説明

造形方法

【課題】層状構造体が積層されてなる立体の形状の精度を高めることが可能な造形方法を提供する。
【解決手段】硬化性を有した液状体からなる液状層を第1基板の描画領域に描画する描画工程と、液状層に第2基板を被せた状態で液状層を硬化させる硬化工程と、第1基板と第2基板との間隔を広げることによって液状層の硬化物たる層状構造体を第2基板に転写する転写工程とを含み、描画工程、硬化工程、転写工程を繰り返すことにより層状構造体が積層された態様の立体を第2基板に造形する造形方法である。液状体として、第1基板の描画領域に対する接触角が層状構造体に対する接触角よりも大きく、かつそれら接触角の差が31.0°以内であるとともに、第1基板の描画領域に対する接触角が60°以上90°以下の角度を成し、かつ層状構造体に対する接触角が、50.2°以上80°以下の角度を成す液状体を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に形成された層状構造体を転写用基板に転写して該転写用基板に層状構造体を順次積層することにより立体を造形する造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1に記載のように、立体を造形する造形方法の一つとして、基板上に形成された層状構造体を転写用基板に転写することを繰り返して層状構造体が積層されてなる立体を造形する、いわゆる積層法が知られている。特許文献1では、まず、紫外線硬化樹脂を含む液状体が形成材料として用いられるとともに、該液状体に対する撥液性が付与された描画用基板に該液状体からなる液状層が形成される。次いで、転写用基板を描画用基板に近づけた後に、描画用基板と転写用基板とによって挟持された上記液状層に紫外光を照射する。これによって、液状層が硬化されてなる層状構造体が描画用基板と転写用基板との間に形成される。この層状構造体と転写用基板との接着力は、上記撥液性を有した描画用基板と層状構造体との接着力よりも大きく、転写用基板が描画用基板から遠ざけられると転写用基板に接着した状態で層状構造体が描画用基板から剥離される。このようにして層状構造体が転写用基板に転写される。そして転写用基板に転写された層状構造体に対する他の層状構造体の転写が繰り返されることによって、複数の層状構造体からなる立体が造形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−34752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した造形方法では、描画用基板の描画面に撥液性が付与されているため、また液状層と同系統の材料で構成された層状構造体と液状層との親和性が一般には高いため、以下のような問題が生じる。図17は、層状構造体と描画用基板とによって液状層が挟持された状態を示す図である。図17に示されるように、描画用基板201の描画面と転写用基板202に形成された層状構造体203とによって液状層204が挟持されると、層状構造体203と液状層204との高い親和性によって、液状層204の一部が層状構造体203に引き寄せられる。そして液状層204の一部が層状構造体203へ流動する結果、層状構造体203及び液状層204がその形状を維持し難くなる。つまり液状層204が流動する分、該液状層204が硬化してなる層状構造体や液状層の流動先である層状構造体203、ひいてはこれら層状構造体が積層されてなる立体の形状が設計上の形状とは異なるものとなってしまう。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされてものであり、その目的は、層状構造体が積層されてなる立体の形状の精度を高めることが可能な造形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究した結果、硬化性を有した液状体からなる液状層を第1基板の描画領域に描画する描画工程と、前記液状層に第2基板を接触させた状態で該液状層を硬化させる硬化工程と、前記第1基板と前記第2基板との間隔を広げることによって前記液状層の硬化物である層状構造体を前記第2基板に転写する転写工程とを含み、前記描画工程、前記硬化工程、前記転写工程を繰り返すことによって、前記層状構造体が積層されたかたちの立体を前記第2基板に造形する造形方法にあって、前記描画領域に対する前記液
状体の接触角θa、及び前記層状構造体の厚さ方向に沿う側面に対する前記液状体の接触角θbが、下記式(1)〜式(3)を満たすことによって、前記立体の形状の精度が高められることを見出した。
【0007】
60.0°≦θa≦90.0° …式(1)
50.2°≦θb≦80.0° …式(2)
0°≦(θa―θb)≦31.0° …式(3)
そして本発明の造形方法は、前記造形方法であって、前記描画領域に対する前記液状体の接触角θaと、前記層状構造体の厚さ方向に沿う側面に対する前記液状体の接触角θbとが、上記式(1)〜式(3)を満たす液状体を用いることを要旨とする。
【0008】
本発明の造形方法によれば、硬化性を有した液状体からなる液状層が硬化済み層状構造体よりも幅広な形状である場合であっても、硬化済みの層状構造体の側面に前記液状層が濡れ広がることを抑制することができるようになる。それゆえに、前記液状層を硬化した層状構造体の形状の精度を高めることができるようになる。特に、層状構造体の側面に濡れ広がってしまった前記液状体に起因する前記第1基板と平行な方向における層状構造体の寸法の変化を抑えることができるようにもなる。また、前記第1基板の描画領域に対する前記液状体の接触角が60°以上となるため、前記層状構造体を容易に前記第1基板から剥離させることができるようにもなる。
【0009】
この造形方法において、前記硬化性を有した液状体として、前記描画領域に対する前記液状体の接触角θa、前記層状構造体の厚さ方向に沿う側面に対する前記液状体の接触角θbとが、下記式(4)、式(5)を満たす液状体を用いることを要旨とする。
【0010】
64.9°≦θb≦80.0° …式(4)
