説明

造影剤における微小球体

【課題】 プロテインシェル中にカプセル封入された6フッ化イオウまたはフッ素化された低分子量炭化水素のガスを含有する微小球体からなり、該プロテインが生物分解性結合を有する架橋基によって架橋されている診断用超音波検査に用いる造影剤を製造するのに有用な、架橋されていない上記微小球体の提供。
【解決手段】 プロテインシェル中にカプセル封入された6フッ化イオウまたはフッ素化された低分子炭化水素からなる微小球体を製造することによる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な造影剤(contrast agent)に関し、詳細には診断用超音波画像化に有用な、ガスを含有するまたはガスを発生する新規な造影剤に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波画像化は、例えば、特にカルジオグラフ診断法での脈管系の検査や、組織微小血管系の検査に潜在的に可能性を持つ価値ある診断手段である。これによって得られる音響像を増強するために、固体粒子の懸濁液、乳化液滴、ガス気泡およびカプセル封入されたガスまたは液体を含めて、各種の造影剤が提案されてきた。容易に圧縮可能な低密度造影剤は、それが発生する音響の後方散乱の点で特に効率的であることが一般に認められており、従ってガスを含有する系およびガスを発生する系を製造することに著しい関心がよせられてきた。
【0003】
生理学的に許容できる物質を心臓内に注入することにより生体内に遊離ガス気泡を発生させることを含む初期の研究により、このような気泡が超音波心臓検査法での造影剤として効率的である可能性が示されてきた。しかしながらこのような技術は遊離気泡が直ちに消失するため実用化には著しい制約がある。従って、超音波心臓検査法および他の超音波検査のためにガス気泡を安定化する方法、例えば乳化剤、油、増粘剤または蔗糖を用いる方法に興味が示されてきた。
【0004】
WO 80/02365号は超音波画像化を増強するためにゼラチンカプセルに封入されたガスの微小気泡の使用を開示している。しかしながらこのような微小気泡は、カプセル封入用被覆が極端に薄いことからみて、超音波心臓検査法で使用するのに好ましい寸法(1〜10μm)では十分な安定性を発揮しない。
【0005】
ヨーロッパ特許第327,490号は、遊離型または結合型のガスまたは揮発性液体(つまり60℃以下の沸点をもつもの)を含有する、微細粒状で生分解性の合成ポリマー(例えばヒドロキシ炭酸ポリエステル、ポリアルキルシアノアクリレート、ポリアミノ酸、ポリアミド、ポリアクリル化サッカライド、またはポリオルトエステル)からなる超音波造影剤を特に開示している。
【0006】
米国特許第4,774,958号は変性されたプロテイン例えばヒトの血清アルブミン中にカプセル封入することにより安定化された微細気泡分散物の使用を開示している。このような系は例えば2〜5μmの寸法を有する微細気泡系の製造は可能であるが、それでもなお左心および心筋の効率的な可視化には使用できない。
【0007】
カプセル化剤としてプロテインを使用するこの他の超音波造影剤も文献中に述べられており、例えばEP第0359 246号(Molecular Biosystems)、US第4,832,941号(Max-Planck Gessellschaft)、US第4,844,882号(Molecular Biosystems)、WO第84/02838号(Feinstein)、US第4,572,203号(Feinstein)、EP第0077 752号(Schering)、US第4,747,610号(The Regents of the University of California)、WO第80/02365号(Rasor)、US第4,774,958号(Feinstein)、US第4,718,433号(Feinstein)、EP第0224 934号(Feinstein)などである。
【0008】
商業的に開発されたプロテインをベースにした唯一の超音波造影剤は、アルブミン溶液の超音波処理により調製されたアルブネックス(R)という、ガス充填アルブミンの懸濁液からなる。
【0009】
アルブミンをベースとした超音波造影剤は以下の各文献中でも述べられている:
Feinstein氏他、Circulation 78S、565(1988)、Reisner氏他、Circulation 78S、565(1988)、Dick氏他、Circulation 78S、565(1988)、Armstrong氏他、Circu-lation 78S 565(1988)、Desir氏他、Circulation 78S566(1988)、Heidenreich氏他、Circulation 78S、566(1988)、Keller氏他、Circulation 78S、567(1988)、Barnhart氏他、Contrast Media Research(1989)、Silverman氏他、Circulation 80S、369(1989)、Silverman氏他、Circulation 80S、349(1989)、Segar氏他、Clin. Res. 37、294(1989)、Heidenreich氏他、Circulation 80S、370(1989)、Reiser氏他、Circula-tion 80S、370(1989)、Heidenreich氏他、Circulation80S、566(1989)、Shandas氏他、Circulation82、95(1990)、Geny氏他Circulation 82、95(1990)、Ten-Cate氏他、Eur Heart J. 19、389(1989)、Feinstein氏他、Echocardiography 6、27(1989)、Zotz氏他、Eur Heart J. 11、261(1990)、Tencate氏他、Eur Heart J. 11、261(1990)、Barnhart氏他、Invest Radiol 25S、162(1990)、Keller氏他、J. Am. Soc. Echo 2、48(1989)、Bleeker氏他、J. Acoust Soc Am 87、1792(1990)、Feinstein氏他、J. Am. Coll. Cardiol 16、316(1990)、Kaul氏他、J. Am. Coll. Cardiol 15、195(1990)、Bleeker氏他、J. Ultrasound Med 9、461(1990)、Hilpert氏他、Radiology 173、361(1989)、およびShapiro氏他、J. Am. Coll. Cardiol 16、1603(1990)などである。
