説明

連続グルコースセンサの精度の改善

連続グルコースセンサの動的出力を用いてCGSデバイスの精度を改善可能な方法、装置およびキット。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
この米国特許出願は2005年8月31日に出願された同時係属米国仮特許出願第60/713,203号、および2006年6月20日に出願された米国仮特許出願第60/815,191号からの米国特許法119(e)条による優先権を主張するものであり、各主題全体を本明細書に引用して援用する。本明細書に添付した別紙Aの出版物および米国仮特許出願の各々の主題は、その全体を本明細書に引用して援用する。
【技術分野】
【0002】
本発明はグルコース監視技術に関し、特に連続グルコース監視のための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
米国糖尿病会議(American Diabetes Association)による“National Diabetes Fact Sheet”などの現存の証拠は、米国で現在およそ18.2百万人が糖尿病を有し、糖尿病は米国内の6番目の主な死因であることを示している。2000年に生まれたアメリカ人の3人に1人が2型糖尿病を発現するであろう。多数の糖尿病患者および増加すると予想される糖尿病の離間率により、正確なグルコース監視システムがグルコースレベルを監視するという増え続けるニーズがある。連続グルコースセンサは単一時点でのリアルタイムグルコースレベルだけではなく、最小の指先穿刺である期間毎に行われる分析に基づくある人のグルコースレベルの傾向も提供して、血糖/糖尿病制御の改善をもたらすように設計されている。
【0004】
しかし現代の連続グルコースセンサ(以後CGS)の多くは、動脈または血管内のBGの直接測定の困難さにより、BGではなく間質液の間質グルコース(以後IG)をサンプリングすることにより血液グルコース(以後BG)推定値を生じる。IGからの典型的なグルコース(BG)推定は、少なくとも2つの連続概算ステップから生成される。すなわち1)血液から間質へのグルコース(BGからIG)輸送、2)センサにより記録されたIG関連電流からのBG値の導出。その結果CGS技術は飛躍的な一歩を記したが、正確かつ信頼性の高いCGSデバイスの開発は、較正、感度、安定性および血液グルコース濃度と間質液グルコース濃度との生理学的時間差の観点でなお多くの課題に直面している。BG測定値とCGS測定値との差は以下の主な要因、すなわち生理学、センサ較正、ノイズ、および工学技術から生じる。生理学的時間差および傾斜は時間とともに、BGレベルとともに、および患者全体に動的に変化しており、生体内の直接頻繁なIGのサンプリングは非常に困難である。その結果CGSの工学的性能の評価には中心的問題、すなわち較正、センサノイズ、およびBG/IC傾斜によるBG/CGS誤差の部分を分離することが残されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのためCGSの精度と信頼性とを改善するための方法および装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の好適な実施形態の目的と利点とは本明細書に基づいて理解されよう。好適な実施形態によれば、本発明はCGSセンサの較正を改善することにより、または生理学的時間差による誤差を修正することにより、またはそれらの組合せにより、CGSの精度と信頼性とを改善する。
【0007】
本発明の例示的実施形態として、連続グルコースセンサ(CGS)の精度を改善する方法が本明細書に開示されている。この方法は、第1の時刻にCGSを較正するステップと、動的に監視されたCGS値、CGS変化率および所定の判定基準に基づいて判定された第2の時刻のCGS較正を変更するステップとを含む。
【0008】
本発明の他の例示的実施形態として、連続グルコースセンサ(CGS)の精度を改善する方法が本明細書に開示されている。この方法は、第1の血液グルコースレベルと、第1のグルコースデータと異なる第2の血液グルコースレベルとを用いてCGSを較正するステップを含む。
【0009】
本発明のさらに他の例示的実施形態として、連続グルコース検出(CGS)装置が本明細書に開示されている。この装置は、間質グルコースレベルを測定してCGS出力を得る第1の手段と、CGSの精度を改善するCGS出力にアクセス可能な較正モジュールとを備え、さらにCGSとCGSの時間導関数とを動的に監視するとともに、動的CGS値、CGS値の時間導関数、および所定の判定基準に基づいて他の較正事象を命令する、CGS出力にアクセス可能な監視モジュールを備える。
【0010】
本発明のさらに他の例示的実施形態として、連続グルコースセンサの精度を改善する方法を行うためのコンピュータ実行可能な命令を有するコンピュータ読み取り可能媒体が開示されており、その方法は、初期血液グルコース値の測定で得られた初期血液グルコース値とCGS値とを読み出すステップと、経時的にCGS値とCGS値の時間導関数とを監視するステップと、監視されたCGS値とCGS値の時間導関数とに基づいて他の較正を開始するか否かを判定するステップと、他の較正を開始することが判定された場合にCGSを較正するステップとを含む。
【0011】
本発明のさらに他の例示的実施形態として、連続グルコースセンサの精度を改善する方法を行うためのコンピュータ実行可能な命令を有するコンピュータ読み取り可能媒体が開示されており、その方法は、第1の時刻に初期血液グルコース値の測定で得られた血液グルコース値とCGS値とを読み出すステップと、実質的に第2の時刻のCGS値、CGSの時間導関数および所定の判定基準により判定された第2の時刻にCGSを較正するステップとを含む。
【0012】
本発明のさらに他の例示的実施形態として、血液グルコースに関連する病気を治療するために用いられるシステムが本明細書に開示されている。そのシステムは、請求項300の連続グルコース装置と、対応する治療指示を出すまたは対応する治療行動を行うことが可能な病気治療センターにCGS値を配信する手段とを備える。
【0013】
本発明のいくつかの好適な実施形態の様々な目的および/または利点は、いくつかの好適な例において、本明細書に添付した独立請求項の特長により達成することができる。さらなる好適な実施形態は従属請求項に記載されている。特許請求の範囲において語句「のための手段(means for)」により示される要素のみが、米国特許法第112条、第6パラグラフによる手段+機能(means+function)請求項として解釈されることを意図するものである。
【0014】
添付の図面と一緒に以下の詳細な説明から本発明の好適な実施形態を最適に理解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明はCGSの較正を改善することにより、またはBGとIGとの間の生理学的時間差から生じる誤差を修正することにより、もしくはその組合せにより、連続グルコースセンサの精度を改善する方法およびデバイスを提供する。本発明の要旨の範囲内にある多くの可能な変形例を考慮して、特定例を参照して本発明を以下に説明する。しかし当業者には以下の説明が例証目的のためであることは理解されるであろうとともに、限定として解釈すべきではない。本発明の要旨から逸脱することなく他の変形例も適用可能である。
