説明

通気溝を設けたメタルドーム型スイッチの構造

【課題】 防水・防塵性を持つための通気溝を設けたメタルドーム型スイッチの構造において、メタルドームの位置精度を向上させ、かつ修理や製造の際の作業性を向上させたメタルドーム型スイッチの構造。
【解決手段】 スイッチ接点を備えるプリント基板1の表面に、スイッチ接点の配設位置に対応して形成した開口部31と、前記開口部に連結する通気溝32とを備える大判粘着シート3を貼り合せたことによって、スイッチ内の空気を逃がすための通気溝32が形成され、さらに、小片押さえシート4の粘着層4bに1つのメタルドーム2を載置して作成した小片押さえシート付きメタルドームを、開口部31の内側に配置されたスイッチ接点に搭載するとともに、メタルドーム2に付着している小片押さえシート4の周縁部分を大判粘着シート3の表面に貼り付けたことによって、プリント基板1に対してメタルドーム2が固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話やデジタルカメラ、PDAなどのキースイッチとして用いられるメタルドーム型スイッチの構造に関し、スイッチのクリック感の低下を防止するための通気溝を設けたメタルドーム型スイッチの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やデジタルカメラ、PDAなどのキースイッチとして、金属を皿状に変形させた弾性変形可能なドーム型可動接点(以下、メタルドームという)を使用したメタルドーム型スイッチが採用されている。
メタルドーム型スイッチは、第1固定接点と第2固定接点とからなるスイッチ接点を備えるプリント基板と、前記スイッチ接点に搭載されるメタルドームと、プリント基板にメタルドームを固定するための押さえシートとから構成される。
スイッチオフ状態の場合、プリント基板に固定されたメタルドームは、その周縁が第1固定接点に接地し、第1固定接点のみにメタルドームが接する。
スイッチをクリックしてスイッチオン状態にした場合、プリント基板に固定したメタルドームが弾性変形し、メタルドームの周縁が第1固定接点に接地するとともに、メタルドームの中央部分が第2固定接点に接地し、第1固定接点と第2固定接点はメタルドームを介して導通する。
なお、プリント基板にメタルドームを固定するための押さえシートは、ポリエステル系基材からなる粘着シートや、ポリエステル系フィルムに粘着剤を印刷した粘着シートが使用されている。また前記粘着剤としては、価格や作業性などの理由からアクリル系の粘着剤が用いられている。
そしてメタルドーム型スイッチの防水・防塵性を向上させるため、押さえシートの全面に粘着剤を塗布したものが使用されている。
【0003】
従来技術によれば、スイッチのクリック感の低下を防止するために、スイッチ内の空気を逃がすための通気溝(メタルドームの外周部に通気可能な溝)を設けたメタルドーム型スイッチ構造が知られている。(例えば、特許文献1を参照)
図3を参照して、従来技術による通気溝を設けたメタルドーム型スイッチの構造を説明する。
図3(a)は、従来技術によるメタルドーム型スイッチの断面図であり、図3(b)は、メタルドーム型スイッチの平面図であり、図3(c)は、メタルドーム型スイッチの作成方法を説明する図である。
従来技術によれば、通気溝103cを備える1枚の押さえシート103を用いて、スイッチ接点を備える基板101に対して、メタルドーム102を固定していた。
図3(a)に示すメタルドーム型スイッチは、第1固定接点101a及び第2固定接点101bからなるスイッチ接点を2つ備えるプリント基板101と、2つのメタルドーム102と、プリント基板101に2つのメタルドーム102を固定するための押さえシート103とから構成される。
そして、プリント基板101の2つのスイッチ接点にそれぞれメタルドーム102を搭載するとともに、メタルドーム102が搭載されたプリント基板101の上から通気溝103cを備える1枚の押さえシート103を貼り合せて、プリント基板1に対して各メタルドーム102を固定していた。
また図3(b)に示すように、プリント基板101の表面に押さえシート103を貼り合わせるときに、押さえシート103にある通気溝103cを、隣り合うスイッチ間(隣り合うメタルドーム102間)に配置することによって、スイッチ内の空気を逃がすための通気溝103cを形成していた。前記通気溝103cを設けることによって、一方のスイッチをクリックした際にスイッチ内の空気が隣のスイッチ内に流れ込み、スイッチのクリック感が損なわれるのを防止できる。
