説明

連続減容炭化装置

【課題】安定した品位の炭化処理物を高能率で製出でき、炭化処理物の用途に応じて炭化度合を容易に調整でき、原料がサイズの小さいものや熱伝導性に劣るものでも効率よく炭化処理できる連続減容炭化装置を提供する。
【解決手段】炭化処理ケーシング1と、回転自在に軸支された中空状の回転ドラム2と、その駆動モーター3と、回転ドラム2内へ熱風を吹き込む熱風発生炉とを備える。回転ドラム2は、外周面に多数の処理ポケット20が凹設されている。炭化処理ケーシング1は、上部側に原料投入口11と、下部側に処理物排出口12と、凹円弧状周壁部13を備える。回転ドラム2を熱風G1によって加熱した状態で回転しつつ、原料投入口11に炭化用原料Rを投入することにより、連続的に炭化用原料Rが処理ポケット20に充填されて、処理物排出口12まで移動する間に熱分解し、減容した炭化処理物Cとして排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば各種木質廃材、鋸屑、家畜糞、コーヒー粕、茶殻、果実殻等の有機質固形物を原料として、連続的に熱分解させて減容した炭化処理物を製出させるための連続減容炭化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、木炭を始めとする炭は、その調湿作用、脱臭作用、マイナスイオン放出作用、有害物質吸着作用、防黴性、防ダニ性等の優れた性質が注目され、本来の燃料として用いる以外に、一般家庭では室内各所や床下に配置したり、炊飯器内に入れたり、飲料水や風呂水等に浸漬して用いている。また、細片化ないし粉末化したものを各種の建築資材や建具、畳等にサンドイッチ状態にしたものや、布団等の寝具類の内部に納めたものも商品化され、更に土壌改質に用いたり、樹脂やセラミック材料等に混入する等、様々な方面に用途が拡がりつつあり、その需要はますます増大する傾向にある。
【0003】
一方、最近では、近年、環境保全や省資源の観点から、例えば、間伐材や選定材、木材や竹材の削り屑、鋸屑、バーク(樹皮)、木質建築廃材、木製家具類廃棄物、牛糞、豚糞、鶏糞、馬糞、コーヒー粕、茶殻、果実殻、穀物殻、古紙、可燃ゴミ等の様々な可燃性固形廃物について、その減容及び有効再利用が要望されている。
【0004】
従来、木質廃材の破砕チップ等を原料にして有用な消し炭状の炭化物を製出させる炭化装置として、上部側を開閉蓋付きの材料出入口とする炉本体の内部に、下部に熱気導入孔を備えた炭化用加熱筒が炉本体の中心部に立設されると共に、その上端側が横切り筒を介して外部の排気筒が接続配管され、炉本体の底部に空気取入れ口を有するものが提案されている(特許文献1)。また、本発明者らは、更に改良型の炭化装置として、前記の炭化用加熱筒に代えて、下部に炉内空間に連通する排気導入孔を備えて上部が閉塞した外筒と、この外筒内に同心状に配置して下端が炉外への排気路に繋がる内筒とからなる二重筒状の排気加熱筒を設けたものを開発・実用化している(特許文献2)。
【0005】
上記前者の炭化装置では、炉本体内に装填された炭化用材料に底部側から着火して酸素不足状態で自発燃焼させるが、その燃焼ガスの吸入で赤熱した炭化用加熱筒からの熱放射により、炭化用材料の炭化が促進される。また、上記後者の改良型の炭化装置では、炭化用材料の自発燃焼にて発生する高温の燃焼排ガスが二重筒状の排気加熱筒内を上下往復して炉外へ出るため、燃焼排ガスから加熱排気筒への熱伝播量が増大し、加熱排気筒全体の蓄熱による赤熱化の急速な進行によって炉内温度がより早く上昇し、もって炭化用材料の熱分解及び自発燃焼がより促進され、完全炭化に要する時間がより短縮される。
【特許文献1】特開2003−119468号公報
【特許文献2】特許第4017556号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の炭化装置では、炉本体内に装填した分の原料を炭化処理し、製出した炭化処理物を取り出して新たに原料を装填して再度の処理を行うというバッジ方式であるため、その入れ換え作業に手間がかかって処理能率に劣ると共に、処理毎に得られる炭化処理物の品位が変動し易い上、炭化度合の調整が難しいという難点があった。
