説明

連続加熱式マッフル炉

【課題】マッフルの耐久性の低下を好適に抑制することができる連続加熱式マッフル炉を提供する。
【解決手段】本発明の連続加熱式マッフル炉は、マッフル8の外部に配置され、被処理物Wを加熱する複数のガスバーナ4a,5a,6aと、マッフル8の外部に配置され、当該マッフル8を保温する電気ヒータ4b,5b,6bと、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理等を行うための連続加熱式マッフル炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、熱源から被処理物を隔離するためのマッフルを備えたマッフル炉には、前記マッフルを耐熱鋼等によって比較的長尺の筒状に形成することで、焼結部品や金属部品について連続的に熱処理を行う連続炉として構成されたものがある。このような連続加熱式マッフル炉は、前記マッフルと、前記マッフルの外部に配置され当該マッフル内の被処理物を間接的に加熱する加熱手段とを備えており、焼結部品等の被処理物をメッシュベルト等のコンベアによってマッフル内に順次通過させて連続的に熱処理を行うように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−121077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記連続加熱式マッフル炉において、例えば、休日等により操業を停止するごとに加熱手段を停止させて炉内温度を下げると、再度操業を行う際に昇温させることになり、炉内の昇降温が繰り返されることになる。このような場合、操業を停止するごとに、マッフルには、昇降温による温度変化によって熱応力が作用し、この熱応力により序々に変形が生じたり、その変形に伴って当該マッフルのつなぎ目部分に割れが発生し、当該マッフルの耐久性を低下させるおそれがあった。
そこで、操業を停止する際にも加熱手段を停止させず炉内温度を保持することで、マッフルにおける熱応力の発生を防止することが考えられるが、加熱手段としてガスバーナ等のガス燃焼式の加熱手段を用いている場合には、可燃ガスを使用するという性質上、操業が停止され作業者の監視が行き届かない状況下でガス燃焼式の加熱手段を動作させるのは好ましくない。このため、加熱手段を停止せざるを得ず、結果的にマッフルの耐久性を低下させてしまっていた。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、マッフルの耐久性の低下を好適に抑制することができる連続加熱式マッフル炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明は、被処理物を筒状のマッフル内で移動させることで連続的に熱処理を行う連続加熱式マッフル炉であって、前記マッフルの外部に配置され、前記被処理物を加熱するガス燃焼式加熱手段と、前記マッフルの外部に配置され、前記ガス燃焼式加熱手段が停止しているときに当該マッフルを保温する電気式加熱手段と、を備えたことを特徴としている。
【0007】
上記のように構成された連続加熱式マッフル炉によれば、マッフルを保温するための電気式加熱手段を備えているので、被処理物を加熱するためのガス燃焼式加熱手段を停止させたとしても、電気式加熱手段によってマッフルを加熱し保温することができる。この結果、当該焼結炉の操業を停止する場合には、可燃ガスを用いることなくマッフルを保温することができ、当該マッフルに作用する温度変化に伴う熱応力の発生を防止でき、マッフルの耐久性が低下するのを好適に抑制することができる。
【0008】
上記連続加熱式マッフル炉において、前記ガス燃焼式加熱手段は、マッフルの軸方向に沿って所定の間隔おきに配置された複数のガスバーナを備えており、前記電気抵抗式加熱手段は、互いに隣接する前記ガスバーナの相互間にそれぞれ配置された電気ヒータを備えていることが好ましい。
この場合、マッフルが複数のガスバーナにより加熱される加熱領域に、電気ヒータを偏り無く配置することができるので、マッフルにおける加熱領域を偏熱が生じることなく保温することができる。
【0009】
また、上記連続加熱式マッフル炉において、前記複数の電気ヒータは、マッフルの外部下側のみに配置されているものであってもよい。
この場合、電気ヒータは、操業を停止しているときに動作させるので、マッフル内を被処理物が通過することがなく加熱対象に変動が生じないことから、マッフルの外部下側に電気ヒータを配置すれば、マッフルを含む炉内全体を炉内雰囲気の対流によって均一に保温することができる。これにより、例えば、マッフルの外部上下両側に電気ヒータを配置した場合と比較して、運転コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の連続加熱式マッフル炉によれば、マッフルの耐久性の低下を好適に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るガス加熱式連続焼結炉の側面図である。
