説明

通気部材及び通気構造

【課題】 水や塵芥などの異物に対する耐久性に優れる通気部材を提供する。
【解決手段】 本発明の通気部材100は、通気経路となる貫通孔21hの一方の開口を塞ぐように通気膜2が配置された支持体21と、通気膜2が配置された側から支持体21を覆うカバー部品11とを備える。カバー部品11は、通気膜2と向かい合う天井部13と、支持体21を周方向に取り囲む側壁部15とを含む。カバー部品11の天井部13には、その天井部13と通気膜2との間の隙間と、カバー部品11の外部とを連通する通気孔13hが、軸方向に関して通気膜2と重なり合うことのない位置に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の電装部品などを収容する筐体に装着する通気部材に関する。また、筐体の換気を行うための通気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ランプ、センサ又はECUといった自動車の電装部品を収容する筐体には、筐体の内部と外部との通気を確保するとともに、筐体内部への異物の侵入を阻止する通気部材が取り付けられている。そのような通気部材の一例が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されている通気部材は、図16に示すごとく、通気膜102が配置された支持体103と、通気膜102を覆うように支持体103に嵌め込まれた保護部104とを備えている。このような通気部材101を、Oリング105を介して筐体106の開口部107に固定する。通気膜102を気体が透過することにより、筐体106内外の通気を確保できる。保護部104は、外力によって通気膜102が損傷したり、塵芥の堆積によって通気膜102の通気度合いが低下したりすることを防止する。
【特許文献1】特開2004−47425号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、異物に対する耐久性により優れる通気部材が求められている。例えば、自動車のランプ又はECUの筐体に用いる通気部材として、洗車、特に高圧洗車にも耐えることができ、筐体内部への水の侵入を完全に遮断できる通気部材が求められている。
【0005】
本発明は、水、エンジンオイルやブレーキオイルといったオイル類、塵芥などの異物に対する耐久性に優れた通気部材及び通気構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の通気部材の第1構成は、換気を行うべき筐体の内外の通気経路となる貫通孔が形成され、その貫通孔の一方の開口を塞ぐように通気膜が配置された支持体と、通気膜が配置された側から支持体を覆うカバー部品とを備え、通気膜の厚さ方向に平行な方向を軸方向とし、軸方向における通気膜で塞がれた開口の位置する側を上側、筐体に接続する開口の位置する側を下側と定義したとき、カバー部品は、支持体を内側に配置して互いの相対位置を固定した組付状態となったときに通気膜と向かい合う天井部と、その天井部の周縁から通気膜の配置されている位置よりも軸方向の下側に延び、支持体を周方向に取り囲む側壁部とを含み、カバー部品の天井部には、組付状態で天井部と通気膜との間に形成される隙間と、当該カバー部品の外部とを連通する通気孔が形成されており、その通気孔と通気膜の通気領域とが、軸方向に関して重なり合うことのない位置関係となっていることを特徴とする。
【0007】
上記本発明によれば、カバー部品の側壁部によって通気膜を配置している支持体を取り囲むようにしているので、横方向(面内方向)から水滴等の異物が飛来してきた場合でも、通気膜に異物がダイレクトに付着することを阻止することができる。さらに、カバー部品の天井部に通気孔を形成したため、カバー部品の内外の通気性が高まり、カバー部品の内側に湿気が溜まったりすることを防止できる。カバー部品の天井部の通気孔は、軸方向において通気膜と重ならない位置に形成するので、軸方向からの異物の飛来に対しても、通気膜にダイレクトに付着することを防止できる。また、本発明の通気部材は、カバー部品が鉛直下向きで筐体に取り付けられるような場合もあるが(図8参照)、そのような場合、カバー部品内に水が侵入するとカバー部品内に水がそのまま溜まってしまう可能性がある。ところが、本発明の通気部材によれば、万が一カバー部品内に水が侵入した場合でも、通気孔から直ちに水を排出することが可能である。このように、本発明の通気部材は、水や塵芥などの異物に対する耐久性が極めて高い。
