説明

連続エンボス機およびそれを用いたエンボス方法

【課題】建材や家具などの化粧シートの表面への凹凸装飾パターン(エンボス)付与技術、および偽造防止向けの意匠性の高いエンボスホログラムパターン付与技術における、エンボスパターンと絵柄の同調におけるエンボス寸法・見当の修整方法およびそれを実現できる連続エンボス機を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂フイルム16の搬送方向に、マーク印刷機4、加熱装置5、凹凸付与版6、マーク位置検出器8、テンション調節ロール9、冷却装置10を備えた連続エンボス機を用いて、前記熱可塑性樹脂フイルム16が、加熱状態において凹凸形状パターンを付与された後、前記熱可塑性樹脂フイルム16の右側か、左側が伸ばされて凹凸形状パターンが崩れ始めるのを検知して、元の凹凸形状パターンに修整することができるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建材や家具などの化粧シートの表面への凹凸装飾パターン(エンボス)付与技術、または偽造防止向けの意匠性の高いエンボスホログラムパターン付与技術などにおける、エンボスパターンと絵柄の同調に関した連続エンボス機およびそれを用いたエンボス寸法修整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷絵柄とエンボスが同調した化粧シートに関しては、図5の(a)のような平板プレス式のエンボス装置を使用するものがある。
【0003】
下熱盤(29c)の上に、印刷絵柄(31)が設けられた転写シート(32)を載置し、その上に透明プラスチツクシート(30)を載置し、上熱盤(29b)のエンボス型(29a)の寸法とほぼ同一寸法の印刷絵柄(31)が設けられた転写シート(32)の上に、透明プラスチツクシート(30)を載置する。
【0004】
エンボス型(29a)と転写シート(32)の印刷絵柄(31)との見当を合せ、透明プラスチツクシート(30)の上側からエンボス型(29a)を当接し加圧することにより、図5の(b)ように、透明プラスチツクシート(30)の下面に印刷絵柄(31)を転写するのと同時に透明プラスチツクシート(30)の上面に、印刷絵柄(31)と同調したエンボス(29a)を設ける絵柄同調エンボスシートの製造方法(特許文献1)が知られている。
【0005】
しかしながら、上記の平板プレス式のエンボス装置による絵柄同調エンボスシートの製造方法においては、エンボス型の寸法とほぼ同一寸法の印刷絵柄が設けられた転写シートを製造しなければならず、そのような転写シートを製造するには寸法安定性の優れた厚い転写シート基材を使用する必要がありコスト高になる上に、エンボス型寸法とほぼ同一寸法の印刷絵柄を印刷により設けることは技術的に極めて難しいという問題がある。
【0006】
更に、手作業によりエンボス型と上記転写シートの印刷絵柄の見当を合せてエンボス装置にセツトする必要がある。そのため、転写シートが高価なものになる上に、手作業による製造のため非常に作業性が悪く大量生産に向かないという欠点があつた。
【0007】
上記の平板プレス式による絵柄同調エンボス化粧シートの製造に代る連続エンボスの方法として、図6のようにロール状の透明プラスチツクシート(38)とロール状の転写シート(32)を使用して透明プラスチツクシート(38)の片面に絵柄印刷層(31)を転写すると同時に、該透明プラスチツクシート(38)の他面に前記絵柄印刷層(31)に同調したエンボスを施す絵柄同調エンボス方法(特許文献2)がある。
【0008】
特許文献2の方法は、エンボスピツチより小さい絵柄印刷ピツチで絵柄印刷層(31)が設けられた転写シート(32)を使用し、該転写シート(32)の該絵柄印刷層の設けられている面に透明プラスチツクシート(38)を重ね合わせ、エンボスロール(37)と加圧ロール(36)間で加圧することにより、連続的に前記透明プラスチツクシートの一方の面に前記絵柄印刷層を転写すると同時に他方の面に前記絵柄印刷層に同調したエンボスを施すに際して、エンボス工程の手前で、前記転写シート(32)にかかるテンシヨンを調節することにより転写シート(32)の送りスピードを変化させて、前記絵柄印刷層(31)とエンボス版(37)を同調させることを特徴とする化粧シートの製造方法である。
【0009】