【0010】
しかしながら、前記のようにガスを充填したプロテインの微小球体をベースにした超音波造影剤は生体内で不安定であり、このような製品を改良する余地がある。Segar氏他は、Advances in Echocardiography(9月号、21〜22、1989)中で、バッチ、混合圧、混合時間および媒体のすべてが、このようなプロテインベースの製品による左心房のコントラストに影響すると結論している。
【0011】
Feinstein氏他は、J. Am. Coll. Cardiol 16、316 (1990)中で、投与グループに関係なくアルブミン微小球体による空洞の不透明化は注射液の88%が右心室内にそして注射液の63%が左心室内に認められたと発表している。Shandas氏他は、Circulation 82、95(1990)中で、ガス充填したアルブミン微小球体の圧力に関連した安定性について問題を提起し、またShapiro氏他は最近J. Am.Coll. Cardiol 16、1603(1990)中で、超音波処理したアルブミンの投与後の心筋の超音波コントラスト強化の不足を発表している。
【0012】
Feinstein氏はEP第0224 934号の第4および8頁並びに請求項9、US 4,718,433号の第3と5欄およびUS第4,774,958号の第3と5欄中で、アルブミンのガス気泡を安定化するための化学的変性について以下のように提案している:
「 また、5%のアルブミンから形成した微小気泡は、プロテインおよびその誘導体を化学的に変性または「固定」する各種の化学薬剤で処理することにより、商業的に、また臨床的に利用しうる造影剤を作るために安定化することができる。プロテイン(または誘導体)の化学的変性は、グルタルアルデヒドのようなプロテイン−反応性のアルデヒドにプロテインを結合することによっても達成することができる。発明に係わる微小気泡造影剤を安定化する後者の手順として、微小気泡をpH4.5でプロテイン1g当り50%の水性グルタルアルデヒド0.25gと6時間反応させることができる。この処理済み造影剤をおだやかにかつ充分に水洗して未反応のグルタルアルデヒドをできる限り多く除く。」
【0013】
プロテインのための種々の変性用薬剤または架橋剤は文献中に記述されている(例えば、Methods Enzymol 172、584(1989)およびChemical Reagents for Protein Modification, Vol. II、第123頁、CRCプレス社刊、などを参照)。
【0014】
いかなる造影剤も使用後に被験者から速やかに除去されるべきで、例えば好ましくは48時間未満の半減期をもつことが重要である。グルタルアルデヒドまたはホルムアルデヒド
による架橋は、超音波による画像化中の安定性と迅速な除去との適切なバランスを得るのに、必ずしも効果的ではない。ヒト血清アルブミンであるプロテイン自体は血管系酵素により速やかに分解されず、またグルタルアルデヒドのような試薬はプロテインと生物分解性の結合を容易には形成しない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は微小気泡のプロテインシェルを架橋して生物分解性の結合基を導入し、かくして超音波造影剤に超音波による画像化中の適切な安定性と続いて速やかな除去を可能とするに充分な生物分解性を付与するという概念に基づいている。
【0016】
そこで、本発明によれば、生物分解性の架橋基によって架橋されたプロテインのシェル中に封入されたガスまたはガス前駆体からなる超音波造影剤が提供される。
【0017】
さらに本発明によれば、プロテインシェル中にカプセル封入された6フッ化イオウまたはフッ素化された低分子量炭化水素からなる微小球体が提供される。
【0018】
使用することのできる生物分解性の結合にはアミド、イミド、イミン、エステル、無水物、アセタール、カルバメート、カルボネート、カルボネートエステルおよびジサルファイド基が含まれる。好ましくは少なくともこのような基が1個架橋基中に存在すべきである。一般的に、任意のエステル、特に-CO-O-または-O-CO-O-の基を有するエステルは生物分解性である。生物分解性エステル基の特に有用な1つは次の構造をも有する。
-(Y)n-CO-O-C(R1R2)-O-CO-(Z)n-
(式中、YとZとは同じでもまたは異なってもよく、-O-、-S-または-NR3-であり;記号nは同じでもまたは異なってもよく、0または1であり;R1とR2とは同じでもまたは異なってもよく、水素原子または炭素結合した一価の基であるかまたは一緒になって炭素結合した二価の有機基を示し;そしてR3は水素原子または有機基であり、好ましくはYとZは-O-である)。このような基は一般に分解して化合物R1R2COを除去しそして残基上のカルボキシル基を形成するか、またはカルボネートエステルの場合は、二酸化炭素を除去して残基上のヒドロキシ基を形成することができる。
【0019】
R1、R2およびR3はそれぞれ例えばC1〜20のヒドロカルビルまたはヘテロ環基であり、たとえばアルキルまたはアルケニル基(好ましくは10個までの炭素原子を有する)、シクロアルキル基(好ましくは10個までの炭素原子を有する)、アラルキル基(好ましくは20個までの炭素原子を有する)、アシル基(好ましくは20個までの炭素原子を有する)または20個までの炭素原子とO、SおよびNから選択された1個またはそれ以上のヘテロ原子とをもつヘテロ環基である。かかるヒドロカルビルまたはヘテロ環基は1個またはそれ以上の官能基、例えばハロゲン原子または式-NR4R5、-CONR4R5、-OR6、-SR6および-COOR7(ここでR4とR5とは同じでもまたは異なってもよく、水素原子、R1とR2について定義したようなアシル基またはヒドロカルビル基であり;R6は水素原子またはR1またはR2について定義したようなアシル基または基であり、そしてR7は水素原子またはR1またはR2について定義した基である)。R1とR2が二価の基を表す場合、これは例えば前に定義したような1個またはそれ以上の官能基を有することのできるアルキレンもしくはアルケニレン基(好ましくは10個までの炭素原子を有する)であることができる。一般にR1とR2とは好ましく水素であるかもしくはC1〜4のアルキル基のような小さい基である。
【0020】
