説明

連続式加熱炉用放炎防止装置および放炎防止方法

【課題】加熱炉の扉の開閉時の火炎の漏れ出しを安定して防止する。
【解決手段】この放炎防止装置は、加熱炉10からの排気ガスを排出する排気塔23に至る煙道24の途中部分に付設されたシールドガス用ブロワ2と、このブロワ2によって送り出された煙道24内の排気ガスを装入扉12および抽出扉14の近傍まで導くシールドガス用管路3と、このシールドガス用管路3に連通され且つ装入扉12および抽出扉14にスラブ側に向けて排気ガスを噴射するように付設されたシールドガス用ノズル4とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱ガス雰囲気の炉内をスラブが搬送されつつ加熱処理される連続式加熱炉に好適な放炎防止装置および放炎防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図4に例示するように、例えばウォーキングビーム式の加熱炉100において、スラブの装入時には、スラブを装入装置13で持ち上げ、加熱炉100の装入扉12を開けた後に、装入装置13で炉内に装入する。また、スラブの抽出時には、加熱炉100の抽出扉14を開け、抽出装置15を炉内に装入し、炉内にて加熱が終了したスラブを持ち上げて抽出する。
【0003】
ところで、このようなスラブの装入ないし抽出時には、装入扉または抽出扉から炉内の火炎が外部に漏れ出すと加熱炉の熱効率が低下する。そこで、このようなスラブの装入ないし抽出時に、装入扉または抽出扉から炉内の火炎が外部に漏れないように、例えば特許文献1には、扉の下部に耐火物製のチェーン等をノレン状に垂設する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭56−86500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようなノレン状の耐火物は耐摩耗性に乏しく、スラブとの摩擦によって隙間が次第に大きくなり、徐々に火炎が外部に漏れるという問題があった。
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、加熱炉の扉の開閉時の火炎の漏れ出しを安定して防止することができる連続式加熱炉用放炎防止装置および放炎防止方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで、装入扉または抽出扉を開けたときに、炉内の火炎が外部に漏れ出すことを防止する方策としては、扉の開口部をガスによってシールドする方策が考えられる。そして、このようなシールドに使用可能なガスとしては、窒素やアルゴン等が使用可能である。しかし、これらのシールドガスを別途に用意する場合には、原単位がかかるという問題がある。また、シールドガスとして空気を利用する手段も考えられるものの、空気を利用する場合には、炉内の熱ガス雰囲気の酸素濃度に影響を与えるという問題がある。さらに、上述した窒素やアルゴン、空気等のガスは、一般的に常温であるから、炉内の熱ガス雰囲気の温度条件にも影響を与えるという問題もある。
【0007】
そこで、本発明者は、連続式加熱炉でのスラブの装入ないし抽出時に、装入扉または抽出扉から火炎が放炎することを、自炉の排気ガスを利用して防止することによって上記課題を解決した。
すなわち、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る連続式加熱炉用放炎防止装置は、熱ガス雰囲気の炉内をスラブが搬送されつつ加熱処理される連続式加熱炉に用いられ、該加熱炉の装入扉または抽出扉からの熱ガスの漏れ出しを防止する放炎防止装置であって、前記加熱炉からの排気ガスを排出する排気塔に至る煙道の途中部分に付設されたシールドガス用ブロワと、該ブロワによって送り出された前記煙道内の排気ガスを前記装入扉または前記抽出扉の近傍まで導くシールドガス用管路と、該シールドガス用管路に連通され且つ前記装入扉または前記抽出扉にスラブ側に向けて排気ガスを噴射するように付設されたシールドガス用ノズルとを有することを特徴とする。
【0008】
ここで、本発明の一態様に係る連続式加熱炉用放炎防止装置において、前記シールドガス用ノズルが、前記装入扉または前記抽出扉の少なくとも下部に設けられるとともに、噴射する排気ガスの噴射方向が、前記装入扉または前記抽出扉の炉外側から炉内側に向けて噴射されるようになっていれば、噴射による排気ガスの流れが炉外側から炉内側に向かうため、加熱炉の扉の開閉時の火炎の漏れ出しを安定して防止する上で好適である。
