説明

造形物製作方法および造形物製作用器具

【課題】落ち着いて造形物の製作ができるとともに、完成した造形物を比較的短時間で硬化させることを可能とする手段を提供する。
【解決手段】紙繊維を水に溶解して作られた造形用材料11を外型12の凹部もしくは外型12とその凹部内側に配置した内型13との間に生じる凹部に詰め込み、押さえ板16を用いた押圧により圧搾脱水された外型12(および内型13)内の造形用材料11を電子レンジに入れてマイクロ波の照射を行う。その結果、半乾燥し形状を保持可能となった造形用材料11の造形物が得られる。そのように得られる造形物を外型12から外し、排水溝の切られたプレート上に置いて、再度、電子レンジに入れてマイクロ波の照射を行う。その結果、十分に乾燥し硬化した造形物が製作される。そのように製作された複数のパーツとしての造形物を接着することにより、例えば恐竜の模型が製作される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造形物を製作する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
模型等の造形物の製作には手先の器用さが要求されるだけでなく、より完成度の高い造形物を作るために様々な知恵や想像力が要求される。そのため、造形物製作は工作の教材として採用されるとともに、老若男女を問わず楽しめるホビーとして古くから広く愛されている。
【0003】
造形物製作には様々な材料や方法が用いられる。例えば、子どもに人気のプラモデルは、予め成型されたプラスチックのパーツを接着剤により接着し組み立てていくことにより模型を製作するものである。プラモデルは一定の手順に従いパーツの切り離し、バリ取り、接着といった作業を丁寧に行っていけば、基本的に同一形状の模型が製作できる点がその魅力である。また、模型の形状が完成した後、ラッカー等の塗料で製作者の好みに応じた着色を行うことによりオリジナリティを付加できる点もプラモデルの魅力の一つである。
【0004】
ただし、上述したプラモデルの魅力は欠点の裏返しでもある。すなわち、プラモデルは量産された同一形状のパーツを切り離して組み立てていくため、手作り品としての温かさに欠ける側面がある。また、細かいパーツを丁寧に接着していく作業は比較的単調で、根気を要する。さらに、接着剤やラッカー等の塗料の多くは石油系の溶剤を含むため、健康に良くない、臭い、洋服等に付着するとその除去が困難である、といった問題もある。そのため、特に低年齢児童にとってプラモデルの製作は不向きである。
【0005】
低年齢児童に適した造形物製作の材料として粘土がある。粘土にも様々な種類があり、あまり乾かず何度でも使用可能な油粘土、口に入れても害が少ない小麦粘土など、その特性も様々である。それらの粘土の中で古くから広く利用されているものに紙粘土がある。紙粘土は細かい造形が可能であり、乾燥すると硬化してその形状を保つとともに軽くなり、有害な成分をあまり含まず、水性塗料でも着色が可能なため、幼稚園・保育園や小学校の工作にも広く採用されている。
【0006】
粘土を用いた造形物製作において、製作者は全く自由に造形を行うことができる。しかし、自由度が高すぎると個々人の器用さやセンスといった能力に出来上がりの質が大きく左右されるため、全ての人が同じように楽しめるわけではない、というマイナス面もある。
【0007】
そのような粘土のマイナス面を補う方法の一つとして、型を用いる方法がある。すなわち、粘土を予め準備されている筒状の型で抜いたり、型の凹みに粘土を押し込んだ後に型から外したりすることにより、粘土で一定の形状の造形物を容易に短時間で作ることができる。そのように作った造形物をパーツとして組み合わせ、全体としてより複雑な造形物を作ることも行われている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】登録実用新案第3139995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、博物館や児童館、ショッピングセンターなどで主に子ども(または親子)を対象としたイベントが盛んに行われている。それらのイベントの中には、オリジナルのアクセサリー製作など、手芸・工作を短時間で体験できるものがあり人気が高い。
【0010】
上述した型を用いた粘土による造形物製作も、そのようなイベントにおいてよく採用されるものの一つである。比較的簡単かつ短時間にほぼ一定のクオリティの造形物を作ることができるためである。
【0011】
ただし、イベントにおける粘土による造形物製作においては、製作者(子どもまたはその親など)が完成した粘土細工を持ち帰ることが難しい、という問題が伴う。粘土が十分に硬化するまでに時間を要するためである。造形物のサイズがアクセサリーのように小さい場合はその問題はさほど深刻ではないが、例えば野球ボール程度の大きさの造形物を紙粘土で作って自然乾燥した場合、通常のイベントの時間内(1〜2時間程度)で持ち運びに耐え得るだけの硬さを得ることはできない。そのため、せっかく作った造形物が持ち帰ってみれば修復困難な程に壊れており、子どもに悲しい思い出を作ってしまう、という残念な結果も生じ得る。
【0012】
上述の問題は、例えば粘土の素材として速乾性のものを用いれば解消されるが、速乾性の粘土は造形中にも速い速度で硬化が進むため、落ち着いて造形が行えないという問題が伴う。また、速乾性の素材の多くは健康上好ましくない成分の揮発を伴う。
【0013】
本発明は、そのような事情を鑑み、落ち着いて造形物の製作ができるとともに、完成した造形物を比較的短時間で硬化させることを可能とする手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するため、本発明は、
乾燥により硬化し、乾燥時の総重量に対する重量比50%以上の植物繊維または植物繊維由来の化学繊維を含む造形用材料により造形物を造形するステップと、
前記造形するステップにおいて造形された造形物に対しマイクロ波を照射するステップと
を備える造形物製作方法
を提供する(第1の実施態様)。
【0015】
上述の第1の実施態様において、
前記造形用材料に含まれる植物繊維または植物繊維由来の化学繊維は紙繊維であり、
前記造形用材料は水の蒸発により硬化する
構成が採用されてもよい(第2の実施態様)。
【0016】
上述の第1または第2の実施態様において、
