造粒方法
【課題】2種類以上の原料粉末を撹拌造粒する方法において、造粒物の全て粒子が同じ原料比率となったかどうかを迅速且つ確実に判断できるようにする。
【解決手段】造粒槽内に所定比率で投入された2種類以上の原料粉末を撹拌造粒する第1工程と、第1工程で撹拌造粒された造粒物の一部を採取し、採取した造粒物の粒度分布を測定する第2工程と、前記採取した造粒物から、前記粒度分布におけるメジアン径よりも小さい、所定範囲の粒径を有する粒子群を分別する第3工程と、前記分別した粒子群の原料比率を測定する第4工程とを有し、第4工程で測定された原料比率が、造粒槽内に投入された原料比率と略同一になるまで、第1工程〜第4工程を繰り返すことを特徴とする。
【解決手段】造粒槽内に所定比率で投入された2種類以上の原料粉末を撹拌造粒する第1工程と、第1工程で撹拌造粒された造粒物の一部を採取し、採取した造粒物の粒度分布を測定する第2工程と、前記採取した造粒物から、前記粒度分布におけるメジアン径よりも小さい、所定範囲の粒径を有する粒子群を分別する第3工程と、前記分別した粒子群の原料比率を測定する第4工程とを有し、第4工程で測定された原料比率が、造粒槽内に投入された原料比率と略同一になるまで、第1工程〜第4工程を繰り返すことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は造粒方法に関し、より詳細には、2種類以上の原料粉末を撹拌造粒する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2種類以上の原料粉末を撹拌造粒する場合、得られた造粒物の全て粒子が等しく、配合された原料比率を有していることが、品質保証等の観点から望ましい。
【0003】
造粒物の全て粒子を同じ原料比率とするには、例えば、造粒中の造粒物の一部を採取し、採取した造粒物を目開きの異なる複数の篩で分級した後、分級した粒径範囲の異なる粒子群のそれぞれについて原料比率を測定する。そして、すべての粒子群の原料比率が等しくなるまで造粒と原料比率測定とを繰り返す方法が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-25230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記方法では、分級した粒径範囲の異なる粒子群のそれぞれについて原料比率を測定するので、作業が煩雑となり測定に長時間を要する。
【0006】
そこで本発明の目的は、2種類以上の原料粉末を撹拌造粒する方法において、造粒物の全て粒子が同じ原料比率となったかどうかを迅速且つ確実に判断できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成する本発明に係る造粒方法は、造粒槽内に所定比率で投入された2種類以上の原料粉末を撹拌造粒する第1工程と、第1工程で撹拌造粒された造粒物の一部を採取し、採取した造粒物の粒度分布を測定する第2工程と、前記採取した造粒物から、前記粒度分布におけるメジアン径よりも小さい、所定範囲の粒径を有する粒子群を分別する第3工程と、前記分別した粒子群の原料比率を測定する第4工程とを有し、第4工程で測定された原料比率が、造粒槽内に投入された原料比率と略同一になるまで、第1工程〜第4工程を繰り返すことを特徴とする。
【0008】
ここで、第3工程において分別される所定範囲の粒径を有する造粒物は、細かい粒子側をゼロとした累積粒度分布において5%〜15%の範囲の粒径を有する造粒物であるのが好ましい。
【0009】
また、撹拌造粒装置として、円筒形の造粒槽内に撹拌翼を回転自在に備えた撹拌造粒装置を用い、前記撹拌翼を回転させて2種類以上の原料粉末を撹拌造粒するのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の造粒方法では、メジアン径よりも小さい、所定範囲の粒径を有する粒子群を分別して原料比率を測定し、かかる原料比率を指標とするので、造粒物の全ての粒子が同じ原料比率になったかどうかを迅速且つ確実に判断できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】撹拌造粒装置の一例を示す平断面図である。
