連結機構および画像読取装置
【課題】2つの部材に亘って設けられた給電ケーブルの断線を防止すること。
【解決手段】連結機構400は、対向配置される第1の部材111に対して第2の部材112を回動可能に連結するヒンジ部410と、ヒンジ部410を第1および第2の部材111、112の対向方向に沿って変位可能に保持する保持部420と、保持部420によって保持されるヒンジ部410の変位範囲を規制する規制部と、を備えることを特徴とする。保持部420は、ヒンジ部410に連結されたスライド部材502と、スライド部材502を対向方向に沿ってスライド可能に保持するホルダ部材801とを有し、規制部は、スライド部材502とホルダ部材801との間に設けられて、第1および第2の部材111、112が所定距離離間する位置において係合する。
【解決手段】連結機構400は、対向配置される第1の部材111に対して第2の部材112を回動可能に連結するヒンジ部410と、ヒンジ部410を第1および第2の部材111、112の対向方向に沿って変位可能に保持する保持部420と、保持部420によって保持されるヒンジ部410の変位範囲を規制する規制部と、を備えることを特徴とする。保持部420は、ヒンジ部410に連結されたスライド部材502と、スライド部材502を対向方向に沿ってスライド可能に保持するホルダ部材801とを有し、規制部は、スライド部材502とホルダ部材801との間に設けられて、第1および第2の部材111、112が所定距離離間する位置において係合する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、連結機構および画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原稿押さえ部材に装着されたヒンジ部材の支持脚を装置本体側の軸穴に挿し込むことにより、装置本体上で原稿押さえ部材を開閉かつ上下動可能に支持してなる画像読取装置において、支持脚の端部に引っ掛け部を設けるとともに、ブラインドカバーの挿入口の一部を突出させてストッパー部を形成し、このストッパー部に引っ掛け部が突き当たることで軸穴から支持脚が抜けないようにした画像読取装置がある(たとえば、下記特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−231163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に記載された技術では、原稿押さえ部材によって押さえることができる原稿の厚さが、原稿押さえ部材の上下動可能な範囲内に制限されてしまうという問題がある。一方で、装置本体に対する原稿押さえ部材の着脱が容易な構成とした場合、原稿の厚さ制限に関する問題を解消することはできるが、原稿押さえ部材を取り外す際に勢いがつき易く、装置本体および原稿押さえ部材に亘って設けられた給電ケーブルが断線し易くなってしまうという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明にかかる連結機構は、対向配置される第1の部材に対して第2の部材を回動可能に連結するヒンジ部と、前記ヒンジ部を前記第1および第2の部材の対向方向に沿って変位可能に保持する保持部と、前記保持部によって保持される前記ヒンジ部の変位範囲を規制する規制部と、を備えることを特徴とする。
【0006】
したがって、第1および第2の部材の間に介在する部材の第1および第2の部材の対向方向に沿った寸法に応じて、保持部材によって保持されるヒンジ部の保持位置を変位させることができる。これによって、第1および第2の部材の間に介在する部材の第1および第2の部材の対向方向に沿った寸法に左右されることなく、当該部材を第1および第2の部材の間に確実に位置させるとともに、ヒンジ部の変位範囲を規制部によって規制することで、第1および第2の部材が不意に分断されることを防止することができる。
【0007】
また、この発明にかかる連結機構における前記保持部は、前記ヒンジ部に連結されたスライド部材と、当該スライド部材を前記対向方向に沿ってスライド可能に保持するホルダ部材とを有し、前記規制部は、前記スライド部材と前記ホルダ部材との間に設けられて、前記第1および第2の部材が所定距離離間する位置において係合する係合部材であることを特徴とする。
【0008】
したがって、第1および第2の部材が所定距離離間する位置においてのみ、ヒンジ部の変位を規制することができる。これによって、第1および第2の部材が所定距離離間するまでの位置におけるヒンジ部の変位を阻害することなく、第1および第2の部材が不意に分断されることを防止することができる。これによって、たとえば、第1および第2の部材に亘って設けられた給電ケーブルの断線を防止することができる。
【0009】
また、この発明にかかる連結機構における前記係合部材は、前記スライド部材に設けられた凸部および前記ホルダ部材において前記凸部の移動軌跡上に設けられた凹部であることを特徴とする。
【0010】
したがって、実用上簡易な構成によってヒンジ部の変位を規制することができる。これによって、連結機構の製造の容易化を図ることができる。
【0011】
また、この発明にかかる画像読取装置は、原稿を支持する原稿台が設けられた本体ハウジングと、前記原稿台に対向配置される原稿カバーと、前記本体ハウジングに対して前記原稿カバーを回動可能に連結するヒンジ部と、前記ヒンジ部を前記本体ハウジングおよび前記原稿カバーの対向方向に沿って変位可能に保持する保持部と、前記保持部によって保持される前記ヒンジ部の変位範囲を規制する規制部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
したがって、読み取り対象とする原稿の厚さに応じて、保持部材によって保持されるヒンジ部の位置を変位させることができる。これによって、原稿の厚さに左右されることなく、原稿を本体ハウジングに対して確実に押し当てるとともに、ヒンジ部の変位範囲を規制部によって規制することで、本体ハウジングに対して原稿カバーが不意に引き抜かれることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる連結機構および画像読取装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。この実施の形態は、この発明にかかる連結機構および画像読取装置を有する複合機への適用例を示す。
【0014】
図1は、この発明の実施の形態にかかる複合機の外観を示す斜視図である。まず、この発明の実施の形態にかかる連結機構および画像読取装置を備えた複合機の外観について図1を参照して説明する。図1に示すように、複合機100は、画像読取装置としてのスキャナ部110と、プリンタ部120と、操作パネル150とを備えている。スキャナ部110は、原稿の画像(図形、テキスト、写真など)を光学的に読み取り、光学的に読み取った画像を光電変換するなどして画像データを生成する。