前記造形するステップは、型に設けられた所定形状の凹部内に前記造形用材料を詰めるステップを含む
構成が採用されてもよい(第3の実施態様)。
【0017】
上述の第3の実施態様において、
前記型は、前記造形物の外面を成型する外型と前記造形物の内面を成型する内型とを備え、
前記造形用材料を詰めるステップは、前記外型と前記内型との間に形成される凹部内に前記造形用材料を詰めるステップを含む
構成が採用されてもよい(第4の実施態様)。
【0018】
上述の第3または第4の実施態様において、
前記マイクロ波を照射するステップは、前記型の凹部内に詰められた状態の前記造形物に対しマイクロ波を照射するステップと、前記型の凹部内から取り外された前記造形物に対しマイクロ波を照射するステップとを含む
構成が採用されてもよい(第5の実施態様)。
【0019】
上述の第3乃至第5のいずれかの実施態様において、
前記型の凹部の開口部の内側の領域の少なくとも一部を覆う無孔または有孔の板を、前記型の凹部内に詰められた状態の前記造形物に対し押圧するステップを備える
構成が採用されてもよい(第6の実施態様)。
【0020】
上述の第5の実施態様において、
前記型の凹部内に詰められた状態の前記造形物に対しマイクロ波を照射するステップの前に、前記型の凹部の開口部の内側の領域の少なくとも一部を覆う無孔または有孔の板を前記型の凹部内に詰められた状態の前記造形物に対し押圧することにより前記造形物に含まれる液体を絞り出すステップと、
前記型の凹部内に詰められた状態の前記造形物に対しマイクロ波を照射するステップの後に、前記型の凹部の開口部の内側の領域の少なくとも一部を覆う無孔または有孔の板を前記型の凹部内に詰められた状態の前記造形物に対し押圧することにより前記造形物の表面を平滑化するステップと
を備える
構成が採用されてもよい(第7の実施態様)。
【0021】
上述の第1乃至第7のいずれかの実施態様において、
前記マイクロ波を照射するステップは、前記造形物を排液用の溝または孔の設けられたプレートの上に載置するステップと、前記プレートの上に載置された状態の前記造形物に対しマイクロ波を照射するステップとを含む
構成が採用されてもよい(第8の実施態様)。
【0022】
上述の第1乃至第8のいずれかの実施態様において、
前記マイクロ波を照射するステップにおける照射を受けた前記造形物を2つ、互いに接着するステップ
を備える
構成が採用されてもよい(第9の実施態様)。
【0023】
また、本発明は、
造形物の外面を成型する外型と前記造形物の内面を成型する内型とを備え、
マイクロ波を透過する物質でできている
造形物製作用器具
を提供する(第10の実施態様)。
【0024】
また、本発明は、
型に設けられた所定形状の凹部内に詰められた保液状態の造形用材料に対し接するように配置され、前記型の凹部の開口部の内側の領域の少なくとも一部を覆う無孔または有孔の板を、前記造形用材料を挟んで前記型に向かう方向に押圧する押圧部を備える
造形物製作用器具
を提供する(第11の実施態様)。
【0025】
上述の第11の実施態様において、
前記型の底面外縁を取り囲む形状の凹みまたは孔を有し、当該凹みまたは孔に前記型の底面外縁が嵌り込むように前記型を配置することにより前記型の位置決めを行うための位置決め枠を備える
構成が採用されてもよい(第12の実施態様)。
【0026】
上述の第11または第12の実施態様において、
前記押圧部は、前記板を押圧する複数の突起部を有する
構成が採用されてもよい(第13の実施態様)。
【0027】
上述の第11乃至第13のいずれかの実施態様において、
前記押圧部は、前記板に接触するヘッド部と、前記ヘッド部に加圧する加圧部とを有し、
前記ヘッド部は前記加圧部に対し着脱可能であり、異なる形状の前記型の各々に応じた異なる形状を有する複数のヘッド部の中から選択され、前記加圧部に取り付けられる
構成が採用されてもよい(第14の実施態様)。
【0028】
また、本発明は、
型に設けられた所定形状の凹部内に詰められた保液状態の造形用材料に対し接するように配置され、前記型の凹部の開口部の内側の領域の少なくとも一部を覆う無孔または有孔の板であって、
前記造形用材料と接する側と反対側に同じ長さで突起する3以上の突起部を備える
造形物製作用器具
を提供する(第15の実施態様)。
【0029】
また、本発明は、
乾燥により硬化する造形用材料により造形された造形物を載置するためのプレートであって、
前記造形物から流れ出す液体を排液するための溝または孔が設けられ、
マイクロ波を透過する物質でできている
造形物製作用器具
を提供する(第16の実施態様)。
【発明の効果】
【0030】
本発明の第1の実施態様にかかる造形物製作方法によれば、自然乾燥では十分な硬化まで長時間を要する造形物が短時間で硬化するため、例えば短時間で造形物の製作を完了したいイベント等において便利である。
【0031】
本発明の第2の実施態様にかかる造形物製作方法によれば、造形用材料の主原料および揮発する物質が人体に与える害が少ないため、安全に造形物の製作を行うことができる。
【0032】
本発明の第3の実施態様にかかる造形物製作方法によれば、型に造形用材料を詰めることにより造形物の成型を行うことができるため、容易かつ短時間で一定のクオリティの造形物を製作することができる。
【0033】
本発明の第4の実施態様にかかる造形物製作方法によれば、中空部を有する造形物を型により成型することができるため、成型された造形物の硬化に要する時間を短縮することができるとともに、その重量を軽くすることができる。
【0034】
本発明の第5の実施態様にかかる造形物製作方法によれば、型に詰まった状態の造形物が型から外してもその形状を保持可能な程度に硬化した後、型から外された造形物が再度、乾燥される。型から外された造形物は型に詰まった状態の造形物より乾燥が速いため、全体としての硬化に要する時間が短縮される。すなわち、造形段階では型から外してその形状を保持できない程に柔らかい造形用材料を用いた造形物の製作の場合であっても、本発明の第5の実施態様にかかる造形物製作方法によれば、その製作に要する総時間を短縮することができる。
【0035】
本発明の第6の実施態様にかかる造形物製作方法によれば、造形物に含まれる水等の液体を絞り出すことで硬化に要する時間を短縮したり、造形物の表面を平滑化することでその見た目を向上したりすることができる。
【0036】
