説明

連続式加熱炉

【課題】予熱帯、加熱帯の上部ゾーン及び下部ゾーンの両側壁にジェネバーナを配置し、均熱帯の上部ゾーンにルーフバーナ又は軸流バーナを配設してなる連続式加熱炉の抽出扉の隙間から黒煙が吹き出すのを抑制する連続式加熱炉の提供。
【解決手段】炉体の一方に鋼片の装入扉21を有し、他方に鋼片の抽出扉22を有し、予熱帯5及び加熱帯6,7には両側壁にリジェネバーナが配置され、均熱帯8の天井部にはルーフバーナ17aが配置され、均熱帯8の下部ゾーン10の両側壁にはリジェネバーナが配置された連続式加熱炉において、均熱帯8の下部ゾーンのリジェネバーナのうち、最も抽出側に位置するリジェネバーナ27bとこれと隣接する一対のリジェネバーナ28bとの間に、炉体を横断し且つ高さがウォーキングビームより低い仕切り壁23を炉床上に立設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラブ、ビレットなどの鋼片を連続的に加熱する連続式加熱炉に関する。
【背景技術】
【0002】
スラブ、ビレットなどの鋼片を連続的に加熱する連続式加熱炉として、リジェネバーナ(蓄熱式バーナ)を備えた連続式加熱炉が利用されている。以下に図を用いて連続式加熱炉について説明する。
【0003】
図4は蓄熱式バーナを備えた従来の連続式加熱炉の断面図、図5は図4に示す連続式加熱炉の上部ゾーンの平面図、図6は図4に示す連続式加熱炉の下部ゾーンの平面図、図7(a)は図4に示す炉の予熱帯及び加熱帯の断面図、図7(b)は図4に示す炉の均熱帯の断面図をそれぞれ示す。
【0004】
連続式加熱炉の炉体1の予熱帯5、加熱帯A6、加熱帯B7の上部ゾーン9及び下部ゾーン10の両側壁には対向して対となるリジェネバーナ11a,11b〜16a,16bが配置され、均熱帯8の下部ゾーン10にはリジェネバーナ18a,18bが配置されている。上部ゾーン9の炉体の天井部には、後工程の圧延による品質向上を目的として鋼片の長手方向(炉幅方向)の加熱温度に傾斜を持たせる等の理由によりルーフバーナ17a、17bが配置されている。上部ゾーン9及び下部ゾーン10には各帯5〜8の境界に各帯5〜8を仕切る仕切り壁19が設けられている。
【0005】
鋼片3は装入扉21を開いて炉内に装入され、図7に示すウォーキングビーム4で炉内を順次予熱帯5、加熱帯A6、加熱帯B7、均熱帯8へと搬送中に加熱され、抽出扉22を開いて系外に搬出される。前記バーナから燃焼・排出された排ガスは煙道2から系外へ排出される。
【0006】
図8は他の構造を有する従来の連続式加熱炉の断面図であり、図9は図8に示す炉の上部ゾーンの平面図である。この連続式加熱炉と図4〜図7で示した従来の連続式加熱炉との構成の相違は均熱帯の上部ゾーンの天井部にルーフバーナの代わりに軸流バーナ20a、20bを配設した点であり、他の構成は同じである。
【0007】
ところで、前記従来の両加熱炉に配設されているリジェネバーナは低NOx化のため、燃焼空気と燃料の投入口を離して緩慢燃焼させる形式が一般的になっている。このような燃焼空気と燃料の投入口を離したリジェネバーナを使用した場合、最も抽出側(抽出扉側)に配置されたリジェネバーナにおいて、抽出扉22側に抽出前壁24が存在するためバーナから炉内へ吹き込んだ燃焼空気と燃料ガスが抽出前壁24側へ吸い寄せられ、抽出前壁24に沿って緩慢燃焼をしながら炉巾方向へ流れる。一方、加熱炉の抽出扉22部分を完全にシールすることは不可能であるため炉内圧力をプラス圧として抽出扉22部分からの外気侵入を防止しており、抽出扉22付近の炉内排ガスは常に抽出扉22部分の隙間から炉外へ排出されるが、緩慢燃焼による未燃の燃料が図10に示すように抽出前壁24に沿ったガス流れ25となり、その一部が抽出扉22部分の隙間から黒煙となって吹き出し、環境を汚染するという問題がある。
【0008】
前述の抽出扉22からの黒煙吹き出し防止技術が特許文献1に開示されている。特許文献1には、均熱帯の上部ゾーンの炉体の両側壁にリジェネバーナが対向配設された連続式加熱炉において、炉内の排ガス流れを改善し、前記未燃の燃料が抽出扉の隙間から吹き出すのを防ぐ方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−240133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記特許文献1に記載されている技術では、本発明が対象としている均熱帯の上部ゾーンの天井部にルーフバーナ又は軸流バーナを配設し、下部ゾーンにのみリジェネバーナを使用している前記従来の連続式加熱炉の炉内の排ガス流れを改善することができないため、前記のとおり未燃の燃料が抽出扉の隙間から黒煙となって吹き出して環境を汚染するという問題を解決することができない。