【0008】
好適な態様において、上記カバー部品は、天井部及び側壁部の少なくとも一方の内側面上の周方向に沿った複数箇所に設けられて支持体に係合するカバー側係合部をさらに含む。この場合、カバー部品の通気孔は、隣り合うカバー側係合部同士の間に位置するように天井部に形成することができる。このようにすれば、通気孔を形成することによるカバー部品のサイズ拡大を考慮する必要がなくなる。
【0009】
ところで、カバー部品の通気孔は、側壁部に形成することも可能である。すなわち、本発明の通気部材の第2構成は、カバー部品の側壁部に、組付状態で天井部と通気膜との間に形成される隙間と、当該カバー部品の外部とを連通する通気孔又は切り欠きを形成し、カバー部品と支持体とが組付状態となったときに、軸方向に垂直な面内方向に関して通気孔又は切り欠きが通気膜に直接臨むことを妨げる隔壁を設けるというものである。
【0010】
単に、カバー部品の側壁部に通気孔又は切り欠きを形成しただけでは、通気膜に水滴等の異物がダイレクトに当たってしまう可能性がある。そこで、面内方向に関して通気孔又は切り欠きが通気膜に直接臨むことを妨げる隔壁を設ける。このようにすれば、横方向(面内方向)から異物が飛来した場合でも、通気膜に水滴等がダイレクトに付着することを阻止することができる。また、通気孔又は切り欠きを形成することにより、カバー部品の内外の通気性を高めることが可能であるとともに、第一構成と同様の排水性も見込める。
【0011】
上記した隔壁は、カバー部品および/または支持体の一部として設けることができる。このようにすれば、部品点数増の問題がない。より好適な態様において、支持体は、筐体の内外の通気経路となる貫通孔が形成され、その貫通孔の一方の開口を塞ぐように通気膜が配置された本体部と、本体部の周方向に沿って設けられた支持体側係合部とを含む。カバー部品は、天井部及び側壁部の少なくとも一方の内側面上に設けられて支持体の支持体側係合部と係合するカバー側係合部をさらに含む。そして、通気孔又は切り欠きを、カバー部品の周方向においてカバー側係合部と対応した位置関係にて形成することにより、支持体側係合部とカバー側係合部とによる係合部を通気孔又は切り欠きに対する隔壁に兼用することができる。このようにすれば、隔壁を別途設ける必要性が無くなるので、通気孔又は切り欠きを形成することによってカバー部品のサイズが大幅に拡大したり、通気部材の構造が複雑化したりする問題が生じない。
【0012】
また、通気孔を必須としない構成も提案しうる。すなわち、本発明の通気構造は、換気を行うべき筐体の開口部と、その開口部に取り付けられた通気部材とによる通気構造であって、通気部材は、筐体の内外の通気経路となる貫通孔を有し、その貫通孔の一方の開口を塞ぐように通気膜が配置された本体部と、本体部の貫通孔の他方の開口側に接続するとともに筐体に設けられた開口部に差し込まれる脚部とを含む支持体と、脚部とは反対側から支持体を覆うカバー部品とを備え、通気膜の厚さ方向に平行な方向を軸方向、軸方向と垂直な方向を面内方向とし、軸方向における通気膜が位置する側を上側、脚部が位置する側を下側と定義するとき、支持体は、通気膜の配置領域を貫通孔の周りに確保するべく本体部が面内方向外向きに張り出し、その張り出した本体部よりも内側に脚部が収まった形態をなすとともに、その本体部の周方向に沿って設けられた支持体側係合部をさらに含み、カバー部品は、支持体を内側に配置して互いの相対位置を固定した組付状態となったときに通気膜と向かい合う天井部と、その天井部の周縁から通気膜の配置されている位置よりも軸方向の下側に延び、支持体の本体部を周方向に取り囲む側壁部と、天井部及び側壁部の少なくとも一方の内側面上に設けられて支持体の支持体側係合部と係合するカバー側係合部とを含み、支持体とカバー部品とは、支持体側係合部とカバー側係合部とが係合しあうことによって組付状態となって、天井部と通気膜との間に通気経路として機能する第一隙間が形成されるとともに、脚部を筐体の開口部に差し込んで、本体部が筐体に直接又は他部品を介して着座した実使用状態となった際に、カバー部品における側壁部の下端と筐体との間に気体が流通可能な第二隙間が生じ、それら第一隙間及び第二隙間を通じて通気膜を介した換気が行われるように、カバー部品と支持体との軸方向に関する相対長さ調整がなされていることを特徴とする。
【0013】