【図2】図1の撹拌造粒装置の垂直断面図である。
【図3】第1原料粉末と第2原料粉末の粒度分布を示す図である。
【図4】造粒物の粒度分布の経時変化を示す図である。
【図5】造粒物の各粒径範囲ごとの第1原料粉末と第2原料粉末との比率の経時変化を示す図である。
【図6】本発明の造粒方法の作業手順例を示すフローチャートである。
【図7】実施例1における造粒物の粒度分布の経時変化を示す図である。
【図8】実施例1における造粒物の各粒径範囲ごとの第1原料粉末と第2原料粉末との比率の経時変化を示す図である。
【図9】実施例2における造粒物の粒度分布の経時変化を示す図である。
【図10】実施例2における造粒物の各粒径範囲ごとの第1原料粉末と第2原料粉末との比率の経時変化を示す図である。
【図11】実施例3における造粒物の粒度分布の経時変化を示す図である。
【図12】実施例3における造粒物の各粒径範囲ごとの第1原料粉末と第2原料粉末との比率の経時変化を示す図である。
【図13】実施例4における造粒物の粒度分布の経時変化を示す図である。
【図14】実施例4における造粒物の各粒径範囲ごとの第1原料粉末と第2原料粉末との比率の経時変化を示す図である。
【図15】実施例5における造粒物の粒度分布の経時変化を示す図である。
【図16】実施例5における造粒物の各粒径範囲ごとの第1原料粉末と第2原料粉末との比率の経時変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る造粒方法についてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。
【0013】
図1は、本発明に係る造粒方法を実施する撹拌造粒装置の一例を示す造粒槽の平断面図であり、図2はその垂直断面図である。造粒槽1は略円筒形状をなし、内底面にアジテータ2が回転自在に設けられている。アジテータ2は、回転中心から半径方向に延出した3本の羽根21を有する。これら3本の羽根21は円周方向に略等角度に設けられ、その長さは造粒槽1の内径の半分(すなわち、造粒槽内部の半径)よりも僅かに短く、羽根21の半径方向外側端は造粒槽1の側壁と離隔対向するように屈曲している。また、造粒槽1の内側面にはチョッパー3が回転自在に設けられている。チョッパー3は、軸方向に離隔して設けられた2枚の羽根31を有する。このチョッパー3によって、原料粉末の解砕やバインダーの原料粉末への分散が効果的に行われるようになる。なお、造粒槽1の外側にジャケットやヒータを設けて造粒槽1内を所定温度に加熱可能としてもよい。
【0014】
上記構造の撹拌造粒装置としては、例えばバーチカルグラニュレータが挙げられ、市販されている装置としては、深江パウテック社製「LFS−2」、「LFS−10」、「FS−100」、「FS−2500」などが挙げられる。
【0015】
このような構造の造粒槽1内に2種類以上の原料粉末を投入し造粒を行う。一例として、撹拌造粒装置「LFS−2」(深江パウテック社製,造粒槽容積:2L,撹拌翼の半径0.09m)を用いて、第1原料粉末としての「イルガフォス(登録商標)168」(粒径130μm,レーザー回折式粒径分布測定器で測定した体積基準積算50%径、チバスペシャリティケミカルズ社製)0.24kgと、バインダーとして作用する第2原料粉末としての「スミライザー(登録商標)TPM」(粒径230μm,レーザー回折式粒径分布測定器で測定した体積基準積算50%径、結晶性粉末、融点50〜53℃、住友化学社製)0.06kgとを投入し(第1原料粉末/第2原料粉末=4.0)、撹拌翼を周速4.0m/sで回転させて、20分間造粒を行った。なお、ジャケット温度は48℃とした。図3に、第1原料粉末と第2原料粉末の粒度分布を示し、図4に、造粒物の粒度分布の経時変化を示す。そして図5に、篩い分けした造粒物の各粒径範囲ごとの第1原料粉末と第2原料粉末との比率の経時変化を示す。
【0016】