本発明の第7の実施態様にかかる造形物製作方法によれば、未乾燥の造形物に対し、それが含む水等の液体の絞り出しが行われ、ある程度乾燥した造形物に対し、その表面の平滑化が行われる。その結果、硬化に要する時間の短縮と、見た目の向上の両方を効率的に行うことができる。
【0037】
本発明の第8の実施態様にかかる造形物製作方法によれば、マイクロ波の照射中に煮沸され造形物から流れ出した液体の造形物による再吸収が防止されるため、造形物の硬化に要する時間を短縮することができる。
【0038】
本発明の第9の実施態様にかかる造形物製作方法によれば、全体として一度に造形が困難な複数な形状の造形物や、全体として大き過ぎてマイクロ波の照射が困難な造形物であっても製作が可能となる。
【0039】
本発明の第10の実施態様にかかる造形物製作用器具によれば、上述の本発明の第4の実施態様にかかる造形物製作方法の実施が可能となり、その効果を得ることができる。
【0040】
本発明の第11の実施態様にかかる造形物製作用器具によれば、上述の本発明の第6の実施態様にかかる造形物製作方法の実施において、例えば手で板を造形物に対し押し当てる場合と比較し均一な力で造形物を押圧することが可能となり、よりクオリティの高い造形物の製作が容易に可能となる。
【0041】
本発明の第12の実施態様にかかる造形物製作用器具によれば、上述の本発明の第11の実施態様にかかる造形物製作用器具を用いた造形物の製作において、押圧対象の造形物の位置決めを容易に行うことができる。
【0042】
本発明の第13の実施態様にかかる造形物製作用器具によれば、造形物の押圧時に押圧面の全体が覆われることがないため、押圧の状態が目視確認しやすい、押圧面の中央付近から絞り出される液体が型の外部に流れ出やすい、等のメリットが得られる。
【0043】
本発明の第14の実施態様にかかる造形物製作用器具によれば、型の形状に応じたヘッド部のみを交換することで異なる形状の型に対し押圧を行うことができる。
【0044】
本発明の第15の実施態様にかかる造形物製作用器具によれば、上述の本発明の第11の実施態様にかかる造形物製作用器具を用いた造形物の製作において、造形物の押圧時に押圧面の全体が覆われることがないため、押圧の状態が目視確認しやすい、押圧面の中央付近から絞り出される液体が型の外部に流れ出やすい、等のメリットが得られるとともに、型の形状に応じた板を準備することにより、上述の本発明の第11の実施態様にかかる造形物製作用器具を異なる形状の型に対し使用することが可能となる。
【0045】
本発明の第16の実施態様にかかる造形物製作用器具によれば、上述の本発明の第8の実施態様にかかる造形物製作方法の実施が可能となり、その効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、本発明の一実施形態にかかる模型の造形作業に用いられる材料および器具を示した図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態にかかる模型の造形作業に用いられるヘラの端部の形状を示した図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態にかかる模型の製作の手順を説明するための図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態にかかる模型の製作の手順を説明するための図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態にかかる模型の製作の手順を説明するための図である。
【図6】図6は、本発明の一実施形態にかかる模型の製作の手順を説明するための図である。
【図7】図7は、本発明の一実施形態にかかる模型の製作の手順を説明するための図である。
【図8】図8は、本発明の一実施形態にかかる模型の製作の手順を説明するための図である。
【図9】図9は、本発明の一実施形態にかかる模型の製作の手順を説明するための図である。
【図10】図10は、本発明の一実施形態にかかる模型の製作の手順を説明するための図である。
【図11】図11は、本発明の一実施形態にかかる模型の製作の手順を説明するための図である。
【図12】図12は、本発明の一実施形態にかかる模型の製作の手順を説明するための図である。
【図13】図13は、本発明の一実施形態にかかる模型の製作の手順を説明するための図である。
【図14】図14は、本発明の一実施形態にかかる模型の製作の手順を説明するための図である。
【図15】図15は、本発明の一実施形態にかかる模型の製作の手順を説明するための図である。
【図16】図16は、本発明の一実施形態にかかる模型の製作の手順を説明するための図である。
【図17】図17は、本発明の一実施形態にかかる模型の製作の手順を説明するための図である。
【図18】図18は、本発明の一実施形態にかかる模型の製作の手順を説明するための図である。
【図19】図19は、本発明の一実施形態にかかる模型の製作の手順を説明するための図である。
【図20】図20は、本発明の一実施形態にかかる模型の製作の手順を説明するための図である。
【図21】図21は、本発明の一実施形態にかかる模型の完成状態を例示した図である。
【図22】図22は、本発明の一変形例にかかる造形物製作用器具を例示した図である。
【図23】図23は、本発明の一変形例にかかる造形物製作用器具を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
[1.実施形態]
本発明にかかる造形物製作方法および造形物製作用器具を、恐竜(プレシオザウルス)の模型100の製作においてそれらを用いた場合を例として、以下に説明する。なお、以下の説明において、模型100は博物館で開催されるイベントにおいて参加者である子ども達により製作されるものとする。
【0048】
模型100の造形作業には、造形用材料11、外型12、内型13、ヘラ14、タオル15および押さえ板16が用いられる(図1)。これらの材料および器具は予めイベントの主催者が準備しておく。
【0049】
造形用材料11は、模型100を造形するための材料であり、使用済み牛乳パック(紙製)をその原材料としている。造形用材料11の作り方は例えば以下の手順による。
(1)牛乳パックを、中性洗剤を加えたお湯で20分程煮沸して、十分に水を吸収させる。
(2)十分に水を吸収してふやけた牛乳パックを水で洗浄し、中性洗剤を除去する。
(3)洗浄した牛乳パックから、その表面を覆っているコーティングフィルムを剥ぎ取り、除去する。