上記本発明の通気構造は、換気を行うべき筐体の開口部に通気部材を差し込む様式のものである。通気部材は、通気膜を配置する支持体の側方をカバー部品で覆うようにしているので、水滴等の異物に対する耐久性に優れる。また、カバー部品における側壁部の下端と筐体との間に気体が流通可能な隙間が生じるように、軸方向に関する各部品の長さを調整しているので、カバー部品の内外の通気性を良好に保つことができ、ひいては通気膜を介した換気を効率よく行えるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(第一実施形態)
以下、添付の図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の通気部材の斜視図である。図2は、図1の通気部材を筐体に取り付けることによって形成された通気構造の断面図である。図3は、図1及び図2に示す通気部材の分解斜視図である。図15は、図2の通気構造の全体斜視図である。図2及び図15に示すごとく、自動車の電装部品の筐体51の開口部52と、その開口部52に取り付けられた通気部材100とは、水滴等の異物の侵入を阻止しつつ筐体51内の換気を行うための通気構造500を構成する。
【0015】
図1〜図3に示すごとく、通気部材100は、筐体51の内外の通気経路となる貫通孔21hを有した支持体21と、筐体51の開口部52に差し込む側とは反対側から支持体21を覆うカバー部品11とを備えている。支持体21に形成された貫通孔21hの一方の開口は、通気膜2によって塞がれており、他方の開口が筐体51内に向けて開放している。通気膜2は、気体の通過を許容するが、筐体51内に水滴や塵芥などの異物が侵入することを阻止する。この通気膜2の作用により、筐体51内の圧力は外部の圧力に等しく保たれる。また、通気膜2を介した換気が効率よく行えるように、カバー部品11には、カバー部品11の内外を液体及び気体が流通可能な通気孔13hが形成されている。通気孔13hからカバー部品11内に異物が侵入した場合であっても、その異物が通気膜2に直接当たらないようにするため、通気孔13hは、支持体11の貫通孔21hの中心軸線Oから十分離れたところに位置している。これにより、カバー部材11の内外の良好な通気性を確保しつつ、通気膜2に異物が付着することを防止できる。
【0016】
以下、個々の部品について説明したのち、部品同士の関係について詳細に説明する。なお、本明細書中においては、通気膜2の厚さ方向に平行な方向を軸方向、軸方向と垂直な方向を面内方向と定義する。軸方向は、換言すれば、貫通孔21hの中心軸線Oに平行な方向である。また、軸方向に関し、通気膜2で塞がれた開口の位置する側を上側、筐体51に接続する開口の位置する側を下側と定義する。
【0017】
図1〜図3に示すごとく、支持体21は、本体部23、脚部25a,25b及び支持体側係合部27を含む。本体部23は、換気を行うべき筐体51の内外の通気経路AR1の役割を担う貫通孔21hが中央に形成された部分であり、通気膜2の配置領域を貫通孔21hの周囲に確保するために、半径方向外向きに張り出した略ドーナツ状(又は略円筒状)の形態を有している。この本体部23には、貫通孔21hの一方の開口を塞ぐように通気膜2が配置されている。脚部25a,25bは、通気膜2の配置されているのとは反対側で本体部23につながり、軸方向の下側に延びている。脚部25a,25bを筐体51の開口部52に差し込むことにより、本体部23を筐体51に固定する仕組みである。支持体側係合部27は、カバー部品11を固定する部分であって、通気膜2を取り囲むように本体部23の周方向に沿った3箇所(複数箇所)に等角度間隔で設けられているとともに、カバー部品11と通気膜2との間の隙間を確保しやすいように、上に凸の突起形状を有している。
【0018】
支持体21の脚部25a,25bは、周方向に沿って6つに分かれている。それら6つの脚部25a,25bのうち、3つの脚部25aは、本体部23とは反対側、すなわち、筐体51の開口部52に差し込む側に固定部251aを有している。固定部251aは、半径方向外向きに凸となっている部分である。固定部251aを有する脚部25aと、固定部251aを有さない脚部25bとは交互に配置されている。
【0019】
支持体21の本体部23の下面側(通気膜2を固定する面とは反対側)には、脚部25a,25bを包囲するシールリング7が配置されている。このシールリング7はゴム製である。筐体51の開口部52に脚部25a,25bを強く押し込むと、本体部23と筐体51との間に挟まれたシールリング7の弾性復帰力によって、支持体21は筐体51の開口部52から抜ける方向に付勢される。このとき、筐体51の内部に露出した固定部251aは返しの役割を果たし、脚部25a,25bが筐体51の開口部52から抜け出すことを阻止する。この結果として、通気部材100が筐体51に固定される。なお、ネジ切りした脚部を筐体51の開口部52に差し込む(螺合させる)ことによって、通気部材を筐体51に固定する構成としてもよい。