プロテイン成分は任意のプロテインまたはポリアミノ酸を含むその誘導体でもよい。アルブミン、ゼラチンおよびγ−グロブリンが代表的な化合物である。プロテイン例えばアルブミンは、ヒトまたは動物の血液のような生物原料から得ることができるか、あるいは組換え技術を用いて下等生物より生成することもできる。発酵によりヒト血清アルブミン
を調製する典型的な方法はWO第9002808号(Delta Biotechnology Ltd.)中で述べられている。
【0021】
本発明の更なる特徴によれば、ガスまたはガス前駆体が生物分解性の架橋基によって架橋されるプロテイン中に封入されている、微小気泡超音波造影剤の調製方法が提供される。
【0022】
プロテインの架橋はカプセル封入の前、その間または後で行うことができる。例えば、まず微小気泡を形成することによりカプセル封入しそして次に架橋を行うのが好ましい。
【0023】
架橋剤は式(I)
A1-X-A2 (I)
(式中Xは1個またはそれ以上の生物分解性結合を有する連結基でありそして基A1とA2は同じものでもまたは異なってもよく、プロテインと反応性の官能基である)の化合物であることができる。
基Xはプロテインと反応性の別の基を有し、架橋の度合を大きくすることもできる。
好ましくは、基Xは30個以上の原子鎖長をもつべきではない。
【0024】
従って、基Xは下記の形態をとる。
-R8-E-R9-
(式中R8とR9は同じでもまたは異なってもよく、二価の有機基、例えばC1〜12のアルキレンまたはアルキリデン基であり、これはプロテインと反応性の基および/または不活性な基をさらにもつことができ、そして基Eはエステル基、例えば前に定義した式-O-CO-、-O-CO-O-または-(Y)n-CO-O-C(R1R2)-O-CO-(Z)n-などである)。
【0025】
下記の式
A1-R8-(Y)n-CO-O-C(R1R2)-O-CO-(Z)n-R9-A2
(式中A1、A2、R1、R2、R8、R9、n、YおよびZは前記の意味をもつ)の架橋剤は式A1-R8-(Y)n-CO-OHの酸またはその一形態(ここでAおよびその他のいずれの反応基も保護されている)(またはその官能性誘導体)を式L1-C(R1R2)-L2(ここでL1はハロゲン原子またはメシルオキシあるいはトシルオキシのような離脱基でありそしてL2はL1で定義したような基(対称ジエステルを生成する)または式-O-CO-(Z)n-R9-A2の基またはその保護された一形態である)の化合物と反応させ、必要であれば後で脱保護することにより製造することができる。この酸の官能性誘導体は塩、例えばカリウム塩である。反応は普通溶液中で、例えばジメチルホルムアミドのような極性溶剤中で行われる。A1とA2のための保護基は当該技術における慣用のものであってよい。アルデヒドのための好ましい保護基にはアセタール、例えばジオキソランのような環状アセタールが含まれる。
【0026】
化合物L1-C(R1R2)-O-CO-(Z)n-R9-A2(ここでL1はハロゲンである)は、ピリジンのような塩基の存在下に式Hal-CO-(Z)n-R9-A2(ここでHalはハロゲン原子を示す)の化合物との反応によりR1R2-COから製造することができる。
【0027】
アルデヒド基は好ましいが、この他に基A1およびA2は、N−ヒドロキシサクシンイミジル基(特に水溶性が増強されたスルホン化N−ヒドロキシサクシンイミジル誘導体)のような活性化されたカルボキシル基、イミドエステル、ハロ−ニトロアリール基、アドジフェニルのようなニトレン前駆体基、カルベン前駆体基、ケトン基、イソチオシアネート基、などであってもよい。
【0028】
任意の生物学的に適合性のガス、例えば空気、窒素、酸素、水素、亜酸化窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン、6フッ化イオウおよび低分子量の場合によりフッ素化された
炭化水素、例えばメタン、アセチレンまたは4フッ化炭素などを本発明の造影剤中で使用することができる。ガスは微小気泡内で遊離であることもできるし、また含有する物質内に捕捉されるかあるいは混ぜ合わされていることもできる。ここで用いた「ガス」という用語は37℃で気体形態である全ての物質も含むものである。
【0029】
ガス前駆体には炭酸塩および重炭酸塩、例えば重炭酸ナトリウムまたはアンモニウムおよびアミノマロネートエステル類が含まれる。
【0030】
超音波心臓検査での応用としては、肺器管を自由に通過可能にしそして約0.1〜15MHzの好ましい画像化周波数との共鳴を行うために、0.1〜10μm、例えば1〜7μmの平均サイズを有する、微小気泡を用いるのが好都合である。しかしながら、実質的により大きな、例えば500μmまでの平均サイズをもつ気泡も、他の応用例えば胃腸の画像化または子宮あるいはファロピーオ管(卵管)の検査などに有用である。
【0031】
前記のように、微小気泡はカプセル封入ガスとともに粒子状の物質をとり入れることにより安定化することができる。かかる粒子には例えばシリカや酸化鉄が含まれる。このような安定化粒子として好ましい粒子サイズは、微小気泡のサイズによって、1〜500nmの範囲内のものである。粒子はミセルを分散させるために使用した流体媒体により部分的に湿っているだけでなければならない。つまり粒子の物質と流体間の接触角が約90°でなければならない。
【0032】
この安定化粒子はプロテインと相互作用して共有結合またはその他の結合を形成する官能基をもつことができる。コロイド状のシリカ粒子は5〜50nmの範囲の粒子サイズをもち、表面上にシラノール基を有している。これらの基は水素結合または共有結合形成によりプロテインと相互作用しうる。
【0033】
プロテインは液体媒体とガスまたはガス前駆体系との間の界面に単一層を形成することにより、もしくはガスまたはガス前駆体を含有する1つまたはそれ以上の二重層からなるベシクル形成することにより、ガスまたはガス前駆体を安定化する。
【0034】
単一層またはベシクル形成による系の安定化は、文献中でも十分に述べられているように、適切な媒体中でプロテイン材料混合物の一様な振盪または超音波処理により活性化することができるか、またはベシクルは通常のリポゾーム/ベシクル形成原理により形成させることができる。
【0035】
安定化した微小気泡は乾燥または冷凍乾燥させることができるか、あるいは非−水性相を蒸発させることができる。得られる乾燥系は生理食塩水またはリン酸塩バッファーのような生理的に許容しうる溶剤中に、場合により懸濁剤または乳化剤を用いて再懸濁することができる。
【0036】