【0016】
ほとんどの現在のCGSデバイスの不正確さは主に不良なCGS較正、生理学的時間差およびランダムエラーに起因する。CGSの不正確さを低減するために改良較正手順を提案する。代替的には生理学的時間差に関連する誤差を修正することにより不正確さの低減を達成することが可能であり、これも本発明で提案している。実際には改良較正手順および時間差修正手順を選択的に組み合わせてより良好なCGS性能を達成することができる。
【0017】
図1を参照すると本発明の一例による生体内のグルコースレベルの測定方法が概略的に図示されている。血管または動脈102内のグルコースレベルを直接測定することは非常に困難であるため、CGS100は血管または動脈と相互作用する間質液104のグルコースレベルを測定するとともに、CGSの出力値を血液グルコースレベルと関連付ける(このプロセスは較正と称されることが多い)ことにより、血液グルコースレベルを検出する。この間接的測定は、血液グルコースレベルが間質液のグルコースレベルと共変するという証明済み根拠に基づいている。
【0018】
CGSの精度を改善するために、図2に示すように精度改善装置106が設けられている。精度改善装置は最適較正推奨(後述する)によりCGS較正を改善することにより、または生理学的時間差に関連する誤差(後述する)を修正することにより、またはそれらを組み合わせることにより、CGSの精度を改善することができる。図2は精度改善装置がCGS(100)に機能的部材として含まれているように示しているが、そうであることは必要ない。他の例では精度改善装置はCGSとは別の独立型モジュールまたは方法であり得る。具体的には精度改善装置を、CGSの精度を改善するためのCGS出力に接続されたデバイス内で実施することができる。また精度モジュールを後述する、コンピュータ読み取り可能媒体に記憶された一連のコンピュータ実行可能コードの形で実施することが可能であり、またはデバイスのハードウェアで実施することが可能である。
【0019】
本発明の一例として図3は図2の精度改善装置(106)の分解図を概略的に図示している。この特定例において精度改善装置(106)は、CGS較正モジュール108と時間差補正モジュール110とを備える。CGS較正モジュールは最適較正推奨サイクルを行うことによりCGSの較正を改善して、CGSの全体精度を改善するように設計されている。時間差補正モジュール(110)は、血液グルコースレベルと間質グルコースレベルとの間の生理学的時間差による誤差を修正するように設計されている上述したような精度改善装置の特別な機能に応じて、精度改善装置はCGS較正モジュールおよび時間差補正モジュールの一方のみまたは両方を有し得る。
【0020】
改善CGS較正
当該分野ではCGS較正の精度は血液グルコース(以後BG)変化率と、較正時刻(t)におけるBG値(BG(t))に依存するということが知られている。BG変化率をBG(t):d(BG(t))/dtという時間導関数として数学的に表すことができる。バリアント入力を有する較正が単一または非変動入力を有する較正より良好であることを考えて、本発明のCGS較正はバリアント入力を用いる。
【0021】
一例として図4aは、図3の例示的CGS較正(108)の機能モジュールを示す図である。図4aを参照すると、CGS較正装置108は初期較正モジュール111と、記憶モジュール113と、再割当モジュール115と、決定ループモジュール117とを備え、決定ループモジュール117はさらに監視モジュール119と、内部要求モジュール121と、自己検査開始モジュール123と、判定モジュール125と、センサ較正モジュール129とを備える。
【0022】
初期較正モジュールは初期較正を行って、初期測定値BG(0)から初期較正データ対SG(0)およびBG(0)を得る。記憶モジュール113は初期較正モジュール111の出力に結合するとともに、初期較正データ対SG(0)およびBG(0)を記憶する。監視モジュール119は記憶モジュールの出力に接続するとともに、CGS出力SG(t)とSG(t)変化率SG’(t)=dSG(t)/dtとを動的に監視する。内部要求モジュール121は監視モジュールの出力に接続するとともに、較正の内部要求を管理する。自己検出開始モジュール123は内部要求モジュールの出力に接続されるとともに、最適較正タイミングの自己検査手順を開始するように指定される。自己検出開始モジュール123の出力と関連して、判定モジュール125は特定の時刻にセンサ較正モジュール129による他の較正を行うか否かの判定をする。決定後の較正による較正データは、再割当モジュール115によりCGSに再割り当てされる。
【0023】
なお実際には1つまたは複数の上記の機能モジュールを他の機能モジュールに組み込むことができる。具体的にはセンサ較正モジュール129を、CGS較正を行うための初期センサ較正モジュール111に組み込むことができる。監視モジュール119と、内部要求モジュール121と、自己検査モジュール123と、判定モジュール125のいずれも複合機能モジュールに組み込むことができる。
【0024】
本発明の所望の最適較正推奨プロセスを達成するための図4aの機能モジュールの例示的動作を図4bに概略的に示す。図4bを参照すると初期時刻tにおける血液グルコースレベルBG(0)を測定して、初期CGS出力SG(0)を得ることにより初期較正が行われる(ステップ112)。図4aの初期較正モジュール111によりこのステップを行うことができる。ステップ114で初期データ対BG(0)およびSG(0)が記録される。図4aの記憶モジュール113によりこのステップを行うことができる。このような初期較正をCGS製造業者により推奨された時刻、またはユーザにより決められた時刻に行うことができる。較正手順はその後、図4aに示すような決定ループモジュール117により管理される較正決定ループ118に入る。
【0025】
較正決定ループはステップ120から始まり、ステップ120は経時的にセンサ値SG(t)と変化率SG’(t)とを監視し、SG’(t)はSG(t)の一次時間導関数、すなわちSG’(t)=dSG(t)/dtとして規定される。図4aの監視モジュール119によりSG’(t)の動的監視および導出を行うことができる。特定の時刻tに他の較正要求を受け取る(ステップ122)と、ステップ124で最適較正タイミングの自己検査手順が開始する。このステップはこの時刻、例えば図4bの126または128で較正が行われるべきか行われるべきでないかを判定する一連の動作を誘発する。較正要求の受信および自己検査手順を開始するためのこのような要求の配信を、図4aの内部要求モジュール121により達成することができるとともに、図4aの自己検査開始モジュール123により自己検査開始を達成することができる。なお他の較正の内部要求を製造業者により規定された時刻に、または代替的には医者さらには適当な患者などのユーザにより規定された時刻に開始することができる。
【0026】