【0020】
上記のような支持体21は、本体部23、脚部25a,25b及び支持体側係合部27を全て一体のものとして、射出成形や押出成形などの一般的な成形手法により形成することができる。支持体21の素材には、成型性の観点から熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。例えば、オレフィン系、スチレン系、ウレタン系、エステル系、アミド系、塩ビ系などの各種の熱可塑性エラストマー、又は、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリアセタール、ポリスルホン、ポリアクリル、ポリフェニレンサルフィドなどの各種の熱可塑性樹脂、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、天然ゴムなどの各種のゴム、あるいは、これらの複合材を用いることができる。また、支持体21の素材は、カーボンブラック、チタンホワイトなどの顔料類、ガラス粒子、ガラス繊維などの補強用フィラー類、撥水材などを含んでいてもよい。
【0021】
支持体21に固定する通気膜2は、防塵性、防水性及び通気性を兼ね備えた素材によって構成することができる。水滴の侵入を防ぐ程度であれば、繊維素材からなる織布、不織布、ネット、孔径10μm以上の粉末焼結多孔質体又は発泡体を通気膜2として使用することができる。また、これらの素材を複数種類組み合わせて使用してもよいし、多層化したものを使用してもよい。表面が親水性である場合には、フッ素系やシリコン系などの撥水撥油剤でコーティングするようにしてもよい。
【0022】
より高い防水性が必要な場合には、公知の延伸法、抽出法によって製造することができる樹脂多孔質膜、特にフッ素樹脂多孔質膜を用いることが好ましい。こうした多孔質膜の孔径は10μm以下とすることができる。必要に応じて、前述の撥水撥油剤をコーティングするようにしてもよい。十分な防水性を期待するという観点から、多孔質膜の平均孔径は、0.01μm以上10μm以下であることが望ましい。本実施形態では、ポリテトラフルオロエチレンからなる多孔質膜を通気膜2として使用している。また、本実施形態では通気膜2を支持体21に熱溶着しているが、接着剤を用いるなどの他の手段で固定してもよい。
【0023】
また、通気性を有する補強層を通気膜2に積層してもよく、この場合、通気膜2の強度を向上できる。補強層の素材としては、通気膜2よりも通気性に優れることが好ましく、例えば、樹脂又は金属からなる、織布、不織布、メッシュ、ネット、スポンジ、フォーム、多孔体などを用いることができる。通気膜2と補強層とは、接着剤ラミネート、熱ラミネート、加熱溶着、超音波溶着などの手法によって接合されていてもよい。
【0024】
次に、カバー部品11について説明する。図6(a)(b)は、カバー部品の斜視図である。図6に示すごとく、カバー部品11は、天井部13、側壁部15及びカバー側係合部17によって構成されており、全体としては水滴等の異物が通気膜2に直接付着することを防ぐのに適したキャップ状の形態を有している。天井部13は略円板状であり、その周方向に沿った3箇所(複数箇所)に等角度間隔でカバー側係合部17が配置されている。隣り合うカバー側係合部17,17同士の間には、カバー部品11の内外を貫く通気孔13hが周方向に沿って細長く形成されている。側壁部15は、天井部13の周縁からほぼまっすぐ下側に延びた筒状の形態を有する。軸方向に関する側壁部15の長さは、支持体21の本体部23の全体を取り囲むのに十分である。天井部13と側壁部15とは、カバー側係合部17が配置されている箇所でつながっている。このようなカバー部品11は、支持体21と同様の材料を用いるとともに、公知の射出成形法によって天井部13、側壁部15及びカバー側係合部17を一体に作製することができる。
【0025】
なお、本実施形態では、通気孔13hを細長い溝状としているが、これに限定されるものではない。例えば、図7に示すカバー部品11’のごとく、隣り合うカバー側係合部同士の間に、複数の通気孔14h,14hを形成するようにしてもよい。また、カバー側係合部17を天井部13の内側面上に設けるようにしているが、側壁部15の内側面上にカバー側係合部を設けるようにしてもよい。
【0026】
