説明

連続鋳造機のモールド湯面レベル制御装置及び制御方法

【課題】スライディングノズルが閉塞、あるいは、溶損することで流量特性が変化する場合にも、流量特性を高精度に求め、推定した流量特性に基づいてPI制御をはじめとするフィードバックコントローラのゲインを自動調整することで制御のループゲインを一定に維持することの可能な、連続鋳造のモールド湯面レベル制御を提供する。
【解決手段】連続鋳造機のモールド断面積、鋳造速度、TD重量、SN開度を入力信号とし、損失係数の修正を行いながら、ニュートン法に基づいた流量特性のモデル計算を繰り返すことで、SN開度の理論値と実績値が一致するような損失係数、及び、流量特性を計算する。そして、推定した流量特性に比例するようにフィードバックコントローラのゲインを自動調整することで制御のループゲインを一定に維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属溶湯の連続鋳造機におけるモールド湯面レベル制御方法、及び、制御装置に関するものであり、特に、スライディングノズルや浸漬ノズル等からなる注入系に不具合が発生しても安定してモールド湯面レベルを制御するのに好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図7に示す鋼等の金属の溶湯の連続鋳造機においては、金属溶湯が取鍋からタンディッシュ1に一旦供給・貯留された後、タンディッシュ1に取り付けられた浸漬ノズル2を介して、下端が開放されたモールド3(鋳型)内に連続的に注入される。同時に、モールド3内の金属溶湯は、水冷されたモールド3で冷却されて表面から凝固殻4を形成しながら、対向して配設され複数対のピンチロール5によって挟まれながら、モールド3下端部から連続的に引き出されていく。更に、引き出された内部に未凝固部を有する金属片を搬送しながら水スプレー冷却6により冷却を進めることで、内部まで凝固せしめてスラブ、ブルーム、ビレットなど断面形状が異なる各種の鋳片7を製造する。
【0003】
モールド3下の複数対のピンチロール5は所定の間隔で配設されているために、内部に未凝固部を有する鋳片が、図7の符号8で示すようにピンチロール対の間の部分でビヤ樽状に顕著に膨らむことがある。この現象はバルジングと呼ばれている。
【0004】
連続鋳造機では、溶湯の温度や含有する元素の組成によっては非定常バルジング、及び、浸漬ノズルの詰りやその内部凝固部の剥離等の外乱が発生することで、モールド3内の湯面レベル(湯面高さ位置)9が変動することがある。湯面レベル9の変動量が大きいと凝固開始点である湯面及びその下方における凝固殻4の成長が不安定化して、凝固殻4が破れるブレークアウトに至り、連続鋳造の安定操業を阻害することがある。また、湯面レベル9の変動量が大きいと、モールド3内の湯面上に散布されている、モールド壁と凝固殻4との潤滑材として働くパウダーが金属溶湯内部へ巻き込まれて、凝固後の鋳片中の介在物となり、鋼片の品質低下を起こすという問題が発生する。
【0005】
そのため、連続鋳造機では、モールド3内の湯面レベル9を渦流式レベル計10等で連続的に検出し、その検出値に基づいてタンディッシュ1からモールド3内への溶湯注入量を、タンディッシュ1と浸漬ノズル2との接続部に設置したスライディングノズル11、又は、ストッパーノズル12の開度をフィードバック制御により調整することで、湯面レベル9を一定に保持するという制御を実施している。これは連続鋳造機のモールド湯面レベル制御と呼ばれている。
【0006】
連続鋳造機のモールド3内の湯面レベル制御(以下、「湯面レベル制御」と略記する。)においては、PI制御やPID制御が多く用いられる。また、PI制御等の替わりとしてSAC(Simple Adaptive Control:単純適応制御)やH∞制御等が用いられることがある(例えば特許文献3、4を参照)。
【0007】
例えば、溶鋼の湯面レベル制御では、浸漬ノズル2の開口部が溶損、あるいは、溶鋼が内部で凝固して浸漬ノズル2の開口部が閉塞することで金属溶湯の流量特性が変化することがある。しかし、流量特性の変化をセンサで直接安定して検出することが難しく、湯面レベル制御の制御ゲインが高過ぎてゲイン余裕が少ない場合、湯面レベルが発振することがあった。そのため、湯面レベル制御のフィードバックコントローラはボード線図の高周波数域でゲイン余裕を多めに持たせた、言わば緩やかな設計にすることが多い。
【0008】
しかし、ゲイン余裕を多く取り過ぎると、外乱に対する抑制性能が劣化するため、湯面レベルを所望の目標値に維持するという本来の制御機能が損なわれる。そのため、モールド3内へ流入する溶鋼の流量特性(すなわち注入特性)の変化等によるプロセスゲインの変化を検出して、湯面レベル制御のフィードバックコントローラのゲインを自動調整することによって、制御のループゲインを一定に維持することが望ましい。そのためには、浸漬ノズルの流量特性すなわち注入特性の同定、あるいは、推定する技術が不可欠である。
【0009】