ステップ124における自己検査手順の開始後、ステップ126で|SG’(t)|<1か否かが判定される。図4aの判定モジュール125によりこの判定ステップを行うことができる。|SG’(t)|≧1である場合には、手順はステップ120に戻ってSG(t)およびSG’(t)値を継続的に監視する。そうでなければ手順は、|Sg(t)−SG(t)|がd(mg/dl)より大きいか否かという他の判定を行うが、ここでd(mg/dl)は初期SG(0)と時刻tにおけるCGS出力SG(t)との間の所定識別閾である。一例としてd(mg/dl)は10mg/dl以上、例えば15mg/dl、より好適には30mg/dl以上であり得る。ステップ126および128の判定の一方または両方は、図4aに示すような判定モジュール125により行うことができる。ステップ128で|Sg(t)−SG(t)|がd(mg/dl)以下である場合には、手順はステップ120に戻る。そうでなければステップ130で、例えば図4aのセンサ較正モジュール129により他の較正が行われる。CGS較正値はステップ116で、例えば較正値SG(t)およびBG(t)をそれぞれ再較正値SG(t)およびBG(t)と交換することにより、ステップ130の再較正に基づいて再割り当てされる。ステップ114で再割当較正値が記憶される。上記の再割当を図4aの再割当モジュール115により達成することができる。
【0027】
再割当および記憶後、較正プロセスは決定サイクル118に再進入して、上記のステップ114、120、122、124、126、128、130および116を繰り返す。CGS製造業者により提案されたデフォルトの較正数により、または代替的にはユーザにより較正サイクル数を決めることができる。一例としてCGS寿命の最初の24時間内に、複数の較正サイクル、例えば2〜10、またはより典型的には3〜4較正サイクルを行うことができる。
【0028】
上述したような最適較正方法を用いたCGSの改善精度を、以下の実験データおよび図5に示すようにコンピュータシミュレーションにより実証することができる。
【0029】
実験データ
上述したような精度改善方法を具現化するCGSの精度をテストするために、1型真性糖尿病(T1DM)を有する39人の被験者に対して測定を行う。39人の患者は以下の統計を有する。平均年齢42.5歳で標準偏差(SD)が12(SD=12)、T1DMの平均病期21.6年(SD=94)、平均HbAlc=7.4%(SD=0.8)、男性16人。
【0030】
研究はバージニア大学IRB被験者により承認された。被験者は調査の前夜に総合病院研究センター(GCRC)に入院した。患者のBGレベルは一晩中100〜150mg/dl(55〜8.3mmol/l)の正常血糖範囲内に制御された。ミニメド(Minimed)CGMSTMを各患者に取り付けて、製造業者の指示により調査中に較正した。すべてのCGMSTMを腹部に挿入した。午前中インシュリン過剰クランプを行った。各クランプは、1mU/kg/分という一定の注入速度および可変グルコース注入速度を用いて、およそ110mg/dl(約6mmol/l)のBGレベルを達成して維持した。続いてグルコース注入速度を低下させてBGが50mg/dl(約2.8mmol/l)に達するまで、およそ1mg/dl/分のBG制御低下をさせた。その後グルコース注入を再開して、通常グルコースレベルまで回復させた。クランプ調査の正常血糖部は長さが70から210分まで変化し、さらにBG低下手順の持続時間が30〜60分に及んだ。回復は30〜60分に及んだ。動脈血化を、手を50℃まで温めることにより達成するとともに、基準BGレベルに対して5分毎にサンプリングした。インスリンをその定常状態影響に到達させるために、注入の開始後のデータの最初の15分を無視した。CGMSTM測定値はBGと同期した。
【0031】
センサ最適較正のコンピュータシミュレーション
上記のクランプ調査中に取った2つの基準BG値を用いたセンサの再較正が、センサ誤差を2つのBG値間の差の関数として表わす図5に示すようにコンピュータシミュレーションされている。シミュレーションされた再較正は、CGMSTMの標準線形較正関数を用いている。再較正による結果を実験中に表示されたセンサ自体の精度、およびすべての入手可能基準BG値を用いた「完璧な」較正と比べる。
【0032】
図5を参照するとX軸はBG単位(mg/dl)の2つのシミュレーションされた較正点間の距離を表わし、Y軸は2点較正を有するセンサ出力の平均絶対誤差(MAE)を表わす。図において2つの較正BGで値が近い場合には、MAEが高いことが分かる。差が20mg/dlに接近するとMAEは急速に低下して、その後ゆっくり低下する。図の上方水平線はセンサ自体の較正のMAEを表わすとともに、下方水平線はすべての入手可能な基準点を用いた「完璧な」較正により得られるMAEを表わす。
【0033】
図では30mg/dlより大きく40mg/dlより小さい値を有するBG較正差dが良好な結果を達成する一方で、40mg/dlより大きい値を有する差dは「ほぼ完璧な」結果を達成することも分かる。上述した実験中のセンサ較正が常に正常血糖に維持された定常BGの期間に行われたため、BG変化率の影響が最小であったと指摘する価値がある。
【0034】
生理学的時間差の補正
CGSの較正に加えて、BGとIGとの間の生理学的時間差もCGS出力の不正確さを発生させる。これは現在のCGSデバイスのほとんどは血液グルコースレベルを直接に測定せず、その代わりに間質液のIGレベルを測定するということから生じる。CGSデバイスはその後IG測定値をBGの推定値に変換する。そのためIGからBGへの改善変換方法はCGSの改善性能につながる。本発明の目的はIGレベルとBGレベルとの間の生理学的時間差を含むことによりIGからBGへの変換を改善する。このような改善はIGとBGとの間の時間依存性の分析および結合により達成される。具合的にはBGおよびIGまたはCGS出力の間の時間依存性を記述するための数学モデルを確立する。確立したモデルに基づいて、数式を導出してBGへのCGS出力の時間依存性を定量的に表現する、すなわちCGSはBGの関数である。そしてこの数式を変換してBGをCGSの関数として表わす。こうして反転式を用いて所与のCGS出力値に対するBGレベルを予測することができる。適用の際反転式を生のCGSデータに適用して正確なBG推定値を生成する。
【0035】
数学モデル
グルコースが比較的小さい分子であるという事実を考えると、グルコースが血管および脂肪組織などの毛細血管壁を通して自由に拡散可能であることが考えられる。脂肪組織は血管が新生されやすいとともに、間質液は細胞間の比較的薄い層を占める。この事実は細胞表面から非常に遠い体積要素はなく、また毛細血管壁から非常に遠いこともないということを意味する。そのため間質液のグルコースの摂取および拡散は比較的位相的に均一であると思われる。
【0036】
本発明によるIGおよびBGの輸送動作が図1に示されている。図1を参照すると、間質液と血管(または脂肪組織)との間のグルコースの輸送動作を拡散としてモデル化できる。間質液のIGは消費もして、これが量および/または濃度低下につながる。
【0037】
数学拡散方程式の導出に対して、問題の具体的な局所的間質環境はBG/時間曲線の推移にあまり関与しておらず、そのためBGレベルの時間依存性BG(t)は独立的に展開してこの系において外生変数として扱うことができると思われる。この想定はBGレベルが主にデキストロースのIV注入により制御されている場合、特にインシュリン過剰クランプの場合確かである。グルコースの摂取はそれぞれ式1aおよび1bに表わされるように、IG独立経路、またはミカエリス・メンテン反応速度論により記述されるものをたどるとさらに想定される。
【数1】

