説明

連続鋳造用ロングノズルの設計装置及び連続鋳造用ロングノズルの設計プログラム、連続鋳造用取鍋組立体、並びに連続鋳造方法

【課題】浸漬開口の際ロングノズル上端の接続部からの溶鋼の噴出を十分防止できる連続鋳造用取鍋アセンブリ設計装置の提供。
【解決手段】下部長さdが溶鋼溜に浸漬したノズル管内空間の溶鋼溜湯面上に使用時に投入される量の詰砂を充填した状態を初期状態とし、砂柱を圧力係数μkで応力伝達する一体の弾性体とし、ノズル上部から溶鋼を体積流量Qで流入させつつ、砂柱の速度、位置の経時変化を演算すると共に、砂柱上に溜積する溜積溶鋼湯面高の経時変化を演算する砂柱運動演算手段と、管内径Rを段階的に変化させつつ砂柱運動演算手段により、詰砂全部がノズル下端から排出された時点の溜積溶鋼の湯面高を算出し、この湯面高がノズル上端高以下となる最小ノズル管内径を決定する最小ノズル径決定手段と、最小ノズル管内径Rによりノズル管内空間の必要管内容積を算出するノズル容積演算手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶鋼の連続鋳造において取鍋からタンディッシュ内の溶鋼溜へ溶鋼を曝気することなく注入する際に使用される連続鋳造用取鍋組立体及びその設計技術に関する。
【背景技術】
【0002】
溶鋼の連続鋳造過程に於いて、取鍋からタンディッシュへの溶鋼の注出には、溶鋼が空気に曝気しないようにするため、連続鋳造用ロングノズル(ロングノズル)が使用される。連続鋳造用ロングノズルは、その上端部が取鍋からの溶鋼の注出及びその流量調節を行うためのバルブを有する耐火物性ノズルに接続され、その下端部はタンディッシュ内の溶鋼溜に浸漬させた状態として使用される。
【0003】
図7に、連続鋳造用取鍋組立体の連続鋳造用ロングノズル周辺の断面図を示す。取鍋101の底壁102には、耐火性のスライディングノズル103を取り付けるための注出口104が形成されている。注出口104は、上方に向かって拡開する漏斗状に形成されている。スライディングノズル103は、中央にスライド式のバルブ105が設けられ、その上下に上部ノズル106及び中間ノズル107を備えている。バルブ105は、摺動可能に上下に向かい合わせられた2枚のスライディングノズルプレート105a,105bにより構成されている。下方のスライディングノズルプレート105aを上方のスライディングノズルプレート105bに対して水平にスライドさせることでバルブ105は開閉し、取鍋101内の溶鋼の注出量の調節を行うことができる。
【0004】
スライディングノズル103の下端には、コレクターノズル(又は下部ノズルともいう)108を介してロングノズル109が接続される。コレクターノズル108は、溶融金属の流れを整流化させるための短尺なノズルである。ロングノズル109は、溶鋼を曝気させることなくタンディッシュ内の溶鋼溜110に溶鋼を導くための長尺なノズルである。従って、溶鋼注出中のロングノズル109の下端部は溶鋼溜110の湯面下に没した状態で配設される。
【0005】
取鍋101からの溶鋼の注出を開始するよりも前に、取鍋101の底壁102に設けられた注出口104付近が溶鋼で満たされた場合には、取鍋101の周囲からの抜熱等による溶鋼の温度降下によって、注出口104付近の溶鋼が凝固しスライディングノズル103へ溶鋼を注出することができなくなる障害が生じる場合がある。そこで、かかる凝固障害を防止し、溶鋼のスムーズな注出を行うために、取鍋101からの溶鋼の注出を開始する前には、取鍋101の底壁102に設けられた注出口104に、硅砂等の詰砂111が充填される。溶鋼の注出が開始されると、この詰砂111は溶鋼により押し出されてロングノズル109を経由しタンディッシュ内の溶鋼溜110へ流出する。
【0006】
ところで、ロングノズル109が、管内径が一定の直胴管により構成されている場合、ロングノズル109の下端部をタンディッシュ内の溶鋼溜110に浸漬した状態でバルブ105を解放して溶鋼の注出を開始すると、詰砂111がロングノズル109内を落下した際に、詰砂111がロングノズル109の管内の溶鋼溜110の湯面付近に一時的に滞留する。この詰砂111の滞留によって、溶鋼の注出開始時には一時的に溶鋼の流れが阻害される。ロングノズル109内に流入する溶鋼の圧力によって詰砂111がロングノズル109先端から排出されるまでの時間が長い場合には、ロングノズル109内に溶鋼が満たされて、ロングノズル109の上端のコレクターノズル108との接合部から溶鋼が噴き出す等のトラブルが生じる。
【0007】
そこで、一般には、溶鋼の注出開始時(バルブ105の開口時)に、ロングノズル109の下端をタンディッシュ内の溶鋼溜110の湯面よりも上方まで引き上げて、まず詰砂111をロングノズル109から排出させ、その後、ロングノズル109の下端を溶鋼溜110の湯面下に下げる注出開始方法(以下「非浸漬開口法」という。)が採られている。
【0008】
しかしながら、非浸漬開口法では、溶鋼の注出開始時において、溶鋼が曝気することとなるため、溶鋼の酸化が生じたり大きな温度低下が生じるという問題を有している。また、非浸漬開口法では、溶鋼溜110の湯面上のロングノズル109の下端から詰砂や溶鋼が湯面上へ落下するため、タンディッシュ内の溶鋼溜110の湯面付近に集層した熔融スラグ等がこの落下する溶鋼流によって溶鋼溜110の表層下の溶鋼内に激しく巻き込まれる。そのため、スラグ等の介在物による溶鋼の汚染や品質劣化が生じるという問題もある。
【0009】