連続鋳造機における溶鋼の流量特性の同定、あるいは、推定する従来の技術としては、特許文献1及び特許文献2に開示された技術がある。特許文献1に記載の技術ではPID制御を用いて、スライディングノズルを制御対象として、鋳型(モールド)断面積、鋳造速度、タンディッシュ(TD)重量の測定値を基に、スライディングノズルの開口面積の実効値を推定する。そして、その近傍における開口面積と開度の関係式の曲線の傾き(微係数)を計算することでPID制御の比例幅を自動調整している。一方、特許文献2に記載の技術では、特許文献1と同様の手法により開口面積の実績開口値を求め、スライディングノズルに閉塞が発生していないとの仮定の下で理論的に求まるスライディングノズルの理論開口面積との比を計算することによってノズルの閉塞度合いを評価している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平1−53747号公報
【特許文献2】特開2001−269755号公報
【特許文献3】特開平7−80616号公報
【特許文献4】特開平9−174215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、スライディングノズルの開口面積の実効値を推定して、言わばノミナル流量特性を求めることができるが、スライディングノズルの溶損、閉塞が生じた場合については考慮していない。このような場合の対応策として、特許文献1に記載の方法に基づいてノミナル流量特性を求め、ゲイン余裕を持たせたフィードバックコントローラのゲインを自動調整する方法が考えられる。しかし、どの程度ゲイン余裕を持たせればよいか明確でないため、結果としてゲイン余裕を大きく取りすぎる傾向となることが想定される。そのため、フィードバックコントローラのゲインを十分に上げることができず、モールド湯面レベルを安定して制御することは困難であるという問題があった。
【0012】
また、特許文献2は、スライディングノズルの閉塞度合いを評価しているが、閉塞度合いを考慮した流量特性の推定には至っていない。そのため、湯面レベル制御のフィードバックコントローラゲインの自動調整に対して、そのまま適用することは難しい。
【0013】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、スライディングノズルが閉塞、又は、溶損する等の原因により、スライディングノズルと浸漬ノズルとからなる注入系における金属溶湯の流量特性が急に変化する場合にも、金属溶湯の流量を高精度に推定してモールド湯面レベルを安定して高精度に制御することが可能な、新規かつ改良された連続鋳造機のモールド湯面レベル制御装置及び制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、金属溶湯を収納したタンディッシュから、スライディングノズルと浸漬ノズルとからなる注入系を経てモールド内へ、該スライディングノズルの開度Xをフィードバック制御により制御しつつ金属溶湯量を注入し、表層部から凝固した鋳片をモールドの下部から引き抜くことにより、金属溶湯を鋳造する連続鋳造機のモールド湯面制御方法が提供される。本発明の連続鋳造機のモールド湯面制御方法は、モールドの断面積と鋳片の引き抜き速度である鋳造速度Vとから注入系の流体力学のモデル式を用いて注入系の損失係数ζを0として、引き抜かれる鋳片の体積とモールドへの注入量との釣り合う平衡状態におけるスライディングノズルの開度Xである平衡開度XCAL、及び、モールドへの金属溶湯の流入量Q(X)のスライディングノズルの開度Xの関する微係数であるノミナル流量係数KKnorを算出する工程と、注入系の流体力学のモデル式を用いて、引き抜かれる鋳片の体積とモールドへの注入量とが釣り合う平衡状態を表わす式に、スライディングノズルの開度Xの実績値の移動平均値、及び鋳造速度の実績値を代入して注入系の損失係数ζを算出し、さらに該損失係数ζとノミナル流量係数KKnorとから注入系の真の流量係数KKを算出する工程とを含む。そして、所定の周期で繰り返して連続的にノミナル流量係数KKnor及び真の流量係数KKを導出し、ノミナル流量係数KKnorと真の流量係数KKとの比に基づいて、フィードバック制御の制御ゲインを調整することを特徴とする。
【0015】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、金属溶湯を収納したタンディッシュから、スライディングノズルと浸漬ノズルとからなる注入系を経てモールド内へ、該スライディングノズルの開度Xをフィードバック制御により制御しつつ金属溶湯量を注入し、表層部から凝固した鋳片をモールドの下部から引き抜くことにより、金属溶湯を鋳造する連続鋳造機のモールド湯面制御装置が提供される。