連続鋳造鋳片およびその製造方法
【課題】 本発明は、気泡ならびに介在物系欠陥の少ない高品質の連続鋳造鋳片を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、鋳片断面内の長辺表面から鋳片厚み方向に成長しているデンドライトについて、表面から5mmの位置での上記デンドライト傾角が鋳片厚み方向に対して長辺全幅に亘って平均値として15°以上の角度を持ち、かつその標準偏差が10°以内であり、さらに鋳片の表皮下に観察される爪深さが2mm以下であることを特徴とする。
【解決手段】 本発明は、鋳片断面内の長辺表面から鋳片厚み方向に成長しているデンドライトについて、表面から5mmの位置での上記デンドライト傾角が鋳片厚み方向に対して長辺全幅に亘って平均値として15°以上の角度を持ち、かつその標準偏差が10°以内であり、さらに鋳片の表皮下に観察される爪深さが2mm以下であることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は気泡ならびに介在物系欠陥の少ない高品質の連続鋳造鋳片に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳片品質を左右する要因として、鋳片表面性状と鋳片内に捕捉された気泡・介在物が挙げられる。先ず、鋳片表面性状が鋳片品質を左右する理由について説明する。
鋼の連続鋳造の場合、一般には、パウダーを鋳型内に供給し、かつ鋳型を上下方向にオシレーションさせ、鋳型と凝固シェル間に液体状スラグを流入させつつ鋳造している。そのため、鋳型内メニスカス近傍のフラックス流路中に生じる圧力変動によって、鋳片表面にはオシレーションマークと呼ばれる凹凸が形成される。
炭素鋼の場合、鋳片は加熱炉にておよそ1200℃×1〜2時間程度の高温酸化雰囲気中に保持した後、熱間圧延される。そのため、1mm〜2mm程度スケールが生成し、そのスケールが除去されるため、オシレーションマークそのものが問題となることは少ない。一方、ステンレス鋼においては、スケールオフ量が過小であるため、オシレーションマークの凹凸そのものが問題視される。そのため、オシレーションマークの凹凸を小さくするための方法が幾つか開示されている。
【0003】
例えば、鋳片表面のオシレーションマークの形状について、オシレーションマークの隣り合う凹凸の最大高低差が0.8mm以下であること等を特徴とする鋼板製造用スラブが開示されている(特許文献1参照)。
また、オシレーションマークの深さが250μm以下となるように、鋳型内に液体潤滑剤を流入されることを特徴とするステンレス鋼の連続鋳造方法が開示されている。(特許文献2参照)
しかし、気泡ならびに介在物系欠陥の少ない高品質の鋳片を得る為には上記特許文献に係る公知技術では満足されるものではなかった。
【0004】
一方、炭素鋼の場合、過大なオシレーションマークであれば、マーク凹部と凸部との間の凝固不均一や凹部の偏析により割れが問題となる。しかしながら、多くの場合、オシレーションマークそのものではなく、その表皮下に見られる「爪」と呼ばれる不連続組織が問題となる。代表的な鋳片表皮下組織を図1に示す。この図1に示す如く鋳片表面から鋳造方向とは逆向きで内部に向かって伸びている、周囲より濃くエッチングされている曲線を爪と呼称する。
先に述べたように、オシレーションマークは、鋳型内メニスカス近傍のフラックス流路中での圧力変動によるメニスカスの変形の結果、生じるものであるが、メニスカス部の曲率に沿って強固な初期凝固シェルが形成された場合、その初期凝固シェルは圧力変動によって変形せず、その上方の溶鋼のみが変形することになる。その際、先に生成した初期凝固シェルの上に溶鋼がオーバーフローし、先に形成されている初期凝固シェルの上に新たに凝固することになり、その界面では凝固が不連続となる。この爪周囲は元々パウダーが存在していた領域にオーバーフローすることになるため、パウダーをかみこんだり、また、ストランドプール内に吹き込まれたAr気泡や介在物が浮上し、パウダー/溶鋼界面に滞留していたものが捕捉されやすい等、鋳片最表層部の清浄性に大きく影響する。
【0005】
鋳片の中に捕捉された気泡あるいは介在物は、圧延時に表面に露出する、あるいは、製品加工時の欠陥の原因となるため、これらの捕捉個数を最小限に抑える必要がある。鋳片内部における清浄性を改善するには、ストランドプール(ここでは鋳型内湯面から最終凝固位置までの未凝固溶鋼プールを指す)内での流動をいかに制御するかが極めて重要である。そのための手段として、従来から水平断面内で旋回流を形成する方法やノズル吐出流速を制動する方法(特許文献3参照)や短片に沿って侵入する下降流を制御する方法(特許文献4参照)が知られている。
【特許文献1】特開2000−334501号公報
【特許文献2】特開昭61−165253号公報
【特許文献3】特公昭58−52458号公報
【特許文献4】特開平11−28556号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上述べたように、従来の技術は表面性状改善あるいは鋳片表層部および内部の品質改善を目的とした方法ならびに装置を提供するという点で検討されたものであり、さらに気泡ならびに介在物系欠陥の少ない高品質の鋳片は、明らかにされていなかった。
そこで、本発明は気泡ならびに介在物系欠陥の少ない高品質の鋳片を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題の解決を目的としてなされたものであり、その要旨は以下の通りである。
(1)本発明は、鋳片断面内の長辺表面から鋳片厚み方向に成長しているデンドライトについて、表面から5mmの位置での上記デンドライト傾角が鋳片厚み方向に対して長辺全幅に亘って平均値として15°以上の角度を持ち、かつその標準偏差が10°以内であり、さらに鋳片の表皮下に観察される爪深さが2mm以下であることを特徴とする連続鋳造鋳片に係るものである。なお、デンドライトの傾角とは、デンドライトの1次枝と長辺表面の法線とのなす角度として定義する。
(2)本発明は、上記項目(1)において、上記デンドライト傾角の長辺全幅に亘っての平均値について、相対する長辺間での違いが±10°以内であることを特徴とする連続鋳造鋳片に係るものである。
(3)本発明は、上記項目(1)乃至(2)において、鋳片の内部に負偏析線が層状に形成されていることを特徴とする連続鋳造鋳片に係るものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の連続鋳造鋳片は表面から5mmの位置でのデンドライト傾角が鋳片厚み方向に対して長辺全幅に亘って平均値として15°以上の角度を持ち、その標準偏差が10°以内であり、さらに鋳片の表皮下に観察される爪深さが2mm以下であるので、気泡並びに介在物個数が少ない、高品質の連続鋳造鋳片を得ることができる。
即ち、デンドライト傾角が15゜以上であるならば、連続鋳造において電磁攪拌による溶鋼凝固時の溶鋼の流動が確実になされていた指標となり、爪深さも小さくなるので、気泡並びに介在物の少ない鋳片が得られている指標となる。また、爪深さが2mm以下と小さいので、鋳造時に溶鋼外部近傍に存在している連続鋳造用のパウダーやその他の介在物の噛み込みのおそれが少なくなり、介在物個数が少なくなる。
本発明の連続鋳造鋳片において、デンドライト傾角の長辺全幅に亘っての平均値について、相対する長辺間での違いが±10°以内であるならば、気泡並びに介在物個数が少ない、高品質の鋳片である。即ち、相対する長辺間でのデンドライト傾角の違いが±10°以内であるならば、連続鋳造の凝固時に相対する長辺間での溶鋼の流速差が小さかったことを示し、鋳片の水平断面内で均一な攪拌流が形成されていたことを意味するので、介在物の少ない高品質の連続鋳造鋳片が得られる。
本発明の連続鋳造鋳片において、鋳片の内部に負偏析線が層状に形成されているならば、鋳片の凝固時にストランド内で生成させた溶鋼の流れがストランド内で偏りを生じることが無く凝固したことを意味し、更にその凝固時の流れが周期的に時間変化されたことを意味するので、凝固シェルの前面に確実に流動を与えたことになり、その結果として気泡および介在物の個数が低位に抑制された連続鋳造鋳片が得られたことを意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明について最良の形態に基づいて詳細に説明する。
本発明に係る連続鋳造鋳片は、鋳片の外形を横断面長方形状と見立てた場合、鋳片横断面内の長辺表面から鋳片厚み方向に成長しているデンドライトについて、表面から5mmの位置での上記デンドライト傾角(デンドライトの1次枝が鋳片長辺側表面の法線に対して傾斜する角度)が鋳片厚み方向に対して長辺全幅に亘って平均値として15°以上の角度を持ち、かつその標準偏差が10°以内であり、さらに鋳片の表皮下に観察される爪深さが2mm以下であることを特徴とする。
この連続鋳造鋳片において、上記デンドライト傾角の長辺全幅に亘っての平均値について、相対する長辺間での違いが±10°以内であることが好ましい。
この連続鋳造鋳片において、鋳片の内部に負偏析線が層状に形成されていることが好ましい。
【0010】
本発明の連続鋳造鋳片の対象とする鋼種は、普通鋼、極低炭素鋼、電磁鋼、合金鋼、ステンレス鋼などであるが、凝固組織を現出することができれば、上記以外の鋼種も適宜適用することには何ら問題ない。