【0015】
図2は、複合機100の内部構造を示す縦断側面図である。つぎに、複合機100の内部構造について図2を参照して説明する。図2に示すように、スキャナ部110は、スキャナケース111と、透過型原稿用光源ユニット(以下、「TPUユニット」という)112と、原稿保持部としての原稿台113と、スキャナキャリッジ114と、キャリッジガイド115とを備えている。スキャナケース111は、筐体形状を有しており、図示しないヒンジを介して、プリンタケース121に対して回動可能に連結されている。この実施の形態においては、スキャナケース111によって第1の部材が実現されている。スキャナケース111内には、原稿に記載されたデータを光学的に読み取るための各部材が格納されている。
【0016】
TPUユニット112は、原稿台113に載置された原稿を、上方から覆うようにして原稿台113に対して押さえつける。TPUユニット112には、原稿を押さえつける部分に、原稿台113とほぼ同じ大きさの板状の図示しない保護マットが設けられている。TPUユニット112は、連結機構(図4参照)を介して、スキャナケース111に対して回動可能に連結されている。この実施の形態においては、TPUユニット112によって第2の部材が実現されている。
【0017】
原稿台113は、光学的に透明なガラス材料などを用いて形成された板状部材であり、スキャナケース111の上部に形成された図示しない開口部を閉塞するように固定されている。原稿台113には、ユーザによって原稿が載置される。なお、原稿は、紙などを用いた不透過型原稿であっても、透明なフィルムなどを用いた透過型原稿であってもよい。
【0018】
スキャナキャリッジ114は、スキャナケース111の内部に収容されており、原稿の画像を光学的に読み取るための各部材を搭載している。スキャナキャリッジ114は、副走査方向を長手方向として配置されたキャリッジガイド115に沿って往復動可能に設けられている。スキャナキャリッジ114は、たとえば、モータおよびモータに連結された駆動ベルトなどによって構成される図示しない駆動機構によって往復動される。
【0019】
なお、図示を省略するが、スキャナキャリッジ114には、原稿の画像を光学的に読み取るための各部材として、リニアイメージセンサを実装した走査回路基板、レンズ、ミラー、光源などが搭載されている。スキャナキャリッジ114に搭載された光源から原稿に向けて出射された光は、ミラーおよびレンズを介してリニアイメージセンサの受光面に結像される。
【0020】
なお、リニアイメージセンサとは、受光面に結像された光学像を光電変換して、受光素子ごとの受光量に応じた電気信号を出力する素子であり、フォトダイオードなどの受光素子が主走査方向に直線状に並ぶ姿勢で走査回路基板に搭載されることによって形成されている。
【0021】
つぎに、プリンタ部120について説明する。プリンタ部120は、複合機100に対して、ネットワークを介して接続されたPC(パーソナルコンピュータ)などから送信された画像データに基づいて、用紙に画像を形成する。図2に示すように、プリンタ部120は、プリンタケース121と、ASFユニット130と、印刷機構部(図3参照)とによって構成されている。ASFユニット130は、給紙口130Aの近傍に設けられ、給紙ローラ131と、紙支持板132と、給紙板133と、とを備えている。
【0022】
プリンタケース121には、スキャナケース111に向けて開口する開口部121Aが設けられている。開口部121Aは、スキャナケース111をプリンタケース121に対して離反する方向に回動させることによって、露出させることが可能であり、たとえば、スキャナケース111の内部に格納された各部材をメンテナンスする際に露出される。プリンタケース121内には、画像データに基づいて用紙に画像を形成するための各部材が格納されている。
【0023】
図3は、ASFユニット130および印刷機構部を示す縦断側面図である。つぎに、ASFユニット130および印刷機構部について図3を参照して説明する。上述したASFユニット130において、給紙ローラ131は、給紙口130Aの近傍において給紙方向に回転可能にプリンタケース121に軸支されている。給紙ローラ131は、ASFユニット130に設けられたモータまたは図示しないモータからの駆動力を受けて回転することによって、給紙板133により押し出された用紙を給紙口130Aからプリンタケース121の内部に引き込み、後述する印刷ヘッド144とプラテン145との間に搬送する。
【0024】
紙支持板132は、給紙板133の上方に形成された板状の部材であり、紙支持板132の下端に形成されたヒンジによって給紙板133の上端に開閉可能に連結されている。紙支持板132は、図2および図3に示すように、給紙する時には、前面が開放された状態で、給紙板133の前面の傾斜角度と紙支持板132の前面の傾斜角度とが一致する位置に係止される。紙支持板132は、用紙束122の背面を支持する。
【0025】
紙支持板132は、給紙しない時には、紙支持板132の下端に形成されたヒンジを軸にして、複合機100の正面側に向かって折り畳むことができる。このように折り畳まれた紙支持板132は、紙支持板132の上方の前面が、TPUユニット112と当接することによって係止され、これによって、給紙口130Aにつながる空間が閉塞される。給紙板133は、用紙束122を給紙口130Aに供給できる位置に設けられた板状の部材であり、用紙束122を保持する。給紙板133は、モータの回転に伴って揺動し、用紙束122の下端を給紙口130A側に押し出すことによって、給紙口130Aに用紙を滑り落とす。
【0026】
印刷機構部140は、プリンタキャリッジ141、インクカートリッジ142、ガイドロッド143、印刷ヘッド144、プラテン145、排紙ローラ146、スタッカ147などを備えている。プリンタキャリッジ141は、内部にインクカートリッジ142を脱着自在に格納する。プリンタキャリッジ141は、印刷機構部140に設けられたモータによって駆動されるベルトによって係止されており、モータの回転に伴って、ベルトを介してガイドロッド143に支持されながらガイドロッド143の軸方向に往復動する。
【0027】
インクカートリッジ142は、各色のインクが貯蔵された容器であり、プリンタキャリッジ141に脱着自在に格納される。インクカートリッジ142に貯蔵されたインクは、インク通路を通じて、印刷ヘッド144のノズルに供給される。ガイドロッド143は、プリンタケース121に固定された棒状の部材であり、プリンタキャリッジ141を複合機100の横幅方向に摺動自在に支持する。
【0028】