本発明の連続鋳造機のモールド湯面制御装置は、モールドの断面積と鋳片の引き抜き速度である鋳造速度Vとから注入系の流体力学のモデル式を用いて注入系の損失係数ζを0として、引き抜かれる鋳片の体積とモールドへの注入量との釣り合う平衡状態におけるスライディングノズルの開度Xである平衡開度XCAL、及び、モールドへの金属溶湯の流入量Q(X)のスライディングノズルの開度Xの関する微係数であるノミナル流量係数KKnorを算出し、注入系の流体力学のモデル式を用いて、引き抜かれる鋳片の体積とモールドへの注入量との釣り合う平衡状態を表わす式に、スライディングノズルの開度Xの実績値の移動平均値、及び鋳造速度の実績値を代入して注入系の損失係数ζを算出し、さらに該損失係数ζとノミナル流量係数KKnorとから注入系の真の流量係数KKを算出して、所定の周期で連続的にノミナル流量係数KKnor及び真の流量係数KKを連続的に算出して出力する流量係数同定部と、流量係数同定部から出力されたノミナル流量係数KKnorと真の流量係数KKの比に基づき、フィードバック制御の制御ゲインを調整して湯面レベルを制御するフィードバック制御部と、を具備することを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、上記の構成によって、金属溶湯の流量を高精度に推定してモールド湯面レベルを安定して高精度に制御することが可能となる。その結果、スライディングノズルが閉塞、または、溶損する等によって流量特性が変化するときに湯面レベル変動の悪化を防止できるため、スライディングノズルで鋳造されるスラブの品質向上に顕著に寄与することができる。また、溶鋼成分によってノズルの閉塞、溶損の傾向が異なる場合、従来はフィードバックコントローラのゲインテーブルを溶鋼成分に基づいて作成する必要があったが、本発明によって、その手間が無くなる。このため、フィードバックコントローラの調整を大幅に簡易化できる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明によれば、スライディングノズルが閉塞、又は、溶損する等の原因により、スライディングノズルと浸漬ノズルとからなる注入系における金属溶湯の流量特性が急に変化する場合にも、金属溶湯の流量を高精度に推定してモールド湯面レベルを安定して高精度に制御することが可能な、連続鋳造機のモールド湯面レベル制御装置及び制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態にかかるモールド湯面レベル制御装置、及び当該制御装置を適用する連続鋳造機の概略構成を示す説明図である。
【図2】スライディングノズルの開度と開口面積の関係を示す一例であって、(a)は連続鋳造機の縦断面の概略図であり、(b)はスライディングノズルの開口部の開度の大きさを示す模式図であり、(c)は(a)のA−A’切断線における断面の形状を示す説明図である。
【図3】スライディングノズルの開度と開口面積との関係を示す説明図およびグラフである。
【図4】同実施形態における流量特性の推定方法の一例を示すフローチャートである。
【図5】同実施形態に係るPI制御器による湯面レベル制御装置のブロック線図である。
【図6】同実施形態に係るSACによる湯面レベル制御装置のブロック線図である。
【図7】操業中の連続鋳造機の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0020】
まず、図1に基づいて、金属溶湯が溶鋼であるときを例として、本実施形態にかかるモールド湯面レベル制御装置、及び当該制御装置を適用する連続鋳造機の概略構成について説明する。なお、図1は、本実施形態にかかるモールド湯面レベル制御装置、及び当該制御装置を適用する連続鋳造機の概略構成を示す説明図である。
【0021】
図1において、レードル(図示せず)からタンディッシュ1に供給された溶鋼は、スライディングノズル11を介してモールド3に供給される。モールド3に供給された溶鋼は、冷却されてスラブとしてピンチロール群によって引き出されていく。こうした連続鋳造プロセスにおいては、モールド3内の湯面レベル9はノズルの詰り剥離やバルジングなどの外乱によって時々刻々と変動する。このため、モールド3内の湯面レベル9は、例えば過流式の湯面レベル計10により連続的に測定され常時監視されている。そして、湯面レベル計10による湯面レベル測定値を入力信号として、PI制御をはじめとするフィードバック制御部13によってタンディッシュ1からモールド3に供給される溶鋼の注入量を調整することで湯面レベル9を一定に保持する。このとき、フィードバック制御部13には、制御対象である湯面レベル9の測定値に加えて、モールド幅、モールド厚、鋳造速度、及びスライディングノズル(SN)11の開度(SN開度)の実績値(すなわち測定値)が入力される。
【0022】
そして、流量係数同定部14において、モールド幅、モールド厚、鋳造速度、SN開度の実績値を入力データとして、後に詳細に説明する注入系の損失係数の修正を行いながら、流量特性のモデル計算を繰り返すことで、当該モデル計算で得られたSN開度の理論値と実績値とから損失係数、及び、流量特性を計算する。そして、当該流量特性に基づいてフィードバック制御部13のゲインを調整することで制御のループゲインを一定に維持する。
【0023】