【0007】
一方、炭化用原料は、従来では木材や竹材のチップとして数cmから十数cm程度のサイズが主流であったが、最近では木質原料でも間伐材や伐採竹材を粉砕処理したものや、おが屑からのプレス処理でペレット化したもの等、概して10mm以下の細かいものが多くなっている。これは、炭化物を燃料化したり、他の材料に混合したり、土壌改質材として土に混ぜたりする上で、粒度が小さい方が使い易いことによる。更に、木質以外のバイオマス廃物でも、例えば家畜糞、コーヒー粕、茶殻、果実殻、穀物殻等の形態的に細かいものが多い。しかるに、サイズの小さい炭化用原料では、炭化炉に装填した際の材料密度が高くなり、それだけ隙間に存在する空気量が減って燃焼しにくくなると共に、通気性の低下で熱気が浸透しにくい上、中央の排気加熱筒からの放熱も伝播しにくくなる。また、炭化用原料の処理形態や材質によって熱伝導性が低いこともあり、この場合には当然に熱分解性が悪くなる。従って、前記従来の炭化装置では、炭化用原料がサイズの小さいものや熱伝導性に劣るものである場合に、炭化に要する時間が長くなることに加え、炉内での位置による炭化の進行度合の差が大きいため、むら焼けによる炭化物の品質低下を生じ易いという難点があった。
【0008】
本発明は、上述の事情に鑑みて、連続方式によって安定した品位の炭化処理物を高能率で製出できる上、炭化処理物の用途に応じて炭化度合を容易に調整することが可能であり、しかも炭化用原料がサイズの小さいものや熱伝導性に劣るものでも非常に効率よく炭化処理できる連続減容炭化装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための手段を図面の参照符号を付して示せば、請求項1の発明に係る連続減容炭化装置Mは、炭化処理ケーシング1と、該炭化処理ケーシング1内で回転自在に軸支された中空状の回転ドラム2と、該回転ドラム2の回転駆動手段(駆動モーター3)と、該回転ドラム2内へ熱風を吹き込む熱風供給手段(熱風発生炉4)とを備え、回転ドラム2は、外周面に多数の処理ポケット20が凹設されると共に、一端側の中空支軸5aに熱風入口21、他端側の中空支軸5bに熱風出口22がそれぞれ形成され、炭化処理ケーシング1は、上部側で該回転ドラム2の外周面に臨む原料投入口11と、下部側で同外周面に臨む処理物排出口12と、その原料投入口11から処理物排出口12にわたって同外周面に近接する凹円弧状周壁部13を備え、回転ドラム2を熱風G1によって加熱した状態で回転しつつ、原料投入口11に炭化用原料Rを投入することにより、連続的に該炭化用原料Rが該回転ドラム2の処理ポケット20に充填されて、処理物排出口12まで移動する間の加熱によって熱分解し、該処理物排出口12から減容した炭化処理物Cとして排出されるように構成されてなる。
【0010】
請求項2の発明は、上記請求項1の連続減容炭化装置Mにおいて、炭化処理ケーシング1の凹円弧状周壁部13の外側に加熱ジャケット14が形成され、前記回転ドラムの熱風出口を出た熱風G1が該加熱ジャケット14内を通過して排出されるように構成されてなる。
【0011】
請求項3の発明は、上記請求項1又は2の連続減容炭化装置Mにおいて、熱風供給手段が熱風G1を燃料の燃焼ガスとして発生させる熱風発生炉4からなり、炭化用原料Rの熱分解に伴って発生する熱分解ガスG2を当該熱風発生炉4内へ燃料の一部として送る熱分解ガス送給手段6を有してなるものとしている。
【0012】
請求項4の発明は、上記請求項1〜3の何れかの連続減容炭化装置Mにおいて、回転ドラム2内に蓄熱部7が設けられてなるものとしている。
【0013】
請求項5の発明は、上記請求項4の連続減容炭化装置Mにおいて、蓄熱部7が回転ドラム2と同心の円筒状をなし、熱風入口21から流入した熱風G1が該蓄熱部7の外周面と回転ドラム2の内周面との間の環状空間を通って熱風出口22へ至るように構成されてなるものとしている。
【0014】
請求項6の発明は、上記請求項4又は5の連続減容炭化装置Mにおいて、蓄熱部7が無機質蓄熱材の充填層71を有してなるものとしている。
【0015】