なお従来技術によれば、図3(c)に示すように、ポリエステル系フィルムからなるシート基材103aと粘着層(粘着剤)103bとからなる押さえシート103に、粘着剤を塗布されていない部分からなる通気溝103cを形成し、当該押さえシート103の粘着層103bに2つのメタルドーム102を載置することによって、2つのメタルドームが付着した押さえシートを作成した。そして、当該メタルドーム付きの押さえシートを反転し、第1固定接点101a及び第2固定接点101bからなる2つのスイッチ接点にそれぞれメタルドーム102が搭載されるように、プリント基板101の表面に押さえシート103を貼り合せ、プリント基板101にメタルドーム102を固定していた。
なお防水・防塵性を向上させるため、通気溝103cを除くシート全面に粘着剤を塗布し、当該押さえシート103を、メタルドーム102を搭載したプリント基板1の表面に貼り合せることによって、複数のメタルドーム102をプリント基板101に固定していた。
【特許文献1】特開2001−035305号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図3(c)に示すように、複数のメタルドーム102が付着したメタルドーム付き押さえシートをプリント基板101に貼り合せることによって、プリント基板101にメタルドーム102を固定する場合、プリント基板101に押さえシート103を貼り合せている工程で、押さえシート103からメタルドーム102が剥がれ落ちたり外れたりして、プリント基板101に固定されたメタルドーム102の位置精度が低下し、製造の際の作業性も悪かった。
また従来技術では、防水・防塵性を向上させるためにシートの全面に粘着剤を塗布した1枚の押さえシート103によって、複数のメタルドーム102をまとめて固定していたため、プリント基板101に固定した複数のメタルドーム102のうち1つのメタルドームを交換するといった修理の際、プリント基板1の表面に貼りあわされている押さえシート103を剥がした後、全てのメタルドーム102について、新たな押さえシート103を用いてプリント基板101に固定しなおさなければならなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明は、小片シート基材と粘着層とからなる小片押さえシートを使用して、プリント基板のスイッチ接点にメタルドームを固定したメタルドーム型スイッチの構造であって、第1及び第2固定接点とからなるスイッチ接点を備えるプリント基板の表面に、スイッチ接点の配設位置に対応して形成した開口部と、前記開口部に連結する通気溝とを備える大判粘着シートを貼り合せたことによって、スイッチ内の空気を逃がすための通気溝が形成され、さらに、小片押さえシートの粘着層に1つのメタルドームを載置して作成した小片押さえシート付きメタルドームを、開口部の内側に配置されたスイッチ接点に搭載するとともに、スイッチ接点に搭載したメタルドームに付着している小片押さえシートの周縁部分を大判粘着シートの表面に貼り付けたことによって、プリント基板に対してメタルドームが固定されたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明による通気溝を設けたメタルドーム型スイッチ構造によれば、開口部及び通気溝を備える大判粘着シートをプリント基板の表面に貼り合せることによって、スイッチ内の空気を逃がすための通気溝を形成するとともに、小片押さえシートを使用して、各スイッチ接点に搭載されたメタルドームを一つ一つ固定した。
すなわち、小片押さえシートによって、スイッチ接点に搭載したメタルドームを個々に固定したため、メタルドームを交換するといった修理の際は、交換すべきメタルドームを固定している小片押さえシートのみを剥がせばよく、簡単に修理することができる。
また、複数のメタルドームが付着した押さえシートをプリント基板に貼り合せることによってスイッチ接点にメタルドームを固定していた従来技術に比べ、小片押さえシートの粘着層に1つのメタルドームを載置して作成した小片押さえシート付きメタルドームを使用するため、メタルドームの固定作業中に、粘着層からメタルドームが剥がれ落ちたり、外れたりする虞がなく、作業性が向上し、かつメタルドームの位置精度が向上する。
さらに、通気溝を除いて全面に粘着剤を塗布した大判粘着シートと、小片シート基材の全面に粘着剤を塗布した小片押さえシートを使用するため、防水・防塵性が損なわれることなくプリント基板にメタルドームを固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の実施例による通気溝を設けたメタルドーム型スイッチを、図1及び図2を参照して説明する。
【0008】
この発明によるメタルドーム型スイッチは、第1及び第2固定接点1a,1bとからなるスイッチ接点を備えるプリント基板1と、前記プリント基板1のスイッチ接点に搭載されるメタルドーム2と、スイッチ内の空気を逃がすための通気溝32を形成するための大判粘着シート3と、プリント基板1にメタルドーム2を固定するための小片押さえシート4とから構成される。