前記特許文献2の方法は、絵柄転写同調エンボス方法において、絵柄(31)とエンボス版(37)の見当制御装置(34)として、グラビア輪転印刷における印刷見当の調整に使用する自動見当制御装置を使用し、エンボス版(37)に取付けたエンコーダからの信号により見当マーク検知器(40)のゲートを開いて、絵柄見当マークとエンボス見当マークとの位置ズレを検知してそのデータを転写シートのテンション制御装置(34)にフイードバツクして絵柄とエンボスの見当を合わせる方法をとっている。
【0010】
しかしながら、熱可塑性の前記透明プラスチツクシートに転写シートを使用して高温で加圧して絵柄印刷層(31)の転写およびエンボスを行うために、絵柄同調エンボスシートが完全に冷却(39)されるまでの間で寸法変化が生じ、絵柄同調エンボスシートの寸法にバラツキが生じるために、エンボス版に取付けたエンコーダからの信号に同期させて見当マーク検知器のゲートを開いて見当マークを検知しようとしても、見当マーク検知器のゲートが開いた時点で、絵柄見当マーク及びエンボス見当マークが見当マーク検知器の視野内に納まらないことがあって絵柄見当マークとエンボス見当マークを確実に検知することができず、正確に絵柄とエンボスを同調させることができないという問題が発生する欠点があつた。
【0011】
これは、多色印刷機の柄合せの自動見当調整装置、見当マーク検知器をそのままフイルムエンボスとの柄同調に適用しようとしたことによる不適合と思われる。
【0012】
また、前記特許文献2の方法は、エンボスの前にテンシヨンを調節しており、転写シート上の絵柄とエンボス型はエンボス工程においては、同調、一致する可能性は、出てくるが、加熱エンボスされたあとは、テンシヨンの調節が行われないので、絵柄同調エンボスシートは蓄熱状態の間、右や左に伸びが生じて、エンボス寸法や絵柄寸法が崩れてくるという同調とは別の問題も生じているのである。
【0013】
すなわち、従来、熱エンボスが可能なフイルムとして、熱可塑性樹脂フイルムが用いられているが、エンボス形状付与のみの場合は、未延伸の熱可塑性樹脂フイルムで問題はないが、エンボス形状と、印刷柄を合わせる上記の柄同調の分野においては、未延伸の熱可塑性樹脂フイルムは、加熱状態でテンションを受けると数100%も伸びてしまうため、後の印刷工程において、印刷柄との同調が非常に困難となる。
【0014】
そのため、二軸延伸の熱可塑性樹脂フイルムが、用いられるが、二軸延伸の熱可塑性樹脂フイルムでも、連続熱エンボスの場合は、加熱エンボス工程の後、巻き取られる過程でテンションを受けるため、右側か、左側に伸びる傾向がある。
【0015】
これは、二軸延伸の熱可塑性樹脂フイルムの製造段階の延伸工程において、幅方向の中心より、右下がりと左下がりに、分かれて熱可塑性樹脂フイルムが延伸配向していくため、それが熱履歴、テンション履歴として、熱可塑性樹脂フイルムに残留しており、再び加熱を受けると、その履歴に基づき、膨張や収縮が起こる。
【0016】
すなわち、連続熱エンボスを受けると、加熱装置とエンボス工程を終えた熱可塑性樹脂フイルムは、巻き取られるまでの間、まだ二軸延伸熱可塑性樹脂フイルムに加熱の際の熱が残っている間に、テンションを受けると、右側か、左側に伸びてしまい、二軸延伸熱可塑性樹脂フイルムのエンボス形状・寸法が崩れてしまうという問題が生じるものである。
【0017】
崩れてしまった二軸延伸熱可塑性樹脂フイルム上のエンボス形状・寸法を、次の印刷工程で、崩れる前のエンボス形状・寸法とほぼ同寸法の印刷柄と合わせることは至難のわざという更なる問題が生じるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開平6−238828号
【特許文献2】特開平6−297570号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、従来技術の問題を解決するためになされたものであり、熱可塑性樹脂フイルムに、加熱状態において凹凸形状を付与する連続エンボス機において、熱可塑性樹脂フイルムが、加熱装置とエンボス工程を終えた後、巻き取られるまでの間、まだ熱可塑性樹脂フイルムに加熱の際の熱が残っている間に、テンションを受けて、一旦は右側か、左側に熱可塑性樹脂フイルムが伸び始まっても、すぐにそれを検知し、エンボス形状・寸法の崩れを修整し、次の印刷工程で、印刷柄とマッチングできるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