【0011】
そこで、本発明は、予熱帯、加熱帯の上部ゾーン及び下部ゾーンの両側壁にジェネバーナを配置し、均熱帯の上部ゾーンにルーフバーナ又は軸流バーナを配設してなる連続式加熱炉において、抽出扉の隙間から黒煙が吹き出すのを抑制することが可能な連続式加熱炉を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、予熱帯、加熱帯及び均熱帯が鋼片の搬送方向に順次配置された炉体の一端に鋼片の装入扉を有するとともに他端に鋼片の抽出扉を有し、予熱帯及び加熱帯のそれぞれの上部ゾーン及び下部ゾーンの両側壁に対向して対となる複数のリジェネバーナが配置され、均熱帯の上部ゾーンの天井部にルーフバーナ又は軸流バーナが配置され、均熱帯の下部ゾーンの両側壁に対向して対となる複数のリジェネバーナが配置されている連続式加熱炉において、均熱帯の下部ゾーンに配置された前記複数のリジェネバーナのうち、最も抽出側に位置する一対のリジェネバーナとこのリジェネバーナと隣接する一対のリジェネバーナとの間に、炉体を横断し且つ高さがウォーキングビームより低い仕切り壁を炉床上に立設したことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、前記構成において、前記最も抽出側に位置する一対のリジェネバーナと仕切り壁との炉体長手方向の間隔を、前記一対のリジェネバーナと抽出前壁との炉体長手方向との間隔より短くしたり、前記仕切り壁の抽出側の立設面にコーティング材を塗布したりすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、均熱帯の下部ゾーンの炉体の両側壁に配置されたリジェネバーナのうち、最も抽出側に位置する一対のリジェネバーナから吹き込まれた燃料ガスと燃焼空気を炉床から立設された仕切り壁に沿って流すことによって、燃焼空気と燃料ガスが炉内で燃焼を完了するのに必要な時間が確保され、燃焼空気と燃料ガスを炉内で完全に燃焼させることができるので、抽出扉の隙間から燃焼途中の未燃分が黒煙となって吹き出すことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の仕切り壁を配設した連続式加熱炉の断面図である。
【図2】図1に示す下部ゾーンの平面図である。
【図3】図2に示す下部ゾーンの均熱帯の部分拡大図である。
【図4】均熱帯の上部ゾーンにルーフバーナを配設した従来の連続式加熱炉の断面図である。
【図5】図4に示す炉の上部ゾーンの平面図である。
【図6】図4に示す炉の上部ゾーンの平面図である。
【図7】(a)は図4に示す炉の予熱帯、(b)は均熱帯の断面図である。
【図8】均熱帯の上部ゾーンに軸流バーナを配設した従来の連続式加熱炉の断面図である。
【図9】図8に示す炉の上部ゾーンの平面図である。
【図10】図4または図8に示す下部ゾーンの均熱帯の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照しつつ、本発明の実施の形態につき説明する。
【実施例1】
【0017】
本実施例1の連続式加熱炉の炉体は、図4〜図7で示したルーフバーナを配設した従来の連続式加熱炉と実質同一である。すなわち、図1に示すとおり、炉体1は、被熱物である鋼材3を搬送・加熱する方向に、4つのゾーンである予熱帯5、加熱帯A6、加熱帯B7、均熱帯8で区分されている。予熱帯5、加熱帯A6、加熱帯B7の上部ゾーン9及び下部ゾーン10の炉体1の側壁に、対向して対となるリジェネバーナ11a,11b〜16a,16bが配設され、均熱帯8の上部ゾーン9の炉体1の天井部には、複数のルーフバーナ17a、17bが配置され、下部ゾーンにはリジェネバーナ18a,18bが配置され、各帯を仕切るため仕切り壁19が設けられる。
【0018】
鋼片3は、炉体1の一方に設けられている装入扉21から炉内に装入され、炉内を搬送中に加熱・均熱され、炉体1の他方に設けられている抽出扉22から系外に出される。以上は、前記のとおり従来の連続式加熱炉の構成と同じである。
【0019】
本実施例1では、図1〜図3に示すように、抽出前壁24の近傍には、最も抽出側に位置する一対のリジェネバーナ27a,27bが設けられ、このバーナ27a,27bに隣接して、一対のリジェネバーナ28a,28bが設けられている。
【0020】
最も抽出側のバーナ27a,27bとこのバーナに隣接するバーナ28a,28bの炉体の長手方向の間で、炉床上に炉体1を横断するとともに、高さがウォーキングビーム4より低い仕切り壁23が立設されている。仕切り壁23は、各帯5〜8の仕切り壁19と同様に、例えば、耐火煉瓦を築造することにより構成されている。