(4)紙のみとなった牛乳パックに水を適量加え、小型セメント用ミキサーにかける。
(5)小型セメント用ミキサーにより細かく紙繊維が分離された部分を取り出し、水分が多すぎて硬さが緩すぎる場合には、水を絞り出して硬さを調整する。その結果、造形用材料11が完成する。
【0050】
上記(4)において十分に細かく紙繊維が分離されていない部分については、例えば新たに上記(3)において準備された牛乳パックとともに再度、上記(4)および(5)の工程に投入され、造形用材料11になる。
【0051】
なお、以上のように作られた造形用材料11は、紙粘土より不均質でダマがあり、そのダマが完成時の模型100の表面に自然な凹凸をもたらす。なお、造形用材料11の不均質性の程度は上記(4)における小型セメント用ミキサーのパワーや材料をかける時間などを適宜選択することにより調整可能である。また、造形用材料11は粘土のようなべとつき感がない。そのため、手や洋服を汚すことがほとんどなく、気軽に模型の製作に取り組める、というメリットがある。
【0052】
外型12は、模型100の各パーツの外面の形状を成型するための型である。模型100は本体右側パーツ、本体左側パーツ、前右鰭パーツ、前左鰭パーツ、後右鰭パーツ、後左鰭パーツの計6つのパーツからなり、それらが接着(後述)されることにより組み立てられる。従って、外型12もそれらの各々に応じた6つが用いられる。
【0053】
内型13は、模型100の一部パーツの内面の形状を成型するための型である。模型100の本体右側パーツおよび本体左側パーツは、もし外型12の凹部の全てを満たすように造形用材料11を詰めて成型されると肉厚となり、乾燥による硬化に長時間を要する。また、模型100の総重量が重くなるというデメリットもある。内型13はそのようなデメリットを解消するため、本体右側パーツおよび本体左側パーツに中空部を作り、その厚さを薄くするために用いられる型である。
【0054】
なお、前右鰭パーツ、前左鰭パーツ、後右鰭パーツ、後左鰭パーツに関しては肉厚ではないため、内型13は不要である。概して、外型12のみを用いる場合に1〜2センチメートル以上の肉厚部が生じるパーツに関しては、内型13を用いてその厚さを薄くすることが望ましい。
【0055】
外型12および内型13は、マイクロ波を透過する材料でできている。それは、外型12の凹部、もしくは外型12と内型13との間に生じる凹部に詰め込まれて成型された状態の造形用材料11に対し、電子レンジによるマイクロ波の照射が行われるため、マイクロ波により外型12および内型13が不要に加熱されることを防ぐためである。マイクロ波を透過する材料としては陶器やガラス、合成樹脂等があるが、外型12および内型13はシリコンやポリプロピレンなどの合成樹脂でできていることが望ましい。例えば落下等による破損や製作者の負傷の危険性が低いためである。
【0056】
ヘラ14は、例えば割り箸の太い方の端部を図2のように成形したものである。ヘラ14は外型12の凹部、もしくは外型12と内型13との間に生じる凹部に造形用材料11を詰め込んでいく際に用いられるとともに、外型12(および内型13)に詰め込まれた造形用材料11の外部に露出する端面(特に端面の外縁部)の形を整える(ラインを出す)際に用いられる。
【0057】
タオル15は通常のタオルであり、外型12の凹部、もしくは外型12と内型13との間に生じる凹部に詰め込まれた造形用材料11の露出面に押し当てられることで、造形用材料11を型の凹部にさらにしっかりと押し込むとともに、露出面をある程度平らにするために用いられる。その際、概ね造形された造形用材料11に含まれる水分がタオル15に吸収されることで、後の硬化に要する時間が短縮される、という効果も生じる。
【0058】
押さえ板16は各パーツの外型12の開口部の形状をやや縮小した形状の平板であり、外型12の凹部に詰め込まれた造形用材料11の露出面に押し当てられるための器具である。従って、押さえ板16は各パーツに対応する6つの外型12の各々に対応し、同じく6つが用いられる。押さえ板16は例えば硬質プラスチック製であり、押し当て時に造形用材料11の状態を外部から確認できるように透明または半透明であることが望ましい。また、押し当て時に持ちやすいように、造形用材料11に押し当てられる側と反対側の面上に取っ手が取り付けられている。
【0059】
押さえ板16の大きさは、外型12の開口部を塞いだ際に外型12の開口部の外縁と押さえ板16の外縁との間に1〜2ミリメートル程度の隙間ができるように調整されている。この隙間は押さえ板16が外型12とぶつからないための「遊び」であるとともに、水を多く含む状態で型に入った造形用材料11に押さえ板16を押し当て、造形用材料11に含まれる水を絞り出す際の水の流出経路を確保するためのものでもある。
【0060】
以上が模型100の造形において使用される材料および器具の説明である。なお、イベントに使用できる時間が許す場合には、造形用材料11を作る作業の全てまたはその一部を主催者が実演したり、イベントの参加者に体験してもらったりしてもよい。それにより、参加者は模型100の材料がリサイクル材料であることを実感することができ、教育的な観点からも望ましいためである。
【0061】
続いて参加者が模型100を造形する手順を説明する。まず、参加者は本体右側パーツおよび本体左側パーツの造形を行う。なお、本体右側パーツと本体左側パーツの造形の手順は同じであるため、以下、本体右側パーツに関して説明する。
【0062】
参加者は、外型12の凹部の深い部分(お腹の部分)の底面上に、造形用材料11を厚さ2センチメートル程度、敷き詰めるところから作業を始める(図3)。
【0063】
次に、お腹の部分に敷き詰めた造形用材料11の上に、外型12に対応する内型13を、その凸面が下になる向きで外型12の凹部のほぼ中央位置に載せ、下向きに押圧する(図4)。これにより、お腹の部分に敷き詰められた造形用材料11がしっかりと圧縮され硬くなるとともに、余分な水が絞り出される。参加者は必要に応じて造形用材料11の詰め込まれた状態の外型12および内型13を傾け、絞り出された余分な水を外に捨てる。
【0064】
なお、余分な水が絞り出された状態で、お腹の部分の造形用材料11の厚さが約1.5センチメートル程度となることが望ましい。そのため、もしお腹の部分の厚さが薄すぎる場合には内型13を一時的に取り外して造形用材料11を足し、逆に厚すぎる場合には内型13を一時的に取り外して余分な造形用材料11を剥ぎ取った後、再度、内型13で押圧する作業を行って、その厚さを調節する。