なお、ここで鋳造速度Vは、モールド3の下から凝固しつつ引き抜かれる鋳片の引き抜き速度、すなわち鋳片の移動速度である。鋳造速度Vは、例えばPLG(Pulse Length Generator)などの速度センサによって測定される。また、SN開度はスライディングノズル11の制御部から入力される。
【0024】
以上、本実施形態にかかるモールド湯面レベル制御装置、及び当該制御装置を適用する連続鋳造機の概略構成について説明した。次に、本発明の実施形態にかかるモールド湯面レベル制御装置及び制御方法について具体的かつ詳細に説明する。まず、本実施形態の技術的思想についての基本的な考え方を、図2および図3を用いて説明する。なお、図2の(a)は連続鋳造機の縦断面の概略図であり、(b)はスライディングノズルの開口部の開度の大きさを示す模式図であり、(c)は(a)のA−A’切断線における断面の形状を示す説明図である。図3は、スライディングノズル11の開度Xと開口面積SINとの関係を示す説明図およびグラフである。
【0025】
スライディングノズル11からモールド3に流入する単位時間当たりの溶鋼体積と、モールド3の下から引き抜かれる(流出する)鋳片の引き抜き速度(鋳造速度)及びモールド断面積から計算できる溶鋼の凝固体(鋳片)の体積とは、時間平均的には釣り合う(平衡状態)。この平衡状態を釣り合い点と呼ぶことにする。なお、溶鋼が凝固する際の体積変化は近似的に無いものとする。本実施形態にかかるモールド湯面レベルの制御方法では、この溶鋼の流入出量の釣り合いの関係を利用することで、スライディングノズル11の実効的な開度を求める。そして、図3に示すグラフより、釣り合い点となる開度の近傍での開口面積/開度の傾きを計算することで、スライディングノズル11を含む注入系の流量特性を、後に詳細に説明する方法によって推定する。なお、本発明は湯面レベルのフィードバック制御の制御ゲインを調整する点に特徴を有する。よって、以下の説明では、湯面レベル測定及びその測定値に基づくスラディングノズルの開度のフィードバック制御が行われていることを前提とする。
【0026】
ここで、溶鋼の流入・流出の釣り合い点として計算されるSN開度とSN開度の実績値の短時間における移動平均とを比較すると、差異が生じることがある。これはスライディングノズル11を含むノズルの溶損、閉塞等により注入系の流量特性が大きく変化するためである。そこで、本実施形態では、ノズルの溶損、閉塞による開口形状の変化を、注入系の損失係数というスカラー値の変化で代表させ、釣り合い点において計算されるSN開度とSN開度実績値それぞれの時間に関する移動平均が一致するように、損失係数を修正しながら流量特性の推定計算を繰り返すことにする。以上が本発明の基本的な考え方の特徴である。
【0027】
<流量係数同定部(流量特性の推定手順)>
次に、図4に基づいて、具体的に上記の考え方に基づく流量特性の推定手順を説明する。図4は、本実施形態における流量特性の推定方法の一例を示すフローチャートである。各ステップ(ステップS101〜S106)で行う演算処理の詳細は後述するが、タンディッシュ重量の実績値、及びスライディングノズルの開度実績値を入力データとして、注入系の損失係数を演算し、当該損失係数から流量係数を導出することにより、流量特性の時間的に連続して同定することも、本実施形態の流量特性の推定方法の特徴の一つである。
【0028】
(平衡時のスライディングノズル開度XCALの導出の説明)
まず、ダンディッシュの重量計から入力されるタンディッシュ重量値TWから、タンディッシュ単体の重量を減算して溶鋼の重量を算出し、タンディッシュの内部の形状データ及び溶鋼の比重から溶鋼深さ(タンディッシュヘッド)Hを算出する(ステップS101)。タンディッシュヘッドHとタンディッシュ重量値TWとの関係は、後述する式(3)のように表すことができる。
【0029】
次いで、モールド幅、モールド厚、鋳造速度の実測値を入力データとして、溶鋼の注入及び鋳造が安定して継続する状態、すなわち平衡状態におけるスライディングノズルの開度を、当該平衡状態を表わす方程式を解くことにより算出する。そして、平衡状態における注入量を基準とする、注入系の注入流量特性を推定する。以下、注入系の注入流量特性を推定する算出処理について説明する。
【0030】
まず、図2を用いて、流入する溶鋼体積と鋳造により引き抜かれる溶鋼体積の関係を説明する。ここで、タンディッシュ1の出口(すなわちスライディングノズル11を通過時)における溶鋼流速をVIN[m/sec]、スライディングノズル11の開口面積をSIN[m]、モールド幅(内法)をMW[m]、モールド厚(内法)をMD[m]、引き抜き速度である鋳造速度をV[m/sec]とする。このとき、モールド3内への溶鋼の注入量(体積)と引き抜かれる鋳片の体積とが等しいとすると、次の式(1)で示す関係式が成り立つ。ここで、溶鋼が凝固する際の体積変化は小さいとして無視する。
【0031】
IN×VIN=MW×MD×V ・・・式(1)
【0032】
ここで、タンディッシュ1の下端の出口における溶鋼流速VINは、流体力学で周知のベルヌーイの法則により下記式(2)で表される(ステップS102)。
【0033】
【数1】