そこで、これらの問題を解決するため、溶鋼の注出開始時から注出終了時までの注出工程の全期間にわたり、ロングノズル109の下端を溶鋼溜110の湯面下に浸漬させておくこと(以下、この方法を「浸漬開口法」という。)が望ましい。しかしながら、上述したように、浸漬開口法では、詰砂111の一時的な滞留による溶鋼の噴き出しの課題を解決する必要がある。
【0010】
そこで、この課題を解決するものとして、特許文献1には、タンディッシュ内の溶鋼溜内に浸漬せしめる連続鋳造用ロングノズルにおいて、内断面を適宜大きさに形成した直筒状上体部と、該上体部に連続して形成される下体部であって、溶鋼湯面相当部位の断面内径が取鍋に設けた摺動式溶鋼開閉装置の溶鋼流路内径の1.5〜5倍の内径寸法に形成した下体部とからなる連続鋳造用ロングノズルが開示されている。
【0011】
また、特許文献2には、ロングノズルの孔を下広とし、其のロングノズルの上端部の孔の内径をロングノズルを接続するコレクターノズルの下端部の孔の内径の1.5倍以上としたコレクターノズルとロングノズルの接続方法が開示されている。
【0012】
更に、特許文献3には、取鍋からタンディッシュに注入される溶鋼流の周囲を包囲して再酸化を防止するために、上端が取鍋ノズルに接続され、且つ下端がタンディッシュ内に指向する取鍋ロングノズルにおいて、上端が前記取鍋ロングノズルに接続され且つ全長に亘って一定の内径を有するロングノズル本体と、このロングノズル本体の下端部に一体に結合された先端空間部とを設け、この先端空間部の底面を開口させる一方、この開口底面の内径Dを前記ロングノズル本体の内径Dの1.5倍以上とし、更に前記先端空間部の内径は全長に亘って前記ロングノズル本体の内径Dよりも大きく且つ長さは1000mm以下とした取鍋ロングノズルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開昭57−139456号公報
【特許文献2】特開昭58−38647号公報
【特許文献3】実公昭61−6987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前記各先行技術文献において開示されているロングノズルは、何れも、これは、ロングノズルの下体部の管内径を上体部よりも拡径することで、ロングノズル内から詰砂が排出されるまでの時間を短縮するとともに、ロングノズルが溶鋼で満たされるまでの時間を稼ぎ、溶鋼の噴き出しを防止しようとするものである。
【0015】
しかしながら、何れの場合に於いても、ロングノズルの口径等は一応は示されているものの、その決定根拠については示されておらず、事実上は単に定性的にロングノズルの下端付近の管内径を大きくすることを示しているに過ぎないものである。現実の操業に於いては、取鍋の溶鋼量等、バルブを含む取鍋底部のノズル内孔容積、内孔径、ロングノズルの長さ及び内孔容積、詰砂の充填量(体積)、詰砂の物性等が操業毎に相違する。浸漬開口法における注湯開始時の溶鋼の挙動は、これらの諸要素の影響を強く受けることになるが、前述の各先行技術文献を始め、既存の浸漬開口法用のロングノズルの設計に於いてはこれらの諸要素の影響を考慮しておらず、それぞれの操業毎に固有の諸要素の条件下で経験に基づいてロングノズルの形状や長さが決定されている。すなわち、実際に使用してみてからロングノズルの形状や長さを決定するか、溶鋼の噴き出しが生じないようにマージンを余分に大きくとってロングノズルの形状や長さを決定しているのが実情である。
【0016】
しかし、特殊な条件によっては経験上の予測の範囲を超えた場合も発生することが考えられ、これでは浸漬開口法における溶鋼の噴き出しトラブルが十分に防止されているとはいえない。
【0017】
そこで、本発明の目的は、浸漬開口を行う際に、ロングノズル上端部の取鍋の溶鋼排出制御用バルブ等の耐火物との接続部からの溶鋼の噴き出しを十分に防止することが可能な連続鋳造用取鍋組立体及びその設計技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係る連続鋳造用ロングノズルの設計装置は、下部の所定の長さdの部分が溶鋼溜に浸漬された状態で使用される長さLの連続鋳造用のロングノズルについて、ノズルの管内空間(以下「ノズル上部管内空間」という。)の必要管内容積を設計する連続鋳造用ロングノズル設計装置であって、
下部の所定の長さdの部分が溶鋼溜に浸漬されたノズルの管内空間の溶鋼溜湯面上にノズル使用時にノズルに投入される量の詰砂を充填した状態を初期状態として、この詰砂の砂柱を圧力係数μkで応力伝達する一体の弾性体とみなし、ノズル上部から溶鋼を体積流量Qmで流入させつつ、前記砂柱の速度、位置の経時変化を演算するとともに、砂柱上に溜積する溜積溶鋼の湯面の高さの経時変化を演算する砂柱運動演算手段と、
ノズルの管内径Rを段階的に変化させながら、前記砂柱運動演算手段により、詰砂の全部がノズルの下端から排出された時点における溜積溶鋼の湯面の高さを算出し、この湯面の高さがノズル上端の高さ以下となる最小のノズルの管径を決定する最小ノズル径決定手段と、
この最小のノズルの管内径Rによりノズル管内空間の必要管内容積を算出するノズル容積演算手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0019】
この構成により、浸漬開口を行う際に接続部からの溶鋼の噴き出しを防止するために必要なノズル管内空間の必要管内容積を算出することができ、溶鋼の噴き出しの生じないロングノズルを設計することができる。
【0020】
また、本発明に係る連続鋳造用ロングノズルの設計装置に於いて、前記砂柱運動演算手段は、前記詰砂の前記砂柱を、次式(1)によって応力伝達する一体の弾性体とみなして、前記砂柱の速度及び位置、並びに溜積溶鋼の湯面の高さの経時変化を演算するようにできる。
【0021】
【数1】