0°≦(θa―θb)≦11.3° …式(5)
この造形方法のように、さらに上記各接触角の関係及び角度範囲を限定することにより前記硬化済みの層状構造体の側面に前記液状層が濡れ広がることをさらに抑制することができるようになる。それゆえに、前記液状層を硬化した層状構造体の形状の精度をさらに高めることができるようになる。
【0011】
この造形方法において、前記硬化工程では、前記液状層を硬化させる際に前記描画領域と前記第2基板との間隔を前記液状層の厚さとすることを要旨とする。
この造形方法によれば、前記硬化工程において前記硬化性を有した液状体からなる液状層の厚みを変動させることなく、かつ該液状層の表面と第2基板上の層状構造体の表面とを密着させつつ第2基板を前記液状層に被せることができるようになる。これにより、前記描画工程、前記硬化工程、前記転写工程を繰り返した場合であっても、各硬化工程にて硬化された層状構造体の厚みの精度を高めることができるため、前記液状層を硬化した各層状構造体の形状の精度をさらに高めることができるようにもなる。
【0012】
この造形方法において、前記硬化性を有した液状体は、光硬化性を有していることを要旨とする。
この造形方法によれば、液状層に光を照射するだけで該液状層を硬化させることができる。また、光硬化性の液状体は、照射される光の強度や照射時間に応じて硬化度合いを変化させることができるため、照射する光の強度や照射時間を調整することにより、前記液状層を硬化した層状構造体の形状の精度をさらに高めることができるようにもなる。
【0013】
この造形方法において、前記描画工程では、前記硬化性を有した液状体を液滴にして吐出する液滴吐出法を用いて、前記描画領域に前記液状層を描画することを要旨とする。
この造形方法のように、液状体を液滴にして吐出する液滴吐出法を用いて描画領域に液
状層を描画することで描画領域に高精細な液状層を形成することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を具体化した一実施形態に用いられる造形システムの構成を示す図。
【図2】造形システムを構成する造形装置の斜視構造を示す斜視図。
【図3】造形装置が有する液滴吐出ヘッドの側面構造を示す側面図。
【図4】液滴吐出ヘッドが有するノズル形成面の平面構造を示す平面図。
【図5】液滴吐出ヘッドの内部構造を示す側断面図。
【図6】造形装置が有する露光部及び転写部の斜視構造を示す斜視図。
【図7】露光部及び転写部の側面構造を示す側面図。
【図8】造形装置の電気的構成を示すブロック図。
【図9】造形システムによって造形される立体の積層構造の一例を示す図。
【図10】本発明を具体化した造形方法の手順を示すフローチャート。
【図11】描画用基板と転写用基板とによって第k層目の液状層が挟持された状態の一例を模式的に示す図。
【図12】層状構造体120及び描画面15aに対する液状体50の接触角を模式的に示す図。
【図13】描画用基板と転写用基板とによって第1層目の層状構造体120を介して第2層目の液状層58を挟持する状態における試験の実施態様を模式的に示す図。
【図14】第1層目の層状構造体120の側面における第2層目の液状層58の濡れ広がりの抑制が理想的に成されていると評価する場合を模式的に示す図。
【図15】第1層目の層状構造体120の側面における第2層目の液状層58の濡れ広がりの抑制が十分に成されていると評価する場合を模式的に示す図。
【図16】第1層目の層状構造体120の側面における第2層目の液状層58の濡れ広がりの抑制が成されていないと評価する場合を模式的に示す図。
【図17】従来例において、描画用基板と転写用基板とに挟まれた液状層の状態を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した一実施形態における造形方法について図1〜図12を参照して説明する。まず、造形方法に用いられる造形システムについて説明する。図1は、造形システムの概略構成を示す図である。図1に示されるように、造形システム1は、コンピューター3と、造形装置5とで構成されている。コンピューター3は、立体7を複数の層状構造体からなる積層体として取り扱うために、立体7の形状を示すデータに基づいて各層状構造体の形状を示す層形状データを生成する。コンピューター3は、層状構造体の形状を示すデータである層形状データを造形装置5に出力する。造形装置5は、コンピューター3から出力される層形状データに基づいて該層形状データが示す形状の層状構造体を形成するとともに、層状構造体を順次積層することによって立体7を造形する。
【0016】
図2に示されるように、造形装置5は、基板搬送部10と、キャリッジ搬送部20と、露光部70と、転写部80とを有している。基板搬送部10は、一つの方向に沿って延びる基台12を有している。基台12の上面12aには、基台12が延びる方向である搬送方向Xに沿って延びる一対のガイドレール13a,13bが敷設されている。一対のガイドレール13a,13bには、図示しない基板搬送モーター16(図8参照)の駆動軸に伝達機構を介して連結された搬送テーブル14が配設されている。そして基板搬送モーター16が駆動されると、転写部80と対向する転写エリアと該転写エリアとは反対側の待機エリアとの間で搬送テーブル14が移動する。
【0017】
搬送テーブル14は、露光部70が出射する紫外光71(図7参照)に対して透過性を有した例えばガラスや石英などで構成されている。搬送テーブル14の上面14aには、
矩形状の描画面15aを有した第1基板としての描画用基板15が載置されている。描画用基板15は、これもまた露光部70が出射する紫外光71(図7参照)に対して透過性を有した例えばガラスや石英などで構成されている。
【0018】
