説明

通電回路およびインピーダンス測定回路

【課題】被測定体に接触すべき電極間がオープンであるか否かを、不都合を生じることなく簡単な構成で判定できる通電回路を提供すること。
【解決手段】演算増幅器11の反転入力端子11b、出力端子11cに、それぞれ被測定体に接触すべき第1電極1、第2電極2が電気的に接続されている。電源80が、演算増幅器11の反転入力端子11bに、入力抵抗Rinを介して電気的に接続されている。この電源80が供給する電源電圧の変化に応じた演算増幅器11の増幅動作によって、第1電極1、第2電極2を介して被測定体90に所定の通電電流を流すようになっている。判定部30は、反転入力端子11bに生ずる反転入力端子電圧Vに基づいて、第1電極1および第2電極2に対して被測定体90が接触しているか又は第1電極1と第2電極2との間がオープンであるかを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は通電回路に関し、より詳しくは、被測定体に接触すべき複数の電極を備えた通電回路に関する。
【0002】
また、この発明は、そのような通電回路を備えたインピーダンス測定回路に関する。
【背景技術】
【0003】
この種のインピーダンス測定回路としては、特許文献1(特開2002−153437号公報)に開示されているように、被測定体(典型的には人体)に接触すべき4つの電極を備えて、四端子法により生体インピーダンスを測定するものが知られている。この特許文献1では、被測定体に対して並列になるように電極間に抵抗素子を接続する方式を採用している。この方式では、電極間がオープンの時にはその抵抗素子のみに定電流が流れることで、電圧測定部の出力電圧を飽和させて、オープンであることを検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−153437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の方式では、被測定体に対して並列に抵抗素子が接続されるため、インピーダンス測定結果において非直線性の誤差が大きくなるという不都合がある。
【0006】
そこで、この発明の課題は、被測定体に接触すべき電極間がオープンであるか否かを、不都合を生じることなく簡単な構成で判定できる通電回路を提供することにある。
【0007】
また、この発明の課題は、被測定体に接触すべき電極間がオープンであるか否かを、不都合を生じることなく簡単な構成で判定できるインピーダンス測定回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、この発明の通電回路は、
被測定体にそれぞれ接触すべき第1電極および第2電極と、
上記第1電極に電気的に接続された反転入力端子、上記第2電極に電気的に接続された出力端子、および所定の電圧が与えられた非反転入力端子を有する演算増幅器と、
上記演算増幅器の上記反転入力端子に、入力抵抗を介して電気的に接続された電源とを備え、この電源が供給する電源電圧の変化に応じた上記演算増幅器の増幅動作によって、上記第1電極、上記第2電極を介して上記被測定体に所定の通電電流を流すようになっており、
上記反転入力端子に生ずる反転入力端子電圧に基づいて、上記第1電極および第2電極に対して上記被測定体が接触しているか又は上記第1電極と上記第2電極との間がオープンであるかを判定する判定部を備えたことを特徴とする。
【0009】
この発明の通電回路では、上記被測定体が上記第1電極、上記第2電極に接触している時は、上記電源が供給する電源電圧の変化に応じた上記演算増幅器の増幅動作によって、上記第1電極、上記第2電極を介して上記被測定体に所定の通電電流を流すことができる。また、この発明の通電回路では、上記判定部は、上記反転入力端子に生ずる反転入力端子電圧に基づいて、上記第1電極および第2電極に対して上記被測定体が接触しているか又は上記第1電極と上記第2電極との間がオープンであるかを判定する。したがって、実質的に上記演算増幅器の反転入力端子電圧を検知するだけの簡単な構成で、上記第1電極と上記第2電極との間がオープンであるか否かを判定できる。また、従来のオープン検知の方式に関して述べたような不都合を生じることも無い。
