムの凹凸構造を有する面は、粘着部を介して他方のフィルムに接着されることが好ましい。また、前記凹凸構造は、エンボス加工によって形成されたものであることが好ましい。さらに、前記凹凸構造を有する表面の十点平均粗さRzは、3〜30μmであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通気フィルムに関し、より詳しくは4−メチル−1−ペンテン系樹脂からなる通気フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
4−メチル−1−ペンテン系重合体は、特異な側鎖構造を有するため酸素透過率や二酸化炭素透過率等のガス透過性が非常によい。つまり、多孔質層や不織布等からなる繊維層を設けなくても通気フィルムとして機能する。そのため、4−メチル−1−ペンテン系樹脂フィルムを、食品用途や医療用途で使用される通気フィルムとして使用することが提案されている。
【0003】
一般的に樹脂フィルムから包装体を作製したり、その開口部を閉じたりする場合、ヒートシールによる熱溶融によってフィルム同士を接着させることがある。4−メチル−1−ペンテン系樹脂フィルムから包装体を作製するには、4−メチル−1−ペンテン系樹脂フィルムの少なくとも片面に、ヒートシール性を付与するためのポリプロピレン系樹脂層を、接着層を介して積層させて多層フィルムとする必要があった(特許文献1〜4を参照)。ヒートシールによってフィルム同士を接着させることにより開口部を封着させると、接着力が強すぎるため再開封(剥離)は困難となる。
【0004】
一方、微生物等を培養するための培養容器(培養袋)のフィルムや、シート状培地(特許文献5〜8を参照)のカバーフィルムは、ヒートシールではなく粘着剤を用いて仮留めして、一定期間後に剥離させる必要がある。例えば培養容器は、一旦開封されて培養液や培地を投入された後、一定の試験時間中は封をしておき、試験時間終了後に再度開封して検体を取り出すことがある。
【0005】
シート状培地として、微生物増殖培地及びゲル化剤を含む第1層と、ゲル化剤を含む第2層とからなるものが提案されている(特許文献5を参照)。第1層と第2層は取り外し可能であり、互いの層を固定するためにクランプを用いて挟みこんだり、粘着剤を介して接着させたりしている。
【0006】
他のシート状培地として、カバーフィルムと基材シートとの間に培地混合層(吸水性樹脂層)を設けたシート状培地(特許文献6を参照)や、カバーフィルムの一端を本体シートとヒートシール等により開閉可能に接合させたシート状培地(特許文献7および8を参照)も提案されている。これらのシート状培地のカバーフィルムは、コロナ放電処理等により付与された静電力で基材シートに接着されているか、または吸水性樹脂同士の接着力により基材シートに接着されており、接着後の剥離が実現されている。
【0007】
さらには、医療器具の保存や滅菌処理に使用する医療用包装体のフィルムや、医療器具の包装用ラベル等も、剥離可能であることが求められることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−105213号公報
【特許文献2】特開平11−137241号公報
【特許文献3】特開2000−188950号公報
【特許文献4】特開2001−190267号公報
【特許文献5】特表2003−514568号公報
【特許文献6】特開平8−228758号公報
【特許文献7】特開平8−332076号公報
【特許文献8】特開平8−336381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述の通り、4−メチル−1−ペンテン系樹脂フィルムはガス透過性が高いので、食品用途や医療用途のフィルムとして用いられ、かつ他のフィルムへ接着された後に剥離できることが求められる。しかしながら、4−メチル−1−ペンテン系樹脂フィルムを、他のフィルムにヒートシールによって接着した場合はもちろん、単に接着剤を介して接着した場合も再剥離が困難になる。一方、上述の培養容器やシート状培地用カバーフィルムと同様に、コロナ放電処理による放電力で他のフィルムに接着させると、密着性と再剥離性とのバランスを図ることが困難であることがあった。
【0010】
本発明は、他のフィルムに密着性よく接着させることができ、かつ接着後の剥離が容易な4−メチル−1−ペンテン系樹脂フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、4−メチル−1−ペンテン系樹脂を使用した通気フィルムにおける上記問題点を解決するため鋭意研究した。その結果、通気フィルムの粘着部と接着される面に凹凸構造を形成することで、通気フィルムと粘着部との接触面積が低減して粘着部からの再剥離が容易となることを見出し、本発明に至った。