【0038】
上記の式においてαは単位時間当たり単位体積当たりのグルコースの摂取である。
【0039】
なお式1aおよび1bは明示的時間依存性を記述している。グルコース摂取BGおよびIGを直接生じ得るインシュリンレベル、運動等などの他の変数は式から除外されない。Kmは式1bの定数であり、さらなるフィットするパラメータを導入しない。実際にはKmは、ツィーエーラー(Zierler)Kによる「全身グルコース代謝(Whole body glucose metabolism)」Am J Physiol.276:E409−E426、1999年に記載された、GLUI−4の活性に対して公表された値を取ることができる。その主題を全体として本明細書に引用して援用する。フィックの法則を参照することにより、血液からの拡散によるIG(t)の変化を式2により記述することができる。
【数2】

【0040】
ここでβはグルコースに対する毛細血管壁の透過性である。他の明らかな間質液のグルコース源またはシンクがないため、式1aおよび1bを加えることによりグルコースの純変化を導出することが可能であり、以下の式3aおよび3bとして表わすことができ、ここで式3aは均一取得拡散モデルに対応するとともに、式3bはミカエリス・メンテン反応速度論モデルに対応する。
【数3】

【0041】
式3aおよび3bに対する数学解
式3aは解析解を有する通常の微分方程式であるが、式3bは数値シミュレーションを必要とする第2種アーベル方程式の非線形微分方程式である。式3aに対する解析解は以下の式4で表わされる。
【数4】

【0042】
αおよびβが経時的に一定であると仮定することにより、以下の式5に表わされるようなデルタ・タウ(Delta−tau)表記を用いて、式4を以下の式6に変形することができる。
【数5】

【0043】
式6の高次微分項BG(t)を除去することにより、式6をカルマンフィルタリング/スムージング技術よるカルマン回帰分析が適用可能な形に変形することができる。このような技術の例は「最適制御および概算(Optimal Control and Estimation)」ニューヨーク(New York):ドーバー出版(Dover Publications)、1994年37に記載されており、「状態空間モデル」および回帰プロセスが用いられている。その主題を全体に本明細書に引用して援用する。回帰プロセスは本明細書では別紙Bに添付されている。「状態空間モデル」を用いるとともにCGS測定値が短時間ζだけ均一に離れているという前提で、CGS出力およびIGの依存性に対する状態空間モデルを以下の式9に記述することができる。
【数6】

【0044】
BG進展(evolution)を含むCGS出力に対する状態空間モデルを以下の式10として表わすことができる。
【数7】

【0045】
BG進展と線形投影とを含むCGS出力に対する状態空間モデルを以下の式11で表わすことができる。
【数8】

【0046】
消費、透過性、IGおよびIGの変化率の推定値を前提として、式3aおよび3bの反転を同様に行うことができる。3aおよび3bの反転式はそれぞれ以下の式12aおよび12bとして表わされる。
【数9】

【0047】
式12aおよび12bは、IGの変化率の正確な推定値を提供するためにCGSの使用が重要になるということを示す。反転式12aおよび12bの表示も可能であり、それは以下の式13および14として表わされる。
【数10】