第一の発明は、図1の(a)のように、巻き出し装置(2)から巻き出された熱可塑性フィルム(16)を連続的に搬送しながら、前記熱可塑性フィルム(16)に凹凸形状を付与する連続エンボス機において、前記熱可塑性フィルム(16)の搬送方向(26)に沿って、順番に、前記巻き出し装置(2)、熱可塑性フィルム(16)に凹凸形状を付与する熱エンボス装置(5)(6)、テンション調節ロール(9)を配置して構成され、
前記テンション調節ロール(9)の片方の端部が固定され、他方の端部が上下又は左右に可動であることを特徴とする連続エンボス機である。
【0021】
第二の発明は、前記巻き出し装置(2)と熱エンボス装置(5)(6)との間に2台以上のマーク印刷機(4)が配置されており、2台以上の前記マーク印刷機(4)は、それぞれ、熱可塑性フィルム(16)の前記搬送方向(26)に直交する左右方向の両側端部のそれぞれに位置しており、かつ、2台以上の前記マーク印刷機(4)を前記搬送方向(26)に投影したとき、これらが同じ位置に位置していることを特徴とする第一の発明に記載の連続エンボス機である。
【0022】
第三の発明は、図1の(a)のように、前記熱エンボス装置(5)(6)とテンション調節ロール(9)との間に2台以上のマーク位置検出機(8)が配置されており、2台以上の前記マーク位置検出機(8)は、それぞれ、熱可塑性フィルム(16)の前記搬送方向(26)に直交する左右方向の両側端部のそれぞれに位置しており、かつ、2台以上の前記マーク位置検出機(8)を前記搬送方向(26)に投影したとき、これらが同じ位置に位置していることを特徴とする第二の発明に記載の連続エンボス機である。
【0023】
第四の発明は、図1の(a)のように、前記熱エンボス装置(5)(6)が加熱装置(5)と凹凸付与板(6)とで構成され、前記熱可塑性フィルム(16)の搬送方向(26)に沿って、加熱装置(5)、凹凸付与板(6)の順序で配置されていることを特徴とする第一の発明〜第三の発明のいずれかに記載の連続エンボス機である。
【0024】
第五の発明は、図1の(a)のように、前記凹凸付与板(6)が円筒形の形状を有しており、かつ、内部から加熱できる機構を有していることを特徴とする第四の発明に記載の連続エンボス機である。
【0025】
第六の発明は、第一の発明〜第五の発明のいずれかに記載の連続エンボス機を使用して熱可塑性フィルム(16)に凹凸形状を付与する連続エンボス方法において、前記熱可塑
性フィルム(16)を加熱した状態で凹凸形状を付与する工程と、凹凸形状の付与された熱可塑性フィルム(16)の左右方向の両側端部のうち、いずれか一方の側端部が他方の側端部より伸びた場合、前記テンション調節ロール(9)の両端部のうち可動状態の端部を移動させて、前記熱可塑性フィルム(16)の伸びが均等になるように修正する工程とを備えることを特徴とする連続エンボス方法である。
【発明の効果】
【0026】
第一の発明は、図1の(a)のように、前記熱可塑性フィルム(16)の搬送方向(26)に沿って、順番に、前記巻き出し装置(2)、熱可塑性フィルム(16)に凹凸形状を付与する熱エンボス装置(5)(6)、テンション調節ロール(9)を配置して構成され、前記テンション調節ロール(9)の片方の端部が固定され、他方の端部が上下又は左右に可動である連続エンボス機を用いることによって、熱エンボス装置(5)(6)を通過して、凹凸形状を付与・成型された前記熱可塑性樹脂フイルム(16)が、テンションを受けて、図2の(a)、(b)のように、巻き取られる過程で、前記熱可塑性樹脂フイルム(16)が右側か、左側かに伸び始めて凹凸形状が崩れ始めるのを図3の(a)、(b)のように、前記熱可塑性樹脂フイルム(16)の伸びが均等になるように修正できる効果を有するものである。
【0027】
第二の発明は、前記マーク印刷機(4)によって、図2の(a)、(b)のように、前記熱可塑性樹脂フイルム(16)の両端部に凹凸形状パターンの先頭部、尾部を表わすマーク(22)を印刷しておき、前記熱可塑性樹脂フイルム(16)が、前記熱エンボス装置(5)(6)を通過した後に、それらのマークの位置を検知することによって、前記熱可塑性樹脂フイルムの左右のどちらが、どれだけ伸びてしまったかを認識できる効果を有するものである。
【0028】
通常、前記熱可塑性樹脂フイルムは透明か、半透明な場合が多く、透明か、半透明なフイルム上に付いた凹凸形状パターンの位置を検知することは非常に困難であるため、第二の発明により、これを解決したものである。