印刷ヘッド144は、プリンタキャリッジ141の下方に設けられ、インクジェット方式によりインクカートリッジ142から供給されたインクを用紙に定着させる。印刷ヘッド144には、インクを吐出するノズル、インク通路などが備えられている。印刷ヘッド144はプリンタキャリッジ141とともにガイドロッド143の軸方向に往復動する。なお、本実施の形態においてはインクジェット方式の印刷手段を用いているが、レーザなどを用いた静電画像形成方式、昇華方式、インパクト方式などを用いてもよい。
【0029】
プラテン145は、印刷ヘッド144の下方に位置し、上方に平面を有する棒状の部材であり、プリンタケース121に固定されている。プラテン145の上方に形成された平面は、用紙に摺接し、印刷ヘッド144から下方にわずかに離れた位置に用紙を位置決めする。
【0030】
排紙ローラ146は、排紙口140Aの近傍において排紙方向に回転可能に設けられている。排紙ローラ146は、印刷機構部140に設けられたモータなどの駆動により回転することによって、印刷がおこなわれた用紙を引き出し、排紙口140Aからプリンタケース121の外部に排出する。排紙ローラ146によってプリンタケース121の外部に排出された用紙は、プリンタケース121に揺動自在に支持されたスタッカ147の上面に堆積される。
【0031】
操作パネル150は、プリンタケース121の正面側に設けられており、ユーザによって操作されることによって、複合機100に対する画像読み取り処理、印刷処理などの各種の処理要求を受け付ける。操作パネル150には、液晶パネル151、複数の押しボタン152などが設けられている。液晶パネル151には、設定メニュー、操作メニュー、処理状況などが表示される。ユーザは処理要求に応じた押しボタン152を押すことによって、複合機100に対して処理を要求する。
【0032】
なお、図示を省略するが、複合機100は、複合機100が備える各部を駆動制御する制御部を備えている。制御部は、複合機100が備える各部のうち、スキャナ部110を集中的に駆動制御するCPUや、プリンタ部120を集中的に駆動制御するCPU、および、これらのCPUによって実行される各種制御プログラムを記憶するROMやCPUのワークエリアとして機能するRAMなどによって構成されている。制御部は、たとえば、スキャナ部110において読み取られた原稿の画像に対する所定の画像処理をおこなう。
【0033】
図4は、連結機構の外観を示す斜視図(その1)である。つぎに、上述した連結機構について図4を参照して説明する。図4に示すように、連結機構400は、ヒンジ部410と保持部420とを備えている。ヒンジ部410は、TPUユニット112をスキャナケース111に対して回動可能に連結する。保持部420は、TPUユニット112およびスキャナケース111の対向方向に沿って、ヒンジ部410を変位可能に保持する(図8参照)。なお、図4には、たとえば、待機時や厚さの薄い原稿を読み取り対象とする場合における、スキャナケース111およびTPUユニット112の状態が示されている。
【0034】
図5は、ヒンジ部410を示す斜視図である。図5に示すように、ヒンジ部410は、TPUユニット112側に設けられている。ヒンジ部410は、支持部材501と、スライド部材502と、を備えている。支持部材501は、スライド部材502に設けられた軸受け孔503に軸部材(図6参照)を挿入することによって、スライド部材502を回動自在に支持する。
【0035】
図6は、支持部材501を示す斜視図である。図6に示すように、支持部材501は、TPUユニット112に取り付けられており、軸部材601と当接部材602とを備えている。軸部材601は、スキャナケース111に対するTPUユニット112の回動軸芯方向に沿って突出するように設けられている。当接部材602は、スライド部材502に設けられた付勢部材(図7参照)に当接される。
【0036】
図7は、スライド部材502を示す斜視図である。図7においては、図5におけるスライド部材502を、裏面側から見た状態が示されている。図7に示すように、スライド部材502は、長板形状を有しており、スライド部材502の回動面内において、スライド部材502から突出する凸部701を有している。
【0037】
凸部701は、スライド部材502において、軸受け孔503側の1辺を除く3辺を囲むように設けられた切り欠き部702によって形成された弾性部材703の先端部に設けられている。弾性部材703の軸受け孔503側には、上述した当接部材602に当接される付勢部材704が設けられている。付勢部材704は、スライド部材502の回動面に沿った断面形状が、略S字形状となる形状を有している(図9〜図11参照)。
【0038】
図8は、連結機構400の外観を示す斜視図(その2)である。つぎに、保持部420について図8を参照して説明する。図8に示すように、保持部420は、上述したスライド部材502と、スライド部材502をスライド可能に保持するホルダ部材801と、を備えている。ホルダ部材801は、開口部802、803を備えている。開口部802には、スライド部材502が挿入される。
【0039】
ホルダ部材801において開口部803は、スライド部材502における凸部701のスライド軌跡上に設けられている。ここに、凸部701および開口部803によって、規制部としての係合部材が実現されている。なお、図8には、たとえば、辞書などのように厚さの厚い原稿を読み取り対象とする場合における、スキャナケース111およびTPUユニット112の状態が示されている。
【0040】
図9および図10は、保持部420を示す縦断側面図(その1)および(その2)である。ここで、連結機構400の動作について図9および図10を参照して説明する。図9は上述した図4に示した状態の連結機構400を断面した場合の保持部420を示しており、図10は上述した図8に示した状態の連結機構400を断面した場合の保持部420を示している。図4において説明したように、厚さの薄い原稿を読み取り対象とする場合、TPUユニット112は、スキャナケース111に接触した位置に位置づけられる。この場合、図9に示すように、スライド部材502は、ホルダ部材801における開口部802に対して深く挿入された状態となる。
【0041】
また、図8において説明したように、厚さの厚い原稿を読み取り対象とする場合、TPUユニット112は、スキャナケース111およびTPUユニット112の対向方向に沿って、原稿の厚さの分スキャナケース111から離間した位置に位置づけられる。この場合、スライド部材502は、TPUユニット112の位置に応じて、ホルダ部材801中を、スキャナケース111側からTPUユニット112側へ向けてスライドする。
【0042】
この実施の形態においては、スライド部材502に凸部701が設けられており、開口部803が凸部701のスライド軌跡上に設けられているため、スキャナケース111側からTPUユニット112側へ向けたスライド部材502のスライドは、図10に示すように、凸部701が開口部803に引っ掛かる位置において規制される。