【0048】
なお上述のモデルの観察は式7に規定されたBG(t)の関数である。一連のBG(t)を記述するための多項式平滑/補間公式を実施する場合には、添付の別紙Cに示すようにそれも線形反転することができる。
【0049】
アルゴリズム実施
そして上記の数学モデルおよび式をCGS測定値に適用して、CGS出力を用いてBGレベルを予測することにより、IG(t)とBG(t)との生理学的時間差を修正することができる。本発明の例示的手順を図6のフローチャートに示す。
【0050】
図6を参照すると、ステップ132で上述したような数学モデルを展開する。モデルはBG(t)、IG(t)およびCGS出力SG(t)間の動態を記述する。ステップ132で展開されたモデルに基づいて、第1の数式を変形してSG(t)をBG(t)の関数として求める。第1の式は拡散のフィックの法則とミカエリス・メンテン消費とを用いて好適に展開される。そしてステップ136で第1の式を反転してBG(t)の動態をCGS出力SG(t)の関数として推定する。そしてステップ138で反転式をCGS生データに適用してCGS測定値の精度を改善する。ステップ138の反転式を生のCGSデータへの例示的適用が図7に図示されている。
【0051】
図7を参照するとステップ140で複数の生データセットを得る。データセットはCGS出力SG(t)と、サンプリング時刻Tm(t)と、パラメータPar(α、β、較正)とを備え、パラメータ較正は式9に較正として表わされるパラメータである。ステップ142で生のCGSデータを好適に前処理する(必須ではないが)。具体的にはCGS生データを初期回帰および/またはフィルタリングにより処理してCGS生データを平滑化する。このステップは調査が生CGSデータ電流がノイズおよびランダムなスパイクを蒙り、それらを反転モデル式の精度を改善するためにフィルタリングする必要があるということを示したという点で重要である。CGSデータを回帰および/またはフィルタリングをするための多数の方法がある。例えばベイズの推定技術と組み合わせて、臨床的に観察されたBG変化率に基づいて、生CGSデータをフィルタリングすることができる。他の例では生CGS出力を、BGの進展がその限度を満たすことを前提として最適推定値を生成する、式10および11のカルマンフィルタにより方法で処理することができる。
【0052】
前処理CGSデータ(または上記の前処理なしに生CGSデータ直接)を前提して、ステップ144でCGS出力の変化率(時間導関数)を算出する。CGS出力の独自の特徴は、それらの出力の導関数を推定する能力である。しかし観察および体系的ノイズおよび変動するセンサ感度のため、このような瞬間生推定値はほとんど最適ではないということが観察されている。その代わり実験により示されるように指数的重み付けを用いた短間隔多項平滑技術がより良好な結果を生じ得る。そしてステップ146でIG比例係数をCGSに適用した後、ステップ148で上述したような反転モデルを適用してBGレベルを推定する。
【0053】
ソフトウエア実施
図7を参照して説明したようなプロセスを多数の方法で実施することが可能であり、その1つはソフトウエアである。一例として上記プロセスをリアルタイムバージョンで実施することが可能であり、CGS出力に直接適用して生のCGS出力をBG推定値に変換するとともにリアルタイム結果を生じることができる特定の用法であり得る。一組のリアルタイム実施プログラムコードが別紙Dとして本明細書に添付されている。代替的にはプロセスを、CGS精度の遡及的改善を行うための特定の用法であるとともに、リアルタイムデータを表示しないCGSに適用可能な遡及バージョンとして実施することができる。遡及的実施のための一組のプログラムコードが別紙Eとして本明細書に添付されている。なお参照を容易にするために各線番号の始めが除去されている。計算速度を優先してパラメータの線形化バージョンが採用される。当業者には別紙DおよびEに表わされたプログラムコードが実証の目的に基づいていることは理解されるであろうとともに、限定として解釈されるべきではない。本発明の要旨から逸脱することなく多くの他の変形例も適用可能である。
【0054】
方法の試験
BGとCGS出力との間の生理学的時間差を修正するための上記のプロセスを、バージニア大学総合病院研究センター(University of Virginia General Clinical Research Center)(GCRC)で行った研究中に獲得したデータに関して評価したが、それは進行中のNIH研究助成金(RO1 DK 51562、主研究員ボリス・コヴァチェフ(Boris Kovatchev))に対する「付加」プロジェクトであった。付加研究にアボット糖尿病治療(Abbott Diabetes Care)(P.I.ウイリアム・クラーク(William Clarke))により資金提供を受けて、2つのCGS、アボット・ナビゲータ(商標)(Abbott NavigatorTM)とミニメド(Minimed)CGMS間の直接比較を行った。付加研究の目的にはモデルの開発および試験があった。
【0055】
研究被験者
TIDMを有する16人の被験者(男性11人、女性5人)、年齢42歳で標準偏差(SD)が3歳、糖尿病の病期20年でSDが3年。各々からインフォームドコンセントを得た。被験者は健康診断の後、研究の前夜に総合病院研究センター(General Clinical Research Center)に入院した。製造業者の指示により、CGSシステム、フリースタイル・ナビゲータ(商標)(Freestyle NavigatorTM)を各被験者に、データ記録の開始前におよそ12時間適用するとともに、推奨されるように較正した。すべてのシステムを腹部に挿入した。翌朝までBG基準対CGS比較を行わなかった。研究プロトコルは同等なインシュリン過剰クランプを連続する2日に行ったとして規定される。
【0056】
各日にインシュリン過剰クランプは、一定のインシュリン注入速度40mgU/kg/分および変動グルコース注入速度を用いて、およそ110mg/dlのBGレベルを達成するとともに維持した。続いてグルコース注入速度を低下させて、BGレベルが40mg/dlに達するまで、およそ1mg/dl/分のBGレベルの制御低下をさせた。研究の正常血糖クランプ部分は長さが70から210分まで変化する一方で、BG低下手順の持続時間は30〜60分に及んだ。5分毎に動脈化血をサンプリングして、ベックマン・グルコース・アナライザ(Beckman Glucose Analyzer)(カルフォルニア州フラートンのベックマン・インスツルメンツ、インコーポレーション(Beckman Instruments, Inc.,Fullerton,CA))を用いて基準BGレベルを決定した。フリースタイル・ナビゲータ(商標)(Freestyle NavigatorTM)グルコース測定値を毎分記録するとともに、30秒の精度で基準BGと同期させた。基準およびナビゲータ(商標)(NavigatorTM)速度およびBG変化の方向を5分間隔で算出した。この手順は研究中の16人の患者に対する29クランプデータセットを生じた。
【0057】
分析に用いたソフトウエア
オープンソース・フリープログラミング言語であるとともに統計的分析(http://www.r−project.org)に適した、R2.1.1を用いて数値解析を行った。基本パッケージの範囲以外にCRANリポジトリからの「odesolve」、「fields」および「dsel」パッケージおよびそれらの依存性を用いて、マイクロソフト・エクセル(Microsoft Excel(登録商標))を用いてグラフを作成した。
【0058】
結果
式12aを非線形最小二乗により求められたパラメータを有する未フィルタリングナビゲータ(商標)(NavigatorTM)生データに適用した。各データランは低血糖への低下の開始時に始まる。表1は全29クランプ事象に対する結果のまとめを表わす。ナビゲータ(商標)(NavigatorTM)の平均RMS誤差が、3倍を超えて低下するとともに、%RMS誤差が5倍を超えて低下したしたことが分かる。加えて基準とセンサBGとの相関がモデルにより改善した。
【表1】

【0059】
図8から図10はその結果を示す。具体的には図8は5分データ間隔の底で一致した29事象の平均を示す。中実菱形記号はベックマン分析により記録された基準BGである。中実正方形はナビゲータ(商標)(NavigatorTM)のデータである。中空正方形は本発明の方法により補正されたナビゲータ(商標)(NavigatorTM)である。図でモデル補正データが元のナビゲータ(商標)(NavigatorTM)出力より基準BGにかなり近いことが分かる。図9および図10は1分データ間隔の2人の個別患者を示す。両方の場合とも、本発明の方法によるナビゲータ(商標)(NavigatorTM)データの補正(中空正方形)は、基準BGの改善追跡を生じる。
【0060】
精度改善方法およびデバイスの併用
上述したようにCGS出力の精度を本発明の一例により改善較正方法によって改善することができる。代替的にはCGS精度をBGとIGとの間の生理学的時間差を修正することによって改善することもできる。本発明の他の例では上記の2つの補正方法を組み合わせてCGS精度をさらに改善することができる。図11は本発明の他の例による結合精度改善プロセスを行うフローチャートを図示する。
【0061】
図11を参照すると、結合プロセスは図4を参照して上述した方法を用いてCGSを較正することから開始する。システム誤差を排除または低減することができる。ステップ152で較正CGS出力をフィルタリングおよび/またはスムージングすることにより、較正CGSからのCGS出力を前処理する。このステップは図7のステップ142で説明したものと同じまたは異なる方法を用いて行うことができる。なおこのステップは好適であるが必須ではない。前プロセスによりセンサノイズおよび/またはCGS出力および一次時間導関数の微小ランダム変動を除去または低減することができる。ステップ144でCGS出力SG(t)の一次時間導関数を算出する。そしてIG比例係数をCGS出力に適用し、その後ここでは繰り返さないが図6を参照して説明したように、反転モデル式を適用してBGレベルを推定する。
【0062】
表2は、本発明の方法から得られたCGS出力と、本発明の方法を採用していない当該技術で典型的なCGSのCGS出力とを比較することにより、本発明の例による方法を用いた精度改善を示す。当該技術の典型的CGSから得られたCGS出力は、「連続グルコース監視センサの精度評価:セラセンス(Therasense)フリースタイルナビゲータデータによる示された連続グルコース・エラーグリッドアナリシス(Evaluating the accuracy of continuous glucose monitoring sensors:continuous glucose error grid analysis illustrated by therasense freestyle navigator data)」B コヴァチェフ(Kovatchev)、L ゴンダー フレデリック(Gonder Frederick)、D コックス(Cox)、およびW クラーク(Clarke)、糖尿病治療(Diabetes Care)、vol.27、pp.1922−1928、2004年に載っている。
【表2】