本発明の連続鋳造鋳片は、上記の鋼種を連続鋳造で鋳造することにより得ることができる。このときの連続鋳造条件としては、鋳型内湯面近傍に電磁攪拌コイルを設置し、水平断面内で旋回流を付与することが好ましい。また必要に応じて、ストランド内電磁撹拌を付与してもよい。
【0011】
上記の連続鋳造により得られた鋳片の鋳片断面内の長辺表面(鋳造幅方向)から鋳片厚み方向に成長しているデンドライトの表面から5mmの位置においてデンドライト傾角が鋳片厚み方向に対して15°以上の角度を持っている必要がある。
成長しているデンドライトは、断面を研磨後ピクリン酸水溶液などによってエッチングすることにより観察される。この観察されたデンドライトの一次枝と鋳片厚み方向(鋳片長辺表面に対する法線)との角度を測定することによりデンドライト傾角を測定する。
デンドライト傾角の測定位置を表面から5mm位置とするのは、一般的に実施される鋳造速度の条件、0.6〜2.5mm/分では電磁攪拌によって形成されている流動によって偏向されたデンドライト傾角を測定できるので定義した。
なお、一つ一つのデンドライト傾角はばらつきを有しているので20本程度抽出し、それらの傾角を個々に測定し、その部位での平均値を求めた。このような測定を長辺全幅にわたって行い、全幅に亘ってのデンドライト傾角の平均値ならびに標準偏差を求めた。
その結果、デンドライト傾角の平均値の下限15°は、この値未満では気泡、介在物個数などが増えること、また、爪深さも深くなるのでこの条件に限定した。加えて、デンドライト傾角の標準偏差の上限10°は、この値を超えると気泡、介在物個数などが増えること、また、爪深さも深くなるのでこの条件に限定した。
【0012】
ところで、デンドライト傾角の平均値の上限は鋼種によって異なるため、本発明では下限値が前述した条件であることを条件とする。ただし、過大な攪拌流速の付与は湯面の乱れを引き起こすため、上限値の目安としてデンドライト傾角が最も小さい極低炭素鋼では22°、それ以外の鋼種では32°とすることが好ましい。それぞれの鋼種においてデンドライト傾角から換算される攪拌流速の上限は1m/s程度となる。
また、上記測定を相対する長辺のデンドライト傾角についても同様の測定を行う。このときの相対する長辺でのデンドライト傾角の平均値は、対応する長辺のデンドライト傾角の平均値との差が±10°以内であることが好ましい。これを外れる場合は、鋳片表層部の気泡・介在物個数が増加することから限定した。
なお、ノズル吐出流が大きく偏流した場合、相対する長辺の一方は一様な攪拌流が形成されているが、相対する長辺側では攪拌流とノズル吐出反転流との干渉が生じる場合があるためであり、そのような場合には、デンドライト傾角の長辺の表裏差が±10°以内を外れる。
【0013】
さらに、鋳片の表面に観察される爪深さが2mm以下であることが必要である。この爪深さについては、鋳片の鋳造方向断面を研磨することにより図1に示すような組織を観察し、鋳片表面から鋳造方向とは逆向きで内部に向かった伸びている周囲より濃くエッチングされている曲線を爪として観察し、その深さが表面から2mm以内であれば良い。爪深さの上限値2mmは、これ以上では、介在物個数が増加し、製品加工時の欠陥の原因となるため限定した。
なお、以上の条件の他に、鋳片の内部に負偏析線が層状に形成されていることも好ましい。この負偏析線は、凝固組織を現出する方法と同様の方法により観察できる。層状とは、1mm〜30mmピッチで形成されているものをいい、負偏析線がある幅を持って存在することが必要である。層状の負偏析線を必要とするのは、凝固時に流れが付与されており、かつその流れが周期的に時間変化することでストランド内で偏りを発生させることなく、凝固シェル前面に流動を付与することができ、その結果として気泡および介在物の個数が低位に抑えられているため限定することが好ましい。
【0014】
次に、本発明に係る連続鋳造鋳片が前述の条件を満たすことが好ましいとの結論に至った基礎理論確認実験とその結果に基づく考察について説明する。
本発明者らは、連続鋳造鋳片における気泡ならびに介在物系欠陥の少ない高品質の鋳片に関し、以下の実験と考察の結果、以下の条件を見出した。
【0015】
本発明者らは、先ず先に述べた鋳片表皮下に形成される爪とその周囲に捕捉された介在物個数の関係について、ラボ実験を行い詳細に調査した。
実験方法はPを0.05%含有した極低炭素鋼を溶解炉にて溶製し、その溶鋼中に鋳型に見立てた丸棒を所定速度で下降することで、丸棒周囲に凝固シェルを形成させた。その断面をピクリン酸水溶液を用いてエッチングし凝固組織を現出させ、爪深さを測定した。 また、得られた凝固組織の表面から5mmまでの領域について、顕微鏡にて100μm以上の介在物の個数を測定した。爪深さと介在物個数の関係について調査した結果を図2に示すが、爪深さが低減するに従い介在物個数は少なくなった。
特に爪深さが2mm以下の条件では、介在物個数密度が本発明者らが別途定めた200個/m2以下であった。ここで、介在物個数密度が200個/m2以下の場合、鋳片表面を手入れすることなく、熱延、冷延、焼鈍を行っても、表面疵が発生しないことを確認しており、介在物個数密度の目標としては200個/m2以下とする。
このように図2に示す結果より、爪深さを最大2mm以下に抑制する必要があることを知見した。そこで、本発明においては、爪深さが2mm以下を満足することを条件とした。
【0016】
次に、このような状態を鋳片全幅にわたってどのようにして実現するかを検討した。
流動下での凝固シェル成長は溶鋼側からの熱流束を受けるため、凝固が停滞あるいは再溶解することになる。この熱流束は流速によって規定されるため、凝固シェル前面に一定の流速を付与すればよいことになる。そこで、流速と爪深さの関係について調査した。
実験手法は前述した手法において丸棒を所定速度で回転させることで、流動下での凝固状態を模擬した。その結果を図3、図4に示すが、流速が増大するにつれ、爪深さは減少することがわかった。また、捕捉された介在物個数も併せて低減することがわかった。
具体的には流速0.2m/sを超える値から爪深さ2mmを下回るようになる傾向があり、流速0.2m/sを超える値から介在物個数が200個/m2を確実に下回るようになる。
【0017】
このように、凝固シェル前面にある一定値以上の流速を付与できればよいことになる。 スラブ鋳造において、そのような状態を実現しようとすると、鋳型内電磁攪拌装置を用いて水平断面内で攪拌流を付与する方法が考えられる。しかしながら、攪拌流のみが形成されるのであれば、全幅にわたって一様な流動を付与することができるが、連続鋳造では浸漬ノズルを介してタンディッシュから鋳型内に溶鋼を供給する必要があり、浸漬ノズルからの吐出流および吐出反転流と先の攪拌流が干渉することになる。このような状況を模式的に示したのが図5、図6である。
【0018】
この試験における条件は以下の通りであった。転炉での精錬と環流式真空脱ガス装置での処理ならびに合金添加により極低炭素鋼を溶製した。なお、鋼中P濃度は0.05%の条件であった。この溶鋼を10.5mRの湾曲型連鋳機で厚み250mm、幅1800mmのスラブに鋳造した。鋳造速度は1m/minでノズル内にArガスを3Nl/min流した。鋳型内の電磁攪拌コイルは湯面での流速が最大1.2m/s付与できる電磁攪拌コイルを用い、コアKAを有する電磁攪拌コイル中心部を湯面から100mmの位置に設置した。(図6(c)参照)
そこで、鋳型内電磁攪拌の条件を幾つか変化させ、鋳片表皮下の爪発生および気泡・介在物の捕捉個数について調査した。
【0019】
図5、図6に示す如く、水平断面長方形状の鋳型1において、相対向する長辺1a、1aを構成する側壁1A、1Aとそれらに隣接する短辺1b、1bを構成する側壁1B、1Bから鋳型1が構成され、この鋳型1の中心部には浸漬ノズル2が挿入され、この浸漬ノズル2の下端部両側の噴出口2A、2Aから短辺1b、1b側に向いて斜め下向きの溶湯流(ノズル吐出流)Y1、Y2が供給されるように構成されている。
この構成の鋳型1においては、鋳型内電磁攪拌装置の電磁コイルKを配置する(例えば浸漬ノズル2の溶湯噴出口よりも上方側に配置する)と、図5の矢印A1、A2、A3、A4に示す水平断面での環流型の上位攪拌流が生成する。なお、攪拌流A1、A2、A3、A4は電磁コイルに近い側の流速が大きいので図5では矢印の長さの長い方が流速が大きいことを意味する。また、浸漬ノズル2の下端部には短辺1b側に開口する噴出口2Aが形成されて溶鋼Yは鋳型1内において浸漬ノズル2の先端部から短辺1b、1b側に向かって流動するが、その流動分が短辺1b、1bに衝突してから戻る吐出反転流3が鋳型1内に生成する。また、浸漬ノズル2からの溶湯流Y1、Y2に伴ってそれらの下流側では溶湯流Y3、Y4、Y5からなる循環流と、溶湯流Y6、Y7、Y8からなる循環流が生じて浸漬ノズル2よりも下位側に位置するストランドプール下部側の溶鋼のほぼ全体が循環流により循環される。
図5中の下流側とは、溶鋼Yの攪拌流の下流側であり、攪拌流と吐出反転流が逆向きの部位を示し、一方、上流側とは攪拌流の上流側であり、攪拌流と反転流が同じ向きの部位を意味する。加えて、それぞれ鋳型1の短辺1b、1bから200mmの部位からサンプルを切り出し、鋳造方向断面の鋳片表皮下の爪深さの測定を行い、表面から5mmの位置までの介在物個数測定に供した。
【0020】
それらの結果を図7と図8に示す。撹拌流とノズル吐出流および吐出反転流が干渉が顕著な場合(上述の攪拌流と反転流が逆向きの部位)の試料は、爪深さも深く、かつ介在物の捕捉個数が多いが、干渉がない条件(上述の攪拌流と反転流が同じ向きの部位)の試料では爪深さも浅く、かつ介在物の捕捉個数も全幅にわたって低くすることができた。即ち、全幅にわたって凝固シェル前面に一様な流動を付与することが、連続鋳造鋳片の表皮下の清浄性を良好に保つために必要なことがわかった。