【0022】
また、本発明に係る連続鋳造用ロングノズルの設計装置に於いて、前記砂柱運動演算手段は、前記砂柱の運動方程式(2)により、前記砂柱の速度及び位置、並びに溜積溶鋼の湯面の高さの経時変化を演算するようにできる。
【0023】
【数2】

【0024】
本発明に係る連続鋳造用ロングノズルの設計プログラムは、コンピュータに読み込んで実行することにより、コンピュータを上記の何れかに記載の連続鋳造用ロングノズルの設計装置として動作させることを特徴とする。
【0025】
本発明に係る連続鋳造用ロングノズルの設計方法は、下部の所定の長さdの部分が溶鋼溜に浸漬された状態で使用される長さLの連続鋳造用のロングノズルについて、溶鋼溜に浸漬されていないノズル上部の管内空間(以下「ノズル上部管内空間」という。)の必要管内容積をコンピュータにより設計する連続鋳造用ロングノズル設計方法であって、
砂柱運動演算モジュールが、下部の所定の長さdの部分が溶鋼溜に浸漬されたノズルのノズル上部管内空間の最下部にノズル使用時にノズルに投入される量の詰砂を充填した状態を初期状態として、この詰砂の砂柱を圧力係数μkで応力伝達する一体の弾性体とみなし、ノズル上部から溶鋼を体積流量Qmで流入させつつ、前記砂柱の速度、位置の経時変化を演算するとともに、砂柱上に溜積する溜積溶鋼の湯面の高さの経時変化を演算する砂柱運動演算ステップと、
最小ノズル径決定モジュールが、ノズルの管内径Rを段階的に変化させながら、前記砂柱運動演算ステップを実行し、詰砂の全部がノズルの下端から排出された時点における溜積溶鋼の湯面の高さを算出し、この湯面の高さがノズル上端の高さ以下となる最小のノズルの管径を決定する最小ノズル径決定ステップと、
ノズル容積演算モジュールが、この最小のノズルの管内径Rによりノズル上部管内空間の必要管内容積を算出するノズル容積演算ステップと、
を有することを特徴とする。
【0026】
本発明に係る連続鋳造用取鍋組立体は、底壁に溶鋼注出のための注出口が開口形成された取鍋と、取鍋の下方に配設されるタンディッシュと、前記注出口に接続するスライド式のバルブを有するスライディングノズルと、前記スライディングノズルの下端に連通し前記取鍋内から落流する溶鋼を前記タンディッシュ内の溶鋼溜の湯面下へ非曝気状態で導流する連続鋳造用のロングノズルと、前記注出口乃至前記スライディングノズルの前記バルブ上方にかけて充填される詰砂と、を備えた連続鋳造用取鍋組立体であって、
前記ロングノズルの長さをL、前記ロングノズルが前記タンディッシュ内の溶鋼溜に浸漬する部分の長さをd、前記ロングノズル内に前記詰砂が充填された場合に該詰砂の砂柱を応力伝達する一体の弾性体とみなしたときの圧力係数をμk、溶鋼の体積流量をQとしたとき、
初期時刻に於いて前記詰砂のすべてが前記ロングノズル内の溶鋼湯面上に堆積した砂柱を形成しているとする初期条件下で、式(2)の運動方程式に従って前記砂柱が運動した場合に、前記ロングノズルの管内容積が、前記砂柱の上面の高さzが前記ロングノズルの下端となる時刻までの時間Tに前記ロングノズル内に流入する溶鋼の流入量QT以上であることを特徴とする。
【0027】
本発明に係る連続鋳造方法は、底壁に溶鋼注出のための注出口が開口形成された取鍋と、前記取鍋の前記注出口に接続されたスライド式のバルブを有するスライディングノズルと、前記取鍋の下方に配設された溶鋼を貯留するタンディッシュと、前記スライディングノズルの下端に接続され前記取鍋内の溶鋼を前記タンディッシュ内の溶鋼溜の湯面下へ非曝気状態で導流する連続鋳造用のロングノズルと、前記取鍋の注出口に充填され前記スライディングノズルの前記バルブを開弁した際に前記ロングノズル内に落下して砂柱を形成し溶鋼の落流とともに前記タンディッシュ内の溶鋼溜中に押し出される詰砂と、を備えた連続鋳造システムにより連続鋳造を行う連続鋳造方法であって、
前記ロングノズルの長さをL、前記ロングノズルが前記タンディッシュ内の溶鋼溜に浸漬する部分の長さをd、前記ロングノズル内に前記詰砂が充填された場合に該詰砂の砂柱を応力伝達する一体の弾性体とみなしたときの圧力係数をμk、溶鋼の体積流量をQとしたとき、
初期時刻に於いて前記詰砂のすべてが前記ロングノズル内の溶鋼湯面上に堆積した砂柱を形成しているとする初期条件下で、式(2)の運動方程式に従って前記砂柱が運動した場合に、前記ロングノズルの管内容積が、前記砂柱の上面の高さzが前記ロングノズルの下端となる時刻までの時間Tに前記ロングノズル内に流入する溶鋼の流入量QT以上である前記ロングノズルを使用して連続鋳造を行うことを特徴とする。
【0028】
この構成により、溶鋼を取鍋からダンディッシュ内の溶鋼溜に注出を開始した後に、スライディングノズルとロングノズルとの継ぎ目から溶鋼が噴き出すことが防止できる。
【発明の効果】
【0029】
以上のように、本発明に係る連続鋳造用ロングノズルの設計装置及び設計方法によれば、浸漬開口を行う際に接続部からの溶鋼の噴き出しを防止するために必要なノズル管内空間の必要管内容積を算出し、溶鋼の噴き出しの生じないロングノズルを設計することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例1に係る連続鋳造用ロングノズル設計装置1の構成を表す図である。
【図2】取鍋内の溶鋼の注出を開始する際の詰砂と溶鋼の挙動を模式的に示した図である。
【図3】砂柱の管内落下モデルを示す図である。
【図4】Janssenの粉体圧縮理論に基づく砂柱の応力平衡モデルを示す図である。
【図5】ロングノズルの一般的形状と形状関数R(z’)を表す図である。
【図6】連続鋳造用ロングノズル周辺の断面図である。
【図7】連続鋳造用取鍋組立体の連続鋳造用ロングノズル周辺の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0032】
(1)連続鋳造用ロングノズル設計装置の構成