請求項7の発明は、上記請求項1〜6の何れかの連続減容炭化装置Mにおいて、各処理ポケット20が回転ドラム2の幅方向に沿う凹溝状に形成され、周方向に隣接する処理ポケット20,20間の境界部が回転ドラム2に一体化したフィン状の仕切壁23aにて構成されてなるものとしている。
【発明の効果】
【0016】
次に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。まず、請求項1の発明に係る連続減容炭化装置では、回転ドラム2を熱風G1によって加熱した状態で回転しつつ、原料投入口11に炭化用原料Rを投入することにより、該炭化用原料Rが該回転ドラム2の処理ポケット20に充填されて、処理物排出口12まで移動する間の加熱によって熱分解し、該処理物排出口12から減容した炭化処理物Cとして排出される。しかして、この炭化装置によれば、連続方式によって高能率の炭化処理を行える上、回転ドラム2全体が均一な加熱状態になり、しかも各処理ポケット20に充填された炭化用原料Rが定量で且つ同じ時間及び温度条件で処理されるから、安定した品位の炭化処理物Cを製出できる。また、この炭化処理では、炭化用原料Rの単位量に対する加熱面積が大きく、それだけ高い熱分解効率が得られるから、該炭化用原料Rがサイズの小さいものや熱伝導性に劣るものであっても支障なく短時間で均一に完全炭化させることができると共に、回転ドラム2の回転速度を変えることにより、製出させる炭化処理物Cの炭化度合を用途に応じて容易に調整可能である。
【0017】
請求項2の発明によれば、炭化処理ケーシング1の凹円弧状周壁部13が外側の加熱ジャケット14内を通過する熱風G1によって高温化するから、回転ドラム2の処理ポケット20に充填された炭化用原料Rが内外両側から加熱されることになり、もってより高い熱分解効率が得られる。
【0018】
請求項3の発明によれば、熱分解ガス送給手段6により、炭化用原料Rの熱分解に伴って発生する燃焼カロリーの高い熱分解ガスG2が熱風供給手段の熱風発生炉4内へ燃料の一部として送られるから、熱風生成に要する本来の燃料消費を少なくしてランニングコストを低減できる。
【0019】
請求項4の発明によれば、回転ドラム2内に蓄熱部7が設けられているから、吹き込まれる熱風G1から回転ドラム2側への移動熱量が大きくなり、それだけ熱効率が向上すると共に、回転ドラム2側の保持熱量の増大によって炭化処理温度が安定し、より高能率で均一な炭化処理を行える。
【0020】
請求項5の発明によれば、熱風入口21から回転ドラム2内に流入した熱風G1が円筒状の蓄熱部7の外周面と回転ドラム2の内周面との間の環状空間24を通って熱風出口22へ至る構成であるから、熱風G1と回転ドラム2側との熱交換効率がより向上する。
【0021】
請求項6の発明によれば、回転ドラム2の蓄熱部7に無機質蓄熱材の充填層71を有することから、該蓄熱部7が簡素な構造的で大きな蓄熱量を確保できる。
【0022】
請求項7の発明によれば、各処理ポケット20が回転ドラム2の幅方向に沿う凹溝状に形成され、周方向に隣接する処理ポケット20,20間の境界部がフィン状の仕切壁23aにて構成されるから、回転ドラム2の外周側に処理ポケット20を最大限に密に構成できると共に、各処理ポケット20が回転ドラム2の周方向には短い幅になるため、該回転ドラム2の回転に伴って処理ポケット20の傾きが増してゆく過程で、炭化用原料Rは熱分解で減容しても各処理ポケット20内で僅かしか移動せず、もって各処理ポケット20内での被処理物の偏りによるムラ焼けが防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明に係る連続減容炭化装置の一実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。図1は連続減容炭化装置を含む炭化処理システムの構成例を示す概略側面図、図2は連続減容炭化装置の要部の縦断側面図、図3は同要部の縦断正面図、図4は同要部の平面図である。
【0024】