【0012】
すなわち本発明は、以下に示す通気フィルムに関する。
[1]4−メチル−1−ペンテン系樹脂からなり、表面に凹凸構造を有する通気フィルム。
[2]前記通気フィルムの凹凸構造を有する面が、粘着部を介して他方のフィルムに接着される、[1]に記載の通気フィルム。
[3]前記凹凸構造は、エンボス加工によって形成されたものである、[1]または[2]に記載の通気フィルム。
[4]前記凹凸構造を有する面の十点平均粗さRzは3〜30μmである、[1]〜[3]のいずれかに記載の通気フィルム。
[5]通気フィルムの厚みは25〜200μmである、[1]〜[4]のいずれかに記載の通気フィルム。
[6]前記4−メチル−1−ペンテン系樹脂は、4−メチルペンテン−1 85〜99モル%と、4−メチルペンテン−1以外の炭素数2〜20のα−オレフィン1〜15モル%とからなる、[1]〜[5]のいずれかに記載の通気フィルム。
[7][1]に記載の通気フィルムであって、シート部材と、該シート部材の表面に配置された培地及び粘着部とを有するシート状培地を被覆し、前記粘着部を介して接着されるフィルム。
【発明の効果】
【0013】
本発明の通気フィルムは、非多孔質フィルムでありながら酸素や二酸化炭素等のガス透過性が高い。そのため、食品用途や医療用途で使用される通気フィルムとして有用である。さらに、本発明の通気フィルムは、粘着部との接着力が適度に調節されているので、通気性や接着後の再剥離性が必要とされる、医療器具の包装用ラベル、食品用途や医療用途の包装体、培地シートのカバーフィルム等に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】基材フィルムに粘着部を介して接着させた本発明の通気フィルムを、基材フィルムから剥離している状態を示す模式図である。
【図2】本発明の通気フィルムを使用したシート状培地の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の通気フィルムは、4−メチル−1−ペンテン系樹脂からなり、かつ表面に凹凸構造を有する。4−メチル−1−ペンテン系樹脂は、下記式で示される4−メチル−1−ペンテンをモノマー単位とする重合体を含む。下記式で示されるように、4−メチル−1−ペンテンのモノマー単位は、無極性であって、バルキーな側鎖を有する。したがって、密度が低く、隙間が多いため、酸素や二酸化炭素等のガス透過性が高い。
【0016】
【化1】

【0017】
本発明の通気フィルムを構成する4−メチル−1−ペンテン系樹脂は、4−メチルペンテン−1単独重合体を含む樹脂、または4−メチルペンテン−1を主たる割合で含有する、4−メチルペンテン−1と他のα−オレフィンとの共重合体を含む樹脂である。ここで、主たる割合で含有するとは、50モル%超の割合で含有することをいう。
【0018】
4−メチルペンテン−1と共重合してよい他のα−オレフィンは、炭素数2〜20のα−オレフィンでありうる。他のα−オレフィンの好ましい例には、オクテン、デセン、ドデセン、オクタデセン等の炭素数8〜18のα−オレフィンが含まれる。また、その含有量は1〜15モル%(4−メチルペンテン−1の量:85〜99モル%)であることが好ましく、2〜10モル%であることが更に好ましい。
【0019】
本発明の通気フィルムは、4−メチル−1−ペンテン系重合体のガス透過性を著しく低下させない範囲で、他のポリオレフィン樹脂やポリオレフィン樹脂以外の樹脂を含有してもよい。さらには、本発明の通気フィルムは、4−メチル−1−ペンテン系樹脂からなる層に、他の樹脂からなる層を積層させた多層樹脂フィルムであってもよい。他のポリオレフィンの例には、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等の、炭素数が2〜20であるα−オレフィン(4−メチルペンテン−1を除く)の単独重合体または共重合体が含まれる。
【0020】
他のポリオレフィン樹脂は2種以上使用してもよい。これら他のポリオレフィン樹脂は4−メチルペンテン−1との共重合体であってもよいが、その場合は、これらの4−メチルペンテン−1以外のα−オレフィンが主たる割合を占めている共重合体とする。ポリオレフィン以外の樹脂の例には、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミド6、ポリアミド66等のポリアミド樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド等のフッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアクリル樹脂等が含まれる。これらポリオレフィン以外の樹脂は、2種以上使用してもよい。
【0021】