【0021】
そこで、連続鋳造鋳片がどのような条件を満足すれば、上記結果が得られるかを検討した。一般に流動下ではデンドライトは流れの風上側に偏向して成長し、その偏向角度は流速、凝固速度から規定されることが知られている。(例えば、岡野ら:鉄と鋼,61(1975),2982.)このデンドライトの偏向現象はデンドライト樹間の濃化溶鋼が流れによって洗浄され、デンドライト前面の濃度勾配が変化することによっているため、デンドライト間隔によっても変化することになる。一般的に鋼中C濃度とデンドライト偏向角度は変化することが知られている。(例えば、江阪ら:鉄と鋼,86(2000),247.)そのため、C濃度が低いIF鋼(interstitial free iron)ではデンドライトの偏向角度が小さいことになる(図9参照)。
そこで本願発明では、IF鋼でかつP濃度が0.05%以上含有した鋼の条件を基準として偏向角度を指定することにした。
【0022】
次に、連続鋳造鋳片においてどの部位での偏向角度を定義するかを明らかにする必要がある。鋳型内の凝固シェル厚Dと鋳造速度Vcは、下記関係式でおよそ規定されるため、鋳造速度によって凝固シェル厚は変化することになる。
D=k(L/Vc)1/2
ここで、上記の式において、D:凝固シェル厚(m)、L:湯面からの距離(m)、Vc:鋳造速度(m/s)、k:凝固シェル成長速度係数(m・s−1/2)を示す。
連続鋳造設備において電磁攪拌コイルのコア厚Dk(図6(c)参照、コイルが巻回された磁性体コアの厚み寸法)はおよそ150〜300mmのものとした。
程度であり、またそのコイル内での流速はプール深さ方向の流速はほぼ一様とみなしてよい。なお、k値は鋳型銅板厚み、冷却水量、二次冷却条件、用いるパウダー等によって変化するが、およそ1.8×10−3〜3.2×10−3の範囲内である。(例えば、第3版鉄鋼便覧II製銑・製鋼 日本鉄鋼協会編p.619)
従って連続鋳造鋳片において、表面から5mm位置であれば、一般的に実施される鋳造速度の条件、0.01〜0.04m/s では電磁攪拌によって形成されている流動によって偏向されたデンドライト傾角を測定できることになる。
【0023】
このような条件下でデンドライト傾角を測定し、鋳片表層部の介在物個数との関係を調査した。ここで言うデンドライト傾角とは、鋳片表面に対する法線方向に対して、表面から厚み方向に伸びているデンドライトの一次枝の傾角を意味する(換言すると、表面の法線に対する一次枝の角度)。なお、一つ一つのデンドライト傾角はばらつきを有しているので20本程度抽出し、その傾角を測定し平均値を求めることで、その部位でのデンドライト傾角とした。このような測定を鋳片の長辺全幅にわたって行い、長辺全幅にわたってのデンドライト傾角の平均値ならびに標準偏差を求めた。
その結果を図10、図11に示すが、鋳片のほぼ全幅にわたって鋳片厚み方向に対するデンドライトの傾角が平均値として15°以上であり、また、その標準偏差が10°以内であれば鋳片表層部の介在物個数が少ないことがわかった。
図10に示す結果から、デンドライト傾角15゜以上で介在物個数が確実に200個/m2を下回り、図11に示す結果から、デンドライト傾角の標準偏差値が10゜以下になることで介在物個数が確実に200個/m2よりも少なくなっている。
【0024】
次にこのような測定を鋳片の相対する長辺でも行ったところ、図12に示す結果が得られ、長辺間で長辺全幅にわたってのデンドライト傾角の平均値の差違が±10°以内であれば、鋳片表層部全てが介在物個数の少ない状態が形成されていることがわかった。
図12に示す結果から、デンドライト傾角の表裏差±10゜以内であれば、介在物個数が確実に200個/m2を下回って150個/m2程度となり、デンドライト傾角の表裏差±5゜以内であれば、介在物個数が100個/m2程度となることが判明した。
鋳片の凝固組織がこのような特徴を有することは、凝固シェル前面に付与される流速が長辺全幅にわたってほぼ一様であり、加えて相対する長辺間での流速の差が小さい、すなわち、水平断面内で均一な攪拌流が形成されていることを意味する。また、相対する長辺で攪拌流の向きが反対であるため、相対する長辺でのデンドライトは全幅にわたってほぼ平行に揃っていることになる。
【0025】
次に、より鋳片内部において、気泡や介在物の捕捉個数が少ない鋳片を得るための方法について検討した。
一般的に、Ar気泡ならびに介在物は溶鋼と比較して密度が小さいため、溶鋼のプール中での個数密度は湯面近傍で多く、溶鋼のプール深さとともにその個数密度は減少する。メニスカス近傍で凝固シェルへの気泡・介在物捕捉を防止するために、凝固シェル前面に流動を付与したように、鋳片内部においても凝固シェル前面に流動が付与されればよいことになる。但し、プール上部と異なり、できるだけ広範囲にわたって何某かの流動を付与できる方法が好ましい。
【0026】
連鋳鋳造の際のストランドプール内において広範囲にわたって溶鋼に流動を付与しようとすると、できるだけ循環流の領域を大きくとる必要がある。そのための流動パターンとしては、図13に示す流動パターンが考えられる。すなわち、横断面長方形状の鋳型の一方の短辺から他方の短辺に向けて溶鋼に推進流aを付与することで、推進流が衝突する短辺側で上下に流れが分岐した後、それぞれの短辺に沿って上昇あるいは下降する流れ(b1,b2)を形成し、上昇する流れb1が流れC1と流れd1に続いて推進流aに戻る形の循環領域と、下降する流れb2が流れC2と流れd2に続いて推進流aに戻る形の循環領域を形成することで、鉛直断面内で上下に異なる回転方向をもつ循環流を2つ形成することができる。この流動方式が最も広い範囲にわたって流動を付与することができる方式として好ましい。
しかしながら、このような流動をストランドプールの溶鋼に定常的に付与すると偏流れとなってしまい、片方の短辺側で浸漬ノズル吐出流の侵入を助長することになるため好ましくない。そこで、推進流の推進方向を周期的に切り替える方法について、水モデル実験を行い検討した。この実験では連続鋳造装置と同等の寸法比のプールに対して両短辺にホースを取り付け、ホースとポンプを接続し、ポンプで水流を一方の短辺からプール内に送り込むと同時に他方の短辺から抜くことで幅方向に推進する流動を形成した。
【0027】
その結果、推進方向を図14(a)に示す推進流a1から図14(b)に示す推進流a2のように180゜切り替えることで、幅方向全体の凝固シェル前面に流動を付与できることがわかった。(図14参照)これは、以下の理由による。
鋳型内の一方の短辺側の溶鋼に上昇流を他方の短辺側の溶鋼に下降流を加えた場合、循環流の中心は幅中央部となり、幅中央部では常に溶鋼の流れはよどんでいることになる。 しかしながら、ノズル吐出流が短辺に衝突した後、短辺に沿って侵入する下降流e1、e2が存在し、その状態で一方の短辺では下降流f1、他方の短辺では上昇流f2を付与した場合、循環流の中心は幅中央部にはなく、どちらかの短辺側に移動する。その状態で図14(a)の推進方向a1から図14(b)の推進方向a2に推進方向を切り替えることで、凝固シェル前面のどの部位においても流動を付与することができる。
図14(a)、(b)に示すような溶湯流を発生させるためには、一例として、図15に示す如く、鋳型1の上部側(浸漬ノズル2の噴出口2Aよりも上位側)に電磁攪拌コイルK1を設置し、鋳型1の下部側(浸漬ノズル2の噴出口2Aよりも下位側)に電磁攪拌コイルK2を設置して図15に示す如く電磁攪拌コイルK1による水平断面方向の溶湯流と、電磁攪拌コイルK2による水平断面方向の溶湯流を生じさせることで実現できる。また、電磁攪拌コイルK2により発生させる磁界の向きを変更することでストランドプール下部側に発生させる溶湯流を図15の左右両方向に切り替えできるので、図14(a)に示す推進方向a1による攪拌流と図14(b)に示す推進方向a2による攪拌流を切り替えることができる。
【0028】
このような流動条件下で凝固した鋳片の断面組織を図16に示す。
図16(a)は鋳片短辺側の部分の横断面組織写真を示すが、図16(a)から、白く見える負偏析線が層状に形成されていることがわかる。負偏析は溶鋼の流れによってデンドライト樹間に濃化した溶鋼が洗浄されることで形成される。その負偏析領域がある幅を持って存在すれば、連続的に溶鋼に流動を付与したことになるが、層状に負偏析線が形成されていることは、溶鋼の流動が間欠的に付与されていることを意味する。また、図16(b)の短辺部鉛直断面内での凝固組織を詳細に観察すると、負偏析線F1、F2、F3、F4、F5、F6、F7、F8、F9、F10、F11のホワイトバンドを挟んでデンドライトの傾角が逆に変化しており(図16G1、G2、G3と他の補助線等参照)、溶鋼の流動方向が逆向きになっていたことを表している。
図16(a)、(b)に示す鋳片の製造条件は、ストランド電磁攪拌コイルを湯面から3.5mの位置に設置し、攪拌流速としては最大0.5m/sの流速が付与できるものを用い、攪拌方向の切り替えは30秒間、一方の短辺から他方の短辺に向かう攪拌流を付与した後、30秒間、逆向きの攪拌流が形成できる条件の繰り返しとした。なお、鋳造速度は1m/分であった。