図1は、本発明の実施例1に係る連続鋳造用ロングノズル設計装置1の構成を表す図である。連続鋳造用ロングノズル設計装置1は、図7に示したような浸漬開口法による連続鋳造用取鍋組立体において、ロングノズルの形状及び管内容積を計算により自動決定する装置である。本実施例の連続鋳造用ロングノズル設計装置1は、汎用コンピュータ2、入力装置3及び出力装置4を備えている。汎用コンピュータ2は、一般のパーソナル・コンピュータやワークステーションである。入力装置3はキーボード、マウス等の歩引でぃングデバイスなどである。また、出力装置4は、ディスプレイ、プリンタ、外部記憶装置等である。
【0033】
汎用コンピュータ2は、初期パラメータ記憶部11、設計定数演算部12、設計定数記憶部13、管内径テーブル記憶部14、中間変数記憶部15、砂柱運動演算部16、最小ノズル径決定部17、ノズル容積演算部18を備えている。これら各部位は、汎用コンピュータ2に連続鋳造用ロングノズル設計プログラムをロードして実行させることにより、コンピュータとプログラムとが協働して機能的なモジュールとして実現されるものである。
【0034】
初期パラメータ記憶部11は、入力装置3から入力される初期の設計パラメータを記憶する。設計定数演算部12は、初期パラメータ記憶部11に記憶されたパラメータに基づき、各設計定数を演算して設計定数記憶部13に保存する。設計定数記憶部13は、これらの設計定数を記憶する。管内径テーブル記憶部14は、ロングノズルの形状を特定するための各高さにおけるロングノズルの内径情報をテーブルとして記憶する。中間変数記憶部15は、詰砂の砂柱の運動を計算する際の中間変数を一時的に記憶する。砂柱運動演算部16は、ロングノズル内の砂柱の運動を計算する。この砂柱運動演算部16は、応力演算部16a、速度演算部16b、及び遠位演算部16cにより構成されている。最小ノズル径決定部17は、ロングノズルの管内径Rを段階的に変化させながら、砂柱運動演算部16により、詰砂の全部がロングノズルの下端から排出された時点における溜積溶鋼の液面の高さを算出し、この液面の高さがロングノズル上端の高さ以下となる最小のノズル管径を決定する。ノズル容積演算部18は、この最小のノズルの管内径Rによりノズル上部管内空間の必要管内容積を算出する。
【0035】
(2)計算の基礎となるモデル
次に、本実施例の連続鋳造用ロングノズル設計装置1がロングノズルの形状パラメータを決定する際の基礎となる原理モデルについて説明する。
【0036】
図2は、取鍋内の溶鋼の注出を開始する際の詰砂と溶鋼の挙動を模式的に示した図である。ここでは、簡単のためロングノズルの管内形状を円筒であると仮定するが、一般的にはロングノズルの管内形状は下広がりのものであってもよい。尚、図2の符号については図7と合わせてある。
【0037】
取鍋内の溶鋼の注出を開始する場合、スライディングノズル103を開口すると、まず、詰砂111の下部が崩壊し、詰砂がロングノズル109内へ落下する(図2(a)参照)。これは、一般に詰砂111の上部は、浸入した溶鋼が凝固して脆膜が形成されたような状態にあると考えられ、また、一般的な粉体の崩落も粉体層の下部から順に生じることが経験的に知られているからである。通常は、詰砂111の比重は溶鋼よりも小さい。従って、ロングノズル109内へ落下した詰砂は、ロングノズル109内の溶鋼の湯面上に堆積し砂柱112を形成すると考えられる。
【0038】
次に、詰砂111の下部の崩落が進行すると、遂には詰砂111の上層部の脆膜状の部分が崩壊して、ロングノズル109内へ溶鋼の流入が始まる。そして、堆積した砂柱112の自重及び流入した溶鋼の重さによって、砂柱112は溶鋼溜110内へ沈降し、ロングノズル109の下端から逐次排出される。このとき、時間とともに砂柱112上には流入した溶鋼が溜積する。砂柱112上の溜積溶鋼113の湯面がロングノズル109の上端に達する前に砂柱112がロングノズル109の下端から完全に排出されれば、ロングノズル109内の詰栓がなくなるため溶鋼の噴き出しは生じないが、砂柱112が排出される前に溜積溶鋼113の湯面がロングノズル109の上端に達すると、砂柱112の押出抵抗が大きいためにロングノズル109上端の継ぎ目部分から溶鋼の噴き出しが生じると考えられる。
【0039】
そこで、以上のような詰砂と溶鋼の挙動に基づいて、詰砂と溶鋼のロングノズル内での運動状態をモデル化する。図3に、砂柱の管内落下モデルを示す。このモデルに於いては、砂柱の上面に溶鋼が落下すると、砂柱はダイラタンシー(Dilatancy)によって1つの固体として運動すると考える。
【0040】
まず、計算を単純にするため、ロングノズルの下端部付近の管内形状は直円筒であると仮定する。ロングノズルの全長をL、半径をRとし、タンディッシュ内の溶鋼溜に浸漬されたロングノズル先端部の湯面からの深さをdとする。ロングノズル内に落下した詰砂の砂柱の長さをlとする。また、ロングノズルの中心軸に沿って下向きにz軸をとり、溶鋼溜の湯面の高さを原点Oとして、円筒座標系(r,θ,z)を設定する。この座標系に於いて、詰砂の砂柱の上底の高さをz、下底の高さをz、ロングノズル内に溜積した溜積溶鋼の湯面の高さをzとする。また、詰砂の比重をρ、溶鋼の比重をρとする。
【0041】
砂柱には、自重による重力の他、溜積溶鋼に作用する重力による押下力、溶鋼と詰砂の比重の相違による浮力、溶鋼の粘性抵抗力、及び砂柱が加速される際に生じる溶鋼溜内の溶鋼の慣性応力、砂柱とロングノズル内壁との間の摩擦力が作用すると考えられる。
【0042】
そこで、まず砂柱とロングノズル内壁との間の摩擦力の影響を取り入れるために、Janssenの粉体圧縮理論(Janssen, H.A., Ver. Deut. Ingr. Z., Vol.39, p. 1045 (1895).)に基づいて砂柱に作用する応力を考える。尚、応力による砂柱の変形についてはダイラタンシーにより無視できるものと仮定する。Janssenの式が成り立つと仮定すると、砂柱の高さzにおける下向きの応力σ(z−z)は、次式のように表される。
【0043】
【数3】