ガス捕捉系はガス前駆体を用いて得ることもできるしまたガス自体を捕捉することもできる。ガスは空気の存在下に単に混合物を激しく振盪することにより両親媒性混合物中に捕捉される。すなわちUS-A第4684479号中で述べられているように液中−ガスのエマルジョンを生成する。別の十分に確定された、すなわちUS-A第4774958号中で述べられているガス含有気泡を生成する方法は、空気の存在下に混合物を超音波処理することによるものである。良く知られた別の方法は注射器からガスをプロテインと液体の混合物中に送りこむことである。US-A第3900420号中で述べられているように、微小ガスエマルジョンはガスを流れの速い液体中に急速に導入する装置を使用して生成することができる。プロテイン材料を含む液体中に低圧の領域が形成される。つぎにガスをこの低圧領域に導入し、液体を系に供給することにより液中−ガス系を得る。
【0037】
電気分解の原理を用いることにより、プロテイン材料を含む容器内で直接捕捉されるガスを発生させることが可能である。電気分解に必要な電解質はプロテイン材料をさらに安定化する助けをする。電解質を含む水溶液は陰極で水素ガスおよび陽極で酸素ガスを発生する。両電極は塩橋により分離される。ヒドラジンを加えることにより、窒素ガスを陽極で発生させることができる。コルベ反応を使用し、電気分解を用いてカルボン酸からCO2を発生させることもできる。
【0038】
前述のように、微小気泡は1つまたはそれ以上の二重層からなるベシクルまたはリポゾームを形成することにより得られる。これらのベシクルはガスがベシクル中に捕捉されるような方式において高圧条件で形成することができる。
【0039】
本発明による一つの方法では、カプセル封入は水性媒体中でプロテインを撹拌または超音波処理をしてプロテインの泡を生成させ、この泡を乾燥した後プロテインの泡を湿らせることのできる極性有機溶剤(例えば、ジメチルスルホキサイドのようなスルホキサイド)中の架橋剤の溶液中に懸濁することにより行われる。
以下の各実施例は説明のためにのみ示されるものである。
【実施例】
【0040】
調製例 1
メチレンビス(α−ホルミルアセテート)
出発材料のジオキソラン保護アルデヒドメチルα−ホルミルアセテートの調製は、T. Hosokawa等によりJ.Org. Chem. Soc. 52, (1987)1758〜1764で述べられている。この保護アルデヒド(6.0g、3.75ミリモル)を、2Nの水性水酸化カリウムとテトラヒドロフランの20:80(v/v)混合物と、還流温度で8時間処理した。pHを希釈したHClを用いて8に調整し、混合物を蒸発乾固した。この固体を新たに蒸留し乾燥したジメチルホルムアミド100mlと混合し、60℃で30分後に不溶解物を濾別する。ジヨードメタン(150μl、1.87ミリモル)を、WO 89/00988(NYCOMED AS)の第13頁中で述べられているように、60℃でこの溶液に対して5分間に滴加した。4日間撹拌後に沈殿を濾過により除き、溶剤を減圧で除去した。ジオキソラン保護はP. A. Grieco等によりJ. Am. Chem. Soc. 99, (1977)5773〜5780で述べられているようにして除去し、残渣はテトラヒドロフラン(60ml)中に溶解し、5%の水性HCl(20ml)を添加しそして混合物を周囲温度で20時間撹拌した。反応混合物を減圧下に蒸発乾固し表記化合物を得た。
【0041】
調製例 2
メチレンジメタクリレート
水酸化カリウム溶液(1.00M、40.00ml)を0℃でメタクリル酸(3.44g、40.00ミリモル)に添加し、溶液を16時間凍結乾燥した。乾燥ジメチルホルムアミド(230ml)を加え、懸濁液は乾燥窒素雰囲気下60℃に加熱する。ジヨードメタン(1.61ml、20.00ミリモル)を10分間に2回に分けて添加し、反応混合物を60℃で4日間放置した。溶剤を減圧(0.05mmHg)下に除去し、飽和水性炭酸水素ナトリウム液(50ml)と水(50ml)を添加した後ジエチルエーテル(140ml)を添加した。水性層をジエチルエーテルで抽出(6×60ml)し、合体したエーテル抽出液を水で洗い(4×50ml)、乾燥し(MgSO4)、そして蒸発させて表記化合物2.63g(72%)を得た。1H NMR(60 MHz, CDCl3):δ1.97(2×CH3, m), 5.63(2×H-C=, m), 5.88(CH2, s), 6.18(2×H-C=, m)。IR(フィルム, cm-1):2987(w), 2962(w), 2930(w), 1732(str), 1638(w), 1454(w), 1315(w), 1295(w), 1158(w), 1100(str), 1012(m), 989(m)。この生成物は本発明に従い、例えばアクリルアミドポリマーの架橋に用いることができる。
【0042】
調製例 3
メチレンジアクリレート
水酸化カリウム溶液(1.00M、40.00ml)を0℃でアクリル酸(2.88g、40.00ミリモル)に添加し、この溶液を16時間凍結乾燥した。乾燥ジメチルホルムアミド(200ml)を加え、懸濁液は乾燥窒素雰囲気下60℃に加熱した。ジヨードメタン(1.61ml、20.00ミリモル)を10分の間に2回に分けて添加し、反応混合物を60℃で4日間放置した。溶剤を減圧(0.05mmHg)下に除去し、飽和水性炭酸水素ナトリウム液(50ml)と水(50ml)を添加した後ジエチルエーテル(140ml)を添加した。水性層をジエチルエーテルで抽出し(6×60ml)、合体したエーテル抽出液を水で洗い(4×50ml)、乾燥し(MgSO4)、そして蒸発させて表記化合物の1.06g(34%)を得た。1H NMR(60 MHz,CDCl3):δ5.81〜6.61(2×CH2=CH-, m), 5.84(CH2, s)。この生成物は本発明に従い、例えばアクリル酸およびメチルアクリレートポリマーの架橋に用いることができる。
【0043】
調製例 4
クロロメチル(2−メタクリロイルオキシ)エチルカーボネート
ピリジン(0.89ml、11.00ミリモル)を、ジクロロメタン(12ml)中のクロロメチルクロロホルメート(0.89ml、11.00ミリモル)と2−ヒドロキシエチルメタクリレート(1.22ml、10.00ミリモル)との溶液に、0℃で乾燥窒素雰囲気下に滴加した。20℃で21時間後に、反応混合物を塩酸(1.00M、10ml)、飽和水性炭酸水素ナトリウム液(10ml)および水(10ml)で洗った。有機相を乾燥し(MgSO4)そして減圧(10mmHg)下に溶剤を蒸発させて表記化合物の1.97g(88%)を得た。1H NMR(60 MHz, CDCl3):δ1.88(CH3, d, J=2 Hz), 4.35(O-CH2-CH2-O, m), 5.47(H-C=, m), 5.63(CH3-Cl, s), 6.00(H-C=, m)。