次に、カバー部品11、支持体21及び通気膜2の相対位置関係について説明する。図2に示すごとく、カバー側係合部17と支持体側係合部27とを係合させて、カバー部品11と支持体21とを固定した組付状態では、通気膜2、カバー部品11、支持体21及びシールリング7が、中心軸線Oを共有した同心状の配置となっている。また、上記組付状態では、カバー部品11の天井部13と通気膜2との間に隙間が生じている。この隙間は、通気経路ARとして機能する。同様に、上記組付状態では、支持体21の本体部23と、カバー部品11の側壁部15との間に、通気経路AR3として機能する隙間が生ずる。通気膜2を透過した気体は、これらの通気経路AR2,AR3を流通してカバー部品11の通気孔13hから通気部材100の外部(筐体51の外部)に排出される。
【0027】
図5に示すごとく、通気膜2の通気領域2kをカバー部品21の天井部13に軸方向投影したとき、通気領域2kの投影面(図中斜線部)は、カバー部品11の通気孔13hと重なっていない。また、通気孔13hを通じて軸方向の真上から通気膜2を視認することもできないようになっている。このような位置関係によれば、通気孔13hを通じて軸方向からの水滴等の異物が飛来した場合でも、通気膜2の通気領域2kに異物がダイレクトに付着することを防止できる。より好ましくは、図2に示すごとく、通気膜2の厚さ方向に平行かつ中心軸線Oを含む断面(つまり図2の断面)において、通気孔13hの内周側の下端と、外周側の上端とを結んだ直線TFが、通気膜2の通気領域2kと重ならないようにすることである。換言すれば、通気膜2の通気領域2kを通過する任意の直線が、必ずカバー部品11を通過することである。カバー部品11の通気孔13hと、通気膜2との位置関係をこのようにすれば、斜めから向かってきた異物が通気孔13hを通過した場合でも、その異物が通気膜2の通気領域2kにダイレクトに付着することを防止できる。
【0028】
なお、通気膜2の通気領域2kとは、図4の模式図に示すように、通気膜2において実際に気体が透過可能な領域2kのこと、すなわち、貫通孔21hに臨む領域のことである。通気領域2k以外の領域2jは、支持体21に支持されている(固定されている)領域である。
【0029】
また、図2に示すごとく、本実施形態の通気部材100は、支持体21の脚部25a,25bが本体部23の外周縁よりも内側に収まっているので、筐体51の開口部52に装着すると、支持体21の本体部23がシールリング7を介して筐体51に着座する形となる。通気部材100は、筐体51の開口部52に装着した実使用状態となった際、つまり通気構造500を構成する際、側壁部15の下端と筐体51との間に適度な隙間SHが生ずるように、カバー部品11及び支持体21の軸方向に関する長さ調整を行っている。このような隙間SHによれば、カバー部品11の内外の通気性をいっそう高めることが可能である。ただし、あまり大きな隙間が空きすぎるのもよくないので、隙間SHの軸方向の幅が、シールリング7の厚さを超えない程度とすることが好ましい。
【0030】
ところで、図8(a)に示すごとく、通気部材100は、カバー部品11が鉛直下向きで筐体51に取り付けられるような場合がある。図8(b)に示すごとく、通気孔を有さないカバー部品61を採用した通気部材300の場合、カバー部品61内に水が侵入すると水Wがそのまま溜まってしまう可能性がある。一方、本発明の通気部材100によれば、カバー部品11に通気孔13を形成しているので、万が一カバー部品11内に水が侵入した場合でも、重力及び自動車の加減速による慣性力によって通気孔13hから直ちに水を排出することが可能である。また、天井部13の周方向に沿って溝状の通気孔13hを複数形成するようにしているので、通気部材100を無作為に筐体51に取り付けた場合であっても、3つの通気孔13hのうちの一つが必ず鉛直方向の下側に位置することとなる。つまり、通気部材100の姿勢を気にせずに筐体51への取り付け作業を行える。
【0031】
また、図2及び図6から分かるように、天井部13と側壁部15との境界に沿って通気孔13hを形成しているので、側壁部15の内周面と通気孔13hの内周面との間に段差がない。そのため、側壁部15の内周面を伝って、水滴がスムーズに通気孔13hに流れ込み、カバー部品11の外部に排出される。
【0032】
なお、図8(b)の通気部材300(本発明の第三実施形態である)に特に問題があるわけでないことを断っておく。カバー部品の排水性を重視する場合には通気部材100を採用し、そうでない場合には通気部材300を採用するといった使い分けをすればよいからである。