そして、スイッチ接点を備えるプリント基板1の表面に、スイッチ接点の配設位置に対応して形成した開口部31と、当該開口部31に連結する通気溝32とを備える大判粘着シート3を貼り合せることによって、スイッチ内の空気を逃がすための通気溝32を形成した。
また大判粘着シート3を貼り合せたプリント基板1に対し、開口部31の内側に配置されたスイッチ接点に搭載されたメタルドーム2を小片押さえシート4によって固定した。なお、1枚の小片押さえシート4につき、1つのメタルドーム2をプリント基板1のスイッチ接点に固定した。
【0009】
図1(a)は、メタルドーム型スイッチの平面図を示すものであり、図1(b)は、図1(a)に示すA−A線の断面図である。
図1に示すメタルドーム型スイッチは、第1固定接点1aと第2固定接点1bとからなるスイッチ接点を5つ備えるプリント基板1に対して、小片押さえシート4を使用して、5つのメタルドーム2をそれぞれ固定したものである。
なおスイッチオフ状態の場合、プリント基板1のスイッチ接点に搭載(固定)されたメタルドーム2は、その周縁が第1固定接点1aに接地し、第1固定接点1aのみにメタルドーム2が接する。
スイッチをクリックしてスイッチオン状態にした場合、プリント基板1のスイッチ接点に搭載(固定)されたメタルドームが弾性変形し、メタルドーム2の周縁が第1固定接点1aに接地するとともに、メタルドーム2の中央部分が第2固定接点1bに接地し、第1固定接点1aと第2固定接点1bとがメタルドーム2を介して導通する。
【0010】
図1(a)に示すように、第1及び第2固定接点1a,1bからなるスイッチ接点を備えるプリント基板1の表面に、開口部31と通気溝32とを備える大判粘着シート3を貼り合わせることによって、スイッチ内の空気を逃がすための通気溝32を形成した。
なお大判粘着シート3の開口部31は、プリント基板1のスイッチ接点の配設位置に対応して配置され、前記開口部31に連結する通気溝32は、スイッチ接点間に配置されている。
そして大判粘着シート3を貼り合せたプリント基板1に対し、開口部31の内側に配置されたスイッチ接点(5箇所)に搭載されるメタルドーム2のそれぞれを、小片押さえシート4によって固定した。なお1つのメタルドーム2につき、1枚の小片押さえシート4を使用して、プリント基板1にメタルドーム2を固定した。
【0011】
さらにこの実施例では、図1(b)に示すように、プリント基板1のスイッチ接点の配設位置(5箇所)に、大判粘着シート3の開口部31(5箇所)がそれぞれ配置されるようにプリント基板1と大判粘着シート3とを貼り合せ、さらに前記開口部31に連結する通気溝32を、隣り合うスイッチ接点間に配置し、スイッチ内の空気を逃がすための通気溝32を形成した。
スイッチ内の空気を逃がすための通気溝32を各スイッチに設けることによって、1つのスイッチをクリックした際に当該スイッチ内の空気が隣のスイッチ内に流れ込み、スイッチのクリック感が損なわれるのを防止できる。
【0012】
通気溝32を除いてシート全面に粘着剤を塗布した大判粘着シート3を、プリント基板1の表面に貼り合せるとともに、シート全面に粘着剤を塗布した小片粘着シート4を、開口部31の内側に配置されるスイッチ接点に搭載されるメタルドーム2の上から貼り付けて、プリント基板1の各スイッチ接点に対してそれぞれメタルドーム2を固定したこの発明によるメタルドーム型スイッチでは、JISC0098による防塵試験や、JISC0022による防水試験に合格することができた。
また開口部31及び通気溝32を備える大判粘着シート3を、プリント基板1の表面に貼り合せることによって各スイッチに対して、スイッチ内の空気を逃がすための通気溝32を形成した本発明によるメタルドーム型スイッチでは、クリックしたスイッチ内の空気が前記通気溝32を通って隣のスイッチ内に流れ込むため、良好なクリック感をたもつことができた。
【0013】
次に、通気溝を設けたメタルドーム型スイッチの作成方法について、図2を参照して説明する。
図1に示すメタルドーム型スイッチを作成するにあたって、第1及び第2固定接点1a,1bからなるスイッチ接点を備えるプリント基板1に、開口部31及び通気溝32を備える大判粘着シート3を貼り合せて、プリント基板1に各スイッチ内の空気を逃がすための通気溝32を形成する工程(図2(a)を参照)と、小片押さえシート4の粘着層4bに1つのメタルドーム2を載置して作成した小片押さえシート付きメタルドームを、開口部31の内側に配置されているスイッチ接点に搭載するとともに、前記メタルドーム2に付着している小片押さえシート4の周縁部分を大判粘着シート3の表面に貼り付ける工程(図2(b)を参照)とから、通気溝32を設けたプリント基板1の各スイッチ接点に対して、それぞれメタルドーム2を固定する。
【0014】