【0029】
第三の発明は、前記マーク位置検出機(8)によって、図2の(a)、(b)のように、前記熱エンボス装置(5)(6)を通過してきた前記熱可塑性樹脂フイルム(16)の前記凹凸形状パターン(14)、(17)の先頭部、尾部を表わすマーク(22)の位置を検知することができる、これによって、前記熱可塑性樹脂フイルム(16)の左右のどちらが、どれだけのびてしまったかを認識できる効果を有するものである。
【0030】
第四の発明は、図1の(a)のように、前記熱エンボス装置(5)(6)を、前記熱可塑性フィルム(16)の搬送方向(26)に沿って、加熱装置(5)、凹凸付与板(6)の順序で配置することによって、加熱装置(5)によって前記熱可塑性樹脂フイルム(16)全体をムラなく均一に加熱することができ、次の凹凸付与板(6)によって、均一な凹凸形状パターンが得られる効果を有するものである。
【0031】
第五の発明は、図1の(a)のように、この凹凸付与板(6)が円筒形の形状を有しており、かつ、内部から加熱できる機構にしたことによって、前記凹凸付与版(6)の前に設けた前記加熱装置(5)だけでは前記熱可塑性樹脂フイルム(16)を所望の温度まで上昇させることが不十分な場合や、加工速度を上げる場合や、前記熱可塑性樹脂フイルム(16)の裏面からも加熱したい場合に対応できる効果を有するものである。
【0032】
また、第五の発明によって、加工速度が上がり、高能率が得られるようになり、また、前記熱可塑性樹脂フイルム(16)の片面だけの加熱ではなく、同フイルム全体の温度を高くすることができるため、深く、シャープな凹凸形状が、しかも短時間に得られる効果
を有するものである。
【0033】
第六の発明は、第一の発明〜第五の発明のいずれかに記載の連続エンボス機を使用して熱可塑性フィルム(16)に凹凸形状を付与する連続エンボス方法であって、前記熱可塑性フィルム(16)を加熱した状態で凹凸形状を付与する工程と、凹凸形状の付与された熱可塑性フィルム(16)の左右方向の両側端部のうち、いずれか一方の側端部が他方の側端部より伸びた場合、前記テンション調節ロール(9)の両端部のうち可動状態の端部を移動させて、前記熱可塑性フィルム(16)の伸びが均等になるように修正することができる効果を有するものである。
【0034】
すなわち第六の発明は、図4の(a)、(b)のように、前記テンション調節ロール(9)の片方の端部(27)を、前記連続エンボス機の前記熱可塑性樹脂フイルム(16)の搬送方向(26)の、片方の側端部に固定し、前記テンション調節ロール(9)のもう一方の端部(28)を、前記連続エンボス機の前記熱可塑性樹脂フイルム(16)の搬送方向(26)の、もう一方の側端部において上(24)下(25)左右に一定の角度をもって可動できるようにしたことによって、それを用いて、前記熱可塑性樹脂フイルム(16)のテンションを調整し、図2の(a)、(b)のように、前記熱エンボス装置(5)(6)を通過してきた前記熱可塑性樹脂フイルム(16)の右側か、左側かのいずれかに伸び始まった凹凸形状パターンの崩れを、図3の(b)のように修正することができる効果を有するものである。
【0035】
一方、第六の発明は、二軸延伸熱可塑性樹脂フイルムに潜在的に、残っている二軸延伸工程での、熱冷却履歴による偏った樹脂分子の延伸配向(フイルムの幅方向の中心より、右下がりと左下がりに、分かれて熱可塑性樹脂フイルムが延伸配向していくため)があるため、再度加熱を受け、テンションを受けると、均一に伸びないで、フイルムの右側か、左側に伸び始めることになる、という二軸延伸熱可塑性樹脂フイルムが抱えている本質的な、エンボス用途への不適合材質問題を解決できる効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1の(a)は本発明の連続エンボス機の断面模式図である。図1の(b)は、本発明の前記熱可塑性樹脂フイルム上の凹凸形状パターンと印刷柄層の断面略図である。
【図2】図2の(a)は前記熱可塑性樹脂フイルム上の凹凸形状パターンが右側に伸びたときの平面模式図である。図2の(b)は前記熱可塑性樹脂フイルム上の凹凸形状パターンが左側に伸びたときの平面模式図である。
【図3】図3の(a)は、前記熱可塑性樹脂フイルム上の凹凸形状パターンと印刷柄が水平に形成されずにずれた場合の平面模式図である。図3の(b)は、前記熱可塑性樹脂フイルム上の凹凸形状パターンと印刷柄が水平に形成された場合の平面模式図である。