なお、各粒径範囲ごとの第1原料粉末と第2原料粉末との比率は、液体クロマトグラフ(LC:Liquid Chromatography)により分析した。
【0017】
図4から明らかなように、撹拌造粒時間が1分間,10分間、20分間と経つにしたがって粒度分布は右側に移動し、造粒されていることがわかる。また、このとき、図5に示すように、粒径の大きい粒子は撹拌造粒の開始当初から、原料粉末1と原料粉末2との比率は、造粒槽に投入された原料比率(=4)に近い値を示している。これに対し、メジアン径より小さい粒径の粒子では、撹拌造粒の初期は、原料粉末1と原料粉末2との比率は、造粒槽に投入された原料比率(=4)よりも大きな値を示し、撹拌造粒が進むにつれて、造粒槽に投入された原料比率(=4)に近づいてくることがわかる。
【0018】
これは、撹拌造粒の初期では、原料粉末と造粒物とが混在した状態となっており、粒径の小さい領域ほど原料粉末自体が単独で存在している割合が多い一方、造粒が進むに従って、粒径の小さい粒子が、圧縮・衝撃・剪断等の機械的エネルギーの付与によって大粒径化し、その組成が、造粒槽に投入された原料粉末比に近づくためと推測される。そこで、本発明の造粒方法では、メジアン径よりも小さい、所定範囲の粒径を有する粒子群の原料比率を指標とし、かかる原料比率が、造粒槽に投入された原料比率と等しくなれば、造粒物の全ての粒子が同じ原料比率になったと判断し撹拌造粒を終了することとした。
【0019】
指標とする造粒物の粒径としては、細かい粒子側をゼロとした累積粒度分布において5%〜15%の範囲の粒径を有する造粒物とするのが好ましい。
【0020】
図6に、本発明の造粒方法の作業手順例を示すフローチャートを示す。まず、造粒槽内に第1原料粉末と第2原料粉末とを所定比率で投入する(ステップS101)。そして、撹拌造粒を開始する(ステップS102)。所定時間経過後、造粒槽内の造粒物の一部を採取し(ステップS103)、その粒度分布を測定する(ステップS104)。次いで、測定された粒度分布において、メジアン径よりも小さい所定範囲の粒径を有する粒子群を分別する(ステップS105)。採取した造粒物から当該粒子群を分別する方法としては、例えば、篩による分別が挙げられる。そして、分別した粒子群の原料比率を測定する(ステップS106)。原料比率の測定方法に特に限定はなく、従来公知の測定方法を用いることができ、なかでも前述のLCによる測定が好適である。
【0021】
次に、測定された原料比率が、造粒槽内に投入された原料比率と等しいかどうかを判断する(ステップS107)。そして、測定された原料比率が、造粒槽内に投入された原料比率と等しければ、撹拌造粒を停止し(ステップS108)、作業を終了する。一方、測定された原料比率が、造粒槽内に投入された原料比率と等しくなければ(ステップS107)、撹拌造粒を再び開始し(ステップS102)、測定された原料比率が、造粒槽内に投入された原料比率と等しくなるまで、前記作業(ステップS102〜ステップS107)を繰り返し行う。
【0022】
以上説明した実施形態は2種類の原料粉末を撹拌造粒する場合であったが、3種類以上の原料粉末を撹拌造粒する場合であっても、同様の方法によって、撹拌造粒を行うことができる。
【0023】
造粒対象となる原料粉末としては特に限定はなく、各種有機材料を主材料として構成された粉末や、各種無機材料を主材料として構成された粉末が挙げられる。また、原料粉末の粒径に特に限定はなく、サブミクロンから数mmまで広い範囲で本発明の造粒方法が適用される。
【0024】
また、バインダーとして作用する粉末も本発明における原料粉末として取り扱うことができる。このような原料粉末としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、エチレンビスステアロアミド、エチレンビニル共重合体、パラフィン、ワックス、アルギン酸ソーダ、寒天、アラビアゴム、レジン、しょ糖等が挙げられる。バインダーの配合量に特に限定はないが、通常、原料粉末とバインダーとの混合物に対して5〜30重量%の範囲が好適である。
【実施例】
【0025】
実施例1
