説明

連通部開閉装置

【課題】容器に設けられた連通部の大きさが変わった場合でも、当該連通部を開閉し得る開閉装置を低コストで提供する。
【解決手段】側壁部3と底壁部4とを有して断面がL字形状にされ且つ側壁部3に連通部3aが設けられると共に底壁部4に取付用開口部4aが設けられてなる真空容器1の連通部3aを開閉し得るバルブ装置6と、断面がL字形状にされてバルブ装置6を真空容器1側に取り付けるためのバルブシート7とを具備する連通部開閉装置であって、バルブシート7に、側壁部3に設けられた連通部3aに対応する案内用開口部22aが形成されたシート部21と、このシート部21と直交する方向で設けられてバルブ装置6を取り付けるためのベース部31とを備え、これらシート部21とベース部31とを分離したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば真空容器の側壁部に設けられて当該真空容器の連通口を開閉するための連通部開閉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
真空装置として、真空容器内で所定の処理、例えば真空蒸着などを施すものがあるとともに、その処理対象物として、ウエハ、ハードディスクにおける記録媒体としてのディスクなどの薄い板状材用のものがある。この場合、当然ながら、真空容器には板状材を案内するための連通口が設けられるとともに、その側壁部には、上記連通口を開閉するためのバルブ装置が設けられている。
【0003】
例えば、このようなバルブ装置として、板状材を案内し得る連通口が側壁部に設けられた容器内にバルブ装置を配置したものがある(例えば、特許文献1の図4参照)。
【0004】
このバルブ装置は、取付用のベース部とこのベース部に直交して設けられるとともに中央に板状材を案内し得る案内用開口部が形成されたシート部とからなる断面L字形状のバルブシートと、このバルブシートのベース部に貫通するように設けられて上記シート部の案内用開口部を開閉し得る板状のバルブ本体と、このバルブ本体を開閉させる駆動装置としてのシリンダ装置とから構成されている。
【0005】
そして、上記バルブシートはシート部に斜めに挿通される取付用ボルトを介して容器側に固定されており、またシリンダ装置は容器の底壁部に形成された取付用開口部を挿通されてバルブシートのベース部に取り付けられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4210391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、バルブシートは、シリンダ装置を保持するベース部と連通口が形成されたシート部とからなるL字形状に、つまり一体ものとして構成されているため、例えば板状体の大きさが変化した場合には、当然ながら、連通口の大きさも異なるため、バルブシート全体を作りなおす必要があり、したがってコストが高くなる原因になっていた。
【0008】
そこで、本発明は、処理対象物の大きさ、すなわち連通部の大きさが変わった場合に、低コストで対処し得る連通部開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る連通部開閉装置は、第1側壁部と当該第1側壁部に直交する第2側壁部とを有して断面がL字形状にされ且つ上記第1側壁部に連通部が設けられるとともに上記第2側壁部に取付用開口部が設けられてなる側壁部材の上記連通部を開閉し得るバルブ装置と、断面がL字形状にされて上記バルブ装置を側壁部材側に取り付けるためのバルブシートとを具備する連通部開閉装置であって、
上記バルブシートは、上記第1側壁部に設けられた連通部に対応する案内用開口部が形成されたシート部と、このシート部と直交する方向で設けられて上記バルブ装置を取り付けるためのベース部とを具備し、かつ、上記シート部とベース部は分離して構成され、
上記シート部は取付用ボルトにより第1側壁部に取り付けられ、
上記ベース部側には、第2側壁部に形成された取付用開口部内に挿入し得る突出ガイド部が設けられ、当該突出ガイド部を、第2側壁部の外面に取り付けられる固定部材に連結用ボルトを介して連結することにより、当該ベース部を第2側壁部側に固定するようにしたものである。
【0010】
上記バルブ装置は、上記第1側壁部と平行に移動して上記連通部を開閉するバルブ本体と、当該バルブ本体を上記第1側壁部と平行に移動させる駆動部とを含むものとすることができる。