また、図16(b)の短辺部鉛直断面内での凝固組織を詳細に観察すると、負偏析線F1、F2、F3、F4、F5、F6、F7、F8、F9、F10、F11を挟んでデンドライトの成長方向が変化しており(図16G1、G2、G3等参照)、溶鋼の流動方向が逆向きになるのに対応して成長方向が逆向きになっているものも観察される。
図17(a)と図17(b)は前記鋳片における相対する長辺の表面近傍の凝固組織を示す組織写真であるが、デンドライトが傾斜している状況が明確に示されている。なお、これらの図には、デンドライトの傾斜状態が判別しやすいようにデンドライトの傾斜に合わせた補助線H1、H2、H3、H4を描いている。
【0029】
この鋳片内に捕捉されている気泡個数を調査したところ、図18に示すように、負偏析線が層状に観察される場合、気泡の個数が低位に抑えられていることがわかった。なお、気泡個数指数20以下が発明者らが別途定めた目標値である。
鋳片内部に気泡が捕捉されていると、冷延焼鈍板にブローホールと呼ぶふくれた欠陥が発生する。その程度は捕捉された気泡個数に依存する。気泡個数指数との関係を調査すると、気泡個数指数が20以下であれば、ブローホールの発生は認められないため、望ましい限界値として20と規定した。
【実施例】
【0030】
本発明の効果を具体的実施例によりさらに詳細に説明する。
転炉での精錬と還流式真空脱ガス装置での処理ならびに合金添加により極低炭素鋼を溶製した。なお、鋼中P濃度は0.05%の条件であった。この溶鋼を10.5mRの湾曲型連鋳機で厚み250mm、幅1800mmのスラブに鋳造した。鋳造速度は1m/minでノズル内にArガスを3Nl/min流した。鋳型内の電磁攪拌コイルは湯面での流速が最大1.2m/s付与できるコイルを用い、コイル中心を湯面から100mmの位置に設置した。
一方、上記に加えてストランドの電磁攪拌装置も用いた鋳造も実施した。ストランドの電磁攪拌装置に関しては、湯面から3.5mの位置に設置した。攪拌流速としては最大0.5m/sの流速が付与できるものを用いた。
【0031】
先ず、鋳片の全断面(鋳造方向に対し垂直断面)カットサンプルを採取し長辺側の表面から5mm位置のデンドライト傾角(鋳片長辺の法線に対するデンドライトの1次枝のなす角度)を鋳片全幅にわたって測定した。なお、デンドライトを鋳片全幅から20本程度抽出し、それらのデンドライト傾角測定を行い、平均値および標準偏差を求めた。加えて、鋳造方向断面のサンプルをノズル吐出反転流と攪拌流の干渉部位、具体的にはノズル吐出反転流と攪拌流とが逆向きの部位で、鋳片の短辺から100mm離れた位置で採取し、その鋳造方向断面における表皮下組織(爪深さ)を調査した。 鋳片表層部の介在物個数については、鋳造幅全幅×鋳造方向長さ200mmのサンプルを鋳片の上面、下面それぞれから20mm切り出し、全幅×長さ200mmの表面内における介在物を表面から1mmおきに10mmまで研削、研磨し、100μm以上の介在物個数を調査した。鋳型内電磁攪拌装置によって誘起される攪拌流速が異なる条件で鋳造を行った結果を以下の表1にまとめた。
【0032】
【表1】
【0033】
なお、表1に示す各値において、表層介在物個数指数、内部気泡個数指数、デンドライト傾角、括弧内の数値、切替周期とは以下の意味を有する。
*表層介在物個数指数とは、鋳型内電磁攪拌装置を用いない場合を100とし指標化したものである。
*内部気泡個数指数とは、ストランド内電磁攪拌装置を用いない場合を100とし指標化したものである。
*表中のデンドライト傾角は平均値、並びに括弧内の数値は標準偏差を意味する。
*介在物ならびに気泡個数指数は20以下であれば非常に良好であることを意味する。
*切替周期とは、同一方向に推進力を付与する時間を意味している。
【0034】
表1において、デンドライト傾角が15゜以上でデンドライト傾角の標準偏差が10゜以内、かつ、デンドライト傾角の表裏差が±10゜以内の実施例試料はいずれも爪深さが浅く、表層介在物個数指数が低くなった。また、これらの条件を満足する試料については鋳型内電磁攪拌流速が1.0m/s以下の場合であった。
表1の中で、デンドライト傾角が15°以上であっても、表裏差が±10°より大きいものが見られるが(比較例5)、これは、浸漬ノズル詰りによりノズル吐出流が大きく偏流し、長辺間で流動パターンが大きく異なっていることを意味しており、その場合、表層介在物個数指数が大きく満足する鋳片は得られなかった。また、デンドライト傾角が過大のものが見られるが、この場合爪深さが2mmを越えるもの(比較例4:デンドライト傾角24゜)が見られ、結果として表層介在物個数指数が大きく満足する鋳片は得られなかった。この試料においては鋳型内電磁攪拌流速が1.2m/sであり、溶鋼の流速が大きすぎることが影響したと思われる。
これらのことから、過大な攪拌流速の付与は湯面の乱れを引き起こすため、デンドライト傾角の上限値の目安としてデンドライト傾角が最も小さい極低炭素鋼では23°、より好ましくは22゜と考えられる。
【0035】
一方、内部欠陥となる気泡欠陥の評価方法として、鋳造幅全幅×鋳造長さ方向10mmの鋳片の全断面サンプルを切り出し、X線透過写真を撮影し気泡欠陥の分布を調査した。 これについては、鋳型内の電磁攪拌コイルに加え、ストランドの電磁攪拌装置の攪拌条件が異なる条件で行った結果を表2に示した。
【0036】
【表2】
【0037】
なお、表2においては、鋳型内の電磁攪拌コイルの攪拌流速は0.6m/sの条件で実施した。また、表2の試料中でデンドライト傾角の表裏差は、何れも±10°であった。
表2に示す結果から、ストランド内の電磁攪拌を行わない試料(比較例6)では内部気泡個数指数の値が大幅に増加し、ストランド内の電磁攪拌を一方向連続とした試料(比較例7)では内部気泡個数指数が増加した。
表2に示す結果から、本発明のデンドライト傾角の条件を満足し、爪深さを小さくすることができ、攪拌流速も好適な値とした試料は、いずれも内部凝固組織が層状負偏析を示し、内部気泡個数指数も小さい値を示し、優れた鋳片であることを実証できた。
なお、垂直曲げ型の連続鋳造機を用いて上述の条件と同等の条件で操業した際にも、同様な結果を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は代表的な鋳片皮下の凝固組織と表皮下に観察される爪の一例を示す組織写真。
【図2】図2は溶鋼中を下降する丸棒周囲に凝固シェルを生成させた場合の爪深さと介在物個数の関係について調査した結果を示す図である。
【図3】図3は上記丸棒を所定速度で回転させることで、流動下での凝固状態を模擬した場合の流速と爪深さの関係を示す図である。
【図4】図4は上記丸棒を所定速度で回転させることで、流動下での凝固状態を模擬した場合の流速と介在物個数の関係を示す図である。
【図5】図5は鋳型内湯面近傍における溶鋼流動状況を示す模式図である。
【図6】図6は鋳型と電磁攪拌コイルと溶湯流の位置関係を示すもので、図6(a)は鋳型の上部平面略図、図6(b)は鋳型内部での溶湯流を示す略図、図6(c)は電磁攪拌コイルのコアの位置を示す略図である。
【図7】図7は図5、図6に示す状態において製造した鋳片の各部位から得られた鋳片の攪拌条件と爪深さとの関係を示す図である。
【図8】図8は図5、図6に示す状態において製造した鋳片の各部位から得られた鋳片の攪拌条件と介在物個数との関係を示す図である。
【図9】図9は鋼種に応じて得られるデンドライト傾角と流速との関係を示す図である。
【図10】図10は鋳片の長辺全幅に亘るデンドライト傾角の平均値を示す図である。
【図11】図11は鋳片の長辺全幅に亘るデンドライト傾角の標準偏差を示す図である。
【図12】図12は鋳片の相対向する長辺間でのデンドライトの傾角の表裏差を示す図である。
【図13】図13はストランドプールの下部プールにおける循環領域を2つ形成する場合の攪拌流の模式図である。
【図14】図14はストランドプール内の溶湯流動状態を示すもので、図14(a)は反時計回りの強制攪拌流の場合の浸漬ノズル吐出流との関係を示す模式図、図14(b)は時計回りの強制攪拌流の場合の浸漬ノズル吐出流との関係を示す模式図である。
【図15】図15はストランドプール内の溶湯流動状態を説明するためのもので、図15(a)は鉛直方向の断面を示す溶湯流動状態の説明図、図15(b)は電磁攪拌コイルによる溶湯の流れの方向を示す説明図である。
【図16】図16は得られた鋳片の一例を示す組織写真であり、図16(a)は水平断面内での凝固組織写真、図16(b)は短辺部鋳造方向断面の凝固組織を示す組織写真である。
【図17】図17は得られた鋳片の一例を示す組織写真であり、図17(a)と図17(b)は相対する長辺の表面近傍の凝固組織を示す組織写真である。
【図18】図18は負偏析無しの鋳片試料と層状負偏析を生成した鋳片試料と負偏析帯を生成した鋳片試料における気泡個数指数の比較を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
1…鋳型、1a…長辺、1b…短辺、2…浸漬ノズル、A1、A2、A3、A4…溶鋼の攪拌流、a、a1、a2、b1、b2、c1、c2、d1、d2、e1、e2、f1、f2…溶鋼循環流。
【技術分野】
【0001】
本発明は気泡ならびに介在物系欠陥の少ない高品質の連続鋳造鋳片に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳片品質を左右する要因として、鋳片表面性状と鋳片内に捕捉された気泡・介在物が挙げられる。先ず、鋳片表面性状が鋳片品質を左右する理由について説明する。