【0033】
(第二実施形態)
図9は、第二実施形態の通気部材の斜視図である。図10は、図9の通気部材を筐体に取り付けることによって形成された通気構造の断面図である。第一実施形態と同一部品については、同一参照符号を付している。図9及び図10に示す通気部材200は、カバー部品31の通気性を高めるための構成が、第一実施形態の通気部材100とは異なる。通気膜2及び支持体21については変更がない。筐体51の開口部52と通気部材200とによって通気構造600が構成される点も、第一実施形態と同様である。
【0034】
図9及び図10に示すごとく、通気部材200のカバー部品31は、通気膜2と向かい合う略円板状の天井部33と、その天井部33の周縁から下側に延びて支持体21を周方向に取り囲む側壁部35と含む。支持体21に固定するためのカバー側係合部37は、第一実施形態と同様に天井部33の内側面上に配置している。側壁部35には、カバー部品31の内外の通気性を高めるための通気用切り欠き35hを、周方向の複数箇所に等角度間隔で形成している。通気用切り欠き35hは、下側に開放して上端が天井部33に差し掛かっている。通気用切り欠き35hを周方向の複数箇所(本実施形態では3箇所)に形成することにより、側壁部35は複数部分に分断された形となっている。
【0035】
上記の通気用切り欠き35hは、天井部33と通気膜2との間に形成される隙間(通気経路AR2)と、当該カバー部品31の外部とを連通している。したがって、通気用切り欠き35hから水滴等の異物が侵入して通気膜2にダイレクトに付着する可能性がある。そこで、面内方向に関して、通気用切り欠き35hが通気膜2に直接臨むことを妨げる隔壁を設けている。本実施形態の通気部材200では、カバー側係合部37と支持体側係合部27とによる係合部37,27を、通気用切り欠き35hに対する隔壁に兼用させている。
【0036】
具体的には、図11の平面図に示すごとく、通気用切り欠き35hが、カバー部品31の周方向においてカバー側係合部37と対応した位置関係となるようにしている。また、通気用切り欠き35hを通じて面内方向から通気膜2を直視できないように、通気用切り欠き35hをカバー側係合部37よりも幅狭としている。すなわち、周方向に関するカバー側係合部37の両端と、中心軸線Oとを結んだ角度範囲内に、通気用切り欠き35hの全部が収まるようになっている。このように、通気用切り欠き35hがカバー側係合部37の陰に隠れるようにすれば、面内方向から水滴等の異物が飛来した場合であっても、そうした異物が通気膜2にダイレクトに付着することを防止できる。また、通気用切り欠き35hによれば、図8で説明したような排水性向上の効果も見込める。
【0037】
なお、通気用切り欠き35hに代えて、又は通気用切り欠き35hとともに、側壁部35の内外を貫通する通気孔を設けるようにしてもよい。具体的には、図12に示すような通気部材201を提案することができる。この通気部材201のカバー部品41は、側壁部45に円形の通気孔45hを形成したものである。通気孔45hは、側壁部45の周方向に沿って複数箇所に等角度間隔で形成されている。また、支持体側係合部27及びカバー側係合部37が、通気孔45hに対する隔壁に兼用されている点は、図10の通気部材200と同様である。
【0038】
以上に説明した第二実施形態では、支持体21を周方向に取り囲む側壁部35,45に通気用切り欠き35h又は通気孔45hを形成するようにしたが、このような通気用切り欠き35h又は通気孔45hとともに、第一実施形態で説明したように天井部に通気孔を形成するようにしてもよい。
【0039】
(第三実施形態)
図13は、第三実施形態の通気部材の斜視図である。図14は、図13の通気部材を筐体に取り付けることによって形成された通気構造の断面図である。第一実施形態及び第二実施形態と同一部品については、同一参照符号を付している。図13及び図14に示す通気部材300は、通気膜2及び支持体21については第一実施形態及び第二実施形態の通気部材と同様である。筐体51の開口部52と通気部材300とによって通気構造700が構成される点も、第一実施形態及び第二実施形態と同様である。
【0040】