【0011】
前記側壁部材は、例えば、真空容器の側壁部材である。
【発明の効果】
【0012】
上記構成によると、バルブ装置を取り付けるためのベース部と、処理対象物を案内するための案内用開口部を有するシート部とを分離させたことにより、例えば処理対象物の大きさが変わる場合にはシート部だけを作り直すだけでよく、つまり、ベース部を共通して利用することができるので、処理対象物の大きさに応じてバルブシート全体を交換する場合に比べ、製作コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例に係る連通部開閉装置の断面図である。
【図2】同連通部開閉装置の斜視図である。
【図3】同連通部開閉装置におけるバルブシートの斜視図である。
【図4】同連通部開閉装置におけるバルブシートの下面から見た斜視図である。
【図5】同連通部開閉装置の真空容器への取付状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る連通部開閉装置を具体的に示した実施例に基づき説明する。
【0015】
本実施例における連通部開閉装置は、ここでは、ウエハなどの板状材の表面に蒸着材料を蒸着させる真空容器に設けられ、当該板状材を真空容器内に導く際に、その側壁部において蒸着室における密閉を確保するためのものとして説明する。
【0016】
まず、真空容器を踏まえた概略的な構成について説明する。図1に示すように、この真空容器1は、内部に蒸着室2が設けられたもので、例えば周囲の側壁部(第1側壁部)3と、底壁部(第2側壁部)4および上壁部(図示せず)とから構成されており、側壁部3には板状材を蒸着室2内に導入するための連通部としての、横に細長い連通口3aが設けられており、さらに、この連通口3aを開閉するための連通部開閉装置5が設けられている。上記真空容器1の側壁部分の断面形状は、底壁部4とこれに垂直な側壁部3とからなるL字形状とされている。
【0017】
以下において、板状材の引き出し方向(図1の矢印方向a)の下手側を「前側」として、またその逆方向である上手側を「後側」として説明する。なお、板状材は被蒸着部材であり、処理対象物とも呼ぶ。蒸着室は、処理空間とも呼ぶ。
【0018】
連通部開閉装置5には、真空容器1の内側に配置されて側壁部3の連通口3aを開閉し得るバルブ装置6と、断面がL字形状にされて上記バルブ装置6を真空容器1側に取り付けるためのバルブシート(弁座である)7とが設けられている。
【0019】
上記バルブ装置6は、図1〜図5に示すように、真空容器1の側壁部3に設けられた連通口3aを開閉し得る横に細長い板状のバルブ本体(弁体である)11と、このバルブ本体11を上下方向で移動させる駆動部としてのシリンダ装置(シリンダユニットともいう)12とから構成されている。なお、バルブ本体11は取付部材13を介してシリンダ装置12のロッド部(図示せず)に連結されている。図3はバルブ本体を省略したバルブシートの斜視図であり、図5は真空容器への取付状態を示す斜視図であるが、真空容器については省略してある。
【0020】
上記バルブシート7は、真空容器1の側壁部3に設けられた連通口3aに対応する案内用開口部(後述する)が形成された鉛直方向のシート部(シートフランジまたは鉛直部ともいえる)21と、このシート部21と直交する水平方向で設けられてバルブ装置6のシリンダ装置12を保持するためのベース部(ベースフランジまたは水平部ともいえる)31とから構成されており、そしてシート部21とベース部31とは互いに分離して(つまり別体に)設けられている。
【0021】
上記シート部21は、連通口3aに対応する横に細長い案内用開口部22aが形成された本体部22と、この本体部22の前方に突設されてバルブ本体11の案内空間部Sを形成するための案内部23とから構成されている。なお、上記本体部22の前面は、上記バルブ本体11が摺勤し得る鉛直方向の仕切面Fにされるとともに、案内部23の内壁面はバルブ本体11側との接触面(つまり、シール面)にされており、当然ながら、バルブ本体11の外周面にはシール材(図示せず)が設けられる。
【0022】
上記ベース部31は、真空容器1の底壁部4に設けられた横に細長くされた矩形状の取付用開口部4aより一回り大きい矩形状に形成され且つ中央にシリンダ装置12におけるロッド部を挿通し得る穴部32aが形成された本体部32と、この本体部32の下面左右位置で下方に突設されて上記取付用開口部4aの左右部分に嵌入し得る一対のガイド部33とから構成されている。