【0063】
表2のパネルAは低血糖および正常血糖により層をなす、上述したクランプ研究中のミニメド(Minimed)CGMSTMの精度の連続グルコース・エラーグリッドアナリシス(CG−EGA)を表わす。臨床的に正確なセンサ測定値は、低血糖中は50.0%であるとともに、正常血糖中は96.4%であった。これらの割合間の大きな相違は主に、より要求の厳しい臨床的精度標準による。低血糖事象の場合、正常血糖状態の間だけセンサ誤差に対して大きな臨床的許容度がある。低血糖などの臨床的に危険で急速に推移する条件中は、適当で適時の処理決定のための正確なフィードバックを提供するために、センサはより高い標準を満足させることが望ましい。CG−EGAはこの区別を反映する。さらにMAEおよび平均絶対割合誤差(MAPE)は表1に含まれるとともにBG範囲によっても層状化される。
【0064】
表2のパネルBは、研究BG範囲で臨床的に適度な差である30mg/dl離間(例えば差dが30mg/dl)である2つの基準BGにより再較正されたセンサのCG−EGA、MAEおよびMAPEを表わす。CG−EGA精度測定値の割合は低血糖中、50%から86.7%に増加する一方で、MAEが27.9から10.9mg/dlに低下することが分かる。MAEおよびMAPEの改善は正常血糖中にも観察される。
【0065】
表2のパネルCは、センサ再較正後に推定されたSIG対BGのCG−EGA、MAEおよびMAPEを表わす。BG変動に続くSIGの「精度」が高い、可能なセンサ精度の良好な理論的限界を意味する、ほぼ100%であることが分かる。
【0066】
本発明の例を多数の方法で実施することができる。例えば連続グルコースセンサの機能的部材として実施することができるか、または連続グルコースセンサに関連する独立型モジュールとして実施することができる。いずれの場合も本発明の例を、計算装置にインストールされた一組のプログラムコードとして、または連続グルコースセンサに結合されたハードウエアデバイスの一組のコンピュータ実行可能コードとして実施することができる。実施媒体に係わらず、本発明の例を個々の連続グルコースセンサに関連付けて、個々のグルコースセンサの精度を改善することができる。代替的にはリアルタイムCGSデータを、関連誤差ならびに誤差補正パラメータおよびデータと一緒に誤差処理センターに送信できるように、本発明の例を実施することができる。送信はグルコースデータと一緒でも一緒でなくてもよい。このようにして汎用の連続グルコース検出システムを確立することができる。
【0067】
図12は本発明の例を実施できる例示的システムを図示する。図12を参照すると診療所設備158は、医者(例えば164)がグルコースに関連する病気を有する患者(例えば160)を診断する場所を提供する。連続グルコースセンサ(またはグルコース試験機能を組み込んだ検出装置)162を用いて、患者のグルコースレベルを監視および/または試験することができる。このような監視および/または試験は短期(例えば来院)または長期(例えば入院または家庭)でよい。連続グルコースセンサは上述した精度改善方法の一例を組み込んでいる。精度が改善したCGS出力は医者により、患者に対するインシュリン注射または食事供給などの適当な動作、または他の適当な動作に用いることができる。代替的には精度が改善したCGS出力を、即時または将来の分析のためにコンピュータ端末168に配信することができる。配信はケーブルを介してまたはワイヤレスによってもまたは任意の他の適当な媒体によってもよい。患者からの精度が改善されたCGS出力を、PDA166などの携帯デバイスに配信することもできる。精度が改善されたCGS出力を処理および/または分析用グルコース監視センター172に配信することができる。このような配信を有線または無線であるネットワーク接続170などの多数の方法で達成することができる。
【0068】
精度が改善したCGS出力に加えて、誤差、精度改善用パラメータおよび任意の精度関連情報を、コンピュータ168および/または誤差分析を行うデータ処理センター172などに配信することができる。これによりグルコースセンサの重要性のため、グルコースセンターに集中精度監視および/または精度向上を提供することができる。
【0069】
前に説明したように本発明の例を、目標連続グルコースセンサに関連する独立型計算装置で実施することもできる。本発明の例を実施できる例示的計算装置が図13に概略的に図示されている。このような装置は当業者には周知であるが、他の読者の便宜のために本明細書に簡単な説明を提供する。
【0070】
図13を参照すると、その最も基本的な構成において計算装置174は通例少なくとも1つの処理ユニット180とメモリ176とを含む。計算装置の正確な構成および種類によって、メモリ176は揮発性(RAMなど)、不揮発性(ROM、フラッシュメモリ等など)、またはその2つの組合せであり得る。
【0071】
加えて装置174は他の特徴および/または機能性も有する。例えば装置は限定されないが磁気または光ディスクまたはテープならびに書き込み可能な電気記憶媒体を始めとする、さらなるリムーバブルおよび/またはノンリムーバブル記憶装置を含むこともできる。このようなさらなる記憶装置はリムーバブル記憶装置182およびノンリムーバブル記憶装置178による図である。コンピュータ記憶媒体には、コンピュータ読み取り可能命令、データ構造、プログラムモジュールまたは他のデータなどの情報の記憶のための、任意の方法または技術で実施される揮発性および不揮発性、リムーバブルおよびノンリムーバブル媒体がある。メモリ、リムーバブル記憶装置およびノンリムーバブル記憶装置はすべてコンピュータ記憶媒体の例である。コンピュータ記憶媒体には、限定されないが所望の情報を記憶するために用いることができるとともに装置によりアクセス可能な、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリまたは他のメモリ技術、CDROM、デジタル多用途ディスク(DVD)または他の光記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置または他の磁気記憶装置、もしくは任意の他の媒体がある。任意のこのようなコンピュータ記憶媒体は装置の一部である、または一緒に用い得る。
【0072】
装置は他の装置(例えば他の計算装置)と通信可能にする1つまたは複数の通信接続184も含み得る。通信接続は通信媒体の情報を伝達する。通信媒体は通例コンピュータ読み取り可能命令、データ構造、プログラムモジュール、もしくは搬送波または他の伝送メカニズムなどの変調データ信号内の他のデータを具現化するとともに、任意の情報配信媒体を含む。用語「変調データ信号」は、信号内の情報を符号化するように設定または変更された1つまたは複数のその特性を有する信号を意味する。限定ではなく一例として通信媒体には、有線ネットワークまたは直接有線接続などの有線媒体、および音響、RF、赤外線および他の無線媒体などの無線媒体がある。上述したように本明細書で用いられるような用語コンピュータ読み取り可能媒体は、記憶媒体および通信媒体の両方を含む。
【0073】
当業者には本明細書で、連続グルコース検出装置の精度を改善する新規且つ有用な方法およびそれを用いたシステムを説明したことが理解されよう。しかし本発明の原理が適用され得る多くの可能な実施形態を考慮すると、図面を参照して本明細書で説明した実施形態は一例に過ぎず、本発明の要旨を限定するものと捕らえるべきではないことは理解できよう。当業者には本発明の要素から逸脱することなく、構成および詳細において図示の実施形態を変更できることが理解されよう。そのため本明細書に記載したような本発明は、そのような実施形態をすべて以下の特許請求の範囲およびその同等物内にあり得るものとして考える。
【0074】