【図4】図4の(a)は、本発明の前記テンション調整ロールを上下に動かした場合の図を表している。図4の(b)は、前記テンション調整ロールの調整可能な位置をBとAの位置に動かした場合の断面模式図である。
【図5】図5は、特許文献1に係る平盤式のシートタイプの柄同調の断面模式図である。
【図6】図6は、特許文献2に係る連続ロールタイプの柄転写同調の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の前記熱可塑性樹脂フイルムとしては、単層フイルムでも、多層フイルムでも使用できるが、凹凸形状パターンを設ける層としては、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフイルム、二軸延伸ナイロンフイルム、二軸延伸ポリプロピレンフイルム、ポリアクリル樹脂フイルム等が使用できるが、25ミクロン以上の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフイルムが、耐熱性、寸法安定性の点で優れており、好ましく使用できる。
【0038】
図1の(b)のように、多層フイルム(16)としては、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフイルム(12)にアクリル樹脂コート層(13)を設けたものや、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフイルムの裏面に、アルミニウムを蒸着した二軸延伸ポリプロピレンフイルムを積層したものや、アルミニウムを蒸着した紙を積層したものなどが、使用できる。
【0039】
本発明の前記マーク印刷機(4)としては、グラビア印刷機、オフセット印刷機、フレキソ印刷機、活版印刷機、インキジェット印刷機などの印刷機が使用できるが、使用するインキとしては、耐熱性のある顔料インキが好ましく使用できる。
【0040】
本発明の前記加熱装置(5)としては、赤外線ヒーター、遠赤外線ヒーター、ガス炉、重油、軽油ヒーター、高熱熱風、または電気炉など、250℃くらいまで炉内のフイルムを加熱できるものであれば、特に限定はなく、使用できる。
【0041】
本発明の前記凹凸付与版(6)としては、金属製の円筒形で、かつ内部より加熱できる機構を有するものが使用でき、内部の加熱は、ガスタイプ、熱湯タイプ、または熱媒油タイプなどが使用できる。
【0042】
本発明の前記テンション調整ロール(9)としては、金属ロールでも、耐熱コムロールでも使用可能であるが、前記テンション調整ロールの片側は、前記連続エンボス機の前記熱可塑性樹脂フイルム(16)の搬送方向(26)の、片側端部に固定されており、もう一方は、同エンボス機のもう一方の側端部において、固定されてなく、上下左右にある一定の角度で可動である。
【0043】
図2は従来の単なるガイドロールの場合(つまり、前記テンション調整ロールを用いて調整しない場合)における、凹凸形状パターンが右か、左にずれていく状態を表している。
【0044】
図4の(a)は、本発明の前記テンション調整ロールを上下に動かした場合の図を表しており、右側が伸びる特性を有したフイルムの場合には、前記テンション調整ロールの調整可能な位置を図4の(a)のBの位置とすることで、フイルムの右側の片伸びを抑制でき、凹凸形状パターンの位置が、図3の(b)ように、フイルムの左右で均一になる方向へ修正できる。
【0045】
フイルムの左側が伸びる特性を有したフイルムの場合には、前記テンション調整ロールの調整可能な位置を図4の(a)のAの位置とすることで、フイルムの左側の片伸びを抑制でき、凹凸形状パターンの位置が、図3の(b)のように、フイルムの左右で均一になる方向へ修正できる。
【0046】
前記テンション調整ロール(9)の後のガイドロール(11)、冷却装置(10)、及び巻取り装置(3)については特に限定はなく、一般的なものが使用できが、ガイドロールは軽いものが好ましく使用でき、冷却装置は、急速冷却でなく、徐々に温度を下げられるタイプが好ましく使用でき、水冷タイプの冷却メールを並べたものでも使用可能であり、巻取り装置については、弱いテンションが駆けられるタイプが好ましく使用できる。
【符号の説明】
【0047】
1、 前記テンション調節ロールの調整方向、矢印
2、 巻出し装置
3、 巻取り装置
4、 マーク印刷機
5、 加熱装置
6、 凹凸付与版