前述の撹拌造粒操作と同様にして、撹拌造粒装置「LFS−2」を用いて、第1原料粉末としての「イルガフォス(登録商標)168」0.24kgと、バインダーとして作用する第2原料粉末としての「スミライザー(登録商標)TPM」0.06kgとを投入し(第1原料粉末/第2原料粉末=4.0)、撹拌翼を周速4.0m/sで回転させて、ジャケット温度を50℃として10分間造粒を行った。
図7に、造粒物の粒度分布の経時変化を示す。そして図8に、篩い分けした造粒物の各粒径範囲ごとの第1原料粉末と第2原料粉末との比率の経時変化を示す。
【0026】
実施例2
第1原料粉末としての「イルガフォス(登録商標)168」と、第2原料粉末としての「スミライザー(登録商標)TPM」とをそれぞれ0.15kg造粒槽に投入し(第1原料粉末/第2原料粉末=1.0)、ジャケット温度を48℃とした以外は実施例1と同様にして13分間造粒を行った。
図9に、造粒物の粒度分布の経時変化を示す。そして図10に、篩い分けした造粒物の各粒径範囲ごとの第1原料粉末と第2原料粉末との比率の経時変化を示す。
【0027】
実施例3
ジャケット温度を50℃とした以外は実施例2と同様にして17分間造粒を行った。
図11に、造粒物の粒度分布の経時変化を示す。そして図12に、篩い分けした造粒物の各粒径範囲ごとの第1原料粉末と第2原料粉末との比率の経時変化を示す。
【0028】
実施例4
第1原料粉末としての「イルガフォス(登録商標)168」0.08kgと、第2原料粉末としての「スミライザー(登録商標)TPM」0.32kgとを造粒槽に投入し(第1原料粉末/第2原料粉末=0.25)、撹拌翼を周速2.0m/sとし、ジャケット温度を48℃とした以外は実施例1と同様にして、26分間造粒を行った。
図13に、造粒物の粒度分布の経時変化を示す。そして図14に、篩い分けした造粒物の各粒径範囲ごとの第1原料粉末と第2原料粉末との比率の経時変化を示す。
【0029】
実施例5
撹拌翼を周速4.0m/sとした以外は実施例4と同様にして10分間造粒を行った。図15に、造粒物の粒度分布の経時変化を示す。そして図16に、篩い分けした造粒物の各粒径範囲ごとの第1原料粉末と第2原料粉末との比率の経時変化を示す。
【0030】
図8,図10,図12,図14,図16に示す、実施例1〜5の造粒物における、第1原料粉末と第2原料粉末との比率の経時変化から明らかなように、原料粉末1と原料粉末2との比率は、メジアン径より大きい粒子では撹拌造粒の開始当初から、造粒槽に投入された原料比率に近い値であるのに対し、メジアン径より小さい粒径の粒子では、撹拌造粒が進むにつれて、造粒槽に投入された原料比率に近づいてくる。したがって、メジアン径よりも小さい、所定範囲の粒径を有する粒子群の原料比率を指標とし、かかる原料比率が、造粒槽に投入された原料比率と等しくなれば、造粒物の全ての粒子が同じ原料比率になったと判断し撹拌造粒を終了すればよいことが裏付けられた。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の造粒方法では、メジアン径よりも小さい、所定範囲の粒径を有する粒子群を分別して原料比率を測定し、かかる原料比率を指標とするので、造粒物の全ての粒子が同じ原料比率になったかどうかを迅速且つ確実に判断できる。
【符号の説明】
【0032】
1 造粒槽
2 アジテータ(撹拌翼)
3 チョッパー
21 羽根
31 羽根
【技術分野】
【0001】
本発明は造粒方法に関し、より詳細には、2種類以上の原料粉末を撹拌造粒する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2種類以上の原料粉末を撹拌造粒する場合、得られた造粒物の全て粒子が等しく、配合された原料比率を有していることが、品質保証等の観点から望ましい。
【0003】