鋼の連続鋳造の場合、一般には、パウダーを鋳型内に供給し、かつ鋳型を上下方向にオシレーションさせ、鋳型と凝固シェル間に液体状スラグを流入させつつ鋳造している。そのため、鋳型内メニスカス近傍のフラックス流路中に生じる圧力変動によって、鋳片表面にはオシレーションマークと呼ばれる凹凸が形成される。
炭素鋼の場合、鋳片は加熱炉にておよそ1200℃×1〜2時間程度の高温酸化雰囲気中に保持した後、熱間圧延される。そのため、1mm〜2mm程度スケールが生成し、そのスケールが除去されるため、オシレーションマークそのものが問題となることは少ない。一方、ステンレス鋼においては、スケールオフ量が過小であるため、オシレーションマークの凹凸そのものが問題視される。そのため、オシレーションマークの凹凸を小さくするための方法が幾つか開示されている。
【0003】
例えば、鋳片表面のオシレーションマークの形状について、オシレーションマークの隣り合う凹凸の最大高低差が0.8mm以下であること等を特徴とする鋼板製造用スラブが開示されている(特許文献1参照)。
また、オシレーションマークの深さが250μm以下となるように、鋳型内に液体潤滑剤を流入されることを特徴とするステンレス鋼の連続鋳造方法が開示されている。(特許文献2参照)
しかし、気泡ならびに介在物系欠陥の少ない高品質の鋳片を得る為には上記特許文献に係る公知技術では満足されるものではなかった。
【0004】
一方、炭素鋼の場合、過大なオシレーションマークであれば、マーク凹部と凸部との間の凝固不均一や凹部の偏析により割れが問題となる。しかしながら、多くの場合、オシレーションマークそのものではなく、その表皮下に見られる「爪」と呼ばれる不連続組織が問題となる。代表的な鋳片表皮下組織を図1に示す。この図1に示す如く鋳片表面から鋳造方向とは逆向きで内部に向かって伸びている、周囲より濃くエッチングされている曲線を爪と呼称する。
先に述べたように、オシレーションマークは、鋳型内メニスカス近傍のフラックス流路中での圧力変動によるメニスカスの変形の結果、生じるものであるが、メニスカス部の曲率に沿って強固な初期凝固シェルが形成された場合、その初期凝固シェルは圧力変動によって変形せず、その上方の溶鋼のみが変形することになる。その際、先に生成した初期凝固シェルの上に溶鋼がオーバーフローし、先に形成されている初期凝固シェルの上に新たに凝固することになり、その界面では凝固が不連続となる。この爪周囲は元々パウダーが存在していた領域にオーバーフローすることになるため、パウダーをかみこんだり、また、ストランドプール内に吹き込まれたAr気泡や介在物が浮上し、パウダー/溶鋼界面に滞留していたものが捕捉されやすい等、鋳片最表層部の清浄性に大きく影響する。
【0005】
鋳片の中に捕捉された気泡あるいは介在物は、圧延時に表面に露出する、あるいは、製品加工時の欠陥の原因となるため、これらの捕捉個数を最小限に抑える必要がある。鋳片内部における清浄性を改善するには、ストランドプール(ここでは鋳型内湯面から最終凝固位置までの未凝固溶鋼プールを指す)内での流動をいかに制御するかが極めて重要である。そのための手段として、従来から水平断面内で旋回流を形成する方法やノズル吐出流速を制動する方法(特許文献3参照)や短片に沿って侵入する下降流を制御する方法(特許文献4参照)が知られている。
【特許文献1】特開2000−334501号公報
【特許文献2】特開昭61−165253号公報
【特許文献3】特公昭58−52458号公報
【特許文献4】特開平11−28556号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上述べたように、従来の技術は表面性状改善あるいは鋳片表層部および内部の品質改善を目的とした方法ならびに装置を提供するという点で検討されたものであり、さらに気泡ならびに介在物系欠陥の少ない高品質の鋳片は、明らかにされていなかった。
そこで、本発明は気泡ならびに介在物系欠陥の少ない高品質の鋳片を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題の解決を目的としてなされたものであり、その要旨は以下の通りである。
(1)本発明は、鋳片断面内の長辺表面から鋳片厚み方向に成長しているデンドライトについて、表面から5mmの位置での上記デンドライト傾角が鋳片厚み方向に対して長辺全幅に亘って平均値として15°以上の角度を持ち、かつその標準偏差が10°以内であり、さらに鋳片の表皮下に観察される爪深さが2mm以下であることを特徴とする連続鋳造鋳片に係るものである。なお、デンドライトの傾角とは、デンドライトの1次枝と長辺表面の法線とのなす角度として定義する。
(2)本発明は、上記項目(1)において、上記デンドライト傾角の長辺全幅に亘っての平均値について、相対する長辺間での違いが±10°以内であることを特徴とする連続鋳造鋳片に係るものである。
(3)本発明は、上記項目(1)乃至(2)において、鋳片の内部に負偏析線が層状に形成されていることを特徴とする連続鋳造鋳片に係るものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の連続鋳造鋳片は表面から5mmの位置でのデンドライト傾角が鋳片厚み方向に対して長辺全幅に亘って平均値として15°以上の角度を持ち、その標準偏差が10°以内であり、さらに鋳片の表皮下に観察される爪深さが2mm以下であるので、気泡並びに介在物個数が少ない、高品質の連続鋳造鋳片を得ることができる。
即ち、デンドライト傾角が15゜以上であるならば、連続鋳造において電磁攪拌による溶鋼凝固時の溶鋼の流動が確実になされていた指標となり、爪深さも小さくなるので、気泡並びに介在物の少ない鋳片が得られている指標となる。また、爪深さが2mm以下と小さいので、鋳造時に溶鋼外部近傍に存在している連続鋳造用のパウダーやその他の介在物の噛み込みのおそれが少なくなり、介在物個数が少なくなる。
本発明の連続鋳造鋳片において、デンドライト傾角の長辺全幅に亘っての平均値について、相対する長辺間での違いが±10°以内であるならば、気泡並びに介在物個数が少ない、高品質の鋳片である。即ち、相対する長辺間でのデンドライト傾角の違いが±10°以内であるならば、連続鋳造の凝固時に相対する長辺間での溶鋼の流速差が小さかったことを示し、鋳片の水平断面内で均一な攪拌流が形成されていたことを意味するので、介在物の少ない高品質の連続鋳造鋳片が得られる。
本発明の連続鋳造鋳片において、鋳片の内部に負偏析線が層状に形成されているならば、鋳片の凝固時にストランド内で生成させた溶鋼の流れがストランド内で偏りを生じることが無く凝固したことを意味し、更にその凝固時の流れが周期的に時間変化されたことを意味するので、凝固シェルの前面に確実に流動を与えたことになり、その結果として気泡および介在物の個数が低位に抑制された連続鋳造鋳片が得られたことを意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明について最良の形態に基づいて詳細に説明する。
本発明に係る連続鋳造鋳片は、鋳片の外形を横断面長方形状と見立てた場合、鋳片横断面内の長辺表面から鋳片厚み方向に成長しているデンドライトについて、表面から5mmの位置での上記デンドライト傾角(デンドライトの1次枝が鋳片長辺側表面の法線に対して傾斜する角度)が鋳片厚み方向に対して長辺全幅に亘って平均値として15°以上の角度を持ち、かつその標準偏差が10°以内であり、さらに鋳片の表皮下に観察される爪深さが2mm以下であることを特徴とする。
この連続鋳造鋳片において、上記デンドライト傾角の長辺全幅に亘っての平均値について、相対する長辺間での違いが±10°以内であることが好ましい。
この連続鋳造鋳片において、鋳片の内部に負偏析線が層状に形成されていることが好ましい。
【0010】
本発明の連続鋳造鋳片の対象とする鋼種は、普通鋼、極低炭素鋼、電磁鋼、合金鋼、ステンレス鋼などであるが、凝固組織を現出することができれば、上記以外の鋼種も適宜適用することには何ら問題ない。
本発明の連続鋳造鋳片は、上記の鋼種を連続鋳造で鋳造することにより得ることができる。このときの連続鋳造条件としては、鋳型内湯面近傍に電磁攪拌コイルを設置し、水平断面内で旋回流を付与することが好ましい。また必要に応じて、ストランド内電磁撹拌を付与してもよい。
【0011】
上記の連続鋳造により得られた鋳片の鋳片断面内の長辺表面(鋳造幅方向)から鋳片厚み方向に成長しているデンドライトの表面から5mmの位置においてデンドライト傾角が鋳片厚み方向に対して15°以上の角度を持っている必要がある。
成長しているデンドライトは、断面を研磨後ピクリン酸水溶液などによってエッチングすることにより観察される。この観察されたデンドライトの一次枝と鋳片厚み方向(鋳片長辺表面に対する法線)との角度を測定することによりデンドライト傾角を測定する。
デンドライト傾角の測定位置を表面から5mm位置とするのは、一般的に実施される鋳造速度の条件、0.6〜2.5mm/分では電磁攪拌によって形成されている流動によって偏向されたデンドライト傾角を測定できるので定義した。
なお、一つ一つのデンドライト傾角はばらつきを有しているので20本程度抽出し、それらの傾角を個々に測定し、その部位での平均値を求めた。このような測定を長辺全幅にわたって行い、全幅に亘ってのデンドライト傾角の平均値ならびに標準偏差を求めた。
その結果、デンドライト傾角の平均値の下限15°は、この値未満では気泡、介在物個数などが増えること、また、爪深さも深くなるのでこの条件に限定した。加えて、デンドライト傾角の標準偏差の上限10°は、この値を超えると気泡、介在物個数などが増えること、また、爪深さも深くなるのでこの条件に限定した。