【0043】
図11は、保持部420を示す縦断側面図(その3)である。ここで、連結機構400の動作について図11を参照して説明する。この実施の形態においては、図11に示すように、凸部701を、凸部701の突出方向とは反対方向に付勢することにより、付勢部材704を弾性変形させることによって、開口部803に対する凸部701の引っ掛かりを解除することができる。
【0044】
そして、開口部803に対する凸部701の引っ掛かりを解除した後、スライド部材502を、スキャナケース111側からTPUユニット112側へ向けてさらにスライドさせることで、スキャナケース111に対してTPUユニット112を取り外すことができる。付勢部材704は当接部材602に当接されているため、ホルダ部材801から取り外された弾性部材703は、当接部材602からの当接力を受け、自身の弾性力によって図7に示す形状に復帰する。
【0045】
上述したように、この実施の形態によれば、読み取り対象とする原稿の厚さに応じて、保持部420によって保持されるヒンジ部410の位置を、原稿台113に対して変位させることができる。したがって、原稿の厚さに左右されることなく、原稿を原稿台113に対して確実に押し当てることができる。これによって、原稿の厚さに左右されることなく、原稿の画像を正確に読み取ることができる。
【0046】
さらに、この実施の形態によれば、弾性部材703を弾性変形させることによって、開口部803に対する凸部701の引っ掛かりを解除することができる。したがって、スキャナケース111とTPUユニット112とに亘って設けられた給電ケーブルに注意を促した状態で、TPUユニット112を、スキャナケース111から取り外すことができる。これによって、スライド部材502のスライド範囲よりも厚い原稿であっても、給電ケーブルを断線させずに読み取ることができる。
【0047】
ところで、たとえば、スキャナケース111に対するTPUユニット112の着脱を容易な構成とした場合、TPUユニット112を取り外す際に勢いがつき易く、TPUユニット112を勢いよく取り外すことによって給電ケーブルが断線し易くなってしまうという問題があった。これに対し、この実施の形態によれば、スキャナケース111側からTPUユニット112側へ向けたヒンジ部410の変位は、開口部803に凸部701が引っ掛かる位置で規制される。したがって、TPUユニット112がスキャナケース111から勢いよく引き抜かれることを防止することができる。これによって、スライド部材502のスライド範囲よりも厚い原稿であっても、当該原稿の画像を給電ケーブルを断線させずに読み取ることができる。
【0048】
また、この実施の形態によれば、スライド部材502は、開口部803に凸部701が引っ掛かる位置に限ってスライドが規制される。したがって、ホルダ部材801の開口部802に挿入されたスライド部材502は、開口部803に凸部701が引っ掛かるまでの間はスムーズにスライドすることができる。これによって、厚手の原稿を読み取る場合においても、良好な操作性を維持することができる。
【0049】
ここで、この実施の形態によれば、スライド部材502とホルダ部材801とは常に密着している必要はなく、開口部803に凸部701が引っ掛かる位置以外では、スライド部材502とホルダ部材801との間に或る程度の隙間が生じていてもよい。このため、開口部803に凸部701が引っ掛かる位置以外では、ホルダ部材801に対してスライド部材502をスムーズにスライドさせることができるとともに、スライドに際してホルダ部材801に対してスライド部材502が擦れ合うことによって生じる騒音を低減することができる。
【0050】
また、この実施の形態によれば、凸部701および凸部701の移動軌跡上において開口する開口部803によって、凸部701が開口部803に引っ掛かることによってスライド部材502のスライドが規制される。したがって、実用上簡易な構成によって規制部を実現することができる。これによって、連結機構400の製造の容易化を図り、量産性の向上を図ることができる。
【0051】
また、この実施の形態によれば、ヒンジ部410は、支持部材501とスライド部材502とに二体化されている。これによって、スキャナケース111に対してTPUユニット112を回動させる際に擦れ合う部分を少なくして、支持部材501とスライド部材502とが擦れ合うことによって生じる騒音(音鳴き)を低減することができる。また、ヒンジ部410の構成の簡易化を図るとともに、組立て作業の容易化を図ることができる。
【0052】
ここで、スライド部材502およびホルダ部材801を、たとえば、樹脂材料用いて形成する場合、射出成型などを用いて形成することが可能である。これによって、スライド部材502およびホルダ部材801の製造の容易化を図るとともに量産性の向上を図ることができる。
【0053】
また、この実施の形態によれば、スライド部材502がホルダ部材801によって覆われた構成であるため、ホルダ部材801に対するスライド部材502のスライド部分が外部に露出することがない。これによって、外部からの衝撃などから保持部420を保護し、保持部420の強度を維持する効果を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施の形態にかかる複合機の外観を示す斜視図。
【図2】複合機の内部構造を示す縦断側面図。
【図3】ASFユニットおよび印刷機構部を示す縦断側面図。
【図4】連結機構の外観を示す斜視図(その1)。
【図5】ヒンジ部を示す斜視図。
【図6】支持部材を示す斜視図。
【図7】スライド部材を示す斜視図。
【図8】連結機構の外観を示す斜視図(その2)。
【図9】保持部を示す縦断側面図(その1)。
【図10】保持部を示す縦断側面図(その2)。
【図11】保持部を示す縦断側面図(その3)。
【符号の説明】
【0055】
111 第1の部材、112 第2の部材、400 連結機構、410 ヒンジ部、420 保持部、502 スライド部材、801 ホルダ部材
【技術分野】
【0001】