造粒物の全て粒子を同じ原料比率とするには、例えば、造粒中の造粒物の一部を採取し、採取した造粒物を目開きの異なる複数の篩で分級した後、分級した粒径範囲の異なる粒子群のそれぞれについて原料比率を測定する。そして、すべての粒子群の原料比率が等しくなるまで造粒と原料比率測定とを繰り返す方法が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-25230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記方法では、分級した粒径範囲の異なる粒子群のそれぞれについて原料比率を測定するので、作業が煩雑となり測定に長時間を要する。
【0006】
そこで本発明の目的は、2種類以上の原料粉末を撹拌造粒する方法において、造粒物の全て粒子が同じ原料比率となったかどうかを迅速且つ確実に判断できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成する本発明に係る造粒方法は、造粒槽内に所定比率で投入された2種類以上の原料粉末を撹拌造粒する第1工程と、第1工程で撹拌造粒された造粒物の一部を採取し、採取した造粒物の粒度分布を測定する第2工程と、前記採取した造粒物から、前記粒度分布におけるメジアン径よりも小さい、所定範囲の粒径を有する粒子群を分別する第3工程と、前記分別した粒子群の原料比率を測定する第4工程とを有し、第4工程で測定された原料比率が、造粒槽内に投入された原料比率と略同一になるまで、第1工程〜第4工程を繰り返すことを特徴とする。
【0008】
ここで、第3工程において分別される所定範囲の粒径を有する造粒物は、細かい粒子側をゼロとした累積粒度分布において5%〜15%の範囲の粒径を有する造粒物であるのが好ましい。
【0009】
また、撹拌造粒装置として、円筒形の造粒槽内に撹拌翼を回転自在に備えた撹拌造粒装置を用い、前記撹拌翼を回転させて2種類以上の原料粉末を撹拌造粒するのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の造粒方法では、メジアン径よりも小さい、所定範囲の粒径を有する粒子群を分別して原料比率を測定し、かかる原料比率を指標とするので、造粒物の全ての粒子が同じ原料比率になったかどうかを迅速且つ確実に判断できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】撹拌造粒装置の一例を示す平断面図である。
【図2】図1の撹拌造粒装置の垂直断面図である。
【図3】第1原料粉末と第2原料粉末の粒度分布を示す図である。
【図4】造粒物の粒度分布の経時変化を示す図である。
【図5】造粒物の各粒径範囲ごとの第1原料粉末と第2原料粉末との比率の経時変化を示す図である。
【図6】本発明の造粒方法の作業手順例を示すフローチャートである。
【図7】実施例1における造粒物の粒度分布の経時変化を示す図である。
【図8】実施例1における造粒物の各粒径範囲ごとの第1原料粉末と第2原料粉末との比率の経時変化を示す図である。
【図9】実施例2における造粒物の粒度分布の経時変化を示す図である。
【図10】実施例2における造粒物の各粒径範囲ごとの第1原料粉末と第2原料粉末との比率の経時変化を示す図である。
【図11】実施例3における造粒物の粒度分布の経時変化を示す図である。
【図12】実施例3における造粒物の各粒径範囲ごとの第1原料粉末と第2原料粉末との比率の経時変化を示す図である。
【図13】実施例4における造粒物の粒度分布の経時変化を示す図である。
【図14】実施例4における造粒物の各粒径範囲ごとの第1原料粉末と第2原料粉末との比率の経時変化を示す図である。
【図15】実施例5における造粒物の粒度分布の経時変化を示す図である。
【図16】実施例5における造粒物の各粒径範囲ごとの第1原料粉末と第2原料粉末との比率の経時変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る造粒方法についてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。
【0013】