キャリッジ搬送部20は、基台12が延びる方向と直交する方向であるヘッド移動方向Yにおける基台12の両側に立設された支柱21a,21bと、該支柱21a,21bに架設されたガイド部材22とを有している。なお、搬送方向X及びヘッド移動方向Yに直交する方向を鉛直方向Zという。ガイド部材22には、ガイド部材22が延びる方向に沿ってガイドレール23が配設されている。ガイドレール23には、図示しないキャリッジモーター27(図8参照)の駆動軸に伝達機構を介して連結されたキャリッジ24が配設されている。なお、本実施形態の造形装置5においては、搬送テーブル14が移動する経路のうち、液滴吐出ヘッド30が移動する経路と相対向する領域を描画エリアという。
【0019】
図3に示されるように、液滴吐出ヘッド30は、ガイドレール23に配設されたキャリッジ24が搭載するヘッドプレート25に連結されるヘッド本体31と、ヘッド本体31の底部に設けられたノズルプレート32とを有している。ノズルプレート32のノズル形成面32aには、鉛直方向Zに沿ってノズルプレート32を貫通するノズル33が複数形成されている。
【0020】
図4に示されるように、ノズルプレート32には、描画用基板15が移動する方向に沿ってピッチ寸法Pで配列された複数のノズル33からなる2本のノズル列34a,34bが液滴吐出ヘッド30の移動する方向に並設されている。液滴吐出ヘッド30が移動する方向から見て、ノズル列34a,34bを構成する複数のノズル33は、描画用基板15が移動する方向に沿って互いにピッチ寸法P/2で配置されている。そして、これら2本のノズル列34a,34bによってノズル群35Kが構成されている。なお、ノズルプレート32には、ノズル群35Kと同様の構成からなるノズル群35C、35M、35Y、35W、35Tが液滴吐出ヘッド30の移動する方向に併設されている。
【0021】
図5に示されるように、ヘッド本体31は、各ノズル33に連通した複数のキャビティ45を有したキャビティプレート41と、各キャビティ45を覆うようにキャビティプレート41に接合された振動板42とを有している。またヘッド本体31は、各キャビティ45に対向するように振動板42に接合された複数の圧電素子43を有している。そして駆動電圧を受けた圧電素子43が鉛直方向Zに伸縮すると、各キャビティ45に収容された液状体50の一部が駆動電圧に応じたサイズや速度を有する液滴55としてノズル33から吐出された後に描画面15aに着弾する。そして描画面15aには、着弾した液滴55によって液状層58が描画される。なお、このような液滴吐出ヘッド30を用いて液状層58を描画する構成であれば、いわゆるディスペンサ法を用いて形成されたものよりも高精細な液状層58を描画することが可能である。
【0022】
次に、ノズル33から液滴55として吐出される液状体50について説明する。本実施形態の液状体50は、紫外光によって硬化が進行する光硬化性を有した光硬化剤が樹脂材料に添加されてなる液状体である。こうした液状体50を構成する樹脂材料としては、例えば、アクリル系やエポキシ系の樹脂材料など採用することが可能である。また光硬化剤としては、例えば、ラジカル重合型の光重合開始剤や、カチオン重合型の光重合開始剤などが採用することが可能である。なお、ラジカル重合型の光重合開始剤としては、例えば、イソブチルベンゾインエーテルや、イソプロピルベンゾインエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、ベンジル、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジエトキシアセトフェノン、クロロチオキサントン、イソプロピルチオキサントンなどが挙げられる。カチオン重合型の光重合開始剤としては、例えば、アリールスルホニウム塩誘導体や、アリルヨードニウム塩誘導体、ジアゾニウム塩誘導体、トリアジン系
開始剤などが挙げられる。
【0023】
また、上記構成の液状体50に顔料や染料等の色素や、親液性あるいは撥液性を示す表面改質材料などの機能性材料を添加することによって、固有の機能を有する液状体50を生成することも可能である。なお本実施形態の造形装置5には、液状体50として、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)及びホワイト(W)の各色で構成された5種類の液状体と、光透過性を有する樹脂材料で構成された液状体とが用いられている。そしてノズル群35K,35C,35M,35Y,35W,35Tの各々には、それに対応する液状体が供給される。
【0024】
ちなみに液滴55が着弾する描画用基板15の描画面15aの描画領域には、液状体50に対して撥液性を示す材料がコーティングされていることによって、撥液領域が形成されている。このように描画面15aに撥液性を持たせることにより、描画面15aにおいて硬化した液状体50を該描画面15aから剥離させやすくすることができる。液状体50に対して撥液性を示す材料としては、例えば、フッ素やフッ素化合物を含有する材料が挙げられる。撥液領域は、フッ素やフッ素化合物を含有するガス中に基板を曝す気相法、フッ素やフッ素化合物を含有する溶液中に基板を浸す浸液法、該溶液を基板に吹き付けるスプレー法、該溶液を基板の表面で伸ばすスピンコート法などによって形成される。また、フッ素やフッ素化合物を含有するガス中で基板をプラズマ処理することによっても形成される。本実施形態では、フッ素コート材(EGC−1720、住友スリーエム株式会社製)が描画面15aにコーティングされている。
【0025】
次に、液状層58の硬化を進行させる露光部70について図6及び図7を参照して説明する。図6は、露光部及び転写部の斜視構造を示す斜視図である。図6は、描画用基板15が移動する方向から見た露光部及び転写部の側面図である。
【0026】
図6及び図7に示されるように、露光部70は、基台12が延びる方向における該基台12の一端部に設けられている。露光部70は、基台12におけるガイドレール13a,13b間に設けられた凹部12b内に配設されるとともに、該凹部12bの開口部に向けて所定の波長及び強度を有した紫外光71を光源73から出射する。凹部12bの開口部には、光源73から出射された紫外光71を透過する蓋板75が配設されている。紫外光71としては、描画面15aに形成されたコーティング膜が破壊されないように、200nmよりも長い波長の紫外光が好ましい。光源73としては、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ等を用いることができる。そして搬送テーブル14が転写エリアに位置しているときに光源73から紫外光71が出射されると、蓋板75、搬送テーブル14、及び描画用基板15を通過した紫外光71が描画面15aに描画された液状層58に到達する。