【0010】
一実施形態の通電回路では、上記判定部は、上記演算増幅器の上記反転入力端子電圧が交流成分を有するか否かに基づいて、上記第1電極および第2電極に対して上記被測定体が接触しているか又は上記第1電極と上記第2電極との間がオープンであるかを判定することを特徴とする。
【0011】
この一実施形態の通電回路では、上記判定部は、上記演算増幅器の上記反転入力端子電圧が交流成分を有するか否かに基づいて、上記第1電極および第2電極に対して上記被測定体が接触しているか又は上記第1電極と上記第2電極との間がオープンであるかを判定する。したがって、簡単な構成で、上記第1電極と上記第2電極との間がオープンであるか否かを判定できる。
【0012】
一実施形態の通電回路では、
上記判定部は、
上記演算増幅器の上記反転入力端子電圧の上記交流成分に対応する平滑化電圧を出力する平滑部と、
上記平滑化電圧を基準電圧と比較して、この比較の結果に基づいて、上記第1電極および第2電極に対して上記被測定体が接触しているか又は上記第1電極と上記第2電極との間がオープンであるかを判定する比較部と
を備えたことを特徴とする。
【0013】
この一実施形態の通電回路では、上記判定部に含まれた平滑部が、上記演算増幅器の上記反転入力端子電圧の上記交流成分に対応する平滑化電圧を出力する。比較部は、上記平滑化電圧を基準電圧と比較して、この比較の結果に基づいて、上記第1電極および第2電極に対して上記被測定体が接触しているか又は上記第1電極と上記第2電極との間がオープンであるかを判定する。したがって、簡単な構成で、上記第1電極と上記第2電極との間がオープンであるか否かを判定できる。
【0014】
一実施形態の通電回路では、
上記平滑部は、
上記交流成分に応じて、高電位レベルと低電位レベルとを繰り返す矩形波電圧を出力する緩衝部と、
上記矩形波電圧を平滑化する平滑回路と
を備えたことを特徴とする。
【0015】
この一実施形態の通電回路では、上記緩衝部が、上記交流成分に応じて、高電位レベルと低電位レベルとを繰り返す矩形波電圧を出力する。また、上記平滑回路が、上記矩形波電圧を平滑化する。これにより、簡単な構成で、上記平滑化電圧を作成することができる。
【0016】
一実施形態の通電回路では、
上記平滑部の上記緩衝部は差動増幅回路からなり、
上記平滑部の上記平滑回路は抵抗素子と容量素子とを含む積分回路からなり、
上記比較部は差動増幅回路からなることを特徴とする。
【0017】
この一実施形態の通電回路では、上記判定部が簡単に構成される。
【0018】
この発明のインピーダンス測定回路は、
上記発明の通電回路と、
上記被測定体のうち上記第1電極、第2電極に対応する箇所にそれぞれ接触すべき第3電極、第4電極と、
上記被測定体に上記通電電流が流れることにより生じた降下電圧を、上記第3電極、上記第4電極を介して測定する電圧測定部と、
上記判定部が上記第1電極、第2電極に対して上記被測定体が接触していると判定したとき、上記電圧測定部が測定した上記降下電圧に基づいて上記被測定体のインピーダンスを表す信号を出力する一方、上記判定部が上記第1電極と上記第2電極との間がオープンであると判定したとき、上記第1電極と上記第2電極との間がオープンである旨を表す信号を出力する制御を行う制御部とを備えたことを特徴とする。
【0019】
この発明のインピーダンス測定回路では、上記被測定体が上記第1電極、上記第2電極に接触している時は、上記通電回路は、上記電源が供給する電源電圧の変化に応じた上記演算増幅器の増幅動作によって、上記第1電極、上記第2電極を介して上記被測定体に所定の通電電流を流すことができる。上記電圧測定部は、上記被測定体に上記通電電流が流れることにより生じた降下電圧を、上記第3電極、上記第4電極を介して測定する。この降下電圧Vを数値換算(通電電流で割り算)して、上記被測定体のインピーダンスが得られる。