【0021】
図3において、下側にあるリジェネバーナ27bが燃焼している場合、燃焼ガスと空気の流れは仕切り壁23に沿った矢印26で示す状態になる。バーナ27bから吹き込まれた燃料ガスと燃焼空気は、炉床から立設された仕切り壁23が存在するため、コアンダ効果により仕切り壁23に沿って流れ、両者が炉内で燃焼を完了するのに必要な時間を確保されて炉内で完全に燃焼する。それにより、抽出扉22の隙間から燃焼途中の未燃分が黒煙となって吹き出すことを防止することができる。
【0022】
最も抽出側に位置する一対のリジェネバーナ27a,27bと仕切り壁23との炉体長手方向の間隔を、一対のリジェネバーナ27a,27bと抽出前壁24との炉体長手方向との間隔より短くすることにより、コアンダ効果を更に増加させることが可能となり、抽出扉22の隙間からの未燃の燃料が吹き出すことが確実に防止可能となる。
【0023】
さらに、仕切り壁23の抽出側の耐火煉瓦の立設面に、コーティング材を塗布すると、前記コアンダ効果をさらに増加させることが可能となり、抽出扉22の隙間からの未燃の燃料が吹き出すことが確実に防止可能となる。なお、耐火煉瓦に塗布するコーティング材としては、耐熱性のアルミナを主成分とする吹きつけ材等が好ましい。
【実施例2】
【0024】
本実施例2の連続式加熱炉の炉体は、図8で示した軸流バーナを配設した従来の連続式加熱炉と実質同一である。
【0025】
図4〜図7で示した実施例1との相違点は、均熱帯の上部ゾーンの天井部にルーフバーナの代わりに軸流バーナが配置されている点のみであり、他の仕切り壁などの構成は、同一である。すなわち、実施例1と同様に、最も抽出側に位置する一対のリジェネバーナと隣接する一対のリジェネバーナとの間の炉床上に、炉体を横断し、高さがウォーキングビームより低い仕切り壁が設けられる。
【0026】
本実施例2においても、実施例1と同様に、仕切り壁により、最も抽出側に位置する一対のリジェネバーナから吹き込まれた燃料ガスと燃焼空気は、仕切り壁に沿って流れ、炉内で燃焼を完了するのに必要な時間を確保されて炉内で完全に燃焼するので、抽出扉の隙間から燃焼途中の未燃分が吹き出すことを防止することができる。
【符号の説明】
【0027】
1:連続式加熱炉の炉体
2:煙道
3:鋼片
4:ウォーキングビーム
5:予熱帯
6:加熱帯A
7:加熱帯B
8:均熱帯
9:上部ゾーン
10:下部ゾーン
11a,11b〜16a,16b:リジェネバーナ
17a,17b:ルーフバーナ
18a,18b:リジェネバーナ
19:各帯の仕切り壁
20a,20b:軸流バーナ
21:装入扉
22:抽出扉
23:仕切り壁
24:抽出前壁
25:ガスの流れ
26:ガスの流れ
27a,27b:最も抽出側に位置するリジェネバーナ
28a,28b:リジェネバーナ27に隣接するリジェネバーナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予熱帯、加熱帯及び均熱帯が鋼片の搬送方向に順次配置された炉体の一端に鋼片の装入扉を有するとともに他端に鋼片の抽出扉を有し、予熱帯及び加熱帯のそれぞれの上部ゾーン及び下部ゾーンの両側壁に対向して対となる複数のリジェネバーナが配置され、均熱帯の上部ゾーンの天井部にルーフバーナ又は軸流バーナが配置され、均熱帯の下部ゾーンの両側壁に対向して対となる複数のリジェネバーナが配置されている連続式加熱炉において、
均熱帯の下部ゾーンに配置された前記複数のリジェネバーナのうち、最も抽出側に位置する一対のリジェネバーナとこのリジェネバーナと隣接する一対のリジェネバーナとの間に、炉体を横断し且つ高さがウォーキングビームより低い仕切り壁を炉床上に立設したことを特徴とする連続式加熱炉。
【請求項2】
前記最も抽出側に位置する一対のリジェネバーナと仕切り壁との炉体長手方向の間隔を、前記一対のリジェネバーナと抽出前壁との炉体長手方向との間隔より短くすることを特徴とする請求項1に記載の連続式加熱炉。
【請求項3】
前記仕切り壁の抽出側の立設面にコーティング材を塗布したことを特徴とする請求項1又は2に記載の連続式加熱炉。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−225939(P2011−225939A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97212(P2010−97212)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】