この発明は、連結機構および画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原稿押さえ部材に装着されたヒンジ部材の支持脚を装置本体側の軸穴に挿し込むことにより、装置本体上で原稿押さえ部材を開閉かつ上下動可能に支持してなる画像読取装置において、支持脚の端部に引っ掛け部を設けるとともに、ブラインドカバーの挿入口の一部を突出させてストッパー部を形成し、このストッパー部に引っ掛け部が突き当たることで軸穴から支持脚が抜けないようにした画像読取装置がある(たとえば、下記特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−231163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に記載された技術では、原稿押さえ部材によって押さえることができる原稿の厚さが、原稿押さえ部材の上下動可能な範囲内に制限されてしまうという問題がある。一方で、装置本体に対する原稿押さえ部材の着脱が容易な構成とした場合、原稿の厚さ制限に関する問題を解消することはできるが、原稿押さえ部材を取り外す際に勢いがつき易く、装置本体および原稿押さえ部材に亘って設けられた給電ケーブルが断線し易くなってしまうという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明にかかる連結機構は、対向配置される第1の部材に対して第2の部材を回動可能に連結するヒンジ部と、前記ヒンジ部を前記第1および第2の部材の対向方向に沿って変位可能に保持する保持部と、前記保持部によって保持される前記ヒンジ部の変位範囲を規制する規制部と、を備えることを特徴とする。
【0006】
したがって、第1および第2の部材の間に介在する部材の第1および第2の部材の対向方向に沿った寸法に応じて、保持部材によって保持されるヒンジ部の保持位置を変位させることができる。これによって、第1および第2の部材の間に介在する部材の第1および第2の部材の対向方向に沿った寸法に左右されることなく、当該部材を第1および第2の部材の間に確実に位置させるとともに、ヒンジ部の変位範囲を規制部によって規制することで、第1および第2の部材が不意に分断されることを防止することができる。
【0007】
また、この発明にかかる連結機構における前記保持部は、前記ヒンジ部に連結されたスライド部材と、当該スライド部材を前記対向方向に沿ってスライド可能に保持するホルダ部材とを有し、前記規制部は、前記スライド部材と前記ホルダ部材との間に設けられて、前記第1および第2の部材が所定距離離間する位置において係合する係合部材であることを特徴とする。
【0008】
したがって、第1および第2の部材が所定距離離間する位置においてのみ、ヒンジ部の変位を規制することができる。これによって、第1および第2の部材が所定距離離間するまでの位置におけるヒンジ部の変位を阻害することなく、第1および第2の部材が不意に分断されることを防止することができる。これによって、たとえば、第1および第2の部材に亘って設けられた給電ケーブルの断線を防止することができる。
【0009】
また、この発明にかかる連結機構における前記係合部材は、前記スライド部材に設けられた凸部および前記ホルダ部材において前記凸部の移動軌跡上に設けられた凹部であることを特徴とする。
【0010】
したがって、実用上簡易な構成によってヒンジ部の変位を規制することができる。これによって、連結機構の製造の容易化を図ることができる。
【0011】
また、この発明にかかる画像読取装置は、原稿を支持する原稿台が設けられた本体ハウジングと、前記原稿台に対向配置される原稿カバーと、前記本体ハウジングに対して前記原稿カバーを回動可能に連結するヒンジ部と、前記ヒンジ部を前記本体ハウジングおよび前記原稿カバーの対向方向に沿って変位可能に保持する保持部と、前記保持部によって保持される前記ヒンジ部の変位範囲を規制する規制部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
したがって、読み取り対象とする原稿の厚さに応じて、保持部材によって保持されるヒンジ部の位置を変位させることができる。これによって、原稿の厚さに左右されることなく、原稿を本体ハウジングに対して確実に押し当てるとともに、ヒンジ部の変位範囲を規制部によって規制することで、本体ハウジングに対して原稿カバーが不意に引き抜かれることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる連結機構および画像読取装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。この実施の形態は、この発明にかかる連結機構および画像読取装置を有する複合機への適用例を示す。
【0014】
図1は、この発明の実施の形態にかかる複合機の外観を示す斜視図である。まず、この発明の実施の形態にかかる連結機構および画像読取装置を備えた複合機の外観について図1を参照して説明する。図1に示すように、複合機100は、画像読取装置としてのスキャナ部110と、プリンタ部120と、操作パネル150とを備えている。スキャナ部110は、原稿の画像(図形、テキスト、写真など)を光学的に読み取り、光学的に読み取った画像を光電変換するなどして画像データを生成する。
【0015】
図2は、複合機100の内部構造を示す縦断側面図である。つぎに、複合機100の内部構造について図2を参照して説明する。図2に示すように、スキャナ部110は、スキャナケース111と、透過型原稿用光源ユニット(以下、「TPUユニット」という)112と、原稿保持部としての原稿台113と、スキャナキャリッジ114と、キャリッジガイド115とを備えている。スキャナケース111は、筐体形状を有しており、図示しないヒンジを介して、プリンタケース121に対して回動可能に連結されている。この実施の形態においては、スキャナケース111によって第1の部材が実現されている。スキャナケース111内には、原稿に記載されたデータを光学的に読み取るための各部材が格納されている。
【0016】
TPUユニット112は、原稿台113に載置された原稿を、上方から覆うようにして原稿台113に対して押さえつける。TPUユニット112には、原稿を押さえつける部分に、原稿台113とほぼ同じ大きさの板状の図示しない保護マットが設けられている。TPUユニット112は、連結機構(図4参照)を介して、スキャナケース111に対して回動可能に連結されている。この実施の形態においては、TPUユニット112によって第2の部材が実現されている。
【0017】
原稿台113は、光学的に透明なガラス材料などを用いて形成された板状部材であり、スキャナケース111の上部に形成された図示しない開口部を閉塞するように固定されている。原稿台113には、ユーザによって原稿が載置される。なお、原稿は、紙などを用いた不透過型原稿であっても、透明なフィルムなどを用いた透過型原稿であってもよい。
【0018】
スキャナキャリッジ114は、スキャナケース111の内部に収容されており、原稿の画像を光学的に読み取るための各部材を搭載している。スキャナキャリッジ114は、副走査方向を長手方向として配置されたキャリッジガイド115に沿って往復動可能に設けられている。スキャナキャリッジ114は、たとえば、モータおよびモータに連結された駆動ベルトなどによって構成される図示しない駆動機構によって往復動される。
【0019】
なお、図示を省略するが、スキャナキャリッジ114には、原稿の画像を光学的に読み取るための各部材として、リニアイメージセンサを実装した走査回路基板、レンズ、ミラー、光源などが搭載されている。スキャナキャリッジ114に搭載された光源から原稿に向けて出射された光は、ミラーおよびレンズを介してリニアイメージセンサの受光面に結像される。