【0044】
調製例 5
(2−メタクリロイルオキシ)エチルメタクリロイルオキシメチルカーボネート
水酸化カリウム溶液(1.00M、5.00ml)をメタクリル酸(0.43g、5.00ミリモル)に0℃で添加し、この液を16時間凍結乾燥した。乾燥ジメチルホルムアミド(50ml)を加え、得られた懸濁液にクロロメチル(2−メタクリロイルオキシ)エチルカーボネート(1.11g、5.00ミリモル)を添加した。触媒として18−クラウン−6(0.066g、0.25ミリモル)を加え、反応は乾燥窒素雰囲気下に放置して進めた。20℃で24時間と4℃で6日間の後、減圧(0.05mmHg)下に溶剤を除去し、そしてジエチルエーテル(30ml)と水(20ml)とを添加した。水性層をジエチルエーテルで抽出し(3×20ml)、そして合体したエーテル抽出液を水で洗い(20ml)、乾燥し(MgSO4)そして蒸発させて表記化合物の1.26g(93%)を得た。1H NMR(60 MHz, CDCl3):δ1.97(2×CH3, m), 4.38(O-CH2-CH2-O, m), 5.53(2×H-C=, m), 5.77(CH2, s), 6.07(2×H-C=, m)。
【0045】
調製例 6
エチレンビス(クロロメチルカーボネート)
ピリジン(0.89ml、11.00ミリモル)を、ジクロロメタン(10ml)中のクロロメチルクロロホルメート(1.32ml、14.83ミリモル)とエチレングリコール(0.28ml、5.00ミリモル)との溶液に、7℃で乾燥N2雰囲気下によく撹拌しながら滴加した。7℃で15分と20℃で6時間の後、反応混合物をジクロロメタン(10ml)の助けによって分液ロートに移した。反応混合物は塩酸(1.00M,10ml)、飽和水性炭酸水素ナトリウム液(10ml)および水(10ml)で洗った。有機層を乾燥し(MgSO4)そして減圧下に溶剤を蒸発して表記生成物の1.12g(90%)を得た。1H NMR(300MHz, CDCl3):δ4.48(s, O-CH2CH2-O), 5.75 (s, 2×Cl-CH2-O)。13C NMR(75 MHz, CDCl3):δ65.8(O-CH2CH2-O), 72.2(2×Cl-CH2-O), 153.0(2×C=O)。
【0046】
調製例 7
ビス(2−クロロメトキシカルボニルオキシエチル)エーテル
ピリジン(0.89ml、 11.00ミリモル)を、ジクロロメタン(10ml)中のクロロメチ
ルクロロホルメート(1.32ml、14.83ミリモル)とジエチレングリコール(0.47ml、5.00ミリモル)との溶液に7℃で乾燥N2雰囲気下によく撹拌しながら滴加した。7℃で10分と20℃で6時間の後、反応混合物をジクロロメタン(10ml)の助けによって分液ロートに移した。反応混合物は塩酸(1.00M,10ml)、飽和水性炭酸水素ナトリウム液(10ml)および水(10ml)で洗った。有機層を乾燥(MgSO4)し、そして減圧(10 mmHg)下に溶剤を蒸発して表記化合物の1.26g(86%)を得た。1H-NMR(300 MHz, CDCl3):δ3.72(m, 2×CH2-O),4.34(m, 2×CH2-O-C=O), 5.71(s, 2×Cl-CH2-O)。13C NMR(75 MHz, CDCl3):δ67.6(2×CH2-O), 68.5(2×CH2-O-C=O), 72.1(2×Cl-CH2-O)、 153.2(2×C=O)。
【0047】
調製例 8
1−クロロエチル2−メタクリロイルオキシエチルカーボネート
ピリジン(0.89ml、11.00ミリモル)を、ジクロロメタン(12ml)中の1−クロロエチルクロロホルメート(1.20ml、11.00ミリモル)と2−ヒドロキシエチルメタクリレート(1.22ml、10.00ミリモル)との溶液に、3℃で乾燥N2雰囲気下に滴加した。3℃で15分と20℃で17時間の後、反応混合物をジクロロメタン(10ml)の助けによって分液ロートに移した。反応混合物は塩酸(1.00M、10ml)、飽和水性炭酸水素ナトリウム液(10ml)および水(2×10ml)で洗った。有機相を乾燥(MgSO4)し、そして減圧下に溶剤を蒸発して表記生成物の1.76g(74%)を得た。1H NMR(60 MHz, CDCl3):δ1.85(3H, d, J=6
Hz, CH3-CH), 1.96(3H, d, J=2 Hz, CH3-C=),5.55(1H, m, CH=),6.10(1H, m, CH=), 6.38(1H, k, J=6 Hz, CH-CH3)。
【0048】
調製例 9
クロロメチル4−アクリロイルオキシブチルカーボネート
ピリジン(0.89ml、11.00ミリモル)を、ジクロロメタン(12ml)中のクロロメチルクロロホルメート(0.98ml、11.00ミリモル)と4−ヒドロキシブチルアクリレート(1.38ml、10.00ミリモル)との溶液に、3℃で乾燥N2雰囲気下に滴加した。3℃で15分と20℃で17時間の後、反応混合物をジクロロメタン(10ml)の助けによって分液ロートに移した。反応混合物は塩酸(1.00M、10ml)、飽和水性炭酸水素ナトリウム液(10ml)および水(2×10ml)で洗った。有機層を乾燥(MgSO4)し、減圧下に溶剤を蒸発して表記生成物の1.76g(74%)を得た。1H NMR(60 MHz, CDCl3):δ1.82(4H, m, CH2-CH2), 4.27(4H, m, 2×CH2-O), 5.77(2H, s, Cl-CH2-O), 5.8〜6.7(3H, m, CH=CH2)。
【0049】
調製例 10
1−クロロエチル4−アクリロイルオキシブチルカーボネート
ピリジン(0.89ml、11.00ミリモル)を、ジクロロメタン(12ml)中の1−クロロエチルクロロホルメート(1.20ml、11.00ミリモル)と4−ヒドロキシブチルアクリレート(1.38ml、10.00ミリモル)との溶液に、3℃で乾燥N2雰囲気下に滴加した。3℃で15分と20℃で17時間後に、反応混合物をジクロロメタン(10ml)の助けによって分液ロートに移した。反応混合物は塩酸(1.00M、10ml)、飽和水性炭酸水素ナトリウム液(10ml)および水(2×10ml)で洗った。有機層を乾燥(MgSO4)し、減圧下に溶剤を蒸発して表記生成物の2.26g(90%)を得た。1H NMR(60 MHz, CDCl3):δ1.80(4H, m, CH2-CH2), 1.86(3H, d, J=5 Hz, CH3), 4.24(4H, m, 2×CH2-O), 5.7〜6.6(4H, m, CH=CH2およびCH)。