【0020】
また、この発明のインピーダンス測定回路では、上記判定部は、上記反転入力端子に生ずる反転入力端子電圧に基づいて、上記第1電極および第2電極に対して上記被測定体が接触しているか又は上記第1電極と上記第2電極との間がオープンであるかを判定する。したがって、実質的に電圧を検知するだけの簡単な構成で、上記第1電極と上記第2電極との間がオープンであるか否かを判定できる。
【0021】
上記制御部は、上記判定部が上記第1電極、第2電極に対して上記被測定体が接触していると判定したとき、上記電圧測定部が測定した上記降下電圧に基づいて上記被測定体のインピーダンスを表す信号を出力する一方、上記判定部が上記第1電極と上記第2電極との間がオープンであると判定したとき、上記第1電極と上記第2電極との間がオープンである旨を表す信号を出力する。したがって、それらの信号に基づいて、例えばLCD(液晶表示素子)のような表示部に、上記第1電極、第2電極に対して上記被測定体が接触している時にはインピーダンスの値、上記第1電極と上記第2電極との間がオープンである時にはオープンである旨を、それぞれ表示させることができる。
【0022】
また、この発明のインピーダンス測定回路では、従来のオープン検知の方式に関して述べたような不都合を生じることが無い。例えば、上記第1電極と上記第2電極とを含む電流ループと、上記第3電極と上記第4電極とを含む電圧ループとは、電気的に互いに分離され得る。したがって、測定時には、上記第1電極から上記第2電極へ本来の通電電流が流れるだけあり、上記第3電極から上記第4電極へ余計な電流が流れることはない。したがって、四端子法の測定原理が崩れることがなく、電極と被測定体との間の接触抵抗による測定誤差が少なくなって、電圧測定部による測定精度が高まる。また、上記判定部は、インピーダンス測定結果に基づいて判定を行うのではなく、上記反転入力端子に生ずる反転入力端子電圧に基づいて判定を行うので、たとえ測定回路中にコードリール(後述)が介挿されたとしても、上記判定部の判定結果が影響を受けない。また、たとえ測定回路中にコードリールが介挿されたとしても、オープン時のインピーダンス測定結果自体が影響を受けにくくなる。したがって、コードリールの仕様に対する制約が少なくなる。
【発明の効果】
【0023】
以上より明らかなように、この発明の通電回路によれば、被測定体に接触すべき電極間がオープンであるか否かを、不都合を生じることなく簡単な構成で判定できる。
【0024】
また、この発明のインピーダンス測定回路によれば、被測定体に接触すべき電極間がオープンであるか否かを、不都合を生じることなく簡単な構成で判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の一実施形態の通電回路の構成を示す図である。
【図2】図1の通電回路における各部の電圧波形を示す図である。
【図3】この発明の一実施形態のインピーダンス測定回路のブロック構成を示す図である。
【図4】上記インピーダンス測定回路の制御部による処理のフローを示す図である。
【図5】四端子法による測定原理に従った等価回路を示す図である。
【図6】上記インピーダンス測定回路の電流測定部の回路構成を示す図である。
【図7】コードリールが介挿されたインピーダンス測定回路の構成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0027】
図1は、この発明の一実施形態の通電回路の構成を示している。
【0028】
この通電回路は、大別して、定電流部10と、判定部としてのオープン検知部30とを備えている。
【0029】
定電流部10は、被測定体90にそれぞれ接触すべき第1電極としての電極1と、第2電極としての電極2と、演算増幅器としてのオペアンプ11とを備えている。オペアンプ11の反転入力端子11b、出力端子11cは、それぞれ電極1、電極2に電気的に接続されている。オペアンプ11の非反転入力端子11aには、所定の基準電圧Vref(この例では、常時2Vである。)が与えられている。オペアンプ11の反転入力端子11bに、入力抵抗Rinを介して電源80が電気的に接続されている。