・・・式(2)
【0034】
ここで、ζは損失係数[−]であり注入系の流れに対する抵抗の大きさを表し、gは重力加速度[m/sec]、Hはタンディッシュヘッド(タンディッシュ内の溶鋼深さ)[m]を表す。本実施の形態では、まずζ=0と設定する。このとき、タンディッシュヘッドHは、下記式(3)に示すように、タンディッシュ重量と内部の溶鋼との和であるタンディッシュ全重量TW[ton]の関数f(TW)で表される。当該関数f(TW)は、タンディッシュ内部形状又はタンディッシュ単体の重量から予め求めて設定しておくことが可能である。ステップS101においては、この関数f(TW)を用いてタンディッシュ全重量TWの実測値からタンディッシュヘッドHを算出している。
【0035】
【数2】

・・・式(3)
【0036】
このように、タンディッシュ1の出口における溶鋼流速VINを式(2)により定義する。ここで、安定した連続鋳造が行われているときには、スライディングノズル11からモールド3に流入する溶鋼体積Volと鋳造速度により引き抜かれる凝固した溶鋼体積Volとは、例えば1ロット分の溶鋼の注入時間のように十分長い期間においては時間平均的に同じ値となる。この釣り合っている状態を釣り合い点と呼ぶ。この釣り合い点におけるスライディングノズル11の開度XCALを、次の算出処理によって求めることができる。
【0037】
釣り合い点となるスライディングノズル11の開度XCALを求めるには、まず、スライディングノズル11の開度X[mm]と開口面積SIN[m]との関係式が必要である。図2(b)に示すように、スライディングノズル11のストロークを開度X、ノズル内の開口部の直径D[mm]の2つの円が交差する部分の面積を開口面積SINと定義する。このとき、開口面積SINは式(4)で表される。
【0038】
【数3】

・・・式(4)
ただし、
【数4】

・・・式(5)
【0039】
ここで、θは図2(b)に示すように、スライディングノズル11の円中心と2つの円の交点とを結んだ線のなす角の1/2の大きさを有する角度であり、0≦θ≦(π/2)の値をとる。角度θは、開口部の大きさを表わす指標である。
【0040】
このとき、式(1)で示すように、スライディングノズル11からモールド3に流入する溶鋼体積Volと鋳造速度により引き抜かれる溶鋼体積Volとが時間平均的に釣り合うとすれば、下記式(6)が成り立つ。式(6)の右辺は流入する溶鋼体積(注入量Q)を、左辺は引き抜かれる体積を表わしている。
【0041】
【数5】

・・・式(6)
【0042】
ここで、損失係数ζ=0と設定し、θを計算することで釣り合い点の開度XCALを求めることにする。まず、式(6)を式(7)のように変形して、表記を簡略にする。
【0043】
【数6】

・・・式(7)
ただし、
【数7】

・・・式(8)
【0044】
すなわち、式(8)を用いて、スライディングノズルの開口面積SIN[m]、モールド幅(内法)MW[m]、モールド厚(内法)MD[m]、引き抜き速度である鋳造速度V[m/sec]、およびスライディングノズルの開口部直径D[m]からCを求めて、式(7)を解くことに帰着する。しかし、式(7)を満たすθの解析解を得ることは難しい。このため、下記式(9)で定義される関数h(θ)について、関数h(θ)=0となるθの数値解を数値計算のニュートン法を用いて求めることにする。
【0045】
【数8】

・・・式(9)
【0046】
式(9)はθの単調増加関数(dh/dθ>0)であるからニュートン法の適用は極めて有効である。ここでは、ニュートン法で繰り返し計算するときの初期値θを以下のように与える。
【0047】
【数9】

・・・式(10)
【0048】
そして、下記式(11)の漸化式を用いて反復計算することにより、h(θ)=0を満たすθの数値解を得ることができる。ここで、インデックスiは、計算の反復回数を表す。
【0049】
【数10】

・・・式(11)
【0050】
実際の注入時の実績データを基にした数値計算において、5回程度の反復計算で、θは有効数字10桁程度の精度で一定値に収束することが確認された。反復計算により得られた収束値である計算値をθCALとすると、式(5)の関係から、釣り合い点(平衡状態)におけるスライディングノズル11の平衡開度XCALは下記式(12)で表される(ステップS103)。
【0051】
【数11】