【0044】
ここで、μは砂柱とロングノズル内壁との間の静摩擦係数、kはRankine定数、σは砂柱の上底面に加わる応力、gは重力加速度である。λは応力減衰距離であり、砂柱上底面から加えられた応力が1/eまで減衰する距離を表している。ここで、σは時間により変化するものとして、σ=σ(t)と記す。この式(3a)には、砂柱に作用する溜積溶鋼の重力と砂柱とロングノズル内壁との間の摩擦力までが考慮されている。
【0045】
式(3a)により、砂柱の下底面に下向きに作用する応力σb1は、次式のように表される。
【0046】
【数4】

【0047】
一方、砂柱の下底面に上向きに作用する応力は、砂柱の浮力σb2、溶鋼の粘性抵抗σb3、及びノズル内の溶鋼をノズルから溶鋼溜に押し出す際に生じる慣性抵抗σb4である。これらは、それぞれ次式のように表される。
【0048】
【数5】

【0049】
ここで、ρは溶鋼の密度、ηは溶鋼の粘性抵抗係数、kは慣性抗力の寄与度である。η,kは実験的に決定することができるパラメータである。但し、粘性抵抗係数ηについては他の項に比べて一般に小さいので無視することができる。また、kは最も厳しい条件として1に設定する。尚、慣性抵抗σb4は、砂柱の下底面が加速されるのに伴ってノズル内の溶鋼が加速されながら押し出される際に生じる慣性力である。またkは、ノズルの下端でノズル外部に直ちに拡散されることから、ノズルの浸漬部分の内孔に存在する溶鋼のみを考慮すればよく、且つこの慣性力は初期の短時間にのみ影響して全体時間への影響は小さいので、1とみなして計算することができる。
【0050】
式(4),(5)より、砂柱の下底面に作用する押し下げ応力σは、次式のように表される。
【0051】
【数6】

【0052】
ここで、δvbは、慣性抵抗が砂柱の運動方向とは逆方向に作用することを補償するために付けられた係数である。故に、砂柱がロングノズル下端に達する前の砂柱についての運動方程式は、次のように表される。
【0053】
【数7】