【0030】
定電流部10は、この電源80が供給する電源電圧Asinωtの変化に応じたオペアンプ11の増幅動作によって、電極1、電極2を介して被測定体90に所定の通電電流(交流)Iを流すようになっている。
【0031】
電極1および電極2に対して被測定体90が接触している時(適宜、単に「接触時」という。)には、オペアンプ11に被測定体90の等価抵抗Rによる負帰還がかかって、仮想短絡が成立し、反転入力端子電圧Vは一定値となる。図2中の左下のグラフに示すように、この例では、接触時のVは2Vである。一方、電極1と電極2との間がオープンである時(適宜、単に「オープン時」という。)には、オペアンプ11に負帰還がかからないため、仮想短絡が成立せず、反転入力端子電圧Vは、電源電圧Asinωtに応じたサイン波となる。図2の左上のグラフに示すように、この例では、オープン時のVは、中心値2V、振幅1.3Vのサイン波である。
【0032】
図1中に示すように、オープン検知部30は、オペアンプ11からの反転入力端子電圧Vを受ける緩衝部としてのコンパレータ(差動増幅回路)31と、このコンパレータ31の出力を受ける平滑回路32と、この平滑回路32の出力を受ける比較部としてのコンパレータ(差動増幅回路)33とを備えている。コンパレータ31と平滑回路32とが、平滑部を構成している。
【0033】
コンパレータ31は、オペアンプ11からの反転入力端子電圧Vを非反転入力端子31aに受ける。コンパレータ31の反転入力端子31bには、所定の基準電圧V(この例では、常時1Vである。)が与えられている。コンパレータ31は、非反転入力端子31aに受ける電圧Vと反転入力端子31bに与えられた基準電圧Vとを比較して、比較結果を表す出力電圧Vを出力端子31cに出力する。図2の左下のグラフに示すように、「接触時」には、電圧V=2V(一定)であることから、コンパレータ31の出力電圧Vは4Vで一定となる。「オープン時」には、図2の左上のグラフに示すように、電圧Vが中心値2V、振幅1.3Vのサイン波であることから、コンパレータ31の出力電圧Vは、高電位レベル(4V)の期間が低電位レベル(0V)の期間よりも長い矩形波となる。つまり、このコンパレータ31は、高電位レベルと低電位レベルとを繰り返す矩形波電圧を出力する。また、このコンパレータ31は、緩衝部として、後段の平滑回路32の動作がオペアンプ11の反転入力端子電圧Vに影響を及ぼすのを防止する。
【0034】
図1中に示すように、平滑回路32は、抵抗素子R32と容量素子C32とを含む積分回路からなっている。この平滑回路32は、オペアンプ11の反転入力端子電圧Vに基づく、コンパレータ31の出力電圧Vの波形を平滑化して平滑化電圧Vを出力する。「接触時」には、図2の右下のグラフに示すように、V=4V(一定)であることから、平滑化電圧Vも4Vで一定となる。「オープン時」には、図2の右上のグラフに示すように、出力電圧Vが矩形波電圧であることに応じて、この例では平滑化電圧Vは2V以上3V未満の脈動波となる。概して言うと、この平滑化電圧Vは、オペアンプ11からの反転入力端子電圧Vの交流成分を平滑化したものに相当する。
【0035】
なお、平滑回路32に積分回路を多段に設けて、出力電圧Vが実質的に直流電圧となるようにしても良い。
【0036】
図1中に示すように、コンパレータ33は、平滑回路32からの平滑化電圧Vを非反転入力端子33aに受ける。コンパレータ33の反転入力端子33bには、所定の基準電圧V(この例では、常時3Vである。)が与えられている。コンパレータ33は、非反転入力端子33aに受ける電圧Vと反転入力端子33bに与えられた基準電圧Vとを比較して、比較結果を表す出力電圧Vを出力端子33cに出力する。「接触時」には、図2の右下のグラフに示すように、V=4V(一定)であることから、出力電圧Vも4Vで一定となる。「オープン時」には、図2の右上のグラフに示すように、平滑化電圧Vが2V以上3V未満の脈動波であることから、出力電圧Vは0Vで一定となる。つまり、出力電圧V=4V(高電位レベル)であることは、電極1および電極2に対して被測定体90が接触していることを表し、出力電圧V=0V(低電位レベル)であることは、電極1と電極2との間がオープンであることを表す。