【0075】

【0076】

【0077】

【0078】

【0079】

【0080】

【0081】

【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の一例による連続グルコースセンサを用いて血液グルコースレベルを測定する方法を概略的に図示する。
【図2】図1の較正装置を備える連続グルコースセンサを示す分解図である。
【図3】本発明の一例による較正装置および時間差補正装置の機能モジュールを図示する図である。
【図4a】本発明の一例による較正モジュールのブロック図である。
【図4b】本発明の一例による較正プロセスのフローチャートである。
【図5】較正中の血液グルコース差および本発明の例示的方法により改善されたCGSの精度を図示する。
【図6】本発明の時間差補正方法を用いてCGSの精度を改善するために実行されるステップを示すフローチャートである。
【図7】本発明の他の一例によるCGSを較正するために実行されるステップを示すフローチャートである。
【図8】本発明の例示的方法を用いた改善CGS測定値を示す図である。
【図9】本発明の例示的方法を用いた改善CGS測定値を示す他の図である。
【図10】本発明の例示的方法を用いた改善CGS測定値を示すさらに他の図である。
【図11】本発明のさらに他の一例によるCGSの精度を改善するために実行されるステップを示すフローチャートである。
【図12】本発明の例を実施できるシステムを図示する図である。
【図13】本発明の例を実施できるコンピュータ読み取り可能命令を有する、例示的計算装置を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続グルコースセンサ(CGS)の精度を改善する方法であって、
第1の時刻にCGSを較正するステップと、
動的に監視されたCGS値およびCGS変化率のうちの少なくとも一方に基づいて決定された第2の時刻にCGSを較正するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記動的に監視されたCGS値が、前記第2の較正が行われる前に少なくとも15mg/dlだけ異なることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記動的に監視されたCGS値が、前記第2の較正が行われる前に少なくとも20mg/dlだけ異なることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記動的に監視されたCGS値が、前記第2の較正が行われる前に少なくとも30mg/dlだけ異なることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
経時的に前記CGS値と前記CGS変化率とを動的に監視するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記監視されたCGS値の一次時間導関数を算出するステップと、
前記CGS値の前記一次時間導関数の絶対値が実質的に1未満であるか否かを判定するステップと、
前記CGS値の前記一次時間導関数の絶対値が実質的に1未満である場合、前記第1の時刻のCGSの較正を維持するステップとをさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記CGS値の一次時間導関数の絶対値が実質的に1未満である場合、前記第2の時刻のCGSと前記第1の時刻の較正のCGSとの間の絶対変化が所定値より大きいと判定するテップと、
前記第2の時刻のCGSと前記第1の時刻の較正のCGSとの間の絶対変化が所定値より大きい場合、前記第1の時刻のCGSの較正を維持するステップとをさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記所定値が30mg/dlであることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記所定値が40mg/dlであることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の時刻のCGSと前記第1の時刻の較正のCGSとの間の絶対変化が所定値より大きいと判定された場合、前記CGSを再較正するステップをさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項11】
血液グルコースレベルと血液グルコースと相互作用する間質液のグルコースレベルとの間の生理学的時間差を修正することにより、前記CGS出力の精度を改善するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記精度を改善するステップが、
前記血液グルコースレベルへのCGS出力の時間依存性を記述する数式を導出するステップと、
前記時間依存血液グルコースレベルを前記CGS出力の関数として導出するステップと、
前記導出された時間依存血液グルコースレベル関数を、一組のCGS生出力に適用して、後の血液グルコースレベルを予測するか、または前記CGS出力を補正するステップとをさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記数式が、前記血液グルコースと間質液のグルコースとの間の拡散相互作用の記述を含むモデルに基づいて導出されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記数式が、前記間質液のグルコースの想定の記述を含むモデルに基づいて導出されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の時刻が、前記動的に監視されたCGS値および前記CGS変化率の両方に基づいて決定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
第1の血液グルコース値と第2の血液グルコース値とを用いて、連続グルコースセンサを較正するステップと、
前記連続グルコースセンサが、対応する第1の間質グルコース値を測定する場合、前記第1の血液グルコース値を測定するステップと、
前記連続グルコースセンサが、前記第1の間質グルコース値とは所定量だけ異なる対応する第2の間質グルコース値を測定する場合、前記第2の血液グルコース値を測定するステップとを含むことを特徴とする、連続グルコースセンサの精度を改善する方法。
【請求項17】
前記所定量が少なくとも15mg/dlであることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記所定量が少なくとも20mg/dlであることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記第1および第2のグルコースデータが異なる時刻に得られることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記第2のグルコースデータが、所定の判定基準に基づくCGS変化率の判定を含む決定ループにより得られることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記所定の判定基準が、前記CGS変化率が所定値以上である場合には前記第1のグルコースデータによる前記CGS較正を維持すること、を指定することを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記所定値が1であることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記所定の判定基準が、前記CGS変化率が1未満である場合には他の所定値に基づいて他の決定を行うこと、をさらに指定することを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記他の所定の判定基準が、前記CGSと前記第1の血液グルコースデータによる較正CGSとの間の絶対差が所定の差分値以下である場合には、前記第1のグルコースデータによる前記CGS較正を維持すること、を指定することを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記他の所定の判定基準が、前記CGSと前記第1の血液グルコースデータによる較正CGSとの間の絶対差が前記所定の差分値より大きい場合には、前記第2の血液グルコースデータによる他の較正を行うこと、をさらに指定することを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