通気フィルムを構成する4−メチル−1−ペンテン系樹脂には、必要に応じて、可塑剤、熱安定剤、酸化防止剤、滑剤、アンチブロック剤、紫外線吸収剤、着色剤、抗菌剤、防カビ剤、防曇剤等を添加することができる。
【0022】
本発明の通気フィルムの厚さは特に制限されないが、一般的には25〜200μmが好ましく、40〜150μmがより好ましい。25μmよりも薄いと、通気性は良くなるが取り扱いが困難となり、また簡単に破れが発生するなどのトラブルを起こしやすくなる。一方、200μmを超えると通気性が低下する。
【0023】
本発明の通気フィルムの製造方法は特に限定されず、射出成形法、押出成形法、インフレーション成形法、真空・加圧成形法、カレンダー成形法等の公知の成形法を用いることができる。これら成形法の中でも、効率的に生産できることから押出成形法が好ましい。本発明の通気フィルムを2層以上の多層構造とする場合は、共押出成形法が好ましい。
【0024】
前記の通り、本発明の通気フィルムの表面は、凹凸構造を有する。通気フィルムの片面または両面に凹凸構造があってもよいし;一方の面の全面または一部に凹凸構造があってもよい。いずれにしても、粘着部を介して、他のフィルムに接着させたい部位に凹凸構造があればよい。
【0025】
本発明の通気フィルムの凹凸構造を有する表面の十点平均粗さRzは、3〜30μmであることが好ましく、5〜25μmであることがより好ましい。十点平均粗さRzが3μm未満であると、粘着部との密着力低減効果が十分でないことがある。一方、30μmを越えると密着力が不足し、接着が維持されずに剥離したり、浮いた部分から水や雑菌等が侵入する可能性がある。
【0026】
本発明の通気フィルムの凹凸構造は、種々の公知の方法で形成することができる。例えば、(共)押出成形して得られたフィルムを加熱しながら、凹凸を有するエンボスロールで凹凸を付与するエンボス法で形成することができる。(共)押出成形に使用する引取りロールをエンボスロールとして、フィルム成形と同時にエンボス加工をすれば、生産性の点からは最も好ましい。
【0027】
本発明の通気フィルムは、その凹凸構造を有する面を、他のフィルムに粘着部を介して接着されることが好ましい。本発明の通気フィルムは、一旦接着された後に剥離することができるので、利便性が高い。本発明の通気フィルムを、他のフィルムに接着させる粘着部の材質は特に制限されず、一般に使われている粘着剤でありうる。粘着剤の例には、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤等が含まれる。
【0028】
粘着部は、本発明の通気フィルムと他のフィルムのうち、他のフィルムの所定の位置に粘着剤を塗布することによって、形成されることが好ましい。通気フィルムの表面には凹凸構造があるので、その面に粘着剤を塗布すると、粘着剤が凹凸の凹部を埋めてしまうおそれがあるからである。
【0029】
本発明の通気フィルムの凹凸構造を有する面と、粘着部を介して接着される他方のフィルムは特に限定されず、目的に応じた所望のフィルムと接着させることができる。他方のフィルムの例には、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル等のプラスチック製のフィルムが含まれる。また、別個の本発明の通気フィルムと接着させたり、折り曲げて裏面と接着させることもできる。
【0030】
図1は、基材フィルムに粘着部を介して接着させた本発明の通気フィルムを、基材フィルムから剥離している状態を示す模式図である。図1に示すように、通気フィルム1は、凹凸構造を有する面が粘着部2を介して基材フィルム3と接着されている。通気フィルム1は、凸部のみが粘着部2に接触しているため、粘着部2との接触面積が小さくなっている。したがって、通気フィルム1は粘着部2から容易に剥離することが可能である。
【0031】
4−メチル−1−ペンテン系重合体は、融点が高く(通常225℃〜240℃)、かつ加水分解を起こさない。そのため、耐水性、耐沸水性、耐スチーム性が優れている。また、4−メチルペンテン−1系重合体は、可視光線透過率が高く(通常90%以上)、さらにほとんどの薬品に優れた耐薬品性を示す。これらの特性を活用して、培養容器等として用いられることが提案されている。つまり、スチーム滅菌処理が可能であり、培養液を入れて長期間培養しても液漏れが生じ難い培養容器が提供されうる。
【0032】
そこで本発明の通気フィルムも、特段の限定はされないが、包装袋や、シート状培地と称される培養器具のカバーフィルム、包装ラベル等として用いられうる。
【0033】
シート状培地について:
図2は、本発明の通気フィルムをカバーフィルムとして用いたシート状培地の一例を示す斜視図である。
【0034】