また、本発明の一態様に係る連続式加熱炉用放炎防止装置において、前記シールドガス用ブロワが、炉尻煙道と排気塔との途中部分に付設されていれば、炉尻煙道側からの排気ガスを送り出すことになるため、炉内の熱ガス雰囲気を良好な状態に維持する上で好適である。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る連続式加熱炉の放炎防止方法は、熱ガス雰囲気の炉内をスラブが搬送されつつ加熱処理される連続式加熱炉に用いられ、該加熱炉の装入扉または抽出扉からの熱ガスの漏れ出しを防止する放炎防止方法であって、前記加熱炉からの排気ガスを排出する排気塔に至る煙道の途中部分から排気ガスを送り出し、その送り出された排気ガスを前記装入扉または前記抽出扉の近傍まで導き、その導かれた排気ガスを前記装入扉または前記抽出扉が解放されたときにスラブ側に向けて噴射することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、スラブを加熱する連続式加熱炉において、加熱炉の装入扉または抽出扉を開けたときに、開口部を自炉の排気ガスによってガスシールドすることができる。そのため、加熱炉の扉の開閉時の火炎の漏れだしを防止することができるとともに、自炉の排気ガスによってシールドするため、炉内雰囲気に与える影響、つまり炉内のガス成分や温度に与える影響を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0011】
上述のように、本発明によれば、加熱炉の扉の開閉時の火炎の漏れ出しを安定して防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一態様に係る放炎防止装置を備える連続式加熱炉設備の平面配置を示す模式図である。
【図2】本発明の一態様に係る放炎防止装置を備える連続式加熱炉設備の側面視における模式図であり、同図では一部を搬送方向に沿った断面にて示している。
【図3】図2の装入扉部分を拡大して示す模式図である。
【図4】従来の連続式加熱炉設備の一例の側面視における模式図であり、同図では一部を搬送方向に沿った断面にて示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。
図1に示すように、この連続式加熱炉設備30は、複数(この例では3炉)の加熱炉10を並列して備えている。各加熱炉10は、装入側および抽出側それぞれに、搬送装置11が、各加熱炉10とは直交する方向に沿ってスラブSを搬送可能に配置されている。各加熱炉10の装入扉12には、各扉12に対向する位置に装入装置13が設けられ、また、各加熱炉の抽出扉14には、各扉14に対向する位置に抽出装置15が設けられている。そして、装入側の搬送装置11の上流にはスラブ置き場16があり、このスラブ置き場16から、上流の搬送装置11にスラブSが載置され、装入装置13によって各加熱炉10内に順次に装入されるようになっている。また、所定の熱処理後、抽出装置15によってスラブSが抽出され、抽出側の搬送装置11を経て次の工程(熱間圧延)に供されるようになっている。
【0014】
各加熱炉10内には、図2に示すように、例えばウォーキングビーム式の搬送機構20が搬送方向に沿って設置されている。加熱炉10の装入側には上下に移動可能な装入扉12が設けられ、また、抽出側にも上下に移動可能な抽出扉14が設けられている。加熱炉10にスラブSを装入するときは、スラブSを装入装置13で持ち上げ、加熱炉10の装入扉12を上方にスライド移動して開けた後に、装入装置13で炉内に装入する。また、スラブSを抽出するときは、加熱炉10の抽出扉14を上方にスライド移動して開け、抽出装置15を炉内に装入し、炉内にて加熱が終了したスラブSを持ち上げて抽出するようになっている。
【0015】
そして、上記搬送機構20で搬送されるスラブSの上下には、複数のバーナー17が搬送方向に沿って配置されている。また、炉外の出側には燃焼空気を炉内に送気するための燃焼空気用ブロワ18が設けられるとともに、熱ガス循環機構19が配置されている。熱ガス循環機構19は、炉外上部に沿って設けられた主管路21と、主管路21から分岐されて炉内に連通する分岐管路22と、主管路21の途中に配置された排気ガス用ブロワ23とを有し、燃焼空気用ブロワ18と排気ガス用ブロワ23との協働によって、複数のバーナー17の燃焼に必要な燃焼空気を炉内に循環させるとともに、炉外上部に沿ってバーナー17で燃焼された排気ガスを送気させ、排気ガス用ブロワを介して排気塔23から排気するようになっている。これにより、熱ガス雰囲気の炉内をスラブSが搬送されつつ加熱されて、スラブSを所定の温度に段階的に加熱可能になっている。