【0065】
続いて、お腹の部分の外型12と内型13の間の凹部に造形用材料11を詰める(図5)。その際、凹部に入れた造形用材料11をヘラ14で押し込んでいくことで、造形用材料11を凹部の内側にしっかりと密に詰め込んでいくことができる。
【0066】
お腹の部分に造形用材料11を詰め込み終えると、首の部分の凹部にも造形用材料11を詰める。さらに、お腹の部分および首の部分のいずれにも、造形用材料11が外型12および内型13の開口面から上に盛り上がるように、多めに造形用材料11を載せる(図6)。このように多めに造形用材料11を載せておくのは、後述する水分の絞り出しにより造形用材料11がさらに凹部に押し込まれるためである。
【0067】
続いて、乾いたタオル15を外型12および内型13の凹部に詰め込まれた状態の造形用材料11の上に載せ、手のひらで下方に押圧して、造形用材料11の露出面を概ね平らにするとともに、その露出面から絞り出されてくる水をタオル15で吸い取る(図7)。
【0068】
以上の作業により、本体右側パーツの外側面および内側面が外型12と内型13により成型される。ただし、造形用材料11の露出面、特にその外縁部(外型12に接する部分)はまだしっかりとその形が整っていない。そこで、参加者はヘラ14の先(図2)を外縁部付近の造形用材料11にしっかりと押し当て、外型12に押し付けるようにして、造形用材料11の形を整える(図8)。この作業により、本体右側パーツが本体左側パーツと接着される際、その接着面の外側に見える部分がまっすぐなラインを描くようになる。
【0069】
以上の作業を終えると、参加者は本体右側パーツに成型された造形用材料11を外型12および内型13に入ったままの状態で主催者の所に持って行く。主催者は、本体右側パーツの造形用材料11に含まれる水を圧搾機17により絞り出す(図9および図10)。
【0070】
図10に示されるように、圧搾機17は造形用材料11の詰め込まれた状態の外型12を載置するための台座部171と、主催者が圧搾時に押し倒す加圧レバー172と、加圧レバー172の押し倒しに伴い下方に加圧を行う加圧シャフト173と、加圧シャフト173による加圧を受けて面的な加圧を行う加圧プレート174と、加圧プレート174による加圧を受けて造形用材料11の上面に載せられた押さえ板16を複数の点で下方に押圧するヘッド部175と、加圧レバー172および加圧シャフト173を支持する天板部176と、台座部171および天板部176を支持するサイドプレート177により構成されている。
【0071】
なお、ヘッド部175は押さえ板16を下方に均等な力で押圧するように、水平面上に概ね等間隔に配置され、加圧プレート174から下方に同じ長さで突起する複数の棒状の突起部により構成されている。これらの突起部の配置領域は押さえ板16の形状に応じて異なる。従って、予め異なる形状の押さえ板16の各々に応じた領域に突起部の配置された加圧プレート174とヘッド部175のアセンブリが準備されている。主催者はそれらのアセンブリを加圧シャフト173に付け替えることにより、同じ圧搾機17を用いて異なる形状の外型12に詰まった造形用材料11の圧搾を行うことができる。
【0072】
主催者は、参加者が本体右側パーツの造形用材料11および内型13の入った外型12を持ってくると、その外型12の上面に押さえ板16を載せ、加圧レバー172を押し上げた状態の圧搾機17の台座部171の上に外型12を置き、ゆっくりと加圧レバー172を押し下げる。その押し下げの動作に伴い、ヘッド部175が押さえ板16を押し下げ、押さえ板16により外型12の中の造形用材料11が外型12に対し押し付けられ、その結果、造形用材料11に含まれている水が外型12の開口面と押さえ板16との隙間から絞り出される。そのように絞り出された水は、例えば台座部171の上面に切られた排水溝に沿って流れ、圧搾機17の下に置かれた受け皿に落ちる。
【0073】
主催者は、加圧レバー172を押し下げながら、ヘッド部175が正しい位置で押さえ板16を押圧しているか、造形用材料11の密度差によって押さえ板16が傾くなどの不都合が生じていないか、絞り出された水がしっかりと外型12の外に流れ出しているか、といった状況を確認する。なお、ヘッド部175が上述したように複数の突起部で構成されているため、押さえ板16の押圧時に押さえ板16全体がヘッド部175に覆われることがなく、主催者は押圧の状態を目で確認することができる。
【0074】
水の絞り出しが完了すると、主催者は加圧レバー172を押し上げた後、外型12を圧搾機17から取り出し、押さえ板16を取り除き、造形用材料11の露出面が十分に平らとなっているかを確認する(図11)。主催者は、必要に応じてヘラ14等を用いて露出面の凹凸をさらに整形し、その仕上げを行う。なお、この露出面の仕上げは参加者が行ってもよいが、特に本体右側パーツの露出面は本体左側パーツとの接着面となるため平らである必要があり、主催者がその仕上げを行うことが望ましい。
【0075】
続いて、参加者は外型12および内型13に入った状態の本体右側パーツを、それらの型とともに電子レンジに入れ、マイクロ波の照射を行う(図12)。その際のマイクロ波の照射時間は、例えば家庭用の1000Wの電子レンジを用いる場合、6分間程度である。
【0076】
上記のマイクロ波の照射が完了すると、型に入った本体右側パーツを電子レンジから取り出す。その状態の本体右側パーツは、まだ強く押すと変形する程度の柔らかさはあるが、型から取り外してもその形状を保つことができる程度に硬くなっている。その状態において、本体右側パーツの露出面(すなわち接着面)に押さえ板16を押し当て、その表面を押し均す(図13)。
【0077】
続いて、内型13を本体右側パーツから取り外した後、予め主催者により準備されているプレート18を、その上面が外型12の上面に対向するように上下逆にして、本体右側パーツの入った外型12の上から被せ、その状態を保ちながら外型12を上下ひっくり返した後、本体右側パーツから外型12を取り外す。その結果、プレート18の上面上に接着面が下を向いた状態の本体右側パーツが載ることになる(図14)。
【0078】
プレート18は、外型12や内型13と同様の素材でできており、マイクロ波を透過するため、マイクロ波による加熱を受けない。また、プレート18には例えば図14における左右方向に平行に複数の排水溝が切ってある。
【0079】