図2において、シート状培地101は、基材であるシート部材102と、カバーフィルム103と、培地104と、スぺーサー105と、粘着部106とから構成されている。培地104は、シート部材102と接着固定され;スぺーサー105は、培地104に接着されている。スペーサー105は、培地104を露出させるための環状開口部を中央に有し、これにより試料の接種範囲が画定される。また、粘着剤がスペーサー105の縁辺部に塗布されて、粘着部106が形成されている。カバーフィルム103は本発明の通気フィルムであり、凹凸構造を有する面が粘着部106を介してスぺーサー105と接着される。
【0035】
培地104は、微生物等を生育することが可能であれば、その材質、大きさ、厚さ等は特に制限されず、公知の培地が使用されうる。培地104は、シート部材102の全面に形成してもよいし、中央部周辺のみに形成してもよい。
【0036】
また、シート部材102も特に制限されず、例えば、前記他のフィルムが使用されうる。スペーサー105の材質、厚さ、開口部の直径等も特に制限されず、目的に応じて適宜選択されうる。また、粘着剤の塗布位置は特に制限されず、スペーサー105表面の所望の位置に塗布されうる。
【0037】
以下、シート状培地101を使用した微生物の培養方法の一例を説明する。まず、微生物を含む試料液を調製する。次いで、カバーフィルム103をスペーサー105から剥離し、前記試料液をスポイト、ピペット等を使用して露出した培地104に接種する。そして、カバーフィルム103を再びスペーサー105に、粘着部106を介して密着させて培地104を密閉する。その後、所定の温度で培養して微生物を生育させる。その後も必要に応じて、粘着部106を介してカバーフィルム103のスぺーサー105からの剥離と、スぺーサー105への接着を繰り返すことができる。
【0038】
前述の通り、本発明の通気フィルムは4−メチル−1−ペンテン系樹脂を含むので、ガス透過性が高く、微生物の培養に必要な酸素や二酸化炭素を透過させて、培地に供給することができる。一方で、本発明の通気フィルムは、スペーサーに密着しているので、培地に異物が接触するのを防止することができる。そのため、図2に示されるシート培地は、適切な培養を実現することができる。
【0039】
包装袋について:
一方、本発明の通気フィルムを医療用途や食品用途の包装袋とすることもできる。例えば、本発明の通気フィルムを2枚重ね合わせて、縁辺部同士を接着することで包装体とすることができる。重ね合わされる通気フィルムは、互いに対向する面の一方を、凹凸構造を有する面とすればよい。重ね合わせた通気フィルムのうち、接着される縁辺部の少なくとも一部を粘着剤で接着すればよく、当該一部を開口部として開封と密封とを繰り返すことができる。例えば、重ね合わせた通気フィルムの三方向の縁辺部同士を再剥離不可能な接着剤で接着固定し、残りの一方の縁辺部同士を粘着剤で接着すればよい。
【0040】
さらに、1枚の通気フィルムを半分に折り畳み、前記と同様の加工を施すことにより包装体とすることもできる。すなわち、半分に折り畳んだ通気フィルム同士の縁辺部を接着し、かつ縁辺部の少なくとも一部を粘着剤で接着すればよい。それにより、当該一部を開口部として、開封と密封とを繰り返すことができる。
【0041】
いずれの場合も、縁辺部のうち、少なくとも一部を再剥離可能な縁辺部とすることにより、包装体とする。そして、包装体の再剥離可能な縁辺部を剥離して開口し、所望の封入物を入れる。その後、縁辺部同士を再び接着して開口部を閉じる。
【0042】
本発明の包装袋を培養袋として用いる場合には、オートクレーブ、放射線照射、エチレンオキサイドガス処理等の滅菌処理を行った後、培養物と培養液を入れる。次いで無菌条件下で、開口部をシールして密封し、適当な培養環境で培養すればよい。
【0043】
ラベルについて:
本発明の通気フィルムは、包装体のラベル(例えば内容物を表示するラベル)として使用してもよい。特に、通気性がある包装体に通常のラベルを貼り付けてしまうと、貼り付けた部分の通気性を阻害してしまうが;そのラベルを本発明の通気フィルムとすれば、通気性が阻害されない。さらに、接着されたラベルを剥離したり、再び貼り付けたりすることができるので、利便性が高い。本発明の通気フィルムからなるラベルは、包装体等の被接着体に粘着剤により付着されればよい。
【0044】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明の範囲は、これら実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0045】
[実施例1]
4−メチル−1−ペンテン系重合体(以下P4MP1という)として、4−メチルペンテン−1/デセン−1=97/3(モル比)の共重合体を準備した。この共重合体を、300℃に加熱した押出し機で可塑化し、T型ダイから20m/分の速度で引き取りながら、厚さ100μmの単層フィルムを作製した。