【0054】
ロングノズルの上端からノズル内への溶鋼の流入速度をρ=ρπRとする。qはノズルの単位断面積当たりの溶鋼の体積流入速度である。このとき、時刻tにおいて砂柱上に溜積する溜積溶鋼の質量Mは次式で表される。
【0055】
【数8】

【0056】
ここで、tは溶鋼の流入開始時刻である。従って、時刻tにおける砂柱の上底面に作用する下向き応力は、次式のように表される。
【0057】
【数9】

【0058】
式(7),(9)より、砂柱の運動方程式は次のように表される。
【0059】
【数10】

【0060】
式(10a)において、粘性抵抗項(右辺第4項)は他の項に比べて小さいため、簡単のため無視するものとし、また変数変換z=z−lを行うと、砂柱の運動方程式を次のように書く。
【0061】
【数11】

【0062】
次に、砂柱の下底がロングノズルの下端に達した後の砂柱の運動について考える。この場合、実際の現象を簡単にモデル化することはできないので、単純化したモデルとして、砂柱の下部がロングノズルの下端から出ると詰砂は溶鋼溜の内部に霧散するものと仮定する。また、粘性抵抗項も無視する(粘性抵抗係数ηについては他の項に比べて一般に小さいので無視することができる)。従って、砂柱の運動方程式は次式のようになる。
【0063】
【数12】

【0064】
式(11),(12)は、非同次非線形微分方程式であるため解析的には解くことはできない。従って、数値計算によって解を求める必要がある。
【0065】
(3)連続鋳造用ロングノズル設計装置の動作
次に、上記原理モデルに基づく図1の連続鋳造用ロングノズル設計装置1の動作について説明する。図4は、本実施例の連続鋳造用ロングノズル設計装置1の動作を表すフローチャートである。
【0066】
まず、ステップS1において、設計者は、入力装置3により基本的な設計パラメータの入力を行う。基本的な設計パラメータとしては、次表のものが挙げられる。
【0067】
【表1】

【0068】
ここで、砂柱はロングノズルの下端付近にあり、砂柱はロングノズルの直筒部分に位置するものとする。
【0069】
次に、ステップS2において、設計定数演算部12は、ロングノズル下端部の管内半径Rを初期値Rminに設定し、設計定数記憶部13に保存する。
【0070】
次に、ステップS3において、設計定数演算部12は、管内径テーブル記憶部14に保存されたノズル内半径テーブルから、指定されたロングノズルの管内半径Rに対応するノズル内半径データR(z’)を読み出し、設計定数記憶部13に保存する。ここで、ロングノズルは、一般には直管ではなく、図5に示したように、下端部付近が膨径した形状のものが使用されることが多い。ノズル内半径テーブルは、このように一様でないノズルの形状を指定するためのテーブルであり、ノズル内半径データR(z’)は、図5に示したように、ロングノズルの各高さz’におけるノズル内半径のデータ即ちノズルの形状関数を示している(尚、座標軸z’の原点は、ロングノズル下端中心とし、座標軸の方向はz軸と反対向きである)。以下、R(z’)を「ノズル形状関数」と呼ぶ。
【0071】
次に、ステップS4において、設計定数演算部12は、ステップS1において入力された(表1)のパラメータに基づいて、各種設計定数を次式により計算し、設計定数記憶部13に保存する。
【0072】
【数13】

【0073】
次に、ステップS5において、設計定数演算部12は、内部変数である時刻変数tをΔtに設定し、砂柱速度v(0)を0に設定する。
【0074】
次に、ステップS6において、設計定数演算部12は、次式により、各種計算パラメータを算出する。
【0075】
【数14】

【0076】
次に、ステップS7において、応力演算部16aは、砂柱に加わる慣性抵抗σb4、溜積溶鋼体積V、砂柱上底面圧力σ、砂柱下底面下向き応力σb1、砂柱浮力σb2、及び砂柱に加わる全押し下げ圧力σを次式により計算する。
【0077】
【数15】

【0078】
次に、ステップS8において、速度演算部16bは、砂柱の加速度dv(t)/dt及び砂柱の速度v(t)を次式により計算する。
【0079】
【数16】

【0080】
次に、ステップS9において、変位演算部16cは、時間Δtにおける砂柱の移動距離Δz、時刻tにおける砂柱上底面位置(高さ)z及び砂柱下底面位置(高さ)zを次式により算出する。
【0081】
【数17】

【0082】
次に、ステップS10において、変位演算部16cは、砂柱上底面位置(高さ)zがロングノズルの浸漬深さdまで達したか否かを判定する。z<dの場合には、時刻tをt+Δtに更新し、ステップS6に戻る。また、z≧dの場合には、次のステップS11の処理へ進む。
【0083】
ステップS11において、最小ノズル径決定部17は、次式の条件を満たすような、溜積溶鋼(ロングノズル内の溶鋼)の湯面高さzを算出する。湯面高さzの計算は数値計算により簡単に行うことができる。尚、ノズル形状関数R(z’)は先にステップS2においてノズル内半径テーブルから読み出されたものを使用する。
【0084】
【数18】