7、 加圧ロール
8、 マーク位置検出器
9、 前記テンション調節ロール
10、 冷却装置
11、 ガイドロール
12、 二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフイルム
13、 アクリル樹脂コート層
14、17 凹凸形状パターン
15、 印刷柄層
16、 前記熱可塑性樹脂フイルム
18、 前記熱可塑性樹脂フイルムの伸びた片側付近
19、 前記熱可塑性樹脂フイルムの幅
20、 前記可撓性積層フイルムの右側に進んだ凹凸形状パターン
21、 印刷柄パターン
22、 凹凸形状パターンの先頭部、尾部を表わすマーク
23、 修正されて左右均一に戻った前記熱可塑性樹脂フイルムの片側
24、 前記可撓性積層フイルムの左側が伸びる場合の前記テンション調節ロールの調整方向
25、 前記可撓性積層フイルムの右側が伸びる場合の前記テンション調節ロールの調整方向
26、 前記熱可塑性樹脂フイルムの搬送方向
27、 前記テンション調節ロールの固定された片方の端部
28、 調整しない場合の前記テンション調節ロールの標準位置
29、 熱盤
30、 熱盤の凹凸形状(エンボス)部
31、 印刷絵柄部
32、 転写シート
33、 転写シートの巻出し部
34、 テンション制御装置
35、 加熱装置
36、 加圧ロール
37、 エンボス版
38、 透明プラスチック
39、 冷却ロール
40、 見当制御装置
41、 ガイドロール
42、 巻取り装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻き出し装置から巻き出された熱可塑性フィルムを連続的に搬送しながら、前記熱可塑性フィルムに凹凸形状を付与する連続エンボス機において、
前記熱可塑性フィルムの搬送方向に沿って、順番に、前記巻き出し装置、熱可塑性フィルムに凹凸形状を付与する熱エンボス装置、テンション調節ロールを配置して構成され、
前記テンション調節ロールの片方の端部が固定され、他方の端部が上下又は左右に可動であることを特徴とする連続エンボス機。
【請求項2】
前記巻き出し装置と熱エンボス装置との間に2台以上のマーク印刷機が配置されており、
2台以上の前記マーク印刷機は、それぞれ、熱可塑性フィルムの前記搬送方向に直交する左右方向の両側端部のそれぞれに位置しており、
かつ、2台以上の前記マーク印刷機を前記搬送方向に投影したとき、これらが同じ位置に位置していることを特徴とする請求項1に記載の連続エンボス機。
【請求項3】
前記熱エンボス装置とテンション調節ロールとの間に2台以上のマーク位置検出機が配置されており、
2台以上の前記マーク位置検出機は、それぞれ、熱可塑性フィルムの前記搬送方向に直交する左右方向の両側端部のそれぞれに位置しており、
かつ、2台以上の前記マーク位置検出機を前記搬送方向に投影したとき、これらが同じ位置に位置していることを特徴とする請求項2に記載の連続エンボス機。
【請求項4】
前記熱エンボス装置が加熱装置と凹凸付与板とで構成され、
前記熱可塑性フィルムの搬送方向に沿って、加熱装置、凹凸付与板の順序で配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の連続エンボス機。
【請求項5】
前記凹凸付与板が円筒形の形状を有しており、かつ、内部から加熱できる機構を有していることを特徴とする請求項5に記載の連続エンボス機。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の連続エンボス機を使用して熱可塑性フィルムに凹凸形状を付与する連続エンボス方法において、
前記熱可塑性フィルムを加熱した状態で凹凸形状を付与する工程と、
凹凸形状の付与された熱可塑性フィルムの左右方向の両側端部のうち、いずれか一方の側端部が他方の側端部より伸びた場合、前記テンション調節ロールの両端部のうち可動状態の端部を移動させて、前記熱可塑性フィルムの伸びが均等になるように修正する工程と、
を備えることを特徴とする連続エンボス方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−148474(P2012−148474A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8721(P2011−8721)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】