【0027】
次に、転写部80について同じく図6及び図7を参照して説明する。図6及び図7に示されるように、転写部80は、液滴吐出ヘッド30が移動する方向における基台12の両側に立設された支柱81a,81bと、露光部70と相対向するように支柱81a,81bに架設された架設部材82とを有している。液滴吐出ヘッド30が移動する方向において架設部材82の中央部には、露光部70に向かって延びる支持部材83が鉛直方向Zに移動するように取り付けられている。この支持部材83の基端は、昇降モーター86の駆動軸に伝達機構を介して連結されるとともに、該昇降モーター86に駆動されて鉛直方向Zに移動する。また支持部材83の先端には、第2基板としての矩形状の転写用基板85が固定されている。転写用基板85は、描画用基板15の描画面15aに対して平行な造形面85aを有している。造形面85aは、搬送テーブル14が転写エリアに配置されているときに、描画用基板15の描画面15aにおける中心と該造形面85aにおける中心とが鉛直方向Zで一致するかたちで、描画用基板15の描画面15aと相対向する。ちな
みに、転写用基板85の造形面85aは、描画用基板15の描画面15aよりも液状体50に対する撥液性が低くなるように構成されている。
【0028】
次に、造形装置5の電気的構成について図8を参照して説明する。図8は、造形装置の電気的構成を示すブロック図である。図8に示されるように、造形装置5は、造形装置5を統括制御する制御部101を有している。制御部101は、CPU102と、駆動制御部103と、記憶部104とを有している。駆動制御部103の各構成部は、CPU102からの指令に基づいて、基板搬送部10、キャリッジ搬送部20、液滴吐出ヘッド30、露光部70、転写部80における駆動の態様を制御する。記憶部104は、RAMやROMなどで構成されて、造形装置5における各種制御プログラム105を記憶する領域や、各種のデータが一時的に展開された展開データを記憶するための領域を有する。
【0029】
制御部101は、インターフェース113(以下、I/F113)を介して上記コンピューター3と接続している。コンピューター3は、立体7の形状を示すデータに基づいて各層状構造体の形状を示すデータを生成して制御部101に出力する。また、コンピューター3は、紫外光71の照射時間を規定した照射時間データを生成して制御部101に出力する。ちなみに照射時間データとは、光源73を用いて液状体50を完全に硬化させるための照射時間に関わる情報である。
【0030】
モーター制御部131は、CPU102からの指令に基づいて、基板搬送モーター16、キャリッジモーター27、及び昇降モーター86の各々を駆動する。位置検出制御部133は、CPU102からの指令に基づいて搬送テーブル14の位置、キャリッジ24の位置、及び転写用基板85の位置の各々を、テーブル位置検出装置141、キャリッジ位置検出装置143、及び転写用基板位置検出装置145に検出させる。位置検出制御部133は、テーブル位置検出装置141、キャリッジ位置検出装置143、及び転写用基板位置検出装置145の検出結果に基づいて搬送テーブル14の位置、キャリッジ24の位置、及び転写用基板85の位置を示す信号をCPU102に出力する。吐出制御部135は、CPU102からの指令に基づいて液滴吐出ヘッド30を駆動する。吐出制御部135は、データ展開部106に格納された液滴55を吐出するためのデータに基づいて、圧電素子43に駆動電圧を供給することでノズル33から液滴55を吐出させる。露光制御部137は、CPU102からの指令に基づいて、光源73への電力供給とその遮断とを実行する。
【0031】
また、制御部101には、バス111を介してタイマー部150が接続されている。制御部101は、タイマー部150は、CPU102からの指令に基づいて、紫外光71の照射時間を計測する。
【0032】
次に、上述した構成の造形システムを用いて立体を造形する造形方法について図9〜図10を参照して説明する。図9は、立体の積層構造の一例を示す図である。図10は、造形装置5によって立体7を造形する手順を示すフローチャートである。
【0033】
図9に示されるように、コンピューター3は、立体7の形状を示すデータに基づいて、厚さtnを有した立体7を、膜厚tを有するn層(nは、2以上の整数)の層状構造体120に仮想的に分割する。コンピューター3は、層状構造体120の各々に対して、層状構造体120の大きさ、厚さ、形、位置、配色などを示す層形状データを生成する。
【0034】
図10に示されるように、本実施形態の造形方法では、まずコンピューター3によって層形状データが生成される層形状データ生成工程(ステップS10)が行われる。次いで、第1層目の層形状データに基づく液状層58が描画用基板15に描画される描画工程(ステップS20)が行われる。続いて、描画用基板15と転写用基板85とによって第1
層目の液状層58が挟持された状態で液状体50を硬化させる硬化工程(ステップS30)と、転写用基板85側に層状構造体120を転写する転写工程(ステップS40)とが順に行われる。そして、全ての層状構造体120に対する転写が終了したか否かの判断がなされる(ステップS50)。全ての層状構造体120に対する転写が終了していない場合、すなわちステップS50にて「NO」の場合には、全ての層状構造体120に対する転写が終了するまで、後続する層状構造体の描画工程(ステップS20)、硬化工程(ステップS30)、転写工程(ステップS40)が繰り返される。
【0035】
これら各ステップにおける工程の内容を、以下で詳述する。