図1に示す炭化処理システムは、ホッパー81に投入した炭化用原料Rを傾斜べルトコンベヤ82を介して原料槽RT内に収容し、この原料槽T1からべルトコンベヤ83を介して所定量の炭化用原料Rを連続減容炭化装置Mの原料投入口11へ送り、その炭化処理ケーシング1内で側方のバイオチップバーナー方式の熱風発生炉4から供給される熱風を利用して炭化処理し、製出した炭化処理物を下方の第一スクリューフィーダ84、二段ダンパー85、第二スクリューフィーダ86を順次経て冷却させた上で、リフトコンベヤ87を介してストックタンクSTに収容し、その下方の排出機88より必要量を取り出すようになっている。なお、炭化処理ケーシング1の下部と熱風発生炉4との間に、熱分解ガス供給手段6としての送気ファン6aを介在させたガス供給パイプ6bが接続されている。
【0025】
図2〜図4に示すように、連続減容炭化装置Mは、架台9上に、水平回転軸心の回転ドラム2を内蔵した炭化処理ケーシング1と、その回転ドラム2を駆動伝達チェーン3aを介して回転させる回転駆動手段の駆動モーター3とが設置されると共に、炭化処理ケーシング1の左右両側外部で回転ドラム2の左右両側の中空支軸5a,5bを回転自在に枢支する支持軸受31,31が設けてある。
【0026】
炭化処理ケーシング1は、内蔵する円筒状の回転ドラム2の全体を包囲する形状であり、該回転ドラム2の軸心から側方へ離れた位置に、上方に開放した原料投入口11と、下方に開放した処理物排出口12とが上下対向状に設けられている。しかして、原料投入口11及び処理物排出口12は、共に回転ドラム2の幅方向に長い矩形に構成され、上下から各々該回転ドラム2の外周面に臨んでいる。そして、原料投入口11の上部側には、原料レベル計15が付設されている。また、原料投入口11と処理物排出口12との間は、回転ドラム2の外周面に近接した凹円弧状周壁部13をなすと共に、この凹円弧状周壁部13の外側に加熱ジャケット14が設けられ、更に炭化処理ケーシング1の外面全体にガラスウールやロックウールからなる保温材16が貼着されている。
【0027】
回転ドラム2は、周壁部2aと左右側壁部2b,2bとで中空円筒状に構成され、その左右側壁部2b,2bの各中央部に、中空支軸5a,5bの各々内端側が貫通状態に固着されており、両中空支軸5a,5bが各々軸受32を介して炭化処理ケーシング1の側板部1aを貫通した状態で各々支持軸受31に軸支されている。しかして、一方(左側)の中空支軸5aは熱風発生炉4から供給される熱風G1を回転ドラム2内へ導入する熱風入口21を形成し、他方(右側)の中空支軸5bは導入された熱風G1を回転ドラム2外へ導出する熱風出口22を形成している。また、熱風出口22側の中空支軸5bの外端側には、既述の駆動伝達チェーン3aを巻き掛けるスプロケット33が固着されており、駆動モーター3の作動によって外回転ドラム2が炭化処理ケーシング1内で回転するようになっている。更に、中空支軸5b側の支持軸受31の下方には、スプロケット33の周辺部に設けた指標33aを基準にして回転角度を検出する回転角度センサー34が付設されている。
【0028】
この回転ドラム2の外周面には、各々幅方向に沿う凹溝状をなす多数の浅い処理ポケット20が、左右2列で全周にわたって密に配列している。その周方向に隣接する処理ポケット20,20同士の境界部は、回転ドラム2の周壁部2aの外面側に周方向一定間隔置きに一体形成した幅方向に沿うフィン状の仕切壁23aにて形成されている。また、左右の処理ポケット20,20同士の境界部は、回転ドラム2の周壁部2aの幅方向中央位置において周方向に連続する環状仕切壁23bにて形成されている。更に、左右の処理ポケット20,20の各々外端側は、回転ドラム2の側壁部2bの全周にわたって延出するフランジ部23cにて仕切られている。しかして、これらフィン状の仕切壁23a及び環状仕切壁23bとフランジ部23cは、同じ頂端高さに設定されて全体として回転ドラム2の外周面を構成している。
【0029】
回転ドラム2の内部には、当該回転ドラム2と同心の円筒状の蓄熱部7が一体的に設けられている。この蓄熱部7は、内外2重の周壁部7aと、各々中央部が外側へ僅かに高く突出した円錐状の両側壁部7c,7cとで円筒状をなすと共に、2重の周壁部7aの内側空間がセラミック系材料等の無機質蓄熱材の充填層71になっており、各側壁部7cの周辺側に突設した複数の取付片7cの先端部を回転ドラム2の側壁部2b内面に溶接することにより、回転ドラム2に一体化されている。そして、蓄熱部7の外周面と回転ドラム2の内周面との間には環状空間24が構成され、熱風入口21から流入した熱風G1が該環状空間24を通って熱風出口22へ至るようになっている。