【0037】
このようにして、オープン検知部30は、反転入力端子11bに生ずる反転入力端子電圧Vが交流成分を有するか否かに基づいて、電極1および電極2に対して被測定体90が接触しているか又は電極1と電極2との間がオープンであるかを判定することができる。このオープン検知部30は、実質的には、コンパレータ31、積分回路から成る平滑回路32およびコンパレータ33の3つの構成要素のみからなるので、簡単に構成される。
【0038】
全体として、この通電回路では、被測定体90が電極1、電極2に接触している時は、電源80が供給する電源電圧Asinωtの変化に応じたオペアンプ11の増幅動作によって、電極1、電極2を介して被測定体90に所定の通電電流Iを流すことができる。また、この通電回路では、オープン検知部30は、反転入力端子11bに生ずる反転入力端子電圧Vに基づいて、電極1および電極2に対して被測定体90が接触しているか又は電極1と電極2との間がオープンであるかを判定する。したがって、実質的にオペアンプ11の反転入力端子電圧Vの交流成分を検知するだけの簡単な構成で、電極1と電極2との間がオープンであるか否かを判定できる。また、オープン検知のために不都合を生じることも無い(後に詳述する)。
【0039】
図3は、図1の通電回路を備えた一実施形態のインピーダンス測定回路のブロック構成を示している。
【0040】
このインピーダンス測定回路は、被測定体90にそれぞれ接触すべき電極1、電極2を備えるとともに、被測定体90のうち電極1、電極2に対応する箇所にそれぞれ接触すべき第3電極としての電極3、第4電極としての電極4を備えている。また、このインピーダンス測定回路は、定電流部10と、電圧測定部20と、オープン検知部30と、制御部40と、表示部50とを備えている。
【0041】
図3中の定電流部10は、図1中の定電流部10と同様に構成されて、電極1、電極2を介して被測定体90に所定の通電電流(交流)Iを流すようになっている。
【0042】
図3中の電圧測定部20は、図6に示すように、オペアンプ21を含んでいる。このオペアンプ21の反転入力端子21bには、入力抵抗R1を介して、入力電圧V1が入力される。また、オペアンプ21の反転入力端子21bと出力端子21cとの間に帰還抵抗R2が接続されている。オペアンプ21の非反転入力端子21aには、入力抵抗R2を介して、入力電圧V2が入力される。また、オペアンプ21の非反転入力端子21aには、抵抗R4を介して、所定の基準電圧Vrefが印加されている。これにより、差動増幅回路が構成されている。電圧測定部20は、被測定体90に通電電流Iが流れることにより生じた降下電圧Vを、電極3、電極4を介して入力電圧V1とV2との差分として受けて差動増幅する。降下電圧Vは、電圧測定部20の出力電圧Vo2に応じて求められる。この測定された降下電圧Vを数値換算(通電電流Iで割り算)することにより、被測定体90のインピーダンスが求められる(四端子法)。
【0043】
図3中のオープン検知部30は、図1中のオープン検知部30と同様に構成されて、電極1および電極2に対して被測定体90が接触しているか又は電極1と電極2との間がオープンであるかを判定する。したがって、実質的にオペアンプ11の反転入力端子電圧Vの交流成分を検知するだけの簡単な構成で、電極1と電極2との間がオープンであるか否かを判定できるようになっている。
【0044】
図3中の制御部40は、ソフトウェアによって動作するCPU(中央演算処理ユニット)を含み、このインピーダンス測定回路全体の動作を制御して、後述する処理を実行する。
【0045】
また、表示部50は、例えばLCD(液晶表示素子)からなり、制御部40からの信号に応じた表示を行うようになっている。
【0046】