描画工程(ステップS20)では、描画面15aに膜厚tの液状層58が描画される。この液状層58を描画する処理は、制御部101によって以下のようにして実行される。まず制御部101は、記憶部104に記憶された制御プログラムに従って、描画対象である液状層58に対応する層形状データを読み出した後、該層状構造体が形成される位置と該層状構造体の膜厚tとを該層形状データから把握する。次いで制御部101は、層状構造体の位置と該層状構造体の膜厚tとに基づいて、液状層58を描画するために必要とされる液滴の直径、数量、位置を決定する。制御部101は、該液滴の直径、数量、位置を示す液状層描画データを生成した後、該液状層描画データを記憶部104における所定の記憶領域に一旦格納する。そして制御部101は、基板搬送モーター16を駆動させて搬送テーブル14を移動させることにより、待機エリアから描画エリアへ描画用基板15を搬送する。その後、制御部101は、液状層描画データに基づき、キャリッジモーター27を駆動させてキャリッジ24を移動させることにより液滴吐出ヘッド30と描画用基板15とを相対的に移動させながら、膜厚tからなる液状層58を描画面15aに描画する。
【0036】
硬化工程(ステップS30)では、液状層58を描画用基板15と転写用基板85とによって挟持させた状態で該液状層58を完全に硬化させて層状構造体120を形成する。液状体50を硬化させる硬化処理は、制御部101によって以下のようにして実行される。まず制御部101は、記憶部104に記憶された制御プログラムに従って基板搬送モーター16を再度駆動させて搬送テーブル14を移動させることにより、描画エリアに位置している描画用基板15を転写エリアまで搬送する。次に制御部101は、記憶部104に記憶された制御プログラムに従って昇降モーター86を駆動させて、描画用基板15と転写用基板85との間隔が液状層58の厚さになるように、転写用基板85を降下させる。これにより、描画用基板15と転写用基板85とによって液状層58を挟持させる。次いで制御部101は、光源73を駆動、すなわち光源73への電力供給を開始して液状層58に紫外光71を照射するとともに、タイマー部150を用いて紫外光71の照射時間を計測する。そして、制御部101は、紫外光71の照射時間が上記照射時間を超えると、光源73への電力供給を遮断する。
【0037】
転写工程(ステップS40)では、硬化工程(ステップS30)で形成された層状構造体120を転写用基板85に転写させる。層状構造体120を転写させる転写処理は、制御部101によって以下のようにして実行される。制御部101は、記憶部104に記憶された制御プログラムに従って、昇降モーター86を再度駆動させて転写用基板85を上昇させる。この際、描画用基板15に対する層状構造体120の接着力よりも転写用基板85に対する層状構造体120の接着力の方が大きいため、層状構造体120は、転写用基板85に接着した状態で描画用基板15から剥離する。
【0038】
こうして層状構造体120が転写用基板85側に積層されていくこととなる。
次に、層状構造体120に対する液状体50の接触角と、描画面15a(撥液領域)に対する同液状体50の接触角との関係、並びにこれらの値について図11〜図12を参照して説明する。
【0039】
図11は、層状構造体120及び描画面15aに対する液状体50の接触角を模式的に示す図である。図12は、本実施形態における描画用基板と転写用基板とによって第k層目の液状層58が挟持された状態の一例を模式的に示す図である。なお、硬化済みの層状構造体120に対する液状体50の接触角と、描画面15a(撥液領域)に対する同液状体50の接触角との関係との関係等は、後述する実験にて見出されたものである。
【0040】
図11に示されるように、接触角θとは、一般的に固体表面と液体表面とが成す角度のうち液体内で規定された角度のことをいう。そして本実施形態における接触角θaとは、固体表面である描画面15a(撥液領域)と液状体50とが成す角度のうち該液状体50内で規定された角度のことをいう。さらに本実施形態における接触角θbとは、固体表面である層状構造体120と液状体50とが成す角度のうち該液状体50内で規定された角度のことをいう。
【0041】
上述した造形方法においては、第k層目の層状構造体120が第(k−1)層目の層状構造体120に積層される。第k層目の液状層58の中には、第(k−1)層目の層状構造体120よりも幅広である形状、すなわちオーバーハング形状を呈した膜厚tの液状層58が含まれる。ここで、図12に示されるように、第k層目の層状構造体120に関わる硬化工程(ステップS30)を行うべく、制御部101は、転写用基板85が有する層状構造体120と描画用基板15との距離が液状層58の厚さtとなるように転写用基板85を降下させる。これにより第k層目の液状層58は、転写用基板85に積層された第1層目から第(k−1)層目までの層状構造体120を介して、描画用基板15と転写用基板85とによって挟持されることとなる。この際、第k層目の液状層58が層状構造体よりも幅広である場合、第(k−1)層目の層状構造体120の側面にも液状体50が濡れ広がろうとする。その結果、第k層目の層状構造体120に形状の変化が生じやすくなってしまう。
【0042】
そこで、本実施形態においては後述する実験結果に基づき、描画面15aに対する液状体50の接触角(以下、接触角θa)と、層状構造体120の厚さ方向に沿う側面に対する液状体50の接触角(以下、接触角θb)とが、下記式(1)〜式(3)の関係を成すようにした。
【0043】
60.0°≦θa≦90.0° …式(1)
50.2°≦θb≦80.0° …式(2)
0°<(θa−θb)≦31.0° …式(3)
すなわち、接触角θaが接触角θbよりも大きく、かつ接触角θaと接触角θbとの角度差が31°以下となるようにするとともに、接触角θbを50.2°以上80°以下の角度を成すようにした。加えて、転写工程(ステップS40)における転写性を確保すべく、すなわち層状構造体120を転写用基板85に接着した状態で描画用基板15から剥離させるべく、接触角θaが60°以上90°以下の角度を成すようにした。