続いて、プレート18の上に載った状態の本体右側パーツの表面を、1〜2分程度、ドライヤーの冷風で冷やす(図15)。その後、本体右側パーツの表面の、前右鰭パーツおよび後右鰭パーツが接着される部分に、例えば速乾性の手芸用ボンドや木工用ボンドなどの接着剤を薄く塗布する。この接着剤の塗布により、後にパーツ同士を接着する際、その接着部分が接着剤により溶け出すことが防止される。
【0080】
続いて、プレート18の上に載ったままの本体右側パーツを再度、電子レンジに入れ、マイクロ波の照射を行う(図16)。この際のマイクロ波の照射時間も、例えば家庭用の1000Wの電子レンジを用いる場合、6分間程度である。この2度目のマイクロ波の照射時には、電子レンジの中で、水分の一部は煮沸により本体右側パーツから外に流れ出し、プレート18上に落ちて、プレート18に切られた排水溝に溜まる。そのため、一度流れ出した水が再度、本体右側パーツに触れて吸収されることが回避され、短時間での乾燥が可能となる。
【0081】
2度目のマイクロ波の照射を終えると、本体右側パーツをプレート18とともに電子レンジから取り出す。その状態の本体右側パーツは、十分に乾燥し、通常の取り扱いにおいて形状が崩れることがない程に十分に硬化している。以上で本体右側パーツが完成する。
【0082】
なお、上述した本体右側パーツの製作と同時に、本体左側パーツも同様の手順により製作する点は既に述べたとおりである(以下、本体右側パーツおよび本体左側パーツをまとめて「本体パーツ」と呼ぶ)。
【0083】
続いて、参加者は前右鰭パーツ、前左鰭パーツ、後右鰭パーツ、後左鰭パーツ(以下、それらをまとめて「鰭パーツ」と呼ぶ)を上述した本体右側パーツの製作の手順とほぼ同じ手順で製作する。ただし、鰭パーツは肉厚部がないため、内型13を使用する必要がない。従って、外型12の凹部に造形用材料11を山盛りとなるように詰め込んだ後、乾いたタオル15を当てて上から手のひらで押さえ、ヘラ14を用いて外縁部の整形(ライン出し)を行い、押さえ板16を押し当てて水を絞り出すことで、鰭パーツの成型が完了する(図17)。
【0084】
なお、鰭パーツに関しては、押さえ板16の押し当てにおいて圧搾機17を用いる必要はない。鰭パーツは小さいため、手で押さえ板16を押し当てるだけで容易に水の絞り出しができるためである。
【0085】
その後、外型12に入ったままの状態で鰭パーツを電子レンジに入れ、マイクロ波の照射(1回目)を行う。電子レンジから出した半乾燥状態の鰭パーツの露出面を押さえ板16で押し均す(図18)。その後、鰭パーツを外型12から取り外し、例えば網台の上に載せてドライヤーの冷風で1〜2分程度、冷却する(図19)。続いて、鰭パーツをプレート18上に載せて電子レンジに入れ、マイクロ波の照射(2回目)を行う。2回目のマイクロ波の照射が完了すると、鰭パーツが完成する。
【0086】
上記のようにして、全てのパーツが完成すると(図20)、参加者はまず本体右側パーツと本体左側パーツとの接着面に速乾性の手芸用ボンドや木工用ボンド等の接着剤を塗布し、それらの接着面を互いに接着させる。続いて、参加者は先に接着剤を塗布した本体パーツの表面部分の所定位置に、各鰭パーツを同じく接着剤を用いて接着する。それらの接着に用いた接着剤が硬化すると、模型100が完成となる(図21)。完成した模型100は全長約25センチメートル程度である。なお、必要に応じて、例えば接着面における段差部分にサンドペーパーをかけてその段差をなくす等の仕上げ作業を追加してもよい。
【0087】
以上説明した一連の模型100の製作作業に要する時間は概ね1時間程度であり、博物館や児童館、ショッピングセンターなどのイベントにおいて通常、使用できる(多くの参加者が飽きずに楽しめる)時間内に収まる。そのように製作時間が短時間でありながら、完成した模型100は参加者が持ち帰る際に多少乱暴に扱っても壊れることのない程、十分に乾燥し硬化している。
【0088】
それを可能としているのは、まずはマイクロ波の照射による高速な造形用材料11の乾燥である。マイクロ波の照射による乾燥の高速性には造形用材料11の特性も大きく貢献している。すなわち、紙粘度などの他の造形用材料と比較して密度の低い紙繊維を単に水に溶解させた造形用材料11を用いることにより、マイクロ波の照射により短時間で水分が蒸発する。
【0089】
さらに、型に入れた状態でのマイクロ波の照射により半乾燥させた後、型から出して2度目のマイクロ波の照射を行う、という2段階の乾燥工程の採用も、乾燥の高速化に貢献している。また、2度目のマイクロ波の照射時に、流れ出す水を受ける排水溝の切られたプレート18を用いることも、乾燥の高速化に貢献している。
【0090】
完成した造形物の軽さも特筆すべき点の一つである。そのような軽さもまた、造形用材料11の特性による。すなわち、造形用材料11は油脂などの高密度な成分を含まず、造形前の重量の大半を占める水分が全て蒸発してしまうため、完成した造形物は極めて軽くなる。
【0091】
また、完成した造形物の優れた風合いも特筆すべき点の一つである。造形用材料11はその不均質性により、造形物の表面に自然な凹凸をもたらす。その自然な凹凸が暖かい手作り感のある独特の風合いとなり、特に造形物が恐竜やその他動物の場合、その風合いが馴染むと思われる。
【0092】
また、完成した造形物の表面には、例えばイベントの参加者がそれを自宅に持ち帰った後などに自由に着色をしてもよいが、その際、素材が紙であるため、水彩絵の具などの水性塗料を用いた着色が可能である。そのため、例えば油性塗料を要するプラスチック製の模型に対する着色と比較し、揮発物の臭いがさほど臭くない、揮発物が健康を害することがない、家具や洋服などに塗料が付着してもそれらの洗浄が容易である、等の理由から、気軽に着色作業を行うことができる。
【0093】
また、上述した造形物の製作方法においては型による成型により造形が行われるため、製作者の能力によって完成品のクオリティが大きく変わることは少ない。従って、老若男女を問わず、誰でも同時に参加してその製作を楽しむことができる。
【0094】
それでもなお、未就学児や重度の身体障害もしくは知的障害を持つ人などが一人で模型100のような造形物の製作を行うことは難しいと感じる場合には、それらの参加者には比較的製作が簡単な鰭パーツを担当してもらい、他の参加者には本体パーツを担当してもらう、といった分業を行うことでそれらの能力差をカバーすることも容易である。例えば、図13に模型200として示しているのは恐竜の卵の模型であり、就学児が模型100を製作している間に未就学児は模型200を製作することで、年齢の大きく異なる兄弟姉妹が共に楽しめる模型製作イベントを行うこともできる。