【図2】図1中、ガス加熱式連続焼結炉の予熱室、焼結室、及び徐冷室を拡大した部分側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るガス加熱式連続焼結炉の側面図である。
図1において、ガス加熱式連続焼結炉1は、焼結部品の焼結処理に関する一連の熱処理を連続的に行うためのものであり、被処理物Wを炉内に挿入するための装入テーブル2に続いて順次配置されている、バーンオフ室3、予熱室4、焼結室5、徐冷室6、及び冷却室7を備えている。また、ガス加熱式連続焼結炉1は、これら各室を貫通して配置された長尺な筒状のマッフル8と、マッフル8内を走行するメッシュベルト9aを有するコンベア9とを備えている。本実施形態のガス加熱式連続焼結炉1は、上記のようにマッフル8を備えた、いわゆるガス加熱式のマッフル型連続熱処理炉を構成している。
【0013】
バーンオフ室3は、マッフル8の外部上下側に配置された複数のガスバーナ3aを有しており、装入テーブル2からマッフル8内に装入され当該マッフル8内を移動してくる被処理物Wに対して加熱を行い、被処理物Wに含まれるワックス等の油脂分を取り除く脱脂処理を行う。なお、この脱脂処理は、本実施形態では、被処理物Wを約800度に昇温することで行われる。
【0014】
予熱室4は、脱脂処理を終えた被処理物Wを、焼結室9において焼結処理を行うための処理温度にまで段階的に昇温するために、処理温度よりもやや低い温度に予熱する予熱処理を行う。この予熱処理は、本実施形態では、被処理物Wを約1000度に昇温することで行われる。
焼結室5は、予熱室4にて予熱が完了した被処理物Wを所定の処理温度に保持して焼結処理を行う。本実施形態において、この焼結処理の処理温度は約1130度に設定される。
徐冷室6は、焼結処理の処理温度に保持された被処理物Wを段階的に降温させるための徐冷処理を行う。徐冷室6は、被処理物Wを焼結処理の処理温度よりもやや低い温度で保持する。徐冷処理は、本実施形態では、被処理物Wを約950度で保持することで行われる。
冷却室7は、徐冷処理後の被処理物Wを冷却する冷却処理を行うためのものであり、マッフル8の周囲に配置された水冷ジャケット(図示せず)を備えている。冷却室7は、前記水冷ジャケットによって、徐冷室6を通過してきた被処理物Wを冷却する。
【0015】
マッフル8は、耐熱鋼板等を用いて筒状に形成された部材であり、各室内に配置された耐火レンガからなる基礎部材(図示せず)によって支持されている。
マッフル8の内部には、メッシュベルト9aとともに当該メッシュベルト9a上に載置されて移動する被処理物Wが収納される。マッフル8は、内部に被処理物Wを収納することで、上記各室3〜7内の空間と、被処理物Wが処理される処理空間とを分離している。これにより、処理を行う際の雰囲気調整を容易にする他、各室が有する加熱装置から排出される燃焼排ガスに被処理物Wから生じる有害なガス等が混入するのを防止し、当該燃焼排ガスを廃熱として回収するのを容易にしている。
【0016】
コンベア9は、メッシュベルト9aを駆動することで当該メッシュベルト9aをマッフル8内で走行させ、メッシュベルト9aに載置された被処理物Wをマッフル8内で移動させることで、バーンオフ室3から順に、各室4〜7を通過させる。
【0017】
図2は、図1中、ガス加熱式連続焼結炉1の予熱室4、焼結室5、及び徐冷室6を拡大した部分側面図である。
予熱室4、焼結室5、及び徐冷室6は、それぞれ、被処理物Wを加熱するガス燃焼式加熱手段としてのガスバーナ4a,5a,6aを複数備えている。これらガスバーナ4a,5a,6aは、マッフル8の外部上側と下側それぞれに所定の間隔をおいて配置されている。また、これらガスバーナ4a,5a,6aは、上側に配置されたガスバーナと下側に配置されたガスバーナとがマッフル8の軸方向に交互となるように配置されている。
これらガスバーナ4a,5a,6aは、それぞれが配置されている各室4,5,6内を所定の温度に昇温保持することで、マッフル8及びマッフル8内を移動する被処理物Wを加熱する。
【0018】
また、予熱室4、焼結室5、及び徐冷室6は、それぞれ、マッフル8を保温するための電気式加熱手段としての電気ヒータ4b,5b,6bを複数備えている。
【0019】