【0016】
ここで、加熱炉10の装入側の近傍には、燃焼後の排気ガスを最終的に排出するための炉尻煙道5が炉内に連通配置されており、この炉尻煙道5が上記排気塔23に連通している。そして、この炉尻煙道5と排気塔23との途中部分には、シールドガス用ブロワ2が分岐配管6を介して設置されており、このシールドガス用ブロワ2に二本のシールドガス用管路3が連結されている。これら二本のシールドガス用管路3は、シールドガス用ブロワ2によって送り出された煙道24内の排気ガスを装入扉12および抽出扉14の近傍までそれぞれ導く位置まで配管されている。
【0017】
そして、図3に要部を拡大図示するように、装入扉12および抽出扉14には、シールドガス用ノズル4が扉の開口部の上下の位置それぞれに付設されている。なお、装入扉12および抽出扉14に付設されるシールドガス用ノズル4の構成は、炉内側に向けて左右対称なので、ここでは装入扉側について説明し、抽出扉側についてはその図示および説明を省略する。
【0018】
このシールドガス用ノズル4は、図3に示すように、シールドガス用管路3に連通されており、装入扉12の下部12a、および装入口7の下部上端(装入扉先端が対向する位置)7aに、スラブS側に向けて排気ガスGを噴射するようにそれぞれ付設されている。そして、各ノズル4の設置方向は、噴射する排気ガスGの噴射方向が、装入扉の炉外側から炉内側に向けて噴射されるように傾けて設置され、これにより、噴射による排気ガスGの流れが炉外側から炉内側に向かい、加熱炉10の装入扉12の開閉時の火炎の漏れ出しを安定して防止可能とされている。なお、シールドガス用ノズル4を傾ける程度は、スラブS表面に垂直な線を基準として、この垂直な線よりも炉内側を向くように設定されていることが望ましい。
【0019】
次に、この加熱炉10の放炎防止装置および放炎防止方法の作用・効果について説明する。
この連続式加熱炉設備30は、各加熱炉10において、各加熱炉10にスラブSを装入するときは、スラブSを装入装置13で持ち上げ、加熱炉10の装入扉12を開けた後に、装入装置13で炉内に装入する。装入側からスラブSが炉内に装入されると、予熱帯で予熱され装入側から抽出側に順次に搬送機構20で送られる。そして、第1から第2加熱帯で抽出目標温度に向けて本格的に加熱される。次いで、均熱帯で、スラブ外面と中心部との温度差が無くなるように均熱化され、抽出目標温度に到達したら加熱炉10の抽出扉14を開け、抽出装置15を炉内に装入し、炉内にて加熱が終了したスラブSを持ち上げて抽出側から抽出して、次の工程(熱間圧延)に供される。スラブSの加熱に使用された燃焼ガスは、スラブSの搬送方向に対向して予熱帯の方向に流れていき、炉尻煙道5から排気塔23へと排出される。
【0020】
ここで、スラブSの装入ないし抽出時には、装入扉12または抽出扉14から炉内の火炎が外部に漏れ出すと加熱炉10の熱効率が低下するという問題があるが、この連続式加熱炉設備30では、シールドガス用ブロワ2により、加熱炉10からの排気ガスを排出する排気塔23に至る煙道24の途中部分から排気ガスを送り出し、シールドガス用管路3により、シールドガス用ブロワ2で送り出された煙道24内の排気ガスを装入扉12および抽出扉14の近傍まで導き、その導かれた排気ガスを、シールドガス用ノズル4により、装入扉12および抽出扉14が解放されたときにスラブS側に向けて噴射する。
【0021】
これにより、この連続式加熱炉設備30は、各加熱炉10において、装入扉12および抽出扉14を開けたときに、その開口部を自炉の排気ガスによってガスシールドすることができる。そのため、加熱炉10の扉12,14の開閉時の火炎の漏れだしを安定して防止することができるとともに、自炉の排気ガスによってシールドするため、炉内雰囲気に与える影響、つまり炉内のガス成分や温度に与える影響を少なくすることができる。
【0022】
なお、本発明に係る連続式加熱炉用放炎防止装置および放炎防止方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能であることは勿論である。