【0085】
次に、ステップS12において、最小ノズル径決定部17は、溜積溶鋼の湯面高さ−z(ここで、z軸は下向きなので負号が附く)がロングノズルの上端の高さ−(L−d)以上の場合(即ち、溜積溶鋼の湯面高さがロングノズル上端以上となり噴き出しが生じる場合)には、ロングノズル下端部の管内半径RをΔRだけ大きくし(即ち、R←R+ΔR)、ステップS2に戻る。[−z]<[−(L−d)]の場合には、次のステップS13へ進む。
【0086】
ステップS13において、ノズル容積演算部18は、ロングノズル下端部の管内半径Rに対応するノズル形状関数R(z’)に基づき、ロングノズルの容積Vnozzleを次式に基づいて計算する。
【0087】
【数19】

【0088】
最後に、ステップS14において、出力装置4が最終的に得られたロングノズル下端部の管内半径R0、ノズル形状関数R(z’)、及びロングノズルの容積Vnozzleを出力し、終了する。
図6に、本実施例の連続鋳造用ロングノズル設計装置において使用する砂柱の運動方程式によって計算した結果例を示す。図6において、時刻0付近に於いて上昇する曲線は溜積溶鋼の湯面高さを表している。また、時刻0付近に於いて下降する曲線は砂柱上面の高さを表している。計算のパラメータとしては、次の表2の値を使用した。尚、ノズル内径は高さによらず一定とした。
【0089】
【表2】

【実施例2】
【0090】
本実施例では、本発明に係る連続鋳造用取鍋組立体の例について示す。本実施例に係る連続鋳造用取鍋組立体の連続鋳造用ロングノズル周辺の断面図は、先に説明した図7と同様である。各部の説明に関しては、〔背景技術〕の欄で述べた通りである。
【0091】
本実施例に於いて、実施例1と同様に、ロングノズル109の長さをL、ロングノズル109の内孔半径をR、ロングノズル109がタンディッシュ内の溶鋼溜110に浸漬する部分の長さをd、ロングノズル109内に詰砂111が落下し充填された場合に形成される詰砂の砂柱を応力伝達する一体の弾性体とみなしたときの圧力係数をμk、該砂柱の高さをz(t)、取鍋101からロングノズル109に流入する溶鋼の体積流量をQとする。また、本実施例に於いては、溶鋼の比重はρ=7.2、詰砂111の比重は2.0とする。
【0092】
上記各パラメータを変化させて、実施例1で述べた連続鋳造用ロングノズルの設計方法により、必要ロングノズル長さLを計算した結果を表3に示す。尚、本実施例に於いては、詰砂111の体積は、ロングノズル109内の時刻0における砂柱の高さz(0)として表示し(個別の具体的な設計では図7の詰砂111の充填体積Vをロングノズル109の断面積πRで除した値を適用すればよい)、ロングノズル109の内孔形状は円筒形とした。
【0093】
【表3】

【0094】
即ち、本発明に係る連続鋳造用取鍋組立体は、例えば、表3に示したような各種設計パラメータの組み合わせの連続鋳造用取鍋組立体として実現される。
【符号の説明】
【0095】
1 連続鋳造用ロングノズル設計装置
2 汎用コンピュータ
3 入力装置
4 出力装置
11 初期パラメータ記憶部
12 設計定数演算部
13 設計定数記憶部
14 管内径テーブル記憶部
15 中間変数記憶部
16 砂柱運動演算部
16a 応力演算部
16b 速度演算部
16c 遠位演算部
17 最小ノズル径決定部
18 ノズル容積演算部
101 取鍋
102 底壁
103 スライディングノズル
104 注出口
105 バルブ
105a,105b スライディングノズルプレート
106 上部ノズル
107 中間ノズル
108 コレクターノズル
109 ロングノズル
110 溶鋼溜
111 詰砂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部の所定の長さdの部分が溶鋼溜に浸漬された状態で使用される長さLの連続鋳造用のロングノズルについて、前記ロングノズルの管内空間(以下「ノズル上部管内空間」という。)の必要管内容積を設計する連続鋳造用ロングノズル設計装置であって、
下部の所定の長さdの部分が溶鋼溜に浸漬された管内径Rの前記ロングノズルの管内空間の溶鋼溜湯面上に前記ロングノズル使用時に前記ロングノズルに投入される密度ρ,体積Vの詰砂を充填した状態を初期状態として、この詰砂の砂柱を圧力係数μkで応力伝達する一体の弾性体とみなし、前記ロングノズル上部から密度ρの溶鋼を体積流量Qで流入させつつ、前記砂柱の位置の経時変化を演算するとともに、砂柱上に溜積する溜積溶鋼の湯面の高さの経時変化を演算する砂柱運動演算手段と、
前記ロングノズルの管内径Rを段階的に変化させながら、前記砂柱運動演算手段により、詰砂の全部が前記ロングノズルの下端から排出された時点における溜積溶鋼の湯面の高さを算出し、この湯面の高さが前記ロングノズル上端の高さ以下となる最小の前記ロングノズルの管内径Rを決定する最小ノズル径決定手段と、
を備えたことを特徴とする連続鋳造用ロングノズルの設計装置。
【請求項2】
前記砂柱運動演算手段は、前記詰砂の前記砂柱を、次式(1)によって応力伝達する一体の弾性体とみなして、前記砂柱の位置の経時変化を演算することを特徴とする請求項1記載の連続鋳造用ロングノズルの設計装置。
【数1】