【0050】
調製例 11
1−メタクリロイルオキシエチル2−メタクリロイルオキシエチルカーボネート
調製例8で述べたようにして作った1−クロロエチル2−メタクリロイルオキシエチルカーボネート(1.183g、5.00ミリモル)を、ジメチルホルムアミド(50ml)中の凍結乾燥したメタクリル酸カリウム(0.683g、5.50ミリモル)と18−クラウン−6(0.066g、0.25ミリモル)との懸濁液に乾燥N2雰囲気下に添加した。20℃において5日後に溶剤を減圧下に除去し、残渣はジクロロメタン(60ml)と水(30ml)とを加えて溶解した。相を分離した後、水性層はジクロロメタン(3×30ml)により抽出し、そして合体した有機相を飽和水性炭酸水素ナトリウム液(50ml)で洗った。有機相を乾燥(MgSO4)し、減圧下に溶剤を除いて表記生成物の1.10g(77%)を得た。1H NMR(60 MHz, CDCl3):δ1.63(3H, d, J=5 Hz, CH3-CH), 1.98(6H, s, 2×CH3), 4.42(4H, s, O-CH2-CH2-O),5.62(2H, m, CH=), 6.15(2H, m, CH=), 6.84(1H, k, J=5 Hz, CH-CH3)。
【0051】
調製例 12
アクリロイルオキシメチル4−アクリロイルオキシブチルカーボネート
調製例9で述べたようにして作ったクロロメチル4−アクリロイルオキシブチルカーボネート(1.183g、5.00ミリモル)を、ジメチルホルムアミド(50ml)中の凍結乾燥したアクリル酸カリウム(0.606g、5.50ミリモル)と18−クラウン−6(0.066g、0.25ミリモル)との懸濁液に乾燥N2雰囲気下に添加した。20℃において5日後に溶剤を減圧下に除去し、残渣はジクロロメタン(60ml)と水(30ml)とを加えて溶解した。相を分離した後、水性層はジクロロメタン(3×30ml)により抽出し、そして合体した有機相を飽和水性炭酸水素ナトリウム液(50ml)で洗った。有機相を乾燥(MgSO4)し、減圧下に溶剤を除いて表記生成物の1.24g(91%)を得た。1H NMR(60 MHz,CDCl3):δ1.82(4H, m, CH2-CH2), 4.23(4H, m, 2×CH2-O), 5.88(2H, s, O-CH2-O), 5.7〜6.8(6H, 2×CH=CH2)。
【0052】
調製例 13
1−アクリロイルオキシエチル4−アクリロイルオキシブチルカーボネート
調製例10で述べたようにして作った1−クロロエチル4−アクリロイルオキシブチルカーボネート(1.253g、5.00ミリモル)を、ジメチルホルムアミド(50ml)中の凍結乾燥したアクリル酸カリウム(0.606g、5.50ミリモル)と18−クラウン−6(0.066g、0.25ミリモル)との懸濁液に乾燥N2雰囲気下に添加した。20℃において5日後に溶剤を減圧下に除去し、残渣はジクロロメタン(60ml)と水(30ml)とを加えて溶解した。相を分離した後、水性層をジクロロメタン(3×30ml)により抽出し、合体した有機相を飽和水性炭酸水素ナトリウム液(50ml)で洗った。有機相を乾燥(MgSO4)し、減圧下に溶剤を除いて表記生成物の1.28g(89%)を得た。1H NMR(60 MHz,CDCl3):δ1.58(3H, d, J=5 Hz, CH3-CH), 1.80(4H, m,CH2-CH2), 4.24(4H, m, 2×CH2-O), 5.7〜6.7(6H, m, 2×CH=CH2), 6.87(1H, k, J=5 Hz, CH-CH3)。
【0053】
調製例 14
a) メチレンビス(3,3−ジメトキシプロピオネート)
セシウム3,3−ジメトキシプロピオネート(19.95g、75ミリモル)を乾燥DMF(1000ml)に添加した。この懸濁液にジヨードメタン(10.04g、37.5ミリモル)を加え、反応混合物は乾燥N2雰囲気下に60℃で2日間撹拌した。DMFは減圧下(0.01mmHg)に除去した。この残渣にジエチルエーテル(500ml)を加え、次いでこれを飽和水性炭酸水素ナトリウム液(250ml)で洗った。水性層はジエチルエーテル(5×75ml)で抽出した。合体したエーテルを水(2×100ml)で洗い、乾燥(MgSO4)し、そして蒸発させて生成物の7.1g(72%)を得た。1H NMR(300 MHz, CDCl3):δ2.61(CH2, d), 3.26(CH3, s)。
【0054】
b) メチレンビス(3−メトキシプロペノエート)
(a)で述べたようにして作ったメチレンビス(3,3−ジメトキシプロピオネート)(14.01g、50ミリモル)と触媒量のp−トルエンスルホン酸とをトルエン(250ml)に加えた。反応をN2雰囲気下加温して行い、メタノールを除去した。反応の完了時にトルエンを減圧下に留去した。ジエチルエーテル(250ml)を添加し、混合物を飽和水性炭酸水素ナトリウム液(5×50ml)と水(3×50ml)で洗った。有機層を乾燥(MgSO4)し、蒸発させて生成物の8.52g(79%)を得た。1H NMR(300 MHz, CDCl3):δ3.65(2×CH3, s), 5.2(2×CH, d), 5.8(O-CH2-O), 7.65(2×CH2, d)。
【0055】
調製例 15
a) メチレンビス(10−ウンデセノエート)
10−ウンデシレン酸(12.75g、75ミリモル)を水100mlに溶解した。この混合物に炭酸セシウム(13.04g、40ミリモル)を添加した。減圧下に水を除き、そして塩は真空中で2時間乾燥した。このセシウム塩を150mlのDMFと混合し、この液にジヨードメタンを添加した。反応はN2雰囲気下に60℃で3日間撹拌して行った。次いで減圧下にDMFを除去した。残渣は溶離液としてヘキサン/エチルアセテート(8:2)によりシリカゲルを通じて精製した。溶剤を蒸発させて生成物7.18g(54%)を得た。1H NMR(300 MHz, CDCl3):δ1.2〜1.4(10×CH2, m), 1.6(2×CH2, m), 2.0(2×CH2, m), 2.19(2×CH2, t),4.9(2×H2 C=, m), 5.88(O-CH2-O, s), 5.9(2×CH2),79.04(O-CH2-O), 114.18(=CH2), 139.11(=CH), 172.48(C=O)。