【0012】
ところで、デンドライト傾角の平均値の上限は鋼種によって異なるため、本発明では下限値が前述した条件であることを条件とする。ただし、過大な攪拌流速の付与は湯面の乱れを引き起こすため、上限値の目安としてデンドライト傾角が最も小さい極低炭素鋼では22°、それ以外の鋼種では32°とすることが好ましい。それぞれの鋼種においてデンドライト傾角から換算される攪拌流速の上限は1m/s程度となる。
また、上記測定を相対する長辺のデンドライト傾角についても同様の測定を行う。このときの相対する長辺でのデンドライト傾角の平均値は、対応する長辺のデンドライト傾角の平均値との差が±10°以内であることが好ましい。これを外れる場合は、鋳片表層部の気泡・介在物個数が増加することから限定した。
なお、ノズル吐出流が大きく偏流した場合、相対する長辺の一方は一様な攪拌流が形成されているが、相対する長辺側では攪拌流とノズル吐出反転流との干渉が生じる場合があるためであり、そのような場合には、デンドライト傾角の長辺の表裏差が±10°以内を外れる。
【0013】
さらに、鋳片の表面に観察される爪深さが2mm以下であることが必要である。この爪深さについては、鋳片の鋳造方向断面を研磨することにより図1に示すような組織を観察し、鋳片表面から鋳造方向とは逆向きで内部に向かった伸びている周囲より濃くエッチングされている曲線を爪として観察し、その深さが表面から2mm以内であれば良い。爪深さの上限値2mmは、これ以上では、介在物個数が増加し、製品加工時の欠陥の原因となるため限定した。
なお、以上の条件の他に、鋳片の内部に負偏析線が層状に形成されていることも好ましい。この負偏析線は、凝固組織を現出する方法と同様の方法により観察できる。層状とは、1mm〜30mmピッチで形成されているものをいい、負偏析線がある幅を持って存在することが必要である。層状の負偏析線を必要とするのは、凝固時に流れが付与されており、かつその流れが周期的に時間変化することでストランド内で偏りを発生させることなく、凝固シェル前面に流動を付与することができ、その結果として気泡および介在物の個数が低位に抑えられているため限定することが好ましい。
【0014】
次に、本発明に係る連続鋳造鋳片が前述の条件を満たすことが好ましいとの結論に至った基礎理論確認実験とその結果に基づく考察について説明する。
本発明者らは、連続鋳造鋳片における気泡ならびに介在物系欠陥の少ない高品質の鋳片に関し、以下の実験と考察の結果、以下の条件を見出した。
【0015】
本発明者らは、先ず先に述べた鋳片表皮下に形成される爪とその周囲に捕捉された介在物個数の関係について、ラボ実験を行い詳細に調査した。
実験方法はPを0.05%含有した極低炭素鋼を溶解炉にて溶製し、その溶鋼中に鋳型に見立てた丸棒を所定速度で下降することで、丸棒周囲に凝固シェルを形成させた。その断面をピクリン酸水溶液を用いてエッチングし凝固組織を現出させ、爪深さを測定した。 また、得られた凝固組織の表面から5mmまでの領域について、顕微鏡にて100μm以上の介在物の個数を測定した。爪深さと介在物個数の関係について調査した結果を図2に示すが、爪深さが低減するに従い介在物個数は少なくなった。
特に爪深さが2mm以下の条件では、介在物個数密度が本発明者らが別途定めた200個/m2以下であった。ここで、介在物個数密度が200個/m2以下の場合、鋳片表面を手入れすることなく、熱延、冷延、焼鈍を行っても、表面疵が発生しないことを確認しており、介在物個数密度の目標としては200個/m2以下とする。
このように図2に示す結果より、爪深さを最大2mm以下に抑制する必要があることを知見した。そこで、本発明においては、爪深さが2mm以下を満足することを条件とした。
【0016】
次に、このような状態を鋳片全幅にわたってどのようにして実現するかを検討した。
流動下での凝固シェル成長は溶鋼側からの熱流束を受けるため、凝固が停滞あるいは再溶解することになる。この熱流束は流速によって規定されるため、凝固シェル前面に一定の流速を付与すればよいことになる。そこで、流速と爪深さの関係について調査した。
実験手法は前述した手法において丸棒を所定速度で回転させることで、流動下での凝固状態を模擬した。その結果を図3、図4に示すが、流速が増大するにつれ、爪深さは減少することがわかった。また、捕捉された介在物個数も併せて低減することがわかった。
具体的には流速0.2m/sを超える値から爪深さ2mmを下回るようになる傾向があり、流速0.2m/sを超える値から介在物個数が200個/m2を確実に下回るようになる。
【0017】
このように、凝固シェル前面にある一定値以上の流速を付与できればよいことになる。 スラブ鋳造において、そのような状態を実現しようとすると、鋳型内電磁攪拌装置を用いて水平断面内で攪拌流を付与する方法が考えられる。しかしながら、攪拌流のみが形成されるのであれば、全幅にわたって一様な流動を付与することができるが、連続鋳造では浸漬ノズルを介してタンディッシュから鋳型内に溶鋼を供給する必要があり、浸漬ノズルからの吐出流および吐出反転流と先の攪拌流が干渉することになる。このような状況を模式的に示したのが図5、図6である。
【0018】
この試験における条件は以下の通りであった。転炉での精錬と環流式真空脱ガス装置での処理ならびに合金添加により極低炭素鋼を溶製した。なお、鋼中P濃度は0.05%の条件であった。この溶鋼を10.5mRの湾曲型連鋳機で厚み250mm、幅1800mmのスラブに鋳造した。鋳造速度は1m/minでノズル内にArガスを3Nl/min流した。鋳型内の電磁攪拌コイルは湯面での流速が最大1.2m/s付与できる電磁攪拌コイルを用い、コアKAを有する電磁攪拌コイル中心部を湯面から100mmの位置に設置した。(図6(c)参照)
そこで、鋳型内電磁攪拌の条件を幾つか変化させ、鋳片表皮下の爪発生および気泡・介在物の捕捉個数について調査した。
【0019】
図5、図6に示す如く、水平断面長方形状の鋳型1において、相対向する長辺1a、1aを構成する側壁1A、1Aとそれらに隣接する短辺1b、1bを構成する側壁1B、1Bから鋳型1が構成され、この鋳型1の中心部には浸漬ノズル2が挿入され、この浸漬ノズル2の下端部両側の噴出口2A、2Aから短辺1b、1b側に向いて斜め下向きの溶湯流(ノズル吐出流)Y1、Y2が供給されるように構成されている。
この構成の鋳型1においては、鋳型内電磁攪拌装置の電磁コイルKを配置する(例えば浸漬ノズル2の溶湯噴出口よりも上方側に配置する)と、図5の矢印A1、A2、A3、A4に示す水平断面での環流型の上位攪拌流が生成する。なお、攪拌流A1、A2、A3、A4は電磁コイルに近い側の流速が大きいので図5では矢印の長さの長い方が流速が大きいことを意味する。また、浸漬ノズル2の下端部には短辺1b側に開口する噴出口2Aが形成されて溶鋼Yは鋳型1内において浸漬ノズル2の先端部から短辺1b、1b側に向かって流動するが、その流動分が短辺1b、1bに衝突してから戻る吐出反転流3が鋳型1内に生成する。また、浸漬ノズル2からの溶湯流Y1、Y2に伴ってそれらの下流側では溶湯流Y3、Y4、Y5からなる循環流と、溶湯流Y6、Y7、Y8からなる循環流が生じて浸漬ノズル2よりも下位側に位置するストランドプール下部側の溶鋼のほぼ全体が循環流により循環される。
図5中の下流側とは、溶鋼Yの攪拌流の下流側であり、攪拌流と吐出反転流が逆向きの部位を示し、一方、上流側とは攪拌流の上流側であり、攪拌流と反転流が同じ向きの部位を意味する。加えて、それぞれ鋳型1の短辺1b、1bから200mmの部位からサンプルを切り出し、鋳造方向断面の鋳片表皮下の爪深さの測定を行い、表面から5mmの位置までの介在物個数測定に供した。
【0020】
それらの結果を図7と図8に示す。撹拌流とノズル吐出流および吐出反転流が干渉が顕著な場合(上述の攪拌流と反転流が逆向きの部位)の試料は、爪深さも深く、かつ介在物の捕捉個数が多いが、干渉がない条件(上述の攪拌流と反転流が同じ向きの部位)の試料では爪深さも浅く、かつ介在物の捕捉個数も全幅にわたって低くすることができた。即ち、全幅にわたって凝固シェル前面に一様な流動を付与することが、連続鋳造鋳片の表皮下の清浄性を良好に保つために必要なことがわかった。
【0021】
そこで、連続鋳造鋳片がどのような条件を満足すれば、上記結果が得られるかを検討した。一般に流動下ではデンドライトは流れの風上側に偏向して成長し、その偏向角度は流速、凝固速度から規定されることが知られている。(例えば、岡野ら:鉄と鋼,61(1975),2982.)このデンドライトの偏向現象はデンドライト樹間の濃化溶鋼が流れによって洗浄され、デンドライト前面の濃度勾配が変化することによっているため、デンドライト間隔によっても変化することになる。一般的に鋼中C濃度とデンドライト偏向角度は変化することが知られている。(例えば、江阪ら:鉄と鋼,86(2000),247.)そのため、C濃度が低いIF鋼(interstitial free iron)ではデンドライトの偏向角度が小さいことになる(図9参照)。
そこで本願発明では、IF鋼でかつP濃度が0.05%以上含有した鋼の条件を基準として偏向角度を指定することにした。
【0022】
次に、連続鋳造鋳片においてどの部位での偏向角度を定義するかを明らかにする必要がある。鋳型内の凝固シェル厚Dと鋳造速度Vcは、下記関係式でおよそ規定されるため、鋳造速度によって凝固シェル厚は変化することになる。
D=k(L/Vc)1/2