【0020】
なお、リニアイメージセンサとは、受光面に結像された光学像を光電変換して、受光素子ごとの受光量に応じた電気信号を出力する素子であり、フォトダイオードなどの受光素子が主走査方向に直線状に並ぶ姿勢で走査回路基板に搭載されることによって形成されている。
【0021】
つぎに、プリンタ部120について説明する。プリンタ部120は、複合機100に対して、ネットワークを介して接続されたPC(パーソナルコンピュータ)などから送信された画像データに基づいて、用紙に画像を形成する。図2に示すように、プリンタ部120は、プリンタケース121と、ASFユニット130と、印刷機構部(図3参照)とによって構成されている。ASFユニット130は、給紙口130Aの近傍に設けられ、給紙ローラ131と、紙支持板132と、給紙板133と、とを備えている。
【0022】
プリンタケース121には、スキャナケース111に向けて開口する開口部121Aが設けられている。開口部121Aは、スキャナケース111をプリンタケース121に対して離反する方向に回動させることによって、露出させることが可能であり、たとえば、スキャナケース111の内部に格納された各部材をメンテナンスする際に露出される。プリンタケース121内には、画像データに基づいて用紙に画像を形成するための各部材が格納されている。
【0023】
図3は、ASFユニット130および印刷機構部を示す縦断側面図である。つぎに、ASFユニット130および印刷機構部について図3を参照して説明する。上述したASFユニット130において、給紙ローラ131は、給紙口130Aの近傍において給紙方向に回転可能にプリンタケース121に軸支されている。給紙ローラ131は、ASFユニット130に設けられたモータまたは図示しないモータからの駆動力を受けて回転することによって、給紙板133により押し出された用紙を給紙口130Aからプリンタケース121の内部に引き込み、後述する印刷ヘッド144とプラテン145との間に搬送する。
【0024】
紙支持板132は、給紙板133の上方に形成された板状の部材であり、紙支持板132の下端に形成されたヒンジによって給紙板133の上端に開閉可能に連結されている。紙支持板132は、図2および図3に示すように、給紙する時には、前面が開放された状態で、給紙板133の前面の傾斜角度と紙支持板132の前面の傾斜角度とが一致する位置に係止される。紙支持板132は、用紙束122の背面を支持する。
【0025】
紙支持板132は、給紙しない時には、紙支持板132の下端に形成されたヒンジを軸にして、複合機100の正面側に向かって折り畳むことができる。このように折り畳まれた紙支持板132は、紙支持板132の上方の前面が、TPUユニット112と当接することによって係止され、これによって、給紙口130Aにつながる空間が閉塞される。給紙板133は、用紙束122を給紙口130Aに供給できる位置に設けられた板状の部材であり、用紙束122を保持する。給紙板133は、モータの回転に伴って揺動し、用紙束122の下端を給紙口130A側に押し出すことによって、給紙口130Aに用紙を滑り落とす。
【0026】
印刷機構部140は、プリンタキャリッジ141、インクカートリッジ142、ガイドロッド143、印刷ヘッド144、プラテン145、排紙ローラ146、スタッカ147などを備えている。プリンタキャリッジ141は、内部にインクカートリッジ142を脱着自在に格納する。プリンタキャリッジ141は、印刷機構部140に設けられたモータによって駆動されるベルトによって係止されており、モータの回転に伴って、ベルトを介してガイドロッド143に支持されながらガイドロッド143の軸方向に往復動する。
【0027】
インクカートリッジ142は、各色のインクが貯蔵された容器であり、プリンタキャリッジ141に脱着自在に格納される。インクカートリッジ142に貯蔵されたインクは、インク通路を通じて、印刷ヘッド144のノズルに供給される。ガイドロッド143は、プリンタケース121に固定された棒状の部材であり、プリンタキャリッジ141を複合機100の横幅方向に摺動自在に支持する。
【0028】
印刷ヘッド144は、プリンタキャリッジ141の下方に設けられ、インクジェット方式によりインクカートリッジ142から供給されたインクを用紙に定着させる。印刷ヘッド144には、インクを吐出するノズル、インク通路などが備えられている。印刷ヘッド144はプリンタキャリッジ141とともにガイドロッド143の軸方向に往復動する。なお、本実施の形態においてはインクジェット方式の印刷手段を用いているが、レーザなどを用いた静電画像形成方式、昇華方式、インパクト方式などを用いてもよい。
【0029】
プラテン145は、印刷ヘッド144の下方に位置し、上方に平面を有する棒状の部材であり、プリンタケース121に固定されている。プラテン145の上方に形成された平面は、用紙に摺接し、印刷ヘッド144から下方にわずかに離れた位置に用紙を位置決めする。
【0030】
排紙ローラ146は、排紙口140Aの近傍において排紙方向に回転可能に設けられている。排紙ローラ146は、印刷機構部140に設けられたモータなどの駆動により回転することによって、印刷がおこなわれた用紙を引き出し、排紙口140Aからプリンタケース121の外部に排出する。排紙ローラ146によってプリンタケース121の外部に排出された用紙は、プリンタケース121に揺動自在に支持されたスタッカ147の上面に堆積される。
【0031】
操作パネル150は、プリンタケース121の正面側に設けられており、ユーザによって操作されることによって、複合機100に対する画像読み取り処理、印刷処理などの各種の処理要求を受け付ける。操作パネル150には、液晶パネル151、複数の押しボタン152などが設けられている。液晶パネル151には、設定メニュー、操作メニュー、処理状況などが表示される。ユーザは処理要求に応じた押しボタン152を押すことによって、複合機100に対して処理を要求する。
【0032】
なお、図示を省略するが、複合機100は、複合機100が備える各部を駆動制御する制御部を備えている。制御部は、複合機100が備える各部のうち、スキャナ部110を集中的に駆動制御するCPUや、プリンタ部120を集中的に駆動制御するCPU、および、これらのCPUによって実行される各種制御プログラムを記憶するROMやCPUのワークエリアとして機能するRAMなどによって構成されている。制御部は、たとえば、スキャナ部110において読み取られた原稿の画像に対する所定の画像処理をおこなう。
【0033】