【0056】
b) メチレンビス(10−エポキシウンデカノエート)
(a)で述べたようにして作ったメチレンビス(10−ウンデカノエート)(8.8g、25ミリモル)を、メチレンクロライドにN2雰囲気下で添加し0℃に冷却した。55%のメタクロロ過安息香酸(15.75g、50ミリモル)をメチレンクロライド(150ml)に加え、有機層を分離して乾燥(MgSO4)させた。このメタクロロ過安息香酸を次にジエステルに滴加した。添加完了後に温度を25℃に上昇する。5時間後に反応は完了した。混合物は飽和水性亜硫酸ナトリウム液(75ml)と飽和水性炭酸水素ナトリウム液(2×75ml)とで洗った。有機層は中性の酸化アルミニウム上で精製した。溶剤を減圧下に除いて生成物の8.45g(82%)を得た。1H NMR(300 MHz, CDCl3):δ1.2〜1.7(14×CH2, m), 2.35(2×CH2CO, t), 2.45(2×CH, q), 2.75(2×CH,q), 2.90(2×CH, m), 5.75(O-CH2-O)。13C NMR(300 MHz,CDCl3):δ24.58(CH2), 25.99(CH2), 28.94(CH2), 29.09(CH2), 29.32(2×CH2), 32.45(CH2), 33.92(CH2),47.06(CH2-O), 52.36(CH-O), 79.06(O-CH2-O), 172.2(C=O)。
【0057】
調製例 16
メチレンビス(4−エポキシペンタノエート)
メタクロロ過安息香酸(15.68g、55%、50ミリモル)をメチレンクロライド(200ml)中に溶解した。水を分離し有機層を乾燥(MgSO4)させた。得られたメタクロロ過安息香酸溶液を、メチレンクロライド(50ml)中に溶解したメチレンビス(4−ペンタノエート)(4.10g、19ミリモル)に滴加した。混合物は窒素下に周囲温度で12時間撹拌し、その後反応混合物を飽和水性炭酸水素ナトリウム液(50ml)と水(50ml)で洗い、乾燥(MgSO4)し、そして蒸発させて結晶性生成物として表記化合物の3.61g(78%)を得た。1H NMR(300 MHz, CDCl3):δ1.70〜1.85(2×CH, m), 1.95〜2.10(2×CH, m), 2.50〜2.55(2×CH, 2×CH2, m), 2.75(2×CH, t), 3.0(2×CH, m),5.8(O-CH2-O, s)。 13C NMR(75 MHz, CDCl3):δ27(2×CH2), 30(2×CH2), 47(2×CH2), 51(2×CH), 79.8(O-CH2-O), 171.8(2×C=O)。
【0058】
調製例 17
メチレンビス(2−ブテノエート)
ビニル酢酸(4.3g、50ミリモル)を水性の炭酸セシウム液(50ml)に添加した。混合物を5分間撹拌し、次いで蒸発させ残渣を真空下で2時間乾燥した。得られたこのセシウム塩とジヨードメタンとをジメチルホルムアミド(200ml)に加え、混合物を窒素下に50℃で24時間撹拌し、その後減圧下にジメチルホルムアミドを除去した。残渣はジエチルエーテル(100ml)中に溶解し、そして飽和水性炭酸水素ナトリウム液(25ml)と水(25ml)とで洗った。有機層を乾燥(MgSO4)し蒸発させて生成物1.32g(29%)を得た。1H NMR(300 MHz, CDCl3):δ1.9(2×CH2, m), 5.8〜5.9(2×CH, m), 5.9(OCH2O, s), 7.0〜7.1(2×CH, m)。
【0059】
調製例 18
メチレンビス(クロロアセテート)
メチレンクロライド(15ml)に無水クロロ酢酸(12.75g、75ミリモル)、パラホルムアルデヒド(2.25g、75ミリモル)および濃硫酸(15滴)を添加した。この混合物を窒素下に50℃で24時間撹拌し、その後反応混合物は飽和水性炭酸カリウム液で炭酸ガスの発生が終わるまで抽出した。有機層を乾燥(MgSO4)し、蒸発乾固し残渣を蒸留(80℃、0.15mmHg)して生成物の10.2g(57%)を得た。1H NMR(200 MHz, CDCl3):δ4.1(2×CH2Cl, s), 5.9(CH2, s)。 13C NMR(200 MHz, CDCl3):δ41.1(CH2Cl),81.4(O-CH2-O), 166.4(CO)。
【0060】
調製例 19
メチレンビス(4−オキソペンタノエート)
4−オキソペンタン酸(11.6g、100ミリモル)をアセトニトリル(70ml)中に溶解し、そしてアセトニトリル(30ml)で希釈した1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデ−7−セン(15.25g、100ミリモル)を添加した。ジヨードメタン(13.4g、50ミリモル)を一度に加え、反応混合物を窒素雰囲気下に還流した。2時間後に、ガスクロマトグラフはジヨードメタンがすべて消費されたことを示した。溶剤を真空下に除去し、残った褐色の油状物をエチルアセテート(200ml)と水(75ml)により分液ロートに移した。有機層を1Mの重炭酸ナトリウム(25ml)と水(3×25ml)で洗い、MgSO4上で乾燥し、そして溶剤を真空下で除いて表記化合物(10g)を得た。1H NMR:δ2.19(2×CH3, s), 2.760〜2.804(2×CH2, t), 2.600〜2.645(2×CH2, t), 5.735(CH2架橋, s)。
【0061】
調製例 20
メチレンビス(スクシンイミジルアゼレート)
1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(1.49g、7.71ミリモル)を、乾燥ジメチルホルムアミド中のメチレンビス(水素アゼレート)(1.00g、2.57ミリモル)とN−ヒドロキシサクシンイミド(0.89g、7.71ミリモル)の撹拌されている溶液に、周囲温度で少しずつ添加した。20時間の撹拌後に、反応混合物で氷水中に注入し、生成物を油状に沈殿させた。この無色の油状物をジエチルエーテル(50ml)中に溶解し、水(3×10ml)で洗いそしてMgSO4上で乾燥した。溶剤を減圧下に除去し、この油状生成物にヘキサン(5ml)を加えた。4℃に保存して7日後に、この油状物は白いロウ状固体に結晶化した。収量:1.50g(69%)。融点:45〜47℃。13C NMR(75 MHz, CDCl3)δ:24.42, 24.46, 25.59, 28.48, 28.63, 30.85, 33.82, 79.61,168.6, 169.30, 172.34。