【0046】
次いで得られたフィルムを、十点平均粗さRzが30μmの2本のエンボスロールで、ロール温度130℃、エンボス加工速度20m/分でエンボス加工した。エンボス処理されたフィルム表面には凹凸が形成され、その十点平均粗さRzは24μmであった。このフィルムの酸素ガス透過係数は、1500cm・mm/m・24hrs・atmであった。酸素ガス透過係数は、測定装置:差圧法ガス透過率測定装置MT−C3(東洋精機製作所社製)を用いて測定した。
【0047】
[実施例2]
十点平均粗さRzが15μmのエンボスロールを使用した以外は、実施例1と同様にして凹凸フィルムを作製した。
【0048】
[実施例3]
十点平均粗さRzが5μmのエンボスロールを使用した以外は、実施例1と同様にして凹凸フィルムを作製した。
【0049】
[比較例1]
エンボス加工を実施しない以外は、実施例1と同様にして凹凸フィルムを作製した。
【0050】
(再剥離性評価)
188μmのPETフィルム(10cm×10cm)を用意し、中央に2.4cm×5cmの住友3M製Scotch両面テープ665を貼り付けた。次いで、実施例1〜3および比較例1のそれぞれの凹凸フィルム(10cm×10cm)を、ハンドローラーにより前述のPETフィルムに貼り付けた後、1時間室温で放置した。得られた凹凸フィルムの90°ピール強度を(株)東洋精機製作所製の引張試験機ストログラフM−1(剥離速度50mm/min.)を用いて測定し、さらに下記基準により再剥離性を評価した。結果を表1に記す。
【0051】
(評価基準)
○:ピール強度が0.7N/cm以下であり、片手で簡単に剥がせる
△:ピール強度が1.0N/cm以下であり、両手を使えば軽く剥がせる
×:ピール強度が1.0N/cm超過であり、両手を使っても剥がし辛い
【0052】
【表1】

【0053】
表1に示された通り、実施例1〜3のフィルムは、エンボス加工によりフィルム表面のRzが大きいため、ピール強度が小さく、再剥離が容易であった。一方、比較例1のフィルムは、エンボス加工を施していないため、フィルム表面のRzが小さく、再剥離性は悪かった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上に説明したように、本発明の通気フィルムは、非多孔質フィルムでありながら酸素や二酸化炭素等のガス透過性が高く、かつ粘着部との接触面に凹凸構造を有するため、接着後に再剥離が容易である。そのため、本発明の通気フィルムは、通気性や接着後の再剥離性が要求される、医療器具の包装用ラベル、食品用途や医療用途の包装体、培地シートのカバーフィルム等に用いることができる。
【符号の説明】
【0055】
1:通気フィルム
2:粘着部
3:基材フィルム
101:シート状培地
102:シート部材
103:カバーフィルム
104:培地
105:スぺーサー
106:粘着部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
4−メチル−1−ペンテン系樹脂からなり、表面に凹凸構造を有する通気フィルム。
【請求項2】
前記通気フィルムの凹凸構造を有する面が、粘着部を介して他方のフィルムに接着される、請求項1に記載の通気フィルム。
【請求項3】
前記凹凸構造は、エンボス加工によって形成されたものである、請求項1または2に記載の通気フィルム。
【請求項4】
前記凹凸構造を有する面の十点平均粗さRzは3〜30μmである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の通気フィルム。
【請求項5】
通気フィルムの厚みは25〜200μmである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の通気フィルム。
【請求項6】
前記4−メチル−1−ペンテン系樹脂は、4−メチルペンテン−1 85〜99モル%と、4−メチルペンテン−1以外の炭素数2〜20のα−オレフィン1〜15モル%とからなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の通気フィルム。
【請求項7】
請求項1に記載の通気フィルムであって、
シート部材と、該シート部材の表面に配置された培地及び粘着部とを有するシート状培地を被覆し、前記粘着部を介して接着されるフィルム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−195893(P2010−195893A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41267(P2009−41267)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】