【0095】
[2.変形例]
上述した実施形態は、本発明の技術的範囲内において様々に変形可能である。以下にそれらの変形の例をいくつか示す。
【0096】
上述した実施形態の説明においては、本体パーツの製作を完了した後に鰭パーツの製作を行うものとしたが、これらのパーツの製作の順序は逆にしてもよいし、同時並行的に行ってもよい。例えば、本体パーツを電子レンジで乾燥している間に、鰭パーツの成型作業を行う等のアレンジを行うことで、参加者の待ち時間を減らすことができる。
【0097】
また、上述した実施形態における作業の手順の一部を省略してもよい。例えば、鰭パーツは小さいため、自然乾燥によっても短時間である程度の硬化が進む。従って、例えば鰭パーツを本体パーツより先に作るようにし、鰭パーツに関しては2度目のマイクロ波の照射を省略し、本体パーツの製作中に自然乾燥させることにより、全体の作業数を減らすことができる。
【0098】
また、上述した実施形態においては、使用済み牛乳パックを原材料とする造形用材料11が用いられるものとしたが、その原材料は使用済み牛乳パックに限られず、他の種類の紙が用いられてもよい。例えば、和紙を水に溶解させた造形用材料は、牛乳パックを用いたものとはまた異なる風合いを造形物にもたらす。さらに、色の付いた紙を用いる、または混合することにより、全体に着色された、もしくは一部に着色の模様の入った造形物の製作が可能となる。
【0099】
また、外型12の凹部表面上に色つきの紙を敷いた後に造形用材料11を詰めることにより、完成した造形物の表面に模様を付けるようにしてもよい。
【0100】
さらに、造形用材料の原材料として、紙以外の植物繊維(例えば、綿、麻など)が用いられてもよいし、例えばレーヨンのような植物繊維由来の化学繊維が用いられてもよい。また、それらを混合したものが造形用材料の原材料として用いられてもよい。なお、本発明にかかる造形用材料がそれらの繊維を必ずしも100%含む必要はないが、それらの繊維を主原料(すなわち、乾燥重量において50%以上)として含むことにより、上述したマイクロ波による高速な乾燥が実現される。
【0101】
また、上述した実施形態においては、造形用材料の乾燥前の溶媒は水のみであるものとしたが、マイクロ波により短時間で蒸発し、かつ人体に無害な溶媒であれば水以外の液体であってもよいし、水もしくはそれらの液体の混合液が溶媒として採用されてもよい。
【0102】
また、上述した実施形態においては、排水溝が平行に切られたプレート18が用いられるが、プレート18に平行ではなく例えば格子状など他の形状に切られた排水溝が設けられていてもよいし、例えば電子レンジの皿上に排水を行うように、プレート18に排水用の孔(例えば網状の多孔)が設けられていてもよい。
【0103】
また、上述した実施形態においては、押さえ板16には孔が設けられていないが、押さえ板16に排水用の孔を設けるようにしてもよい。例えば模型100における本体パーツのように比較的広い面積の開口部を備える外型12に対し用いられる押さえ板16は、その面積が広くなるため、その中央部付近では絞り出される水が外に流れ出る経路がなく、圧搾による脱水が十分に行われない、という問題が生じる可能性がある。排水用の孔を押さえ板16に設けることで、そのような問題が解消される。
【0104】
また、上述した実施形態においては、圧搾機17の加圧プレート174から下方へ突起するヘッド部175により押さえ板16を押圧する構成が採用されている。これに代えて、圧搾機17にはヘッド部175を設けず、押さえ板16の上面に上方に同じ長さで突起する3本以上の突起部を設け、天板部176が直接、押さえ板16の突起部を押圧するようにしてもよい。図22は、そのような構成の押さえ板16を例示した図である。その場合、圧搾機17に関しては異なる形状の外型12の各々に応じてヘッド部175を加圧プレート174とともに交換する必要が無くなる。
【0105】
また、上述した実施形態においては、圧搾機17に外型12をセットする際、主催者が目視によりその位置を調整するものとしたが、その方法に代えて、位置決め枠を用いて外型12の圧搾機17に対する位置決めを正確かつ容易に可能としてもよい。位置決め枠は、例えば、圧搾機17の台座部171の上面の形状およびサイズとほぼ一致する板に対し、位置決め対象の外型12の底面の形状の孔もしくは凹みを設けたものである。図23は、そのような構成の位置決め枠(孔を設けたもの)を例示した図である。主催者は位置決め枠を台座部171の上に置き、位置決め枠の孔もしくは凹みに外型12の底面を嵌め込むことにより、外型12の位置を正確かつ容易に決めることができる。
【0106】
また、上述した実施形態において説明した造形用材料11の作り方は一例であって、紙繊維を水に溶解させることができれば、他のいかなる方法が採用されてもよい。例えば、まだ水を含まない牛乳パックを、中性洗剤を加えたお湯で煮沸する代わりに、長時間(例えば半日以上)、単に牛乳パックを水に浸すだけでも、牛乳パックの種類によっては十分に水を含む。
【0107】
なお、牛乳パックをハサミ等で切断すると、その切断部分が圧縮されて水の吸収を妨げるとともに、その切断部分において繊維が切れるため、造形用材料11に不自然な不均質部分が生じる。従って、牛乳パックを開く際にはハサミ等を用いずに引き裂いて開くことが望ましいが、やむを得ずハサミ等により開かれた牛乳パックを用いる場合には、切断された部分を、例えば手でちぎり取ることで、その問題を解消することができる。
【0108】
また、造形用材料11を作る際に用いる小型セメント用ミキサーも例示であって、例えば作る造形用材料11の量が大量でないのであれば家庭用ミキサーが小型セメント用ミキサーの代わりに用いられてもよい。
【0109】
上述した実施形態においては、完成した造形物の強度を高めるための処置については特に説明を行わなかったが、そのような処置が施されてもよい。例えば、水に溶解させた紙繊維のみを材料とする造形用材料11を用いた場合、完成した造形物は紙繊維のみでできているため、水彩絵の具などで着色を行う際、絵の具に使用する水の量が多かったり、何度も重ね塗りをしたりすると、造形物の紙繊維がふやけて溶け出したり、型くずれを起こしたりするおそれがある。そのような問題を回避するために、完成した造形物の表面に画材として利用される定着剤を噴霧したり、造形用材料11にでんぷん糊のような粘着剤を少量添加したりしてもよい。