・・・式(12)
【0052】
(流量特性の導出の説明)
以上のステップS101〜S103に示す手順により、ζ=0としたときの釣り合い点(平衡状態)におけるスライディングノズル11の平衡開度XCALを求めることができる。そして式(6)から、注入と鋳造の平衡状態(平衡開度XCAL)近傍における流入量QIN(X)[m・mm/sec]の開度X[mm]に対する曲線の傾き、すなわち微係数を数値計算することにより、ζ=0としたときの注入系の流量特性を表すノミナル流量係数KKnor[m/sec]を算出することができる。ノミナル流量係数KKnorは、下記式(13)により計算することができる(ステップS104)。
【0053】
【数12】

・・・式(13)
ここで、
【数13】

・・・式(14)
ただし、θは、式(5)でXにより表されるものであり、ζ=0とする。
【0054】
(損失係数ζの導出の説明)
次いで、開度実績の移動平均値XMAVEに基づいて損失係数ζが計算される(ステップS105)。モールド3における溶鋼の流入・出の釣り合い点として計算される開度XCALと、スライディングノズル11の制御部から出力される開度実績値Xの有限時間Tにおける移動平均値XMAVEを比較すると、差異が生じることは先述の通りである。本実施形態では、以下に説明するように、開度実績値Xの移動平均値XMAVEに基づいて損失係数ζを計算する。ここで、有限時間Tは、例えば5秒程度以上の信号ノイズを除去するのに適する時間とする。有限時間Tが長すぎると時間応答性が低下する。なお、ノイズが制御するうえで問題とならない程度に小さいときには、移動平均ではなく開度実績値Xをそのまま用いても良い。
【0055】
まず、式(5)に基づく式(16)から、開度実績値Xの移動平均値XMAVEを用いてθMAVEが計算される。そして、θMAVE、並びに、既知の値モールド幅MW、モールド厚MD、及び鋳造速度Vの実績値を、釣り合いを表わす式(6)に基づく式(15)に代入して、注入系の損失係数ζを求める。なお、ここで、釣り合いを表わす式(6)を用いる根拠は、湯面レベル制御が正常に機能して湯面が一定に保たれているとの仮定による。
【0056】
【数14】

・・・式(15)
ただし、
【数15】

・・・式(16)
である。
【0057】
このように、式(15)により算出された損失係数ζを導入することによって、ノズルの溶損、閉塞等による開口形状の変化を、損失係数の変化で代表させて、定量的に表わすことができる。
【0058】
そして、式(13)により算出したノミナル流量係数KKnorに対して式(15)で求めた損失係数ζを用いた(1−ζ)を乗算する式(17)により、注入系の真の流量係数KKを推定することができる。(ステップS106)
【0059】
【数16】

・・・式(17)
【0060】
以上の各ステップの計算を逐次実行して、式(7)から式(17)の演算を、所定の周期、例えば10秒ごとに繰り返す。これにより、スライディングノズル11が閉塞、あるいは、溶損等により注入量が変化する場合においても、流量係数KK(すなわちdQIN/dX)を高精度、かつ、リアルタイムに連続して推定することが可能となる。
【0061】
そして、計算された流量係数KKに対して、フィードバック制御器13の制御ゲインを自動調整する。これにより、制御のループゲインを一定に維持することができ、湯面レベルを所望の目標値に維持するという制御機能を実現することができる。以下、フィードバック制御機13の構成例として、PI(又はPID)制御とSAC(Simple Adaptive Control:単純適応制御)の2つの場合について、以下で詳しく説明する。
【0062】
<フィードバック制御部>
(PI又はPID制御)
図5に、フィードバック制御部13の構成の実施の形態の一例として、PI制御によって湯面レベル制御を実施する場合のブロック線図を示す。図5に示すプロセス17は湯面レベル制御対象を表す。加減算器18は、プロセス17の出力、すなわち、湯面レベル実績値yと、湯面レベル目標値rとの偏差Eyを求める。そして、フィードバックコントローラである制御器16によりPI(又はPID)制御演算を行い、ストッパーノズル12、または、スライディングノズル11の開度指令値u0を出力する。例えば、PI制御によるフィードバックコントローラの伝達関数C(s)を次式で表すとする。
【0063】
【数17】

・・・式(18)
ここで、PBは比例幅[%]、Tは積分時間[sec]である。
【0064】
ノミナルモールド断面積Anorとし、及び流量係数同定部14で導出されるノミナル流量係数KKnorに対して、予め最適チューニングされて設定された比例幅、積分時間をそれぞれPBnor、TInorとすれば、制御機16は、下記式(19)に従ってパラメータの自動調整を行えばよい。ここで、ノミナルモールド断面積Anorとは、例えばメインに生産する製品寸法に対応するモールド断面積であり、最適チューニングされたときの値とする。また、モールド断面積Aは、現在実際に鋳造しているモールド幅MW、モールド厚MDの積で表される。このように表すことで、モールド幅を若干変更して鋳造するときにも本方法は適用可能となる。
【0065】
【数18】