ここで、上記の式において、D:凝固シェル厚(m)、L:湯面からの距離(m)、Vc:鋳造速度(m/s)、k:凝固シェル成長速度係数(m・s−1/2)を示す。
連続鋳造設備において電磁攪拌コイルのコア厚Dk(図6(c)参照、コイルが巻回された磁性体コアの厚み寸法)はおよそ150〜300mmのものとした。
程度であり、またそのコイル内での流速はプール深さ方向の流速はほぼ一様とみなしてよい。なお、k値は鋳型銅板厚み、冷却水量、二次冷却条件、用いるパウダー等によって変化するが、およそ1.8×10−3〜3.2×10−3の範囲内である。(例えば、第3版鉄鋼便覧II製銑・製鋼 日本鉄鋼協会編p.619)
従って連続鋳造鋳片において、表面から5mm位置であれば、一般的に実施される鋳造速度の条件、0.01〜0.04m/s では電磁攪拌によって形成されている流動によって偏向されたデンドライト傾角を測定できることになる。
【0023】
このような条件下でデンドライト傾角を測定し、鋳片表層部の介在物個数との関係を調査した。ここで言うデンドライト傾角とは、鋳片表面に対する法線方向に対して、表面から厚み方向に伸びているデンドライトの一次枝の傾角を意味する(換言すると、表面の法線に対する一次枝の角度)。なお、一つ一つのデンドライト傾角はばらつきを有しているので20本程度抽出し、その傾角を測定し平均値を求めることで、その部位でのデンドライト傾角とした。このような測定を鋳片の長辺全幅にわたって行い、長辺全幅にわたってのデンドライト傾角の平均値ならびに標準偏差を求めた。
その結果を図10、図11に示すが、鋳片のほぼ全幅にわたって鋳片厚み方向に対するデンドライトの傾角が平均値として15°以上であり、また、その標準偏差が10°以内であれば鋳片表層部の介在物個数が少ないことがわかった。
図10に示す結果から、デンドライト傾角15゜以上で介在物個数が確実に200個/m2を下回り、図11に示す結果から、デンドライト傾角の標準偏差値が10゜以下になることで介在物個数が確実に200個/m2よりも少なくなっている。
【0024】
次にこのような測定を鋳片の相対する長辺でも行ったところ、図12に示す結果が得られ、長辺間で長辺全幅にわたってのデンドライト傾角の平均値の差違が±10°以内であれば、鋳片表層部全てが介在物個数の少ない状態が形成されていることがわかった。
図12に示す結果から、デンドライト傾角の表裏差±10゜以内であれば、介在物個数が確実に200個/m2を下回って150個/m2程度となり、デンドライト傾角の表裏差±5゜以内であれば、介在物個数が100個/m2程度となることが判明した。
鋳片の凝固組織がこのような特徴を有することは、凝固シェル前面に付与される流速が長辺全幅にわたってほぼ一様であり、加えて相対する長辺間での流速の差が小さい、すなわち、水平断面内で均一な攪拌流が形成されていることを意味する。また、相対する長辺で攪拌流の向きが反対であるため、相対する長辺でのデンドライトは全幅にわたってほぼ平行に揃っていることになる。
【0025】
次に、より鋳片内部において、気泡や介在物の捕捉個数が少ない鋳片を得るための方法について検討した。
一般的に、Ar気泡ならびに介在物は溶鋼と比較して密度が小さいため、溶鋼のプール中での個数密度は湯面近傍で多く、溶鋼のプール深さとともにその個数密度は減少する。メニスカス近傍で凝固シェルへの気泡・介在物捕捉を防止するために、凝固シェル前面に流動を付与したように、鋳片内部においても凝固シェル前面に流動が付与されればよいことになる。但し、プール上部と異なり、できるだけ広範囲にわたって何某かの流動を付与できる方法が好ましい。
【0026】
連鋳鋳造の際のストランドプール内において広範囲にわたって溶鋼に流動を付与しようとすると、できるだけ循環流の領域を大きくとる必要がある。そのための流動パターンとしては、図13に示す流動パターンが考えられる。すなわち、横断面長方形状の鋳型の一方の短辺から他方の短辺に向けて溶鋼に推進流aを付与することで、推進流が衝突する短辺側で上下に流れが分岐した後、それぞれの短辺に沿って上昇あるいは下降する流れ(b1,b2)を形成し、上昇する流れb1が流れC1と流れd1に続いて推進流aに戻る形の循環領域と、下降する流れb2が流れC2と流れd2に続いて推進流aに戻る形の循環領域を形成することで、鉛直断面内で上下に異なる回転方向をもつ循環流を2つ形成することができる。この流動方式が最も広い範囲にわたって流動を付与することができる方式として好ましい。
しかしながら、このような流動をストランドプールの溶鋼に定常的に付与すると偏流れとなってしまい、片方の短辺側で浸漬ノズル吐出流の侵入を助長することになるため好ましくない。そこで、推進流の推進方向を周期的に切り替える方法について、水モデル実験を行い検討した。この実験では連続鋳造装置と同等の寸法比のプールに対して両短辺にホースを取り付け、ホースとポンプを接続し、ポンプで水流を一方の短辺からプール内に送り込むと同時に他方の短辺から抜くことで幅方向に推進する流動を形成した。
【0027】
その結果、推進方向を図14(a)に示す推進流a1から図14(b)に示す推進流a2のように180゜切り替えることで、幅方向全体の凝固シェル前面に流動を付与できることがわかった。(図14参照)これは、以下の理由による。
鋳型内の一方の短辺側の溶鋼に上昇流を他方の短辺側の溶鋼に下降流を加えた場合、循環流の中心は幅中央部となり、幅中央部では常に溶鋼の流れはよどんでいることになる。 しかしながら、ノズル吐出流が短辺に衝突した後、短辺に沿って侵入する下降流e1、e2が存在し、その状態で一方の短辺では下降流f1、他方の短辺では上昇流f2を付与した場合、循環流の中心は幅中央部にはなく、どちらかの短辺側に移動する。その状態で図14(a)の推進方向a1から図14(b)の推進方向a2に推進方向を切り替えることで、凝固シェル前面のどの部位においても流動を付与することができる。
図14(a)、(b)に示すような溶湯流を発生させるためには、一例として、図15に示す如く、鋳型1の上部側(浸漬ノズル2の噴出口2Aよりも上位側)に電磁攪拌コイルK1を設置し、鋳型1の下部側(浸漬ノズル2の噴出口2Aよりも下位側)に電磁攪拌コイルK2を設置して図15に示す如く電磁攪拌コイルK1による水平断面方向の溶湯流と、電磁攪拌コイルK2による水平断面方向の溶湯流を生じさせることで実現できる。また、電磁攪拌コイルK2により発生させる磁界の向きを変更することでストランドプール下部側に発生させる溶湯流を図15の左右両方向に切り替えできるので、図14(a)に示す推進方向a1による攪拌流と図14(b)に示す推進方向a2による攪拌流を切り替えることができる。
【0028】
このような流動条件下で凝固した鋳片の断面組織を図16に示す。
図16(a)は鋳片短辺側の部分の横断面組織写真を示すが、図16(a)から、白く見える負偏析線が層状に形成されていることがわかる。負偏析は溶鋼の流れによってデンドライト樹間に濃化した溶鋼が洗浄されることで形成される。その負偏析領域がある幅を持って存在すれば、連続的に溶鋼に流動を付与したことになるが、層状に負偏析線が形成されていることは、溶鋼の流動が間欠的に付与されていることを意味する。また、図16(b)の短辺部鉛直断面内での凝固組織を詳細に観察すると、負偏析線F1、F2、F3、F4、F5、F6、F7、F8、F9、F10、F11のホワイトバンドを挟んでデンドライトの傾角が逆に変化しており(図16G1、G2、G3と他の補助線等参照)、溶鋼の流動方向が逆向きになっていたことを表している。
図16(a)、(b)に示す鋳片の製造条件は、ストランド電磁攪拌コイルを湯面から3.5mの位置に設置し、攪拌流速としては最大0.5m/sの流速が付与できるものを用い、攪拌方向の切り替えは30秒間、一方の短辺から他方の短辺に向かう攪拌流を付与した後、30秒間、逆向きの攪拌流が形成できる条件の繰り返しとした。なお、鋳造速度は1m/分であった。
また、図16(b)の短辺部鉛直断面内での凝固組織を詳細に観察すると、負偏析線F1、F2、F3、F4、F5、F6、F7、F8、F9、F10、F11を挟んでデンドライトの成長方向が変化しており(図16G1、G2、G3等参照)、溶鋼の流動方向が逆向きになるのに対応して成長方向が逆向きになっているものも観察される。
図17(a)と図17(b)は前記鋳片における相対する長辺の表面近傍の凝固組織を示す組織写真であるが、デンドライトが傾斜している状況が明確に示されている。なお、これらの図には、デンドライトの傾斜状態が判別しやすいようにデンドライトの傾斜に合わせた補助線H1、H2、H3、H4を描いている。
【0029】
この鋳片内に捕捉されている気泡個数を調査したところ、図18に示すように、負偏析線が層状に観察される場合、気泡の個数が低位に抑えられていることがわかった。なお、気泡個数指数20以下が発明者らが別途定めた目標値である。
鋳片内部に気泡が捕捉されていると、冷延焼鈍板にブローホールと呼ぶふくれた欠陥が発生する。その程度は捕捉された気泡個数に依存する。気泡個数指数との関係を調査すると、気泡個数指数が20以下であれば、ブローホールの発生は認められないため、望ましい限界値として20と規定した。
【実施例】
【0030】
本発明の効果を具体的実施例によりさらに詳細に説明する。
転炉での精錬と還流式真空脱ガス装置での処理ならびに合金添加により極低炭素鋼を溶製した。なお、鋼中P濃度は0.05%の条件であった。この溶鋼を10.5mRの湾曲型連鋳機で厚み250mm、幅1800mmのスラブに鋳造した。鋳造速度は1m/minでノズル内にArガスを3Nl/min流した。鋳型内の電磁攪拌コイルは湯面での流速が最大1.2m/s付与できるコイルを用い、コイル中心を湯面から100mmの位置に設置した。