【0044】
なお、第(k−1)層目の層状構造体120の側面に液状体50が濡れ広がろうとすることをさらに抑制するためには、下記式(4)、式(5)の関係を満たす構成が好ましい。すなわち、接触角θaと接触角θbとの角度差を11.3°以下となるようにし、かつ接触角θbを64.9°以上の角度を成すようにすることが望ましい。
【0045】
64.9°≦θb≦80.0° …式(4)
0°<(θa−θb)≦11.3° …式(5)
(実施例)
以下に、実施例を挙げて本発明の効果を具体的に説明するが、本発明はこの実施例及び
試験例に何ら制限されるものではない。ちなみに本試験は、第k層目の層状構造体120の側面に対して第k+1層目の液状層58の濡れ広がりを抑制することができる条件、すなわち第k+1層目の液状層58を高精細に形成するための接触角θa及び接触角θbの条件を求めるための試験であって、k=1の場合を例示する。
【0046】
まず、本試験に使用する転写用基板85上の造形された層状構造体120と、描画用基板15の描画面15a上に描画された液状層58の寸法について図13を参照して説明する。なお、液状層58を形成するに先立って、描画面15aにフッ素コート材(EGC−1720、住友スリーエム株式会社製)をコーティングし、液状層58を形成するための撥液領域を描画面15a上に形成した。図13は、第1層目の層状構造体120を介して、描画用基板15と転写用基板85とによって第2層目の液状層58を挟持させた本試験の前提となる構成を模式的に示す図である。
【0047】
図13に示されるように、第1層目の層状構造体120の層厚t1と第2層目の液状層58の層厚t2とは共に100μmである。ちなみに本試験に用いる液状体50は、後述するようにいずれも紫外線硬化型樹脂インクであって、該インクは溶剤を含有しないインク、すなわち固形分離度100%のインクであるため、前記挟持の前後で第2層目の液状層58の層厚は変動しない。また、前記第1層目の層状構造体120の平面形状は縦横各々の幅が1cmの正方形であり、前記第2層目の液状層58の平面形状は縦横各々の幅が1.4cmの正方形である。すなわち第2層目の液状層58の平面形状は、第1層目の層状構造体120の平面形状に対していわゆるオーバーハング形状である。
【0048】
次に、表1に示される3種類の組成(重量%)からなる紫外線硬化性樹脂インクを用いて、実施例1〜3の層状構造体120及び液状層58を得た。なお、表1に示されるモノマーとして、ジプロピレングリコールジアクリレート(略称:DPGDA、ダイセル・サイテック株式会社販売)を使用した。また、光開始材として、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名:DAROCUR 1173、チバスペシャルティーケミカルズ(株)販売)を使用した。そして、第1のフッ素系(F系)界面活性剤(商品名:メガファック F−483、DIC株式会社製)、及び第2のフッ素系(F系)界面活性剤(メガファック F−477、DIC株式会社製)を使用した。加えて、第3のフッ素系(F系)界面活性剤(メガファック F−483、DIC株式会社製)を使用した。一方、これら紫外線硬化型樹脂インクを光硬化させる際の紫外線照射条件は、水銀紫外線ランプが発する紫外線波長を365nm、1平方cmあたりの紫外線強度を6mW、照射時間を180秒とした。そして、実施例1〜3の層状構造体120及び液状層58について、層状構造体120の側面における液状層58の濡れ広がりの程度、接触角θa、接触角θb、及び液状層58の転写時における剥離性を評価した。これら実施例1〜3における上記濡れ広がりの程度、接触角θa、接触角θb、及び転写時剥離性、それらの評価結果を表3に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
また、表2に示される3種類の組成比からなる紫外線硬化性樹脂インクを用いて、比較例1〜3の層状構造体120及び液状層58を得た。なお、表2に示されるモノマー、光開始材、フッ素系(F系)界面活性剤は、いずれも上記実施例1〜3と同じである。また、これら紫外線硬化型樹脂インクを光硬化させる際の紫外線照射条件も、上記実施例1〜3と同じである。そして、比較例1〜3の層状構造体120及び液状層58について、層状構造体120の側面における液状層58の濡れ広がりの程度、接触角θa、接触角θb、及び液状層58の転写時における剥離性を評価した。これら比較例1〜3における上記濡れ広がりの程度、接触角θa、接触角θb、及び転写時剥離性、それらの評価結果を表3に示す。
【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【0053】
なお、第1層目の層状構造体120の側面における第2層目の液状層58の濡れ広がりの程度は、層状構造体120における形状精度の観点から、図14〜図16に例示される3種類に分類されている。図14は、第1層目の層状構造体120の側面における第2層目の液状層58の濡れ広がりの抑制が理想的に成されている場合を模式的に示す図である。図15は、第1層目の層状構造体120の側面における第2層目の液状層58の濡れ広がりの抑制が理想的ではないものの、十分に成されている場合を模式的に示す図である。図16は、第1層目の層状構造体120の側面における第2層目の液状層58の濡れ広がりの抑制が成されていない場合を模式的に示す図である。
【0054】
図14に示されるように、第1層目の層状構造体120の側面全体が第2層目の液状層58によって覆われておらず、かつ第2層目の液状層58の側面が一定の傾斜度を保っている場合を理想的な状態とし、これを「評価◎」とした。また、図15に示されるように、第2層目の液状層58の側面が一定の傾斜度を保っていないものの、第1層目の層状構造体120の側面全体が第2層目の液状層58によって覆われていない場合を濡れ広がりの抑制が十分な状態とし、これを「評価○」とした。そして、図16に示されるように、第2層目の液状層58の側面状態に関わらず、第1層目の層状構造体120の側面全体が第2層目の液状層58によって覆われている場合を濡れ広がりの抑制が不十分な状態とし、これを「評価×」とした。