【0030】
また、熱風出口22側の中空支軸5bの外端部は、熱風循環パイプ17の一端側の管継手部17aに相対回転自在で且つ気密に連結されている。そして、この熱風循環パイプ17の他端側17bは、炭化処理ケーシング1の上部側から加熱ジャケット14の内側空間14aに連通接続されている。更に、炭化処理ケーシング1の上部には、原料投入口11よりも回転ドラム2の軸心から離れるように位置して、該加熱ジャケット14の内側空間14aに連通する熱風排出管18が設けられている。なお、熱風循環パイプ17の外周は保温材15で被覆され、また一端側の管継手部17aには熱風用温度計35が付設されている。
【0031】
一方、炭化処理ケーシング1の処理物排出口12の上部側方には熱分解ガス導出口19が設けてある。そして、この熱分解ガス導出口19は熱分解ガス送給手段6のガス供給パイプ6b(図1参照)に接続されており、炭化処理に伴って炭化処理ケーシング1内で発生する熱分解ガスG2を送気ファン6aを介して熱風発生炉4内へ送ることにより、該熱分解ガスG2を熱風発生用の燃料の一部として利用するようになっている。なお、熱分解ガスG2は、送気ファン6aの回転で生じる吸引力により、回転ドラム2の外周囲と炭化処理ケーシング1の内周囲との隙間から熱分解ガス導出口19へ誘導される。
【0032】
上記構成の連続減容炭化装置Mにおいては、熱風発生炉4から供給される熱風が、回転ドラム2内へ軸方向一端側の熱風入口21より送り込まれ、軸方向他端側の熱風出口22より熱風循環パイプ17に流入し、更に加熱ジャケット14内を通過した上で熱風排出管18から排出され、この過程で回転ドラム2の全体を内側から高温に加熱すると共に、該回転ドラム2の周面に対向した炭化処理ケーシング1の凹円弧状周壁部13も外側(加熱ジャケット14側)から高温に加熱する。一方、回転ドラム2は、その周面の上側一部と下側一部が常に炭化処理ケーシング1の原料投入口11と処理物排出口12に臨んでいるから、図2の矢印a方向に回転させれば、原料投入口11側で炭化用原料Rが自動的に各処理ポケット20内に充填され、該回転に伴って下方へ移動して処理物排出口12に達すると、重力によって各処理ポケット20から自然に落下排出することになる。
【0033】
従って、炭化処理を行うには、原料投入口11内に炭化用原料Rを所定レベル以上に堆積させておき、熱風発生炉4から熱風G1を連続的に供給し、熱風用温度計35の計測値が予め設定した温度に達した際に、駆動モーター3を作動して回転ドラム2を回転させる。これにより、各処理ポケット20に充填された炭化用原料Rは、処理物排出口12へ向かう移動過程で、回転ドラム2側と炭化処理ケーシング1の凹円弧状周壁部13側の両側から加熱され、自発的に熱分解し始め、更に水分の蒸発による乾燥を伴って炭化が進行してゆき、所定の炭化度合の炭化処理物Cとして処理物排出口12から排出される。そして、得られた炭化処理物Cは、以降の搬送過程で冷却した上でストックタンクSTへ送られる。なお、原料投入口11内の炭化用原料Rが消費されて所定レベルまで減少すれば、これを検知した原料レベル計15からの信号に基づき、原料槽T1から新たな炭化用原料Rが原料投入口11へ補給される。
【0034】
この炭化処理では、原料投入口11内に堆積させた炭化用原料Rが連続的に回転ドラム2の処理ポケット20に充填されてゆき、処理物排出口12から連続的に炭化処理物Cが排出されてくる連続方式である上、回転ドラム2内への熱風G1の送り込み、炭化用原料Rの補給、製出した炭化処理物Cの搬出等も自動制御で行えるから、非常に高い処理能率が得られる。しかも、回転ドラム2全体が均一な加熱状態になる上、各処理ポケット20に充填された炭化用原料Rが定量で且つ同じ時間及び温度条件で処理されるから、安定した品位の炭化処理物Cを製出できる。更に、炭化用原料Rの単位量に対する加熱面積が大きく、それだけ高い熱分解効率が得られるから、該炭化用原料Rがサイズの小さいものや熱伝導性に劣るものであっても支障なく短時間で均一に完全炭化させることができると共に、回転ドラム2の回転速度を変えることにより、製出させる炭化処理物Cの炭化度合を用途に応じて乾燥程度から完全炭化まで容易に調整可能である。