これら電気ヒータ4b,5b,6bは、例えば抵抗加熱式のロッド型のヒータであり、複数本を一単位(図例では3本)として、マッフル8を支持する前記基礎部材の間隙に設けられ、マッフル8の外部下側のみに配置されている。また、各電気ヒータ4b,5b,6bは、互いに隣接するガスバーナ4a,5a,6aの相互間にそれぞれ配置されている。
【0020】
上記構成のガス加熱式連続焼結炉1は、操業時においては、各ガスバーナ4a,5a,6aを用いて各室4,5,6内を昇温保持しマッフル8及び被処理物Wを加熱する一方、操業を停止する場合には、複数の電気ヒータ4b,5b,6bのみによって各室4,5,6内を、例えば900度程度に昇温保持しマッフル8を保温する。
すなわち本実施形態のガス加熱式連続焼結炉1によれば、マッフル8を保温するための複数の電気ヒータ4b,5b,6bを備えているので、被処理物Wを加熱するための複数のガスバーナ4a,5a,6aを停止させたとしても、複数の電気ヒータ4b,5b,6bによってマッフル8を加熱し保温することができる。この結果、当該焼結炉の操業を停止する場合には、可燃ガスを用いることなくマッフル8を保温することができ、当該マッフル8に作用する温度変化に伴う熱応力の発生を防止でき、マッフル8の耐久性が低下するのを好適に抑制することができる。
【0021】
また、本実施形態のガス加熱式連続焼結炉1では、各電気ヒータ4b,5b,6bは、互いに隣接するガスバーナ4a,5a,6a同士の間ごとそれぞれに配置されているので、マッフル8が各ガスバーナ4a,5a,6aにより加熱される加熱領域に、各電気ヒータ4b,5b,6bを偏り無く配置することができ、マッフル8における加熱領域を偏熱が生じることなく保温することができる。
【0022】
また、本実施形態のガス加熱式連続焼結炉1において、各電気ヒータ4b,5b,6bは、当該焼結炉の操業を停止させているときに動作させるので、マッフル8内を被処理物Wが通過することがなく加熱対象に変動が生じない。このため、本実施形態のように、マッフル8の外部下側のみに各電気ヒータ4b,5b,6bを配置すれば、マッフル8を含む各室内それぞれを炉内雰囲気の対流によって均一に保温することができる。これにより、例えば、マッフル8の外部上下両側に電気ヒータを配置した場合と比較して、運転コストを低減することができる。
【0023】
なお、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではない。上記実施形態では、連続加熱式マッフル炉として構成されたガス加熱式連続焼結炉に本発明を適用した場合を例示したが、例えば、連続加熱式マッフル炉として構成された連続焼成炉や、アニール炉等に対しても本発明を適用することができる。
また、上記実施形態では、マッフルを横方向に配置した連続加熱式マッフル炉を例示したが、例えば、マッフルをピット等に縦方向に配置した連続加熱式マッフル炉に対しても本発明を適用することができる。
なお、上記実施形態では、複数の電気ヒータ4b,5b,6bを保温のためにのみ動作させる場合を例示したが、これに限定されるものではなく、操業時においても、ガスバーナ4a,5a,6aと併用して動作させてもよいことはもちろんである。
【符号の説明】
【0024】
1 ガス加熱式連続焼結炉(連続加熱式マッフル炉)
4a,5a,6a ガスバーナ(ガス燃焼式加熱手段)
4b,5b,6b 電気ヒータ(電気式加熱手段)
8 マッフル
W 被処理物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を筒状のマッフル内で移動させることで連続的に熱処理を行う連続加熱式マッフル炉であって、
前記マッフルの外部に配置され、前記被処理物を加熱するガス燃焼式加熱手段と、
前記マッフルの外部に配置され、前記ガス燃焼式加熱手段が停止しているときに当該マッフルを保温する電気式加熱手段と、を備えたことを特徴とする連続加熱式マッフル炉。
【請求項2】
前記ガス燃焼式加熱手段は、マッフルの軸方向に沿って所定の間隔おきに配置された複数のガスバーナを備えており、
前記電気抵抗式加熱手段は、互いに隣接する前記ガスバーナの相互間にそれぞれ配置された電気ヒータを備えている請求項1に記載の連続加熱式マッフル炉。
【請求項3】
前記複数の電気ヒータは、マッフルの外部下側のみに配置されている請求項2に記載の連続加熱式マッフル炉。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−153733(P2011−153733A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14234(P2010−14234)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000167200)光洋サーモシステム株式会社 (180)
【Fターム(参考)】