【0110】
なお、上述した実施形態において説明に用いた数値、形状等は例示であって、それらにより本発明の技術的範囲が限定的に解釈されるべきではない。例えば、マイクロ波の照射時間は概ね6分程度であるものと説明したが、造形物の大きさや形状、造形用材料の原材料の種類、電子レンジの能力等によって望ましいマイクロ波の照射時間は様々に変わりうる。
【0111】
また、上述した実施形態において説明した作業の作業者は任意に変更可能である。例えば、主催者が行うものとして説明した作業を参加者が行ってもよいし、その逆もまた然りである。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明にかかる造形物製作方法はショッピングセンターなどのイベントで実施されることによりサービス業において広く利用可能であり、本発明にかかる造形物製作用器具は製造業およびその販売に従事するサービス業において広く利用可能である。
【符号の説明】
【0113】
11…造形用材料、12…外型、13…内型、14…ヘラ、15…タオル、16…押さえ板、17…圧搾機、18…プレート、100…模型、171…台座部、172…加圧レバー、173…加圧シャフト、174…加圧プレート、175…ヘッド部、176…天板部、177…サイドプレート、200…模型。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥により硬化し、乾燥時の総重量に対する重量比50%以上の植物繊維または植物繊維由来の化学繊維を含む造形用材料により造形物を造形するステップと、
前記造形するステップにおいて造形された造形物に対しマイクロ波を照射するステップと
を備える造形物製作方法。
【請求項2】
前記造形用材料に含まれる植物繊維または植物繊維由来の化学繊維は紙繊維であり、
前記造形用材料は水の蒸発により硬化する
請求項1に記載の造形物製作方法。
【請求項3】
前記造形するステップは、型に設けられた所定形状の凹部内に前記造形用材料を詰めるステップを含む
請求項1または2に記載の造形物製作方法。
【請求項4】
前記型は、前記造形物の外面を成型する外型と前記造形物の内面を成型する内型とを備え、
前記造形用材料を詰めるステップは、前記外型と前記内型との間に形成される凹部内に前記造形用材料を詰めるステップを含む
請求項3に記載の造形物製作方法。
【請求項5】
前記マイクロ波を照射するステップは、前記型の凹部内に詰められた状態の前記造形物に対しマイクロ波を照射するステップと、前記型の凹部内から取り外された前記造形物に対しマイクロ波を照射するステップとを含む
請求項3または4に記載の造形物製作方法。
【請求項6】
前記型の凹部の開口部の内側の領域の少なくとも一部を覆う無孔または有孔の板を、前記型の凹部内に詰められた状態の前記造形物に対し押圧するステップを備える
請求項3乃至5のいずれかに記載の造形物製作方法。
【請求項7】
前記型の凹部内に詰められた状態の前記造形物に対しマイクロ波を照射するステップの前に、前記型の凹部の開口部の内側の領域の少なくとも一部を覆う無孔または有孔の板を前記型の凹部内に詰められた状態の前記造形物に対し押圧することにより前記造形物に含まれる液体を絞り出すステップと、
前記型の凹部内に詰められた状態の前記造形物に対しマイクロ波を照射するステップの後に、前記型の凹部の開口部の内側の領域の少なくとも一部を覆う無孔または有孔の板を前記型の凹部内に詰められた状態の前記造形物に対し押圧することにより前記造形物の表面を平滑化するステップと
を備える
請求項5に記載の造形物製作方法。
【請求項8】
前記マイクロ波を照射するステップは、前記造形物を排液用の溝または孔の設けられたプレートの上に載置するステップと、前記プレートの上に載置された状態の前記造形物に対しマイクロ波を照射するステップとを含む
請求項1乃至7のいずれかに記載の造形物製作方法。
【請求項9】
前記マイクロ波を照射するステップにおける照射を受けた前記造形物を2つ、互いに接着するステップ
を備える請求項1乃至8のいずれかに記載の造形物製作方法。
【請求項10】
造形物の外面を成型する外型と前記造形物の内面を成型する内型とを備え、
マイクロ波を透過する物質でできている
造形物製作用器具。
【請求項11】
型に設けられた所定形状の凹部内に詰められた保液状態の造形用材料に対し接するように配置され、前記型の凹部の開口部の内側の領域の少なくとも一部を覆う無孔または有孔の板を、前記造形用材料を挟んで前記型に向かう方向に押圧する押圧部を備える
造形物製作用器具。
【請求項12】
前記型の底面外縁を取り囲む形状の凹みまたは孔を有し、当該凹みまたは孔に前記型の底面外縁が嵌り込むように前記型を配置することにより前記型の位置決めを行うための位置決め枠を備える
請求項11に記載の造形物製作用器具。
【請求項13】
前記押圧部は、前記板を押圧する複数の突起部を有する
請求項11または12に記載の造形物製作用器具。
【請求項14】
前記押圧部は、前記板に接触するヘッド部と、前記ヘッド部に加圧する加圧部とを有し、
前記ヘッド部は前記加圧部に対し着脱可能であり、異なる形状の前記型の各々に応じた異なる形状を有する複数のヘッド部の中から選択され、前記加圧部に取り付けられる
請求項11乃至13のいずれかに記載の造形物製作用器具。
【請求項15】
型に設けられた所定形状の凹部内に詰められた保液状態の造形用材料に対し接するように配置され、前記型の凹部の開口部の内側の領域の少なくとも一部を覆う無孔または有孔の板であって、
前記造形用材料と接する側と反対側に同じ長さで突起する3以上の突起部を備える
造形物製作用器具。
【請求項16】
乾燥により硬化する造形用材料により造形された造形物を載置するためのプレートであって、
前記造形物から流れ出す液体を排液するための溝または孔が設けられ、
マイクロ波を透過する物質でできている
造形物製作用器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−83574(P2012−83574A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230116(P2010−230116)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(510271783)
【Fターム(参考)】