図4は、連結機構の外観を示す斜視図(その1)である。つぎに、上述した連結機構について図4を参照して説明する。図4に示すように、連結機構400は、ヒンジ部410と保持部420とを備えている。ヒンジ部410は、TPUユニット112をスキャナケース111に対して回動可能に連結する。保持部420は、TPUユニット112およびスキャナケース111の対向方向に沿って、ヒンジ部410を変位可能に保持する(図8参照)。なお、図4には、たとえば、待機時や厚さの薄い原稿を読み取り対象とする場合における、スキャナケース111およびTPUユニット112の状態が示されている。
【0034】
図5は、ヒンジ部410を示す斜視図である。図5に示すように、ヒンジ部410は、TPUユニット112側に設けられている。ヒンジ部410は、支持部材501と、スライド部材502と、を備えている。支持部材501は、スライド部材502に設けられた軸受け孔503に軸部材(図6参照)を挿入することによって、スライド部材502を回動自在に支持する。
【0035】
図6は、支持部材501を示す斜視図である。図6に示すように、支持部材501は、TPUユニット112に取り付けられており、軸部材601と当接部材602とを備えている。軸部材601は、スキャナケース111に対するTPUユニット112の回動軸芯方向に沿って突出するように設けられている。当接部材602は、スライド部材502に設けられた付勢部材(図7参照)に当接される。
【0036】
図7は、スライド部材502を示す斜視図である。図7においては、図5におけるスライド部材502を、裏面側から見た状態が示されている。図7に示すように、スライド部材502は、長板形状を有しており、スライド部材502の回動面内において、スライド部材502から突出する凸部701を有している。
【0037】
凸部701は、スライド部材502において、軸受け孔503側の1辺を除く3辺を囲むように設けられた切り欠き部702によって形成された弾性部材703の先端部に設けられている。弾性部材703の軸受け孔503側には、上述した当接部材602に当接される付勢部材704が設けられている。付勢部材704は、スライド部材502の回動面に沿った断面形状が、略S字形状となる形状を有している(図9〜図11参照)。
【0038】
図8は、連結機構400の外観を示す斜視図(その2)である。つぎに、保持部420について図8を参照して説明する。図8に示すように、保持部420は、上述したスライド部材502と、スライド部材502をスライド可能に保持するホルダ部材801と、を備えている。ホルダ部材801は、開口部802、803を備えている。開口部802には、スライド部材502が挿入される。
【0039】
ホルダ部材801において開口部803は、スライド部材502における凸部701のスライド軌跡上に設けられている。ここに、凸部701および開口部803によって、規制部としての係合部材が実現されている。なお、図8には、たとえば、辞書などのように厚さの厚い原稿を読み取り対象とする場合における、スキャナケース111およびTPUユニット112の状態が示されている。
【0040】
図9および図10は、保持部420を示す縦断側面図(その1)および(その2)である。ここで、連結機構400の動作について図9および図10を参照して説明する。図9は上述した図4に示した状態の連結機構400を断面した場合の保持部420を示しており、図10は上述した図8に示した状態の連結機構400を断面した場合の保持部420を示している。図4において説明したように、厚さの薄い原稿を読み取り対象とする場合、TPUユニット112は、スキャナケース111に接触した位置に位置づけられる。この場合、図9に示すように、スライド部材502は、ホルダ部材801における開口部802に対して深く挿入された状態となる。
【0041】
また、図8において説明したように、厚さの厚い原稿を読み取り対象とする場合、TPUユニット112は、スキャナケース111およびTPUユニット112の対向方向に沿って、原稿の厚さの分スキャナケース111から離間した位置に位置づけられる。この場合、スライド部材502は、TPUユニット112の位置に応じて、ホルダ部材801中を、スキャナケース111側からTPUユニット112側へ向けてスライドする。
【0042】
この実施の形態においては、スライド部材502に凸部701が設けられており、開口部803が凸部701のスライド軌跡上に設けられているため、スキャナケース111側からTPUユニット112側へ向けたスライド部材502のスライドは、図10に示すように、凸部701が開口部803に引っ掛かる位置において規制される。
【0043】
図11は、保持部420を示す縦断側面図(その3)である。ここで、連結機構400の動作について図11を参照して説明する。この実施の形態においては、図11に示すように、凸部701を、凸部701の突出方向とは反対方向に付勢することにより、付勢部材704を弾性変形させることによって、開口部803に対する凸部701の引っ掛かりを解除することができる。
【0044】
そして、開口部803に対する凸部701の引っ掛かりを解除した後、スライド部材502を、スキャナケース111側からTPUユニット112側へ向けてさらにスライドさせることで、スキャナケース111に対してTPUユニット112を取り外すことができる。付勢部材704は当接部材602に当接されているため、ホルダ部材801から取り外された弾性部材703は、当接部材602からの当接力を受け、自身の弾性力によって図7に示す形状に復帰する。
【0045】
上述したように、この実施の形態によれば、読み取り対象とする原稿の厚さに応じて、保持部420によって保持されるヒンジ部410の位置を、原稿台113に対して変位させることができる。したがって、原稿の厚さに左右されることなく、原稿を原稿台113に対して確実に押し当てることができる。これによって、原稿の厚さに左右されることなく、原稿の画像を正確に読み取ることができる。
【0046】
さらに、この実施の形態によれば、弾性部材703を弾性変形させることによって、開口部803に対する凸部701の引っ掛かりを解除することができる。したがって、スキャナケース111とTPUユニット112とに亘って設けられた給電ケーブルに注意を促した状態で、TPUユニット112を、スキャナケース111から取り外すことができる。これによって、スライド部材502のスライド範囲よりも厚い原稿であっても、給電ケーブルを断線させずに読み取ることができる。
【0047】
ところで、たとえば、スキャナケース111に対するTPUユニット112の着脱を容易な構成とした場合、TPUユニット112を取り外す際に勢いがつき易く、TPUユニット112を勢いよく取り外すことによって給電ケーブルが断線し易くなってしまうという問題があった。これに対し、この実施の形態によれば、スキャナケース111側からTPUユニット112側へ向けたヒンジ部410の変位は、開口部803に凸部701が引っ掛かる位置で規制される。したがって、TPUユニット112がスキャナケース111から勢いよく引き抜かれることを防止することができる。これによって、スライド部材502のスライド範囲よりも厚い原稿であっても、当該原稿の画像を給電ケーブルを断線させずに読み取ることができる。