・・・式(19)
【0066】
以上、フィードバック制御部13の構成の実施の形態の一例として、PI制御によって湯面レベル制御を実施する場合について説明した。これにより、ノズル溶損、閉塞により流量係数KKが変動した場合においても、制御のループゲインは一定に保たれるため、常に最適な湯面レベル制御性能を実現することができる。また、モールド断面積が変化した場合においても同様である。
【0067】
(SAC制御)
次に、図6に、フィードバック制御部13の構成の実施の形態の、PI制御とは異なる別の1例として、SACによって湯面レベル制御を実施する場合のブロック線図を示す。プロセス17は湯面レベル制御対象を表す。規範モデル(Gm)19は、湯面レベル目標値rを入力として、規範モデル出力yを求める。そして、SAC制御手段21a、21b、21cは、偏差の補正値E、規範モデル出力y、湯面レベル目標値rを入力とし、逐次ゲインを演算する。そして、SAC制御手段21a、21b、21cにより算出された遂次ゲインからSAC制御出力uが算出され、スライディングノズル11、あるいは、ストッパーノズル12の開度指令値uとなる。
【0068】
一方、SAC制御出力uは、プロセス17へ出力されるとともに、並列前進補償器(PFC;Parallel Feed−forward Compensator)22へ出力される。プロセス17は、湯面レベル測定値yを加算器23へ出力する。また、並列前進補償器22は、SAC制御出力uを入力として、並列前進補償量yを算出し、加算器23へ出力する。加算器23は、湯面レベル測定値yと並列前進補償量yとを加算して、拡大プロセス出力yを求める。そして、減算器20は、拡大プロセス出力yと規範モデル(Gm)19により算出された規範モデル出力yの差である偏差の補正値Eを求め、SAC制御手段21aへ出力する。このようにして、SAC制御出力uが算出される。
【0069】
ここでは、uを並列前進補償器22の入力として、並列前進補償量yを下記式(20)、(21)により計算する。
【0070】
【数19】

【0071】
並列前進補償器22は、入力に対してプロセスの出力が発生しないむだ時間において擬似的な出力を与えることでSACの適用条件である概強正実(ASPR)を満足させる役割がある。本実施形態では、PFC(並列前進補償器22)の伝達関数H(s)を下記式(22)で表すことにする。
【0072】
【数20】

・・・式(22)
【0073】
ここで、βはPFCゲイン[−]、α、αは湯面レベル制御用に最適化された、異なる値の極である。βは大きいほど擬似出力が大きくなり、SACは安定化しやすくなる反面、制御性能が劣化する。
【0074】
ノミナルモールド断面積Anor、及び流量係数同定部14で導出するノミナル流量係数KKnorに対して予め最適チューニングされ設定されたPFCゲインをβnorとすれば、下記式(23)に従ってパラメータの自動調整が行われる。ここで、ノミナルモールド断面積Anorとは、例えばメインに生産する製品寸法に対応するモールド断面積であって、最適チューニングしたときの値とする。また、モールド断面積Aは、現在実際に鋳造しているモールド幅MW、モールド厚MDの積で表される。このように表すことで、モールド幅を若干変更して鋳造するときにも本方法は適用可能となる。
【0075】
【数21】