一方、上記に加えてストランドの電磁攪拌装置も用いた鋳造も実施した。ストランドの電磁攪拌装置に関しては、湯面から3.5mの位置に設置した。攪拌流速としては最大0.5m/sの流速が付与できるものを用いた。
【0031】
先ず、鋳片の全断面(鋳造方向に対し垂直断面)カットサンプルを採取し長辺側の表面から5mm位置のデンドライト傾角(鋳片長辺の法線に対するデンドライトの1次枝のなす角度)を鋳片全幅にわたって測定した。なお、デンドライトを鋳片全幅から20本程度抽出し、それらのデンドライト傾角測定を行い、平均値および標準偏差を求めた。加えて、鋳造方向断面のサンプルをノズル吐出反転流と攪拌流の干渉部位、具体的にはノズル吐出反転流と攪拌流とが逆向きの部位で、鋳片の短辺から100mm離れた位置で採取し、その鋳造方向断面における表皮下組織(爪深さ)を調査した。 鋳片表層部の介在物個数については、鋳造幅全幅×鋳造方向長さ200mmのサンプルを鋳片の上面、下面それぞれから20mm切り出し、全幅×長さ200mmの表面内における介在物を表面から1mmおきに10mmまで研削、研磨し、100μm以上の介在物個数を調査した。鋳型内電磁攪拌装置によって誘起される攪拌流速が異なる条件で鋳造を行った結果を以下の表1にまとめた。
【0032】
【表1】
【0033】
なお、表1に示す各値において、表層介在物個数指数、内部気泡個数指数、デンドライト傾角、括弧内の数値、切替周期とは以下の意味を有する。
*表層介在物個数指数とは、鋳型内電磁攪拌装置を用いない場合を100とし指標化したものである。
*内部気泡個数指数とは、ストランド内電磁攪拌装置を用いない場合を100とし指標化したものである。
*表中のデンドライト傾角は平均値、並びに括弧内の数値は標準偏差を意味する。
*介在物ならびに気泡個数指数は20以下であれば非常に良好であることを意味する。
*切替周期とは、同一方向に推進力を付与する時間を意味している。
【0034】
表1において、デンドライト傾角が15゜以上でデンドライト傾角の標準偏差が10゜以内、かつ、デンドライト傾角の表裏差が±10゜以内の実施例試料はいずれも爪深さが浅く、表層介在物個数指数が低くなった。また、これらの条件を満足する試料については鋳型内電磁攪拌流速が1.0m/s以下の場合であった。
表1の中で、デンドライト傾角が15°以上であっても、表裏差が±10°より大きいものが見られるが(比較例5)、これは、浸漬ノズル詰りによりノズル吐出流が大きく偏流し、長辺間で流動パターンが大きく異なっていることを意味しており、その場合、表層介在物個数指数が大きく満足する鋳片は得られなかった。また、デンドライト傾角が過大のものが見られるが、この場合爪深さが2mmを越えるもの(比較例4:デンドライト傾角24゜)が見られ、結果として表層介在物個数指数が大きく満足する鋳片は得られなかった。この試料においては鋳型内電磁攪拌流速が1.2m/sであり、溶鋼の流速が大きすぎることが影響したと思われる。
これらのことから、過大な攪拌流速の付与は湯面の乱れを引き起こすため、デンドライト傾角の上限値の目安としてデンドライト傾角が最も小さい極低炭素鋼では23°、より好ましくは22゜と考えられる。
【0035】
一方、内部欠陥となる気泡欠陥の評価方法として、鋳造幅全幅×鋳造長さ方向10mmの鋳片の全断面サンプルを切り出し、X線透過写真を撮影し気泡欠陥の分布を調査した。 これについては、鋳型内の電磁攪拌コイルに加え、ストランドの電磁攪拌装置の攪拌条件が異なる条件で行った結果を表2に示した。
【0036】
【表2】
【0037】
なお、表2においては、鋳型内の電磁攪拌コイルの攪拌流速は0.6m/sの条件で実施した。また、表2の試料中でデンドライト傾角の表裏差は、何れも±10°であった。
表2に示す結果から、ストランド内の電磁攪拌を行わない試料(比較例6)では内部気泡個数指数の値が大幅に増加し、ストランド内の電磁攪拌を一方向連続とした試料(比較例7)では内部気泡個数指数が増加した。
表2に示す結果から、本発明のデンドライト傾角の条件を満足し、爪深さを小さくすることができ、攪拌流速も好適な値とした試料は、いずれも内部凝固組織が層状負偏析を示し、内部気泡個数指数も小さい値を示し、優れた鋳片であることを実証できた。
なお、垂直曲げ型の連続鋳造機を用いて上述の条件と同等の条件で操業した際にも、同様な結果を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は代表的な鋳片皮下の凝固組織と表皮下に観察される爪の一例を示す組織写真。
【図2】図2は溶鋼中を下降する丸棒周囲に凝固シェルを生成させた場合の爪深さと介在物個数の関係について調査した結果を示す図である。
【図3】図3は上記丸棒を所定速度で回転させることで、流動下での凝固状態を模擬した場合の流速と爪深さの関係を示す図である。
【図4】図4は上記丸棒を所定速度で回転させることで、流動下での凝固状態を模擬した場合の流速と介在物個数の関係を示す図である。
【図5】図5は鋳型内湯面近傍における溶鋼流動状況を示す模式図である。
【図6】図6は鋳型と電磁攪拌コイルと溶湯流の位置関係を示すもので、図6(a)は鋳型の上部平面略図、図6(b)は鋳型内部での溶湯流を示す略図、図6(c)は電磁攪拌コイルのコアの位置を示す略図である。
【図7】図7は図5、図6に示す状態において製造した鋳片の各部位から得られた鋳片の攪拌条件と爪深さとの関係を示す図である。
【図8】図8は図5、図6に示す状態において製造した鋳片の各部位から得られた鋳片の攪拌条件と介在物個数との関係を示す図である。
【図9】図9は鋼種に応じて得られるデンドライト傾角と流速との関係を示す図である。
【図10】図10は鋳片の長辺全幅に亘るデンドライト傾角の平均値を示す図である。
【図11】図11は鋳片の長辺全幅に亘るデンドライト傾角の標準偏差を示す図である。
【図12】図12は鋳片の相対向する長辺間でのデンドライトの傾角の表裏差を示す図である。
【図13】図13はストランドプールの下部プールにおける循環領域を2つ形成する場合の攪拌流の模式図である。
【図14】図14はストランドプール内の溶湯流動状態を示すもので、図14(a)は反時計回りの強制攪拌流の場合の浸漬ノズル吐出流との関係を示す模式図、図14(b)は時計回りの強制攪拌流の場合の浸漬ノズル吐出流との関係を示す模式図である。
【図15】図15はストランドプール内の溶湯流動状態を説明するためのもので、図15(a)は鉛直方向の断面を示す溶湯流動状態の説明図、図15(b)は電磁攪拌コイルによる溶湯の流れの方向を示す説明図である。
【図16】図16は得られた鋳片の一例を示す組織写真であり、図16(a)は水平断面内での凝固組織写真、図16(b)は短辺部鋳造方向断面の凝固組織を示す組織写真である。
【図17】図17は得られた鋳片の一例を示す組織写真であり、図17(a)と図17(b)は相対する長辺の表面近傍の凝固組織を示す組織写真である。
【図18】図18は負偏析無しの鋳片試料と層状負偏析を生成した鋳片試料と負偏析帯を生成した鋳片試料における気泡個数指数の比較を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
1…鋳型、1a…長辺、1b…短辺、2…浸漬ノズル、A1、A2、A3、A4…溶鋼の攪拌流、a、a1、a2、b1、b2、c1、c2、d1、d2、e1、e2、f1、f2…溶鋼循環流。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳片断面内の長辺表面から鋳片厚み方向に成長しているデンドライトについて、表面から5mmの位置での上記デンドライト傾角が鋳片厚み方向に対して長辺全幅に亘って平均値として15°以上の角度を持ち、かつその標準偏差が10°以内であり、さらに鋳片の表皮下に観察される爪深さが2mm以下であることを特徴とする連続鋳造鋳片。
【請求項2】
請求項1において、上記デンドライト傾角の長辺全幅に亘っての平均値について、相対する長辺間での違いが±10°以内であることを特徴とする連続鋳造鋳片。
【請求項3】
請求項1乃至2において、鋳片の内部に負偏析線が層状に形成されていることを特徴とする連続鋳造鋳片。
【請求項1】
鋳片断面内の長辺表面から鋳片厚み方向に成長しているデンドライトについて、表面から5mmの位置での上記デンドライト傾角が鋳片厚み方向に対して長辺全幅に亘って平均値として15°以上の角度を持ち、かつその標準偏差が10°以内であり、さらに鋳片の表皮下に観察される爪深さが2mm以下であることを特徴とする連続鋳造鋳片。
【請求項2】
請求項1において、上記デンドライト傾角の長辺全幅に亘っての平均値について、相対する長辺間での違いが±10°以内であることを特徴とする連続鋳造鋳片。
【請求項3】
請求項1乃至2において、鋳片の内部に負偏析線が層状に形成されていることを特徴とする連続鋳造鋳片。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2007−21572(P2007−21572A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−211320(P2005−211320)
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
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