図1は、本発明に係る造粒方法を実施する撹拌造粒装置の一例を示す造粒槽の平断面図であり、図2はその垂直断面図である。造粒槽1は略円筒形状をなし、内底面にアジテータ2が回転自在に設けられている。アジテータ2は、回転中心から半径方向に延出した3本の羽根21を有する。これら3本の羽根21は円周方向に略等角度に設けられ、その長さは造粒槽1の内径の半分(すなわち、造粒槽内部の半径)よりも僅かに短く、羽根21の半径方向外側端は造粒槽1の側壁と離隔対向するように屈曲している。また、造粒槽1の内側面にはチョッパー3が回転自在に設けられている。チョッパー3は、軸方向に離隔して設けられた2枚の羽根31を有する。このチョッパー3によって、原料粉末の解砕やバインダーの原料粉末への分散が効果的に行われるようになる。なお、造粒槽1の外側にジャケットやヒータを設けて造粒槽1内を所定温度に加熱可能としてもよい。
【0014】
上記構造の撹拌造粒装置としては、例えばバーチカルグラニュレータが挙げられ、市販されている装置としては、深江パウテック社製「LFS−2」、「LFS−10」、「FS−100」、「FS−2500」などが挙げられる。
【0015】
このような構造の造粒槽1内に2種類以上の原料粉末を投入し造粒を行う。一例として、撹拌造粒装置「LFS−2」(深江パウテック社製,造粒槽容積:2L,撹拌翼の半径0.09m)を用いて、第1原料粉末としての「イルガフォス(登録商標)168」(粒径130μm,レーザー回折式粒径分布測定器で測定した体積基準積算50%径、チバスペシャリティケミカルズ社製)0.24kgと、バインダーとして作用する第2原料粉末としての「スミライザー(登録商標)TPM」(粒径230μm,レーザー回折式粒径分布測定器で測定した体積基準積算50%径、結晶性粉末、融点50〜53℃、住友化学社製)0.06kgとを投入し(第1原料粉末/第2原料粉末=4.0)、撹拌翼を周速4.0m/sで回転させて、20分間造粒を行った。なお、ジャケット温度は48℃とした。図3に、第1原料粉末と第2原料粉末の粒度分布を示し、図4に、造粒物の粒度分布の経時変化を示す。そして図5に、篩い分けした造粒物の各粒径範囲ごとの第1原料粉末と第2原料粉末との比率の経時変化を示す。
【0016】
なお、各粒径範囲ごとの第1原料粉末と第2原料粉末との比率は、液体クロマトグラフ(LC:Liquid Chromatography)により分析した。
【0017】
図4から明らかなように、撹拌造粒時間が1分間,10分間、20分間と経つにしたがって粒度分布は右側に移動し、造粒されていることがわかる。また、このとき、図5に示すように、粒径の大きい粒子は撹拌造粒の開始当初から、原料粉末1と原料粉末2との比率は、造粒槽に投入された原料比率(=4)に近い値を示している。これに対し、メジアン径より小さい粒径の粒子では、撹拌造粒の初期は、原料粉末1と原料粉末2との比率は、造粒槽に投入された原料比率(=4)よりも大きな値を示し、撹拌造粒が進むにつれて、造粒槽に投入された原料比率(=4)に近づいてくることがわかる。
【0018】
これは、撹拌造粒の初期では、原料粉末と造粒物とが混在した状態となっており、粒径の小さい領域ほど原料粉末自体が単独で存在している割合が多い一方、造粒が進むに従って、粒径の小さい粒子が、圧縮・衝撃・剪断等の機械的エネルギーの付与によって大粒径化し、その組成が、造粒槽に投入された原料粉末比に近づくためと推測される。そこで、本発明の造粒方法では、メジアン径よりも小さい、所定範囲の粒径を有する粒子群の原料比率を指標とし、かかる原料比率が、造粒槽に投入された原料比率と等しくなれば、造粒物の全ての粒子が同じ原料比率になったと判断し撹拌造粒を終了することとした。
【0019】
指標とする造粒物の粒径としては、細かい粒子側をゼロとした累積粒度分布において5%〜15%の範囲の粒径を有する造粒物とするのが好ましい。
【0020】
図6に、本発明の造粒方法の作業手順例を示すフローチャートを示す。まず、造粒槽内に第1原料粉末と第2原料粉末とを所定比率で投入する(ステップS101)。そして、撹拌造粒を開始する(ステップS102)。所定時間経過後、造粒槽内の造粒物の一部を採取し(ステップS103)、その粒度分布を測定する(ステップS104)。次いで、測定された粒度分布において、メジアン径よりも小さい所定範囲の粒径を有する粒子群を分別する(ステップS105)。採取した造粒物から当該粒子群を分別する方法としては、例えば、篩による分別が挙げられる。そして、分別した粒子群の原料比率を測定する(ステップS106)。原料比率の測定方法に特に限定はなく、従来公知の測定方法を用いることができ、なかでも前述のLCによる測定が好適である。