【0062】
調製例 21
メチレンビス(スルホスクシンイミジルアゼレート)ナトリウム塩
ジメチルホルムアミド(10ml)中にメチレンビス(水素アゼレート)(0.38g、1ミリモル)、N−ヒドロキシスクシンイミドナトリウム塩(0.48g、2.2ミリモル)およびジシクロヘキシルカルボジイミド(0.45g、2.2ミリモル)を溶解した。この懸濁液を窒素雰囲気下に周囲温度で一晩撹拌した。反応混合物を濾過し、そして溶離液として水/アセトニトリル(1:1)による逆相クロマトグラフ(RP-8)で精製して表記化合物を得た。
【0063】
調製例 22
a) メチレンビス(10,11−ジヒドロキシウンデカノエート)
テトラヒドロフランと水の混合物(3:1v/v)の400ml中に、N−メチルモルホリン−N−オキシド(13.5g、11ミリモル)と調製例15(b)からのメチレンビス(10−ウンデカノエート)(19g、5ミリモル)とを溶解した。触媒量の四酸化オスミウムを加え、そして溶液を周囲温度で20時間撹拌した。TLCにより出発材料がすべて消費されていることが示された。次いでこの反応混合物に過剰量の亜硫酸水素ナトリウムと食塩とを添加した。生
成物はエチルアセテート(400ml)により反応混合物から抽出し、水性層はエチルアセテート(3×50ml)で洗った。合体した有機層を乾燥し、蒸発し、そして生成物はテトラヒドロフランから再結晶し、白色固体状の生成物14.5g(68%)を得た。13C NMR(45 MHz)CD3OD:δ24.6〜34.0(16×CH2), 66.6(2×CH2OH), 72.3(2×CHOH), 79.2(O-CH2-O), 174.0(2×C=O)。
【0064】
b) メチレンビス(10−オキソデカノエート)
メチレンビス(10,11−ジヒドロキシウンデカノエート)(2.24g、5ミリモル)を150mlのテトラヒドロフラン中に溶解した。メタ過ヨード酸ナトリウム(2.06g、10ミリモル)を150mlの水に溶解し、そしてテトラヒドロフラン溶液に滴加した。TLCは60分後にジオールがすべて消費されたことを示し、そこで2つの相が分離するまでこの反応混合物に食塩を添加した。水性相はジエチルエーテル(3×50ml)で抽出した。合体した有機相は硫酸マグネシウムで乾燥し、そして蒸発させて油状の表記生成物の1.43g(74%)を得た。13C NMR(45 MHz)CDCl3:δ21.9〜43.9(16×CH2), 79.1(O-CH2-O), 173.0(2×C=O),202.6(2×CHO)。
【0065】
実施例 1
1. ガス充填されたアルブミンの微小球体をEP-A第0359 246号により調製し、バイアルローラー上でおだやかに回転して一様に再懸濁した。
2. 25mlの懸濁液を25mlの分液ロート中に入れ30分放置した。下部の20mlを廃棄する。
3. 残る5mlにリン酸塩バッファー液(20mMのNaPO4、pH7.0)20mlを加え、得られた懸濁液を隔膜キャップを有するバイアルに入れる。
4. バイアルをひっくり返し170×gで5分間遠心分離する。
5. 微小球体層の下の液を注射筒を用いて抜き取り、そして微小球体を10分間おだやかに回転することにより25mlのリン酸塩バッファー中に再懸濁する。
6. 4と5を2回繰り返す。
7. 得られる懸濁液を4のように遠心分離し、そして微小球体が1ml当り約5×108粒子の最終濃度となるようリン酸塩バッファー中に再懸濁させる。
8. 調製例1中で述べたようにして作った、架橋化剤のメチレンビス(α−ホルミルアセテート)をこの懸濁液に添加し、そしておだやかな回転下に架橋化反応を所要時間(普通30〜60分)進行させる。
9. 1.5Mのトリス−HClバッファー(pH8.8)を0.25Mの最終濃度となるまで加え、懸濁液は10分間おだやかに回転させる。
10.バイアルを4のように遠心分離し、そして微小球体層下側の液を5のようにして取り除く。
11.微小球体をリン酸塩バッファー中に再懸濁し(9での最終量と同量)、そして懸濁液を10分間回転させる。
12.10と11を2回繰り返す。
13.得られる懸濁液を4のように遠心分離し、そして微小球体が1ml当り約5×108粒子の最終濃度となるまでリン酸塩バッファー中に再懸濁する。
14.この架橋化したガス/アルブミン微小球体の最終懸濁液は4℃で保存する。
【0066】
実施例 2〜22
実施例1の方法を、調製例2〜22で述べたようにして作った架橋化剤を用いて繰り返したが、工程3〜7によるガス充填アルブミン微小球体の処理の際に、ジメチルスルホキサイドをリン酸塩バッファーの代わりに使用し、また架橋化剤はジメチルスルホキサイド溶液として工程8で添加した。
生成物の粒子数とそのサイズ分布とはクールターカウンター(Coulter counter)解析器
により測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロテインシェル中にカプセル封入された6フッ化イオウまたはフッ素化された低分子量炭化水素からなる微小球体。
【請求項2】
プロテインがアルブミン、ゼラチンまたはγ−グロブリンである、請求項1に記載の微小球体。
【請求項3】
0.1〜10μmの平均サイズを有する、請求項1または2に記載の微小球体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の微小球体の水性分散液。
【請求項5】
ガスを含有する微小球体を形成することができるプロテインからなる微小球体を生成させることからなる造影剤の製造方法において、該微小球体が6フッ化イオウまたはフッ素化された低分子量炭化水素を含有する上記方法。
【請求項6】
6フッ化イオウまたはフッ素化された低分子量炭化水素の存在下でプロテイン含有混合物を撹拌または超音波処理することにより微小球体を生成させて、その流体分散液を得ることからなる、請求項5に記載の方法。

【公開番号】特開2006−45238(P2006−45238A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−250437(P2005−250437)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【分割の表示】特願平4−506536の分割
【原出願日】平成4年3月28日(1992.3.28)
【出願人】(396019387)アメルシャム ヘルス アクスイェ セルスカプ (82)
【Fターム(参考)】