【0035】
特に、上述した実施形態においては、炭化処理ケーシング1の凹円弧状周壁部13も加熱ジャケット14内を通過する熱風G1によって高温化するから、回転ドラム2の処理ポケット20に充填された炭化用原料Rが内外両側から加熱されることになり、もってより高い熱分解効率が得られる。また、回転ドラム2内に蓄熱部7を有するから、吹き込まれる熱風G1から回転ドラム2側への移動熱量が大きくなり、それだけ熱効率が向上すると共に、回転ドラム2側の保持熱量の増大によって炭化処理温度が安定し、より高能率で均一な炭化処理を行える。更に、実施形態の蓄熱部7は回転ドラム2と同心の円筒状をなし、熱風入口21から回転ドラム2内に流入した熱風G1が該蓄熱部7の外周面と回転ドラム2の内周面との間の環状空間24を通って熱風出口22へ至るから、熱風G1と回転ドラム2側との熱交換効率がより向上する。
【0036】
一方、実施形態では、各処理ポケット20が回転ドラム2の幅方向に沿う凹溝状に形成され、周方向に隣接する処理ポケット20,20間の境界部がフィン状の仕切壁23aにて構成されるから、回転ドラム2の外周側に処理ポケット20を最大限に密に構成できると共に、各処理ポケット20が回転ドラム2の周方向には短い幅になるため、該回転ドラム2の回転に伴って処理ポケット20の傾きが増してゆく過程で、炭化用原料Rが熱分解で減容しても各処理ポケット20内で僅かしか移動せず、もって各処理ポケット20内での被処理物の偏りによるムラ焼けが防止される。
【0037】
なお、回転ドラム2は、連続回転で処理することも可能であるが、炭化用原料Rの自発的熱分解を妨げずにスムーズに炭化処理を進める上で、周方向に配列する処理ポケット20の1個分あるいは数個分を1ピッチとして、一定時間の停止と送りを繰り返す間欠回転で処理することが推奨される。また、回転ドラム2の1周回における処理領域を長くとるために、その回転方向を基準にして、原料投入口11の末端位置から処理物排出口12の始端位置までが1/2周回以上になるように設定するのがよい。
【0038】
しかして、このような炭化処理では、炭化用原料Rの熱分解に伴って高カロリーの熱分解ガスG2が発生するが、この熱分解ガスG2を実施形態のように熱分解ガス送給手段6によって熱風供給手段の熱風発生炉4内へ燃料の一部として送るようにすれば、それだけ熱風生成に要する本来の燃料消費が少なくなるから、ランニングコストを低減できるという利点がある。また、製出した炭化処理物Cも、熱風発生炉4等の熱風供給手段の燃料として利用できる。
【0039】
この炭化処理に用いる炭化用原料Rとしては、可燃性の固形物で原料投入口11から回転ドラム2の処理ポケット20に自然に入り込み得るサイズのものであればよく、特に材料種に制約はないが、所謂廃材や廃物に類するもの、例えば間伐材や選定材、木材や竹材の削り屑、鋸屑、バーク、木質建築廃材、木製家具類廃棄物、牛糞、豚糞、鶏糞、馬糞、キノコ等の菌床、コーヒー粕、茶殻、果実殻、穀物殻、古紙、可燃ゴミ等が挙げられる。しかして、これらの内、木質の粗大材料については3〜10mm程度のサイズに破砕して用いるのがよい。また、家畜糞等については、水分含量が多い場合は鋸屑等を混合して用いたり、嵩張る場合は砕いたりペレット化して用いればよい。更に、水分含量が少ないものについては、焼酎廃液や醸造廃液、家畜糞尿等を混ぜるようにすれば、これら液状廃物の処理にも利用できることになる。
【0040】
製出した炭化処理物Cの用途としては、完全炭化させたものでは様々な分野に供される一般的な炭燃料の他、田畑の土壌改良材等が挙げられる。また半炭化させたものでは、そのままの状態もしくは各種廃液を吸着させた状態でバイオマス燃料としたり、同様に吸着させたものを炭化用材料Cとして再処理したり、おが屑等と混合して家畜敷床や堆肥に利用できる。
【0041】