【請求項3】
前記砂柱運動演算手段は、前記砂柱の運動方程式(2)を数値計算することにより、前記砂柱の上面の位置zの経時変化を演算し、
前記最小ノズル径決定手段は、式(3)により溜積溶鋼の湯面の高さ|z|を演算することを特徴とする請求項2記載の連続鋳造用ロングノズルの設計装置。
【数2】

【請求項4】
コンピュータに読み込んで実行することにより、コンピュータを請求項1乃至3の何れか一に記載の連続鋳造用ロングノズルの設計装置として動作させることを特徴とする連続鋳造用ロングノズルの設計プログラム。
【請求項5】
下部の所定の長さdの部分が溶鋼溜に浸漬された状態で使用される長さLの連続鋳造用のロングノズルについて、溶鋼溜に浸漬されていない前記ロングノズル上部の管内空間(以下「ノズル上部管内空間」という。)の必要管内容積をコンピュータにより設計する連続鋳造用ロングノズル設計方法であって、
砂柱運動演算モジュールが、下部の所定の長さdの部分が溶鋼溜に浸漬された管内径Rの前記ロングノズルの前記ノズル上部管内空間の最下部に前記ロングノズル使用時に前記ロングノズルに投入される密度ρ,体積Vの詰砂を充填した状態を初期状態として、この詰砂の砂柱を圧力係数μkで応力伝達する一体の弾性体とみなし、前記ロングノズル上部から密度ρの溶鋼を体積流量Qで流入させつつ、前記砂柱の速度、位置の経時変化を演算するとともに、砂柱上に溜積する溜積溶鋼の湯面の高さの経時変化を演算する砂柱運動演算ステップと、
最小ノズル径決定モジュールが、前記ロングノズルの管内径Rを段階的に変化させながら、前記砂柱運動演算ステップを実行し、詰砂の全部が前記ロングノズルの下端から排出された時点における溜積溶鋼の湯面の高さを算出し、この湯面の高さが前記ロングノズル上端の高さ以下となる最小の前記ロングノズルの管内径Rを決定する最小ノズル径決定ステップと、
を有することを特徴とする連続鋳造用ロングノズルの設計方法。
【請求項6】
底壁に溶鋼注出のための注出口が開口形成された取鍋と、前記取鍋の下方に配設されるタンディッシュと、前記注出口に接続するスライド式のバルブを有するスライディングノズルと、前記スライディングノズルの下端に連通し前記取鍋内から落流する溶鋼を前記タンディッシュ内の溶鋼溜の湯面下へ非曝気状態で導流する連続鋳造用のロングノズルと、前記注出口乃至前記スライディングノズルの前記バルブ上方にかけて充填される詰砂と、を備えた連続鋳造用取鍋組立体であって、
前記ロングノズルの長さをL、前記ロングノズルが前記タンディッシュ内の溶鋼溜に浸漬する部分の長さをd、前記ロングノズル内に前記詰砂が充填された場合に該詰砂の砂柱を応力伝達する一体の弾性体とみなしたときの圧力係数をμk、溶鋼の体積流量をQとしたとき、
初期時刻に於いて前記詰砂のすべてが前記ロングノズル内の溶鋼湯面上に堆積した砂柱を形成しているとする初期条件下で、請求項3の式(2)の運動方程式に従って前記砂柱が運動した場合に、前記ロングノズルの管内容積が、前記砂柱の上面の高さzが前記ロングノズルの下端となる時刻までの時間Tに前記ロングノズル内に流入する溶鋼の流入量QT以上であることを特徴とする連続鋳造用取鍋組立体。
【請求項7】
底壁に溶鋼注出のための注出口が開口形成された取鍋と、前記取鍋の前記注出口に接続されたスライド式のバルブを有するスライディングノズルと、前記取鍋の下方に配設された溶鋼を貯留するタンディッシュと、前記スライディングノズルの下端に接続され前記取鍋内の溶鋼を前記タンディッシュ内の溶鋼溜の湯面下へ非曝気状態で導流する連続鋳造用のロングノズルと、前記取鍋の注出口に充填され前記スライディングノズルの前記バルブを開弁した際に前記ロングノズル内に落下して砂柱を形成し溶鋼の落流とともに前記タンディッシュ内の溶鋼溜中に押し出される詰砂と、を備えた連続鋳造システムにより連続鋳造を行う連続鋳造方法であって、
前記ロングノズルの長さをL、前記ロングノズルが前記タンディッシュ内の溶鋼溜に浸漬する部分の長さをd、前記ロングノズル内に前記詰砂が充填された場合に該詰砂の砂柱を応力伝達する一体の弾性体とみなしたときの圧力係数をμk、溶鋼の体積流量をQとしたとき、
初期時刻に於いて前記詰砂のすべてが前記ロングノズル内の溶鋼湯面上に堆積した砂柱を形成しているとする初期条件下で、請求項3の式(2)の運動方程式に従って前記砂柱が運動した場合に、前記ロングノズルの管内容積が、前記砂柱の上面の高さzが前記ロングノズルの下端となる時刻までの時間Tに前記ロングノズル内に流入する溶鋼の流入量QT以上である前記ロングノズルを使用して連続鋳造を行うことを特徴とする連続鋳造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−20152(P2011−20152A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167786(P2009−167786)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000170716)黒崎播磨株式会社 (314)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】