【0023】
そして、上記ベース部31は、底壁部4の下面に取付用ボルト42により取り付けられる板状の固定部材41を介して真空容器1側に固定される。すなわち、固定部材41は取付用開口部4aより一回り大きい矩形状に形成されるとともに、その中央には、取付用開口部4aより一回り小さく且つベース部31の左右のガイド部33が当該取付用開口部4a内に挿入された状態で左右の各ガイド部33を覆い得るような挿入用穴部41aが形成されている。なお、固定部材41側には、取付用ボルト42を挿通し得るボルト穴41bが形成され、底壁部4にはねじ穴4bが形成されている。
【0024】
したがって、ベース部31を真空容器1に固定する場合、そのガイド部33を取付用開口部4a内に挿入した後、底壁部4の下方から固定部材41を接触させるとともに、連結用ボルト43により、当該固定部材41をガイド部33に連結する。勿論、固定部材41側にはボルト穴41cが形成されるとともに、ガイド部33側にはねじ穴33aが形成されており、またガイド部33の高さは、取付用開口部4aの高さ(底壁部4の高さにほぼ等しい)よりも短くされている。
【0025】
そして、上記シリンダ装置12は、ベース部31の下面に取付用ボルト44により固定される。勿論、シリンダ装置12は、図5に示すように、固定部材41の挿入用穴部41aを挿通されることになる。
【0026】
ここで、シート部21を真空容器1の側壁部3に取り付けるための構成について説明する。すなわち、図1〜図3に示すように、シート部21の四隅である左右上下位置には、それぞれ水平方向(仕切面Fに直交する方向)のボルト穴(図示せず)が形成されるとともに、これらのボルト穴に対応する側壁部3には、当然ながら、水平方向のねじ穴(図示せず)がそれぞれ形成されて、4本の取付用ボルト24によりシート部21が側壁部3に取り付けられる。なお、ベース部31の長さ(左右方向の長さ)はシート部21のそれよりも短くされるとともに、ベース部31に対応するシート部21の底部には当該シート部21を案内し得るように切欠き(所謂、ぬすみである)dが設けられている。すなわち、取付後においては、図1に示すように、シート部21とベース部31との間に隙間δが形成されることになる。この隙間δにより、シート部21に作用する力がベース部31に伝わるのを防止することができる。
【0027】
また、シート部21の後面にはシール材25が設けられており、またベース部31の下面においても、シール材34が設けられている。
【0028】
ここで、バルブシート7およびバルブ装置6を真空容器1に取り付ける作業について説明する。まず、ベース部31の下面に取付用ボルト44によりシリンダ装置12を取り付ける。次に、このベース部31を、そのシリンダ装置12が真空容器1の底壁部4の取付用開口部4aを挿通するとともに当該取付用開口部4aを覆うように底壁部4上面に載置する。
【0029】
次に、底壁部4の下方から固定部材41を接触させて、ベース部31の左右のガイド部33に連結用ボルト43を用いて固定部材41を一体化させる。つまり、固定部材41とベース部31とにより底壁部4を挟持した状態にする。勿論、シリンダ装置12は、固定部材41の挿入用穴部41aに挿通されている。
【0030】
次に、シート部21を真空容器1の内側に位置させるとともに、側壁部3の表面にその案内用開口部22aが連通口3aに一致するように接触させ、そして4本の取付用ボルト24により、このシート部21を側壁部3に固定する。
【0031】
勿論、側壁部3とシート部21との間には、連通口3aおよび案内用開口部22aの周囲をシールするシール材25が配置されるとともに、底壁部4とベース部31との間には、挿入用穴部41aの周囲をシールするシール材34が配置される。
【0032】
上述したように、バルブ装置6およびバルブシート7が真空容器1内に組み立てられた状態で、シリンダ装置12を作動させると、バルブ本体11が図1の上下方向で移動されて、シート部21に形成された案内用開口部22aが開閉されることになる。
【0033】
上記の構成によると、シリンダ装置12を取り付けるためのベース部31と、板状材を真空容器1内に案内するための案内用開口部22aを有するシート部21とを分離させたので、例えば処理対象物である板状材の大きさが異なる場合には、シート部21だけを作りなおすだけでよく、つまり、ベース部31を共通して利用することができるので、板状材または連通口3aの大きさが異なるごとにバルブシート7全体を交換する場合に比べて、製作コストを低減させまことができる。また、新品に交換する場合などにおいても、その交換費用、つまりランニングコストを低減させることができる。