本発明の連続減容炭化装置は、炭化処理ケーシング1の形状、回転ドラム2における処理ポケット20の配置ピッチ、回転ドラム2の軸支構造、回転駆動機構、熱風G1の流路構成、蓄熱部7の構造、熱風発生手段の構成等、細部構成については実施形態以外に種々設計変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態に係る連続減容炭化装置を含む炭化処理システムの構成例を示す概略側面図である。
【図2】同連続減容炭化装置の要部の縦断側面図である。
【図3】同連続減容炭化装置の要部の縦断正面図である。
【図4】同連続減容炭化装置の要部の平面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 炭化処理ケーシング
11 原料投入口
12 処理物排出口
13 凹円弧状周壁部
14 加熱ジャケット
2 回転ドラム
20 処理ポケット
21 熱風入口
22 熱風出口
23a フィン状の仕切壁
24 環状空間
71 無機質蓄熱材の充填層
3 駆動モーター(回転駆動手段)
4 熱風発生炉(熱風供給手段)
5a,5b 中空支軸
6 熱分解ガス送給手段
7 蓄熱部
C 炭化処理物
G1 熱風
G2 熱分解ガス
M 連続減容炭化装置
R 炭化用原料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化処理ケーシングと、該炭化処理ケーシング内で回転自在に軸支された中空状の回転ドラムと、該回転ドラムの回転駆動手段と、該回転ドラム内へ熱風を吹き込む熱風供給手段とを備え、
前記回転ドラムは、外周面に多数の処理ポケットが凹設されると共に、一端側の中空支軸に熱風入口、他端側の中空支軸に熱風出口がそれぞれ形成され、
前記炭化処理ケーシングは、上部側で該回転ドラムの外周面に臨む原料投入口と、下部側で同外周面に臨む処理物排出口と、その原料投入口から処理物排出口にわたって同外周面に近接する凹円弧状周壁部を備え、
前記回転ドラムを前記熱風によって加熱した状態で回転しつつ、前記原料投入口に炭化用原料を投入することにより、連続的に該炭化用原料が該回転ドラムの前記処理ポケットに充填されて、前記処理物排出口まで移動する間の加熱によって熱分解し、該処理物排出口から減容した炭化処理物として排出されるように構成されてなる連続減容炭化装置。
【請求項2】
炭化処理ケーシングの前記凹円弧状周壁部の外側に加熱ジャケットが形成され、前記回転ドラムの熱風出口を出た熱風が該加熱ジャケット内を通過して排出されるように構成されてなる連続減容炭化装置。
【請求項3】
前記熱風供給手段が熱風を燃料の燃焼ガスとして発生させる熱風発生炉からなり、前記炭化用原料の熱分解に伴って発生する熱分解ガスを当該熱風発生炉内へ燃料の一部として送る熱分解ガス送給手段を有してなる請求項1又は2に記載の連続減容炭化装置。
【請求項4】
前記回転ドラム内に蓄熱部が設けられてなる請求項1〜3の何れかに記載の連続減容炭化装置。
【請求項5】
前記蓄熱部が回転ドラムと同心の円筒状をなし、前記熱風入口から流入した熱風が該蓄熱部の外周面と回転ドラムの内周面との間の環状空間を通って前記熱風出口へ至るように構成されてなる請求項4に記載の連続減容炭化装置。
【請求項6】
前記蓄熱部が無機質蓄熱材の充填層を有してなる請求項4又は5に記載の連続減容炭化装置。
【請求項7】
前記の各処理ポケットが回転ドラムの幅方向に沿う凹溝状に形成され、周方向に隣接する処理ポケット間の境界部が回転ドラムに一体化したフィン状の仕切壁にて構成されてなる請求項1〜6の何れかに記載の連続減容炭化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−111712(P2010−111712A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282840(P2008−282840)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(501443238)株式会社ビルメン鹿児島 (18)
【出願人】(503152185)
【Fターム(参考)】