図2(a)は、プリント基板1と大判粘着シート3とを示す図である。
プリント基板1の表面には、第1固定接点1aと第2固定接点1bとからなるスイッチ接点が5つ形成されている。
大判粘着シート3には、前記スイッチ接点の配設位置に対応して形成した5つの開口部31と、前記開口部31に連結する通気溝32とが形成されている。
この実施例では、ポリエステル系フィルムからなるシート基材3に開口部31を形成するとともに、当該シート基材3にアクリル系の粘着剤を印刷(塗布)することによって、開口部31を備える大判粘着シート3を作成した。またシート基材3aと粘着層(粘着剤)3bの2層から構成される大判粘着シート3に、粘着剤が塗布されていない部分からなる通気溝32を形成した。なお大判粘着シート3の粘着面には、通気溝32を除いてシート全面に粘着剤を塗布した。
【0015】
図2(b)は、大判粘着シート3を貼り合せたプリント基板1と、小片押さえシート付きメタルドーム2とを示す図である。
プリント基板と同等の大きさの大判粘着シート3を貼り合せたプリント基板1には、開口部31の内側にスイッチ接点が配置されるとともに、スイッチ内の空気を逃がすための通気溝32が各スイッチ接点に対して形成されている。なお、隣り合うスイッチ接点間に通気溝32を配置し、一方のスイッチがクリックされると、当該スイッチ内の空気が前記通気溝32を通って隣のスイッチ内に流れ込むように構成した。
【0016】
また小片シート基材4aと粘着層4bとからなる小片押さえシート4のと、メタルドーム2とから構成した小片押さえシート付きメタルドームを、前記スイッチ接点の数にあわせて作成した。
なお小片押さえシート4の粘着面には、シート全面に粘着剤が塗布されており、当該小片押さえシート4の粘着層(粘着剤)4bに、一つのメタルドーム2を載置して小片押さえシート付きメタルドームを作成した。
【0017】
なお図2に示す実施例では、小片押さえシート付きメタルドームを5つ作成し、各メタルドームをそれぞれプリント基板1のスイッチ接点に搭載するとともに、前記メタルドーム2に付着している小片押さえシート4の周縁部分を、それぞれ大判粘着シート3の表面(開口部31の周囲)に貼り付けることによって、プリント基板1の各スイッチ接点に対して個々にメタルドーム2を固定した。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の実施例によるメタルドーム型スイッチを示す図である。
【図2】図1に示すメタルドーム型スイッチの説明図である。
【図3】従来技術によるメタルドーム型スイッチの説明図である。
【符号の説明】
【0019】
1 プリント基板
1a 第1固定接点
1b 第2固定接点
2 メタルドーム
3 大判粘着シート
3a シート基材
3b 粘着層
31 開口部
32 通気溝
4 小片押さえシート
4a 小片シート基材
4b 粘着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小片シート基材(4a)と粘着層(4b)とからなる小片押さえシート(4)を使用して、プリント基板(1)のスイッチ接点にメタルドーム(2)を固定したメタルドーム型スイッチの構造であって、
第1及び第2固定接点(1a,1b)とからなるスイッチ接点を備えるプリント基板(1)の表面に、スイッチ接点の配設位置に対応して形成した開口部(31)と、前記開口部に連結する通気溝(32)とを備える大判粘着シート(3)を貼り合せたことによって、スイッチ内の空気を逃がすための通気溝(32)が形成され、
さらに、小片押さえシート(4)の粘着層(4b)に1つのメタルドーム(2)を載置して作成した小片押さえシート付きメタルドームを、開口部(31)の内側に配置されたスイッチ接点に搭載するとともに、スイッチ接点に搭載したメタルドーム(2)に付着している小片押さえシート(4)の周縁部分を大判粘着シート(3)の表面に貼り付けたことによって、プリント基板(1)に対してメタルドーム(2)が固定されていることを特徴とする通気溝を設けたメタルドーム型スイッチの構造。
【請求項2】
粘着剤を印刷することによって、シート基材(3a)と粘着層(3b)からなる大判粘着シート(3)を作成し、
さらに前記大判粘着シート(3)に、粘着剤が塗布されていない部分からなる通気溝(32)を形成したことを特徴とする請求項1に記載の通気溝を設けたメタルドーム型スイッチの構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−40808(P2006−40808A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−222117(P2004−222117)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】