【0021】
次に、測定された原料比率が、造粒槽内に投入された原料比率と等しいかどうかを判断する(ステップS107)。そして、測定された原料比率が、造粒槽内に投入された原料比率と等しければ、撹拌造粒を停止し(ステップS108)、作業を終了する。一方、測定された原料比率が、造粒槽内に投入された原料比率と等しくなければ(ステップS107)、撹拌造粒を再び開始し(ステップS102)、測定された原料比率が、造粒槽内に投入された原料比率と等しくなるまで、前記作業(ステップS102〜ステップS107)を繰り返し行う。
【0022】
以上説明した実施形態は2種類の原料粉末を撹拌造粒する場合であったが、3種類以上の原料粉末を撹拌造粒する場合であっても、同様の方法によって、撹拌造粒を行うことができる。
【0023】
造粒対象となる原料粉末としては特に限定はなく、各種有機材料を主材料として構成された粉末や、各種無機材料を主材料として構成された粉末が挙げられる。また、原料粉末の粒径に特に限定はなく、サブミクロンから数mmまで広い範囲で本発明の造粒方法が適用される。
【0024】
また、バインダーとして作用する粉末も本発明における原料粉末として取り扱うことができる。このような原料粉末としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、エチレンビスステアロアミド、エチレンビニル共重合体、パラフィン、ワックス、アルギン酸ソーダ、寒天、アラビアゴム、レジン、しょ糖等が挙げられる。バインダーの配合量に特に限定はないが、通常、原料粉末とバインダーとの混合物に対して5〜30重量%の範囲が好適である。
【実施例】
【0025】
実施例1
前述の撹拌造粒操作と同様にして、撹拌造粒装置「LFS−2」を用いて、第1原料粉末としての「イルガフォス(登録商標)168」0.24kgと、バインダーとして作用する第2原料粉末としての「スミライザー(登録商標)TPM」0.06kgとを投入し(第1原料粉末/第2原料粉末=4.0)、撹拌翼を周速4.0m/sで回転させて、ジャケット温度を50℃として10分間造粒を行った。
図7に、造粒物の粒度分布の経時変化を示す。そして図8に、篩い分けした造粒物の各粒径範囲ごとの第1原料粉末と第2原料粉末との比率の経時変化を示す。
【0026】
実施例2
第1原料粉末としての「イルガフォス(登録商標)168」と、第2原料粉末としての「スミライザー(登録商標)TPM」とをそれぞれ0.15kg造粒槽に投入し(第1原料粉末/第2原料粉末=1.0)、ジャケット温度を48℃とした以外は実施例1と同様にして13分間造粒を行った。
図9に、造粒物の粒度分布の経時変化を示す。そして図10に、篩い分けした造粒物の各粒径範囲ごとの第1原料粉末と第2原料粉末との比率の経時変化を示す。
【0027】
実施例3
ジャケット温度を50℃とした以外は実施例2と同様にして17分間造粒を行った。
図11に、造粒物の粒度分布の経時変化を示す。そして図12に、篩い分けした造粒物の各粒径範囲ごとの第1原料粉末と第2原料粉末との比率の経時変化を示す。
【0028】
実施例4
第1原料粉末としての「イルガフォス(登録商標)168」0.08kgと、第2原料粉末としての「スミライザー(登録商標)TPM」0.32kgとを造粒槽に投入し(第1原料粉末/第2原料粉末=0.25)、撹拌翼を周速2.0m/sとし、ジャケット温度を48℃とした以外は実施例1と同様にして、26分間造粒を行った。
図13に、造粒物の粒度分布の経時変化を示す。そして図14に、篩い分けした造粒物の各粒径範囲ごとの第1原料粉末と第2原料粉末との比率の経時変化を示す。
【0029】
実施例5
撹拌翼を周速4.0m/sとした以外は実施例4と同様にして10分間造粒を行った。図15に、造粒物の粒度分布の経時変化を示す。そして図16に、篩い分けした造粒物の各粒径範囲ごとの第1原料粉末と第2原料粉末との比率の経時変化を示す。