【0034】
さらに、背景技術の欄に記載した先行技術に係るバルブシート一体型の構造では、処理対象物の大きさが変わった際の交換の問題に加えて、バルブ装置をメンテナンス等のために真空容器から取り外す場合、真空容器内から固定用ボルト(本実施例の連結用ボルト43に相当)を取り外す必要がある。このため、この取り外し作業に起因する、パーティクルの発生によりその後の真空容器内での処理に悪影響が出るという問題が生じるが、本実施例では、バルブ装置6を取り付けるベース部31を、固定部材41を介して真空容器1の外側(大気側)から連結用ボルト43により固定するようにしているため、真空容器1内でのボルトの取り外し作業が不要となり、したがって取り外し作業に起因するパーティクルの発生を低減できるので、メンテナンス性も向上する。
【0035】
また、上記実施例においては、バルブ装置6の駆動部であるシリンダ装置12を、真空容器1の底壁部4の上面に配置されたベース部31の下面に取り付けるようにしたので、例えば駆動部を真空容器内に配置するものに比べて、真空にすべき容積を少なくすることができ、したがって経済的である。
【0036】
ところで、上記実施例においては、板状材に蒸着を行うための真空容器の連通口を開閉する開閉装置として説明したが、例えば板状材を移送する移送管体の途中に設けられて、その前後における板状体に対する処理空間同士を遮断するための開閉装置であってもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 真空容器
2 蒸着室
3 側壁部
3a 連絡口
4 底壁部
4a 取付用開口部
5 連通部開閉装置
6 バルブ装置
7 バルブシート
11 バルブ本体
12 シリンダ装置
21 シート部
22 本体部
22a 案内用開口部
23 案内部
24 取付用ボルト
31 ベース部
32 本体部
33 ガイド部
41 固定部材
41a 挿入用穴部
42 取付用ボルト
43 連結用ボルト
44 取付用ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1側壁部と当該第1側壁部に直交する第2側壁部とを有して断面がL字形状にされ且つ上記第1側壁部に連通部が設けられるとともに上記第2側壁部に取付用開口部が設けられてなる側壁部材の上記連通部を開閉し得るバルブ装置と、断面がL字形状にされて上記バルブ装置を側壁部材側に取り付けるためのバルブシートとを具備する連通部開閉装置であって、
上記バルブシートは、上記第1側壁部に設けられた連通部に対応する案内用開口部が形成されたシート部と、このシート部と直交する方向で設けられて上記バルブ装置を取り付けるためのベース部とを具備し、かつ、上記シート部とベース部は分離して構成され、
上記シート部は取付用ボルトにより第1側壁部に取り付けられ、
上記ベース部側には、第2側壁部に形成された取付用開口部内に挿入し得る突出ガイド部が設けられ、当該突出ガイド部を、第2側壁部の外面に取り付けられる固定部材に連結用ボルトを介して連結することにより、当該ベース部を第2側壁部側に固定するようにしたことを特徴とする連通部開閉装置。
【請求項2】
上記バルブ装置は、上記第1側壁部と平行に移動して上記連通部を開閉するバルブ本体と、当該バルブ本体を上記第1側壁部と平行に移動させる駆動部とを含んでいる、請求項1に記載の連通部開閉装置。
【請求項3】
前記側壁部材は、真空容器の側壁部材である、請求項1又は2に記載の連通部開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−36506(P2013−36506A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171669(P2011−171669)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(390040660)アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド (1,346)
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【Fターム(参考)】