図4は、このインピーダンス測定回路の制御部40による処理のフローを示している。
【0047】
まず、ステップS1で、制御部40は、オープン検知部30の出力をチェックして、電極1および電極2に対して被測定体90が接触しているか又は電極1と電極2との間がオープンであるかを認識する。具体的には、オープン検知部30の出力電圧Vが高電位レベルであるときは、電極1および電極2に対して被測定体90が接触していると認識し、出力電圧Vが低電位レベルであるときは、電極1と電極2との間がオープンであると認識する。
【0048】
電極1と電極2との間がオープンである時(ステップS1でYES)は、制御部40は、電極1と電極2との間がオープンである旨を表す信号を表示部50へ出力する。この信号に基づいて、表示部50は、図示しない表示画面に例えば「オープン」という表示をする(ステップS2)。ユーザ(典型的には被測定体90を指す。以下同様。)は、この表示を見て、電極1と電極2との間がオープンであることを認識できる。
【0049】
一方、電極1、電極2に対して被測定体90が接触している時(ステップS1でNO)は、制御部40は、ステップS3で、定電流部10と電圧測定部20に四端子法によるインピーダンス測定を実行させる。具体的には、定電流部10は、電源80が供給する電源電圧Asinωtの変化に応じたオペアンプ11の増幅動作によって、電極1、電極2を介して被測定体90に所定の通電電流Iを流す。電圧測定部20は、被測定体90に通電電流Iが流れることにより生じた降下電圧Vを、電極3、電極4を介して測定する。この降下電圧Vを数値換算(通電電流Iで割り算)して、被測定体90のインピーダンスが得られる。続いて、制御部40は、ステップS4で、電圧測定部20が測定した降下電圧Vに基づいて被測定体90のインピーダンスを表す信号を表示部50へ出力する。この信号に基づいて、表示部50は、図示しない表示画面に例えば「430Ω」というような表示をする。ユーザは、この表示を見て、被測定体90のインピーダンスがこの例では430Ωであることを認識できる。
【0050】
また、このインピーダンス測定回路では、従来のオープン検知の方式に関して述べたような不都合を生じることが無い。例えば、図5に示すように、電極1と電極2とを含む電流ループと、電極3と電極4とを含む電圧ループとは、電気的に互いに分離され得る。したがって、測定時には、電極1から電極2へ本来の通電電流Iが流れるだけあり、電極3から電極4へ余計な電流iが流れることはない。したがって、四端子法の測定原理が崩れることがなく、各電極と被測定体90との間の接触抵抗rによる測定誤差が少なくなって、電圧測定部20による測定精度が高まる。なお、図5中、Vxは被測定体90と電極1、電極2との間の接触抵抗rに生じる降下電圧、Vは被測定体90に生じる降下電圧をそれぞれ表している。
【0051】
また、このインピーダンス測定回路では、オープン検知部30は、インピーダンス測定結果に基づいて判定を行うのではなく、オペアンプ11の反転入力端子11bに生ずる反転入力端子電圧Vに基づいて判定を行うので、たとえ測定回路中にコードリール(次に述べる図7中のコードリール70を参照)が介挿されたとしても、オープン検知部30の判定結果が影響を受けない。また、たとえ測定回路中にコードリールが介挿されたとしても、オープン時のインピーダンス測定結果自体が影響を受けにくくなる。したがって、コードリールの仕様に対する制約を少なくすることができる。
【0052】
図7は、電極1、電極3が手で握られるべきグリップ電極として構成され、電極2、電極4が足裏が載せられるべきフット電極として構成されたインピーダンス測定回路を例示している。このような場合、電極2、電極4と保護抵抗R42,R44との間にコードリール70が介挿されることがある。この例では、電極1は左手用電極1Lと右手用電極1Rとに分割され、電極2は左足用電極2Lと右足用電極2Rとに分割され、電極3は左手用電極3Lと右手用電極3Rとに分割され、また、電極4は左足用電極4Lと右足用電極4Rとに分割されている。それに応じて、保護抵抗R41,R43はそれぞれ一対ずつ設けられている。コードリール70は、電極2と保護抵抗R42とを電気的に接続するライン71と、電極4と保護抵抗R44とを電気的に接続するライン72との対を含んでいる。本発明によれば、このようなコードリール70が介挿されたとしても、オープン検知部30の判定結果が影響を受けないので、不都合を生じることがない。