血液グルコースレベルと、血液グルコースと相互作用する間質液のグルコースレベルとの間の生理学的時間差を修正することにより、前記CGS出力の精度を改善するステップをさらに含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項27】
前記精度を改善するステップが、
前記血液グルコースレベルへのCGS出力の時間依存性を記述する数式を導出するステップと、
前記時間依存血液グルコースレベルを前記CGS出力の関数として導出するステップと、
前記導出された時間依存血液グルコースレベル関数を、一組のCGS生出力に適用して、固有の時間差に対して前記CGS出力を補正するステップとをさらに含むことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記数式が、前記血液グルコースと前記間質液のグルコースとの間の拡散相互作用の記述を含むモデルに基づいて導出されることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記数式が、前記間質液のグルコースの想定の記述を含むモデルに基づいて導出されることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記CGS出力の関数としての前記時間依存血液グルコースレベルが、前記血液グルコースレベルへの前記CGS出力の時間依存性を記述する数式の逆関数であることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項31】
連続グルコースセンサの出力にアクセス可能な精度改善モジュールを備えた連続グルコースセンサの精度を改善するシステムであって、
連続グルコースセンサの動的に監視された出力の少なくとも1つに基づいて、ある時刻に較正を判定可能な決定メカニズムをさらに備えることを特徴とするシステム。
【請求項32】
前記決定メカニズムが、前記連続グルコースセンサの出力と前記連続グルコースセンサの出力変化率とに基づいて前記時刻に較正を判定可能であることを特徴とする請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記精度改善モジュールが、
所定の時系列で較正を開始可能な初期要求モジュールをさらに備えることを特徴とする請求項31に記載のシステム。
【請求項34】
前記決定メカニズムが、
前記連続グルコースセンサからの出力を動的に監視可能な監視モジュールをさらに備えることを特徴とする請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
前記決定メカニズムが、
前記連続グルコースセンサからの前記動的に監視された出力が、前記第2の較正が行われる前に少なくとも15mg/dlだけ異なることを指定する判定命令をさらに備えることを特徴とする請求項34に記載のシステム。
【請求項36】
前記決定メカニズムが、
前記連続グルコースセンサからの前記動的に監視された出力が、前記第2の較正が行われる前に少なくとも20mg/dlだけ異なることを指定する判定命令をさらに備えることを特徴とする請求項34に記載のシステム。
【請求項37】
前記決定メカニズムが、
絶対変化率が前記第2の較正が行われる前に実質的に1以上であることを指定する判定命令をさらに備えることを特徴とする請求項34に記載のシステム。
【請求項38】
血液グルコースレベルと、血液グルコースと相互作用する間質液のグルコースレベルとの間の生理学的時間差を修正することにより、前記CGS出力の精度を改善可能な時間差補正モジュールをさらに備えることを特徴とする請求項34に記載のシステム。
【請求項39】
連続グルコースセンサと、
前記連続グルコースセンサを較正するための前記連続グルコースセンサとデータ通信している較正ユニットと、
前記連続グルコースセンサからの監視出力を命令監視する命令、および少なくとも15mg/dlだけ異なる第1および第2の連続グルコースセンサ出力値で第1および第2の較正を行う命令を含む一組の命令と
を備えることを特徴とするキット。
【請求項40】
前記較正ユニットが前記連続グルコースセンサに接続可能であることを特徴とする請求項39に記載のキット。
【請求項41】
前記較正ユニットが前記連続グルコースセンサの一体部材であることを特徴とする請求項39に記載のキット。
【請求項42】
前記命令が、前記連続グルコースセンサの前記動的に監視された出力が前記第2の較正が行われる前に少なくとも20mg/dlだけ異なることをさらに指定することを特徴とする請求項39に記載のキット。
【請求項43】
前記命令が、前記連続グルコースセンサの出力の絶対変化率が前記第2の較正が行われる前に1未満であることを指定することを特徴とする請求項39に記載のキット。
【請求項44】
前記精度改善メカニズムが、
前記連続グルコースセンサの出力にアクセス可能であるとともに、生理学的時間差を修正可能である時間差補正モジュールをさらに備えることを特徴とする請求項39に記載のキット。
【請求項45】
第1の血液グルコースレベルと、第1のグルコースデータと所定量だけ異なる第2の血液グルコースレベルとを用いてCGSを較正するステップを含むことを特徴とする、連続グルコースセンサの精度を改善する方法。
【請求項46】
前記所定量が少なくとも15mg/dlであることを特徴とする請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記所定量が少なくとも20mg/dlであることを特徴とする請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記第2のグルコースデータが、所定の判定基準に基づくCGS変化率の判定を含む決定ループにより得られることを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記所定の判定基準が、前記CGS変化率が1以上である場合には前記第1のグルコースデータによる前記CGS較正を維持すること、を指定することを特徴とする請求項48に記載の方法。
【請求項50】
請求項1に記載の方法を行うためのコンピュータ実行可能な命令を有することを特徴とするコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項51】
請求項16に記載の方法を行うためのコンピュータ実行可能な命令を有することを特徴とするコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項52】
請求項45に記載の方法を行うためのコンピュータ実行可能な命令を有することを特徴とするコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項53】
血液グルコースセンサを備える、連続グルコースを較正する較正ユニットと、
連続グルコースセンサからの出力を監視する命令、および少なくとも15mg/dlだけ異なる第1および第2の連続グルコースセンサ出力値で第1および第2の較正を行う命令を含む一組の命令であって、前記第1および第2の較正が前記血液グルコースセンサによる血液グルコースのそれぞれ第1および第2の判定を含むものである一組の命令と、
を含むことを特徴とするキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2009−507224(P2009−507224A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529194(P2008−529194)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【国際出願番号】PCT/US2006/033724
【国際公開番号】WO2007/027691
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(508063831)ユニヴァーシティー オブ ヴァージニア パテント ファンデーション (3)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF VIRGINIA PATENT FOUNDATION
【出願人】(507315922)アボット ダイアビーティーズ ケア インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT DIABETES CARE, INC.
【復代理人】
【識別番号】100116540
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 香
【復代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
【Fターム(参考)】