【0055】
表3に示されるように、実施例1〜3の各水準では、層状構造体120の側面に対する液状層58の濡れ広がりの程度が「評価◎」あるいは「評価○」であることが認められた。特に実施例1及び実施例2の各水準では、層状構造体120の側面に対する液状層58の濡れ広がりが十分に抑えられていることが認められた。これに対して、比較例1〜3の各水準では、いずれも層状構造体120の側面全体が液状層58によって覆われてしまうことが分かった。なお、実施例1〜3及び比較例1〜3のいずれにおいても、転写時剥離性は良好であった。
【0056】
上述した接触角とは、静止液体の自由表面が固体表面に接する場所において、該静止液体の自由表面と該固体表面とのなす角度を示すものであって、固体表面に対する液体の付着力と液体分子間の凝集力との大小関係によって定められるものである。それゆえに、構造体が有する固液界面において上記実施例1〜3と同程度の接触角が得られる構成であれば、こうした固液界面において上記実施例1〜3と同様な評価結果が得られるものと言える。すなわち上記実施例1〜3が示す接触角θa,θbと同程度の接触角が得られる構成であれば、上記実施例1〜3と同じく、層状構造体120の側面に対して液状層58の濡
れ広がりを抑えることが可能である。
【0057】
したがって、上記実施例1〜3が示す接触角θa,θbと同程度の接触角が得られる液状体、つまり上記式(1)〜(3)が満たされる液状体を用いる造形方法であれば、層状構造体が積層されてなる立体の形状の精度を高めることが可能であることが分かった。また上記式(4)、(5)が満たされる液状体を用いる造形方法であれば、該立体の形状の精度をさらに高めることが可能であることが分かった。
【0058】
以上説明したように、本実施形態における造形方法によれば、以下のような優れた効果を得ることができる。
(1)第(k−1)層目の層状構造体120よりも幅広な第k層目の液状層58は、第(k−1)層目の層状構造体120の側面に濡れ広がりやすい。しかし、このように造形対象の層状構造体120がオーバーハング形状となる場合であっても、硬化済みの層状構造体120の側面に液状層58が濡れ広がることを抑制することができるようになる。それゆえに、第k層目の層状構造体120の形状の精度を高めることができるようになる。加えて、層状構造体120の側面に濡れ広がってしまった液状体50に起因する層状構造体120の形状の変化、特に造形面85aと平行な方向における寸法の変化を抑えることができるようにもなる。また、接触角θa及び接触角θbの角度条件をさらに規制することにより、第k層目の層状構造体120の形状の精度をさらに高めることができるようにもなる。
【0059】
(2)描画面15aは、撥液領域を有している。こうした構成によれば、描画面15aにおいて硬化した液状層58を該描画面15aから容易に剥離させることができるようになる。加えて、この撥液領域により接触角θaを大きくすることができるとともに、接触角θbも大きくすることができるため、硬化済みの層状構造体120の側面に液状層58が濡れ広がることを抑えることができるようにもなる。これにより、オーバーハング形状を造形する場合であっても、該造形の対象たる層状構造体120の形状の精度を高めることができるようになる。
【0060】
(3)第k層目の層状構造体120に関わる硬化工程を行うべく、制御部101は、描画用基板15と転写用基板85との距離が距離(k×t)と等しくなる位置まで転写用基板85を降下させる。これにより第k層目の液状層58の厚みを変動させることなく、転写用基板85に積層された第1層目から第(k−1)層目までの層状構造体120を介して、描画用基板15と転写用基板85とによって第k層目の液状層58を挟持することができるようになる。このため、描画工程、硬化工程、転写工程を繰り返した場合であっても、各硬化工程にて硬化された層状構造体の厚みの精度を高めることができるため、前記液状層を硬化した各層状構造体の形状の精度をさらに高めることができるようにもなる。
【0061】
(4)上記実施形態では、光硬化性を有する前記液状体50を用いる。これにより、液状層に光を照射するだけで該液状層を硬化させることができる。加えて、光硬化性の液状体は、照射される光の強度や照射時間に応じて硬化度合いを変化させることができるため、照射する光の強度や照射時間を調整することにより、前記液状層を硬化した層状構造体の形状の精度をさらに高めることができるようにもなる。
【0062】
(5)上記実施形態では、液滴吐出ヘッド30から液状体50の液滴55が吐出される液滴吐出法を用いて、描画面15aに液状層58を描画した。こうした構成によれば、描画面15a上に液状層58を高精細に形成することができるようになる。
【0063】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、液状体50を液滴55にして吐出する液滴吐出法を用いて描画面
15aに液状層58を描画した。これに限らず、描画面15aに液状層58を描画する方法は、例えばディスペンサ法などであってもよい。
【0064】
・上記実施形態では、光硬化性を有する液状体50によって液状層58が形成される。これを変更して、例えば熱硬化性を有する液状体によって液状層58が形成される構成であってもよい。また例えば、光硬化性を有する液状体と熱硬化性を有する液状体とが混合されてなる液状体によって液状層58が形成される構成であってもよい。この構成によれば、光硬化性に基づく硬化と熱硬化性に基づく硬化とを互いに異なるタイミングで進行させることが可能であるため、液状層58の硬化度合いを調整することにより、前記液状層を硬化した層状構造体の形状の精度をさらに高めることが可能にもなる。
【0065】