図13及び図14に示すごとく、通気部材300のカバー部品61は、通気膜2と向かい合う略円板状の天井部63と、その天井部63の周縁から下側に延びて支持体21を周方向に取り囲む側壁部65と、支持体21の支持体側係合部27に係合するカバー側係合部67とから構成されている。ただし、通気孔及び通気用切り欠きのいずれも形成していない。側壁部65の下端と筐体51との間に、適度な広さの隙間SHが形成されるようにしており、この隙間SHによってカバー部品61の内外の通気性を確保するようにしている。このようなカバー部品61を採用した通気部材300によれば、通気膜2を確実に保護することができるので、水や塵芥などの異物に対する耐久性に優れる。
【0041】
以上、本発明の通気部材100,200,300を適用できる筐体の種類としては、例えば、ヘッドランプ、リアランプ、フォグランプ、ターンランプ、バックランプ、モーターケース、圧力センサ、圧力スイッチ、ECUなどの車両用電装部品が挙げられる。中でも、ランプ類やECUなど、直接風雨に晒されたり、洗車の際に水流を受けたりする車両用電装部品の筐体に、本発明の通気部材100,200,300を取り付けて通気構造を形成する場合に高い効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の通気部材の斜視図。
【図2】本発明の通気構造の断面図。
【図3】図1の通気部材の分解斜視図。
【図4】通気膜の通気領域を説明する模式図。
【図5】カバー部品に形成した通気孔と、通気膜の通気領域との位置関係を説明する投影図。
【図6】カバー部品の拡大斜視図。
【図7】カバー部品の変形例の斜視図。
【図8】通気孔の作用説明図。
【図9】本発明の通気部材の第二実施形態の斜視図。
【図10】図9の通気部材による通気構造の断面図。
【図11】通気用切り欠きとカバー側係合部との位置関係を示す平面図。
【図12】カバー部品の変形例の斜視図。
【図13】本発明の通気部材の第三実施形態の斜視図。
【図14】図13の通気部材による通気構造の断面図。
【図15】本発明の通気構造の全体概略図。
【図16】従来の通気部材の断面図。
【符号の説明】
【0043】
2 通気膜
7 シールリング(Oリング)
11,11’,31,41,61 カバー部品
13,33,43,63 天井部
13h,14h,45h 通気孔
15,35,45,65 側壁部
17,37,67 カバー側係合部
21 支持体
21h 貫通孔
23 本体部
25a,25b 脚部
27 支持体側係合部
35h 通気用切り欠き
51 筐体
52 筐体の開口部
100,200,201,300 通気部材
500,600,700 通気構造
O 中心軸線
SH,AR1,AR2,AR3 隙間(通気経路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
換気を行うべき筐体の内外の通気経路となる貫通孔が形成され、その貫通孔の一方の開口を塞ぐように通気膜が配置された支持体と、前記通気膜が配置された側から前記支持体を覆うカバー部品とを備え、
前記通気膜の厚さ方向に平行な方向を軸方向とし、軸方向における前記通気膜で塞がれた開口の位置する側を上側、前記筐体に接続する開口の位置する側を下側と定義したとき、
前記カバー部品は、前記支持体を内側に配置して互いの相対位置を固定した組付状態となったときに前記通気膜と向かい合う天井部と、その天井部の周縁から前記通気膜の配置されている位置よりも軸方向の下側に延び、前記支持体を周方向に取り囲む側壁部とを含み、
前記カバー部品の前記天井部には、前記組付状態で前記天井部と前記通気膜との間に形成される隙間と、当該カバー部品の外部とを連通する通気孔が形成されており、
その通気孔と前記通気膜の通気領域とが、軸方向に関して重なり合うことのない位置関係となっていることを特徴とする通気部材。
【請求項2】
前記カバー部品は、前記天井部及び前記側壁部の少なくとも一方の内側面上の周方向に沿った複数箇所に設けられて前記支持体に係合するカバー側係合部をさらに含み、
前記通気孔は、隣り合う前記カバー側係合部同士の間に位置するように前記天井部に形成されている請求項1記載の通気部材。
【請求項3】
換気を行うべき筐体の内外の通気経路となる貫通孔が形成され、その貫通孔の一方の開口を塞ぐように通気膜が配置された支持体と、前記通気膜が配置された側から前記支持体を覆うカバー部品とを備え、
前記通気膜の厚さ方向に平行な方向を軸方向、軸方向と垂直な方向を面内方向とし、軸方向における前記通気膜で塞がれた開口の位置する側を上側、前記筐体に接続する開口の位置する側を下側と定義したとき、
前記カバー部品は、前記支持体を内側に配置して互いの相対位置を固定した組付状態となったときに前記通気膜と向かい合う天井部と、その天井部の周縁から前記通気膜の配置されている位置よりも軸方向の下側に延び、前記支持体を周方向に取り囲む側壁部とを含み、