例えば、上記実施形態では、シールドガス用ブロワ2が、炉尻煙道5と排気塔23との途中部分に付設された例で説明したが、これに限定されず、シールドガス用ブロワ2は、排気塔23に至る煙道の途中部分に付設されれば、適宜の位置に配置可能である。しかし、炉内の熱ガス雰囲気を良好な状態に維持する上では、炉尻煙道5側からの排気ガスを送り出せるように、シールドガス用ブロワ2を、炉尻煙道5と排気塔23との途中部分に付設することが好ましい。
【0023】
また、上記実施形態では、装入扉12および抽出扉14の開口の上下の位置それぞれにシールドガス用ノズル4を配置している例で説明したが、これに限定されず、シールドガス用ノズル4は、装入扉12または抽出扉14に配置してよいし、いずれかの開口の上下の位置の一方に配置するだけでも加熱炉10の扉12,14の開閉時の火炎の漏れ出しを安定して防止することができる。しかし、加熱炉10の扉12,14の開閉時の火炎の漏れ出しをより一層安定して防止可能とする上では、装入扉12および抽出扉14の開口の上下の位置それぞれにシールドガス用ノズル4を配置することが望ましい。
【0024】
また、上記実施形態では、シールドガス用ノズル4は、噴射する排気ガスGの噴射方向が、装入扉12(および抽出扉14)の炉外側から炉内側に向けて噴射されるようになっている例で説明したが、これに限定されず、少なくとも、スラブS側に向けて排気ガスGを噴射するように付設されるものであれば、加熱炉10の扉12,14の開閉時の火炎の漏れ出しを防止可能である。しかし、加熱炉10の扉12,14の開閉時の火炎の漏れ出しをより一層安定して防止可能とする上では、シールドガス用ノズル4の噴射する排気ガスGの噴射方向を、装入扉12および抽出扉14の炉外側から炉内側に向けて噴射する構成とすることが望ましい。
【符号の説明】
【0025】
1 放炎防止装置
2 シールドガス用ブロワ
3 シールドガス用管路
4 シールドガス用ノズル
5 炉尻煙道
6 分岐配管
10 加熱炉
11 搬送装置
12 装入扉
13 装入装置
14 抽出扉
15 抽出装置
16 スラブ置き場
17 バーナー
18 燃焼空気用ブロワ
19 熱ガス循環機構
20 搬送機構
21 主管路
22 分岐管路
23 排気塔
24 煙道
30 連続式加熱炉設備
S スラブ
G (噴射する)排気ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱ガス雰囲気の炉内をスラブが搬送されつつ加熱処理される連続式加熱炉に用いられ、該加熱炉の装入扉または抽出扉からの熱ガスの漏れ出しを防止する放炎防止装置であって、
前記加熱炉からの排気ガスを排出する排気塔に至る煙道の途中部分に付設されたシールドガス用ブロワと、該ブロワによって送り出された前記煙道内の排気ガスを前記装入扉または前記抽出扉の近傍まで導くシールドガス用管路と、該シールドガス用管路に連通され且つ前記装入扉または前記抽出扉にスラブ側に向けて排気ガスを噴射するように付設されたシールドガス用ノズルとを有することを特徴とする連続式加熱炉用放炎防止装置。
【請求項2】
前記シールドガス用ノズルは、前記装入扉または前記抽出扉の少なくとも下部に設けられるとともに、噴射する排気ガスの噴射方向が、前記装入扉または前記抽出扉の炉外側から炉内側に向けて噴射されるようになっていることを特徴とする請求項1に記載の連続式加熱炉用放炎防止装置。
【請求項3】
前記シールドガス用ブロワは、前記排気塔と炉尻煙道との途中部分に付設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の連続式加熱炉用放炎防止装置。
【請求項4】
熱ガス雰囲気の炉内をスラブが搬送されつつ加熱処理される連続式加熱炉に用いられ、該加熱炉の装入扉または抽出扉からの熱ガスの漏れ出しを防止する放炎防止方法であって、
前記加熱炉からの排気ガスを排出する排気塔に至る煙道の途中部分から排気ガスを送り出し、その送り出された排気ガスを前記装入扉または前記抽出扉の近傍まで導き、その導かれた排気ガスを前記装入扉または前記抽出扉が解放されたときにスラブ側に向けて噴射することを特徴とする連続式加熱炉の放炎防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−87300(P2013−87300A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226177(P2011−226177)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】