【0030】
図8,図10,図12,図14,図16に示す、実施例1〜5の造粒物における、第1原料粉末と第2原料粉末との比率の経時変化から明らかなように、原料粉末1と原料粉末2との比率は、メジアン径より大きい粒子では撹拌造粒の開始当初から、造粒槽に投入された原料比率に近い値であるのに対し、メジアン径より小さい粒径の粒子では、撹拌造粒が進むにつれて、造粒槽に投入された原料比率に近づいてくる。したがって、メジアン径よりも小さい、所定範囲の粒径を有する粒子群の原料比率を指標とし、かかる原料比率が、造粒槽に投入された原料比率と等しくなれば、造粒物の全ての粒子が同じ原料比率になったと判断し撹拌造粒を終了すればよいことが裏付けられた。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の造粒方法では、メジアン径よりも小さい、所定範囲の粒径を有する粒子群を分別して原料比率を測定し、かかる原料比率を指標とするので、造粒物の全ての粒子が同じ原料比率になったかどうかを迅速且つ確実に判断できる。
【符号の説明】
【0032】
1 造粒槽
2 アジテータ(撹拌翼)
3 チョッパー
21 羽根
31 羽根
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造粒槽内に所定比率で投入された2種類以上の原料粉末を撹拌造粒する第1工程と、第1工程で撹拌造粒された造粒物の一部を採取し、採取した造粒物の粒度分布を測定する第2工程と、前記採取した造粒物から、前記粒度分布におけるメジアン径よりも小さい、所定範囲の粒径を有する粒子群を分別する第3工程と、前記分別した粒子群の原料比率を測定する第4工程とを有し、
第4工程で測定された原料比率が、造粒槽内に投入された原料比率と略同一になるまで、第1工程〜第4工程を繰り返すことを特徴とする造粒方法。
【請求項2】
第3工程において分別される所定範囲の粒径を有する造粒物が、細かい粒子側をゼロとした累積粒度分布において5%〜15%の範囲の粒径を有する造粒物である請求項1記載の造粒方法。
【請求項3】
円筒形の造粒槽内に撹拌翼を回転自在に備えた撹拌造粒装置を用い、前記撹拌翼を回転させて2種類以上の原料粉末を撹拌造粒する請求項1又は2記載の造粒方法。
【請求項1】
造粒槽内に所定比率で投入された2種類以上の原料粉末を撹拌造粒する第1工程と、第1工程で撹拌造粒された造粒物の一部を採取し、採取した造粒物の粒度分布を測定する第2工程と、前記採取した造粒物から、前記粒度分布におけるメジアン径よりも小さい、所定範囲の粒径を有する粒子群を分別する第3工程と、前記分別した粒子群の原料比率を測定する第4工程とを有し、
第4工程で測定された原料比率が、造粒槽内に投入された原料比率と略同一になるまで、第1工程〜第4工程を繰り返すことを特徴とする造粒方法。
【請求項2】
第3工程において分別される所定範囲の粒径を有する造粒物が、細かい粒子側をゼロとした累積粒度分布において5%〜15%の範囲の粒径を有する造粒物である請求項1記載の造粒方法。
【請求項3】
円筒形の造粒槽内に撹拌翼を回転自在に備えた撹拌造粒装置を用い、前記撹拌翼を回転させて2種類以上の原料粉末を撹拌造粒する請求項1又は2記載の造粒方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−43099(P2013−43099A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180014(P2011−180014)
【出願日】平成23年8月20日(2011.8.20)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月20日(2011.8.20)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
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