【0048】
また、この実施の形態によれば、スライド部材502は、開口部803に凸部701が引っ掛かる位置に限ってスライドが規制される。したがって、ホルダ部材801の開口部802に挿入されたスライド部材502は、開口部803に凸部701が引っ掛かるまでの間はスムーズにスライドすることができる。これによって、厚手の原稿を読み取る場合においても、良好な操作性を維持することができる。
【0049】
ここで、この実施の形態によれば、スライド部材502とホルダ部材801とは常に密着している必要はなく、開口部803に凸部701が引っ掛かる位置以外では、スライド部材502とホルダ部材801との間に或る程度の隙間が生じていてもよい。このため、開口部803に凸部701が引っ掛かる位置以外では、ホルダ部材801に対してスライド部材502をスムーズにスライドさせることができるとともに、スライドに際してホルダ部材801に対してスライド部材502が擦れ合うことによって生じる騒音を低減することができる。
【0050】
また、この実施の形態によれば、凸部701および凸部701の移動軌跡上において開口する開口部803によって、凸部701が開口部803に引っ掛かることによってスライド部材502のスライドが規制される。したがって、実用上簡易な構成によって規制部を実現することができる。これによって、連結機構400の製造の容易化を図り、量産性の向上を図ることができる。
【0051】
また、この実施の形態によれば、ヒンジ部410は、支持部材501とスライド部材502とに二体化されている。これによって、スキャナケース111に対してTPUユニット112を回動させる際に擦れ合う部分を少なくして、支持部材501とスライド部材502とが擦れ合うことによって生じる騒音(音鳴き)を低減することができる。また、ヒンジ部410の構成の簡易化を図るとともに、組立て作業の容易化を図ることができる。
【0052】
ここで、スライド部材502およびホルダ部材801を、たとえば、樹脂材料用いて形成する場合、射出成型などを用いて形成することが可能である。これによって、スライド部材502およびホルダ部材801の製造の容易化を図るとともに量産性の向上を図ることができる。
【0053】
また、この実施の形態によれば、スライド部材502がホルダ部材801によって覆われた構成であるため、ホルダ部材801に対するスライド部材502のスライド部分が外部に露出することがない。これによって、外部からの衝撃などから保持部420を保護し、保持部420の強度を維持する効果を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施の形態にかかる複合機の外観を示す斜視図。
【図2】複合機の内部構造を示す縦断側面図。
【図3】ASFユニットおよび印刷機構部を示す縦断側面図。
【図4】連結機構の外観を示す斜視図(その1)。
【図5】ヒンジ部を示す斜視図。
【図6】支持部材を示す斜視図。
【図7】スライド部材を示す斜視図。
【図8】連結機構の外観を示す斜視図(その2)。
【図9】保持部を示す縦断側面図(その1)。
【図10】保持部を示す縦断側面図(その2)。
【図11】保持部を示す縦断側面図(その3)。
【符号の説明】
【0055】
111 第1の部材、112 第2の部材、400 連結機構、410 ヒンジ部、420 保持部、502 スライド部材、801 ホルダ部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置される第1の部材に対して第2の部材を回動可能に連結するヒンジ部と、
前記ヒンジ部を前記第1および第2の部材の対向方向に沿って変位可能に保持する保持部と、
前記保持部によって保持される前記ヒンジ部の変位範囲を規制する規制部と、
を備えることを特徴とする連結機構。
【請求項2】
前記保持部は、
前記ヒンジ部に連結されたスライド部材と、当該スライド部材を前記対向方向に沿ってスライド可能に保持するホルダ部材とを有し、
前記規制部は、
前記スライド部材と前記ホルダ部材との間に設けられて、前記第1および第2の部材が所定距離離間する位置において係合する係合部材であることを特徴とする請求項1に記載の連結機構。
【請求項3】
前記係合部材は、
前記スライド部材に設けられた凸部および前記ホルダ部材において前記凸部の移動軌跡上に設けられた凹部であることを特徴とする請求項2に記載の連結機構。
【請求項4】
原稿を支持する原稿台が設けられた本体ハウジングと、
前記原稿台に対向配置される原稿カバーと、
前記本体ハウジングに対して前記原稿カバーを回動可能に連結するヒンジ部と、
前記ヒンジ部を前記本体ハウジングおよび前記原稿カバーの対向方向に沿って変位可能に保持する保持部と、
前記保持部によって保持される前記ヒンジ部の変位範囲を規制する規制部と、
を備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項1】
対向配置される第1の部材に対して第2の部材を回動可能に連結するヒンジ部と、
前記ヒンジ部を前記第1および第2の部材の対向方向に沿って変位可能に保持する保持部と、
前記保持部によって保持される前記ヒンジ部の変位範囲を規制する規制部と、
を備えることを特徴とする連結機構。
【請求項2】
前記保持部は、
前記ヒンジ部に連結されたスライド部材と、当該スライド部材を前記対向方向に沿ってスライド可能に保持するホルダ部材とを有し、
前記規制部は、
前記スライド部材と前記ホルダ部材との間に設けられて、前記第1および第2の部材が所定距離離間する位置において係合する係合部材であることを特徴とする請求項1に記載の連結機構。
【請求項3】
前記係合部材は、
前記スライド部材に設けられた凸部および前記ホルダ部材において前記凸部の移動軌跡上に設けられた凹部であることを特徴とする請求項2に記載の連結機構。
【請求項4】
原稿を支持する原稿台が設けられた本体ハウジングと、
前記原稿台に対向配置される原稿カバーと、
前記本体ハウジングに対して前記原稿カバーを回動可能に連結するヒンジ部と、
前記ヒンジ部を前記本体ハウジングおよび前記原稿カバーの対向方向に沿って変位可能に保持する保持部と、
前記保持部によって保持される前記ヒンジ部の変位範囲を規制する規制部と、
を備えることを特徴とする画像読取装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−88681(P2007−88681A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−273418(P2005−273418)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]