・・・式(23)
【0076】
以上、フィードバック制御部13の構成の実施の形態の他の一例として、SACによって湯面レベル制御を実施する場合について説明した。これにより、ノズル溶損、閉塞により流量係数KKが変動した場合においても、実用的な周波数帯域である0.01から0.1[Hz]における制御のループゲインは一定に保たれる。したがって、常に最適な湯面レベル制御性能を実現することができる。また、モールド断面積が変化した場合においても同様である。
【0077】
以上、本実施形態にかかる連続鋳造機のモールド湯面レベル制御装置及び制御方法について説明した。本実施形態によれば、連続鋳造機のモールド断面積、鋳造速度、TD重量、SN開度を入力信号とし、損失係数の修正を行いながら、ニュートン法に基づいた流量特性のモデル計算を繰り返すことで、SN開度の理論値と実績値が一致するような損失係数、及び、流量特性を計算する。そして、推定した流量特性に比例するようにフィードバックコントローラのゲインを自動調整する。これにより、スライディングノズルが閉塞、あるいは、溶損することで流量特性が変化する場合にも、流量特性を高精度に求め、推定した流量特性に基づいてPI制御をはじめとするフィードバックコントローラのゲインを自動調整することで制御のループゲインを一定に維持することができる。したがって、スライディングノズルが閉塞、あるいは、溶損することで流量特性が変化する場合の湯面レベル変動の悪化を防止することができ、スライディングノズルで鋳造されるスラブの品質向上に大きく寄与することができる。また、溶鋼成分によってノズルの閉塞、溶損の傾向が異なる場合、従来はフィードバック制御部のゲインテーブルを溶鋼成分に基づいて作成する必要があったが、本実施形態にかかるレベル制御装置を適用することによってその手間が無くなる。これにより、フィードバック制御部調整を大幅に簡易化できる。
【0078】
なお、本実施形態のモールド湯面レベル制御装置、すなわちフィードバックコントローラ15を構成するフィードバック制御機13、流量係数同定部14は、湯面レベル計10、及びスライディングノズル11又はストッパーノズル12の駆動器とのI/O部を備えたパーソナルコンピュータ、又はPLC(Programmable Logic Controller)を用いて、上記した各演算、処理を実行するコンピュータソフトウェアを作成し、当該パーソナルコンピュータ等のメモリにロードして構成することができる。
【0079】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0080】
1 タンディッシュ
2 浸漬ノズル
3 モールド
4 凝固殻
5 ピンチロール
6 水スプレー冷却
7 鋳片
8 バルジング
9 湯面レベル
10 湯面レベル計
11 スライディングノズル
12 ストッパーノズル
13 フィードバック制御演算部
14 流量係数同定部
15 フィードバックコントローラ(制御装置)
16 PI制御演算部
17 プロセス
18 減算器
19 規範モデル
20 減算器
21a SAC制御演算部その1
21b SAC制御演算部その2
21c SAC制御演算部その3
22 PFC(並列前進補償器)
23 加算器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属溶湯を収納したタンディッシュから、スライディングノズルと浸漬ノズルとからなる注入系を経てモールド内へ、該スライディングノズルの開度Xをフィードバック制御により制御しつつ前記金属溶湯量を注入し、表層部から凝固した鋳片をモールドの下部から引き抜くことにより、金属溶湯を鋳造する連続鋳造機のモールド湯面制御方法において、
前記モールドの断面積と前記鋳片の引き抜き速度である鋳造速度Vとから前記注入系の流体力学のモデル式を用いて注入系の損失係数ζを0として、引き抜かれる鋳片の体積とモールドへの注入量との釣り合う平衡状態における、前記スライディングノズルの開度Xである平衡開度XCAL、及び、モールドへの金属溶湯の流入量Q(X)のスライディングノズルの開度Xの関する微係数であるノミナル流量係数KKnorを算出する工程と、
前記注入系の流体力学のモデル式を用いて、前記引き抜かれる鋳片の体積と前記モールドへの注入量とが釣り合う平衡状態を表わす式に、スライディングノズルの開度Xの実績値の移動平均値、及び鋳造速度の実績値を代入して注入系の損失係数ζを算出し、該損失係数ζと前記ノミナル流量係数KKnorとに基づいて注入系の真の流量係数KKを算出する工程とを、
を含み、
所定の周期で繰り返して連続的に前記ノミナル流量係数KKnor及び前記真の流量係数KKを導出し、
前記ノミナル流量係数KKnorと前記真の流量係数KKとの比に基づいて、前記フィードバック制御の制御ゲインを調整することを特徴とする、連続鋳造機のモールド湯面制御方法。
【請求項2】
金属溶湯を収納したタンディッシュから、スライディングノズルと浸漬ノズルとからなる注入系を経てモールド内へ、該スライディングノズルの開度Xをフィードバック制御により制御しつつ前記金属溶湯量を注入し、表層部から凝固した鋳片をモールドの下部から引き抜くことにより、金属溶湯を鋳造する連続鋳造機のモールド湯面制御装置において、
前記モールドの断面積と前記鋳片の引き抜き速度である鋳造速度Vとから前記注入系の流体力学のモデル式を用いて注入系の損失係数ζを0として、引き抜かれる鋳片の体積とモールドへの注入量との釣り合う平衡状態における前記スライディングノズルの開度Xである平衡開度XCAL、及び、モールドへの金属溶湯の流入量Q(X)のスライディングノズルの開度Xの関する微係数であるノミナル流量係数KKnorを算出し、
前記注入系の流体力学のモデル式を用いて、前記引き抜かれる鋳片の体積と前記モールドへの注入量との釣り合う平衡状態を表わす式に、スライディングノズルの開度Xの実績値の移動平均値、及び鋳造速度の実績値を代入して注入系の損失係数ζを算出し、該損失係数ζと前記ノミナル流量係数KKnorとに基づいて注入系の真の流量係数KKを算出して、
所定の周期で繰り返して前記ノミナル流量係数KKnor及び前記真の流量係数KKを連続的に算出して出力する流量係数同定部と、
前記ノミナル流量係数KKnorと前記真の流量係数KKとの比に基づいて、前記フィードバック制御の制御ゲインを調整して前記湯面レベルを制御するフィードバック制御部と、
を具備することを特徴とする、連続鋳造機のモールド湯面制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−253490(P2010−253490A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103650(P2009−103650)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】