前記側壁部には、前記組付状態で前記天井部と前記通気膜との間に形成される隙間と、当該カバー部品の外部とを連通する通気孔又は切り欠きが形成され、
前記組付状態となったときに、面内方向に関して前記通気孔又は切り欠きが前記通気膜に直接臨むことを妨げる隔壁をさらに備えたことを特徴とする通気部材。
【請求項4】
前記支持体は、筐体の内外の通気経路となる貫通孔が形成され、その貫通孔の一方の開口を塞ぐように通気膜が配置された本体部と、前記本体部の周方向に沿って設けられた支持体側係合部とを含み、
前記カバー部品は、前記天井部及び前記側壁部の少なくとも一方の内側面上に設けられて前記支持体の前記支持体側係合部と係合するカバー側係合部をさらに含み、
前記通気孔又は切り欠きを、前記カバー部品の周方向において前記カバー側係合部と対応した位置関係にて形成することにより、前記支持体側係合部と前記カバー側係合部とによる係合部を前記通気孔又は切り欠きに対する前記隔壁に兼用している請求項3記載の通気部材。
【請求項5】
換気を行うべき筐体の開口部と、前記筐体の開口部に取り付けられた通気部材とによる通気構造であって、
前記通気部材は、
前記筐体の内外の通気経路となる貫通孔を有し、その貫通孔の一方の開口を塞ぐように通気膜が配置された本体部と、前記本体部の貫通孔の他方の開口側に接続するとともに前記筐体に設けられた開口部に差し込まれる脚部とを含む支持体と、
前記脚部とは反対側から前記支持体を覆うカバー部品とを備え、
前記通気膜の厚さ方向に平行な方向を軸方向、軸方向と垂直な方向を面内方向とし、軸方向における前記通気膜が位置する側を上側、前記脚部が位置する側を下側と定義するとき、
前記支持体は、前記通気膜の配置領域を前記貫通孔の周りに確保するべく前記本体部が面内方向外向きに張り出し、その張り出した本体部よりも内側に前記脚部が収まった形態をなすとともに、その本体部の周方向に沿って設けられた支持体側係合部をさらに含み、
前記カバー部品は、前記支持体を内側に配置して互いの相対位置を固定した組付状態となったときに前記通気膜と向かい合う天井部と、その天井部の周縁から前記通気膜の配置されている位置よりも軸方向の下側に延び、前記支持体の前記本体部を周方向に取り囲む側壁部と、前記天井部及び前記側壁部の少なくとも一方の内側面上に設けられて前記支持体の前記支持体側係合部と係合するカバー側係合部とを含み、
前記支持体と前記カバー部品とは、前記支持体側係合部と前記カバー側係合部とが係合しあうことによって前記組付状態となって、前記天井部と前記通気膜との間に通気経路として機能する第一隙間が形成されるとともに、
前記脚部を前記筐体の開口部に差し込んで、前記本体部が前記筐体に直接又は他部品を介して着座した実使用状態となった際に、前記カバー部品における前記側壁部の下端と前記筐体との間に気体が流通可能な第二隙間が生じ、それら第一隙間及び第二隙間を通じて前記通気膜を介した換気が行われるように、前記カバー部品と前記支持体との前記軸方向に関する相対長さ調整がなされていることを特徴とする通気構造。
【請求項6】
前記カバー部品の前記天井部には、前記第一隙間と、当該カバー部品の外部とを連通する通気孔が、軸方向に関して前記通気膜の通気領域と重なり合うことのない位置に形成されている請求項5記載の通気構造。
【請求項7】
前記カバー側係合部は、前記天井部又は前記側壁部の周方向に沿った複数箇所に設けられており、前記通気孔は、前記天井部の周方向に沿って隣り合う前記カバー側係合部同士の間に位置している請求項6記載の通気構造。
【請求項8】
面内方向外向きに張り出した前記本体部の下面側において前記脚部を包囲するゴム製のシールリングをさらに備え、前記組付状態となったときに前記カバー部品の前記側壁部の下端が、前記本体部の下面に接した前記シールリングの下端よりも上に位置することにより、前記本体部が前記筐体に前記シールリングを介して着座した実使用状態となった際に、前記カバー部品の前記側壁部の下端と前記筐体との間に前記第二隙間が生じるようになっている請求項5ないし7のいずれか1項に記載の通気構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−87666(P2007−87666A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−272798(P2005−272798)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】