【0053】
上述の実施形態では、オープン検知部30は、実質的には、コンパレータ31、積分回路から成る平滑回路32およびコンパレータ33の3つの構成要素からなるものとした。しかしながら、これに限られるものではなく、オープン検知部30は、オペアンプ11の反転入力端子電圧Vが交流成分を有するか否かを判定できれば、他の構成要素によって構成されていても良い。
【符号の説明】
【0054】
10 定電流部
20 電圧測定部
30 オープン検知部
40 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定体にそれぞれ接触すべき第1電極および第2電極と、
上記第1電極に電気的に接続された反転入力端子、上記第2電極に電気的に接続された出力端子、および所定の電圧が与えられた非反転入力端子を有する演算増幅器と、
上記演算増幅器の上記反転入力端子に、入力抵抗を介して電気的に接続された電源とを備え、この電源が供給する電源電圧の変化に応じた上記演算増幅器の増幅動作によって、上記第1電極、上記第2電極を介して上記被測定体に所定の通電電流を流すようになっており、
上記反転入力端子に生ずる反転入力端子電圧に基づいて、上記第1電極および第2電極に対して上記被測定体が接触しているか又は上記第1電極と上記第2電極との間がオープンであるかを判定する判定部を備えたことを特徴とする通電回路。
【請求項2】
請求項1に記載の通電回路において、
上記判定部は、上記演算増幅器の上記反転入力端子電圧が交流成分を有するか否かに基づいて、上記第1電極および第2電極に対して上記被測定体が接触しているか又は上記第1電極と上記第2電極との間がオープンであるかを判定することを特徴とする通電回路。
【請求項3】
請求項2に記載の通電回路において、
上記判定部は、
上記演算増幅器の上記反転入力端子電圧の上記交流成分に対応する平滑化電圧を出力する平滑部と、
上記平滑化電圧を基準電圧と比較して、この比較の結果に基づいて、上記第1電極および第2電極に対して上記被測定体が接触しているか又は上記第1電極と上記第2電極との間がオープンであるかを判定する比較部と
を備えたことを特徴とする通電回路。
【請求項4】
請求項3に記載の通電回路において、
上記平滑部は、
上記交流成分に応じて、高電位レベルと低電位レベルとを繰り返す矩形波電圧を出力する緩衝部と、
上記矩形波電圧を平滑化する平滑回路と
を備えたことを特徴とする通電回路。
【請求項5】
請求項4に記載の通電回路において、
上記平滑部の上記緩衝部は差動増幅回路からなり、
上記平滑部の上記平滑回路は抵抗素子と容量素子とを含む積分回路からなり、
上記比較部は差動増幅回路からなることを特徴とする通電回路。
【請求項6】
請求項1に記載の通電回路と、
上記被測定体のうち上記第1電極、第2電極に対応する箇所にそれぞれ接触すべき第3電極、第4電極と、
上記被測定体に上記通電電流が流れることにより生じた降下電圧を、上記第3電極、上記第4電極を介して測定する電圧測定部と、
上記判定部が上記第1電極、第2電極に対して上記被測定体が接触していると判定したとき、上記電圧測定部が測定した上記降下電圧に基づいて上記被測定体のインピーダンスを表す信号を出力する一方、上記判定部が上記第1電極と上記第2電極との間がオープンであると判定したとき、上記第1電極と上記第2電極との間がオープンである旨を表す信号を出力する制御を行う制御部とを備えたことを特徴とするインピーダンス測定回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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