・上記実施形態では、光源73への電力の供給及び遮断によって紫外光71の照射の態様を制御している。これを変更して、光源73に電力を供給し続けるとともに、凹部12bの開口部を開閉するシャッターの開閉によって紫外光71の照射の態様を制御するようにしてもよい。こうした構成によれば、光源73から出射される光量の安定化を図ることが可能となるため、紫外光71の照射量の安定化、液状層58における硬化の度合いの安定化を図ることが可能となる。ひいては、立体7の形状の精度を、より高めることが可能となる。
【0066】
・上記実施形態では、描画面15aには、撥液領域のみが形成されている。これを変更して、親液領域とともに撥液領域を形成してもよい。こうした構成であれば、描画面15aに描画された液状層58を構成する液状体50の一部が親液領域に保持されることになる。これにより、硬化工程(ステップS30)において、液状層58の位置ずれや形状の変化、層状構造体120の位置ずれや形状の変化を抑えることが可能となる。ひいては層状構造体120の積層体である立体7の形状の精度を、より高めることが可能となる。
【0067】
・また、転写工程(ステップS40)において、描画用基板15と転写用基板85とで挟持された層状構造体120が転写用基板85の上昇によって転写用基板85側に転写されるのであれば、撥液領域60を割愛してもよい。
【0068】
・上記実施形態の造形装置5は、1つの液滴吐出ヘッド30によって液状層58が描画されている。これを変更して、複数の液滴吐出ヘッド30によって液状層58が描画されるという構成であってもよい。こうした構成であれば、描画工程(ステップS20)における処理時間の短縮が見込まれる。
【0069】
・上記実施形態の造形装置5では、圧電素子駆動方式の液滴吐出ヘッド30によって液滴55が吐出されている。これを変更して、液滴吐出ヘッドから液滴55を吐出するという観点からすれば、抵抗加熱方式や静電駆動方式の液滴吐出ヘッドによって液滴55が吐出されるという構成であってもよい。
【符号の説明】
【0070】
fx,fy…離間距離、P…ピッチ寸法、t…膜厚、tn…厚さ、t1…第1層目の層状構造体120の層厚、t2…第2層目の液状層58の層厚、T…照射時間、X…搬送方向、Y…ヘッド移動方向、Z…鉛直方向、1…造形システム、3…コンピューター、5…造形装置、7…立体、10…基板搬送部、12…基台、12a…基台の上面、12b…凹部、13a,13b…ガイドレール、14…搬送テーブル、14a…上面、15…描画用基板、15a…描画面、16…基板搬送モーター、20…キャリッジ搬送部、21a,21b…支柱、22…ガイド部材、23…ガイドレール、24…キャリッジ、25…ヘッドプレート、27…キャリッジモーター、30…液滴吐出ヘッド、31…ヘッド本体、32…ノズルプレート、32a…ノズル形成面、33…ノズル、34a,34b…ノズル列、
35C,35K,35M,35T,35W,35Y…ノズル群、41…キャビティプレート、42…振動板、43…圧電素子、45…キャビティ、50…液状体、55…液滴、58…液状層、70…露光部、71…紫外光、73…光源、75…蓋板、80…転写部、81a,81b…支柱、82…架設部材、83…支持部材、85…転写用基板、85a…造形面、86…昇降モーター、101…制御部、102…CPU、103…駆動制御部、104…記憶部、105…制御プログラム、106…データ展開部、111…バス、113…インターフェース、120…層状構造体、131…モーター制御部、133…位置検出制御部、135…吐出制御部、137…露光制御部、141…テーブル位置検出装置、143…キャリッジ位置検出装置、145…転写用基板位置検出装置、150…タイマー部、201…描画用基板、202…転写用基板、203…層状構造、204…液状層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性を有した液状体からなる液状層を第1基板の描画領域に描画する描画工程と、
前記液状層に第2基板を接触させた状態で該液状層を硬化させる硬化工程と、
前記第1基板と前記第2基板との間隔を広げることによって前記液状層の硬化物である層状構造体を前記第2基板に転写する転写工程とを含み、
前記描画工程、前記硬化工程、前記転写工程を繰り返すことによって前記層状構造体が積層されたかたちの立体を前記第2基板に造形する造形方法であって、
前記描画領域に対する前記液状体の接触角をθaとし、
前記層状構造体の厚さ方向に沿う側面に対する前記液状体の接触角をθbとすると、
下記式(1)〜(3)を満たす液状体を用いる
60.0°≦θa≦90.0° …式(1)、
50.2°≦θb≦80.0° …式(2)、
0°≦(θa―θb)≦31.0° …式(3)、
ことを特徴とする造形方法。
【請求項2】
前記描画領域に対する前記液状体の接触角をθaとし、
前記層状構造体の厚さ方向に沿う側面に対する前記液状体の接触角をθbとすると、
下記式(4)、式(5)を満たす液状体を用いる
64.9°≦θb≦80.0° …式(4)、
0°≦(θa―θb)≦11.3° …式(5)、
ことを特徴とする請求項1に記載の造形方法。
【請求項3】
前記硬化工程では、前記液状層を硬化させる際に前記描画領域と前記第2基板との間隔を、前記液状層の厚さにする
ことを特徴とする請求項1または2に記載の造形方法。
【請求項4】
前記液状体は、光硬化性を有している
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の造形方法。
【請求項5】
前記描画工程では、前記硬化性を有した液状体を液滴にして吐出する液滴吐出法を用いて前記描画領域に前記液状層を描画する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の造形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−245678(P2011−245678A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119276(P2010−119276)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】